0301 社会保障

【特別区長会】令和8年度 東京都の施策及び予算に関する要望について

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

 令和7年8月に公表された特別区長会の「令和8年度東京都の施策及び予算に関する要望書」について、各カテゴリーごとに分類するとともに、「前年度(令和7年度)からの変化(新規・拡充など)」「政策立案への示唆」を試行的に追加しました。

(出典)特別区長会「令和8年度 東京都の施策及び予算に関する要望について」令和7年度

自治体経営

3. 都区の役割分担等に関する協議の実施

 特別区の自主・自立を一層推進するため、次の方策を講じること。

(1) 都区制度改革・地方分権の趣旨を踏まえた役割分担や税財政制度等に関する協議の再開

 平成12年の都区制度改革及び地方分権の趣旨を踏まえた都区のあり方について、事務配分や税財政制度等を根本的かつ発展的に検討するため、都区協議会の下に設置した都区のあり方検討委員会の協議を再開すること。

(2) 都区の共有財源に係る政策的減免の新設・拡大を検討する際の事前協議

 都区財政調整制度の財源である固定資産税・市町村民税法人分等について、都において政策的に減額・免除の新設・拡大を検討する際は、必ず事前に特別区と協議すること。

(3) 用途地域等都市計画決定権限の移譲等に関する協議の実施

 特別区の住民との合意形成等を踏まえた主体的・自立的なまちづくりの推進に資するため、用途地域等都市計画決定権限の移譲等について、都区間で協議・調整できる場を設定すること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望項目は前年度と同様です。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  地方分権の理念に基づき、住民に最も身近な基礎自治体である特別区の自主性・自立性を強化することは、行政サービスの質を向上させる上で不可欠である。特に、平成12年の都区制度改革以降も残る都と区の役割分担の曖昧さは、二重行政の非効率や住民の責任所在の不明確さを生む原因となっている。地域の実情を最も的確に把握する特別区が、まちづくり等の権限を持つことで、より住民ニーズに即した迅速な意思決定と行政運営が可能となる。
  • 具体的なアクション
    •  都区間の公式な協議の場である都区協議会の下に、具体的な権限移譲やそれに伴う税財源のあり方を議論する専門の検討委員会を速やかに再開・設置する。用途地域決定権限など、具体的な移譲項目をリストアップし、優先順位をつけて協議を進める。
  • 行政側の意図
    •  都としては広域行政に、特別区としては基礎自治体としての事務にそれぞれ専念することで、行政全体の効率化を図る狙いがある。税財源に関する事前協議をルール化することは、都の政策決定が特別区の財政に与える影響を最小限に抑え、安定的で予測可能な財政運営基盤を特別区に提供したいという意図の表れである。これにより、都と特別区のパートナーシップ関係を強化し、東京全体のガバナンスを向上させたいと考えている。
  • 期待される効果
    •  権限移譲により、地域特性に応じた独自のまちづくりが加速する。また、行政の責任の所在が明確になり、住民ニーズへの対応が迅速化・高品質化することが期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  都と23区それぞれの利害が複雑に絡むため、全ての関係者が納得する合意形成には多大な調整努力を要する。まずは協議の場を再開し、権限移譲の対象範囲、スケジュール、そして最も重要な財源措置の具体的な方法について議論を始めることが最初のステップとなる。
  • 特別区への示唆
    •  移譲を希望する権限について、なぜそれが必要なのか、移譲された場合にどのような住民サービス向上が見込めるのかを、具体的なデータや計画をもって都や区民に明確に説明する必要がある。また、権限移譲は責任の増大を意味するため、それに見合う専門職員の育成や組織体制の強化といった、受け皿となる行政能力の向上に計画的に取り組むことが不可欠である。

4. 減収補填対策の確保

 特別区が法人住民税及び法人事業税交付金に係る減収補填債について、発行可能となるよう、国に働きかけること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度と同様です。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  特別区の重要な基幹歳入である法人二税(法人住民税・法人事業税)交付金は、企業の業績に大きく左右されるため、税収が極めて不安定である。景気後退期には大幅な歳入減に見舞われるリスクがあり、行政サービスの安定供給に支障をきたす恐れがある。減収補填債は、こうした歳入の急激な落ち込みを平準化し、年度ごとの財政状況に左右されずに安定した住民サービスを維持するための重要な財-政運営ツールである。
  • 具体的なアクション
    •  都が特別区長会と共同で、国(総務省等)に対し、地方財政法等の改正を含め、特別区が減収補填債を発行できるよう制度的な措置を講じることを強く要請する。
  • 行政側の意図
    •  特別区の財政基盤が不安定化することは、首都東京全体の行政機能の低下に直結するという危機感がある。景気後退局面においても、福祉、教育、防災といった不可欠な住民サービスの水準を維持できるよう、財政的なセーフティネットを構築したいという意図がある。これは、都民の生活を守るための危機管理の一環と位置づけられる。
  • 期待される効果
    •  景気変動による歳入減の影響が緩和され、安定的で中長期的な視点に立った計画的な財政運営が可能となる。これにより、住民サービスの継続性が確保される。
  • 課題・次のステップ
    •  国の財政規律を重視する立場との調整が最大の課題となる。減収補填債の発行が安易な財政運営につながらないよう、発行要件や償還ルールの厳格な設定など、制度設計に関する具体的な提案を国に対して行っていく必要がある。
  • 特別区への示唆
    •  国への働きかけと並行して、減収補填債に過度に依存しない強靭な財政構造の構築が求められる。景気好調期における基金への計画的な積み立てや、経常経費の徹底した見直しなど、自主的な財政規律の強化に努める姿勢を都や区民に示すことが、国への要望活動を後押しする上で不可欠である。

環境政策

17. 都市緑地の保全の推進

 都市における貴重な緑地である、生産緑地や屋敷林等の保全を図るため、次の方策を講じること。

(1) 自治体による緑地買取りへの対応

 生産緑地や屋敷林等の自治体による買取りに対する財政措置を講じること。

(2) 緑地所有者への対応

 緑地の所有者に対し、固定資産税・都市計画税の減免等、維持管理のより一層の負担軽減を図ること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度と同様です。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  都市の緑地は、単に景観を美しくするだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和、大気浄化、雨水貯留による浸水被害の軽減、生物多様性の保全、そして住民へのレクリエーションの場の提供など、多様な公益的機能(生態系サービス)を有する。一度失われると再生が極めて困難であるため、都市化の圧力から緑地を守り、良好な生活環境を次世代に継承することは行政の重要な責務である。
  • 具体的なアクション
    •  特別区が緑地を公有化する際の買収費用に対する都の補助制度を創設・拡充する。また、緑地を所有し続けるインセンティブを高めるため、固定資産税・都市計画税の減免措置を拡大する。
  • 行政側の意図
    •  開発圧力の高い特別区内において、市場原理だけでは緑地の保全が困難であるとの認識がある。行政による直接的な買取り(公助)と、民間所有者による保全努力への支援(自助・共助の促進)を組み合わせることで、効率的かつ網羅的に都市の緑を確保したい。特に相続等を契機とした開発が進みやすい屋敷林等の保全を重視している。
  • 期待される効果
    •  都市の緑被率の維持・向上による生活環境の改善、生物多様性の保全、そして都市の防災性向上(延焼防止、避難場所)が期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  緑地の買取りや恒久的な税減免措置には安定した財源の確保が不可欠である。また、所有者の高齢化や後継者不在といった社会構造の変化に対し、税制優遇だけではない新たな保全の仕組み(例:管理協定、NPOとの連携)を構築することが次のステップとなる。
  • 特別区への示唆
    •  区内に残る緑地の現状(位置、面積、所有形態、生態系等)を詳細に把握し、保全すべき緑地の優先順位を定めた「緑の基本計画」等を策定・更新することが求められる。その上で、都の支援制度を戦略的に活用し、買取りだけでなく市民緑地制度や管理協定など、多様な手法を組み合わせて地域の実情に合った緑地保全策を展開すべきである。

18. 地球温暖化防止対策の推進

 地球温暖化防止対策を推進していくため、次の方策を講じること。

(1) 脱炭素社会実現への支援及び取組強化

 2050年「ゼロカーボンシティ」の実現に向け、より実効性のある対策を推進していく必要があることから、都立施設に次世代型ソーラーセル等の新技術を積極的に導入することで、その実用化・量産化に向けた効果の検証を行うとともに、特別区でも導入しやすくなるよう補助制度の要件を緩和する等ソフト面での支援を充実させること。加えて、FCV普及促進のため、水素の供給体制の中核となる水素ステーションの整備等ハード面からの支援も積極的に行うこと。

(2) プラスチックの資源循環促進への支援

 容器包装プラスチックと製品プラスチックとの一括回収等に伴い発生する更なる自治体の負担について、財政支援を行うよう国に働きかけるとともに、都としても一層の財政支援を行うこと。加えて、特別区が再資源化事業を安定して運営していくために、都が行っている「プラ製容器包装等・再資源化支援事業」の補助期間を延長し、令和9年度以降も財政支援を継続すること。また、自治体にとって製品プラスチック等の分別収集・選別保管等に係る費用が過大な負担となっていることから、拡大生産者責任の原則に基づき、事業者が応分の中間処理経費を負担する制度の構築等、事業者の費用負担を明確化するよう、国に働きかけること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 拡充: 脱炭素社会の実現に向けた支援策として、次世代型ソーラーセル水素ステーションの整備といった、より具体的な技術への支援が明記されました。
  • 拡充: プラスチックの資源循環に関し、具体的な都の事業名「プラ製容器包装等・再資源化支援事業」を挙げて補助期間の延長を求めるとともに、拡大生産者責任の原則に基づく事業者負担の明確化を国に働きかけるよう、要望が強化・具体化されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  地球温暖化は、気候変動を通じて豪雨や猛暑などの異常気象を激甚化させ、都民の生活や経済活動に深刻な影響を及ぼす。エネルギー消費の大きい大都市・東京が率先して脱炭素化と資源循環に取り組むことは、国の国際公約達成に貢献するとともに、持続可能な都市として存続するための不可欠な責務である。
  • 具体的なアクション
    •  次世代型ソーラーセルや水素ステーション等、脱炭素に資する新技術の導入を支援する補助制度の要件を緩和・拡充する。また、プラスチックの一括回収・再資源化に伴う特別区の財政負担を軽減するため、都の支援事業を延長する。
  • 行政側の意図
    •  都が自らの施設で先進技術を導入・実証し、その安全性や効果を広く示すことで、民間事業者や特別区における導入のハードルを下げ、社会全体の取組を加速させたい。また、プラスチック資源循環については、分別・収集を担う基礎自治体の負担が制度普及の障壁となっているため、財政支援を通じてその円滑な定着を図り、都全体の資源循環レベルを引き上げる狙いがある。
  • 期待される効果
    •  再生可能エネルギーの導入拡大やエネルギー効率の向上による温室効果ガス排出量の削減、そして廃棄物の削減と資源の有効利用による循環型社会への移行が期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  次世代技術はコストが高い場合が多く、その導入を広く普及させるための財源確保が課題となる。プラスチックリサイクルについては、収集後のリサイクル製品の品質向上や、安定した需要先の確保といった「出口戦略」の構築が次のステップとして重要になる。
  • 特別区への示唆
    •  都の補助制度を最大限に活用し、自らが管理する公共施設への再エネ導入や省エネ改修を計画的に進めるべきである。プラスチック一括回収については、住民や事業者への丁寧な説明と分別ルールの周知徹底が不可欠であり、広報活動の強化が求められる。

防災政策

16. 災害対策の充実

 切迫性が指摘される首都直下地震及び南海トラフ地震、近年の異常気象による大規模な水害等への対策の一層の充実を図るため、次の具体的な方策を講じること。

(1) 土砂災害防止対策の推進

 自治体が実施する、崖及び擁壁の安全化改修工事に対する助成事業について、国庫補助率の引上げを国に働きかけるとともに、都独自の支援策を創設すること。

(2) 帰宅困難者対策の推進

 民間事業者等に備蓄に対する都の補助制度について、活用しやすくなるよう要件を緩和すること。また、区外居住の帰宅困難者への対策として、備蓄品を保管する整備費や備蓄品購入に伴う財政措置を講じること。さらに、災害時の支援行為の促進、一時滞在施設の早急な確保のため、事故等については、国が補償する姿勢を明確化するよう、国に働きかけること。

(3) 防災対策の推進

 災害時通信確保の観点から、区市町村が自ら契約するモバイル衛星通信機器の導入及び維持管理に係る財政措置について、国へ働きかけるとともに、国費での措置がなされるまでは、都による財政措置を講じること。また、在宅避難者等への支援として、備蓄物資の購入・管理や、状況把握に係るデジタル技術活用のための財政措置を講じること。特に、高層住宅における防災対策を推進するため、既存の高層住宅への防災備蓄倉庫やエレベーター用防災キャビネットの設置促進、建物所有者等による災害時の対応研修の実施促進などを図ること。

(4) 木造密集地域対策の一層の充実

 木造住宅密集地域の防災性向上を図るため、各区に散在する局所的に密集度の高い街区において、都の「防災都市づくり推進計画」で定める整備地域に含めるとともに、不燃化特区制度と同等の支援となるよう、制度の拡充を図ること。また、住宅密集市街地における防災性と安全性を向上させるため、老朽家屋の建替えや除却に対する固定資産税等減免措置の要件緩和や、老朽建築物除却建替え支援等を行うこと。さらに、無電柱化された三間道路や、壁面後退等で6メートルの沿道空間が確保された路線を、防災生活道路網に位置付けるとともに、不燃領域率に算入できるようにすること。

(5) 大規模水害等への対策強化

 豪雨・洪水・高潮・津波から都市機能の保全を図るため、都が沿川自治体の先導役となり、市街地整備事業の財源について配分拡大を図ること。また、「高規格堤防整備事業」に基づく治水対策をより一層推進するため、国へ働きかけること。さらに、地域住民等の安全な避難体制が構築できるよう、関係機関との連携・調整を行い、自治体の枠を超えた広域避難を迅速かつ統一的に行うための体制を早期に整備すること。とりわけ、広域避難先の確保、広域避難の促進、広域避難開始の判断、鉄道事業者等の協力確保、河川管理者等による堤防復旧や排水機能の拡充等に関する支援を行うこと。

(6) 災害廃棄物処理に係る仮置場の確保

 一次仮置場の確保は各区市町村で行うことが原則だが、大都市では大きな土地を確保することは容易ではない。広域的な処理・運営を想定している二次仮置場の確保は困難を伴うため、都で所有又は管理する用地等を災害廃棄物仮置き場として利用できる制度等の構築や、国も含め事前に候補地が選定できるようにすること。

(7) 災害援護資金貸付制度 (都制度)の改善

 今後震災等が発生した際には、相当数の災害援護資金の貸付が想定されるため、借受人のやむを得ない事情等により未償還となった場合、借受人及び特別区の債務が免除となるよう、国制度と同等の措置を講じること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 防災対策の推進項目において、モバイル衛星通信機器の導入・維持管理や、在宅避難者等の状況把握に係るデジタル技術活用に対する財政措置が新たに追加されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  首都直下地震や気候変動に伴う風水害の激甚化など、都民の生命・財産を脅かす災害リスクは増大し続けている。行政には、被害の発生を未然に防ぎ、万一発生した場合でも被害を最小化(減災)するためのハード・ソフト両面の対策を、継続的かつ総合的に推進する責務がある。これは都民の安全を守るための最も基本的な行政の役割である。
  • 具体的なアクション
    •  木造密集地域の不燃化促進、大規模水害に備えた広域避難体制の整備、災害時の通信手段確保、帰宅困難者対策、災害廃棄物仮置場の確保など、多岐にわたる対策を講じる。
  • 行政側の意図
    •  過去の災害から得られた教訓や、AI・ドローンといった新たな技術動向を防災対策に反映させ、実効性を高めたい。特に、単一の自治体では対応が困難な広域避難や災害廃棄物処理といった課題については、都が広域自治体としてリーダーシップを発揮し、関係機関との調整や財政支援を行うことで、東京全体の防災力を底上げする意図がある。
  • 期待される効果
    •  災害による人的・物的被害の軽減、被災後の迅速な復旧・復興、そして首都機能の維持が期待される。住民の防災意識向上にもつながる。
  • 課題・次のステップ
    •  ハード対策には莫大な費用と長い年月がかかるため、計画的な財源確保と事業の優先順位付けが課題となる。また、住民一人ひとりの自助・共助の意識をいかに高め、行政の公助と効果的に連携させていくか、実効性のある仕組みづくりが次のステップである。
  • 特別区への示唆
    •  都の支援制度を最大限に活用しつつ、自区の災害リスクを詳細に分析したハザードマップの全戸配布や、地域防災計画の不断の見直しを徹底すべきである。特に、タワーマンションの増加に伴う高層階の在宅避難者への支援や、要配慮者の避難計画など、各区の地域特性に応じた、よりきめ細かな対策の立案と、それに基づく実践的な防災訓練の実施が強く求められる。

生活安全政策

1. 治安対策の強化

 都内における犯罪認知件数は、ここ10年で概ね減少傾向であり、治安対策は一定の成果を上げています。しかし、最新の「都民生活に関する世론調査」によると、都内においては治安対策に関する要望が上位となっています。住民の不安を払拭する治安対策の強化のため、次の方策を講じること。

(1) 防犯設備の整備、維持管理に関する補助制度の拡充等

 ① 防犯カメラ等の設置や防犯活動に使用する資機材に係る経費については、令和7年度から2年間時限措置で都の補助率が引上げられたところであるが、地域団体の負担を軽減し、継続的に地域の治安を守るため、都の全額負担となるよう制度の改正を行うこと。

 ② 特殊詐欺被害防止のため、自動通話録音機の設置促進補助事業を再実施するとともに、簡易型自動通話録音機についても補助対象とすること。

 ③ 青色回転灯付きパトロールカーの巡回にかかる経費に対する補助制度を新設すること。

(2) 民泊急増による生活環境悪化への対応

 ① 事業の適正な運営の確保と地域の生活環境の悪化を防止するため、監視指導等に関する経費に関して、財政支援を講じること。

 ② 小規模旅館業や、住宅宿泊事業法に基づく届出施設も宿泊税の課税対象に加えること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 青色回転灯付きパトロールカーの巡回経費に対する補助制度の新設が追加されました。
  • 新規: 小規模旅館業や住宅宿泊事業法に基づく施設を宿泊税の課税対象に加える要望が追加されました。
  • 拡充: 特殊詐欺被害防止のための自動通話録音機設置補助について、簡易型自動通話録音機も補助対象とするよう要望が拡充されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  統計上の犯罪件数が減少していても、巧妙化する特殊詐欺や、民泊のような新しいサービスに伴う騒音・ゴミ問題など、住民が日常生活で感じる不安(体感治安)は依然として根強い。安全・安心な生活環境を確保し、住民の不安感を解消することは、行政の基本的な責務である。
  • 具体的なアクション
    •  町会・自治会等が行う防犯カメラ設置や青色回転灯パトロールカー(青パト)の巡回活動への財政支援を拡充する。また、民泊施設への監視指導体制を強化し、宿泊税の課税対象を拡大することで公平性を確保する。
  • 行政側の意図
    •  警察による公的な警備活動(公助)を補完するものとして、住民自身による自主的な防犯活動(自助・共助)を財政的に後押しすることで、地域全体の防犯力をきめ細かく向上させたい。また、民泊等の新たな社会課題に対しては、ルールの徹底と応分の負担を求めることで、既存の地域社会との健全な共存を促し、生活環境の悪化を未然に防ぐ狙いがある。
  • 期待される効果
    •  犯罪の未然防止、犯罪発生時の迅速な犯人検挙、そして住民の体感治安の向上が期待される。また、公平な課税による財源確保にもつながる。
  • 課題・次のステップ
    •  補助制度の存在を地域団体に広く周知し、活用を促進することが重要である。宿泊税の対象拡大については、既存の旅館・ホテル業界との公平性を保ちつつ、新たな課税対象事業者からの円滑な徴収を実現するための実務的な制度設計が課題となる。
  • 特別区への示唆
    •  警察から提供される犯罪発生情報(犯罪マップ等)を分析し、防犯カメラの設置場所や青パトの巡回ルートを戦略的に決定するなど、データに基づいた効果的な防犯計画を策定することが重要である。民泊については、都の動向を注視しつつ、必要に応じて区独自の条例による上乗せ規制(例:実施地域の制限)も視野に入れ、地域住民の生活環境を守るための主体的な取り組みが求められる。

経済産業政策

5. 経済・観光施策の充実

 昨今の観光需要の上昇による団体観光客の増加に比例し、今後、観光バス等の運行がより活発化することが予想されます。そのため、観光バス等の駐車場の確保が急務となりますが、都心部では、新たに駐車場を整備する適地が限られており、加えて、都内の民間駐車場の収容台数も減少傾向にあります。ついては、今後の観光バス等の駐車場不足解消に向け、都有施設の附属駐車場の開放、既存の駐車施設、公園地等の活用など、都有地の活用に関し、規制を緩和すること。また、特別区が駐車場用地の確保などに要する経費について、既存の補助を含め拡充を図ること。さらに、民間事業者が観光バス等大型自動車の駐車場を整備する際、事業者へ財政支援などを行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 前年度の要望にはなかった、観光バス等の駐車場確保に特化した経済・観光施策の充実が、新たな項目として追加されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  観光は、外貨獲得や雇用創出を通じて東京の経済を活性化させる重要な基幹産業である。特にインバウンド需要の回復・増大が見込まれる中、観光客を円滑に受け入れるためのインフラ整備は不可欠である。観光バスの駐車場不足は、路上での乗降による交通渋滞、アイドリングによる環境悪化、地域住民とのトラブルといった「オーバーツーリズム」問題を引き起こし、都市機能の低下や観光都市としての魅力の毀損に繋がるため、行政が主体的に解決すべき課題である。
  • 具体的なアクション
    •  都有施設の駐車場や公園など、未利用・低利用の公有地を観光バス駐車場として暫定的に活用できるよう規制を緩和する。特別区が主体となって駐車場用地を確保・整備する際の経費を補助する。民間事業者が駐車場を整備する際のインセンティブとなる財政支援制度を創設する。
  • 行政側の意図
    •  地価が高騰している都心部において、民間事業者の採算ベースだけではバス駐車場の整備が進まないという現状認識がある。そのため、公有地の活用や規制緩和、財政支援といった行政ならではの手法を組み合わせることで、民間投資を誘導し、社会的に必要とされるインフラの整備を促進したい。これにより、観光客の利便性向上と地域住民の生活環境維持との両立を図る。
  • 期待される効果
    •  観光バスの路上駐車が減少し、交通渋滞や騒音が緩和される。観光客は快適に都内を周遊でき、満足度の向上が期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  活用可能な都有地をリストアップし、周辺環境への影響を評価した上で、具体的な貸付条件等を整理する必要がある。また、補助制度を創設するにあたっては、公平性・透明性を確保した基準の策定と、継続的な財源の確保が課題となる。
  • 特別区への示唆
    •  区内の主要な観光施設や宿泊施設周辺の交通状況、路上駐車の実態を詳細に調査し、駐車場が特に必要なエリアを地図上に可視化(マッピング)することが第一歩となる。その上で、都の支援制度の活用を前提とした、区有地の利用計画や民間事業者との連携による整備計画を具体的に策定し、都に対して積極的に働きかけることが重要である。

子育て、子ども政策

6. 子育て支援策の充実

 特別区においては、地価や賃料が高額であり、保育施設や学童保育施設等の整備に係る財政負担が大きい等の課題があるなかで、地域ニーズに応じた子育て支援事業の質と量の確保が喫緊の課題となっています。ついては、急速な少子化の進行を受け、結婚や妊娠への不安や障壁を解消し、安心して子どもを産み育てる環境を整備するために、次の方策を講じること。

(1) 保育環境の充実に向けた支援の拡充

 ① 保育園等の安定的な運営に向け、保育士人材の安定的確保を目的とした「保育従事職員宿舎借り上げ支援事業」による補助の継続及び拡充を行い、幼稚園教諭についても、人材不足が生じている現状を踏まえ、補助対象とすること。また、運営費の算定基準となる園児数が欠員したことにより減少した運営費を補助すること。さらに、多様な保育サービスの提供に即した保育士等の人材の安定確保に向けた就労環境改善措置を講じるよう、国に働きかけること。

 ② 学童クラブ等について、施設整備費、賃借費及び運営費に係る助成を大幅に拡充するとともに、人材定着のための処遇改善を行うこと。

(2) 「ベビーシッター利用支援事業」等への財政支援

 「ベビーシッター利用支援事業(一時預かり利用支援)」は、子育て支援の推進に向けた必要な取組であることから、令和8年度以降も継続実施すること。また、病児保育への対応等、内容の拡充及び改善を図るとともに、利用者の利便性向上に向け、都で統一的な仕組を構築すること。都で統一的な仕組の構築が困難な場合は、各区で直接事業者と協議し、仕組の構築を図れるよう補助制度を設定すること。

(3) 医療的ケア児等受入施設に対する支援の充実

 医療的ケア児等を受け入れている施設において、人材確保や、看護師不足を解消するため、看護師等の配置に係る経費の補助について大幅な見直しを国へ働きかけるとともに、施設の安定した運営等を行うため、補助制度の充実や支援策の拡充を行うこと。

(4) 多様な他者との関わりの機会の創出事業の継続

 未就園児の子育て家庭への継続的な支援及び保育士の雇用継続のため、「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を令和8年度以降も継続して実施すること。なお、本事業の継続実施がない場合は、令和8年度以降開始される「乳児等のための支援給付」に都の上乗せ支援を実施すること。

(5) 5歳児健診実施への支援の充実

 5歳児健診の実施にあたって必要となる、児童精神科医等の専門医や保健師・心理士等の専門職の確保に向けた関係機関との協議、都内における標準的な健診の実施方法や必要書類の様式の調整、発達障害と判定を受けた児に対する療育機関・療育施設の設置及び広域連携等のフォロー体制の整備等、一連の事項について、広域的な調整を行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 未就園児を対象とした「多様な他者との関わりの機会の創出事業」の継続実施が、新たな要望として追加されました。
  • 新規: 5歳児健診の実施に対する専門職確保やフォロー体制整備等の支援が、新たな要望として追加されました。
  • 拡充: 保育環境の充実について、保育園等の運営費が園児数の欠員により減少した場合に運営費を補助することが、より具体的に明記されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  少子化は、労働力人口の減少や社会保障制度の持続可能性の危機に直結し、社会全体の活力を削ぐ最大の構造的課題である。子育てに伴う経済的・時間的・精神的負担を社会全体で軽減し、誰もが安心して子どもを産み育てられる環境を整備することは、未来への投資であり、行政が最優先で取り組むべき責務である。
  • 具体的なアクション
    •  保育士の宿舎借り上げ支援の継続・拡充、ベビーシッター利用支援の継続、医療的ケア児の受入施設への支援、5歳児健診の実施支援など、子どもの成長段階や家庭の多様なニーズに応じた、切れ目のない支援策を重層的に講じる。
  • 行政側の意図
    •  待機児童対策のような保育の「量」の確保だけでなく、保育士の処遇改善による「質」の向上や、発達障害の早期発見・早期療育(5歳児健診)、医療的ケア児への対応といった、より専門性の高い支援の充実を目指している。特に、専門医の確保や療育施設の整備など、単一の区では対応が難しい課題については、都が広域的な調整役を担うことで、都内どこに住んでいても質の高い支援が受けられる体制を構築したいという意図がある。
  • 期待される効果
    •  子育て世帯の孤立化を防ぎ、経済的・精神的負担を軽減することで、子どもの健全な育成を促す。長期的には、出生率の向上にも繋がることが期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  保育士、看護師、児童精神科医といった専門人材の絶対数が不足しており、その確保・育成が最大の課題である。また、新たな支援事業を継続的に実施していくための安定的な財源の確保と、利用者にとって分かりやすく使いやすい制度設計が求められる。
  • 特別区への示唆
    •  都の多様な支援メニューを最大限に活用するために、地域の子育て家庭がどのような支援を求めているのか、ニーズ調査等をきめ細かく実施することが重要である。その上で、保育所の整備計画や、病児保育、一時預かりといった多様な保育サービスの導入を戦略的に検討すべきである。特に5歳児健診については、健診で見つかった課題をその後の療育や就学支援に確実につなげるための、区役所内の部署間連携(福祉、保健、教育)体制の構築が不可欠となる。

教育政策

19. 学校教育の推進

 学校給食食材の価格高騰が継続しているなか、学校給食を安定的に提供するため、特別区が実施する学校給食への支援について、財政措置を継続すること。また、国に対しては、学校給食法を改正するとともに、財政措置を講じ、国の負担において学校給食の無償化を進めるよう働きかけること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度から継続していますが、前年度にあった都立学校に関する記述がなくなりました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  学校給食は、子どもたちの心身の健全な発達を支えるとともに、食文化や栄養に関する知識を学ぶ「生きた教材」としての食育の役割も担っている。近年の物価高騰は、給食の質を維持しながら安定的に提供することを困難にしており、子育て世帯の家計を圧迫する要因ともなっている。教育の機会均等と子育て支援の観点から、行政による支援が不可欠である。
  • 具体的なアクション
    •  短期的には、食材価格高騰分を補填するため、都が特別区に対して財政支援を継続する。中長期的には、特別区長会として都と連携し、学校給食の無償化を国の制度として実現するよう、法改正や財源措置を国に強く働きかける。
  • 行政側の意図
    •  まずは緊急避難的な措置として、都の財政支援によって給食の質の低下や保護者負担の増大を防ぐ。しかし、これは対症療法に過ぎないとの認識がある。根本的な解決のためには、義務教育の一環として学校給食を位置づけ、その費用は国が負担すべきであるという考えのもと、制度的な無償化を最終目標として国に政策転換を迫る意図がある。
  • 期待される効果
    •  全ての児童・生徒に栄養バランスの取れた食事が保障される。また、保護者の経済的負担が軽減され、給食費の徴収に関わる教職員の事務負担も解消される。
  • 課題・次のステップ
    •  国への働きかけを粘り強く継続することが最大の課題である。国の財政状況が厳しい中、無償化を実現するためには、その教育的意義や子育て支援効果について、社会的なコンセンサスを形成していく必要がある。都の支援措置についても、物価の動向を見据えた継続的な財源確保が求められる。
  • 特別区への示唆
    •  都の財政支援を活用して、当面の安定的な給食提供体制を維持することが最優先である。それに加え、地産地消の推進や食育プログラムの充実など、給食の価値をさらに高める独自の取り組みを進めることで、国への無償化要求の説得力を高めることができる。

福祉政策

7. 障害者施策の充実

 障害者施策の充実のため、地域の実情に応じた財政措置等が行われるよう、次の方策を講じること。

(1) 障害者グループホーム等設置促進のための支援の充実

 障害者施策に係る基盤整備を充実させるため、都が行っている「障害者通所施設等整備費補助事業」について、補助対象に土地の取得を加え、既存の補助基準額の上限額を引上げる等拡充を図り、かつ補助率の特例措置を継続すること。加えて、「借地を活用した障害者(児) 施設設置支援事業」について、補助期間の拡充を行うこと。また、都が求める手厚い職員配置である「ユニットごとに夜間支援員1名の配置」を実現するため、「障害者グループホーム体制強化支援事業」の補助基準額における上限額を引上げること。

(2) 医療的ケアの必要な重症心身障害者(児)の入所・通所施設等への支援拡充

 医療的ケア児等の生活の場を確保するため地域の偏りなく入所施設等を充実させること。また、受入施設に対する報酬の見直しを国へ働きかけるとともに、施設を安定して運営するための補助制度の充実や支援策の拡充を行うこと。さらに、相談支援専門員の人材確保に向けて、東京都相談支援従事者初任者研修の実施回数を増やすなど資格取得の機会を確保すること。

(3) トワイライト事業等の制度見直し及び支援の拡充

 ① 放課後等デイサービスが、学童クラブと同様の機能を果たすことができるよう、夕方の人員配置の充実を図る等の支援を行うこと。加えて、都が独自に行っている都型放課後等デイサービス事業についても、支援を必要とする事業所が活用しやすくなるよう、経費補助の拡充や補助要件の見直し等を行うこと。

 ② 高校卒業後の障害者の家族が、仕事と介護を両立していくため、既存の障害福祉サービス事業所等が、夕方の居場所事業を実施する場合の補助制度を整備すること。その際、事業所家賃や利用者数に応じた職員配置、強度行動障害や医療的ケアを含む重度障害への対応なども考慮すること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: トワイライト事業等の制度見直しとして、高校卒業後の障害者のための夕方の居場所事業に対する補助制度の整備が、新たな要望として追加されました。
  • 拡充: 医療的ケアが必要な重症心身障害者(児)への支援として、相談支援専門員の人材確保に向けた研修機会の確保が、要望として拡充されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  障害者が親元や入所施設から地域社会へ移行し、自立した生活を送るためには、その受け皿となるグループホーム等の住まいの場の確保が不可欠である。また、障害の重度化や多様化、そして「親亡き後」の問題に対応するため、医療的ケアや日中活動、放課後支援といったライフステージに応じた切れ目のない支援体制を構築することは、共生社会の実現に向けた行政の責務である。
  • 具体的なアクション
    •  グループホーム等の施設整備に対する補助制度について、地価の高い特別区の実情に合わせて、土地取得費を補助対象に加え、補助上限額を引き上げる。また、医療的ケア児や重症心身障害者を受け入れる施設、専門人材の確保、高校卒業後の活動の場づくりへの支援を拡充する。
  • 行政側の意図
    •  施設整備の最大の障壁である用地確保の問題に、都が踏み込んだ財政支援を行うことで、事業者の参入を促し、社会資源の絶対量を増やしたい。また、障害者のライフステージ全体を見通し、学齢期から卒業後まで一貫した支援を提供することで、本人と家族が将来にわたって地域で安心して暮らし続けられる体制を構築するという強い意志がある。
  • 期待される効果
    •  障害者の地域生活への移行が促進され、自己決定に基づいた豊かな生活が実現する。また、長年にわたりケアを担ってきた家族の負担が軽減される効果も大きい。
  • 課題・次のステップ
    •  施設を整備しても、そこで働く介護・福祉人材が確保できなければ運営できないため、人材の確保・育成と処遇改善が最大の課題である。また、グループホーム等の設置にあたっては、地域住民の理解を得るための丁寧な合意形成プロセスが不可欠となる。
  • 特別区への示唆
    •  区の障害者福祉計画において、必要な社会資源(グループホーム、通所施設等)の種類と量を将来推計に基づき明確化し、計画的な整備方針を示すことが重要である。その上で、都の補助制度を事業者に周知徹底し、社会福祉法人やNPO等の多様な主体と連携しながら、地域の実情に応じた施設整備を戦略的に進めていくことが期待される。

8. 高齢者福祉の充実

 高齢者福祉を充実させるため、次の方策を講じること。

(1) 施設整備等に対する補助制度の充実

 高齢者福祉に係る基盤整備を充実させるため、都が行っている「高齢者福祉施設整備費補助制度」等を地域の実情に合わせ拡充し、支援の充実を図ること。特に、「特別養護老人ホーム等整備費補助制度」について、用地取得に係る補助を対象とするほか、待機者減少に向けてニーズが高い多床室の整備において、増加定員数の3割を超えても補助対象とすること。

(2) 介護人材の確保・定着及び育成に関する施策の実施

 特別養護老人ホーム等整備の推進には人材確保が不可欠である現状を踏まえ、「区市町村介護人材対策事業費補助金」等の拡充や、「介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業」の対象拡大等、介護人材の確保及び定着に係る施策、研修実施等による育成に関する施策を実施すること。

(3) 高齢者施設の突発的閉鎖への対応

 経営状態の悪化等により、必要な手続を経ずに介護サービス事業者が突発的に閉鎖となった際に、介護サービス給付が停止しないよう支援するとともに、全国的な支援体制を構築するよう国に働きかけること。

(4) 山谷地域に対する総合的施策の推進

 山谷地域の問題は福祉や医療、就労、住宅等多岐にわたる大都市特有の問題です。これまで山谷地域で日雇い労働に従事した方々の多くが、高齢化や孤立化などから生活保護受給者となり簡易宿所等で暮らしているが、疾病や障害等により自立した地域生活が困難となっています。このことから、引き続き各区と連携を図りつつ、都が主体となり必要な施策を推進するとともに、必要な財政支援を行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 高齢者施設の突発的閉鎖への対応が、新たな要望として追加されました。
  • 拡充: 前年度は独立した項目だった「山谷地域に対する総合的施策の推進」が、高齢者福祉の充実の中に統合され、要望内容が継続・整理されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」を迎え、介護ニーズはますます増大・多様化する。高齢者が尊厳を保ち、住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためには、介護サービスの基盤となる施設整備と、それを支える介護人材の確保が不可欠であり、これは高齢社会における行政の最重要責務の一つである。
  • 具体的なアクション
    •  特別養護老人ホーム等の施設整備に対する補助制度を、用地取得費も対象とするなど拡充する。介護職員の住居支援や各種手当など、人材の確保・定着策を強化する。また、介護事業者の突然の閉鎖から利用者を守るためのセーフティネットを構築する。
  • 行政側の意図
    •  介護基盤の整備と人材確保を車の両輪として一体的に推進することで、増大する介護需要に的確に対応したい。特に、事業者の経営悪化によるサービス停止は、利用者の生活を直接的に脅かすため、行政の監督責任と利用者保護の観点から、万一の場合の支援体制を構築する必要があるという強い問題意識がある。
  • 期待される効果
    •  介護サービスの安定的な供給体制が確保され、介護が必要になっても安心して暮らせる地域社会が実現する。介護職員の労働環境改善にもつながる。
  • 課題・次のステップ
    •  介護業界全体で深刻な人材不足が続いており、賃金水準の向上を含む抜本的な処遇改善が最大の課題である。また、事業者の経営状況を日頃から的確に把握し、必要に応じて指導・監督を行う行政の体制強化も次のステップとして求められる。
  • 特別区への示唆
    •  区の高齢者保健福祉計画において、将来の高齢者人口や要介護認定率の推移を正確に予測し、必要な介護サービスの種類と量を定量的に示した上で、計画的な基盤整備を進める必要がある。地域の介護事業者と密に連携し、人材確保のための合同就職説明会の開催や、職場環境改善への支援など、主体的な取り組みが期待される。

12. 民生委員、児童委員の活動支援

 民生委員及び児童委員は無報酬であるため、実費弁償として活動費を支給しており、昨今ではなり手不足も課題となっています。特別区においてもほとんどの区が独自に上乗せ支給を行っていることから、民生委員及び児童委員の活動費について都負担金を増額すること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 前年度の要望にはなかった「民生委員、児童委員の活動支援」が、新たな項目として追加されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  民生委員・児童委員は、法律に基づき厚生労働大臣から委嘱される非常勤の地方公務員であり、地域住民の身近な相談相手として、高齢者の見守りや子育て家庭への声かけなど、行政の手が届きにくい領域で地域福祉を支える重要な役割を担っている。その活動の基盤を支え、深刻化するなり手不足を解消することは、地域におけるセーフティネットを維持・強化するために不可欠である。
  • 具体的なアクション
    •  委員の活動にかかる交通費や通信費等の実費弁償として支給される活動費について、都の負担金単価を増額する。
  • 行政側の意図
    •  委員の活動は無報酬の名誉職とされているが、その活動には相応の経費と労力がかかっている。多くの区が既に財政負担をして上乗せ支給を行っている実態を踏まえ、都として負担を増額することで委員の活動を正当に評価し、その労に報いたい。これは委員のモチベーション向上と、新たななり手の確保に繋がると考えている。また、区による財政力格差が委員の活動条件の格差に繋がらないようにする狙いもある。
  • 期待される効果
    •  委員の経済的負担が軽減され、活動意欲が向上する。なり手不足の解消に繋がり、地域福祉活動の担い手が安定的に確保されることが期待される。
  • 課題・次のステップ
    •  都の財政状況を踏まえた、増額の規模とそれに必要な財源の確保が課題となる。活動費の増額だけでなく、活動中の事故への補償制度の充実や、困難なケースに対応するための研修機会の提供など、総合的な支援策の検討も次のステップとして考えられる。
  • 特別区への示唆
    •  都への増額要望と並行し、委員の推薦・選任プロセスの透明化や、新たななり手を発掘するための地域への働きかけを強化することが重要である。また、ICTツール(タブレット端末等)を貸与して報告事務の負担を軽減するなど、活動しやすい環境を整備する独自の取り組みも、なり手確保に有効である。

社会保障

10. 医療保険制度の充実

 特別区国民健康保険は被保険者の高齢化により医療費が増嵩する一方、被保険者に占める無職・非正規雇用・外国人世帯の割合や転出入率が高いことなどにより、保険料徴収に関して非常に厳しい環境下に置かれるなど、各区の努力だけでは解決し得ない様々な課題を抱えており、その運営は大変厳しい状況です。このため、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等の国保運営ができるよう、国民健康保険財政の責任主体として次の方策を講じること。

(1) 保険料負担軽減策の更なる実施及び財政支援の拡充

 都の独自財政支援の拡充に加えて、被保険者の保険料負担に配慮した、きめ細かい財政措置を講じるとともに、特に低所得者に配慮した支援策を強化すること。また、定率国庫負担割合の増加等、国庫負担を充実させ、国保財政基盤を強化・拡充するよう、国へ働きかけること。

(2) 子育て世帯への支援

 令和4年度より子どもに係る均等割保険料の軽減措置が導入されたが、子育て世帯の負担を更に軽減するため、軽減対象の制限を撤廃するとともに公費による軽減割合を拡大するよう、国へ働きかけること。

(3) 国民健康保険制度の抜本的な見直しに向けた国への働きかけ

 医療保険制度の一本化等、国民健康保険制度の構造的課題を抜本的に解決するための具体策を提示するよう、特別区の意見も踏まえ、国へ働きかけること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度と同様です。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  国民皆保険は、日本社会の安定を支える根幹的な制度である。しかし、特別区の国民健康保険(国保)は、被用者保険と比べて被保険者の所得水準が低く、一方で高齢化により一人当たりの医療費が高いという構造的な課題を抱えている。保険者である特別区の自助努力だけでは、保険料の高騰を抑え、安定的な財政運営を行うことは極めて困難であり、財政の責任主体である都の支援と、国の制度改革が不可欠である。
  • 具体的なアクション
    •  都独自の財政支援(保険基盤安定負担金等)をさらに拡充する。同時に、都と特別区が連携して、国に対して国庫負担割合の引き上げや、子育て世帯への保険料軽減措置の拡大、そして将来的には医療保険制度の一本化といった抜本的な改革を強く要請する。
  • 行政側の意図
    •  まずは都の財政支援を強化することで、被保険者の急激な保険料負担の増加を抑制し、制度の持続可能性を当面確保したい。しかし、これは対症療法に過ぎない。中長期的には、国保の構造的な課題を解決するため、国の責任において医療保険制度全体を再設計すべきであるとの立場を明確にし、その議論を主導していきたいという意図がある。
  • 期待される効果
    •  低所得者層や子育て世帯の保険料負担が軽減され、経済的理由で医療機関への受診をためらうといった事態を防ぐことができる。また、国保財政の安定化に繋がる。
  • 課題・次のステップ
    •  国の社会保障費抑制の方針の中で、国庫負担の増額を実現するための交渉が最大の課題である。医療保険制度の一本化については、各保険者の利害が対立するため、国民的な議論を喚起し、合意形成を図っていくという長期的な視点が必要になる。
  • 特別区への示唆
    •  都や国への要望活動を継続することはもちろん重要だが、同時に保険者としての責務を果たすことも不可欠である。収納率向上に向けた徴収対策の強化、ジェネリック医薬品の使用促進、特定健診・保健指導の受診率向上による生活習慣病の重症化予防など、医療費の適正化に向けた努力を最大限続ける姿勢を示すことが、要望活動の説得力を高める上で重要となる。

健康、保健政策

9. 医療体制の充実と整備

 患者中心の医療の実現に向け、より効率的で質の高い医療体制を構築していくとともに、急性期から回復期、在宅療養に至る医療サービスを地域ごとに切れ目なく確保する必要があります。このために、人口及び入院患者の流入、高齢化社会の進展、医療機関の偏在等、地域医療の実情を踏まえて基礎病床数の見直しを講じ、病床の適正配置と地域の実情に応じた入院医療を確保すること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度と同様です。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  医療は都民の生命と健康を守るための最も重要な社会基盤(インフラ)の一つである。高齢化の進展に伴い、疾病構造が変化し、医療ニーズがますます増大・多様化する中で、誰もが必要な時に、質の高い医療を効率的に受けられる体制を構築することは、行政の基本的な責務である。
  • 具体的なアクション
    •  人口動態、患者の流出入、疾病構造の変化などのデータを分析し、都が策定する「地域医療構想」において、二次保健医療圏ごとの将来の必要病床数を見直す。その上で、医療機関の自主的な取り組みを基本としつつ、病床の機能分化(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)と連携を促進するための誘導策を講じる。
  • 行政側の意図
    •  限られた医療資源(医師、看護師、病床等)を最大限有効に活用するため、各医療機関がそれぞれの得意分野に特化し、相互に連携するネットワーク型の医療提供体制を構築したい。特に、救急医療や高度な手術を担う病院と、リハビリや在宅復帰を支える病院・診療所との役割分担を明確にすることで、医療全体の質の向上と効率化を図る狙いがある。
  • 期待される効果
    •  救急患者のたらい回しの減少、待機手術の解消、早期の社会復帰の促進など、医療サービスの質の向上が期待される。また、医療費の適正化にもつながる。
  • 課題・次のステップ
    •  病床機能の見直しは各医療機関の経営に直結するため、関係者との丁寧な合意形成が不可欠である。また、医師や看護師等の医療人材の確保と、地域偏在の是正が、構想を実現する上での大きな課題となる。
  • 特別区への示唆
    •  地域の人口構成、疾病の状況、在宅医療の提供体制といった基礎データを的確に把握し、都が策定する地域医療構想に対して、基礎自治体の立場から積極的に意見を述べ、地域の声を反映させることが重要である。また、構想の実現に向けて、地域の医師会や医療機関、介護サービス事業者などが一堂に会する連携協議の場を主催するなど、コーディネーターとしての役割が期待される。

11. 受動喫煙対策の強化

 改正健康増進法や東京都受動喫煙防止条例の全面施行による屋内や敷地内の規制強化に伴い、屋外での受動喫煙が増加しており、屋内外ともにバランスのとれた総合的な対策を行うことが重要です。このため、次の方策を講じること。

(1) 喫煙所設置等の推進及び支援の拡充

 都が実施主体となり公衆喫煙所を整備すること。また、民間事業者の専用喫煙室等整備に対する助成の充実を図るとともに、特別区が整備する喫煙所について、設置費だけでなく維持管理費も対象とするなど補助制度を継続・拡充すること。さらに、受動喫煙対策の更なる推進のため、都庁内での連携を図るとともに、屋外における対策を強化し、東京都受動喫煙防止条例の改正も含め、実効性が期待できる明確な方針を示すこと。

(2) 都有地の活用等の推進

 喫煙所設置場所の確保について、都有地の活用を進めるため、利用可能な都有地の情報提供や無償貸与を行うなどの支援をすること。また、利用にあたっては、許可申請等手続への支援や、無償での貸与を行うなど、全庁をあげて特別区の取組を支援するとともに、道路占用許可に関する国との調整に努めること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 拡充: 要望の表題が前年度の「推進」から「強化」へと変更されました。
  • 拡充: 屋外対策の強化策として「東京都受動喫煙防止条例の改正も含め」という文言が追加され、より踏み込んだ対応を求める内容に強化されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  望まない受動喫煙による健康への悪影響を防止することは、都民の健康を守る上で重要な公衆衛生上の課題である。屋内規制の強化に伴い、屋外での対策が新たな課題として浮上しており、総合的な対策が求められている。
  • 具体的なアクション
    •  都による公衆喫煙所の整備、区への補助拡充、都有地の活用、条例改正の検討。
  • 行政側の意図
    •  屋内規制強化の趣旨を徹底するため、屋外での喫煙場所を確保することで喫煙者と非喫煙者の共存を図りたい。喫煙所の設置場所確保が困難な特別区を都が支援し、実効性のある対策を進めたいという考えがある。
  • 期待される効果
    •  望まない受動喫煙の機会の減少と、都民の健康増進。
  • 課題・次のステップ
    •  喫煙所設置場所に関する地域住民との合意形成。条例改正に向けた社会的な議論の喚起。
  • 特別区への示唆
    •  路上喫煙が問題となっているエリアを特定し、都の支援制度を活用した喫煙所の設置計画を策定する必要がある。区の条例で路上喫煙禁止地区を指定するなど、都の施策と連携した主体的な取り組みが効果的である。

まちづくり、インフラ整備政策

2. 特別区都市計画交付金の拡充

 特別区都市計画交付金は、本来基礎自治体が行う都市計画事業の財源である都市計画税が特別区の区域では都区制度が適用されていることから都税とされているなかで、特別区が行う都市計画事業の財源を確保するために設けられているものです。令和7年度の都市計画交付金予算額は、前年度より100億円増の300億円が計上され、増額が図られたところです。引き続き、特別区が行う都市計画事業をより計画的に推進できるよう、都区双方の都市計画事業の実績に見合った財源の確保や全都市計画事業の交付対象化、交付率の上限の撤廃や工事単価の引上げ等により、更なる増額を行うこと。あわせて、都市計画に係る役割分担のあり方やその財源のあり方等について協議するため、都区財政調整協議とは別に、都市計画事業のあり方についての協議体を都区協議会の下に設置すること。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度と同様ですが、交付金予算額が前年度の「200億円」から「300億円」へと現状認識が更新されています。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  都市計画税は、都市計画事業に充てるための目的税である。都区制度の特殊性から都税とされているが、その趣旨に鑑み、基礎自治体である特別区が実施する都市計画事業の財源を安定的に確保する必要がある。
  • 具体的なアクション
    •  都区双方の事業実績に見合うよう、特別区都市計画交付金を増額し、制度を改善する。
  • 行政側の意図
    •  地域のまちづくりを担う特別区の財政基盤を強化することで、公園、道路、まちの不燃化など、住民生活に密着した都市計画事業を計画的に推進させたい。財源のあり方に関する協議の場を設けることで、都区間の透明性を高める狙いもある。
  • 期待される効果
    •  安全で快適な都市環境の創出と、計画的なまちづくりの推進。
  • 課題・次のステップ
    •  都が実施する大規模事業との財源配分の調整。交付金の算定根拠の明確化。
  • 特別区への示唆
    •  交付金を活用して実施する都市計画事業について、優先順位を明確にした中期的な計画を策定し、都や区民に示す必要がある。交付金増額の必要性を、具体的な事業計画と効果を示すことで論理的に主張していくことが求められる。

13. 交通システムの整備促進

 特別区における交通システムの整備は、沿線地域のみならず東京圏全体の公共交通環境の向上に寄与するものであり、極めて重要な課題であるため、次の方策を講じること。

(1) 「2050東京戦略」に示された6路線の早期実現

 都が令和7年3月に策定した「2050東京戦略」に示された新空港線を含む都内6路線について、全ての路線において事業化を図ること。

 ① 東京8号線(有楽町線)の延伸

 ② 都心部・臨海地域地下鉄

 ③ 羽田空港アクセス線

 ④ 都心部・品川地下鉄(南北線の延伸)

 ⑤ 新空港線(蒲蒲線)

 ⑥ 東京12号線

 特に、大江戸線の延伸について、具体的な開業時期を示し、その実現に向けて手続等を進めること。新空港線の早期整備着手の実現に向け、都区間の合意事項を踏まえながら、都市計画事業として実施されるようにすること。東京8号線の延伸について、都で行っている公的支援のための予算措置など、東京メトロが求める十分な本路線の着実な整備に向け、必要な取組を継続的に講じること。有明地区から中央区晴海・勝どきを経由し、都心部までを結ぶ地下鉄新線を早期に整備すること。

(2) 地域公共交通に関する補助の拡充

 誰もが移動しやすい利便性の高い移動手段を実現するため、コミュニティバス事業等における車両購入や運行経費に関する補助等の拡充など、財政支援を行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 拡充: 鉄道網整備の要望根拠が、前年度の交通政策審議会答申から、より新しい都の計画である「2050東京戦略」に更新され、対象路線もそれに合わせて整理されました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  鉄道網やバス路線の整備は、通勤・通学の利便性向上、経済活動の活性化、災害時の代替輸送路確保など、首都東京の都市機能維持・向上に不可欠である。特に、交通空白地域の解消は、地域住民の生活の質に直結する課題である。
  • 具体的なアクション
    •  都の戦略に基づく鉄道新線の事業化推進と、コミュニティバス等への財政支援拡充。
  • 行政側の意図
    •  東京の国際競争力強化と、持続可能な都市の実現に向け、長期的な視点から交通ネットワークの整備を計画的に進めたい。鉄道のような広域的なインフラは都が主導し、地域内のきめ細かな移動手段は特別区を支援するという役割分担を意図している。
  • 期待される効果
    •  通勤時間の短縮、交通利便性の向上による地域活性化。
  • 課題・次のステップ
    •  巨額な事業費の負担方法(国・都・区・鉄道事業者)の調整と、事業化に向けた合意形成。
  • 特別区への示唆
    •  鉄道新線については、沿線のまちづくり計画を具体化し、事業化の機運を醸成することが重要。コミュニティバスについては、利用者のニーズを的確に捉えた路線設定や、持続可能な運行のための収支改善策を検討する必要がある。

14. 都市計画道路等の整備促進

 都市機能を向上させ、社会・経済活動を支える活力あるまちづくりを推進するとともに、緊急輸送路としての機能を確保するため、「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」及び「踏切対策基本方針」に基づき、次の方策を講じること。

(1) 都市計画道路の整備推進

 ① 都が施行する優先整備路線に位置付けられた都市計画道路の整備を推進するとともに、早期に整備するために必要な財源措置を講じること。

 ② 事業認可時点での都市計画道路区域の前面道路扱い、用途地域変更の柔軟な対応など、沿道地権者の建替え支援策を推進すること。

 ③ 道路の拡幅整備にあたっては、安全な自転車通行空間の確保と渋滞対策を図ること。

(2) 連続立体交差事業の促進

 連続立体交差事業は、交通渋滞緩和に伴う地域交通の円滑化や、踏切によって分断された地域の再生等に寄与することから、本事業を計画的かつ確実に促進するよう、必要な財源を確保すること。また、都施行の路線については早期完成を図るとともに、事業準備区間を速やかに事業化すること。さらに、特別区施行の路線についても、財政的支援とともに、ノウハウの提供や技術的支援を継続して行うこと。加えて、事業候補区間の選定に必要な地元のまちづくり推進の取組に対して、財政的・技術的支援を行うこと。

(3) 都市計画道路予定地の暫定活用

 都市計画道路予定地として取得した用地において、地域要望などを踏まえ、賑わい維持等を目的とした暫定活用を行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 継続要望: 要望内容は前年度とほぼ同様ですが、前年度にあった「東京外かく環状道路等の整備促進」の項目がなくなりました。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  都市計画道路や連続立体交差事業は、交通渋滞の緩和、物流の効率化、防災性の向上(延焼遮断、緊急輸送路確保)など、多岐にわたる効果をもたらす。長期計画に基づき着実に整備を進めることは、安全で機能的な都市を構築する上で不可欠である。
  • 具体的なアクション
    •  優先整備路線の整備推進、連続立体交差事業の促進、用地の暫定活用を行う。
  • 行政側の意図
    •  いわゆる「未整備道路」の解消を計画的に進め、都市の骨格となる道路ネットワークを完成させたい。事業の長期化による地権者の負担を軽減するため、建替え支援や用地の暫定活用といったきめ細かな対応も重視している。
  • 期待される効果
    •  交通の円滑化と防災性の向上、分断された市街地の一体化。
  • 課題・次のステップ
    •  用地取得の長期化と事業費の増大。沿道住民や地権者との丁寧な合意形成。
  • 特別区への示唆
    •  事業の早期実現に向けて、地元の機運醸成や地権者への説明など、都と連携した取り組みが不可欠である。連続立体交差事業によって生み出される鉄道跡地の利用計画など、関連するまちづくりを主体的に検討していく必要がある。

15. 都市インフラの改善

 都市機能を向上させ、社会・経済活動を支える活力あるまちづくりを推進するためには、都市インフラの改善を図る必要があるため、次の方策を講じること。

(1) 国道の立体整備の推進に向けた国への働きかけ

 将来を見据えた交通安全・渋滞緩和のため、国道の立体整備を早期に推進するよう国へ働きかけること。

(2) 電線類の地中化の促進

 災害に強く安全な都市基盤整備及び都市景観の向上を図るため、区単独事業に対する補助の拡充と、「無電柱化チャレンジ支援事業」に対し、事業完了まで財政支援を行うこと。また、コスト縮減・工期短縮に向けて関係事業者と連携し、特殊部や地上機器のコンパクト化などの技術開発を進め、新工法に関する技術支援を行うこと。

(3) 羽田空港の機能強化に係る対応

 騒音対策や落下物対策等の安全管理体制を強化するとともに、自治体や住民に対し、説明会等も含めた情報提供体制を充実し、適切な情報提供を徹底するよう、国と十分調整すること。また、新飛行経路の固定化回避や、新飛行経路下の住民等に対する防音対策支援についても、国と十分調整すること。

(4) 公共インフラ老朽化対策への技術的・財政的支援

 下水道等の老朽化が要因となり発生した重大事故を踏まえ、以下の点を国に働きかけること。

 ① 国の示す「路面下空洞調査要領」を超える頻度で路面下空洞調査を行った際の調査費に対し、「社会資本整備総合交付金」を柔軟に交付できるよう基準を見直すこと。

 ② 路面下空洞調査により発見された原因不明の空洞を道路管理者が復旧する場合は、その復旧経費についても「社会資本整備総合交付金」の対象に加えること。

 加えて、都としても公共インフラ老朽化対策に関する新たな補助制度を構築するなど、財政支援を行うこと。

前年度(令和7年度)からの変化
  • 新規: 公共インフラ老朽化対策への技術的・財政的支援が、新たな要望として追加されました。特に路面下の空洞調査や復旧に関する具体的な財政支援を求めています。
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    •  高度経済成長期に整備されたインフラが一斉に老朽化し、道路陥没などの事故リスクが高まっている。また、無電柱化や空港機能強化は、防災性向上や国際競争力強化の観点から重要である。計画的な維持管理と機能向上が不可欠である。
  • 具体的なアクション
    •  無電柱化の促進、インフラ老朽化対策への財政・技術支援、国への働きかけ。
  • 行政側の意図
    •  これまでの「造る」から「賢く使う・維持する」へとインフラ政策の重点をシフトさせたい。特に、目に見えない地下の老朽化対策は喫緊の課題であり、区への支援を通じて都内全域で対策を加速させる必要がある。
  • 期待される効果
    •  インフラの長寿命化と事故の未然防止、都市の防災性・景観の向上。
  • 課題・次のステップ
    •  膨大なインフラの点検・更新費用の確保。専門技術者の育成。
  • 特別区への示唆
    •  管理する道路や橋梁等のインフラ長寿命化計画を策定し、計画的な点検・修繕を実施する必要がある。都の支援制度を積極的に活用するとともに、インフラの状態に関する情報を都と共有し、連携して対策にあたることが重要。

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