【徹底分析】東京都:令和8年度予算案(前年度比較で読み解くトレンド変化)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:東京都「令和8年度東京都予算案の概要」令和7年度



財政運営
- 令和8年度予算のポイント
- 令和8年度予算における施策展開の視点
- 「人」が輝く東京を創り上げる3つのC
- 物価高騰の影響を踏まえた取組
- 財政規模
- 歳入の状況(一般会計)
- 歳出の状況(一般会計)
- 持続可能な財政運営の推進
- 事業評価・政策評価・グループ連携事業評価の取組
- 基金の活用
- 都債の活用
- 「2050東京戦略」の推進に向けた取組
- 国による地方税制度の改悪について
- 8つの柱
- 「チルドレンファーストの社会」実現に向けた施策の強化
- 1 望む人の出会い・結婚、妊娠・出産、子育てをシームレスに支援:7,545億円
- 2 すべての子供の笑顔を育む、チルドレンファーストの社会の実現:1,613億円
- 3 すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び育つ教育の推進:5,093億円
- 4 将来を担う若者が希望に満ち、描いた夢を叶えられる東京:90億円
- 1 性別にとらわれず、誰もが自らの人生を選択できる社会:241億円
- 2 心豊かに暮らし、いつまでも輝けるアクティブなChōju社会の実現:1,298億円
- 3 障害や言語などの壁を打破し、インクルーシブシティ東京を実現:555億円
- 1 スタートアップの力で日本の成長を東京が牽引:707億円
- 2 成長産業の発展を後押しし、新たなイノベーションを創出:3,632億円
- 1 洗練された体験・価値が世界中の人々の心を潤し、惹きつける東京:482億円
- 2 誰もがスポーツを楽しむ東京の実現:86億円
- 3 日本の成長を牽引し、人が輝き魅力あふれる成熟都市の実現:3,376億円
- 4 自然と都市が調和したまちづくり:815億円
- 1 ゼロエミッションを達成し、持続可能な環境先進都市を実現:3,880億円
- 1 災害から都民の命と暮らしを守る強靭な都市づくり:6,197億円
- 2 都民一人ひとりの備えと、地域の防災力を向上:344億円
- 3 犯罪から都民の命と安全・安心な暮らしを守り抜く東京:205億円
- 4 誰もが住み慣れた地域で安心して、必要な医療等を受けられる東京:1,773億円
- 1 「スマート東京」「シン・トセイ」の推進:4,430億円
- 1 成熟社会に対応した持続可能なまちづくり:2,674億円
- 2 島しょにおける個性と魅力あふれる地域づくり:369億円
- 事業評価・政策評価・グループ連携事業評価の一体的な実施
- 事業評価の取組(主な評価事例)
令和8年度予算のポイント
令和8年度および令和7年度予算案の定量的・定性的比較分析
東京都における令和8年度予算案と令和7年度予算案を比較すると、歳入歳出の両面で規模が拡大しつつ、財政運営の質的な転換が見て取れます。一般会計歳出総額においては、令和7年度の9兆1,580億円から令和8年度は9兆6,530億円へと、約4,950億円(5.4%)の増額となりました。これは、企業収益の堅調な推移を背景とした都税収入の伸長(令和8年度は前年度比4,560億円増の7兆3,856億円)を、将来への投資を加速させる財源として積極的に配分した結果です。
財政構造と資源配分の変遷
政策的経費である一般歳出に注目すると、令和7年度の6兆8,978億円から令和8年度は7兆2,678億円へと3,701億円増加しており、施策の展開に向けた強い意志が示されています。特筆すべきは財源確保の手法です。令和7年度の事業評価(TOKYOメリハリレビュー)による財源確保額は1,303億円(1,558件)でしたが、令和8年度は1,350億円(1,604件)と過去最高を更新しました。これは、既存事業の徹底したスクラップ・アンド・ビルドを通じて、新規施策の財源を自ら生み出す「成果重視」の姿勢がさらに強化されたことを意味します。
基金と都債を活用した戦略的投資
令和8年度予算の大きな特徴は、基金のさらなる積極的な活用です。令和7年度末の基金残高見込み1兆6,570億円に対し、令和8年度末は1兆4,505億円(前年度最終補正後予算比で34.6%減)まで活用が進む見通しとなっています。これは都市の強靱化や福祉先進都市の実現、社会資本整備などの重要課題に対し、蓄積した財源を戦略的に投入するフェーズに移行したことを示唆しています。一方で、都債残高は令和7年度の4兆4,431億円から令和8年度は4兆2,372億円へと微減しており、将来世代の負担を抑制する財政規律も同時に堅持されています。
分野別施策の特徴と変革の方向性
予算編成方針の変化を精査すると、都が目指す都市像の深化が確認できます。
「成長と成熟」から「2050東京戦略」の加速へ
令和7年度予算案では「不確実性が高まる社会情勢の中、『成長』と『成熟』が両立した持続可能な都市の実現」がテーマであり、「ダイバーシティ」「スマート シティ」「セーフ シティ」の3つのシティの進化に主眼が置かれていました。これに対し、令和8年度予算案では「2050東京戦略」の迅速かつ確実な実行を基本に据え、大都市東京の強みを遺憾なく発揮して明るい未来を実現することを強調しています。
AIの徹底活用による行政サービスの質的向上
令和7年度における「DXなど新たな視点での業務見直し」という方針は、令和8年度には「AIの徹底的な利活用」へと昇華されました。単なるデジタル化から一歩進み、AIを前提とした行政サービスの質的向上(QOSの追求)と施策の効率性・実効性を飛躍的に高める段階へと進化しています。これは、都民が真に「実感」できるサービスの実現を最優先する姿勢の表れです。
「人」が輝く社会の実現に向けた集中投資
令和8年度予算では、成長の原動力となる「人」の力を最大限に高める施策が中心に据えられています。令和7年度に掲げられていた「全ての人が輝く東京」という目標を継承しつつ、令和8年度は「人が輝き、活力に溢れ、安全・安心な東京」へとさらに進化させるための施策にスピード感を持って取り組む方針です。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算動向を踏まえ、特別区における今後の政策立案において重視すべきポイントを整理します。
AI実装を前提とした事務プロセスの抜本的再構築
都がAIの徹底活用を掲げ、施策の実効性を追求している現状は、特別区にとっても次なるDXの指針となります。
- 事務の効率化だけでなく、AIを活用したデータ分析に基づく住民ニーズの予測や、個別最適化された情報の提供など、付加価値の高い行政サービスを検討すべきです。
- 都が先行して導入するAI基盤やツールの活用事例を収集し、区における導入コストの低減とスピードアップを図るための広域連携を模索することが有効です。
KPI管理によるエビデンスベースの政策評価(EBPM)の強化
都の事業評価において「2050東京戦略」に関連するKPI設定が義務付けられたことは、特別区の事業立案にも大きな影響を与えます。
- 区独自の事業においても、定性的な目標だけでなく、都の戦略指標と連動した具体的な数値目標(KPI)を明示することが、都との連携強化や補助金獲得の鍵となります。
- 外部有識者や新公会計手法を積極的に活用した「メりはリレビュー」の視点を取り入れ、既存事業の投資対効果を厳格に検証し、捻出した財源を区独自の重要課題へ再配分する体制を構築してください。
人的資本への投資拡大とレジリエンスの強化
都が一般歳出を大幅に増加させ、「人」や「都市の強靭化」に重点配分している傾向は、区における教育、子育て、防災分野での施策展開の好機です。
- 都の予算編成方針にある「時代変化を捉えた新たな視点」を区の施策にも取り入れ、若年層の定住促進や高齢者の社会参画など、人が輝くための具体的な支援策を都の予算フレームに合わせて企画することが重要です。
- 基金を財源として積極的に活用している都の姿勢を参考に、区においても中長期的な財源活用計画を見直し、都市の強靭化に向けたインフラ更新や防災機能の強化を前倒しで検討する余地があります。
令和8年度予算における施策展開の視点
全体背景と基本方針の比較
令和8年度予算案は、令和7年度予算案において公表された「2050東京戦略(案)」をより力強く展開し、明るい未来への挑戦を牽引することを目的としています。 令和7年度予算案では新型コロナの脅威を乗り越え、生成AI等のテクノロジーの爆発的進化という「新たな局面」への対応が強調されていました。 これに対し、令和8年度予算案ではAI等の技術革新に加え、人口減少に伴う労働力不足、グローバル市場の環境変化、激甚化する気候危機といった、より深刻かつ急速な変化への対応が求められています。 令和8年度予算においては、大都市東京の強みを遺憾なく発揮し、時代を捉えた新たな視点とスピード感を持って施策を積極的に展開する姿勢が鮮明となっています。
分野別詳細分析:ダイバーシティ
子供・若者の未来を切り拓く支援
令和7年度予算案では、少子高齢化が急速に進む中、子供が自ら伸び、未来を切り拓くことができる「チルドレンファースト社会」の実現を目指していました。 令和8年度予算案では、都内の出生数等に下げ止まりの兆しが明らかになったことを背景に、出会い・結婚、妊娠・出産、子育てまでをシームレスに加速させる支援を掲げています。 令和8年度予算は、多様な価値観を尊重しながら、ライフステージに応じて切れ目なく支援することで、子供や若者の描く夢を全力で応援する方向に進化しています。
誰もが自分らしく活躍できる社会
令和7年度予算案が掲げた「インクルーシブシティ」の概念を継承しつつ、令和8年度予算案では、性別、年齢、障害の有無にかかわらず、誰もがいつまでも自分の人生を選択できる都市の創り上げを強調しています。 令和7年度予算案では女性や高齢者がアクティブに活躍できる環境づくりに焦点が当てられていましたが、令和8年度予算においては「一人ひとりがもっと輝く東京」の実現に向け、ともに活躍できる環境づくりがより広範に定義されています。
分野別詳細分析:スマートシティ
イノベーションによる成長と国際競争力
令和7年度予算案ではテクノロジーの爆発的進化を背景に、スタートアップの成長環境構築や国際金融都市の実現を重視していました。 令和8年度予算案では、これらに加えて中小企業の競争力強化や生産性向上への支援を明確に打ち出しています。 令和8年度予算は、テクノロジーの進歩を取り込み、革新的なイノベーションを東京から創出することで、持続可能な成長を続ける都市の実現を加速させる構成となっています。
都市の多彩な魅力と文化発信
令和7年度予算案では、2025年世界陸上・デフリンピックの開催を契機とした成熟都市の形成が大きな柱でした。 令和8年度予算案では、これを発展させ、江戸文化の世界遺産登録を見据えて東京の文化を世界に発信し、プレゼンスの向上につなげる方針を明示しています。 令和8年度予算においては、世界中から選ばれるビジネス環境の整備と並行し、東京が誇る多彩な魅力に一層の磨きをかける施策が盛り込まれています。
分野別詳細分析:セーフシティ
持続可能な環境先進都市と暑さ対策
令和7年度予算案では2050年ゼロエミッション東京の達成に向け、再生可能エネルギーの基幹エネルギー化や水素エネルギーの社会実装を推進していました。 令和8年度予算案ではこれらの取り組みを加速させるとともに、「今年の夏を見据えた暑さ対策」の迅速な推進を明記しています。 令和8年度予算は、グリーン水素への未来投資と同時に、都民の命・健康・暮らしを守るための即時性の高い環境対策にも注力しています。
都市の強靭化と首都防衛の深化
「首都防衛」の実現という目標は両年度で共通していますが、令和8年度予算案では風水害、地震、火山噴火などのあらゆる災害・危機から都民を守るための「都市のレジリエンス」を更に高める表現となっています。 令和7年度予算案から続く凶悪犯罪等への対策や医療・救急体制の確保に加え、令和8年度予算においては、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるための医療体制強化がより具体的に示されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
少子化対策における下げ止まりを好機とした施策展開
令和8年度予算案が「出生数下げ止まりの兆し」を明記したことは、特別区にとって追い風となります。 区政においては、都のシームレスな支援策と足並みを揃え、区独自の強みであるきめ細かな相談体制や地域コミュニティの活用を活かした「結婚・出産・子育て」のトータルパッケージを構築すべきです。 都の予算を活用しつつ、区独自の加算やソフト面での支援を強化することで、若い世代の定住を促進する好機です。
労働力不足解消に向けた中小企業への伴走支援
令和8年度予算案で強調されている中小企業の「生産性向上」は、区内の産業維持に直結します。 特別区の公務員は、都のデジタルトランスフォーメーション支援策や技術革新施策を区内の地場産業へ繋ぐ橋渡し役を担うべきです。 AI導入などのハード面のみならず、都の予算枠を活用した「人手不足時代の働き方改革」へのコンサルティング的支援など、一歩踏み込んだ産業振興策が求められます。
歴史・文化遺産を活用した地域ブランディング
「江戸文化の世界遺産登録」への動きは、旧跡を抱える多くの特別区にとって強力な施策の柱となり得ます。 令和8年度予算案の方向性に合わせ、区内の歴史的資源を再発掘し、都の広域観光振興策と連携した魅力発信を行うことが有効です。 近隣区との連携による「江戸散策ルート」の開発など、広域的な視点での政策立案が期待されます。
酷暑を災害と捉えた新たなレジリエンス対策
令和8年度予算案が「今年の夏」の暑さ対策に言及したことは、熱中症対策を環境対策から「命を守る防災」へと昇華させる根拠となります。 特別区においても、公共施設のクールスポット化や、ICTを活用した高齢者への熱中症警戒アラートの導入など、都の迅速な施策展開と呼応した、スピード感のある予算編成と執行が求められます。
「人」が輝く東京を創り上げる3つのC
Children分野における比較分析
令和7年度予算におけるチルドレンファーストの取組は、第1子からの保育料無償化や乳幼児医療費助成の所得制限撤廃といった、子育て世帯の家計を直接支える経済的基盤の構築に重点が置かれていました。また、共働き世帯などのニーズに応える「朝の子供の居場所づくり」を新規事業として開始し、生活サイクルに合わせた支援を展開していた点が特徴的です。対照的に、令和8年度予算では、都立高等学校海外留学等支援事業を新たに打ち出し、3週間の留学支援を通じて国際的な視座を持つ若者の育成へと踏み出しています。さらに、学校給食費の負担軽減を継続・強化しつつ、「とうきょう すくわくプログラム推進事業」を通じて、子供たちの体験活動や成長の質を向上させる方向へと支援の幅を広げています。これにより、令和7年度予算が「育てる環境の整備」という基盤固めの施策であったのに対し、令和8年度予算は「子供の可能性を伸ばす教育的投資」という未来への投資施策へと比重を高めていることが明確になっています。
Chōju分野における比較分析
令和7年度予算においては、アプリを活用した高齢者の健康づくり推進事業や、高齢者の地域見守り拠点等の整備促進事業など、予防とコミュニティによる「緩やかな見守り」が施策の主眼でした。シルバーパスについても利用者負担の軽減に留まっていましたが、令和8年度予算ではシルバーパスのICカード化へと舵を切り、利便性の向上とデータ活用を見据えた基盤整備へと進化させています。さらに、令和8年度予算では、特別養護老人ホームにおける医療的ケア対応促進事業や、高齢者いきいき住宅供給促進といった、より踏み込んだ福祉サービスの拡充が新規事業として掲げられています。これは、令和7年度予算が「健康維持と孤立防止」を重視していたのに対し、令和8年度予算では、医療依存度の高い高齢者への対応や居住の安定確保といった、より深刻化する介護・住宅ニーズに対して、公的な介入とハード・ソフト両面での基盤強化を図る姿勢を鮮明にしたものと言えます。
Community分野における比較分析
令和7年度予算では、困難を抱える若者の意見を聴く仕組みづくりや、町会・自治会への防災備蓄倉庫設置助成など、住民の声の収集やハードウェアとしての備蓄機能の強化に重点が置かれていました。また、民生・児童委員の活動費引き上げなど、既存の支援体制の維持・強化を図る側面が強かったです。一方、令和8年度予算では、中高生の地域における居場所づくりを新規に設定し、家庭や学校以外の「サードプレイス」の創出に注力しています。防災面においても、単なる備蓄倉庫の設置から一歩進め、「町会・マンション みんなで防災訓練」というソフト事業を打ち出し、マンション住民と地域住民の連携を促す実践的なフェーズへと移行しています。令和7年度予算が「支えるための仕組みと物資の確保」であったのに対し、令和8年度予算は「多様な主体が交差する場の創出と、共助の実践」へと、政策の目的をより能動的なコミュニティ形成に置いている点が大きな変化です。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
都の予算方針の変化を踏まえ、特別区の公務員の皆様は以下の3つの視点で政策立案をアップデートする必要があります。
第一に、Children分野においては、都が教育的投資や海外留学支援へとシフトする中で、区独自の「地域資源を活かした体験教育」の構築が求められます。都の広域的な支援を補完する形で、区内の企業やNPOと連携したキャリア教育や、多文化共生を実感できる地域プログラムを企画し、子供たちが多様な価値観に触れる機会を地元の文脈で提供すべきです。
第二に、Chōju分野では、医療的ケアが必要な高齢者や住宅確保困難者への対応を強化する都の方針を受け、区独自の居住支援協議会の機能を再定義する必要があります。単なる住宅紹介に留まらず、訪問看護や介護サービスと一体となった「看取りまで見据えた住まい」の確保に向けて、地元の不動産業者や医療機関とのネットワークをより強固に構築し、都の補助メニューを最大限に活用した独自モデルの構築が急務です。
第三に、Community分野においては、都が掲げる「中高生の居場所づくり」や「マンション・町会合同防災」を具現化するため、行政が主導するのではなく、住民自らが動くための「触媒」としての役割を強化すべきです。例えば、防災訓練においては、従来の形式的な避難訓練から脱却し、マンション住民が持つ専門知識を地域の防災力に組み込むワークショップ形式の導入など、参加者が主体性を発揮できる仕組みを設計することが、政策の実効性を高める鍵となります。
物価高騰の影響を踏まえた取組
令和8年度予算案と令和7年度予算の規模および構成の比較
東京都の物価高騰対策における令和8年度予算案は、総額1,991億円となっており、令和7年度予算の1,671億円と比較して約320億円の大幅な増額となっています。令和7年度予算においては、令和6年度の1,619億円から微増に留まっていましたが、令和8年度予算ではより踏み込んだ財政投入が行われている点が最大の特徴です。また、令和7年度予算では「セーフティネット支援」として緊急融資などが中心に据えられていましたが、令和8年度予算では「都民生活の応援」や「賃上げ・価格転嫁対策」へと、より直接的な生活支援と経済の好循環を狙う施策へシフトしています。
都民生活の応援における直接的支援の強化
令和8年度予算案では、都民の日常生活に直結する支援策が具体化されています。特に注目すべきは、夏季の熱中症対策を兼ねた「水道料金に係る基本料金無償臨時特別措置」の導入です。これは、光熱水費の負担を軽減することで、都民がエアコンの利用を控えることなく健康に過ごせるよう、夏季4か月分の基本料金を無償とするもので、令和7年度予算のセーフティネット支援には見られなかった新しい切り口の施策です。一方で、フードパントリー緊急支援事業や住居喪失不安定就労者等へのサポートは継続されており、生活困窮層への目配りも維持されています。
中小企業支援における「収益力強化」への重点化
産業経済分野における令和8年度予算案の特色は、単なる維持から「攻め」の経営支援への転換です。令和7年度予算では「手取り時間」の創出やエンゲージメント向上といった雇用環境の整備に主眼が置かれていましたが、令和8年度予算案では「中小企業収益力強化サポート事業」や「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」といった、企業の稼ぐ力を直接的に高める施策が新規に盛り込まれています。これは、物価高騰を一時的な危機として凌ぐだけでなく、構造的な賃上げを実現するために、企業の付加価値向上を後押ししようとする都の明確な姿勢の表れと言えます。
官公需における積算単価引き上げと実効性の確保
令和8年度予算案では、公共事業等の現場におけるコスト上昇に対して、極めて現実的な対応が盛り込まれています。施設整備等に係る工事単価や労務単価の上昇を反映し、これまでの取組に加えて504億円の予算増額を確実に措置しています。令和7年度予算においても、見積方針に基づき物価上昇分をシーリングの枠外とする等の配慮はありましたが、令和8年度予算案では積算単価そのものの引き上げを明示し、価格転嫁の円滑化を官の側から主導する形となっています。これにより、受注企業の適切な賃上げ原資を確保し、地域経済の安定を図る仕組みが強化されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成の方向性を踏まえ、特別区が取り組むべき政策立案のポイントは以下の通りです。
第一に、生活支援における「健康維持」との連動です。都が実施する水道料金の基本料金無償化に合わせ、各区においては独自の福祉施策と連携し、高齢者や子育て世帯が夏季の電気代を惜しまず冷房を利用できるよう、地域見守り活動や情報発信を強化することが求められます。
第二に、中小企業支援の軸足を「資金繰り」から「生産性・収益力の向上」へ移行させることです。都の収益力強化サポート事業を補完する形で、区独自の経営相談やIT化支援を組み合わせ、地場産業が物価高騰を乗り越え、自律的に賃上げを行える体質へと改善するための伴走型支援を立案する必要があります。
第三に、区の公共調達における適切な価格転嫁の徹底です。都が工事単価や労務単価を大幅に引き上げたことを受け、各区においても独自の積算基準や契約条項を見直し、地域の建設業者やサービス業者が適正な利益を確保できるよう、官民対話を通じた単価の適正化を迅速に進めるべきです。
最後に、子育て世帯への臨時的な現金給付や物価高騰対策は、東京都の動向や国の補正予算を注視しつつ、各区の独自性を発揮できる上乗せ施策やサービス提供のあり方を検討し、機動的な予算措置を講じることが重要です。
財政規模
令和8年度予算と令和7年度予算の全体規模と財源の比較分析
令和8年度予算の一般会計総額は9兆6,530億円となり、令和7年度予算の9兆1,580億円から4,950億円、率にして5.4%増加しました。令和7年度予算が対前年度比で8.3%という大幅な伸びを示していたことと比較すると、増加のペースは緩やかになったものの、予算規模そのものは過去最大水準を更新しています。歳入の根幹をなす都税収入については、令和8年度予算では7兆3,856億円が計上されており、令和7年度予算の6兆9,296億円から6.6%の増収を見込んでいます。これは企業収益の堅調な推移による法人二税の増収が大きく寄与しており、東京都の財政基盤が極めて強固な状態で維持されていることを示しています。
政策的経費である一般歳出についても、令和8年度予算は7兆2,678億円と、令和7年度予算の6兆8,978億円から3,701億円増加しました。伸び率は5.4%と一般会計全体の伸びと一致しており、増収分を的確に政策経費へ配分する積極的な予算編成の姿勢が読み取れます。一方で、特別会計や公営企業会計を含む全会計合計では、令和8年度予算は18兆6,850億円に達し、令和7年度予算の17兆8,497億円から約8,353億円の増額となっています。
分野別の重点施策と令和8年度予算案の独自性
「人」を対象とした施策分野において、令和7年度予算と令和8年度予算では明確なトーンの変化が見られます。令和7年度予算では「子供・若者から高齢者まで全ての人への切れ目ない支援」を掲げ、全世代を対象としたセーフティネットの構築に重点が置かれていました。これに対し、令和8年度予算では「『人』の力を最大限に高める施策」へと表現が進化しています。これは、単なる福祉的な支援の枠組みを超え、個々の都民が能力を発揮し、社会の活力につなげていくという「成長の原動力」としての側面を強調したものと分析できます。
都市の安全性と持続可能性を担う「レジリエントな都市づくり」の分野では、令和7年度予算の「あらゆる脅威に対応する強靭な首都東京」という包括的な目標を継承しつつ、令和8年度予算では「都民の命と暮らしを守る」という文言が強調されています。これは、震災や風水害へのハード対策に加え、より都民の日常生活に密着した視点での防災・減災対策に重きを置く姿勢の表れです。また、「国際競争力の強化」については、両年度を通じて一貫した重点項目となっており、東京の経済的地位を世界水準で維持・向上させるための投資が継続されていることが分かります。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成の動向を踏まえ、特別区の公務員が今後の政策立案において留意すべき点は、第一に「人」への投資の質的転換です。都が掲げる「人の力を最大限に高める」という方針は、区政においても従来の給付型支援から、リスキリング支援や就労支援、多世代交流によるコミュニティの活性化など、住民の自己実現を後押しする伴走型施策へのシフトを促しています。各区の地域特性に応じ、いかにして住民の潜在能力を引き出すかという視点が、都の補助事業活用や独自の政策形成において重要となります。
第二に、強固な税収を背景とした大規模な投資継続への対応です。都税収入の伸長は、都区財政調整制度を通じて特別区の財源にも波及しますが、令和8年度予算に見られる「レジリエントな都市づくり」への重点配分は、区レベルでの老朽化対策や防災インフラ整備の加速を求めるメッセージでもあります。特に都民の「命と暮らし」に直結する避難所機能の強化や住宅の耐震化促進など、区が主体的役割を担う分野において、都の方向性に合致した具体的かつ実効性の高いプロジェクトを立案し、広域連携を強化していくことが求められます。
第三に、国際競争力の強化という大方針の中で、区がいかに独自の付加価値を生み出すかという視点です。都が推進するスタートアップ支援や観光振興、スマートシティ化の流れに対し、区が現場のニーズや歴史的・文化的資源を掛け合わせることで、東京全体の魅力を底上げするようなローカルな政策提案を行う余地が広がっています。都の予算規模の拡大を好機と捉え、区独自の課題解決と都の重点施策を合致させる「政策のリンケージ(連動)」を意識した立案作業が、今後の区政運営の質を左右すると言えます。
歳入の状況(一般会計)
都税収入の動向と内訳の変遷
都税収入については、令和8年度予算では7兆3,856億円を見込んでおり、令和7年度予算の6兆9,296億円から4,560億円の増収となっています。内訳を見ると、令和8年度予算では個人都民税が1兆4,071億円(前年度比13.0%増)と大きく伸びており、雇用・所得環境の改善が反映されています。対して令和7年度予算では、法人二税が対前年度比10.2%増と法人収益の堅調さが目立っていましたが、令和8年度予算における法人二税の伸び率は7.0%増に留まっています。
分野別の予算案の特徴:教育・子育て支援
令和8年度予算の顕著な特徴として、国庫支出金が4,937億円と前年度比16.4%(696億円)の大幅な増加を見せている点が挙げられます。これは、国による高校無償化の取組開始や、公立小学校に係る給食費負担軽減交付金の創設などが主な要因です。令和7年度予算においても鉄道の連続立体交差化などで12.0%の増となっていましたが、令和8年度予算ではより教育・子育て分野への重点的な財源配分が加速していることが分かります。
分野別の予算案の特徴:防災・都市強靱化
都市の安全性向上に向けた「東京強靱化推進基金」の活用がさらに進んでいます。令和8年度予算における繰入金は8,888億円に達し、令和7年度予算の7,297億円から1,591億円(21.8%)増加しました。令和7年度予算では繰入金の伸びは2.1%に留まっていましたが、令和8年度予算では自然災害等の危機から都民の命と暮らしを守るため、基金を積極的に活用する姿勢がより鮮明になっています。
分野別の予算案の特徴:財政運営と都債
都債の発行については、令和8年度予算では2,226億円(9.4%増)を計上しています。令和7年度予算では後年度の財政負担を考慮して発行を抑制し、対前年度比34.9%の減(2,034億円)としていましたが、令和8年度予算では必要な投資を継続しつつ、適切な発行規模を維持する方針に転換しています。一方、諸収入は中小企業制度融資に係る預託金の返還金減などにより、令和8年度予算では前年度比41.4%減と大幅に縮小しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
第一に、給食費無償化や教育費負担軽減といった「子育て支援策」の恒久化への対応です。都が国庫支出金や独自の財源を活用してこれらの施策を強化する中で、各区においては、都の補助制度を最大限活用しつつ、区独自の付加価値をどこに出すかが問われます。
第二に、防災対策のさらなる加速です。都が基金を積極的に活用し、強靱化を推進する流れに合わせ、区独自の地域防災計画と都の事業との整合性を高め、連携したインフラ整備を加速させる必要があります。
第三に、税収構造の変化への注視です。個人都民税(区民税に相関)の伸びが顕著である一方、法人税収の伸びが鈍化する可能性を考慮し、中長期的な歳入見通しに基づいた慎重かつ機動的な財政運営が求められます。
歳出の状況(一般会計)
予算規模と財政構造の全体像
令和8年度予算案の一般会計歳出規模は7兆2,678億円となり、令和7年度予算の6兆8,978億円から3,701億円増加して5.4%の伸びを記録しています。令和7年度予算が前年度比8.3%増という大幅な伸びであったことと比較すると、伸び率はやや落ち着いたものの、予算規模自体は過去最高水準を更新し続けています。財政構造を見ると、令和8年度予算では経常経費が6兆1,354億円(6.9%増)と大きく膨らんでおり、これは令和7年度予算の5兆7,367億円(8.3%増)に続く高い伸びです。特筆すべきは投資的経費で、令和8年度予算は1兆1,324億円と表面上は2.5%減となっていますが、用地取得費の減などの特殊要因を除いた実質ベースでは6.4%増と、継続的なインフラ投資の姿勢が維持されています。
給与関係費と人的資本への投資
令和8年度予算における給与関係費は1兆8,733億円となり、令和7年度予算の1兆7,620億円から1,113億円(6.3%増)と大幅に増加しました。令和7年度予算での増加が389億円(2.3%増)であったことと比較すると、その増分は約3倍に達しています。この急増の主な要因は、給与改定に伴う増額に加え、定年延長に伴う退職手当の増などで、組織運営における人的コストの負担増が鮮明になっています。東京都はこれを「人」の力を最大限に高める施策として位置づけており、単なるコスト増ではなく国際競争力強化に向けた原動力として予算を配分している点が特徴です。
教育・文化分野の重点化
分野別の内訳において、令和8年度予算で最も際立った伸びを示しているのが教育と文化の分野です。令和8年度予算では1兆5,922億円(9.4%増)が計上され、令和7年度予算の1兆4,555億円(4.1%増)と比較して、増加幅が著しく拡大しています。この主な要因は、私立高校等の授業料実質無償化の継続に加え、学校給食費の負担軽減に係る経費が大きく計上されたことです。令和7年度予算では「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」などのICT基盤整備が中心でしたが、令和8年度予算ではより直接的な家計支援・子育て支援へと軸足が移っていることが分かります。
福祉・保健と生活環境の拡充
福祉と保健の分野は、令和8年度予算で1兆8,730億円(5.7%増)を確保しており、保育所等利用世帯の負担軽減事業や不妊治療費助成の拡充が主な要因となっています。令和7年度予算では10.0%増という極めて高い伸びを示していましたが、令和8年度予算でも着実な拡充が続いています。また、生活環境分野については、令和8年度予算で4,813億円(28.6%増)と驚異的な伸びを見せました。これは水道料金に係る基本料金無償臨時特別措置や、断熱・太陽光住宅の普及拡大事業などが牽引しており、物価高騰対策と脱炭素化を同時に推進する強い意志が反映されています。
都市基盤と経済対策の動向
都市の整備分野については、令和8年度予算は9,823億円(1.7%減)となっており、令和7年度予算の9,989億円(9.3%増)から減少に転じています。ただし、これは大井コンテナふ頭の再編整備に伴う用地取得費の減などの特殊要因によるもので、ホームドア整備加速緊急対策事業などは引き続き強化されています。労働と経済の分野も令和8年度予算では7,822億円(2.7%減)となっていますが、これは「SusHi Tech Global Funds」の開始による増額要因がある一方で、東京国際フォーラムの大規模改修工事の進捗に伴う経費減が影響した結果であり、施策の優先順位に基づいたメリハリのある配分が行われています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案から、特別区の公務員が政策立案において留意すべき点は主に三つあります。一つ目は、教育費負担の軽減策との連動です。都が学校給食費の負担軽減や高校授業料無償化を強力に推進する中、区独自の教育サービスや子育て支援策をいかに差別化・上乗せし、地域コミュニティの活力に繋げるかが問われます。二つ目は、生活環境分野におけるGX(グリーントランスフォーメーション)の加速です。都が断熱・太陽光住宅への支援を大幅に拡充していることを受け、区の窓口においても住民の利便性を高めるためのワンストップ相談体制や、独自の助成制度の整合性を再点検する必要があります。三つ目は、人的資源管理の再構築です。都の予算で給与関係費が急増している背景には定年延長の影響があり、これは特別区においても同様の課題です。限られた人員と予算の中で、いかにDXを推進し、多様な働き方を許容しながら行政サービスの質を維持するかという、より高度なマネジメント能力が現場の政策立案者に求められています。
持続可能な財政運営の推進
令和8年度予算と令和7年度予算の全体方針の比較
令和8年度予算では「2050年東京戦略」を軸に、人が輝き活力に溢れる都市への「進化」と「スピード感」が強調されています。これに対し、令和7年度予算では「首都防衛」や「希望あふれる東京の未来」を切り拓くことが主眼に置かれており、危機の克服から持続可能な成長、そして未来への投資へと政策のフェーズが移行していることが分かります。
事業評価と財源確保における効率性の追求
財源確保の面では、令和8年度予算において事業評価による財源確保額が1,350億円と過去最高を更新しました。令和7年度予算の1,303億円をさらに上回る規模となっており、既存事業の徹底した見直し姿勢が堅持されています。特に令和8年度予算では、56事業126億円に及ぶ補助金の執行状況の精査が新たに行われており、より踏み込んだ執行実績ベースの精査が図られている点が特徴的です。
新規事業の展開と施策の重点化
積極的に施策を展開する姿勢は共通していますが、令和8年度予算の新規事業数は657件となっており、令和7年度予算の712件と比較すると、件数自体は抑制され、より精選された事業展開となっている傾向が見て取れます。ダイバーシティ、スマートシティ、セーフシティの3つの柱を堅持しつつも、時代背景の変化を捉えた新たな視点での事業構築が令和8年度予算の主眼となっています。
財政基盤の健全性と都債・基金の運用
財政の健全性については、令和8年度予算でも都債残高を4兆2,372億円まで減少させ、令和7年度予算の4兆4,431億円からさらなる削減を実現しています。また、事業終期設定以降の財源確保額(累計10年)が約1兆8,000億円に達しており、令和7年度予算時の約9,400億円(累計9年)から飛躍的に増加している点は、将来を見据えた構造的な財政改革が加速していることを示唆しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都が「事業評価による過去最高の財源確保」を継続し、さらに補助金の執行状況精査まで踏み込んでいることから、特別区においてもエビデンスに基づいた事業見直しの徹底が不可欠です。予算編成段階でのマイナスシーリングに加え、事業の「終期(出口)」を明確に設定することで、新規政策への財源を捻出する仕組みづくりを強化すべきです。
政策の方向性としては、「首都防衛」という守りの姿勢から「人が輝く」という攻めの進化へシフトしています。特別区においては、都の2050年戦略に呼応する形で、住民一人ひとりのウェルビーイングを向上させるソフト面の施策を、デジタルの力を活用してどう具現化するかが鍵となります。
また、都債残高の抑制と基金の戦略的活用を両立させる都の手法は、今後の特別区の財政運営においても重要なモデルとなります。中長期的な財政需要を冷徹に見極めつつ、単なる継続ではなく、時代の変化に合わせた「事業のメタモルフォーゼ(変容)」を促す政策立案が、特別区の持続可能性を高めることに繋がります。
事業評価・政策評価・グループ連携事業評価の取組
事業評価制度の変遷と比較分析
令和8年度予算における事業評価は、公表件数が1,604件(令和7年度予算は1,558件)、見直し・再構築件数が1,261件(令和7年度予算は1,230件)へと増加しており、評価の網羅性がさらに高まっています。 財源確保額についても、令和7年度予算の1,303億円から令和8年度予算では1,350億円へと拡大しており、限られた財源を有効活用するための取組が着実に深化していることが読み取れます。 令和7年度予算ではAIや先端技術の活用による業務効率化やBPRに重点が置かれていましたが、令和8年度予算では新たに「2050東京戦略」に関連する505事業に対してKPI(評価指標)の設定を義務付けるなど、より成果重視の姿勢を鮮明にしています。
評価視点の高度化と外部知見の導入
令和8年度予算の特徴的な点として、外部有識者の意見を本格的に導入する重点テーマが「デジタル・広報・出えん金」の3分野に明確化されたことが挙げられます。 これは令和7年度予算における多面的な検証(効率性、実効性、専門的視点)をさらに発展させ、高度な専門知識が必要な分野に対して客観性と透明性を担保しようとする取り組みです。 特にデジタル分野では技術進歩の速さに対応するための専門家意見の聴取、広報分野ではターゲット分析や媒体選定の適正化、出えん金分野では複数年度にわたる支出の機動性と透明性の向上を目的としています。 また、新公会計手法を活用した分析についても、令和8年度予算では11件へと拡充され、分析過程を新たに公表することで、ノウハウの共有と各局への活用促進を図っています。
政策評価およびグループ連携の強化
政策評価においては、令和7年度予算から令和8年度予算にかけて、局横断的な取組を含む10事業ユニットを維持しつつ、行政データの一層の活用が図られています。 令和7年度予算では成果指標につながるサブ指標(中間指標)を新たに設定し、事業効果の体系的な把握を目指していましたが、令和8年度予算ではその枠組みを継承し、各事業の効果や課題をより定量的に把握・分析する体制を強化しています。 グループ連携事業評価については、33の評価団体を維持しながら、令和7年度予算で導入された「都民目線に立ったアウトカム目標」の設定をさらにブラッシュアップし、実績に応じた事業目標の引き上げを促すなど、成果重視のサイクルを定着させています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都が令和8年度予算で示した「成果重視の徹底」と「評価プロセスの透明化」の流れは、特別区の行政運営においても極めて重要な指針となります。 第一に、主要施策におけるKPI設定の義務化は、単なる事務執行の管理から、区民に提供される価値(アウトカム)の最大化へとシフトすることを求めています。 特別区においても、個別の事務事業が自治体の長期戦略とどのように接続しているかを再定義し、定量的な指標で進捗を管理する仕組みを強化すべきです。
第二に、デジタルや広報といった専門性の高い分野における外部有識者の活用は、内制化の限界を補完し、専門知を柔軟に取り入れる姿勢の重要性を示唆しています。 既存の慣習にとらわれない客観的な評価を政策プロセスに組み込むことで、施策の実効性を飛躍的に高めることが可能です。
第三に、新公会計手法を用いたフルコスト情報の活用と分析過程の公表は、行政コストの「見える化」を促進し、区民に対する説明責任を果たす上で不可欠な要素となります。 コストと成果を対比させた多角的な分析を庁内で共有し、次年度の予算編成や事業の見直しにダイレクトに反映させる、エビデンスに基づいた財政運営の実現が期待されます。
基金の活用
令和8年度予算と令和7年度予算の全体比較
令和8年度予算は、令和7年度予算と比較して基金の活用をより積極的に行い、都市の強靭化や脱炭素化、福祉の充実を加速させる姿勢が鮮明になっています。令和8年度予算における基金の取り崩し総額は8,381億円であり、令和7年度予算の7,144億円から約1,237億円増加しています。一方で、令和8年度末の基金残高見込みは1兆4,505億円となり、令和7年度末見込みの1兆6,570億円から減少しますが、リーマンショック前と同水準を確保することで、将来の財政需要への対応力も維持されています。
セーフ シティ(都市の強靭化)
都市の強靭化を推進する東京強靭化推進基金の活用額は、令和8年度予算では2,652億円となり、令和7年度予算の2,105億円から500億円以上増額されています。これは、激甚化する自然災害への備えや老朽化対策をより一段高いフェーズで進める意図が反映されています。令和7年度予算では東京地下鉄株式会社の株式売却益が基金に積み立てられ、将来の財源として確保されましたが、令和8年度予算ではそれらを着実に執行に回す段階に移行しています。
スマート シティ(社会資本整備・脱炭素)
社会資本等整備基金の活用額は、令和8年度予算で1,844億円となり、令和7年度予算の1,130億円から大幅に拡充されています。また、脱炭素化に向けた取り組みでは、新築建築物再生可能エネルギー設備設置等推進基金の活用が令和7年度予算の192億円から、令和8年度予算では473億円へと2倍以上に急増している点が特徴的です。令和7年度最終補正予算において、ゼロエミッション東京推進基金等に計1,000億円が積み増されたことで、令和8年度以降の脱炭素施策の強力な財源的裏付けがなされています。
ダイバーシティ(福祉先進都市の実現)
福祉先進都市実現基金の活用額は、令和8年度予算で1,369億円となり、令和7年度予算の1,250億円から微増しています。少子高齢化対策や共生社会の実現に向けた施策が継続的に強化されており、基金の残高を計画的に取り崩しながら、切れ目ない支援体制を維持する方針が見て取れます。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都が「東京強靭化推進基金」や「社会資本等整備基金」の活用を大幅に増やしていることから、特別区においてもハード整備や防災対策における都の補助・連携事業が拡大する可能性が高まっています。特に脱炭素分野では、新築建築物への再生可能エネルギー設備設置に関する基金活用が急増しているため、区独自の住宅施策や建築規制の運用において、都の制度と連動した支援策を立案することが効果的です。また、都が令和7年度最終補正予算で戦略的に基金を積み増し、令和8年度の財源を確保している手法は、単年度主義に囚われない中長期的な財政運営のモデルとなります。特別区の政策立案においても、都の基金活用状況を注視し、大規模なインフラ更新や福祉施策の継続性を確保するための財政シミュレーションが不可欠となります。
都債の活用
令和8年度予算と令和7年度予算の比較分析
令和8年度予算における都債の発行額は2,226億円であり、令和7年度予算の2,034億円と比較して192億円の増加となっています。一方で、都債残高については令和8年度予算で4兆2,372億円となり、令和7年度予算の当初予算時点における4兆4,431億円から大幅に抑制される見通しです。起債依存度は、令和7年度予算の2.2%から令和8年度予算では2.3%へと微増しているものの、引き続き国(24.2%)や地方(6.0%)と比較して極めて低い水準を維持しており、財政の健全性が高く保たれていることが分かります。
サステナブル・レジリエントファイナンスの進化
サステナブル・ファイナンスの取組規模は、令和7年度予算の約1,300億円から、令和8年度予算では約1,500億円へと拡大しています。令和7年度予算では、世界初のレジリエンスボンドを「TOKYOレジリエンスボンド」として海外市場で発行し、強靭化の取組を後押ししました。令和8年度予算では、このレジリエンスボンドを新たに国内市場向けにも発行し、国内外での合計発行額を倍増させることで、さらなる投資資金の呼び込みと「TOKYO強靭化プロジェクト」の加速を図っている点が大きな特徴です。
都民一人当たりの負担と将来世代への配慮
都民一人当たりの起債残高に注目すると、令和7年度予算時点の31万円から、令和8年度予算では30万円へと減少しています。これは平成18年度(52〜53万円)と比較すると約4割の削減となっており、長期にわたる財政再建の取組が着実に成果を上げていることを示しています。令和7年度予算では歳出の精査等により生まれた財源を活用した都債の繰上償還が実施されましたが、令和8年度予算においても将来世代への負担を考慮し、計画的に都債を活用する姿勢が継続されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算案から得られる最大の示唆は、特定の政策課題と資金調達手法を高度にリンクさせる「目的特化型ファイナンス」の戦略性です。特別区においても、防災や環境対策といった重点施策を推進する際、単なる一般財源の配分だけでなく、サステナブル・ファイナンスのような新たな市場を意識した財源確保の視点を持つことが重要となります。また、都が都債残高を抑制しながらも必要な投資を継続しているように、将来的な財政需要を見据えた起債管理と、現在必要な行政サービスの質の向上を両立させる「持続可能な行財政運営」のモデルを各区の状況に合わせて構築することが求められます。特に、レジリエンスボンドのように資金使途を明確化することで、政策の正当性と透明性を高め、住民や市場からの信頼を獲得する手法は、今後の区政運営における広報・財務戦略の有効な指針となるでしょう。
「2050東京戦略」の推進に向けた取組
予算規模の比較と全体概観
令和8年度予算案における「2050東京戦略」の推進に向けた施策は、全会計で総額約2兆8,500億円が計上されました。令和7年度予算における同戦略の事業費計上額である2兆7,554億円と比較すると、約946億円の増額となっており、都の政策展開がさらに加速していることが伺えます。令和8年度予算では、これまでの取り組みを継続するだけでなく、社会情勢の変化に応じた目標の上方修正や新規目標の策定が積極的に行われており、より具体的かつ野心的な成果を目指す姿勢が鮮明になっています。
子育て・女性活躍・働き方分野の特徴
この分野では、政策目標の大幅な前倒しが最大の特徴です。男性の育児休業取得率を90%以上とする目標達成時期を、従来の2030年から2028年へと2年前倒しし、令和8年度予算では「働く人の育児応援事業」などを通じてその達成を強力に支援しています。令和7年度予算においても「子育て」や「女性活躍」には多額の予算が配分されていましたが、令和8年度予算では単なる支援の拡充に留まらず、スピード感を持った社会構造の変革を目指す意図が読み取れます。
ゼロエミッションと都市の強靭化分野の特徴
環境および防災対策については、より数値目標が具体化され、強靭化への投資が強化されています。太陽光発電設備や家庭用蓄電池の導入量目標が大きく引き上げられたほか、令和8年度予算では新たに「最新熱中症予防研究の社会還元事業」や廃食用油による「SAF(持続可能な航空燃料)の推進」が盛り込まれました。都市の強靭化においても、浸水対策の強化(区部39地区完了)やマンションの耐震化を概ね解消するという明確な出口戦略が示されており、令和7年度予算の基盤整備から、より実行力のあるフェーズへと移行しています。
スタートアップ・デジタル・コミュニティ分野の特徴
次世代の成長産業と行政のデジタル化については、より広範な住民層を巻き込む形へと進化しています。令和8年度予算では、スタートアップの資金調達額を3兆円に増加させる高い目標を掲げつつ、デジタル分野では都民のAIリテラシーを80%以上に向上させるという新たな指標を導入しました。また、コミュニティ分野において「地域で助け合いたい」と考える都民の割合を70%まで向上させる目標を新設し、単身高齢者等の相談支援を強化するなど、デジタルとリアルの両面から社会のつながりを再構築しようとする特徴が見られます。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成の動向を踏まえ、特別区の公務員が政策を立案する上での示唆をまとめます。
第一に、時間軸の意識改革です。都が男性育休目標を前倒ししたように、従来の計画に固執せず、社会の変化に合わせて目標年度を大胆に短縮する姿勢が求められます。区独自の施策においても、2030年を見据えたバックキャスティングだけでなく、直近2〜3年でいかにインパクトを出すかという視点が重要になります。
第二に、テクノロジーの「実装」から「リテラシー向上」へのシフトです。都がAIリテラシー向上を目標に掲げたことは、行政サービスのデジタル化がインフラ整備の段階を終え、住民がそれを使いこなす段階に入ったことを示唆しています。区の政策においても、システム導入そのものではなく、住民や職員がいかにテクノロジーを「武器」にできるかという教育・普及啓発の視点が不可欠です。
第三に、コミュニティの「互助」を数値化し、具体策に落とし込むアプローチです。都が「助け合い」の意識を数値目標化したことは、曖昧になりがちな地域コミュニティ施策に対し、明確な成果指標(KPI)を求める流れを加速させます。区においては、地域活動の活発化を精神論で終わらせず、具体的な相談支援事業や活動支援事業と連動させ、住民の幸福度や安心感を客観的に評価する仕組みづくりが重要となります。
国による地方税制度の改悪について
令和8年度予算案と令和7年度予算案の全体比較
令和8年度予算において、地方税制度の見直しに伴う都収益の減収影響額は1兆5,993億円に達しており、令和7年度予算の1兆4,654億円と比較して約1,339億円のマイナス幅が拡大しています。 平成20年度以降の累計影響額についても、令和7年度末見込みの10.8兆円から、令和8年度末には12.6兆円へと膨れ上がっています。 都民1人当たりに換算すると年間約10万円、累計では約90万円の税金が国に奪われている計算となり、都の財政基盤に対する圧力は前年度以上に強まっています。 都の一般財源額は人口1人当たりで比較すると全国平均と同水準であり、決して過剰な財源を保有しているわけではないという都の立場がより鮮明に示されています。
地方法人課税の不合理な見直しによる分野別影響
法人事業税の一部国税化による影響額は、令和8年度予算で7,805億円の減収となっており、令和7年度予算の7,299億円から拡大しています。 また、法人住民税の国税化(地方法人税)に伴う影響も、令和7年度予算の7,965億円に対し、令和8年度予算では8,750億円と大幅な減収要因となっています。 国は「東京都だけ法人二税の収益が伸びている」と主張していますが、都の分析によれば令和5年度と6年度の伸び率は47都道府県中34位の7%に留まっており、国の主張が事実に基づかないものであることが改めて指摘されています。
固定資産税の分配に向けた国の動向と都の対抗姿勢
令和8年度予算案の資料において最も警戒すべき点は、令和8年度与党税制改正大綱において「特別区の土地に係る固定資産税」の分配検討が明記されたことです。 これは「著しく税収が偏在している状況」を背景に、令和9年度以降の税制改正において結論を得るものとされています。 都はこれに対し、固定資産税は行政サービスの対価として負担される市町村税であり、所在地以外の自治体に分配することは受益関係を歪め、地方税制の根幹を否定するものであると強く批判しています。 令和7年度予算時点では「不合理な見直し」としての言及に留まっていましたが、令和8年度予算案では特別区の固有財源を直接的なターゲットとした具体的な脅威として浮上しています。
利子割清算制度の導入とデータに基づく反論
令和8年度予算に関連して、国は極めて少ないサンプル調査に基づき、都道県民税利子割の清算制度を強行しようとしています。 国の調査サンプルは東京23区でわずか210世帯(0.0028%)という不十分なものであり、都はこれを「実態を無視した拙速な制度改正」であると断じています。 令和7年度予算案の段階ではこの制度改正の具体化は進んでいませんでしたが、令和8年度予算案では、不十分な分析のまま結論ありきで導入が進められることへの危機感が強調されています。
子育て支援施策と行政サービス格差論への対応
国は都独自の「018サポート」や「高校授業料の実質無償化」などの施策を「行政サービス格差」と批判していますが、都はこれらが地域の実情に応じた必要な施策であると主張しています。 実際、都の先駆的な取り組みに追随する形で、国も児童手当の所得制限撤廃や高校無償化の検討を令和8年度から実施しようとしており、都の施策が全国的な子育て支援の充実につながっているという実績が示されています。 令和7年度予算時から続く都と国の攻防は、単なる財源の奪い合いではなく、自治体が実情に応じて施策を展開する「地方自治の基本」を問う論争へと深化しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
特別区の公務員は、令和9年度以降の税制改正において「特別区の固定資産税」が狙い撃ちされるリスクを最優先課題として認識すべきです。
第一に、自区の財政力の高さを理由とした「財源の偏在」論理に対抗するため、大都市特有の膨大な財政需要(老朽化対策や高度な住民ニーズ等)を論理的に定量化し、現行の基準財政需要額では実態を反映しきれていないことをエビデンスとして蓄積する必要があります。
第二に、利子割清算制度の例に見られるように、不十分な統計データが制度改悪の根拠とされるリスクがあるため、区独自の詳細なデータ収集と分析を行い、国の主張の矛盾を突く理論武装が求められます。
第三に、独自の子育て支援や先進的な政策を「格差」として批判されないよう、それらの施策が国の政策を牽引し、最終的に国民全体の利益(国益)に寄与しているというストーリーを、都と連携して積極的に発信していく姿勢が重要です。
主要な施策
8つの柱
令和8年度予算案と令和7年度予算案の比較分析
令和8年度予算案の総額規模は、令和7年度予算案と比較して多くの主要分野で増額されており、特に「子供・若者」や「スマート東京」に関連する予算が大幅に拡充されていることが見て取れます。令和7年度予算案が「ダイバーシティ」「スマート シティ」「セーフ シティ」の進化を土台としていたのに対し、令和8年度予算案では一人ひとりの「叶えたい」を支えるという、より個人の幸福や自己実現にフォーカスした姿勢が鮮明になっています。
子供・若者施策の圧倒的な拡充
令和8年度予算において最も顕著な特徴は、第Iの柱である「子供・若者」分野の予算が、令和7年度予算の6,103億円から1兆2,479億円へと、ほぼ倍増している点です。特に「すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び育つ教育の推進」には5,093億円が投じられており、令和7年度予算の797億円から飛躍的な増額となっています。これは、義務教育段階から高等教育、さらには個別の教育ニーズへの対応まで、東京都がこれまで以上に踏み込んだ財政投入を行うことを示唆しています。
「スマート東京」と「シン・トセイ」の加速
第VIIの柱である「スマート東京」「シン・トセイ」の推進においても、令和8年度予算は4,430億円を計上し、令和7年度予算の2,347億円から約1.9倍の規模へと拡大しています。令和7年度予算ではデジタル基盤の整備に重点が置かれていましたが、令和8年度予算ではその実装をさらに進め、都庁自らの構造改革(シン・トセイ)と連動させることで、都民サービスの質的向上を一段と加速させる姿勢が強調されています。
都市の成長と成熟の追求
第IVの柱については、令和7年度予算の「世界を刺激し心を潤す洗練された魅力にあふれる都市(3,238億円)」から、令和8年度予算では「憩いと潤いに満ち、世界を惹きつける成長と成熟が両立した都市(4,737億円)」へと、予算規模および施策の幅が広がっています。特に「人が輝き魅力あふれる成熟都市の実現」に向けた予算が、令和7年度予算の1,620億円から3,376億円へと倍増しており、インフラ整備のみならず、都市のソフトパワーを高める施策へのシフトが鮮明です。
環境および安全・安心施策の質的転換
環境施策(第Vの柱)では、令和7年度予算の3,011億円から令和8年度予算の3,880億円へと増額され、ゼロエミッションの実現に向けた取り組みが継続・強化されています。一方、安全・安心(第VIの柱)の予算は、令和7年度予算の8,571億円に対し、令和8年度予算は8,425億円と、総額では微減しているものの、施策の内訳が再編されています。具体的には、医療体制の確保や地域の防犯力の向上など、より都民の生活に密着した視点での予算配分がなされていることが特徴です。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成方針の大幅な転換を踏まえ、特別区の公務員は以下の3点に留意して政策立案を行うべきです。
第一に、子供・教育分野における都の巨額予算を、区の独自施策のレバレッジとして活用することです。特に教育推進予算が大幅に増額されているため、都の補助事業を最大限に引き出しつつ、区の特性に応じたきめ細かな教育・子育て支援の充実を図る好機といえます。
第二に、デジタル変革の深化への対応です。都の「スマート東京」予算の倍増は、区市町村に対するデジタル実装の支援や連携の強化を意味します。単なる事務効率化に留まらず、都のインフラやデータを活用して、住民サービスをどのように高度化させるかという視点でのグランドデザインが求められます。
第三に、都市の「成熟」と「レジリエンス」の融合です。都は成熟都市としての魅力を高める一方で、生活密着型の安全対策を重視しています。区においても、観光や賑わいの創出といった「攻め」の施策と、地域医療や防犯といった「守り」の施策を、都の予算の方向性と同期させながら、より具体性を持って地域社会に実装していく柔軟な姿勢が不可欠です。
Ⅰ 一人ひとりの「叶えたい」を支え、子供・若者の笑顔があふれる都市:1兆2,479億円
「チルドレンファーストの社会」実現に向けた施策の強化
予算規模と全体方針の比較分析
東京都の子供政策に関する予算は、令和7年度予算の約2.0兆円から令和8年度予算では約2.2兆円へと、2,000億円規模の大幅な拡充が図られました。令和7年度予算においては、第1子からの保育料無償化や学校給食費の無償化、高校授業料の実質無償化といった「教育・子育ての負担軽減」というコスト面での支援が主眼に置かれていました。これに対し、令和8年度予算では、出生数の下げ止まりの兆しを捉え、出会いや結婚から学齢期以降までを「切れ目のないシームレスな支援」で繋ぐという、より包括的かつ攻めの姿勢へと転換している点が大きな特徴です。
出会い・結婚および妊娠・出産分野の重点化
令和8年度予算では、特に「出会い・結婚」のフェーズにおける施策が際立っています。令和8年を「結婚のきっかけにしたい特別な1年に」と位置づけ、結婚おうえんキャンペーンを展開するなど、個人のライフデザインに踏み込んだ支援を強化しています。令和7年度予算でも無痛分娩費用助成の開始など出産支援はありましたが、令和8年度予算では不妊治療支援やプレコンセプションケア(将来の妊娠に向けた健康管理)といった、妊娠前からの「予見的支援」に予算が重点配分されており、少子化対策の起点となるフェーズをより手前に引き込んでいることが分かります。
乳幼児期から学齢期における経済的支援の深化
令和7年度予算で実施された0〜2歳児の第1子保育料無償化や、所得制限のない乳幼児医療費助成等の施策は、令和8年度予算においても継続・定着しています。その上で、令和8年度予算では「子育て応援+(プラス)」として、令和7年度補正予算を活用し、0〜14歳の子供たちへ一人当たり1万1千円を1回支給するなどの追加措置が盛り込まれました。また、018サポート(月額5千円支給)などの既存施策を基盤としつつ、赤ちゃんファースト+(プラス)による3万円の追加支援など、物価高騰や実質賃金の状況を踏まえた機動的な現金・給付支援が強化されている点が令和8年度の独自性です。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
都の予算方針が「負担軽減」から「ライフステージ全般の伴走型支援」へと進化していることを踏まえ、特別区においては以下の3点に留意した政策立案が求められます。
第一に、都が注力する「出会い・結婚」や「プレコンセプションケア」といった新しいフェーズの施策に対し、区独自の地域特性を活かしたアプローチを検討することです。都の広域的なキャンペーンに対し、区はより身近な相談窓口の設置や、地域のコミュニティを活かしたマッチング支援など、現場に近い立場での補完的な役割が期待されます。
第二に、都の現金給付施策(018サポートや子育て応援+など)との事務的な連携と、それらによって浮いた家庭の余力をどう質の高い行政サービス(教育環境の整備や放課後の居場所づくり等)に繋げるかという視点です。経済的支援が都主導で進む中、区はハード・ソフト両面での「子育ての質の向上」に予算を重点化する余地が生まれます。
第三に、シームレスな支援を実現するためのデータ連携と相談体制の構築です。都の予算が示す「切れ目のない支援」を実効性のあるものにするためには、妊娠届け出から就学後のフォローまで、区が保有する情報を一貫して管理し、プッシュ型で支援を届ける仕組みづくりが不可欠となります。都の「ファミリー・アテンダント」等の施策と足並みを揃え、区独自の伴走支援を強化することが、住民満足度の向上に直結します。
1 望む人の出会い・結婚、妊娠・出産、子育てをシームレスに支援:7,545億円
妊娠・出産に関する包括的な支援体制の拡充
令和8年度予算においては、安全・安心な妊娠・出産への支援等に342億円が計上され、令和7年度予算の262億円から大幅に増額されました。特に東京ユースヘルスケア推進事業については、令和8年度予算で8億円が確保され、令和7年度予算の3億円と比較して2倍以上の規模となっています。具体的には、中高生等のユース世代を対象とした相談体制の整備に加え、妊娠・出産を考える世代に向けたプレコンセプションケアの取組が加速しています。TOKYOプレコンゼミの実施規模は、令和7年度予算の9,100人から令和8年度予算では22,000人へと大幅に拡大され、新たに大学生世代向けのセミナーや、ユースクリニックへの支援が新設されました。また、基礎疾患のある妊産婦等へのインターコンセプションケア普及啓発や、インスリンポンプ使用の自己負担額支援といった専門性の高い新規事業も盛り込まれています。
不妊治療および分娩費用の負担軽減策の抜本的強化
不妊治療費助成については、令和8年度予算で56億円が計上されており、令和7年度予算の12億円から約4.7倍という極めて高い増額率を示しています。これまで助成対象外であった保険診療分の体外受精や顕微授精に対しても、新たに自己負担額全体を対象とした支援(上限15万円)が開始される点が令和8年度予算の大きな特徴です。東京都無痛分娩費用助成等事業も、令和8年度予算では21億円となり、令和7年度予算の12億円から拡大されました。助成規模は19,000件を見込んでおり、医療従事者向けの研修実施も継続されます。卵子凍結への支援についても、令和8年度予算で10億円を維持しつつ、基礎セミナーを通年配信するなど利用者の選択肢を広げる工夫がなされています。また、令和8年度予算では新たに「産婦・乳幼児健康診査支援事業」に2億円を投じ、都内共通受診方式の導入に向けた準備が開始されるなど、健診体制の平準化も図られています。
保育料無償化と多様な保育ニーズへの対応
子育てしやすい環境づくりに向けた予算は、令和8年度予算で7,180億円に達し、令和7年度予算の6,461億円から一段と積み増されました。その中核をなす保育料等無償化事業は、令和8年度予算で1,101億円(令和7年度予算:716億円)となり、国の動向に先んじて全ての家庭に対する負担軽減を継続・強化しています。また、保育所等を利用しない未就学児を対象とした「多様な他者との関わりの機会の創出」には、令和8年度予算で73億円(令和7年度予算:47億円)が充てられ、国の「こども誰でも通園制度」を上回る都独自の利用時間設定を維持しています。ベビーシッター利用支援事業も、令和8年度予算では72億円(令和7年度予算:54億円)に増え、病児保育推進事業についても令和8年度予算で24億円(令和7年度予算:20億円)を確保し、予約システムの導入支援などを通じて利便性の向上が図られています。
学童クラブの待機児童解消と居場所の質の向上
学童クラブに関しては、令和8年度予算において待機児童解消と人材確保の両面から強力な支援が打ち出されています。東京都認証学童クラブ事業には28億円(令和7年度予算:24億円)が投じられ、土曜日の開所ニーズに合わせた柔軟な基準が新たに設定されました。特筆すべきは令和8年度予算で新設された「学童クラブ従事職員宿舎借り上げ支援事業(1億円)」であり、区市町村が経費支援を行う際の費用を都が一部負担することで、支援員の確保と定着を強力に後押しします。さらに、放課後児童支援員の処遇改善を目的とした学童クラブ事業費補助には、令和8年度予算で126億円(令和7年度予算:125億円)が継続して計上されています。子供の居場所づくりについても、朝の居場所を確保する事業が令和8年度予算で4億円(令和7年度予算:0.8億円)へと4倍以上に増額され、実施規模が100校から478校へ拡大されるなど、家庭の負担軽減に直結する施策が強化されています。
結婚への気運醸成と戦略的なマッチング支援
結婚支援分野では、令和8年が末広がりの「八」にちなんだ特別な年であると位置づけ、「令和八年 結婚おうえんキャンペーン」に23億円(令和7年度予算:9億円)という大規模な予算が配分されました。気運醸成イベントの実施回数増に加え、結婚支援マッチング事業には令和8年度予算で2億円(令和7年度予算:1億円)が計上されています。AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」の利便性を高めるため、独身証明書のオンライン取得を可能にするなどの機能強化が図られます。また、令和8年度予算で新たに「婚活関連団体と連携した婚活サポート(0.5億円)」や「官民連携キャンペーン+(2億円)」が展開されます。特に、結婚カップルへの8,888ポイント付与や、都民参加型のアイデア募集など、デジタルポイントをインセンティブとして活用した重層的な施策展開が令和8年度予算の目立った特徴です。
経済的支援と相談体制のデジタル化・多層化
0歳から18歳までを対象とした「018サポート」については、令和8年度予算で1,203億円が計上され、令和7年度予算(1,227億円)に引き続き、月額5,000円の支給による所得制限のない支援が定着しています。さらに、令和7年度最終補正予算において、物価高騰の影響を受ける0歳から14歳の子供に対し、1人当たり11,000円を支給する「子育て応援+(プラス)」に164億円が充てられ、迅速な給付が図られています。相談支援体制においては、SNS等を活用した「ギュッチャット」の予算が令和8年度予算で14億円(令和7年度予算:6億円)へと倍増し、夜間相談の延長や戦略的な広報が強化されます。また、令和8年度予算では新たに「若年層や子育て世代への戦略的な情報発信(1億円)」を計上し、都の各局が展開する施策を「叶えたいを支えたい」という共通メッセージでブランディングする取組が始まっています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案の分析から得られる示唆の第一は、経済的支援の「先回り」と「深掘り」への対応です。都が保育料無償化や不妊治療の自己負担ゼロ化といった大規模な現金・現物給付を担う中、特別区には「制度の隙間を埋める個別相談」の重要性が増しています。例えば、不妊治療の助成拡大に伴い、治療と仕事の両立に悩む区民への個別キャリア相談や、都の新設事業であるプレコンセプションケアと連動した区独自の若者向け健康相談窓口の設置などが有効です。
第二に、人材確保における「住環境支援」のモデル化です。都が学童職員への宿舎借り上げ支援を開始したことは、保育士に続き、教育・福祉分野のエッセンシャルワーカー確保が自治体経営の重要課題であることを示しています。特別区においては、都の補助制度を最大限活用しつつ、空き家対策や区営住宅の活用と組み合わせた独自の人材定着パッケージを構築することが、近隣自治体との差別化に繋がります。
第三に、デジタルポイントを介した「行政行動への動機付け」の活用です。都が結婚やイベント参加に対して東京ポイントを付与する施策を強化している点に着目し、区独自の健康ポイントやボランティアポイントを都のシステムと連携させるなど、住民の積極的な社会参加を促すインセンティブ設計を検討すべきです。
第四に、放課後および朝の時間帯における「学校施設の多目的利用」の加速です。都が朝の子供の居場所づくり予算を大幅に増やしたことは、保護者の就労環境の変化に対する強いメッセージです。区市町村としては、学校設置者としての立場を活かし、体育館や教室を放課後だけでなく「早朝」や「夏休みの午前中」に開放するための運営体制(民間委託やシルバー人材の活用等)を、都の補助金を活用して早期に構築することが求められます。
2 すべての子供の笑顔を育む、チルドレンファーストの社会の実現:1,613億円
成長に合わせた子供の育ちと安全の確保
令和8年度予算では、成長に合わせた育ちの支援等に183億円が計上されており、令和7年度予算の162億円から増額されています。主要施策である「とうきょう すくわくプログラム推進事業」は、令和7年度予算の42億円から56億円へと拡充され、支援規模も2,750園から3,850園へと大幅に拡大しています。また、令和8年度予算では新たに「学生等の通学実態等に関する調査」に0.8億円を計上し、地域や家庭ごとの通学負担の現状を多角的に把握する姿勢を強めています。安全対策の面では、令和8年度予算において新規事業「子供を事故から守る環境づくり促進事業」に1億円が投じられ、産学連携による事故予防製品の開発を後押しするなど、予防的アプローチが強化されています。情報発信についても、令和8年度予算では「Tokyo中高生Webサイト」が2億円に増額(令和7年度予算は0.9億円)されるなど、デジタルを通じたエンゲージメントの強化が図られています。
子供の視点に立った参画と居場所の創出
子供の居場所の確保に関しては、令和8年度予算で51億円が確保され、令和7年度予算の38億円から大幅な伸びを見せています。令和8年度予算の最大の特徴は、新規事業として「子供への意見聴取等の区市町村支援事業」に2億円が充てられた点であり、自治体による意見聴取の実施やファシリテーター育成に対し、1年目は10/10という極めて高い補助率を設定しています。また、居場所づくりのトレンドとして、令和8年度予算では「中高生の地域における居場所づくり」に6億円、「子供食堂等居場所支援事業」に5億円が新たに計上されました。これらは令和7年度予算における「地域における多様な居場所確保事業(0.9億円)」等を大きく発展させたものであり、多機能センター型や拠点型など、多様なニーズに応えるハード・ソフト両面の整備が本格化しています。さらに「子供の未来を育むプレーパーク整備促進事業(3億円)」も新規に盛り込まれ、屋外の遊び場創出にも力が入れられています。
困難を抱える子供への相談・支援体制の充実
不登校やメンタルヘルスの課題に対し、令和8年度予算はエビデンスに基づいた深掘りを進めています。新規事業として「思春期メンタルヘルス増進プログラム共同開発事業(1億円)」や「子供の日常の過ごし方等調査(0.9億円)」が計上され、認知行動療法に基づく予防プログラムの開発や、ネット・SNS利用状況が子供に与える影響の継続調査が始まります。学校内の支援体制については、令和7年度予算で新規導入された「教育相談主任の設置(0.1億円)」や「エデュケーション・アシスタントの活用(0.8億円)」が継続されるとともに、令和8年度予算では「学齢期の子育ち(多様な学びの場支援事業)」が24億円(令和7年度予算は18億円)に増額されています。これにより、フリースクール等の利用者助成や、幼稚園・保育所から小学校への移行期ガイドブック作成など、切れ目のない支援が強化されています。また、経済的困難を抱える家庭への「受験生チャレンジ支援貸付事業」については、令和7年度予算と同様に53億円が確保され、着実な支援が継続されています。
社会的養育の基盤強化と環境整備
社会的養育の分野では、インフラ整備と人材の質的向上の両面に巨額の予算が投じられています。令和8年度予算では、墨田、町田、西多摩における新たな児童相談所の設置準備経費として計1.2億円が新規に計上され、都内全域の体制強化が加速しています。特筆すべきは「一時保護体制強化」の拡充であり、令和7年度予算の1億円から、令和8年度予算では5億円へと一躍増額され、看護師の派遣や入所調整システムの開発が盛り込まれました。社会的養護の受け皿については、令和8年度予算で「養育家庭等(里親家庭への委託経費)」が16億円(令和7年度予算は12億円)に、「社会的養護自立支援拠点事業(ふらっとホーム事業)」が4億円(令和7年度予算は2億円)に、それぞれ拡充されています。ヤングケアラー支援に関しても、令和7年度予算で構築されたオンラインサロン等の支援枠組みを維持しつつ、令和8年度予算では新たに「若者ケアラー調査(9百万円)」を実施し、18歳から39歳までの実態把握に乗り出すなど、支援対象の拡大が図られています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案を分析すると、特別区が取り組むべき政策立案の方向性が明確になります。第一に、東京都が「子供への意見聴取」に対して10/10の補助率を提示している点を捉え、区独自の子供基本条例の実効性を高める仕組みづくりを急ぐべきです。単なるアンケートに留まらず、中高生が予算提案を行うような「参加型予算」の導入が、都のトレンドに合致した施策となります。第二に、居場所づくりにおいて「多機能型」や「拠点型」への高額補助が新設されていることから、既存の児童館や放課後子供教室を再編し、中高生や保護者が日常的に集える複合的なハブへと転換する計画が求められます。第三に、ヤングケアラーや不登校対策において、都が「調査」や「プログラム開発」を重視している点は重要です。区の現場で得られる個別事例をデータ化し、都の調査と連携させることで、エビデンスに基づいた個別最適な支援メニューを構築することが、これからの自治体運営の鍵となります。都の「新」事業を先行して区のモデル事業に落とし込み、積極的な財政出動を引き出す戦略的なアプローチが推奨されます。
3 すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び育つ教育の推進:5,093億円
すべての子供が将来への希望を持って、自ら伸び育つ教育の推進に関する比較分析
令和8年度予算は総額5,093億円となり、令和7年度予算の4,262億円から約831億円という大幅な増額となっています。令和7年度予算では「Tokyo IBL Project(11億円・新)」や「LMSの導入(0.8億円・新)」など、教育のデジタル化や探究学習の基盤整備に重点が置かれていました。これに対し令和8年度予算では、整備された基盤を活かした「実学」と「負担軽減」へのシフトが鮮明です。特に「Neo工科高校改革プロジェクト(5億円・新)」や、生成AI等を活用した「AI・デジタル人材の育成(2億円・新)」は、令和7年度予算における「生成AIの活用(9億円)」をより専門教育へと特化・深化させたものと評価できます。
都立高校の魅力づくりとグローバル人材育成の刷新
都立高校関連予算は、令和7年度予算の164億円から令和8年度予算では227億円へと拡充されました。令和7年度予算では「英語でジョブチャレンジ(0.3億円・新)」などの短期就業体験が主でしたが、令和8年度予算では「都立高等学校海外留学等支援事業(4億円・新)」を創設し、192名規模での3週間留学を支援するなど、体験の質と量を圧倒的に高めています。また、令和7年度予算で開始された「海外大学進学支援(0.5億円)」は、令和8年度予算において「海外大学進学支援制度の創設に向けた支援スキーム等検討事業(0.1億円・新)」を加え、私立高校も視野に入れた全方位的なグローバル支援へと拡大しています。さらに、「都立学校の部活動特別強化プロジェクト(7億円・新)」や「施設集中整備強化事業(17億円・新)」により、ソフト・ハード両面から生徒の多様な可能性を伸ばす環境整備を加速させています。
多様なニーズへの対応とインクルーシブ教育の深化
多様化する児童・生徒への対応予算は、令和7年度予算の218億円から令和8年度予算では246億円に増額されました。令和7年度予算では「視覚障害特別支援学校における歩行訓練士の活用(700万円・新)」など、各校単位の専門性向上を図ってきました。令和8年度予算では一歩踏み込み、「都立高校における障害のある生徒への支援体制の構築(2億円・新)」としてインクルーシブ教育推進教員を設置するなど、普通高校での受け入れ体制を制度化しています。また、外国籍生徒の増加を背景に「日本語指導の充実(1億円・新)」を新規に盛り込み、伝統文化の伝達を組み合わせた独自の教育支援を開始します。「公立小中学校における特別支援学校分教室設置に向けた仕組みづくり(0.2億円・新)」は、特別区を含む地域全体の教育格差是正に向けた重要な一歩となります。
学校現場の働き方改革とDX環境の劇的拡充
働き方改革関連予算は、令和7年度予算の379億円から令和8年度予算では466億円へと大幅な伸びを見せています。令和7年度予算では「コンサルタントを活用した業務改革支援(3億円・新)」や「校務のデジタル化(1億円・新)」が中心でした。令和8年度予算では、これらを「区市町村における次世代校務DX環境の整備(9億円)」として、令和7年度予算(0.5億円)から約18倍という極めて大規模な自治体支援へと発展させています。また、令和7年度予算では検証段階であった「教職員へのスマホ貸与(0.9億円)」は、令和8年度予算では8億円を計上し、全部立学校の全教職員への配布を完了させる計画です。「公立中学校における部活動の拠点化事業(0.6億円・新)」による地域移行の推進も、教員の負担軽減に向けた不可欠な施策として位置づけられています。
学校教育環境の充実と空調設備の刷新
教育環境整備予算は、令和7年度予算の3,500億円から令和8年度予算では4,158億円へと膨らんでいます。令和7年度予算では「公立学校施設空調設置支援事業(7億円)」として特別教室等の整備を継続していましたが、令和8年度予算では「公立学校普通教室空調更新支援事業(55億円・新)」を創設しました。これは令和8年度から10年度までの3年間で、耐用年数を経過した普通教室の空調を断熱化とセットで更新する市区町村を支援するものであり、補助率も国補助以外を都が支援することで市区町村負担を2分の1に抑える手厚い内容となっています。また、「学校の教材等の共同利用等に関する調査(0.3億円・新)」により、義務教育段階での海外事例を含めた効率的なリソース活用を模索する姿勢も示されています。
経済的負担の軽減と給食費支援の恒久化
家計への直接支援は、令和8年度予算における最大の注目点です。令和7年度予算で272億円であった「給食費負担軽減」は、令和8年度予算では502億円へとほぼ倍増しました。令和7年度予算から実施されている都と区市町村の2分の1ずつの負担割合を維持しつつ、国の交付金を活用した新たな支援スキームへと変更し、特別区を含む自治体負担の安定化を図っています。また、所得制限を撤廃した「都立高校等の授業料無償化」は、令和7年度予算の106億円から令和8年度予算では155億円、私立高校分も合わせると1,000億円を超える規模へと拡充されました。さらに「私立中学校等授業料保護者負担軽減臨時特別事業費補助(14億円・新)」を創設し、私立中学に通う保護者へも所得に関わらず2万円を措置するなど、支援の対象を全方位に広げています。
都民の安全・安心を支える教育の普及
教育現場を通じた社会課題へのアプローチも強化されています。令和8年度予算では新たに「交通安全教育の充実(0.8億円・新)」を掲げ、自転車安全学習アプリ「輪トレ」を活用した出前講座を都立高校で実施します。また、「中学生等への救命教育の普及促進(0.6億円・新)」により、公立中学校において応急手当の知識・技術習得を推進します。これらは令和7年度予算には見られなかった項目であり、学校を「知識を学ぶ場」から「生きる力を育む拠点」として再定義する東京都の意志が読み取れます。私立学校に対しても「安全対策促進事業費補助(2億円)」を継続し、非常用食品の更新経費を補助するなど、公私を問わない安全網の構築を図っています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算は、特別区の公務員の皆様にとって「実行」と「連携」のフェーズへの移行を強く示唆しています。第一に、校務DX環境整備予算の18倍増に見られるように、都は自治体間のシステム共通化と教員の働き方改革に本腰を入れています。各区独自のシステム維持から、都のプラットフォームを活用した広域連携への転換を検討すべき時期に来ています。第二に、空調設備の更新支援(55億円・新)です。断熱化をセットとした高効率化は、脱炭素社会の実現と児童・生徒の健康管理を両立する絶好の機会であり、3年間の集中実施期間に合わせた区独自の整備計画の再構築が求められます。第三に、給食費負担軽減のスキーム変更です。都の支援が恒久化・強化される中で、浮いた財源を食育の質の向上や、令和8年度予算で都が重点化している「不登校対応(チャレンジクラスの拡充)」や「日本語指導の充実」といった、よりきめ細やかな個別最適化支援に再投資する視点が不可欠です。都の「Neo工科高校」や「AI人材育成」という潮流に合わせ、区立中学校段階でのキャリア教育やITリテラシー教育の接続をいかに図るかが、今後の自治体間競争における教育の魅力差に直結するでしょう。
4 将来を担う若者が希望に満ち、描いた夢を叶えられる東京:90億円
将来を担う若者のチャレンジを徹底的にサポート
令和8年度予算案における若者支援の総額は90億円となっており、令和7年度予算の57億円から約1.6倍へと大幅に拡充されています。これは、都が若者への投資を将来の東京の成長の源泉と位置づけていることを強く示しています。
「東京グローバル・パスポート【子供】」については、令和8年度予算で10億円が計上されました。令和7年度予算の1億円と比較して10倍の規模となり、大学生等の海外留学に対する都独自の費用支援と研修体制が本格化します。支援規模も600名(短期500名、中長期100名)と具体的になり、若者の外向き志向を強力に後押しする姿勢が鮮明です。
(新)若者チャレンジ応援プログラム(世界とつながるロールモデルセッション)【子供】は、令和8年度予算で0.4億円が新規計上された重要施策です。高校生や大学生が多様な分野のロールモデルと交流する場を創出し、グローバルな舞台での活躍を促すきっかけを提供します。
東京都立大学に関連する予算では、新学部開設に向けた準備と英語学位プログラムの拡充に令和8年度予算で12億円(令和7年度予算は9億円)を充てており、国際化への投資を継続・強化しています。
(新)東京都立大学における国際化推進に向けた教育環境の整備【総務】は、令和8年度予算で1億円が新規に盛り込まれました。留学生と日本人学生が共に学ぶ新棟や国際交流会館の整備・改修を進め、ハード面からも国際化を加速させます。
博士人材の活用については、令和8年度予算で「博士人材活用プロジェクト」の先行実施に0.8億円(令和7年度予算は0.2億円)を計上しています。加えて、(新)スタートアップ等における博士人材活用支援事業【産労】として0.5億円を新規に計上し、スタートアップ企業のイノベーション創出と博士人材のキャリア支援を直結させる新たなトレンドが示されました。
奨学金返還支援による人材確保の強化
社会を支える不可欠な人材(エッセンシャルワーカー)の確保に向けた奨学金返還支援は、対象職種と予算規模の両面で飛躍的に拡充されています。
教員向け支援については、令和8年度予算で2億円を計上しました。令和7年度予算の0.3億円から大幅な増額となっており、都内の公立・私立学校教員の経済的負担を軽減し、教育人材を確保する姿勢が際立っています。
都・市区町村の技術系職員向け支援は、令和8年度予算で0.7億円(令和7年度予算は0.2億円)に増額されました。都市の強靭化を担う土木・建築等の技術職確保は、地方自治体共通の課題であり、広域自治体としての都が支援を強めています。
社会的養護職員等への支援も、令和8年度予算で0.5億円(令和7年度予算は0.4億円)と着実に継続・拡充されています。
(新)警察職員向け奨学金返還支援【警視】(令和8年度予算:0.3億円)および(新)消防職員向け奨学金返還支援【消防】(令和8年度予算:0.2億円)が新規に創設されました。治安維持や防災の要となる人材確保のため、代理返還スキームを活用した最大300万円(大学院卒は450万円)の支援が令和8年4月採用者から開始されます。これは、公の秩序を守る職種における人材競争力の強化を意図したものです。
様々な困難を抱える若者を切れ目なく支援
困難な状況にある若者への支援は、令和8年度予算で44億円となり、令和7年度予算の37億円から増額されました。
犯罪被害リスクを抱える青少年への支援(歌舞伎町・トー横界隈等の諸問題対応)は、令和8年度予算で4億円が計上されています。令和7年度予算の5億円からは微減しているものの、関係機関との連携や常設相談窓口「きみまも@歌舞伎町」の運営など、実効性のある取組が継続されます。
子供若者シェルター・相談支援事業は令和8年度予算で0.8億円(令和7年度予算と同額)、官民協働等女性支援事業は令和8年度予算で2億円(令和7年度予算と同額)となっており、居場所の確保やアウトリーチ支援が安定的に実施されます。
(新)若者自殺対策強化事業【保医】は、令和8年度予算で0.4億円が新規計上されました。若者の興味を惹きやすいアニメーション動画や漫画を活用した普及啓発を行うなど、広報手法をアップデートしている点が特徴です。
東京都自殺相談ダイヤルについては、令和8年度予算で2億円(令和7年度予算は1億円)と倍増しています。回線や人員体制の拡充に加え、相談情報の一元管理や連携システムの構築により、DXを通じた支援の質向上が図られています。
薬物乱用防止の普及啓発は、令和8年度予算で0.2億円(令和7年度予算は0.1億円)に拡充されました。薬局・薬店を通じた直接アプローチにより、医薬品の過剰摂取(オーバードーズ)防止を強化する方針が示されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成の動向を踏まえ、特別区の公務員が政策を立案する上での重要なポイントは以下の3点に集約されます。
第一に、若年層の「人材確保」における競争激化への対応です。都が教員、技術職、警察・消防といった職種に対し、奨学金返還支援という極めて実利的な手法でアプローチを強めている点は見逃せません。各区においても、保育士や介護職、あるいは区独自の技術職員確保において、同様の金銭的インセンティブを伴う支援策、あるいは都の制度と補完し合う上乗せ施策の検討が必要となります。
第二に、若者の相談支援における「DXとアウトリーチの融合」です。都が自殺相談において情報管理システムを刷新し、普及啓発にアニメ・漫画を取り入れる姿勢は、既存の相談窓口ではリーチできない層を意識したものです。区の施策においても、SNSの活用やデータ連携による「待ち」ではない支援体制の構築、そして若者の文化に即したコミュニケーションデザインが求められます。
第三に、「グローバルとローカルの接続」です。都が大規模な予算を投じて若者の海外留学を推進する一方で、帰国後あるいは地域に留まる若者が、その経験や意欲を区政や地域課題の解決に活かせる場があるかが問われます。グローバルな視点を持つ若者を地域コミュニティやスタートアップ支援、多文化共生施策の担い手として取り込むための受け皿づくりが、区レベルでの政策立案において重要性を増すでしょう。
Ⅱ 誰もが輝き、自らの可能性を存分に発揮できる都市:2,027億円
1 性別にとらわれず、誰もが自らの人生を選択できる社会:241億円
女性の活躍推進に向けたマインドチェンジと選択肢の拡大
令和8年度予算では、241億円(令和7年度予算は176億円)が計上されており、大幅な増額となっています。令和8年7月に施行される女性活躍推進条例の実効性を高めることが主眼に置かれています。令和8年度予算における新規事業として、非正規雇用等の女性を対象とした「女性向けキャリアチェンジ・キャリアアップ支援事業(3億円)」や、WEB相談を強化した「女性しごと応援ナビPlus(1億円)」が導入されています。令和7年度予算で新規導入された「女性活躍の輪(WA)」の戦略的展開は、令和8年度予算では3億円(令和7年度予算は2億円)へと拡充され、プラットフォームの整備やアーカイブ動画の発信などが強化されています。無意識の思い込みを解消するための「企業等と連携したアンコンシャス・バイアス普及啓発企画(0.2億円)」が令和8年度予算で新たに予算化されました。地域の課題解決を支援する「地域の底力発展事業助成」は、令和8年度予算で4億円(令和7年度予算は3億円)となり、女性や子育て応援を重点化する拡充が行われています。スタートアップ・エコシステムにおける女性活躍推進事業は、令和8年度予算で2億円(令和7年度予算は1億円)となり、女性経営者等の活躍促進事業も2億円(令和7年度予算は0.9億円)へと倍増しています。
企業の持続的成長と職場環境の抜本的改善
企業の持続的成長・就労環境の整備分野には、令和8年度予算で173億円(令和7年度予算は115億円)が投じられています。令和8年度予算の目玉として「女性の活躍推進に向けた職場環境改善プロジェクト(27億円)」が新規に計上されました。これは、行動計画の策定や女性従業員の処遇改善に取り組む企業に対し、最大180万円の奨励金を支給する野心的な施策です。条例の周知を図る「女性の活躍を推進する条例の普及支援事業(1億円)」も令和8年度予算の新規事業であり、都民や企業向けの啓発、相談窓口の設置が盛り込まれています。中小企業の人材確保を支援する「中小企業人材確保トータル支援事業(7億円)」が令和8年度予算で新設され、専門・中核人材の採用に対する紹介手数料の補助など、踏み込んだ支援が開始されます。建設業や運輸業など、女性の進出が遅れている現場を支援する「働く女性のための施設整備改善事業(2億円)」が令和8年度予算で新規導入されました。トイレカーやレストカーの購入費助成(最大500万円)など、インフラ面での改善を強力に推進します。働く女性のウェルネス向上事業は、令和8年度予算で1億円(令和7年度予算は0.7億円)となり、モデル事業への協力金支給などの拡充が図られています。東京都女性活躍推進大賞については、令和8年度予算で0.5億円(令和7年度予算は0.2億円)と予算を倍増させ、事業の再構築が行われています。
柔軟な働き方と「手取り時間」の創出
令和7年度予算で568億円が計上されていた柔軟で多様な働き方の推進は、令和8年度予算でも継続・強化されています。従業員のエンゲージメントを高める「手取り時間」創出・エンゲージメント向上推進事業は、令和8年度予算で34億円(令和7年度予算は30億円)に増額されました。奨励金の上限も230万円から264万円へ引き上げられています。令和8年度予算の新規事業として「働く人の育業応援事業(28億円)」が計上されました。これは、育業計画の策定や復職しやすい環境整備を行う企業に対し、基本支給額125万円に加え、男性育業などの加算項目を含め最大420万円を支給する手厚い支援です。令和7年度予算で新規導入された「企業における年収の壁突破総合対策促進事業(15億円)」や「女性管理職比率・男女間賃金格差改善促進事業(7億円)」は、令和8年度においても企業の構造改革を支える施策として引き継がれています。令和7年度予算で注目された「カスタマーハラスメント防止対策推進事業(49億円)」や「テレワークトータルサポート事業(28億円)」は、労働環境の健全化を支える基盤として定着しています。
多様な人材の活躍とリスキリングによる労働供給の強化
多様な人材の活躍推進分野では、令和7年度予算(55億円)から令和8年度予算に向けて、より実務的なスキル習得への重点移動が見られます。令和7年度予算で新規導入された「デジタルスキル習得チャレンジ支援事業(4億円)」や「DX実践人材リスキリング支援事業(4億円)」は、令和8年度においても労働生産性の向上を支える重要施策として位置付けられています。令和7年度予算の「ファンドを活用した人手不足問題の解決に取り組む中小企業支援(20億円)」など、技術やサービスを通じた構造的な人手不足解消へのアプローチが維持されています。特定の産業分野への入職を促す「産業分野別人材確保・就職促進事業(3億円)」なども、令和7年度予算から継続して実施されており、労働市場の需給ギャップ解消に向けた取り組みが続いています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
条例施行を契機とした「環境整備」へのシフト:
令和8年度予算は、従来の意識啓発(ソフト面)から、職場環境の改善や施設整備(ハード面)への具体的な投資へとフェーズが移行しています。特別区においても、周知啓発に留まらず、管内企業が直面する物理的なバリアを取り除くための設備投資支援や、処遇改善に直結する奨励金制度の設計が求められます。
官民連携による「処遇改善」の具体化:
令和8年度予算の「職場環境改善プロジェクト」に見られるように、都は企業の内部構造(賃金格差や役職登用)に踏み込む支援を強化しています。区の施策としては、より地域に密着した中小企業に対し、行動計画の策定支援から一歩踏み出し、具体的な賃金引き上げやキャリアパス構築に伴走する「伴走型支援」の重要性が高まっています。
男性育業とライフワークバランスの「金銭的裏付け」:
育業支援や「手取り時間」創出における奨励金の大幅な増額は、マインドチェンジを促すには強力なインセンティブが必要であるという認識の表れです。特別区独自の施策として、都の制度と補完し合いながら、区内事業者の実情に合わせた独自加算や、育業中の代替え要員確保に対するきめ細かな支援を検討する余地があります。
特化型支援と広域連携の活用:
建設現場へのトイレカー導入支援など、産業別の課題に特化した施策が登場しています。特別区においては、管内の主要産業(商業、サービス業、製造業など)の特性に応じたピンポイントの課題解決策を立案し、都の広域的なスキーム(DX支援やリスキリング)を区内企業が最大限活用できるよう、「繋ぎ役」としての機能を強化すべきです。
2 心豊かに暮らし、いつまでも輝けるアクティブなChōju社会の実現:1,298億円
高齢者の社会参加とフレイル予防における施策の変遷と令和8年度予算の特徴
令和8年度予算では、高齢者の社会参加とフレイル予防の分野に382億円が計上されており、令和7年度予算の395億円と比較すると微減していますが、その内容はより深化しています。 令和8年度予算における最大の特徴は、シルバーパスの利便性向上に向けた「シルバーパスの交付・ICカード化」に278億円を投じている点です。 令和7年度予算における284億円の計上から継続しつつ、令和8年度予算では令和9年度中に多摩都市モノレールへ対象を拡大することに伴うシステム改修経費が新たに盛り込まれました。 また、新規事業として「区市町村老人クラブ連合会等活動サポート事業」に0.3億円が計上され、都内の老人クラブ活動を広域的に活性化させるためのサポートデスク設置が示されています。 令和7年度予算で新規事業であった「アプリを活用した高齢者の健康づくり推進事業(令和7年度予算は8億円、令和8年度予算は5億円)」は、令和8年度予算においてスマートウォッチの活用や認知機能維持改善機能の実装など、より具体的な行動変容を促すフェーズへと移行しています。 フレイル予防の基盤となる「フレイルサポート医地域連携支援事業」も、令和7年度予算の0.1億円から令和8年度予算では0.8億円へと大幅に増額され、区市町村における多職種連携の体制整備が強化されています。
単身高齢者支援の本格化と見守り体制の重層化
高齢者の生活支援の推進分野では、令和8年度予算で79億円が確保され、令和7年度予算の48億円から大幅な増額となりました。 この背景には、単身高齢者の急増という社会課題に対し、令和8年度予算で新たに「単身高齢者等の総合相談支援事業」として2億円が計上されたことが挙げられます。 令和7年度予算では「高齢者の地域見守り拠点等整備促進事業(20億円)」が新規事業として立ち上がり、見守りアプリの機能拡充や地域連携体制の構築が主眼に置かれていました。 令和8年度予算ではこれに加え、元気なうちからの終活支援、入院時の手続支援、物品の買い出し代行など、より個別具体的かつ踏み込んだ生活課題に対応する窓口設置を区市町村に促す内容となっています。 令和7年度予算で開始された「シルバー人材センター高齢ひとり世帯等サポート事業」も継続されており、令和8年度予算では地域の見守りサポーターや民間事業者と連携した緩やかな見守りと、専門的な相談支援を組み合わせた重層的なセーフティネットの構築を目指す姿勢が鮮明になっています。
介護サービス基盤の整備と医療的ケア対応の強化
介護サービス基盤の整備に関する令和8年度予算では、特別養護老人ホーム整備費補助に90億円が計上されています。 令和7年度予算の123億円と比較して額面は減少していますが、これは令和8年度予算で新たに「特別養護老人ホームにおける医療的ケア対応促進事業」に10億円が投じられたことに象徴されるように、量的な整備から質的な機能強化へと軸足が移ったことを示しています。 この新規事業では、医師や看護師の体制確保に対する手厚い補助(週7日24時間勤務の看護師配置に1,179万円など)や、新規受入れ1人あたり10万円のインセンティブが付与されます。 また、介護老人保健施設の整備(13億円)や介護医療院の整備(13億円)についても、令和7年度予算(それぞれ7億円、5億円)から増額されており、医療ニーズの高い要介護者への対応が令和8年度予算の大きな柱となっています。 令和7年度予算で新規導入された「改修支援施設整備費補助事業」も令和8年度予算で0.2億円継続されており、老朽化した施設の改修や大規模修繕を通じた既存ストックの有効活用が図られています。
介護事業者の経営力強化と次世代人材の育成
介護人材の確保・定着策において、令和8年度予算は「経営の質」と「若年層への啓発」に強くフォーカスしています。 新規事業の「介護事業者経営力強化等サポート事業(TOKYO介護Bizサポート事業)」には5億円が投じられ、小規模事業者の事務効率化を図るための「公的バックオフィス」の開設支援や、生産性向上に向けた実行支援が行われます。 令和7年度予算では「介護保険制度における介護職員等の昇給の在り方検討調査事業(0.6億円)」などの現状分析が主でしたが、令和8年度予算では直接的な経営支援へと踏み込んでいます。 人材確保の面では、令和8年度予算で新たに「TOKYO福祉キャスト育成事業(0.3億円)」や「福祉キャリア教育プログラムの実施(0.2億円)」が開始され、都内小中学生へのVR体験等を通じた福祉の魅力発信が強化されました。 令和7年度予算で注力されていた「潜在有資格者就労促進事業(2億円)」や「外国人介護従事者活躍支援事業(令和7年度予算は3億円、令和8年度予算は4億円)」も継続・拡充されており、即戦力人材の確保と将来の担い手育成の両面で予算が配分されています。
認知症施策の深化と地域医療提供体制の構築
認知症施策の推進は、令和8年度予算で35億円(令和7年度予算は27億円)と増額傾向にあります。 令和8年度予算の最重要トピックは、新規事業の「認知症のある人への医療提供体制の強化(8億円)」です。 これにより「TOKYOオレンジ医療システム(仮称)」が創設され、二次保健医療圏ごとに拠点を指定し、精神保健福祉士等の配置やブロック会議の開催を通じて、身近な地域での受入れ体制を強固にします。 令和7年度予算では「認知症抗体医薬対応支援事業(0.7億円)」や「認知症医療の実態調査(0.3億円)」が新規事業として計上されていましたが、令和8年度予算ではこれらの調査結果を踏まえた実効的な医療ネットワークの構築へと進化しています。 また、新規事業として「認知症のある人の行方不明対策に係る普及啓発事業(800万円)」も盛り込まれ、区市町村が実施する早期発見・保護の取組を一元的な情報発信等でバックアップする体制が整えられました。 認知症の早期診断に向けたインセンティブ付与やピア相談事業も継続され、本人と家族を支える多角的な支援が令和8年度予算の特徴です。
介護離職対策と介護DXの加速度的推進
令和8年度予算において、最も劇的な予算増となったのが介護離職対策分野です。 令和7年度予算の1億円から、令和8年度予算では27億円へと飛躍的に拡大しました。 令和8年度予算の象徴的な施策は、新規事業の「ミドル層の負担軽減のための介護情報ポータル構築事業(3億円)」と「介護情報基盤活用促進事業(5億円)」です。 これらはAIチャットボットによる相談対応や要介護認定調査のDX化を推進するもので、令和7年度予算で新規事業であった「地域におけるケアプランデータ連携システム活用促進事業(4億円)」をさらに広域かつ多機能な基盤へと発展させる狙いがあります。 雇用面では、新規事業の「介護と仕事の両立推進事業(2億円)」や「育児・介護との両立のためのテレワーク活用促進事業(2億円)」により、企業側への働きかけを強めています。 さらに「介護・障害福祉サービス等事業所における育休・介護休業等両立支援事業(2億円)」が新規計上され、代替職員の雇用費用を最大200万円(都独自上乗せ)支給するなど、サービス提供側と利用側の双方から離職を防止する極めて手厚い予算編成となっています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案の比較分析から得られる特別区の政策立案への示唆として、第一に挙げられるのは「単身高齢者支援の窓口機能の強化」です。 都が新規事業で示す終活支援や緊急入院支援は、住民に最も近い区が実施主体となることが想定されます。 区の既存の地域包括支援センターや見守り拠点の機能に、いかに都の補助を活用して「法的・実務的な終活支援」を組み込むかが差別化のポイントとなります。 第二に「医療的ケア対応型の施設整備への誘導」です。 都が特養における医療的ケアのインセンティブを強化したことを受け、区内の既設施設の改修や機能転換を促す独自の加算措置や、看護職員確保のための住居支援などの補完施策を検討すべきです。 第三に「介護DXの共同導入とデータの活用」です。 都が整備する情報基盤やケアプラン連携システムを、区内の事業者が円滑に導入できるよう、区が主導して研修会や共同購入の枠組みを構築することが、地域全体の介護生産性向上に直結します。 第四に「ビジネスケアラーに対する地域コミュニティの関与」です。 都のテレワーク支援やポータル構築に合わせ、区内の商工会議所等と連携し、仕事と介護の両立を支援する地元の「ケアラー支援企業」を認定・公表するなど、地域一体となった機運醸成が重要です。 最後に、認知症の行方不明対策において、都の普及啓発事業と連動しつつ、隣接区との広域的な捜索協力ネットワークのデジタル化や、早期発見のための民間協力店舗への協力金制度などを区独自に展開することで、より実効性の高い「認知症に優しいまちづくり」が可能となります。
3 障害や言語などの壁を打破し、インクルーシブシティ東京を実現:555億円
障害者施策の全体像と環境整備の拡充
令和8年度予算における「障害や言語などの壁を打破し、インクルーシブシティ東京を実現」というテーマの予算総額は555億円となり、令和7年度予算の419億円から約1.3倍に拡大しています。特に「障害の有無にかかわらず、安心して地域で生活できる環境づくり」には、令和7年度予算の399億円を大幅に上回る503億円が投じられています。令和8年度予算の最大の特徴は、いわゆる「18歳の壁」への対応や長期休暇中の居場所づくりといった、ライフステージの移行期や特定の空白期間を埋めるための新規事業が具体化された点にあります。
地域生活を支えるソフトインフラの新規展開
令和8年度予算では、新たに「区市町村障害者の居場所づくり促進事業(10億円)」および「長期休暇期間中の障害児の居場所づくり促進事業(2億円)」が計上されました。これらは令和7年度予算にはなかった視点で、特別支援学校卒業後の生活介護サービスが15時頃に終了してしまう課題(18歳の壁)に対し、夕方以降や長期休暇の朝の時間帯の受け皿を区市町村を通じて支援するものです。また、人材確保の面でも、令和7年度予算では新規採用職員の定着支援(7百万円)に留まっていましたが、令和8年度予算では「訪問系障害福祉サービス応援事業(9億円)」や「障害福祉サービス等職員就業促進事業(5億円)」を新規に設定し、採用経費の10/10補助や資格取得費用への直接的な支援を行うなど、より踏み込んだ内容となっています。
バリアフリー化の加速と設備投資の強化
鉄道駅のホームドア整備に関しては、令和7年度予算で「ホームドア整備加速緊急対策事業(6億円)」として新規着手されたものが、令和8年度予算では76億円へと劇的に増額されています。これは整備率の目標達成を2年前倒しする方針に基づき、沿線区市の財政状況に左右されない集中的な補助へとフェーズが移行したことを示しています。また、障害者施設の整備費助成についても、令和7年度予算の29億円から令和8年度予算では46億円へと拡充されました。物価高騰を考慮した補助単価の見直しに加え、令和8年度予算では新たに180平米以上の大規模区分を新設するなど、整備の質と量の両面で令和7年度予算を上回る支援体制が組まれています。
多文化共生と外国人支援の深化
外国人と日本人が共に活躍できる社会の実現に向けた予算は、令和7年度予算の2億円から、令和8年度予算では4億円へと倍増しています。令和7年度予算では「地域日本語教育の体制づくり(0.7億円)」などが中心でしたが、令和8年度予算では「精神科医療機関における外国人対応支援事業(0.2億円)」や「在住外国人への情報発信ルートづくり事業(0.3億円)」など、より専門的かつ生活に密着した分野での新規事業が目立ちます。また、令和8年度予算では新たに「障害福祉分野における外国人介護人材受入支援事業(0.3億円)」を立ち上げ、福祉現場の人手不足解消と外国人支援をリンクさせている点が特徴的です。
共生社会実現に向けたきめ細やかな相談・支援体制
共生社会の推進に関する予算は、令和7年度予算の19億円から令和8年度予算では48億円へと大幅に増加しました。特筆すべきは、令和8年度予算で新たに「男性のための性被害相談ホットライン」の開設や「遺児見舞金の創設」など、これまで支援が届きにくかった層へのアプローチが強化されている点です。令和7年度予算でも「犯罪被害者等支援事業」として転居費用助成(0.2億円)などが行われていましたが、令和8年度予算では予算規模を3億円に拡大し、弁護士費用助成の拡充なども盛り込んでいます。さらに、地域の支え手である民生・児童委員への支援についても、令和7年度予算の14億円から令和8年度予算では42億円へと増額され、活動費の増額や企業の理解促進など、地域福祉の担い手不足に対する強い危機感が反映された予算編成となっています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算は、東京都が「制度の隙間」を埋めるための具体的なメニューを数多く提示した予算と言えます。特に「18歳の壁」対策や「長期休暇中の預かり支援」は、区市町村が実施主体となることが想定されており、特別区においては、地域の障害福祉事業所との連携を深め、都の新規補助メニューをいかに迅速に現場へ届けるかが問われます。また、ホームドア整備やバリアフリー公衆トイレへの介助ベッド設置など、都がインフラ整備の補助率を10/10や高水準に設定している項目については、区独自の財政負担を抑制しつつ、一気に都市基盤をアップデートする好機です。
政策立案にあたっては、単なる事業の継続ではなく、令和8年度予算に顕著な「人材確保への直接介入(10/10補助等)」や「孤独・孤立対策を含むきめ細やかな相談窓口の拡充」といったトレンドを取り込み、都の強力な財政支援をレバレッジとして、区独自の地域課題解決に結びつける視点が不可欠です。特に民生・児童委員の活動支援の大幅拡充は、地域コミュニティの維持に苦慮する各区にとって、活動環境を劇的に改善する重要な施策パッケージとして活用すべきでしょう。
Ⅲ 日本を力強く牽引し、世界をリードする金融・経済都市:4,320億円
1 スタートアップの力で日本の成長を東京が牽引:707億円
スタートアップ支援予算の全体規模と重点項目の変遷
令和8年度予算におけるスタートアップ支援の総額は707億円となっており、令和7年度予算の529億円から大幅に増額されました。 令和7年度予算が前年度比約15%増であったのに対し、令和8年度予算は前年度比約33%増と、東京都の成長戦略におけるスタートアップの重要度が飛躍的に高まっていることが伺えます。 特に令和7年度予算では拠点の整備やエコシステムの裾野拡大に主眼が置かれていましたが、令和8年度予算では「グローバル展開」と「大規模な資金供給」へとフェーズが明確に移行しています。
グローバル・スケールアップ支援の抜本的強化
令和8年度予算の最大の特徴は、202億円を投じて新規に創設される「SusHi Tech Global Funds」です。 令和7年度予算では「“SusHi Tech Global”プロジェクト」が2億円規模で新規事業として立ち上がったばかりでしたが、令和8年度予算では同プロジェクトに29億円を計上し、さらに官民連携ファンドを形成することで、グローバル市場を目指すスタートアップへの資金供給量を桁違いに増やしています。 令和7年度予算が「挑戦のきっかけ作り」であったのに対し、令和8年度予算は「世界で勝てる企業の育成」へと完全にシフトしています。
拠点運営とエコシステム形成の深化
拠点機能に関しては、Tokyo Innovation Base(TIB)の運営費が令和7年度予算の29億円から令和8年度予算では17億円へと減少しています。 これは令和7年度予算において拠点の立ち上げや設備整備に多額の投資が行われたためであり、令和8年度予算では機能の「深化」と「民間連携」への重点移行が見て取れます。 また、「グローバル・エコシステム連携事業」が0.8億円から4億円へと増額されており、海外のハブ機関との具体的な連携を通じたプレイヤーの交流加速が図られています。
次世代育成と人材層の拡大
令和8年度予算では、起業家精神の醸成対象がさらに若年齢層へと拡大しています。 令和7年度予算では大学生を中心とした「ITAMAE」などの事業に1億円が投じられていましたが、令和8年度予算では新規事業として「中高生アントレプレナーシップ実践事業」に0.5億円を計上しています。 若い世代が社会課題解決を自分事として捉え、実践するサイクルを創出することで、長期的な視点でのスタートアップ・エコシステムの厚みを確保しようとする意図が明確です。
行政課題解決に向けた官民協働の加速
令和8年度予算では、スタートアップの技術を行政課題の解決に直結させる「課題適応型官民協働ブーストアップ事業」が2億円で新規に計上されました。 令和7年度予算から継続されている「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト(5億円)」と合わせ、都政現場へのスタートアップ技術の導入がより迅速化されます。 特筆すべきは、令和8年度予算において政策目的随意契約認定の枠組みを活用し、募集から認定までのプロセスを早期化する仕組みが導入された点であり、行政側の調達制度そのものをスタートアップのスピード感に合わせて最適化しようとする姿勢が見られます。
創業形態の多様化と組織構築支援
令和8年度予算では、特定の研究シーズを基にVCが主導してスタートアップを創出する「分野特化型カンパニークリエーション創出支援事業」が0.7億円から3億円へと増額されました。 令和7年度予算で新規事業として着手されたこの取り組みが、令和8年度予算で本格的なモデル定着へと動いています。 一方で、令和7年度予算に計上されていた「採用・組織構築支援事業」や「大企業等の保有資産を活用したオープンイノベーション促進事業」の要素は、令和8年度予算ではより広義の支援プログラムやTIBの機能の中に統合・整理され、個別の点としての支援から面としての支援へと進化しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算変遷を踏まえると、特別区においては以下の3点を政策立案の柱とすることが肝要です。
第一に、都の「課題適応型官民協働ブーストアップ事業」に呼応し、区独自の行政課題を「スタートアップが実証・参入しやすい形」で言語化・提示することです。 都が調達制度の迅速化に踏み切ったことは、区においても従来の公募手続きを柔軟化し、スタートアップの技術を迅速に取り入れる好機となります。
第二に、アントレプレナーシップ教育の地域展開です。 都が中高生に対象を広げたことで、区の教育現場においてもキャリア教育の一環としてスタートアップの視点を取り入れる予算措置や民間連携が求められます。 地域に根ざした課題を中高生と地元のスタートアップが共に解決するプログラムは、シビックプライドの醸成にも寄与します。
第三に、都の大規模ファンド(SusHi Tech Global Funds)や拠点(TIB)の徹底活用です。 区単独で大規模な資金支援や拠点運営を行うのではなく、区内の有望企業を都のグローバル支援スキームへ繋ぐ「コネクター」としての役割に予算と人員を割くべきです。 区内中小企業とスタートアップの連携を都のオープンイノベーション支援事業に乗せることで、レバレッジの効いた施策展開が可能となります。
2 成長産業の発展を後押しし、新たなイノベーションを創出:3,632億円
成長産業の発展とイノベーションの創出
令和8年度予算では3,632億円が計上されており、令和7年度予算の3,431億円から約200億円増額されています。 令和8年度予算では、地政学リスクに対応した「グローバルサプライチェーン強化支援事業(新・3億円)」や、都内中小企業の稼ぐ力を底上げする「TRY:事業変革促進プロジェクト」が柱となっています。 特に「データセンター整備促進(新・50億円)」は、生成AIの普及に伴うインフラ強化として令和7年度予算にはなかった大規模な新規事業です。 また、令和7年度予算で開始された「航空宇宙産業への参入支援(5億円)」などの先端分野への投資を継続しつつ、令和8年度予算では「東京発ディープテック等事業化促進進事業(新・1億円)」により、より川上の技術開発から実用化までをシームレスに支援する体制が強化されています。
国際金融都市・東京の実現
令和8年度予算は135億円となり、令和7年度予算の68億円から倍増しています。 特筆すべきは「資本市場活性化ファンド(新・50億円)」の創設であり、上場前後の中堅企業への投資を促すことで、令和7年度予算には見られなかった大規模な資金供給の枠組みが構築されました。 また、決済インフラの革新として「ステーブルコイン社会実装促進事業(新・2億円)」が新たに盛り込まれ、技術的な社会実装に踏み込んでいます。 令和7年度予算では「サステナブルな社会を目指すイノベーション・金融ハブ(900万円)」などの機運醸成や拠点の整備に重点が置かれていましたが、令和8年度予算ではより具体的な市場活性化と先端技術の導入へとフェーズが移行しています。
中小企業の成長支援とDX推進
令和8年度予算の中小企業支援は3,050億円で、令和7年度予算の3,006億円から微増しています。 令和8年度予算の最大の特徴は「DX推進トータルサポート事業(新・31億円)」と「経営協力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(新・103億円)」という、生産性向上に直結する大型の新規事業です。 令和7年度予算では「価格交渉・賃上げ支援(6億円)」など、物価高騰への緊急的な対応が目立ちましたが、令和8年度予算ではデジタルの活用や経営基盤の抜本的な強化による「稼ぐ力の定着」へと戦略の軸足が移っています。 設備投資支援事業についても、令和8年度予算では191億円を確保し、令和7年度予算の144億円から大幅に拡充されています。
事業承継と技術・人材の継承
令和8年度予算では109億円を充て、令和7年度予算の48億円から2倍以上の予算規模となっています。 令和8年度予算では「ファンドを活用した小規模企業の事業承継支援(新・15億円)」や「業界別人材確保ストラテジー促進事業(新・12億円)」など、個別の企業支援から業界全体の構造維持を見据えた施策へと広がっています。 令和7年度予算では「経営統合等による産業力強化(15億円)」といったM&A支援が主軸でしたが、令和8年度予算ではこれに加え、「リスキリング普及促進事業(新・0.7億円)」による既存人材の再教育支援を新規に盛り込み、人的資本の強化を多角的に図る姿勢が鮮明になっています。
商店街の振興と公衆浴場の維持
商店街振興の予算は令和8年度予算、令和7年度予算ともに51億円で維持されていますが、内容に変化が見られます。 令和8年度予算では「商店街担い手育成支援事業(新)」が導入され、市区町村補助を含めた後継者確保に注力しています。 令和7年度予算では「商店街防災力向上(2億円)」などの安全面への投資が強調されていました。 公衆浴場支援については、令和8年度予算で「健康増進型公衆浴場改築支援事業」に6億円を投じ、令和7年度予算の2億円から3倍に増額しています。 さらに「若者向け利用促進事業(新・0.6億円)」や「東京の銭湯文化発信プロジェクト(新・0.8億円)」を新設し、ハード面の整備から若年層への文化継承というソフト面への支援を強化しているのが令和8年度予算の特徴です。
農林水産業の活性化と流通DX
令和8年度予算は262億円となり、令和7年度予算の242億円から増加しました。 令和8年度予算のトレンドは「東京抹茶プロジェクト(新・0.2億円)」のようなブランド化施策と、「豊洲市場における水産物流通等DX実証事業(新・4億円)」といった物流の効率化です。 令和7年度予算では「環境配慮型農業への転換(1億円)」や「伐採を促進する契約合意支援(4億円)」など、生産環境の整備に主眼が置かれていました。 令和8年度予算では、これまでの生産基盤の強化を前提としつつ、「農業スポットワーク活用促進事業(新・0.1億円)」などを通じて、人手不足解消に向けた労働力の柔軟な確保にも踏み込んでいます。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案の分析から得られる示唆は、第一に「産業構造の転換を伴うDX・GXへの伴走型支援」の重要性です。 都がデータセンターや資本市場といった大規模なマクロ施策を展開する中で、特別区としては、それら先端インフラを地元の小規模事業者が具体的にどう活用し、収益向上につなげるかという「ラストワンマイル」の支援が求められます。 特に、令和8年度予算で強化されたDXトータルサポートや創意工夫チャレンジ事業との連携により、区独自の補助金や専門家派遣を上乗せすることで、地域企業の生産性を劇的に高めることが可能です。
第二に、「文化とコミュニティの持続可能性を担保する後継者支援」です。 都が公衆浴場や商店街の担い手確保に予算を重点配分している流れを汲み、特別区においても単なる老朽化対策にとどまらず、若年層を呼び込むマーケティング支援や、事業承継時のマッチング支援を強化すべきです。 令和8年度予算に新設された「商店街担い手確保支援事業」は、市区町村による支援を前提としているため、区が主導して後継者候補を地域外から呼び込む施策を展開する好機となります。
第三に、「グローバル視点を取り入れた地域経済の再構築」です。 都が国際金融都市としての機能を強化し、英語対応やインターナショナルスクール支援を進める中で、特別区もまた、外国人起業家や高度専門人材にとって住みやすく働きやすい環境を整備することが、中長期的な税収基盤の安定につながります。 都の「行政手続の英語対応」などの動きに呼応し、区の窓口や広報の多言語化を一層加速させることが、東京全体の競争力向上に寄与するでしょう。
Ⅳ 憩いと潤いに満ち、世界を惹きつける成長と成熟が両立した都市:4,737億円
1 洗練された体験・価値が世界中の人々の心を潤し、惹きつける東京:482億円
観光振興・プロモーション施策の比較分析
令和8年度予算における観光施策全体は376億円であり、令和7年度予算の372億円から微増しています。 特徴的な変化として、令和8年度予算では「ナイトタイム」と「多摩・島しょ」への重点投資が鮮明になっています。 令和8年度予算の新規事業として、都内各地の夜間誘客を促進する「ライトアップ等総合支援事業」に2億円、恩賜上野動物園の夜間開園に伴う建設費に0.3億円、海上公園でのナイトツアー等を展開する「海上公園における夜間利用の促進」に5億円が計上されました。 一方、令和7年度予算では「代々木公園水景施設再整備」に15億円、「花と光のムーブメント」に10億円を投じるなど、大規模な施設整備や空間演出に重点が置かれていました。 令和8年度予算では、既存の「東京プロジェクションマッピング等促進支援事業」を3億円で継続しつつ、新たにドローンショー等を活用したイベント支援も追加しており、ハード整備からソフトコンテンツの充実へとシフトしていることが伺えます。 また、多摩・島しょ地域に対しては、令和8年度予算で「新たな観光の魅力創出支援事業」に2億円、「土産品等を活用した観光プロモーション事業」に0.5億円を新規投入し、広域的な誘客を図っています。 MICE誘致に関しては、令和8年度予算の「MICE情報発信の展開」が5億円(令和7年度予算は4億円)と増額されており、国際会議の誘致競争力を強化する姿勢が示されています。
持続可能な観光の発展に向けた比較分析
令和8年度予算において最も劇的な変化を遂げたのが「持続可能な観光の発展」分野であり、予算額は25億円と令和7年度予算の3億円から約8倍に急増しました。 令和8年度予算の目玉となる新規事業「TOKYOクリーンアップムーブメント」には11億円が投じられ、区市町村や事業者と連携した清掃活動やリサイクルステーションの導入が強力に推進されます。 訪日旅行者に対するマナー啓発も強化され、令和8年度予算では「『ごみの持ち帰り』啓発事業」に3億円、「地域の生活と調和した観光推進事業」に2億円が新規に割り当てられました。 対照的に令和7年度予算では、先端技術を活用したバリアフリー観光推進(0.6億円)や、観光事業者への受入対応力強化支援(2億円)など、個別のインフラ整備や人材確保に主眼が置かれていました。 令和8年度予算では、新たに「AIを活用した混雑等未然防止事業」に1億円を計上し、データ分析によるオーバーツーリズム対策を本格化させるとともに、若年層を対象とした「東京の観光への理解促進事業」(0.2億円)を新設するなど、観光と地域生活の共生を多角的に支援する構造へと進化しています。 適正な民泊利用の促進についても、令和8年度予算で「住宅宿泊事業ワンストップ相談窓口の運営」や「安全・安心な住宅宿泊施設利用促進事業」に各0.4億円を新規計上し、管理体制の強化が図られています。
文化創造都市への発展に向けた比較分析
文化施策の全体予算は、令和8年度予算で77億円に達し、令和7年度予算の60億円から大幅に拡充されました。 最大の変更点は「東京国際文化芸術祭」の規模拡大で、令和8年度予算では10億円(令和7年度予算は0.6億円)が計上されています。 そのコア事業として、ベイエリアを舞台とした新規の国際美術展「TOKYO ATLAS」に6億円が投入されます。 また、歩行者優先のまちづくりと連動した「KK線再生方針の実現に向けた取組」は、令和8年度予算で4億円(令和7年度予算は0.9億円)へと大幅増額されました。 令和7年度予算においては「東京お台場トリエンナーレ2025」(4億円)や「アクセシビリティ向上の取組」(5億円)が中心でしたが、令和8年度予算ではこれらを継続しつつ、新たに「ODAIBAファウンテン(仮称)の運営」に2億円を投じ、臨海副都心のランドマーク化を狙っています。 人材育成面では、令和8年度予算で「アニメーター等の育成支援」が2億円(令和7年度予算は1億円)に倍増し、新たに子供向けの体験プログラム「TOKYOカルチャーデビュー」に1億円が計上されるなど、次世代への投資が強化されています。
江戸から続く歴史・文化の発信に関する比較分析
江戸文化の発信に関連する予算は、令和8年度予算で41億円となり、令和7年度予算の31億円から積み増しされました。 令和8年度予算の新規事項として、「江戸文化に関するプロモーションの展開」に3億円、「江戸東京博物館の魅力向上」に4億円が計上されています。 特に令和8年3月の江戸東京博物館のリニューアルオープンを契機とした発信強化が、令和8年度予算の大きな特徴です。 また、「東京の伝統文化を活かした地域観光支援事業」が0.6億円で新設され、歴史的建造物等を活用したツアーへの支援が始まります。 一方、令和7年度予算では「江戸の歴史・文化の理解促進事業」(0.3億円)や「江戸を感じる観光の魅力発信」(0.6億円)など、ソフト面での基礎固めが中心でした。 令和8年度予算における「江戸東京きらりプロジェクト」は17億円(令和7年度予算は8億円)と倍以上の予算規模となり、東京の宝物である伝統技術の価値を世界へ発信する動きが加速しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算の最大の特徴は、観光の「質」と「持続可能性」への劇的なシフトです。 特別区の政策担当者にとっては、特に「TOKYOクリーンアップムーブメント」や「地域の生活と調和した観光推進事業」といった都の新規大規模事業を最大限に活用し、自区の清掃コスト削減や観光公害対策へと繋げる絶好の機会となります。 補助率が市区町村向けに3/4、特定協議会向けには4/5と非常に高く設定されているため、地域住民や商店街を巻き込んだ「清掃美化」や「マナー啓発」のプロジェクトを立案し、都の予算を呼び込むことが有効です。ナイトタイム経済については、令和7年度までの大規模施設整備から、令和8年度は上野動物園や海上公園、ライトアップ支援といった「ソフトコンテンツ」と「既存資産の活用」へと軸足が移っています。 各区においては、自区内の公園や庭園、歴史的建造物を用いた夜間イベントを、都の「ライトアップ等総合支援事業」と組み合わせて企画することで、宿泊客の消費喚起を狙うべきです。また、江戸東京博物館のリニューアルや「TOKYO ATLAS」といったベイエリア・広域的な文化発信が強化されるため、単独の区でのプロモーションに留まらず、近隣区や都との広域連携を前提とした文化・観光ルートの構築が求められます。 特に「多摩・島しょ」との連携支援も新設されているため、区部と島しょ部を繋ぐ新しい特産品開発やストーリー性のある観光施策も、令和8年度予算のトレンドに合致した有望な提案となるでしょう。
2 誰もがスポーツを楽しむ東京の実現:86億円
スポーツ振興予算の規模と重点施策の変遷
令和8年度予算案におけるスポーツ振興の全体予算は86億円(令和7年度予算は63億円)と、基礎的な振興経費が大幅に拡充されています。一方で、令和7年度予算では世界陸上およびデフリンピックという二つの大規模国際大会の開催準備経費として231億円という莫大な予算が計上されており、令和7年度は「大会開催の完遂」に、令和8年度は「大会レガシーの定着と新たなスポーツ環境への投資」に軸足が移っていることが分かります。特に「スポーツに親しめる機会を創出」する施策の予算は、令和7年度予算の27億円から令和8年度予算では49億円へと約1.8倍に増額されており、都民の日常的なスポーツ参加を促す姿勢が顕著です。
ジュニア層の裾野拡大と新たなスポーツ環境の創出
令和8年度予算では、子供たちのスポーツ参加を多角的に支援する新規事業が目立ちます。「ジュニアスポーツエール事業(新:13億円)」は、競技用具の補助や駐車場の費用支援を行うことで、物価高騰に直面する保護者の負担を軽減し、子供のスポーツ活動を後押しします。令和7年度予算で開始された「輝け!TOKYO未来アスリート応援事業(1億円)」が若手有望株の遠征費支援という「強化」に特化していたのに対し、令和8年度はより広い層の「参加継続」に配慮した予算編成となっています。また、都心の未利用空間を活用する「都心における新たなスポーツ環境創出事業(新:1億円)」も令和8年度の大きな特徴です。これはKK線などのレガシーを活用し、親子や女性が参加しやすいランニングイベント等を開催するもので、既存のスポーツ施設にとどまらない場所の創出を目指しています。併せて、オリンピアンが学校へ赴く「TOKYO推しスポーツディスカバリー事業(新:0.9億円)」により、幼少期からの「スポーツ好き」の醸成を図ります。
パラスポーツの振興とデジタル技術の社会実装
パラスポーツ分野では、組織支援の強化が鮮明になっています。「パラスポーツ団体普及活動支援事業」は、令和7年度予算の0.2億円から令和8年度予算では1億円へと大幅に拡充されました。新たに競技用具や駐車場費用への支援が加わり、団体の活動基盤を底上げします。また、継続事業である「都立特別支援学校活用促進事業」にも4億円が充てられ、身近な地域での体験機会を確保しています。デジタル技術の活用についても、フェーズが進展しています。令和7年度予算では「eスポーツの活用に関する調査・検証(新:0.4億円)」という検討段階でしたが、令和8年度予算では「都のスポーツ振興におけるeスポーツの活用(新:1億円)」として本格的な取組へと移行し、高齢者や障害者の社会参加につなげる施策を推進します。さらに、競技団体のデジタル化による事務効率化を支援する「競技団体組織基盤強化支援事業(新:1億円)」も開始され、スポーツ界全体のDXを加速させます。
国際大会のレガシー継承と次世代大会への準備
令和8年度予算は、東京2020大会から5周年、そして令和7年度に開催される世界陸上・デフリンピックの直後の年度として、レガシーをどう引き継ぐかに焦点を当てています。「東京2020大会5周年メモリアル事業(1.3億円)」では、夏季に記念イベントを一体的に展開し、ボランティア文化やスポーツ気運を次世代へ繋ぎます。また、次なるターゲットへの準備も始まっています。「愛知・名古屋2026アジア競技大会を契機としたスポーツ気運醸成(新:0.9億円)」や、第20回を迎える「東京マラソン記念事業(新:0.8億円)」が計上されました。「GRAND CYCLE TOKYOの推進」については、令和7年度予算の18億円から令和8年度予算では8億円へと規模が縮小されていますが、レインボーライドの開催や多摩地域での開催準備など、地域に根差した継続的な展開が図られます。
ねんりんピック開催に向けた高齢者スポーツ施策の本格化
令和8年度予算において、今後数年間のトレンドを決定づけるのが「全国健康福祉祭(ねんりんピック)東京大会」に向けた予算です。令和10年度の開催に向け、準備組織の立ち上げや情報発信を行う「開催準備事業(新:4億円)」が新たにスタートしました。これに伴い、東京都選手団の派遣事業予算も0.5億円(令和7年度予算は0.4億円)に増額され、物価高騰を踏まえた宿泊費補助の拡充(定額5,000円から12,000円へ引き上げ)が行われます。このねんりんピックへの取組は、単なる大会準備にとどまらず、高齢者の健康保持、社会参加、生きがいの醸成といった「都市と高齢化」という課題に対する実践的なアプローチとして位置づけられています。スタートアップと連携した先端技術のPRなども計画されており、福祉とスポーツ、産業の融合が期待されます。
区市町村への財政支援とハード面の整備促進
自治体支援の面では、インフラ改修への支援が強化されました。令和8年度予算で新設された「スポーツ空間リノベーション補助事業(新:6億円)」は、区市町村が行うスポーツ空間の拡充や機能強化を後押しします。特筆すべきは補助率で、通常の事業は1/2ですが、ねんりんピック使用施設の整備については4/5という極めて高い補助率が設定されています。令和7年度予算から継続している「区市町村スポーツ推進補助事業(3億円)」においても、ねんりんピックに向けた気運醸成や施設のユニバーサルデザイン化に関する支援が重点化されており、補助限度額の加算措置も維持されています。これにより、各自治体はハード・ソフト両面から都の財政支援を受けやすい環境が整っています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
未利用空間のスポーツ拠点化:令和8年度予算が示す「KK線の活用」という方向性は、土地の少ない特別区にとって重要なヒントとなります。公園の新設が難しくとも、高架下、公開空地、道路空間をスポーツの場として一時的または恒常的に開放する企画は、都の補助事業(スポーツ環境創出事業等)との親和性が高いと言えます。
福祉とスポーツの強力な連携:
ねんりんピック開催準備の本格化は、健康福祉部局とスポーツ部局が連携する絶好の機会です。特に「スポーツ空間リノベーション補助事業」の4/5という高額補助を活用し、既存の高齢者施設やコミュニティセンターを「パラスポーツやeスポーツも可能な多機能型健康拠点」へ改修する計画を策定することが推奨されます。
ジュニア層の経済的障壁の除去:
ジュニアスポーツエール事業の開始は、物価高騰が子供の体験格差に直結している危機感の表れです。区独自の施策としても、競技用具のリユース事業や、ひとり親家庭等への参加費助成など、教育・福祉的視点を加味したスポーツ推進計画が求められます。
デジタル化による団体支援:
区内の競技団体や外郭団体の多くが事務負担の増大に悩んでいます。都が競技団体のバックオフィス支援を開始する令和8年度は、区レベルでも地域スポーツ団体の事務局機能をデジタルで集約・効率化するモデル事業を検討するタイミングとして適しています。
大会レガシーの地域還元:
令和7年度の世界陸上・デフリンピック、そして令和8年度の東京2020大会5周年という流れを、単なるイベントで終わらせず、ボランティア名簿の活用や地域スポーツクラブへの新規入会促進など、区独自の「地域コミュニティ活性化策」へと着地させることが肝要です。
3 日本の成長を牽引し、人が輝き魅力あふれる成熟都市の実現:3,376億円
成長を支える多様な拠点の形成とまちづくり
令和8年度予算では、築地地区まちづくりにおいて令和7年度予算の56億円から409億円へと大幅な増額が図られています。埋蔵文化財の調査や隅田川スーパー堤防の早期整備、桟橋撤去工事が本格化することが要因です。西新宿地区再整備については、令和7年度予算の1億円から令和8年度予算では5億円へと増え、西新宿グランドモールのウォーカブル空間化に向けた調査が加速します。新宿駅直近地区整備事業も令和7年度予算の58億円から令和8年度予算の72億円へと拡大しており、デッキや駅前広場等の整備が進みます。一方で、舟運活性化に関する調査は令和7年度予算の4億円から令和8年度予算では2億円へと減少していますが、環状航路の運航支援は継続されます。外堀の水辺再生事業は、令和7年度予算の4億円から令和8年度予算では6億円となり、2030年代半ばの導水開始を目指した詳細設計に着手する点が特徴です。
技術系人材確保・育成に向けた戦略的取組
この分野では令和8年度予算において重要な「新」事業が目立ちます。Neo工科高校改革プロジェクトには令和8年度予算で5億円が新規に計上され、企業等と連携した実践的な技術習得を通じて、将来のまちづくりの担い手を確保します。また、まちづくり人材の確保に向けた支援制度の構築として、令和8年度予算に3億円が「新」として盛り込まれました。東京都都市づくり公社に人材バンクを設置し、地元の自治体における計画立案から実施までを支える体制を整える点は、令和7年度予算にはなかった画期的な動きです。中小企業人材スキルアップ支援事業についても、令和7年度予算の0.4億円から令和8年度予算では0.7億円へと増額し、建設や運輸分野の国家資格取得等への助成を強化しています。
住宅施策とアフォーダブル住宅の供給
住宅分野の令和8年度予算は169億円であり、令和7年度予算の153億円から拡大しています。令和7年度予算では「金融スキームを活用したアフォーダブル住宅の供給促進」に100億円が投じられていましたが、令和8年度予算ではより具体的な施策が「新」として展開されます。具体的には、都有地におけるアフォーダブル住宅供給等に関する検討調査に令和8年度予算で0.1億円、リノベーションによるアフォーダブル住宅供給チャレンジ事業に債務負担行為が設定されました。子育て世帯向け認定住宅の情報発信強化(0.1億円)や、高齢者いきいき住宅供給促進(2億円)も令和8年度予算の「新」事業です。空き家対策では、管理不全空き家等の除却を強化する「空き家利活用等区市町村支援事業」に令和8年度予算で1億円、若者応援空き家活用支援事業に0.2億円がそれぞれ「新」として計上され、区市町村への財政・技術支援が一段と厚くなっています。
都市活動を支えるインフラ・交通ネットワーク
令和8年度予算は2,545億円と、令和7年度予算の2,437億円から増加しています。地下高速鉄道建設助成は令和7年度予算の43億円から令和8年度予算の74億円へと増え、有楽町線や南北線の延伸に向けた支援が強まります。多摩都市モノレールの整備も令和7年度予算の15億円から令和8年度予算では26億円へと増額され、上北台から箱根ヶ崎方面への延伸が加速します。特に注目すべきは令和8年度予算の「新」事業である「東京ストリート+(プラス)の推進」に3億円が投じられる点です。道路空間を歩行者中心に再編する先行的なモデルケースを22路線選定し、区市が行う調査検討や整備費の一部を補助する仕組みです。
持続可能な地域公共交通の維持・確保
バス運転士の深刻な不足に対応するため、令和8年度予算では人材確保策が「新」として集中的に予算化されました。バス運転士養成委託訓練事業に9億円、バス事業者人材開発支援事業に2億円、バス運転士定着支援事業に10億円、さらに高校生向けの特別授業等を行う事業に0.4億円と、合計で約22億円規模の新規対策が打ち出されています。これは令和7年度予算には見られなかった大規模な労働力対策です。地域公共交通の充実・強化についても令和7年度予算の5億円から令和8年度予算では8億円へと増額され、行政界を跨ぐデマンド交通等のモデル調査が「新」として追加されました。自動運転技術の社会実装に向けた調査も令和7年度予算の4億円から令和8年度予算では11億円へと大幅増となり、世界最高レベルの安全性を確保するためのシステム検証が始まります。
臨海地域の形成と港湾機能の強化
臨海地域の予算は令和8年度予算で142億円となり、令和7年度予算の140億円と同水準を維持しつつ、内容の高度化が進んでいます。大井コンテナふ頭の再整備は令和7年度予算で698億円(新規)が計上されていましたが、令和8年度予算では中央防波堤外側コンテナふ頭(Y3)の整備に69億円を充て、機能強化を継続します。DXの推進として「Cyber Portとのシステム連携」や「コンテナターミナル所要時間の予測」が令和8年度予算の「新」事業として登場しました。環境対策では、東京港におけるRTGの水素エネルギー実装事業に令和8年度予算で8億円が「新」として、水素燃料電池船の活用事業に3億円が「新」として計上され、カーボンニュートラルポートの実現に向けた動きが加速しています。また、東京国際クルーズふ頭の第2バース整備に向けた調査・設計にも令和8年度予算で3億円が新規に充てられました。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案の分析から、特別区の公務員が今後の政策立案において注目すべき点は三つあります。一つ目は「人材確保への直接介入」です。バス運転士やまちづくり技術職など、これまで民間や広域自治体の課題とされていた労働力不足に対し、都が養成から定着まで踏み込んだ補助スキームを構築しています。区においても、地域インフラを維持するための独自の人材確保策や、都の人材バンクを積極的に活用した都市計画の推進が求められます。二つ目は「既存ストックの質的転換」です。アフォーダブル住宅や空き家対策に見られるように、新築支援からリノベーションや管理不全物件の除却へと軸足が移っています。区の住宅政策においても、地域の特性に応じた空き家利活用のメニュー化や、子育て・高齢者世帯への情報発信の強化が鍵となります。三つ目は「ウォーカブルな空間再編」です。「東京ストリート+」のような歩行者中心のまちづくりは、区が主体となる生活道路や駅前空間の整備と親和性が高く、都の補助制度を最大限に活用した魅力ある地域拠点の形成に向けた検討を早急に進めるべきです。
4 自然と都市が調和したまちづくり:815億円
自然と都市が調和したまちづくりにおける全体像
令和8年度予算における「自然と都市が調和したまちづくり」の総額は815億円となっており、令和7年度予算の804億円(令和8年度資料内の比較数値)から微増しています。東京都は、気候変動対策や生物多様性の保全、そして都市の魅力向上を目的に、緑の「まもる」「育てる」「活かす」という3つの視点をさらに深化させています。特に令和8年度予算では、都市農業の維持発展と、空き家などの都市課題を緑化に繋げる新規事業が目立っており、より具体的かつ実践的なフェーズに移行しているのが特徴です。
今ある緑を未来へ継承する取組の比較
令和8年度予算では、この分野に234億円が配分されており、令和7年度予算の208億円から大幅に増加しています。最大の特徴は、農業を「緑の基盤」として強力に支援する姿勢です。令和8年度予算では、新たに「東京農業法人育成支援事業(8億円)」や「企業等における農的活動に向けた農業ビジネス支援事業(3億円)」が計上されました。これは令和7年度予算で推進されていた「未来に残す東京の農地プロジェクト(5億円)」を一歩進め、法人の参入やビジネス化を支援することで、持続可能な農地保全を目指すものです。また、「都民に身近なポケットファーム創出事業(2億円)」や「東京の田んぼ復活プロジェクト(0.3億円)」など、都民参加型の新規事業も盛り込まれ、農地を「守る対象」から「活用し交流する場」へと転換しようとしています。令和7年度予算で新規だった「保全地域の指定加速化事業(2億円)」については、令和8年度予算でも継続的な取組が想定されており、ドローンやAIを活用した緑地の見える化が進められます。
緑に親しみ育む取組の比較
令和8年度予算は513億円で、令和7年度予算の518億円とほぼ同水準を維持しています。この分野で最も注目すべき新規事業は「空き家等みどり転用支援事業(4億円)」です。令和7年度予算では「都市空間における新たな緑の創出事業(2億円)」として、地下空間などの特殊な場所の緑化を先行実施していましたが、令和8年度予算では、深刻化する空き家問題に対処しつつ、街中に小規模な緑地を創出するという、より多目的で合理的なアプローチが導入されました。また、「人々が憩う外濠の水辺再生事業」については、令和7年度予算の4億円から令和8年度予算では6億円へと増額されており、詳細設計や機運醸成イベントの本格化が伺えます。令和7年度予算で強調されていた「東京グリーンビズ・ムーブメント」は、令和8年度予算では「東京グリーンビズ・アクションの促進(2億円)」へと引き継がれ、都民や企業が実際に緑を育てる具体的な活動への支援に重点が置かれています。
緑の多様な機能の活用に関する比較
令和8年度予算は75億円となっており、令和7年度予算の83億円と比較すると減少傾向にありますが、内容の質的転換が見られます。令和7年度予算では「体験農園等修了生の人材活用事業(0.1億円)」や「生物多様性推進センターの情報発信強化(0.7億円)」といったソフト面の新規事業が目立ちましたが、令和8年度予算では「多摩産材の民間利用の促進」が1億円から3億円へと大幅に拡充されています。これは補助対象を国産材全体に拡大しつつ、多摩産材の使用を一定以上求める仕組みを導入したもので、木材利用の脱炭素への寄与をより確実にする狙いがあります。また、「雨水流出抑制に資するグリーンインフラ先行実施事業」も、令和7年度予算の0.5億円から令和8年度予算では0.7億円に増額され、民間施設への導入促進が継続されています。「自然環境デジタルミュージアムの構築」は両年度とも2億円で維持されており、令和8年度予算ではポータルサイトの運用開始やデジタルコンテンツの展開など、社会実装の段階に入ることが示されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
以上の比較分析を踏まえ、特別区の公務員の皆様が政策立案を行う上での示唆をまとめます。第一に、農地の保全を単なる環境保護としてではなく、企業参入やビジネスの場として再定義する視点が必要です。東京都が法人支援やクラウドファンディング活用に予算を割いていることは、区単独では難しい大規模投資を都が支える構図を示唆しており、区としては企業と地元農家を繋ぐマッチング支援や、ポケットファームを通じた地域コミュニティの活性化に注力すべきです。第二に、空き家対策と緑化の連動です。都が新規事業として立ち上げた空き家等のみどり転用は、防災や防犯、コミュニティ形成といった区の優先課題と高い親和性があります。都の補助メニューを積極的に活用し、区内の未利用地を戦略的に緑化する「都市の余白」活用策の検討が求められます。第三に、多摩産材や国産材の利用拡大への対応です。都が民間施設への補助を拡充する流れを受け、区内のビルや店舗の木質化を誘導する条例や独自の助成制度を整備することで、環境負荷の低減と都市の質的向上を同時に達成できる可能性があります。総じて、令和8年度予算は「点」での緑化から、経済や福祉、デジタルと掛け合わせた「面」での都市経営へとシフトしており、区の政策もこうした多機能な緑の活用を軸に組み立てることが肝要です。
Ⅴ 世界のモデルとなる持続可能な環境先進都市:3,880億円
1 ゼロエミッションを達成し、持続可能な環境先進都市を実現:3,880億円
電力レジリエンスの向上と住宅施策の拡充
令和8年度予算は1,294億円を計上し、令和7年度予算の930億円から大幅な増額となっています。 その中核を成す「断熱・太陽光住宅普及拡大事業」は、令和7年度予算の702億円から1,012億円へと拡大されました。 太陽光発電の導入規模は令和7年度予算の15,000件から33,000件へ、蓄電池は20,500件から38,500件へと、それぞれ倍増近い目標が設定されています。 また、窓・ドアの高断熱化への補助率は、令和7年度予算の3分の1相当から2分の1相当へと引き上げられ、規模も80,000戸に拡充されています。新規事業(新)としては、業務用EVを電力系統の安定化に寄与させる「電力需給調整機能としてのEV活用促進事業」に1億円を計上しました。 また、都庁自身の先行行動として、一時滞在施設等への太陽光発電・蓄電池導入(新:0.6億円)が新たに盛り込まれています。 スタートアップ企業と連携した「アクセラレータープログラム」による断熱改修の新サービス創出も令和8年度予算の新たな重点ポイントです。
暑さ対策の劇的強化と都民生活への直接支援
令和8年度予算における暑さ対策は447億円であり、令和7年度予算の25億円から約18倍という極めて大規模な投資が行われます。 この最大の要因は、新規事業(新)である「水道料金に係る基本料金無償臨時特別措置」です。 これは、夏季の熱中症対策としてエアコン利用を促すため、一般家庭を主とする小口径利用者の基本料金を4か月分無償化するもので、公営企業会計で399億円、一般会計で9億円の計408億円を投じます。教育・産業現場への支援も新規(新)に数多く立ち上がっています。 私立学校の暑さ対策備品購入を支援する補助事業(新:4億円)や、市場現場での遮熱スポット設置(新:0.1億円)、中小企業の経営強靱化に向けた暑さ対策支援(新:1億円)が開始されます。 さらに、最新の熱中症予防研究を社会に還元する事業(新:0.3億円)も新たに盛り込まれました。 令和7年度最終補正予算において、今年の夏を見据えた暑さ緊急対策(441億円)を前倒しで実施する点も、令和8年度への強力な布石となっています。
エネルギー効率の最大化と企業の脱炭素経営支援
令和8年度予算は1,218億円であり、令和7年度予算の1,221億円と同水準の規模を維持しています。 建築物の対策として「東京ゼロエミ住宅」の推進には、令和7年度予算の321億円を大きく上回る497億円を配分し、断熱性能や再エネ設備に応じた助成を強化しています。 賃貸住宅の断熱改修支援も、令和7年度予算の199億円から218億円へと増額されました。産業界向けには、新規事業(新)が集中しています。 中小企業の建築物をZEB化するための導入促進事業(新:6億円)や、物流分野における企業のScope3対策支援(新:0.8億円)が開始されます。 加えて、都内企業のカーボンクレジット創出を活性化させるための支援(新:0.8億円)や、排出されたCO2を回収・利用するサプライチェーン構築(新:6億円)など、GX投資を喚起する新たな仕組みが導入されました。
ゼロエミッションモビリティの普及加速とインフラ整備
令和8年度予算は411億円で、令和7年度予算の363億円から増額されました。 主力の「ZEV普及促進事業」は令和7年度予算の133億円から204億円へと大幅に拡充され、補助対象台数も60,550台へと拡大しています。新規事業(新)としては、ビジネスシーンでの利用を想定した「業務用ZEV大規模一括導入促進事業(新:18億円)」や、EVバイクの普及に向けた専用充電器の購入補助(新:1億円)、交換式の規格型バッテリー活用促進(新:0.5億円)が計上されました。 EVバス・トラックの導入促進については、令和7年度予算の172億円から109億円へと予算額は調整されていますが、新たに貨物輸送評価制度を補助要件に加えるなど、質の高い普及を目指す方針へシフトしています。
サーキュラーエコノミーの高度化と環境リスク対策
令和8年度予算は72億円となり、令和7年度予算の42億円から約1.7倍に拡大しました。 資源循環分野では、DXを活用した家庭系食品ロス削減(新:0.6億円)や、食品リサイクルの広域化支援(新:0.8億円)、大規模オフィスビルのゼロ・ウェイスト化調査(新:0.2億円)など、新規事業(新)が多角的に展開されます。特に、廃棄物処理施設におけるリチウムイオン電池(LiB)に起因する火災対策(新:13億円)は、現場の喫緊の課題に応える重要な新規施策です。 また、家庭用エアコンからのフロン排出抑制に向けた総合対策(新:1億円)も新たに開始されます。 区市町村との連携については、令和7年度予算の枠組みを「環境政策高度化事業」として新規(新:14億円)にバージョンアップし、地域のニーズに合わせた柔軟な支援を5年間の長期計画で進めます。
再生可能エネルギーの基幹化とデータセンター需要への対応
令和8年度予算は273億円で、令和7年度予算の217億円から上積みされています。 「浮体式洋上風力発電導入推進事業」は、令和7年度予算の9億円から27億円へと3倍に増額され、ギガワット級のファーム導入に向けた調査や地元理解を加速させます。 都有施設への次世代型ソーラーセル(ペロブスカイト等)の導入も、令和7年度予算の12億円から21億円へと拡大されました。令和8年度予算の際立った特徴は、データセンター急増への対策です。 「環境に配慮したデータセンター整備促進事業(新:96億円)」という巨額の新規予算を配分したほか、スタートアップによる未利用熱活用(新:1億円)や、データセンター廃熱利用の実装支援(新:0.01億円)を新たに設け、電力消費の大きい施設への徹底した省エネ・再エネ化を促します。
水素エネルギーの社会実装とインフラ構築
令和8年度予算は165億円となり、令和7年度予算の160億円と同規模を維持しつつ、より具体的な実装へと踏み込んでいます。 「中央防波堤埋立地におけるグリーン水素の製造・利活用」は、令和7年度予算の1億円から11億円へと11倍に増額され、実施設計や整備工事が進められます。水素ステーションの整備支援は、令和7年度予算の4億円から63億円へと飛躍的に増額され、商用車の需要拡大に対応します。 新規事業(新)としては、民間と共同で進める「地産地消型水素ステーション導入促進事業(新:1億円)」が計上されました。 一方で、燃料電池トラックの実装支援は、令和7年度予算の57億円から2億円へと予算が減少しており、初期の車両導入支援からステーション等のインフラ構築へと重点が移っています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案から得られる最大の示唆は、環境施策が「都民の健康維持(暑さ対策)」と「産業・インフラの強靱化」に直結したステージへと進化したことです。 特別区の公務員は、まず都が14億円を投じて新設した「環境政策高度化事業」を活用し、区独自のゼロエミッション施策を都の支援スキームに適合させていく必要があります。特に、廃棄物処理におけるリチウムイオン電池の火災対策や食品ロスのDX活用は、区の清掃行政における喫緊の課題と合致しており、都の新規予算を最大限に引き出すチャンスと言えます。 また、水道料金の基本料金無償化という都の強力な支援を背景に、区としては低所得世帯や高齢者宅へのエアコン設置支援など、よりきめ細かな「ソフト面での福祉的な暑さ対策」に注力し、都の施策と役割分担を図るべきです。 住宅施策においては、都の断熱・太陽光への補助率が向上したことを受け、区内の既存住宅やマンションの改修促進に向けた、地域密着型のコンサルティング機能の強化が求められます。
Ⅵ 世界一安全・安心でレジリエントな都市:8,425億円
1 災害から都民の命と暮らしを守る強靭な都市づくり:6,197億円
TOKYO強靭化プロジェクトの全体像
令和8年度予算は、総事業規模17兆円を見据えた「TOKYO強靭化プロジェクト」を質・量ともに加速させる内容となっています。災害から都民の命と暮らしを守るための主要施策予算は、令和8年度予算で6,197億円が計上され、令和7年度予算の6,012億円と比較して約185億円の増額となりました。風水害、地震、火山噴火、電力・通信、感染症の5つの危機に対し、ハード整備の加速とデジタル技術を活用したソフト対策の融合が鮮明に打ち出されています。
風水害対策の比較分析
令和8年度予算の風水害対策は2,119億円で、令和7年度予算の2,109億円から微増しています。項目別に見ると、中小河川の整備は令和8年度予算で590億円と、令和7年度予算の771億円から減少していますが、これは「境川金森調節池」や「谷沢川分水路」の稼働開始に伴う事業フェーズの移行を反映したものです。一方で「気候変動を踏まえた河川施設のあり方に伴う取組」は、令和7年度予算の0.5億円から令和8年度予算では3億円へと大幅に拡充され、地下河川の事業化に向けた調査・検討が本格化しています。下水道対策では、特別区に関連の深い「重点地区における浸水対策の強化(区部)」が、令和7年度予算の356億円から令和8年度予算では428億円へと大きく積み増されました。これは「東京都下水道事業経営計画2026(案)」に基づき、内水氾濫リスクが高い67地区での基幹施設整備を重点化した結果です。また「市町村下水道事業強靭化都費補助」も、令和7年度予算の22億円から令和8年度予算では37億円に増額され、補助対象に下水道管の再構築が追加されるなど、自治体支援が強化されています。
地震対策と耐震化の「新」施策
地震対策の予算額は、令和8年度予算で4,650億円となり、令和7年度予算の4,527億円(当初)から上積みされています。令和8年度予算で「新」事業として注目されるのが「緊急輸送道路及び住宅の耐震化推進業務」です。1億円が計上され、個別訪問による集中的なアプローチで耐震化を停滞させない姿勢を示しています。マンション対策でも「新」事業の「マンション耐震化プロモーション事業」が0.6億円で開始され、管理組合へのアドバイザー派遣を強化しています。木造住宅密集地域の対策では、令和8年度予算から「整備地域等不燃化集中促進事業」が5億円規模で「新」事業として予算化されました。防火規制の強化と連動し、老朽建築物の除却を行う区市を支援する仕組みです。さらに「新」事業の「空き家利活用等区市町村支援事業」では1億円が投じられ、管理不全空家等の除却費用を5年間限定で都が全額負担する特例的な支援が導入されています。令和7年度予算で「新」として導入された「面的液状化対策」は令和8年度予算でも継続され、宅地と公共施設の一体的な整備事例の創出が図られています。
無電柱化と火山噴火対策の高度化
無電柱化の推進は、令和8年度予算で457億円が確保され、令和7年度予算の410億円から着実に拡大しています。「宅地開発無電柱化推進事業」では、令和8年度予算から補助率の拡充やノウハウ提供が強化され、条例による電柱の新設禁止を見据えた動きが加速しています。また、3Dデータプラットフォーム(仮称)の構築に向けた調査費も令和8年度予算に計上され、DXによる工事のスピードアップを狙っています。火山噴火対策は、令和8年度予算で892億円と、令和7年度予算の678億円(当初資料ベースでは589億円)から大幅な増額となりました。「新」事業として「災害用コマンドカーの整備」に1億円が計上され、広域的な指揮機能が強化されます。浄水場における自家発電設備の増強も、令和7年度予算の50億円から令和8年度予算では71億円へと拡充されており、インフラの冗長性確保が優先されています。令和7年度予算で「新」であった降灰対策資機材の整備や土砂災害対策支援システムも、令和8年度予算で本格的な運用フェーズへと移行しています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案は、ハード整備の継続に加え、これまで課題であった「個人の合意形成」や「老朽資産の処分」といったソフト面のボトルネック解消に強い意欲を示しています。特別区の公務員は、まず都の「新」施策である「マンション耐震化プロモーション」や「空き家除却の全額公費負担」という強力なインセンティブを活用し、区独自の周知・アウトリーチ計画を再構築すべきです。都の支援が5年間限定などの期限付きである点に留意し、短期集中的な執行体制を整えることが、区民の安全確保と財政負担軽減を両立させる鍵となります。また、下水道経営計画2026に基づく浸水対策の強化は、区部のまちづくり計画と密接に連動させる必要があります。都の基幹施設整備に合わせて、区が管轄する小規模排水路の改善やグリーンインフラの導入をパッケージ化して提案することで、エリア全体の防災価値を高めることが可能です。無電柱化や不燃化においても、都が提供を開始する3DデータやDXプラットフォームを積極的に活用し、将来的な維持管理の効率化を見据えたデジタルベースの都市管理へと舵を切る時期に来ています。都の予算規模の拡大を、単なる補助金の増枠と捉えるのではなく、都市構造を抜本的に転換する好機と捉えた政策立案が求められています。
2 都民一人ひとりの備えと、地域の防災力を向上:344億円
都民の備えと地域防災力の向上における全体予算の推移
令和8年度予算では、都民一人ひとりの備えと地域の防災力向上という項目に344億円が計上されました。これは令和7年度予算の254億円と比較して約35パーセントの増額となっており、ハード・ソフト両面での対策が加速しています。特に「避難者支援・地域の防災力向上」のサブカテゴリーにおいては、令和7年度予算の123億円から令和8年度予算では193億円へと大幅な積み増しが行われ、よりミクロな視点での支援が重視されていることが分かります。
避難者支援および区市町村支援策の抜本的拡充
避難者生活支援等に関する区市町村支援については、令和8年度予算で39億円が確保されました。令和7年度予算の10億円から約4倍の規模に拡大しており、避難所の環境整備だけでなく、在宅避難者への支援や家具転倒防止対策など、区市町村のニーズに応じた補助対象の拡大が図られています。令和7年度予算で新規事業として立ち上がった「避難所環境整備・災害時トイレ確保等区市町村支援(10億円)」の流れを汲みつつ、令和8年度予算では新たに「被害想定の策定(2b億円)」を新規事業として盛り込み、社会環境の変化に即した都の実態を再定義しようとする姿勢が鮮明です。
先端技術を活用した防災ソフト対策の高度化
令和8年度予算の特徴として、AIやメタバース、ドローンといった先端技術の社会実装が挙げられます。新規事業として「VRを活用した防災メタバースの導入(0.5億円)」や「住まいの防火防災診断に活用するAIアプリの開発(0.2億円)」が計上されました。令和7年度予算においても「ミニVR防災体験車の整備(1億円)」や「町会・自治体デジタル化推進助成(0.5億円)」といったデジタル化の萌芽は見られましたが、令和8年度予算では、より個々の都民の行動変容を促すためのパーソナライズされた技術活用へと進化しています。
災害対処能力の強化と多様なリスクへの対応
災害対処能力の強化に向けた予算は、令和8年度予算で151億円となり、令和7年度予算の131億円から着実に増加しています。令和8年度予算での新規事業として、大規模災害対策資機材の整備における「林野火災対応(3億円)」が盛り込まれ、シミュレーションシステムの開発や空中消火用自立式バケットの導入が計画されています。また、道路陥没事故対策としての「狭小空間用ドローンの導入」や「地中レーダー探査機の配置」など、令和7年度予算で見られた「大規模災害対策資機材の整備(震災対応・航空機火災対応)」から、より個別具体的かつ特殊な災害事態を想定した装備の拡充へとシフトしています。
マンションおよび地域コミュニティの防災力強化
マンション防災については、令和8年度予算で10億円、令和7年度予算で7億円と継続的な投資が行われています。「東京とどまるマンション」の普及促進に向け、令和8年度予算では非常用発電機の導入や浸水対策の設計・改修への補助が拡充されました。地域コミュニティ支援においては、令和7年度予算で「町会・自治体防災備蓄倉庫設置等助成(2億円)」などの新規事業が目立ちましたが、令和8年度予算ではこれらを継続しつつ、「町会・マンションみんなで防災訓練」に2億円(令和7年度予算は1億円)を投じ、共助の質を高める取り組みを強化しています。
医療・福祉体制と情報管理の連携強化
避難者の安否確認から生活再建支援までを一貫して管理する「被災者総合支援システム(仮称)」の構築に向けた基本構想の策定に、令和8年度予算では2億円が充てられています。令和7年度予算の1億円から倍増しており、システムの具体化が進んでいます。医療面では、令和7年度予算で新規導入された「災害時看護体制整備事業(0.2億円)」や「潜在看護師等登録制度(0.5億円)」に基づき、令和8年度予算では「医療対策拠点等通信設備強化事業(0.3億円)」を新規に計上するなど、発災後の迅速な情報伝達と医療資源の最適配分を目指す構造が強化されました。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算の傾向から、特別区が取り組むべき政策立案の方向性は以下の通りです。第一に、都の補助制度の大幅な拡充(特に避難者支援の39億円枠)を最大限に活用し、各区独自の地域特性に合わせた避難所環境の高度化を検討すべきです。第二に、AI診断アプリやメタバース防災といった都の新規ツールと連動し、若年層やマンション居住者など、従来の防災訓練に参加しにくかった層を取り込む新しい普及啓発プログラムを構築することが有効です。第三に、林野火災や道路陥没といった特殊災害への備えが強化されているトレンドを踏まえ、区内の特定リスク(木密地域、大規模インフラ集中地帯等)に対応したドローン等の先端資機材の共同利用や運用ルールの策定を急ぐ必要があります。都がソフト対策とデジタル活用に大きく舵を切った今、特別区にはそれらを住民サービスの現場で具体化する「実装力」が求められています。
3 犯罪から都民の命と安全・安心な暮らしを守り抜く東京:205億円
東京都における犯罪抑止・安全確保予算の構造的変遷
犯罪から都民の命と安全を守る施策において、令和8年度予算は205億円が計上されました。これは令和7年度予算の153億円(前年度の同項目比較)から大幅な増額となっており、東京都が治安維持を最優先課題の一つとして位置づけていることが鮮明になっています。特に、これまでの対症療法的な犯罪対策から、生成AI等の先端技術を用いた業務効率化や、地域コミュニティの監視能力を物理的に底上げするインフラ整備へと、投資の力点がシフトしている点が特徴的です。
特殊詐欺および若年層の犯罪加害防止対策
身近な犯罪の防止対策として、特殊詐欺対策等は令和8年度予算においても2億円を維持しています。令和7年度予算では「闇バイト」への緊急対策として、若年層向けの啓発漫画作成やSNS広告展開(0.6億円)が新規事業として計上されていましたが、令和8年度予算ではこれを踏襲しつつ、SNS広告等を活用した新たな啓発を継続実施する方針です。被害者となる高齢層だけでなく、加害者となってしまう若年層双方へのアプローチを強化しており、情報発信の手法を時代に合わせて常にアップデートしようとする都の姿勢が読み取れます。
地域コミュニティによる見守り活動と防犯インフラ整備
地域における見守り活動支援については、令和8年度予算で20億円を確保し、令和7年度予算の14億円から増額されました。令和7年度予算において、町会・自治体や商店街等の負担割合を大幅に軽減する(都の補助率を3/4へ引き上げる等)緊急対策期間が設定されましたが、令和8年度予算でもこの補助率アップを継続し、防犯カメラの新設や更新を強力に推進します。また、令和7年度予算で0.2億円だった防犯パトロール用の車両購入費等の支援も継続されており、ハード・ソフト両面から地域防犯力を下支えする構造となっています。
家庭用防犯機器の普及促進と緊急補助事業の推移
都内の各世帯における防犯カメラ等の導入を支援する防犯機器等購入緊急補助事業は、令和8年度予算で17億円が計上されました。令和7年度予算では47億円という巨額の予算が新規事業として投入されましたが、これは導入初期の爆発的な需要に対応したものであり、令和8年度予算では補助単価の見直し(1世帯あたりの都補助上限が2万円から1万円へ変更)を行いながら、制度の定着を図るフェーズへ移行しています。また、令和7年度予算で注目された「断熱・太陽光住宅普及拡大事業」における防犯窓の上乗せ補助(702億円の内数)など、他分野の施策と連携して住宅の防犯性能を高める手法も継続されています。
デジタル技術および生成AIを活用した警察業務の高度化
令和8年度予算の最大の特徴は、警察業務への先端技術導入です。新規事業として、生成AIを活用した「相談業務支援システム(仮)の構築」に2億円が投じられました。これはストーカーやDV相談等の音声を集音・テキスト化し、要約文書を自動生成することで、重大事件への早期対応を可能にするものです。令和7年度予算ではSNS上の犯罪実行者募集をAIでモニタリングする事業(1億円)や、防犯カメラ映像の「画像鮮明化ソフトウェア」の整備(0.5億円)が新規事業でしたが、令和8年度予算ではより直接的な「対人相談業務」のDXに踏み込んでおり、生成AIの活用領域が拡大しています。
警察組織の機能維持と都市基盤整備
新たな警察拠点の整備として、令和8年度予算では「有明パトロールステーション」の設置に向けた用地取得および新築工事に計16億円が新規に計上されました。これは臨海部における治安維持機能の強化を目的としたもので、令和8年9月の運用開始を目指しています。また、警察署窓口での多言語対応を円滑にする「翻訳機能付き透明ディスプレイの導入」が新規事業(0.2億円)として計上されたことも、多文化共生が進む東京の現状を反映した、令和8年度予算ならではの特徴的な施策です。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の予算編成から、特別区の公務員が考慮すべき点は以下の3点に集約されます。第一に、地域防犯対策における補助率の有利な期間を逃さないことです。令和7年度から令和8年度にかけて継続されている防犯カメラ設置等の補助率アップは、区の財政負担を抑えつつ地域インフラを更新する最大の好機です。町会・自治会への周知を徹底し、申請を促す体制を整えるべきです。第二に、防犯機器補助の「出口戦略」の検討です。都の補助単価が令和8年度予算で半減したことは、事業が普及期から維持期へ移行しつつあることを示唆しています。区独自の単価設定や、補助終了後の機器維持管理への支援のあり方を今から議論しておく必要があります。第三に、相談業務へのAI導入の検討です。都がストーカー・DV相談に生成AIを導入する動きは、同様の相談窓口を抱える区の福祉・保健部門においても業務効率化のモデルとなり得ます。都のシステムの仕様や効果を注視し、将来的には区の業務への横展開や都のシステムとの連携を視野に入れた調査研究を開始することが推奨されます。
4 誰もが住み慣れた地域で安心して、必要な医療等を受けられる東京:1,773億円
地域医療の確保に関する比較分析
令和8年度予算における地域医療の確保分野は、総額1,773億円が計上されており、令和7年度予算の1,715億円から微増しています。地域医療確保に係る緊急・臨時支援事業については、令和7年度予算の166億円から令和8年度予算では145億円へと減少していますが、これは国による診療報酬改定等への過渡期的な対応としての性格を維持しつつ、支援単価を調整しているためです。一方で、新規事業として「急性期医療臨時支援事業」に11億円が投じられました。これは救急車受入件数に応じた単価設定(1日60円から100円)を行うもので、現下の経営状況を踏まえた極めて機動的な支援策といえます。高齢者受入体制確保事業(87億円)や小児・産科・救急医療受入推進事業(57億円)は、令和7年度予算から継続して安定的な財源を確保しており、地域医療の基幹となる機能の維持に重点が置かれています。公立病院運営費補助については、令和7年度予算の34億円から39億円に増額され、特に多摩・島しょ地域の病床基礎額が122万円から152万円へと大幅に引き上げられた点が特徴的です。医療施設近代化施設整備費補助も、資材高騰を考慮し単価を41万円から48万円へと引き上げ、令和7年度予算の12億円から令和8年度予算では17億円へと増額されています。
医療DXの推進と情報連携の高度化
医療DX分野では、基盤整備から「質の向上」へとフェーズが移行しています。医療機関診療情報デジタル推進事業は、令和7年度予算の27億円から令和8年度予算では42億円へと大幅に拡充され、電子カルテ導入支援が本格化しています。令和8年度予算の新規事項として、「患者満足度向上ロールモデル創出事業」(0.4億円)と「新たな医療情報連携基盤の構築」(0.5億円)が注目されます。前者はデジタルツール導入によるガイドライン整備を目的とし、後者は国の電子カルテ共有サービスとの接続に加え、都独自の患者満足度向上に資する情報連携基盤の構築を目指すものです。令和7年度予算で新規だった医療DX人材育成支援事業等の成果を土台とし、より具体的な患者サービスへの還元を狙う姿勢が鮮明になっています。
がん予防・医療と特定疾患対策
がん対策において、令和8年度予算は極めて意欲的な新規施策を打ち出しています。「女性のがん検診受診応援事業」として16億円を新規に計上し、2,000円相当の健康グッズや東京ポイントの付与を通じて、受診率の低い女性特有のがん対策を強化しています。がん予防・検診受診率向上事業も、令和7年度予算の0.5億円から0.8億円へ増額されました。設備面では、粒子線治療施設の整備(都立駒込病院)に向け、令和7年度予算の4億円から令和8年度予算では24億円へと投資が本格化しています。また、がん診療施設設備整備費補助(3億円)では、新たにAI技術を活用した医療機器を補助対象に追加し、診断精度の向上を図っています。疾病予防分野では、新規に「慢性腎臓病に潜む遺伝性腎疾患早期発見事業」(0.3億円)が開始され、網羅的遺伝子解析による早期診断体制を構築します。HPVワクチン男性接種補助(5億円)や小児インフルエンザワクチン任意接種補助(10億円)は、令和7年度予算から継続して実施され、公衆衛生の向上が図られています。
周産期・小児医療および家族支援
この分野では、医療的ケアだけでなく、家族の心理的・社会的負担の軽減に重点が移っています。令和8年度予算の新規事業として「NICU入院児家族加算」(0.2億円)が創設され、家族同士の交流や情報共有の場を提供する周産期母子医療センターを支援します。また、島しょ地域の妊産婦向けに「島しょ妊産婦宿泊施設確保事業」(0.3億円)を新規に立ち上げ、都立広尾病院等での受入体制を強化します。さらに、グリーフケア体制整備事業を新たに包括補助の対象とし、子供を亡くした家族への専門相談やネットワーク構築を行う区市町村を支援します。子供や家族への療養支援に関する実態調査(0.2億円)や、小児緩和ケアが必要な子供に関する調査(700万円)も新規に実施され、次期計画策定に向けたエビデンス収集が始まります。令和7年度予算で導入されたドナーミルク利用支援事業(0.3億円)等は、令和8年度予算でも継続されています。
在宅医療・リハビリテーションの拡充
在宅医療分野では、区市町村を通じた支援が一段と具体化しています。区市町村在宅療養推進事業(6億円)に加え、在宅療養普及事業(0.6億円)ではダッシュボードの作成や研修会が実施されます。令和8年度予算の新規事項として「在宅療養体制支援医療機関連急整備事業」(1億円)が計上されました。これは自ら24時間体制の在宅医療を提供するとともに、他機関への支援や多職種連携を担う医療機関を補助するもので、地域全体の底上げを狙っています。東京都リハビリテーション病院の運営・大規模改修には、令和7年度予算の32億円から微増の34億円が計上され、基本計画の策定が進められます。なお、令和7年度予算で新規だったACP(アドバンス・ケア・プランニング)実践力の育成事業(0.3億円)は、令和8年度予算においても医療・介護従事者の人材育成として継続されています。
災害医療・救急基盤の強化
救急医療のひっ迫に対応するため、令和8年度予算では最新技術の導入が加速しています。救急相談センター(#7119)の充実強化には、令和7年度予算の10億円から13億円へと大幅な増額が行われ、応答体制が強化されました。新規事業として「マイナ救急の整備」(0.8億円)が開始され、救急隊員がマイナ保険証を活用して傷病者の医療情報を閲覧できる環境を整備します。また、「AI技術を活用した119番通報優先受付」(3億円)を新規に導入し、通報ひっ迫時に火災等の緊急性の高い事案を優先的に着信させる仕組みを構築します。救急搬送患者受入体制強化事業も、令和7年度予算の2億円から4億円へと倍増し、救急救命士の配置を促進します。災害医療に関しては、災害拠点病院事業が令和7年度予算の1億円から2億円へ倍増しました。新規に「災害時の食品衛生対策に係る人材育成事業」(0.1億円)が計上され、マニュアル整備や人材育成が進められます。令和7年度予算で注目された救急受診ガイドのAI化(0.3億円)等の成果が、令和8年度予算のより高度な救急DXへとつながっています。
環境保健および特殊課題への対応
有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)対策については、令和7年度予算の3億円から令和8年度予算では4億円へと増額されました。PFOS等含有泡消火薬剤の転換促進事業では、新たにPFOA含有薬剤を補助対象に加え、戸別訪問による転換促進を強化します。食品汚染調査(0.6億円)も、国の耐容1日摂取量(TDI)設定を踏まえ、PFOS・PFOAを新たな調査項目として追加しています。また、極めて特徴的な新規事項として「火葬場に係る検討委員会」(0.3億円)の設置が挙げられます。これは区市町村と連携し、都内自治体や有識者による検討を行うもので、都市課題としての火葬能力確保に都が踏み込んだ形となります。令和7年度予算で実施された帯状疱疹ワクチン任意接種補助(11億円)は、令和7年度限りの実施として整理されており、令和8年度予算の新たな予防接種重点施策へとリソースがシフトしています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案からは、特別区の政策立案において重要な三つの方向性が示唆されます。一つ目は「デジタルインセンティブによる行動変容」です。女性のがん検診受診応援事業に見られるように、ポイント付与やデジタルツールを活用した受診勧奨は、従来の広報だけでは届かなかった層への有効なアプローチとなります。各区においても、独自ポイント事業との連携や、受診率向上に向けたターゲット別インセンティブ設計が有効です。二つ目は「救急・在宅医療におけるDXの実装」です。都がマイナ救急やAI通報受付を推進する中で、区の保健福祉部門としては、地域の医療機関がいかにこれらのシステムと連携できるか、また、在宅療養ダッシュボード等のデータを地域ケア会議にどう活用するかという視点が求められます。三つ目は「孤立を防ぐ包括的なケア体制」です。グリーフケアやNICU家族支援など、医療の枠を超えた福祉的アプローチが強化されています。区市町村が主体となる包括補助事業を積極的に活用し、住民に最も近い立場として、既存のコミュニティや専門機関をつなぐネットワークを再構築することが、令和8年度以降の政策の鍵となります。
Ⅶ 「スマート東京」「シン・トセイ」の推進:4,430億円
1 「スマート東京」「シン・トセイ」の推進:4,430億円
デジタル関連予算の全体像と推移
令和8年度予算におけるデジタル関連経費は4,430億円となり、令和7年度予算の4,114億円と比較して316億円の大幅な増額となっています。 令和7年度予算では、基幹システムの整備や生成AIの導入といった「基盤構築」に重点が置かれていましたが、令和8年度予算ではそれらを活用した「都民のQOL向上」と「政策DX」の深化へとフェーズが移行しています。 予算の内訳を見ると、行政サービスを快適にする「スマート東京」の実現に2,291億円、業務改革を進める「シン・トセイ」の推進に1,750億円が配分されており、デジタルを単なるツールではなく、都政変革の原動力として位置づけている点が特徴です。
AI活用の深化と専門性の向上
令和8年度予算では、AI施策が「導入」から「高度な専門活用」へと進化しています。 令和7年度予算では、Microsoft 365 Copilotの全職員導入(17億円)や生成AIアプリ構築プラットフォームの整備(2億円)など、全庁的な利用環境の整備が主眼でした。 対して令和8年度予算では、Copilotのライセンス導入費用が39億円へと倍増し、対象を公営企業局や教育庁職員にまで拡大しています。 さらに、新規事業として「大学等と連携した行政特化型国産AIモデルの構築・実証事業(2億円)」を計上し、機密性の高い行政実務に最適化した独自のAI開発に乗り出しています。 また、「職員向けAI人材育成事業(1億円)」や「庁内向けAIワンストップ相談窓口の本格稼働(400万円)」を新設し、ツールを使いこなす組織能力の強化に予算を重点配分しています。 サイバーセキュリティ対策においても、AIを活用したモニタリングの導入(2億円)が新規に盛り込まれ、防御側の高度化を図っています。
「東京アプリ」の展開と都民サービスの質的変容
都民の窓口となる「東京アプリ」に関する施策は、令和8年度予算においてより生活密着型の支援へと舵を切っています。 令和7年度予算では、マイナンバーカードによる本人確認機能の実装や「つながるキャンペーン」による普及(27億円)が中心でした。 令和8年度予算でも同規模の26億円を維持しつつ、機能面ではプッシュ型の情報提供や区市町村サービスとの連携へと踏み込んでいます。 特筆すべき新規事業として、「高齢者のデジタルデバイド解消に向けたスマートフォン活用支援事業(11億円)」が挙げられます。 これは高齢者のスマホ購入を区市町村を通じて直接補助するもので、東京アプリの利用を条件とするなど、アプリを基盤とした福祉政策の側面を強めています。 その他、「公共施設のワンストップな予約の実現(0.9億円)」や「事業者向け手続等ワンストップサービスの構築(0.8億円)」、「東京アプリに関するコンタクトセンターの運営(9億円)」を新規に計上し、ユーザー体験の向上に向けた周辺環境の整備を加速させています。
行政実務の効率化と窓口DXの推進
窓口業務や内部事務の効率化についても、令和8年度予算で具体的な進展が見られます。 令和7年度予算では、BPR推進事業(0.8億円)や都税証明手数料のキャッシュレス化(0.1億円)などが新規で進められてきました。 令和8年度予算ではこれらをさらに発展させ、都税事務所等の窓口において「本人確認書類の自動読み取りやタブレット入力による申請サポートサービス(1億円)」を新規に導入します。 これにより、書かない窓口の実現に向けた実効性を高めています。 また、令和7年度予算で構築された「TOKYOダッシュボード(1億円)」によるデータの可視化を継続しつつ、令和8年度予算ではAI時代における情報リテラシー教育(新規)を都立学校等で実施するなど、デジタルを使いこなす次世代の育成にも予算を充てています。
通信インフラの強靭化とエリア展開
通信環境の整備は、令和8年度予算において「維持・監視」と「冗長化」の視点が強化されています。 令和7年度予算では、携帯基地局の強靭化(30億円)や島しょ地域の衛星通信冗長化(2億円)、OpenRoaming対応Wi-Fiの整備(27億円)など、ハードウェアの整備に巨額が投じられました。 令和8年度予算では、整備されたWi-Fiの「稼働状況監視機能の構築(1億円)」や、自然災害で損傷した「青ヶ島陸上部光ファイバーケーブルの架空線区間埋設工事(1億円)」、海底ケーブルの「維持管理実施計画検討(1億円)」など、持続可能性を高める施策が目立ちます。 また、災害対策や通信困難地域の解消に向けて「高高度プラットフォーム(HAPS)の行政活用に向けた調査・検討(0.5億円)」を新規に継続し、次世代技術の活用模索を続けています。
GovTech東京の役割拡大と自治体支援
区市町村との共同DXを牽引する「GovTech東京」への支援は、令和8年度予算で最大の特徴の一つとなっています。 令和7年度予算におけるGovTech東京の運営費等は46億円でしたが、令和8年度予算では70億円へと大幅に増額されました。 令和7年度予算で実施されていた「区市町村DX共同化促進事業(4億円)」の流れを汲みつつ、令和8年度予算ではGovTech東京を通じて「生成AIプラットフォームの構築・運用」や「区市町村デジタル人材(ICT職等)向け研修」をさらに強化しています。 特に、東京アプリと区市町村サービスの連携をGovTech東京が技術的にバックアップする体制を整えており、オール東京でのデジタル化を資金・技術の両面から強力に推進する姿勢が鮮明になっています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算の分析から得られる特別区の政策立案への示唆は、まず「東京都とのシステム・アプリ連携の深化」です。 東京都が東京アプリを基盤とした区市町村サービスとの連携や、高齢者へのスマホ購入補助を打ち出したことは、区独自のアプリ開発よりも、都の基盤に相乗りしつつ地域固有のコンテンツを充実させる方が投資対効果が高まる可能性を示唆しています。 次に、「AI活用のフェーズ転換への対応」です。 都が国産AIモデルの構築や専門人材育成に予算を割いていることから、各区においても単なるCopilotの利用に留まらず、法務相談や特定事務に特化したAIの活用検討を開始すべき時期に来ています。 また、GovTech東京の予算が大幅増となったことは、区のデジタル人材不足を補うための外部リソースとして、より積極的に同組織を活用する好機と言えます。 最後に、デジタルデバイド対策が「教室」から「購入補助・実利用」へと具体化した点に注目すべきです。 高齢者の外出促進や健康増進施策と、東京アプリのポイント機能を連動させるなど、デジタルをツールとした既存政策のアップグレードを検討することが、都の予算トレンドに合致した実効性の高い政策立案につながります。
Ⅷ 多摩・島しょの振興:3,023億円
1 成熟社会に対応した持続可能なまちづくり:2,674億円
成熟社会に対応した持続可能なまちづくりの全体像
令和8年度予算では、成熟社会への対応と持続可能な都市構造の構築を目指し、2,674億円が計上されました。令和7年度予算の2,636億円と比較して38億円の増額となっており、社会情勢の変化に合わせた施策の拡充が図られています。特に「誰もが輝き、暮らしやすいまちづくり」と「地域を守り、支える都市インフラ整備」の二本柱において、新規事業が多数導入されているのが特徴です。
誰もが輝き、暮らしやすいまちづくりの比較分析
令和8年度予算のこの分野は1,251億円となり、令和7年度予算の1,226億円から微増しています。特筆すべきは市町村総合交付金の拡充です。令和8年度予算では718億円(令和7年度予算は705億円)を計上し、政策連携枠に「地域交通の新たな取組」が新規追加されました。これは令和7年度予算で「学校給食費の無償化」等が強調されていた流れを引き継ぎつつ、より移動の利便性に焦点を当てた変化と言えます。移住・定住促進策においては、令和8年度予算で新たに「多摩・島しょ移住・定住サポーター人材バンク事業」に900万円が割り当てられました。令和7年度予算でも1億円規模の支援事業が新設されていましたが、令和8年度予算ではさらに外部人材を活用した情報発信を強化する方針が明確になっています。また、保健医療分野では、島しょ地域向けの「妊産婦ヘルスケアモニタリング検証事業(700万円)」や「島しょ妊産婦宿泊施設確保(0.3億円)」が新規事業として並び、デジタル技術と物理的拠点の両面から支援体制が強化されています。公立病院運営費補助についても、病床基礎額の引き上げにより、令和8年度予算は39億円(令和7年度予算は34億円)へと拡大されました。
地域を守り、支える都市インフラ整備の比較分析
都市インフラ分野の令和8年度予算は1,356億円に上り、令和7年度予算の1,316億円から40億円増加しました。この増額の背景には、移動の円滑化と強靭化への強い意志が見て取れます。新規事業として「多摩都市モノレールへのシルバーパス対象拡大に向けたシステム改修」に5億円が投じられ、令和9年度中の対象拡大を見据えた準備が始まります。また、ソフト面の強化として「まちづくり人材の確保に向けた支援制度の構築」に3億円が新規計上され、人材不足という構造的課題への直接的なアプローチが開始されました。交通ネットワークの整備では、多摩都市モノレールの整備費が令和8年度予算で26億円(令和7年度予算は15億円)へと大幅に増額されています。加えて「都市・地域交通戦略推進事業費補助金(0.7億円)」や「中央道へのアクセス強化に係る調査(0.3億円)」が新規で盛り込まれ、将来の交通結節点やアクセスの最適化を狙う姿勢が鮮明です。防災面では、市町村下水道事業強靭化都費補助が令和8年度予算で37億円(令和7年度予算は22億円)となり、浸水・地震対策が加速されます。また、「大規模災害対策資機材の整備(林野火災対応)」に3億円が新規投入され、気候変動に伴う災害の激甚化に備える予算編成となっています。
地域産業の振興と環境対策の比較分析
地域産業分野の令和8年度予算は199億円で、令和7年度予算の194億円から着実に積み増しされています。新規事業として「多摩・島しょの新たな観光の魅力創出支援事業」に2億円が充てられ、アドベンチャーツーリズム等の高付加価値なコンテンツ開発が推進されます。令和7年度予算では「多摩・島しょ地域中小企業支援ファンド(20億円)」が新設され、金融面での支援が主軸でしたが、令和8年度予算ではより具体的な集客策や「宿泊施設の送迎車バリアフリー化支援(1,000万円)」といった受入環境の整備にシフトしています。多摩産材の利用促進については、民間利用の促進予算が令和8年度予算で3億円となり、令和7年度予算の1億円から3倍に拡充されました。これにより木造化・木質化の波を官民一体で広げる狙いがあります。自然環境保護では、ツキノワグマ対策の強化が令和8年度予算で2億円(令和7年度予算は0.6億円)と大幅増額になりました。人との棲み分けを図るゾーニング管理調査や防除対策の拡充など、生活圏の安全確保を優先する姿勢が予算額に反映されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案から、特別区の政策立案における重要な示唆を以下にまとめます。
- 移動の利便性向上と福祉施策の融合多摩都市モノレールへのシルバーパス対象拡大や地域交通への交付金拡充は、高齢化社会における移動権利の保障が都の最優先事項の一つであることを示しています。特別区においても、既存の公共交通網を高齢者福祉や子育て支援とどう連動させるか、システム改修等のハード・ソフト両面での検討が必要です。
- 専門人材確保の制度化「まちづくり人材の確保に向けた支援制度」の新設は、自治体単独での専門職確保が限界に来ている現状を反映しています。区独自の人材確保だけでなく、都の支援制度を積極的に活用した広域的な人材融通や、官民連携によるプラットフォーム構築を視野に入れるべきです。
- デジタル技術によるヘルスケアの補完島しょ地域での妊産婦ヘルスケアモニタリングの検証は、地理的な格差をテクノロジーで埋める試みです。これは特別区における孤立しがちな子育て世帯や、独居高齢者の見守り施策へ応用可能なモデルであり、都の検証結果を注視し、区の施策に実装するタイミングを検討する価値があります。
- 民間活力を引き出すインセンティブの強化多摩産材の民間利用予算の三倍増や、観光魅力創出支援の新規計上に見られるように、都は直接執行から民間へのインセンティブ付与へと軸足を移しています。区の産業振興においても、単なる補助金ではなく、新たな市場(ツーリズムや環境配慮型建築など)を創出するための呼び水としての予算活用が求められます。
- 強靭化予算の戦略的獲得下水道の強靭化や大規模災害対策への予算増額は、防災施策への追い風です。都の補助金が拡充されている分野を的確に捉え、区の老朽化インフラの更新計画をこれに合わせることで、財源確保の確実性を高める戦略的なアプローチが推奨されます。
2 島しょにおける個性と魅力あふれる地域づくり:369億円
島しょ地域のブランド化と観光振興の比較分析
令和8年度予算では「島しょの魅力再発見とブランド化に向けた取組」に11億円を計上し、令和7年度予算の10億円から微増しています。内容面では、令和7年度予算で重視されていた「戦略的なプロモーション(G-NETS等でのPR)」や「アプリ運用」から、令和8年度予算では「アクセス多様化に向けた取組(ファムトリップの実施)」や「上質な宿泊施設の誘致(1億円/村の補助)」へと、より実務的・インフラ的な誘客支援へとシフトしています。また、令和8年度予算では新規事業として「地域資源の有効活用(八丈小島)」が追加され、これまでの都直営から島民主体への移行を支援する体制が整えられています。特筆すべきは「サステナブルトラベラーの獲得に向けた観光促進事業」で、令和7年度予算の0.5億円から令和8年度予算では2億円へと4倍に拡充されており、環境配慮型の高付加価値観光への強い意欲が見て取れます。一方、令和7年度予算で新規事業だった「都立大島公園のリニューアルPR(0.3億円)」や「バリアフリー観光整備支援(2億円)」は、令和8年度予算の主要項目からは外れており、ハード整備後のソフト支援や個別具体的なブランド化へと軸足が移っています。
デジタル技術の活用と社会課題解決の比較分析
「サステナブル・アイランド創造事業」については、令和7年度予算の19億円に対し、令和8年度予算は15億円と予算規模は縮小傾向にあります。しかし、令和7年度予算で新規導入された「サステナブル・アイランド推進支援事業」により、施設の本格利活用や自走化に向けたソフト事業の磨き上げが継続されています。デジタル関連では、「デジタル×共創による島しょ地域の社会課題解決モデル創出事業」が令和8年度予算でも2億円を維持しています。令和7年度予算では「AIを活用したクジラ回遊情報提供」や「顔認証システム」など具体的実装が例示されていましたが、令和8年度予算では新規事業として「デジタル技術を活用した島しょ地域の課題解決補助(5000万円/町村)」が新設されました。これにより、各町村が主体的に取り組むデジタル活用に対し、最長3年間の柔軟な補助(1年目10/10)を行う枠組みへと進化しています。
再生可能エネルギーとGXの比較分析
令和8年度予算における最大の注目点は「浮体式洋上風力発電導入推進事業」の劇的な拡充です。令和7年度予算の9億円に対し、令和8年度予算では27億円と3倍の予算が投じられています。2035年までのギガワット級ファーム導入を目指し、風況調査や送電系統の調査に加え、新たに地元住民の理解醸成のための取組を加速化させる方針が示されています。また、令和8年度予算の新規事業として「東京の海を活用する環境親和型海洋発電技術展開事業(0.3億円)」が計上されました。これは大学等との連携による潮流発電などの技術開発プロジェクトであり、令和7年度予算から継続されている「地熱エネルギーの利用可能性調査(0.7億円)」と合わせ、島の特性に応じたエネルギーの多角化を強力に推進する姿勢が鮮明になっています。
産業振興と水産業の高度化の比較分析
水産業分野では、令和8年度予算で複数の新規事業が投入されています。令和7年度予算では「栽培漁業センターの機能強化(3億円)」が中心でしたが、令和8年度予算ではその予算を7億円へと倍増させ、教育展示棟の新設を含めた改築工事を着実に実施します。さらに令和8年度予算の新規事業として、「高付加価値魚種の養殖促進事業(0.5億円)」でのチョウザメ養殖試験や、「島のごちそう、海の宝発信事業(0.3億円)」による水産物の単価向上策が盛り込まれました。これに加えて「土産品等を活用した多摩・島しょ観光プロモーション事業(0.5億円)」も新設され、従来のインフラ整備中心の支援から、稼ぐ力の向上を目的とした商品開発・販路拡大支援へと政策の幅を広げています。
生活基盤と交通インフラの比較分析
交通・物流の維持に向けた危機感が予算配分に反映されています。令和8年度予算では、新規事業として「東京都離島航空路線維持対策緊急補助(0.7億円)」が計上されました。これは円安や物価高騰による事業者の負担増加に対し、国制度の見直しが行われるまでの間、暫定的に町村とともに経費を補助するものであり、令和7年度予算にはなかった緊急性の高い対応です。また、令和7年度予算で新規事業として掲げられた「島の港Re活用(0.2億円)」は、遊休化した港湾施設の利活用を推進するものでしたが、令和8年度予算では「大島空港応接室の整備(400万円)」など、ビジネスジェット利用客をターゲットとした具体的な受入機能強化へとシフトしています。小笠原航空路調査(5億円)や国境離島の維持(1億円)については、両年度ともに同規模の予算が維持されています。
医療・福祉支援の比較分析
医療分野では、令和7年度予算で手厚い新規施策が打ち出されていました。具体的には「島しょ地域リハビリテーション提供体制構築支援事業(0.2億円)」の新設や、「島しょにおける遠隔医療の推進」の予算を令和6年度の200万円から2000万円へと大幅増額するなどの動きがありました。令和8年度予算案の資料内では、これらの項目が「サステナブル・アイランド創造事業」などの広義の課題解決枠に含まれているか、あるいは継続事業として処理されていると考えられます。令和7年度に構築された「医療・リハビリの本土連携モデル」や「5G通信による遠隔診療」の基盤の上に、令和8年度のデジタル課題解決補助などが重なる構造となっています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算の変遷から得られる最大の示唆は、政策フェーズが「実証・構築」から「自走化・高付加価値化」へ完全に移行している点です。特別区においても、DXやカーボンニュートラルの取り組みが「導入すること」自体を目的とする段階を終え、いかに地域経済の「稼ぐ力」に結びつけ、外部要因(物価高騰等)に対する「耐性」を構築するかが問われています。具体的には以下の3点が重要です。第一に、デジタル活用を「都や区の主導」から「現場主体の課題解決」へと補助スキームを転換し、令和8年度予算の新規事業のように、現場の自由度を高めた伴走型支援へのシフトを検討すべきです。第二に、観光・産業施策において「サステナブル」を単なるスローガンに留めず、令和8年度予算での4倍増のように、明確な予算裏付けを持って「富裕層・高付加価値層」をターゲットとしたターゲット選定の鋭敏化が求められます。第三に、洋上風力発電の予算3倍増に見られるように、GX(グリーントランスフォーメーション)を単なる環境対策ではなく、次世代の基幹産業・インフラ整備として位置づけ、民間投資を呼び込むための大規模な予算投入と住民理解のプロセスをセットで設計する大胆さが、今後の大規模政策立案には不可欠です。
事業評価・政策評価・グループ連携事業評価の取組
事業評価・政策評価・グループ連携事業評価の一体的な実施
事業評価および政策評価の全体構造の比較
令和8年度予算では、事業評価、政策評価、グループ連携事業評価の一体的な実施件数が合計1,604件となり、令和7年度予算の1,558件から46件増加しました。評価手法の内訳を比較すると、令和8年度予算では「重点テーマ評価」が新設され、デジタル、広報、出えん金の3つの切り口で39件の重点的な検証が行われています。これに対し令和7年度予算では、デジタル関係評価(24件)やエビデンス・ベースによる評価(9件)など、より個別の手法に基づいた公表が行われていました。令和8年度予算では、事後検証による評価が1,175件と、令和7年度予算の1,103件から大幅に拡充されており、決算状況の検証や将来への影響をより厳格に評価する姿勢が強まっています。
スポーツおよび文化振興分野の変遷
令和7年度予算では「文化・エンターテインメントのある日常の実現」を重点ユニットとし、都民が文化的環境を楽しんでいる割合を60.0%に引き上げることを目標としていました。一方、令和8年度予算ではスポーツへと軸足が移り、「都立スポーツ施設の有効活用」が新たな重要施策として掲げられました。都立スポーツ施設に満足する都民の割合を令和6年度の60.7%から令和12年度には65.0%まで向上させる計画であり、ハード面での活用促進がより重視されています。
産業振興および国際ビジネス分野の転換
令和7年度予算においては「国際ビジネス環境整備の推進」として、外国企業の進出数を令和8年度に1,700社とする高い目標を設定し、スタートアップ戦略と連動した施策を強化していました。これに対し令和8年度予算では、より地域に密着した「稼ぐ農業経営の展開」が新たな重点分野となっています。1農業経営体当たりの産出額を、令和6年度の502万円から令和17年度には1,000万円へと倍増させる野心的な目標を掲げており、グローバル展開から地域産業の生産性向上へとトレンドがシフトしています。
地域活性化と移住施策の深化
令和7年度予算では「客船誘致の推進」などによる観光・交流の促進に焦点が当てられていましたが、令和8年度予算では「多摩・島しょ地域における移住・定住の促進」へと踏み込んだ施策が展開されています。多摩・島しょ地域における地域定住意向を令和6年度の69.2%から令和17年度には85.0%まで高めることを目指しており、単なる交流人口の拡大から定住人口の確保へと、政策の力点がより長期的な地域課題の解決に移っています。
デジタル化の推進と人材育成の加速
令和7年度予算の「データ利活用の推進」では、都知事杯オープンデータ・ハッカソンへのサービス提案件数を120件に増やすなどのアウトプットを重視していました。令和8年度予算ではこれをさらに進化させ、「デジタル人材の確保・育成」を重点ユニットとしています。デジタルツール活用等を推進する人材の養成者数を、令和6年度の628人から令和8年度には1,800人へと約3倍に急増させる計画であり、デジタル技術の利用から、それを使いこなす「人」への投資へと大きく舵を切っています。
共助・ボランティアと防犯対策の強化
令和7年度予算では「働く女性の活躍推進」や「地域防災力の向上」など、既存の社会課題に対する底上げが中心でした。令和8年度予算では「ボランティアの活性化」および「防犯ボランティア活動等の充実」が新たに独立した重点分野として設定されています。ボランティア行動者率を令和12年度までに40.0%へ、防犯ボランティア登録団体数を令和17年度に1,450団体へと引き上げる目標を掲げており、都民の主体的な社会参画を促す施策がトレンドとなっています。
防災および都市インフラの耐震化
令和7年度予算の「地域防災力の向上」では、家庭における防災行動実践率を86.8%にまで高めるなど、ソフト面の対策が主眼でした。令和8年度予算では「民間建築物の耐震化」というハード面の対策が新たに重点化されています。特定緊急輸送道路の総合到達率を令和6年度末の93.8%から令和17年度には100%にすることを目標としており、災害時における都市機能の維持に向けた物理的な安全性の確保を、より強力に推進する方針です。
福祉・医療体制のターゲットの精緻化
令和7年度予算では「バリアフリーの推進」として、ホームドア整備率や心のバリアフリー認知度を指標としていました。令和8年度予算では、より切迫した社会課題である「介護需要に対応した施設整備」へと重点が移り、特別養護老人ホームの定員確保数を令和12年度に64,000人とする具体的な目標が示されました。また、医療分野においても、令和7年度の「災害医療体制の充実」から、令和8年度は「がん検診受診率向上に向けた取組」へと変化し、5つのがん検診受診率を60%以上に引き上げる予防医療の強化が鮮明になっています。
教育施策における不登校対策の最優先化
令和7年度予算では「都立高校の魅力向上」を掲げ、生徒の学習満足度を70.0%に高める施策を展開していました。しかし、令和8年度予算では「不登校対応」が最重要課題の一つとして浮上しています。小学校での学校復帰率を41%、中学校で37%を目指すという具体的なKPIを設定しており、従来の「学校教育の質的向上」から、困難を抱える児童生徒への「個別支援と復帰支援」へと、教育行政の優先順位がシフトしていることが示されています。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
令和8年度予算案の分析から、東京都の政策は「グローバル・広域的課題」から、より「都民生活の質に直結するミクロな課題」へと深化していることが分かります。特に、ボランティア活動の推進や防犯、不登校対応、がん検診受診率向上といった分野は、住民に最も近い特別区が主体となるべき領域であり、都の強力な予算措置を追い風にした連携強化が求められます。各区においても、都が掲げた「デジタル人材1,800人養成」や「特養ホーム64,000人分確保」といった具体的な数値目標に呼応し、区独自の補完的施策を立案することが重要です。また、令和8年度予算で「重点テーマ評価」に広報やデジタルが組み込まれたことは、施策の「届け方」と「効率性」がより厳格に問われる時代の到来を意味しています。特別区の公務員の皆様には、都のトレンドである「人への投資(ボランティア、デジタル人材)」と「ハードの完成(耐震化、施設整備)」のバランスを意識しつつ、区民の日常に寄り添った精緻な成果指標(KPI)の設定を通じた政策形成が期待されます。
事業評価の取組(主な評価事例)
防災・環境分野における投資の大幅拡大と支援対象の拡充
令和8年度予算では、都民の生命と財産を守るための直接的な支援が劇的に強化されています。 出火防止対策に係る区市町村支援では、令和7年度予算の8.3億円から令和8年度予算では17.1億円へと倍増しました。 特筆すべきは「新」たな見直し内容として、従来の購入費用補助に加え、設置費用も補助対象に含めた点です。 これにより、設置率の目標である令和12年度25%(令和6年度実績13.0%)に向けた実効性を高めています。 また、環境面では住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進の増強事業において、令和7年度予算の9億円から令和8年度予算では30億円へと大幅な予算積み増しが行われました。 家庭部門のエネルギー消費増加を背景に、令和7年10月の太陽光発電設置義務化を見据えた強力な誘導策となっています。
生成AIおよび先端技術を活用した行政BPRの本格実装
令和8年度予算の最大の特徴は、生成AIを中心とした先端技術の「社会実装」から「業務特化型実装」への深化です。 警視庁の相談業務支援システム(仮)の構築には1.5億円の「新」規予算が投じられ、生成AIによる相談内容の要約や対応方針の決定支援を行うことで、年間約8万時間の削減を見込んでいます。 私立学校関連業務の効率化においても1億円の「新」規予算が計上され、補助金審査の期間を約2.5週間から約1週間に短縮することを目指しています。 加えて、都税事務所等における電話の全件録音事業(2.3億円・「新」)では、音声データのテキスト化・データ分析によるQOS向上を図ります。 令和7年度予算で導入された家屋評価へのAI活用(0.2億円)や医療機関連携システム(0.9億円)の流れを汲みつつ、より大規模かつ複雑な業務領域へと技術適用を拡大させているのが令和8年度予算の傾向です。
安全・安心と教育分野におけるターゲット別広報の最適化
デジタル技術を単なるツールとしてではなく、戦略的なコミュニケーション手段として活用する姿勢が鮮明になっています。 インターネット利用適正化施策では、令和7年度予算の0.7億円から令和8年度予算では1.1億円に増額し、未就学児の保護者をターゲットとした「新」たなポータルサイト構築や体験型イベントを実施します。 特殊詐欺対策(1.5億円)においても、従来の高齢者向け啓発に加え、若年層・中高年層をターゲットにしたSNS広告やラジオ広告を「新」たに展開します。 教員採用の戦略的広報(1.3億円)では、スマホ閲覧の最適化やユーザー目線のポータルサイト全面リニューアルを行い、採用倍率の維持・向上を図ります。 令和7年度予算で実施された痴漢撲滅プロジェクト(0.5億円)や「わかさぽ」の見直し(1.8億円)と同様に、エビデンスに基づき効果の薄い紙媒体等を削減し、デジタルを通じたプッシュ型広報へシフトする流れが加速しています。
産業振興と働き方の多様化に向けた施策の再構築
既存事業のスクラップ・アンド・ビルドによる質の向上が図られています。 テレワーク普及促進プロジェクトでは、令和7年度予算の3.7億円から令和8年度予算では2.8億円へと予算規模を適正化しつつ、既存の3事業を統合・再構築しました。 「新」たな取組として、導入困難職種向けセミナーやABW(Activity Based Working)実践企業見学会を追加し、普及から定着・深化へとフェーズを移行させています。 中小企業の設備投資支援事業では、令和7年度予算の188億円(補正含む)と同水準の189億円を確保し、賃上げ原資の確保を強力にバックアップします。 指標面でも、単なる採択件数だけでなく「営業利益が増加した事業者数」を「新」たなアウトカム指標として設定し、事業の真の効果を測定する姿勢を示しています。
福祉・住宅・都市基盤のデータ活用と持続可能性の追求
令和7年度予算から続く、データに基づく現状分析と将来予測の活用が定着しています。 住宅政策においては、令和7年度予算で「新」規導入された「空き住戸予測システム(0.6億円)」等を活用し、都営住宅の資産分析に基づいた計画的な修繕を推進しています。 福祉分野では、警察との情報共有システム(令和8年度予算0.5億円)において、従来のメールベースの共有からオンライン化・リアルタイム化へと舵を切りました。 都税事務所の電話録音や、島しょWebアプリの技術評価(令和7年度予算0.2億円)によるWebアプリ化など、ユーザーニーズの分析結果を次年度の予算配分や手法の変更に直結させている点が、令和8年度予算の共通したトレンドです。
特別区公務員に向けた政策立案の示唆
東京都の令和8年度予算案から、特別区の公務員が取り入れるべき政策立案の示唆は以下の通りです。 第一に、単なる「デジタル化」ではなく、業務フローそのものを再設計する「BPR前提のシステム導入」です。 生成AIによる要約やAIによる審査期間の半減など、明確な時間削減効果をKPIに設定する姿勢が求められます。 第二に、補助金制度の柔軟な見直しです。 感震ブレーカーの事例のように、設置費用という住民の心理的・経済的ハードルに踏み込んだ補助対象の拡大は、区独自の施策検討において大いに参考となります。 第三に、広報のターゲット細分化と手法のデジタルシフトです。 全方位的な周知ではなく、SNS広告やポータルサイトのUI改善など、届けたい層に確実に届くデジタル広報への予算シフトを検討すべきです。 最後に、既存事業の統合と指標の高度化です。 類似事業を統合して事務負担を軽減しつつ、アウトカム指標を「活動量」から「利益増加」や「対応日数短縮」といった「住民の利益」に直結するものへアップグレードすることが、今後の政策立案の鍵となります。



