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【2025年11月7日】東京都知事記者会見と政策立案のヒント

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1. 台風22号、23号による被害への対応

概要

  • ニュース概要
    • 10月上旬に相次いで襲来した台風22号、23号による被害、特に八丈町に対し、延べ400人以上の職員を派遣し、水道インフラの復旧を精力的に進めました。断水はほぼ解消し、今後は全戸解消と安定供給を目指します。また、被害の大きいエリアでは、申請を待たずに住家被害認定調査をプッシュ型で行い、罹災証明の発行や貸付金申請につなげ、被災者の早期生活再建を支援します。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 深刻な被害を受けた被災者の生活基盤(特に水道)を迅速に回復させ、早期の生活再建を実現するため。
  • 具体的なアクション
    • 職員のべ400人以上派遣、水道復旧作業、プッシュ型住家被害認定調査の実施。
  • 行政側の意図
    • スピード感を持ったインフラ復旧と、被災者の負担を軽減するプッシュ型支援により、きめ細やかなサポートを行う姿勢を示す。
  • 期待される効果
    • 被災者の生活の早期安定化、生活再建への円滑な移行、および地域の早期復旧・復興。
  • 課題・次のステップ
    • 全戸の断水解消と、その後の安定的な給水体制の確立。継続的な生活再建支援の実施。
  • 特別区への示唆
    • 首都直下地震など、特別区内で大規模災害が発生した際にも、インフラ復旧と被災者支援の迅速な展開が求められます。特に「申請を待たないプッシュ型支援」は、区民の負担を大幅に軽減する手法として、具体的な実施計画や訓練に取り入れることが重要です。また、島しょ部への職員派遣は、広域自治体としての都の役割ですが、区としても応援体制の確認が求められます。

2. 補正予算の編成指示

概要

  • ニュース概要
    • 台風被害からの復旧・復興支援(被災者住宅、農業・観光業など事業者支援)と、依然として続く物価高騰への対応(都民生活、中小事業者支援)が急務であるため、第4回定例会に向けた補正予算の編成を指示しました。これまで予備費で対応してきましたが、一日も早い復旧と生活安定のため、国の経済対策の動向も見極めつつ、都として必要な対策を講じます。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 災害復旧と物価高騰という、喫緊かつ影響の大きい二つの課題に対し、既存の予算(予備費)に加え、追加の財政措置を迅速に講じるため。
  • 具体的なアクション
    • 第4回定例会での補正予算編成の検討指示。
  • 行政側の意図
    • 国の動向を注視しつつも、都民の生活や事業者の経営環境を守るため、都として機動的かつ主体的に財政出動を行う姿勢を示す。
  • 期待される効果
    • 台風被災地の早期復旧・復興の促進、および物価高騰の影響を受ける都民・中小事業者の経済的負担の軽減。
  • 課題・次のステップ
    • 国の経済対策を見極めつつ、具体的かつ効果的な支援策を盛り込んだ補正予算案を迅速に策定すること。
  • 特別区への示唆
    • 物価高騰は特別区においても共通の深刻な課題です。都の補正予算の内容を注視し、都の支援策を区民や事業者に的確に届ける体制を整える必要があります。また、都の施策に連動、あるいは補完する形で、区独自の追加支援策を迅速に企画・実施できるよう、財源や制度設計の準備が求められます。

3. 東京2025デフリンピック開幕

概要

  • ニュース概要
    • 聴覚障害者のための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が、11月15日から26日まで開催されます。1924年の第1回大会から100周年の記念すべき大会であり、日本では初開催です。80の国・地域から約3千人の選手が参加し、競技観戦は無料です。大会期間中、交流拠点「デフリンピックスクエア」ではデジタル技術を体験できる「みるTech」も開催されます。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • きこえない・きこえにくい方々への理解を深め、誰もが輝くインクルーシブな社会を実現する契機とするため。
  • 具体的なアクション
    • 競技の無料観戦提供、交流拠点設置、デジタル技術体験プログラム(みるTech)の実施。
  • 行政側の意図
    • 多くの都民に大会に関心を持ってもらい、デフアスリートを応援する機運を醸成する。同時に、手話言語やデジタル技術を活用したユニバーサルコミュニケーションを推進する。
  • 期待される効果
    • 大会の盛り上がりを通じた、共生社会への理解促進と、関連するコミュニケーション技術の普及・啓発。
  • 課題・次のステップ
    • 大会期間中の円滑な運営(特に情報保障)と、大会後もインクルーシブな取組をレガシーとして定着させること。
  • 特別区への示唆
    • デフリンピック開催は、聴覚障害者への理解や情報保障の重要性を区民に啓発する絶好の機会です。区の窓口業務における手話通訳配置の強化、文字やタブレット端末によるコミュニケーション支援、区主催イベントでの手話通訳や字幕の導入など、区の「おもてなし」や情報アクセシビリティを点検・強化する契機とすべきです。

4. ねんりんピック東京大会キャッチコピー募集

概要

  • ニュース概要
    • 2028年(3年後)に東京で初めて開催される、60歳以上の方々を中心としたスポーツ・文化の交流大会「ねんりんピックChōju東京2028」の開催が決定しました。全国から1万人以上の選手が参加予定です。大会を広く知ってもらい親しみやすいものにするため、「誰もがいつまでも輝ける社会」や「東京らしさ」を表すキャッチコピーを12月12日まで募集します。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 3年後に開催される大規模イベントの認知度を早期から高め、高齢者の社会参加や健康増進を促進する機運を醸成するため。
  • 具体的なアクション
    • 大会の愛称(ねんりんピックChōju東京2028)を決定し、キャッチコピーを一般公募する。
  • 行政側の意図
    • キャッチコピー募集という都民参加型の企画を通じて、大会への関心と愛着を早期から高める狙いがある。
  • 期待される効果
    • 大会への関心の喚起と、「誰もがいつまでも輝ける社会」という大会の基本理念の社会的な浸透。
  • 課題・次のステップ
    • 多くの応募を集め、大会の象徴となるキャッチコピーを選定し、今後の広報活動に効果的に活用していくこと。
  • 特別区への示唆
    • ねんりんピックは都内37区市町村で実施される予定であり、高齢化が進む特別区にとって、高齢者の生きがいづくりや健康増進は最重要政策の一つです。大会開催を区民、特に高齢者層に周知し、参加機運を高めるための啓発活動や、区内で実施される可能性のある種目を見据えた関連イベントの企画などを検討する必要があります。

5. アフォーダブル住宅供給促進ファンド運営事業者候補の選定

概要

  • ニュース概要
    • 子育て世帯などが手頃な家賃(市場家賃の80%程度)で良質な住宅に住めるよう、都が100億円、民間資金100億円以上、合計200億円以上の規模を目指す国内初の「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の運営事業者候補として4つのコンソーシアムを選定しました。空き家活用やひとり親支援などもテーマに含まれ、来年度以降、合計300戸程度の供給が順次開始される見込みです。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 希望する人が安心して子供を産み育てられる社会の実現に向け、高騰する住居費の負担軽減(アフォーダブル住宅の供給)が不可欠であるため。
  • 具体的なアクション
    • 官民連携ファンドの運営事業者候補(4コンソーシアム)の選定。
  • 行政側の意図
    • 都の出資(100億円)を呼び水として民間資金とノウハウを最大限に活用し、民間主体でのアフォーダブル住宅供給を促進する仕組みを構築する。
  • 期待される効果
    • 子育て世帯等の住居費負担の軽減、良質な住宅ストックの形成、および空き家の有効活用促進。
  • 課題・次のステップ
    • 候補事業者との詳細調整・契約締結を経て、来年度以降、計画通り(300戸程度)供給を開始すること。
  • 特別区への示唆
    • 住宅価格・家賃の高騰は、特別区において最も深刻な課題の一つです。都のファンド事業は、区の子育て支援策や定住促進策とも密接に関連します。区として、このファンドを活用した住宅が区内に供給されるよう働きかけると共に、区有地の活用や区内の空き家情報を提供するなど、都や事業者と連携し、地域の実情に応じたアフォーダブル住宅の供給を促進する施策が検討可能です。

6. 冬のHTT推進

概要

  • ニュース概要
    • この冬の電力需給見通しは予備率4.8%と、昨年より厳しい状況が予測されています。脱炭素社会の実現に向け、都は電力を「へらす・つくる・ためる」冬のHTTの取組を推進します。夏に続きチョコレートプラネットさんと、新たに堀越麗禾さんを起用した新PR動画を公開し、二重窓、太陽光パネル、電気自動車導入などへの補助金活用を呼びかけます。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 厳冬期の電力需給の安定化と、気候危機対策としての脱炭素化という二つの要請に、都民の行動変容を促すことで対応するため。
  • 具体的なアクション
    • 新PR動画の公開、および二重窓、太陽光、EV等への導入補助金制度の周知。
  • 行政側の意図
    • 著名人を起用したPR動画で都民の関心を引きつけ、省エネ(へらす)だけでなく、創エネ(つくる)・蓄エネ(ためる)設備の導入補助金活用という具体的な行動を促す。
  • 期待される効果
    • 都民の省エネ行動の促進、および再生可能エネルギー・蓄エネルギー設備の普及による、電力需給の安定化と脱炭素化の推進。
  • 課題・次のステップ
    • 補助金制度の周知徹底と申請手続きの円滑化、および都民一人ひとりの継続的な行動変容の定着。
  • 特別区への示唆
    • 夏に続き、冬のHTT推進が開始されました。特別区としても、区民や区内事業者に対し、都の補助金制度を積極的に周知(区報、SNS、窓口等)することが重要です。また、区の公共施設での率先した省エネ対策や、地域イベントでの啓発活動など、区独自の取組と組み合わせることで、地域全体でのHTTの機運を高めることができます。

7. 都庁舎プロジェクションマッピング新コンテンツ公開

概要

  • ニュース概要
    • 東京のナイトタイム観光振興策として2024年2月から開始した都庁舎のプロジェクションマッピング「TOKYO Night & Light」の累計観覧者数が100万人を突破しました。この流れを継続するため、国内外で人気のアニメ「ブルーロック」を題材とした新コンテンツを11月22日から上映開始します。初日には声優によるミニイベントも開催されます。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
    • 過去最高の水準となっている訪日外国人旅行者の流れを確実に取り込み、東京の夜の魅力を高め、ナイトタイムエコノミーを活性化させるため。
  • 具体的なアクション
    • 人気アニメ「ブルーロック」とタイアップした新コンテンツの上映開始。
  • 行政側の意図
    • 国内外で人気のあるアニメコンテンツを活用することで、新たな客層(アニメファン、若者層)を都民広場に誘引し、東京の新たな観光スポットとして定着させる。
  • 期待される効果
    • ナイトタイムエコノミーの活性化、インバウンドを含む観光客の誘客促進、および東京の都市魅力の国内外への発信。
  • 課題・次のステップ
    • 継続的なコンテンツ更新による魅力の維持と、観覧者の安全確保、騒音など周辺環境への配慮。
  • 特別区への示唆
    • 都庁舎という象徴的なランドマークを活用した大規模な事例ですが、プロジェクションマッピングや人気コンテンツ(アニメ、キャラクター等)とのタイアップは、集客や地域活性化の手法として有効です。特別区でも、区の施設、公園、商店街イベント等で、デジタル技術やコンテンツを活用した魅力発信や、夜間のにぎわい創出(ナイトタイムエコノミー)施策を検討する際の参考となります。

質疑応答(要約)

  • アラブ諸国訪問の成果
    • 中東4か国を訪問し、ドバイとの都市間連携合意、リヤドのFII登壇、サウジ・クウェートでの東京のイノベーションやコンテンツ(キャプテン翼など)のトップセールス、カイロとの友好35周年記念など、多岐にわたる成果がありました。今後も都市間連携やビジネスの売り込みを進め、東京のプレゼンス向上を図ります。
  • 高市首相の外交姿勢
    • 総理就任直後の外交活動を評価しました。日本の総理は国会対応に追われ海外訪問が難しい現状を指摘しつつ、高市総理には国会対応を乗り越え、海外でのプレゼンスも含め日本をしっかり発信してほしいと期待を述べました。
  • アフォーダブル住宅
    • 官民連携で社会課題(手頃な住宅確保)を解決する意義は大きいと強調しました。まずは300戸を手始めとし、空き家活用にも期待を示しました。入居条件などの詳細については、これから練りながら進めていくと回答しました。
  • 島しょ部の台風被害と補正予算
    • 八丈島などの被害状況が見え、農業や観光業の立て直しに費用が見込まれること、また物価高騰が依然続いていることから、補正予算の編成を指示しました。これから内容を具体的に組み上げていく段階であると述べました。
  • (局地激甚災害指定)
    • 台風被害が国の局地激甚災害に指定される見込みであることについて、この指定を復旧・復興への弾みとしていきたいと述べました。
  • 八丈島の教職員住宅(レッドゾーン)
    • 島に赴任する教職員の安全な生活環境確保は大切であると認識を示しました。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)指定後の対応として、新規住宅建設を進めていたものの、入札不調等で遅れている事実は認めました。詳細は教育委員会に尋ねるよう促しました。
  • 政府の重点投資分野
    • 国が定めたAI、半導体など17の戦略分野はどれも必要と認識。「2050東京戦略」と重なる部分もあり、都としては日本全体をリードする勢いで取り組むと述べました。国には成長を阻害しない規制のあり方を期待するとしました。
  • 都立高校の魅力向上
    • 公教育は国の土台であり、誰にも教育が受けられる基礎であると強調しました。農業・工科高校などニーズを先取りした教育や、教員の働き方改革も含め、総合的な議論を有識者会議に期待すると述べました。
  • 東京アプリ
    • 7千ポイント付与キャンペーンについては、最終的な検証を行った上で速やかに実施する予定と回答しました。ダウンロード数が32万件にとどまっている点については、中身(コンテンツ)の充実が重要であり、現在そのための作業を進めていると説明しました。
  • 八丈島へのキャンピングカー派遣
    • 資材運搬や組立に時間がかかる島しょ部において、即時使用可能なキャンピングカーは有効であると述べました。現在は現地での作業関係者の滞在施設などとして利用しており、今後のニーズに合わせて柔軟に活用していく考えを示しました。
  • 東京の住宅価格高騰と投資目的の転売
    • 住宅価格は需要と供給で決まるとしつつ、対策としてアフォーダブル住宅の供給(まず300戸)を開始したと述べました。また、投資目的の購入の約8割は国内からという情報も紹介し、官民連携で住宅施策を進めていくとしました。
  • タイ人少女の性的マッサージ事件
    • 都内で12歳の少女に性的マッサージをさせたとして男が逮捕された事件について、詳細は承知していないと前置きしつつ、「ひどい話だ」と不快感を示し、今後同様のことがないよう手立てを講じてほしいと述べました。
  • 来年度予算要求
    • 各局からの要求額が過去最大となったことについて、「人」が輝く東京の実現に向けた積極的な施策構築の結果と受け止めました。今後はワイズスペンディングの観点から精査し、2050東京戦略も見据えた長期的視点で予算を編成していくと述べました。
  • クマ被害
    • 全国のクマ被害について、生態系の崩れが最大の理由と指摘しました。警察官のライフル使用等は目の前の方策としつつ、クマの行動予測や情報共有(「TOKYOくまっぷ」)も重要であると述べ、人の命を守るため速やかに対応すべき大きな案件との認識を示しました。

出典

小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和7年11月7日)

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