2025.07.05 02 社会経済状況 【2025年7月7日】行政関連ニュースと政策立案のヒント masashi0025 目次 社会経済状況家計調査報告(令和7年5月分)に見る経済実態と政策的含意自治体経営国が主導するPPP/PFI推進と自治体の役割区民との対話を通じた信頼醸成と政策形成環境政策官民連携と住民参加で進めるサーキュラーエコノミーDX政策こども霞が関見学デーにおける生成AIワークショップ生活安全政策新たな犯罪トレンドに対応する「住まいの防犯対策臨時補助金」経済産業政策被災中小企業・小規模事業者への迅速な支援措置子育て、子ども政策「イクメン」から「共育」へ、国の育児支援戦略の転換「こども誰でも通園制度」の試行的実施と基礎自治体の役割教育政策板橋区特別支援学校給食費補助金制度高等学校などの進学先個別相談会の開催福祉政策地域密着型サービス及び都市型軽費老人ホームの事業者公募社会保障保険証廃止に伴う新しい後期高齢者医療資格確認書の送付健康、保健政策ウォーキングマップ事業のリニューアルに見るPDCAサイクル地域振興政策地域コミュニティの結束と賑わいを創出する伝統的イベント文化政策日常空間の活用による文化のデモクラタイゼーションまちづくり、インフラ整備政策東武曳舟駅周辺地区まちづくり方針(素案)のパブリックコメント社会経済状況 家計調査報告(令和7年5月分)に見る経済実態と政策的含意 概要 出典 総務省統計局 1 ニュース概要 令和7年5月の二人以上の世帯の消費支出は、実質で前年同月比4.7%増となった。一方、勤労者世帯の実収入は実質で0.4%増に留まり、物価上昇が依然として家計に影響を与えている状況が示された 1。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国全体の経済動向をマクロな視点で把握し、区民生活に直結する経済状況を客観的なデータで理解するためです。特に、名目値と実質値の乖離は、物価高騰の影響度を測る重要な指標となります 1。 具体的なアクション このデータを基に、区独自の経済対策や生活支援策の必要性を検討します。例えば、特に影響が大きい低所得者層や高齢者世帯を対象とした支援策の立案などが考えられます。 行政側の意図 統計データという客観的根拠に基づき、政策の優先順位を判断する意図があります。「景気は回復している」という一面的な見方ではなく、実質的な生活実感に近いデータを用いることで、より実態に即した政策立案を目指します。 期待される効果 データに基づいた政策立案(EBPM)を推進し、限られた財源をより効果的な分野へ重点的に配分することが期待されます。 課題・次のステップ マクロデータだけでは捉えきれない区内の具体的な影響を把握するため、区内事業者や住民へのヒアリング、独自のアンケート調査などを実施し、ミクロな視点を補完することが次のステップとなります。 特別区への示唆 全体として収入が増加していても、物価上昇により全ての区民がその恩恵を受けているわけではないことを示唆します。一律の支援から、所得階層や世帯状況に応じた「選別的支援」へと政策をシフトさせることの妥当性を裏付けるデータとして活用できます。 自治体経営 国が主導するPPP/PFI推進と自治体の役割 概要 出典 国土交通省 2 ニュース概要 国土交通省は、官民連携(PPP/PFI)を推進するため、自治体と民間事業者の対話の場となる「サウンディング」や、自治体を専門的に支援する「PPPサポーター」の募集を開始した。国の支援体制強化が示された 2。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 老朽化する公共施設の更新や新たな住民サービスの創出において、民間の資金やノウハウを活用し、効率的かつ効果的に事業を実施するためです。財政負担を軽減しつつ、質の高いサービス提供を目指します 3。 具体的なアクション 区が抱える課題(例:公園の再整備、文化施設の運営)について、国のサウンディング制度を活用し、民間事業者から事業化のアイデアや市場性を探る対話を実施します。 行政側の意図 これまでノウハウ不足等でPPP/PFIに踏み出せなかった分野でも、国の支援エコシステムを活用することで、官民連携の可能性を広げる意図があります。行政が単独で抱え込まず、民間との協働を標準的な選択肢とすることを目指します。 期待される効果 民間の創意工夫により、コスト削減やサービス向上が期待されます。また、新たな事業機会が創出され、地域経済の活性化にも繋がります。 課題・次のステップ 複雑な契約を伴うため、職員の専門性向上が課題です。江戸川区の不適切契約事案 4 を教訓に、契約管理やリスク評価に関する研修を強化し、内部統制を徹底することが不可欠です。 特別区への示唆 国の推進は、PPP/PFI活用の好機です。しかし、それは同時に自治体側の高度なマネジメント能力を要求します。攻めの事業展開(PPP活用)と守りのガバナンス強化(契約管理・コンプライアンス)を両輪で進める経営視点が不可欠です。 区民との対話を通じた信頼醸成と政策形成 概要 出典 板橋区 6 ニュース概要 板橋区は、区長と区民が区政や地域の課題について直接話し合う「区民と区長との懇談会」を徳丸地区で開催する。区民の声を直接政策に反映させるための対話の場を設けている 7。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 行政運営の透明性を高め、区民の区政への参加を促進するためです。公式なパブリックコメント 8 とは別に、双方向の対話を通じて、より生の声を吸い上げ、区民の納得感を醸成します 7。 具体的なアクション 特定のテーマ(例:子育て支援、防災)や地域に絞った懇談会を定期的に開催します。オンライン参加も可能とし、より多くの区民が参加しやすい環境を整備します。 行政側の意図 「区が決めて、区民に説明する」という一方通行の関係から、「区民と共に考え、共に創る」という協働の関係へと転換を図る意図があります。区政をより身近なものと感じてもらい、信頼関係を構築します。 期待される効果 計画段階では見えなかった現場の課題やニーズが明らかになり、政策の精度が向上します。また、区民の区政への当事者意識が高まります。 課題・次のステップ 懇談会で出された意見が、その後どのように検討され、政策に反映されたか(あるいはされなかったか)を、参加者にフィードバックする仕組みを構築することが課題です。やりっぱなしにしないことが信頼維持に繋がります。 特別区への示唆 政策形成プロセスにおいて、パブリックコメントのような公式な手続きと、懇談会のような非公式な対話の場を組み合わせることは有効です。重要なのは、単に「聞く」だけでなく、その声にどう「応答したか」を示す責任(レスポンシビリティ)を果たすことです。 環境政策 官民連携と住民参加で進めるサーキュラーエコノミー 概要 出典 板橋区 10 ニュース概要 板橋区は、ライオン株式会社等と連携し、公共施設や商店街に使用済み歯ブラシの回収ボックスを設置。回収した歯ブラシをリサイクルし、手鏡などの新たな製品に再生する事業を推進している 10。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 廃棄物の削減と資源の有効活用を推進し、循環型社会(サーキュラーエコノミー)を構築するためです。これまで焼却・埋立されていたものを、価値ある資源として捉え直す意識を醸成します 10。 具体的なアクション 特定の廃棄物(例:廃食油、衣類)に着目し、リサイクル技術を持つ民間企業と連携協定を締結します。区民が参加しやすいよう、公共施設やスーパー等に回収拠点を設置します。 行政側の意図 行政だけでは難しいリサイクルの仕組みを、専門知識を持つ民間企業と協働で構築する意図があります。また、住民に身近な「歯ブラシ」を対象とすることで、リサイクルへの参加のハードルを下げ、行動変容を促します。 期待される効果 ごみの減量化と最終処分場の延命に繋がります。リサイクル製品をイベント等で配布することで、住民の協力への感謝を示し、さらなる参加意欲を高めることができます 10。 課題・次のステップ 回収率の向上が課題です。回収ボックスの設置場所の拡大や、学校での環境教育と連携した回収キャンペーンを実施するなど、より積極的な周知・啓発活動が求められます。 特別区への示唆 「捨てればごみ、分ければ資源」という物語を具体的に示す好事例です。住民にとって身近な製品を対象に、リサイクルの入口から出口(再生品)までを見せることで、環境問題への関心を高め、自発的な行動を促す効果的な手法として他区でも応用可能です。 DX政策 こども霞が関見学デーにおける生成AIワークショップ 概要 出典 デジタル庁 11 ニュース概要 デジタル庁は「こども霞が関見学デー」で、小中学生を対象に生成AIの安全で効果的な使い方を学ぶワークショップを開催する。未来のデジタル社会を担う人材の育成とリテラシー向上を目指す 11。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 急速に普及する生成AIについて、子どもたちが早期から正しい知識と倫理観を身につけ、創造的に活用する能力を育むためです。将来のデジタルデバイドを予防し、デジタル社会の健全な発展を促します 11。 具体的なアクション 区立の小中学校の授業や、放課後子ども教室、図書館などで、デジタル技術に詳しいNPOや企業と連携し、子ども向けの生成AI体験講座やプログラミング教室を開催します。 行政側の意図 AIを単なる便利なツールとしてだけでなく、その仕組みや潜在的なリスクも合わせて学ばせる意図があります。批判的思考力を持って技術と向き合う「賢い利用者」を育てることを目指します。 期待される効果 子どもたちの創造力や問題解決能力の向上が期待されます。また、保護者も共に学ぶことで、家庭内でのデジタル活用に関するリテラシー向上にも繋がります 11。 課題・次のステップ 一過性のイベントで終わらせず、学校教育のカリキュラムの中に継続的に組み込んでいくことが課題です。教員向けの研修を充実させ、学校現場での実践を支援する体制づくりが求められます。 特別区への示唆 自治体DXは、行政サービスの効率化だけでなく、次世代のデジタル市民を育成する視点も不可欠です。国の動きに呼応し、教育委員会と連携して、地域の子どもたちが最先端の技術に安全に触れる機会を創出することは、未来への重要な投資となります。 生活安全政策 新たな犯罪トレンドに対応する「住まいの防犯対策臨時補助金」 概要 出典 墨田区 28 ニュース概要 墨田区は、全国的に頻発する匿名・流動型犯罪グループによる強盗事件等を受け、区民の住まいの防犯力向上を図るため、防犯カメラや録画機能付きドアホン等の購入・設置費用の一部を補助する臨時措置を開始した 28。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 変化する犯罪情勢に迅速に対応し、区民の生命と財産を守るためです。区民の防犯意識の高まりに応え、具体的な対策(ハード対策)を支援することで、犯罪者に狙われにくいまちづくりを進めます 30。 具体的なアクション 警察と連携して区内の犯罪発生状況を分析し、特に被害が懸念される犯罪の種類に応じた防犯設備の導入を補助対象とします(例:自転車盗難対策にワイヤー錠、空き巣対策に補助錠など)。 行政側の意図 「防犯に努めてください」という呼びかけに留まらず、経済的負担を軽減することで、実際の防犯対策の導入を後押しする意図があります。区民の自助努力を、行政が具体的に支援する姿勢を示します。 期待される効果 各家庭の防犯設備が強化されることで、犯罪の抑止効果(ターゲット・ハードニング)が期待されます。また、地域全体の防犯意識の向上にも繋がります。 課題・次のステップ 補助制度の周知徹底が課題です。区の広報だけでなく、町会・自治会や地域の防犯ボランティアと連携し、制度を必要とする人に情報が届くよう働きかける必要があります。予算には限りがあるため、申請状況のモニタリングも重要です 29。 特別区への示唆 新たな犯罪手口に迅速に対応する「アジャイル型」の政策立案として優れた事例です。ハード対策の支援と同時に、中野区の特殊詐欺防止放送 31 のようなソフト対策(注意喚起)を組み合わせることで、より総合的な防犯政策を展開できます。 経済産業政策 被災中小企業・小規模事業者への迅速な支援措置 概要 出典 経済産業省 32 ニュース概要 経済産業省は、トカラ列島近海の地震で災害救助法が適用された地域に対し、被災した中小企業・小規模事業者向けの支援措置を発表。特別相談窓口の設置、災害復旧貸付、セーフティネット保証4号の適用などを行う 32。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 災害は、地域経済の担い手である中小企業の経営基盤を揺るがし、ひいては地域の雇用や活力を奪うためです。事業の継続と早期の再建を支援し、地域経済へのダメージを最小限に食い止める必要があります。 具体的なアクション 首都直下地震などの大規模災害発生を想定し、国の支援メニューを区の制度に組み込んだ「区独自の被災事業者支援パッケージ」を事前に策定しておきます。 行政側の意図 資金繰り支援(融資・保証)、経営相談、各種補助金申請支援などをパッケージで提供することで、被災事業者が直面する多様な課題にワンストップで対応する意図があります。事業者が事業再建に集中できる環境を整えます。 期待される効果 被災事業者の迅速な事業再開が可能となり、雇用の維持やサプライチェーンの寸断防止に繋がります。地域経済の早期復興が期待されます。 課題・次のステップ 発災時に制度が円滑に機能するよう、平時から商工会議所や金融機関との連携体制を構築し、具体的な手続きや役割分担を確認しておくことが課題です。職員向けの対応マニュアルの整備も不可欠です。 特別区への示唆 この国の支援策は、特別区が大規模災害時に実施すべき施策の雛形です。平時のうちに、この雛形を基に、区の産業特性に合わせた支援策を検討・準備しておくことが、実効性のある事業継続計画(BCP)となります。 子育て、子ども政策 「イクメン」から「共育」へ、国の育児支援戦略の転換 概要 出典 厚生労働省 34 ニュース概要 厚生労働省は、男性の育児参加を促す「イクメンプロジェクト」を、男女が共に育児を担う社会を目指す「共育(トモイク)プロジェクト」へ発展的に刷新。長時間労働の是正など、より構造的な課題に取り組む 34。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 少子化対策や女性の活躍推進の根幹には、育児負担の偏りという構造的な問題があるためです。個人の意識改革(イクメン)だけでなく、社会・企業のあり方を変革する必要があるという認識に基づいています 34。 具体的なアクション 区内企業を対象に、男性の育休取得促進や時短勤務など、働き方改革に積極的に取り組む「共育て推進企業」を認定・表彰する制度を創設します。 行政側の意図 育児を「母親の仕事」でも「頑張る父親の仕事」でもなく、「社会全体で支えるもの」という価値観を醸成する意図があります。特に企業へのアプローチを主軸とし、職場風土の改善を促します 34。 期待される効果 男性の育休取得率向上に加え、取得期間の長期化や家事・育児への実質的な参加が進むことが期待されます。これにより、女性のキャリア継続や第二子以降の出産意欲の向上に繋がります。 課題・次のステップ 企業の理解と協力が不可欠です。特に中小企業では代替人員の確保が難しいため、育休取得に伴う助成金制度の案内や、業務改善コンサルティングなどの支援策を併せて提供することが課題です。 特別区への示唆 国の戦略転換は、育児支援のパラダイムシフトを意味します。特別区は、子育て世帯への直接支援に加え、区内企業の働き方改革を後押しする「間接支援」にも力を入れることで、より実効性の高い子育て支援策を展開できることを示唆しています。 「こども誰でも通園制度」の試行的実施と基礎自治体の役割 概要 出典 中野区 36 ニュース概要 中野区は、親の就労要件を問わず子どもを預けられる国の新制度「こども誰でも通園制度」の試行的実施(令和7年10月〜)に向け、事業を実施する保育所等の二次公募を開始した。地域の受け皿確保を進めている 31。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 保育所等を利用していない未就園児家庭の孤立を防ぎ、保護者の育児負担を軽減するためです。また、子どもにとっても、専門的な環境で他児と関わる豊かな成長発達の機会を保障します 37。 具体的なアクション 区内の保育所等の空き定員や空きスペースの状況を調査し、事業への参加を働きかけます。事業者向けの説明会を開催し、補助金等の支援内容を明確に示して参入を促します。 行政側の意図 令和8年度からの全国本格実施 39 に先立ち、試行的に実施することで、地域のニーズや運営上の課題を具体的に把握し、本格実施に向けた円滑な移行準備を進める意図があります 38。 期待される効果 保護者がリフレッシュする時間を確保でき、精神的な余裕が生まれることで、産後うつや児童虐待のリスクを低減する効果が期待されます。また、潜在的な発達の遅れなどを早期に発見する機会にもなります 40。 課題・次のステップ 受け入れ側の保育士の負担増が大きな課題です。慣れない子どもを短時間で預かる難しさや、在園児への影響を考慮し、加配保育士の人件費補助など、現場の負担を軽減する支援策を十分に講じる必要があります 40。 特別区への示唆 「育児の社会化」という国の新しい理念を、地域で具現化する実行責任が基礎自治体にはあります。理念の実現には、中野区のように具体的な「受け皿」を確保する地道な努力が不可欠であり、その成否は保育現場への十分な支援にかかっています。 教育政策 板橋区特別支援学校給食費補助金制度 概要 出典 板橋区 41 ニュース概要 板橋区は、区立特別支援学校に在籍する児童・生徒の学校給食費を、所得制限なしで全額補助する制度を実施している。保護者の経済的負担を軽減し、教育機会の均等を支援する 41。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 障害のある子どもの家庭における経済的負担を軽減し、保護者が安心して子育てに専念できる環境を整備するためです。教育における機会均等の理念を、給食という具体的な形で保障します。 具体的なアクション 補助対象となる学校や児童・生徒の範囲を明確に定めます。対象者には個別に通知し、申請手続きが不要な形(プッシュ型)で支援を行うことで、利用漏れを防ぎます。 行政側の意図 物価高騰が続くなか、特に家計への負担感が大きい食費を直接支援することで、実効性の高い生活支援を行う意図があります。また、所得制限を設けないことで、煩雑な事務手続きをなくし、全ての対象家庭を公平に支援します。 期待される効果 保護者の経済的負担が軽減されます。また、全ての児童・生徒が同じ給食を食べることを通じて、学校生活における一体感の醸成にも繋がります。 課題・次のステップ 今後、補助対象を私立の特別支援学校に通う区民にまで拡大できるかどうかが検討課題となり得ます。また、給食費以外の学用品費など、他の経済的負担についても実態調査を行うことが考えられます。 特別区への示唆 「誰一人取り残さない」というインクルーシブな社会の理念を、教育分野で具体化した政策です。特に支援を必要とする層に焦点を当て、経済的なセーフティネットを構築する視点は、全ての特別区における教育政策で重要となります。 高等学校などの進学先個別相談会の開催 概要 出典 板橋区 6 ニュース概要 板橋区教育委員会は、区内在住・在学の中学3年生とその保護者を対象に、高等学校等の進学に関する個別相談会を開催する。多様な進路選択を支援し、生徒一人ひとりに合った学びの場を見つける機会を提供する 6。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 生徒や保護者が抱える進路に関する不安や疑問を解消し、情報格差なく、納得のいく進路選択ができるよう支援するためです。教育委員会が中立的な立場で多様な学校の情報を提供することに意義があります。 具体的なアクション 都立・私立高校、高等専門学校、専修学校など、多様な選択肢を提供する参加校を募ります。生徒が気軽に相談できるよう、ブース形式で実施し、プライバシーに配慮した空間を確保します。 行政側の意図 学力だけでなく、生徒一人ひとりの興味・関心や将来の夢に応じた多様なキャリアパスがあることを示す意図があります。偏差値に偏重しない、多角的な進路選択を促し、生徒の自己肯定感を育みます。 期待される効果 生徒と保護者が直接学校の担当者から話を聞くことで、ウェブサイトやパンフレットだけでは得られない具体的な情報を得られ、ミスマッチの少ない進路選択に繋がります。 課題・次のステップ 不登校経験のある生徒や、発達に特性のある生徒など、特別な配慮が必要な生徒向けの相談ブースを設けるなど、よりインクルーシブな相談会の設計が次のステップとして考えられます。 特別区への示唆 中学校から高等学校への移行期は、子どもの将来を左右する重要な時期です。自治体が主体となって、公平で包括的な情報提供の場を設けることは、地域の子どもたちの未来への可能性を広げる重要な教育支援策となります。 福祉政策 地域密着型サービス及び都市型軽費老人ホームの事業者公募 概要 出典 杉並区 42 ニュース概要 杉並区は、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるよう、令和8年度開設を目指し「地域密着型サービス」および「都市型軽費老人ホーム」を整備・運営する事業者を公募型プロポーザル方式で募集している 42。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国が推進する「地域包括ケアシステム」を区のレベルで具現化するためです。高齢者が要介護状態になっても、可能な限り地域との繋がりを保ちながら生活できるための、多様なサービス基盤を計画的に整備します。 具体的なアクション 区の高齢者人口の将来推計や介護ニーズに基づき、整備が必要なサービスの種類と量を定めた「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」を策定し、それに基づき事業者を公募します。 行政側の意図 行政が直接施設を運営するのではなく、民間の多様な事業者の参入を促すことで、競争と創意工夫によるサービスの質の向上を図る意図があります。行政はサービス提供者ではなく、質の高いサービスが供給される環境を整える「プラットフォーマー」の役割を担います。 期待される効果 利用者のニーズに応じた多様な介護サービスの選択肢が増えます。また、小規模な施設が地域に分散して整備されることで、家族が面会しやすくなるなど、利用者本位の環境が実現します。 課題・次のステップ 介護人材の確保が全国的な課題であり、事業者が安定的に運営できるかが最大の懸念点です。公募にあたり、事業者の経営基盤や人材確保計画を厳しく審査するとともに、区として介護人材の確保・定着支援策を講じる必要があります。 特別区への示唆 高齢化が急速に進む特別区において、介護サービス基盤の計画的な整備は喫緊の課題です。杉並区のように、行政が地域の介護需要をマネジメントし、民間活力を引き出す役割を果たすことが、持続可能な地域包括ケアシステムの構築に不可欠です。 社会保障 保険証廃止に伴う新しい後期高齢者医療資格確認書の送付 概要 出典 板橋区 43 ニュース概要 板橋区は、従来の健康保険証廃止に伴い、令和7年8月1日から使用する新しい「後期高齢者医療資格確認書」を対象者全員に送付する。マイナ保険証を持たない人も引き続き医療を受けられるよう配慮する 6。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国の制度変更によって、区民、特に高齢者が医療アクセスに不安を感じたり、混乱が生じたりするのを防ぐためです。基礎自治体として、国の制度を分かりやすく「翻訳」し、区民に確実に情報を届ける責任があります。 具体的なアクション 制度変更のポイント(例:資格確認書が全員に届くこと、限度額適用認定証が一体化され申請不要になること等)をまとめた分かりやすい案内文を作成し、資格確認書に同封します。 行政側の意図 「保険証がなくなるが、病院にかかれるのか」といった区民の不安を先回りして解消し、区役所窓口や医療機関での混乱を未然に防ぐ意図があります。プロアクティブ(事前対応型)な情報提供で、円滑な制度移行を目指します 43。 期待される効果 高齢者などが制度変更に戸惑うことなく、安心して医療機関を受診できます。また、区役所への問い合わせ件数を抑制し、行政事務の効率化にも繋がります。 課題・次のステップ 資格確認書が届かない、紛失した等の個別ケースへの対応や、認知症の高齢者など自身での管理が難しい方への支援策(成年後見人や地域包括支援センターとの連携)を検討することが次のステップです。 特別区への示唆 社会保障制度の大きな転換期において、基礎自治体の丁寧なコミュニケーションが極めて重要であることを示す事例です。デジタル化を推進する一方で、最も配慮が必要な層に寄り添い、不安を取り除く情報発信を徹底することが、行政への信頼を維持する上で不可欠です。 健康、保健政策 ウォーキングマップ事業のリニューアルに見るPDCAサイクル 概要 出典 品川区 44 ニュース概要 品川区は、健康増進のために実施してきた「ウォーキングマップ」冊子の配布と関連アプリの配信を一旦終了し、令和8年3月のリニューアルに向けて準備を進めている。事業の見直しと改善を図る動きである 44。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 施策を「やりっぱなし」にせず、一定期間の成果と課題を評価・分析し、より効果的な事業へと改善するためです。PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回し、施策の質を持続的に高めていきます。 具体的なアクション 事業終了にあたり、アプリの利用率データや利用者アンケートを実施し、満足度、課題、新たなニーズを分析します。その結果を基に、リニューアル版のコンセプトや機能を設計します。 行政側の意図 健康増進事業のマンネリ化を防ぎ、住民の関心を維持・再喚起する意図があります。単なる継続ではなく、戦略的な「リニューアル」を行うことで、事業の新たな価値を創出し、参加者を増やすことを目指します。 期待される効果 利用者の声が反映された、より魅力的で使いやすい事業へと生まれ変わることが期待されます。これにより、区民の健康づくりへのモチベーションが再び高まります。 課題・次のステップ リニューアルまでの空白期間に、利用者のウォーキング習慣が途切れてしまわないよう、代替となる情報提供や簡易なキャンペーンを行うなどの工夫が考えられます。 特別区への示唆 住民の行動変容を促す事業には、継続性の難しさという共通の課題があります。品川区の事例は、事業開始時から数年後の見直しやリニューアルを前提とした「出口戦略」を設計しておくことの重要性を示唆しています。 地域振興政策 地域コミュニティの結束と賑わいを創出する伝統的イベント 概要 出典 しながわ観光協会(品川区) 47 ニュース概要 台東区では「下町七夕まつり」、品川区では「盆踊 ~BONDO~」が開催される。これらのイベントは、地域の伝統文化を継承しつつ、パレードや屋台、多様なステージパフォーマンスで賑わいを創出する 46。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 地域の歴史や文化を継承し、住民の地域への愛着(シビックプライド)を育むためです。また、イベントを通じて人々の交流を促し、希薄化しがちな地域コミュニティの結束力を高める目的があります。 具体的なアクション 地元の町会・自治会や商店街が主体となるイベントに対し、区が後援や補助金の交付、広報協力などの支援を行います。安全確保のための警察・消防との調整役も担います。 行政側の意図 行政が全てを主導するのではなく、地域の自発的な活動を後押しする「黒子」に徹する意図があります。これにより、持続可能で地域に根差したイベント運営を促進します。 期待される効果 地域住民の交流が活発化し、顔の見える関係が構築されることで、平時のみならず災害時の共助の基盤ともなります。また、区外からの来訪者を呼び込み、地域経済の活性化にも繋がります。 課題・次のステップ 運営の担い手の高齢化や後継者不足が多くの地域イベントで課題となっています。若い世代や区内に通勤・通学する人々が企画・運営に参加したくなるような、新たな魅力づくりや仕組みの導入が求められます。 特別区への示唆 地域の祭りやイベントは、単なる娯楽ではなく、地域コミュニティという重要な社会資本を維持・強化するための政策的投資です。地域の活力を維持するために、これらの活動への継続的な支援が重要となります。 文化政策 日常空間の活用による文化のデモクラタイゼーション 概要 出典-(板橋区公式ホームページ/) 49 ニュース概要 板橋区は、新一万円札の顔として注目される渋沢栄一をテーマにしたアート巡回展を、美術館ではなく区立中央図書館で開催する。区民が日常的に利用する場で、気軽に文化芸術に触れる機会を創出している 49。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 文化芸術を、一部の愛好家だけでなく、より多くの区民に届け、その裾野を広げるためです。日常生活の動線上に文化的な接点を設けることで、文化への心理的・物理的な障壁を取り払います。 具体的なアクション 区役所のロビー、駅のコンコース、公園など、区内の様々な公共空間を展示スペースとして活用する「まちじゅうアートギャラリー」事業を展開します。若手アーティストに発表の場を提供することも兼ねます。 行政側の意図 新たな文化施設を建設することなく、既存の公共施設(ストック)を有効活用することで、低コストかつ効率的に文化振興を図る意図があります。図書館という「知の拠点」でアートに触れさせることで、知的好奇心を刺激する相乗効果も狙います。 期待される効果 これまで美術館等に足を運ばなかった層が、偶然アートに触れる機会が増え、文化への関心を持つきっかけとなります。まちの風景が豊かになり、区民の文化的な満足度が向上します。 課題・次のステップ 展示作品の管理・保全や、多様な空間の特性に合わせた展示方法の工夫が課題です。地域の学芸員やアートNPOと連携し、専門的な知見を取り入れた企画運営を行うことが望まれます。 特別区への示唆 文化政策における「発想の転換」を示す事例です。高尚なハコモノを作るだけでなく、身近な公共空間の価値を再発見し、文化発信の拠点として活用することは、財政的制約の中でも文化の力をまちづくりに活かすための賢明な戦略です。 まちづくり、インフラ整備政策 東武曳舟駅周辺地区まちづくり方針(素案)のパブリックコメント 概要 出典 墨田区 50 ニュース概要 墨田区は、東武曳舟駅周辺地区の将来像を示す「まちづくり方針(素案)」を公表し、区民等からの意見(パブリックコメント)を募集している。計画策定プロセスにおける透明性と住民参加を確保する取り組みである 8。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 地域の将来に大きな影響を与えるまちづくり計画について、多様な立場の人々から意見を聴取し、計画に反映させることで、より実効性が高く、住民の納得感のある計画を策定するためです。合意形成プロセスの正当性を担保します。 具体的なアクション 計画素案について、専門的な本編に加え、要点をまとめた分かりやすい概要版を作成・公開します。意見提出方法も、郵送や持参に加え、ウェブフォームなど多様なチャネルを用意します。 行政側の意図 行政だけで計画を決定するのではなく、住民や事業者など、地域のステークホルダーとの協働でまちづくりを進めるという姿勢を示す意図があります。計画策定のプロセス自体を、住民のまちづくりへの関心を高める機会とします。 期待される効果 行政だけでは気づかなかった地域の課題や、新たなアイデアが寄せられ、計画がより良いものになります。また、計画策定への参画を通じて、住民のまちづくりへの当事者意識が醸成されます。 課題・次のステップ 手続きを形式的なものに終わらせないため、寄せられた意見の概要と、それに対する区の考え方(採用・不採用の理由を含む)を丁寧に公表し、フィードバックすることが極めて重要です。この応答責任を果たすことが信頼に繋がります。 特別区への示唆 大規模なまちづくりにおける住民参加の標準的なプロセスですが、その実効性は「意見提出のしやすさ」と「フィードバックの質」に大きく左右されます。住民参加を単なるアリバイ作りではなく、実質的な協働へと昇華させるための丁寧な制度設計と運用が求められます。 #02 社会経済状況#0301 国(社会保障)#05 特別区(23区)#07 自治体経営#08 SDGs・環境#09 DX#12 生活安全#13 経済産業#14 子育て・こども#15 教育#16 福祉#17 健康・保健#18 地域#20 スポーツ・文化#21 まちづくり・インフラ整備#91 取組#92 行政ニュース#99 その他 ABOUT ME 行政情報ポータルあらゆる行政情報を分野別に構造化行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。