【2025年6月25日】行政関連ニュースと政策立案のヒント

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社会経済状況

令和6年 労使コミュニケーション調査の概況

概要
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  • ニュース概要
    • 厚生労働省が労使間の意思疎通の実態を調査。労使関係が「安定的」と認識する事業所は86.2%と前回調査(令和元年)より増加。労働者の7割以上が、賃金や労働時間等の労働条件について、労使間で十分に意思疎通が図られるべきと考えている 1
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 健全な労使関係の構築と、労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)実現に向けた基礎資料を得るため。特に非正規雇用者の増加など雇用形態が多様化する中での課題を把握する。
  • 具体的なアクション
    • 全国の事業所及びそこで働く労働者を対象に、労使関係やコミュニケーション、労使協議機関、労働組合等に関するアンケート調査を実施し、結果を公表する。
  • 行政側の意図
    • 労使間のコミュニケーションの実態を客観的なデータで把握し、今後の労働政策の企画・立案に活用する。特に、労働条件の決定プロセスにおける労働者の参画意識や満足度を測る狙いがある。
  • 期待される効果
    • 調査結果を基に、企業における自主的な労使コミュニケーション改善の取り組みが促進される。労働者の納得感が高まり、生産性向上にも繋がる。
  • 課題・次のステップ
    • 調査で明らかになった課題(例:非正規雇用者の意見反映の機会不足など)に対し、具体的な改善策やガイドラインを検討・提示することが求められる。
  • 特別区への示唆
    • 区内企業への労働相談や雇用支援策を検討する上で重要な基礎情報となる。特に中小企業における良好な労使関係構築を支援するセミナーや、相談窓口の設置などの施策に繋げられる。

自治体経営

ふるさと納税の指定基準の見直し等

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 総務省がふるさと納税制度の指定基準を改正。寄付額に応じてポイントを付与するサイト経由の募集を禁止するほか、返礼品の地場産品基準を厳格化し、製造・加工等の主要工程が域内で行われていることをより重視する 3
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 自治体間の過度な返礼品競争を抑制し、制度本来の「地域を応援する」という趣旨に立ち返らせるため。特に、地場産品基準の解釈を厳格化し、地域経済への貢献度が低い返礼品を是正する。
  • 具体的なアクション
    • 地方税法に基づく告示を改正し、①ポータルサイト等でのポイント付与の禁止(令和7年10月〜)、②地場産品基準の厳格化(付加価値重視、令和8年10月〜)を決定した。
  • 行政側の意図
    • 寄付額獲得のみを目的とした自治体間の不健全な競争に歯止めをかける狙い。税収が流出する都市部の自治体からの批判を意識し、制度の公平性と持続可能性を確保する意図がある。
  • 期待される効果
    • 自治体が返礼品の魅力だけでなく、寄付金の使途や地域の課題解決策をアピールするインセンティブが強まり、制度全体の健全化が期待される。
  • 課題・次のステップ
    • 新基準下で魅力的な返礼品をどう開発するかが課題。特に、伝統的な地場産品が少ない都市部では、体験型サービスなどの企画力が一層問われる。
  • 特別区への示唆
    • 特別区は製造業や農産物が少ないため、返礼品は体験型サービスが中心となる。区内の文化施設利用、伝統工芸体験、商店街での食事券など、区内での付加価値が高いサービスの魅力をいかに高め、発信していくかが重要になる。

持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会報告書の公表

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 総務省の研究会が、人口減少社会における持続可能な地方行財政に関する報告書を公表。広域連携の推進、行政のデジタル化、公共施設マネジメントの強化などを提言している 5
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 人口減少と高齢化が本格化する中で、将来にわたって行政サービスを安定的に提供できる体制を構築するための方向性を示すため。
  • 具体的なアクション
    • 有識者による研究会を設置し、地方自治体が直面する課題を分析。DX推進による業務効率化や、圏域単位での行政機能の共同化など、具体的な方策を報告書として取りまとめる。
  • 行政側の意図
    • 各自治体に対し、個別最適から全体最適への発想転換を促す。将来の担い手不足や財政悪化を見据え、自治体の枠を超えた連携や、より抜本的な行財政改革を促す狙いがある。
  • 期待される効果
    • 報告書が各自治体の行財政改革の指針となり、より効率的で持続可能な行政運営への転換が進む。住民サービスの質の維持・向上に繋がる。
  • 課題・次のステップ
    • 提言された広域連携などを具体的に進める上での、自治体間の利害調整や、住民・議会の理解形成が課題となる。
  • 特別区への示唆
    • 特別区制度自体が広域連携の一形態だが、報告書が示すDXや公共施設マネジメントの視点は重要。特に、23区共同でのシステム導入や、施設の相互利用などを一層推進する上での論拠となる。

DX政策

墨田区、行政手続オンライン化推進のための伴走支援業務委託プロポーザルを実施

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 墨田区が、行政手続のオンライン化を全庁的に推進するため、専門的な知見を持つ事業者からの「伴走支援」を受けるプロポーザルを実施。単なる電子化に留まらず、業務の抜本的な改革を目指す 7
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 職員の知見だけでは困難な、業務プロセスそのものの見直し(BPR)を含めた真のDXを推進するため。外部の専門性を活用し、改革の実効性を高める。
  • 具体的なアクション
    • 業務改善のノウハウを持つ事業者から、オンライン化の計画策定、実装支援、効果測定までを一貫して支援(伴走支援)してもらうための事業者選定プロポーザルを行う。
  • 行政側の意図
    • デジタル化を手段として、区民の利便性向上と職員の事務効率化という目的を達成する。このプロセスを通じて、組織内にDX推進のノウハウを蓄積し、自律的な改善文化を醸成する。
  • 期待される効果
    • 行政手続のオンライン利用率が向上し、バックオフィス業務も効率化・自動化される。これにより創出された時間を、職員がより創造的な企画業務などに充てられるようになる。
  • 課題・次のステップ
    • 特定の部署だけでなく、全庁的な協力体制の構築が不可欠。また、選定された事業者と区職員との円滑なコミュニケーションと、改革への意識共有が成功の鍵となる。
  • 特別区への示唆
    • DXを成功させるには、技術導入だけでなく、業務改革という組織文化の変革が不可欠であることを示す事例。「伴走支援」という形態は、各区のDXを加速させる上で有効な手法となり得る。

港区、各総合支所に各種証明書の自動発行コーナーを設置

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 港区が、区内5か所の総合支所に、マイナンバーカードを利用して住民票の写しや印鑑登録証明書などを取得できる証明書自動発行コーナーを新たに設置した 9
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 窓口の混雑緩和と、区民の利便性向上を図るため。また、職員の証明書発行業務を削減し、より専門的な相談業務等へ人的資源を再配分する。
  • 具体的なアクション
    • 各総合支所の区民課待合スペースなどに、自動交付機を設置。マイナンバーカードの利用者証明用電子証明書(4桁の暗証番号)を使って操作できるようにする。
  • 行政側の意図
    • 「待たない窓口」「行かない窓口」の実現に向けた物理的なインフラを整備する。マイナンバーカードの利活用シーンを増やすことで、カードの普及と利用促進を図る狙いもある。
  • 期待される効果
    • 区民は開庁時間中に待つことなく、スピーディーに証明書を取得できる。職員の窓口業務負担が軽減され、行政運営の効率化に繋がる。
  • 課題・次のステップ
    • 自動発行コーナーの利用方法が分からない区民(特に高齢者など)への丁寧な案内・サポート体制の構築。マイナンバーカードを持たない区民への配慮も必要。
  • 特別区への示唆
    • 基礎自治体のDXにおける基本的な取り組みであり、住民満足度向上に直結する施策。コンビニ交付と並行し、庁舎内での待ち時間削減策として有効であり、未設置の区では導入が検討されるべき。

防災政策

中野区、金融機関等と防災・減災の連携協定を締結

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 中野区が、西武信用金庫および三井住友海上火災保険株式会社と、防災・減災の取り組みに関する連携協定を締結。地域全体の防災力向上を目指す 10
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 行政単独では限界のある防災・減災の取り組みを、地域に根差した民間企業の資源(拠点、人材、ノウハウ)を活用して重層的に強化するため。
  • 具体的なアクション
    • 協定に基づき、①災害時の避難所への円滑な誘導協力、②防災イベントの共同開催、③企業の知見を活かした防災意識啓発などを連携して実施する。
  • 行政側の意図
    • 平時から連携体制を構築することで、発災時にスムーズに協力できる実効性のある関係を築く。企業の持つ地域ネットワークやリスク管理能力を、公的な防災体制に組み込む狙い。
  • 期待される効果
    • 災害時における情報伝達網の複線化と、避難行動支援体制の強化。共同での啓発活動により、地域住民の防災意識がより効果的に向上する。
  • 課題・次のステップ
    • 協定内容を具体的な行動計画に落とし込み、定期的な共同訓練を実施することが重要。連携する企業の従業員への防災教育や役割の周知も不可欠となる。
  • 特別区への示唆
    • 各区内に多数の支店網を持つ金融機関や、リスク管理を専門とする保険会社は、防災の強力なパートナーとなり得る。同様の協定は他の区でも水平展開が容易であり、地域防災力向上の有効な一手となる。

経済産業政策

大田区、ものづくり等人材確保のための奨学金返還支援を開始

概要
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  • ニュース概要
    • 大田区が、区内の中小製造業・運輸業・建設業に新たに就職する40歳未満の区民を対象に、奨学金の返還を支援する新制度を開始。返還額の半額(年上限10万円)を最長5年間助成する 13
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 人材確保が特に困難な区の基幹産業への就職を強力に後押しし、産業の担い手を確保・育成するため。若年層の経済的負担を軽減し、区内定住を促進する。
  • 具体的なアクション
    • 令和7年4月以降の新規就業者を対象に事前申請を受け付け、要件を満たす者に助成金を交付する。企業側の費用負担はなく、採用活動でのアピール材料として活用できる。
  • 行政側の意図
    • 採用難に悩む中小企業に対し、費用負担なく採用力を強化できる実用的なツールを提供する。個人への直接支援を通じて、地域経済の担い手確保というマクロな目的を達成する戦略的アプローチ。
  • 期待される効果
    • 対象産業への若年層の入職者が増加し、定着率の向上が期待される。若者の可処分所得が増えることで、地域内での消費喚起にも繋がる。
  • 課題・次のステップ
    • 制度の周知が成功の鍵。区内企業や、近隣の大学・専門学校などへの積極的な広報活動が不可欠。長期的な人材定着効果の検証も必要となる。
  • 特別区への示唆
    • 地域の産業特性に応じて、ターゲットを絞った極めて戦略的な人材確保策。各区が抱える特定の業種(例:伝統産業、福祉・介護職など)の人材不足に対し、応用可能な「刺さる」支援策の好例。

板橋区、区内中小企業の景況(令和7年)を公表

概要
  • 出典
  • ニュース概要
    • 板橋区が、区内中小企業の景況調査結果を公表。景況感や経営上の問題点、今後の見通しなど、地域経済の現状を示すデータをとりまとめている 15
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 地域の経済動向を客観的なデータで把握し、エビデンスに基づいた効果的な産業振興策や経営支援策を立案するための基礎資料とするため。
  • 具体的なアクション
    • 定期的に区内の中小企業を対象としたアンケート調査を実施し、業況判断DIなどの指標を算出し、結果を分析して公表する。
  • 行政側の意図
    • 行政施策の方向性を決定する上での客観的根拠を確保する。また、調査結果を公表することで、区内企業が自社の経営状況を客観的に把握し、経営戦略を立てる一助とする。
  • 期待される効果
    • 「原材料価格の高騰」「人手不足」など、企業が直面するリアルな課題が明確になり、的を射た支援策(例:融資あっせん、合同就職説明会)の実施に繋がる。
  • 課題・次のステップ
    • 調査の回答率を維持・向上させるための工夫。また、調査で明らかになった課題に対し、迅速に具体的な支援策を打ち出していく実行力が問われる。
  • 特別区への示唆
    • 地域の経済政策を立案する上での基本動作。各区で同様の調査を実施し、その結果を共有することで、23区全体の経済動向を把握し、連携した施策を展開することも可能になる。

経済産業省、洋上風力発電分野で官民連携を強化

概要
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  • ニュース概要
    • 経済産業省が、洋上風力発電大手のシーメンスガメサ社と官民協力枠組みを設立。同社とTDK株式会社は、風車に不可欠な高性能磁石の供給協力に関する覚書を締結した 16
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 再生可能エネルギーの主力電源化に向け、洋上風力発電の国内サプライチェーンを構築・強化するため。エネルギー安全保障上も重要な部品の安定確保を図る。
  • 具体的なアクション
    • 政府が海外大手メーカーと国内部品メーカーのマッチングを後押しし、風車製造における重要部品(磁石)の供給に関する企業間連携を促進する。
  • 行政側の意図
    • 日本の優れた部材・素材技術を、成長分野である洋上風力発電産業に活かし、新たな国内産業を育成する狙い。エネルギーの安定供給と経済成長の両立を目指す。
  • 期待される効果
    • 国内企業の洋上風力発電サプライチェーンへの参入が促進され、国内での雇用創出や技術力向上に繋がる。重要部品の国産化・安定調達が進む。
  • 課題・次のステップ
    • 磁石以外の様々な部品についても、同様の官民連携によるサプライチェーン強化を進めていく必要がある。コスト競争力の確保も課題。
  • 特別区への示唆
    • 直接的な関連は薄いが、国のエネルギー政策や産業育成の方向性を示すニュース。区内企業の事業転換や、新たなビジネスチャンスに繋がる可能性があり、情報として把握しておく価値がある。

子育て、子ども政策

品川区、介護事業者と連携しヤングケアラー支援を強化

概要
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  • ニュース概要
    • 品川区が、介護事業を展開する株式会社チャーム・ケア・コーポレーションと連携協定を締結。ヤングケアラーに対し、安心して過ごせる居場所や就労機会の提供、奨学金返還支援などを行う 18
政策立案への示唆
  • この取組を行政が行う理由
    • 家庭のケアを担うことで、学業や友人関係、自身の将来設計に困難を抱えるヤングケアラーを、精神的・経済的・社会的に多角的に支援するため。
  • 具体的なアクション
    • 民間企業と連携し、①安心して過ごせる居場所の提供、②就労体験・雇用の機会創出、③企業の奨学金返還代理制度の活用などを実施する。
  • 行政側の意図
    • 行政だけでは提供が難しい、就労や具体的な経済的支援といったサポートを、民間企業の資源と専門性を活かして実現する。福祉と雇用の連携モデルを構築する。
  • 期待される効果
    • ヤングケアラーの社会的孤立の防止と経済的負担の軽減。ケアの経験を肯定的に捉え、将来のキャリア形成に繋げることで、自立を支援する。
  • 課題・次のステップ
    • 支援を必要としながらも声を上げられないヤングケアラーをいかに発見し、支援に繋げるか。学校や地域との連携、プライバシーに配慮したアプローチが求められる。
  • 特別区への示唆
    • 複雑な課題を抱える層への支援は、行政・民間・地域がそれぞれの強みを持ち寄ることで、より実効性が高まることを示す先進事例。福祉と雇用の連携モデルとして、各区で参考にすべき。
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