【東京都】2025年農林業センサス(農林業経営体調査)東京都分調査結果報告
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:東京都「2025年農林業センサス(農林業経営体調査)東京都分調査結果報告」令和8年10月15日
概要
東京都総務局は令和8年10月15日、令和7年2月1日現在で実施した2025年農林業センサス(農林業経営体調査)の東京都分の調査結果を公表しました。農林業センサスは、農林業の生産構造や就業構造など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成・提供することを目的として、5年ごとに行われる調査です。
東京都の農林業経営体数は4,281経営体で、前回の2020年調査と比べて943経営体、率にして18.1%減少しました。このうち農業経営体は4,184経営体で933経営体(18.2%)の減少、林業経営体は128経営体で24経営体(15.8%)の減少です。全国の農業経営体は83万6,054経営体で22.3%の減少であり、東京都の減少率は全国より4ポイント程度小さいものの、5年間で2割近い経営体が姿を消したことになります。東京都の農業経営体数は全国の0.5%で、都道府県別の順位は2015年、2020年、2025年のいずれも47位です。
農産物の販売金額規模別に農業経営体数の構成比を見ると、東京都全体では「100万円~300万円未満」が25.0%で最も多く、「50万円未満」が21.1%、「50万円~100万円未満」が15.5%と続きます。地域別では、区部と市部で「100万円~300万円未満」がそれぞれ28.6%と24.7%で最も多い一方、西多摩郡では「販売なし」が25.3%、島部では「50万円未満」が26.1%で最も多く、同じ都内でも農業の姿は地域によって大きく異なります。
特別区にとって、この調査は区内の農業の現在地を確かめる数少ない全数調査です。東京都の統計表によれば、区部の農業経営体は669経営体で、2020年の809経営体から140経営体(17.3%)減少しました。区部の経営耕地面積は約453ヘクタールで、5年間で約55ヘクタール(10.8%)減っています。都市農業振興基本法のもとで都市農地を保全し活用する方向に政策が転換して10年余り、その成果と限界を数字で確かめ、区の農地・農業政策を見直す材料として読む価値があります。
意義
都市の中の農業を数字で捉える全数調査
区内にどれだけの農家があり、どれだけの農地を耕し、どのような規模で販売しているかを網羅的に把握できる統計は限られています。農林業センサスは、一定規模以上の農林業を営むすべての経営体を対象とする全数調査であり、区市町村別の集計表が公表されます。区が農業振興の計画を立てたり、生産緑地や区民農園の施策を評価したりする際に、客観的な基礎資料として用いることができます。
5年ごとに同じ基準で調査が繰り返される点も重要です。単年の数値だけでは、農業が縮小しているのか、どの程度の速さで変化しているのかは分かりません。2015年、2020年、2025年の3時点を並べることで、変化の方向と速度を読み取ることができます。
減少の速度と構造を読む
東京都の農業経営体数は、2015年の6,023経営体から2020年の5,117経営体、2025年の4,184経営体へと減少してきました。10年間の減少率は30.5%で、全国の39.3%よりは緩やかです。直近5年の減少率も、東京都の18.2%に対して全国は22.3%でした。
ただし、減少が緩やかであることは、農業が安定していることを意味しません。東京都の農業経営体の多くは小規模な家族経営であり、経営主の高齢化や相続を契機に営農をやめる例が少なくないと考えられます。減少率の差は、都市農地を保全する制度が一定の歯止めとして働いている可能性を示す一方、その歯止めの下でもなお5年で2割近くの経営体が減っているという事実を突きつけています。
区部の農業が担う役割を考える材料
区部の農業経営体は669経営体で、東京都全体の約16%を占めます。経営耕地面積も約453ヘクタールで、東京都全体の約15%です。農業の規模としては小さくても、住宅地の中にある農地は、新鮮な農産物の供給にとどまらず、災害時の避難空間、緑と景観、子供の食育や農業体験、地域の交流の場といった多様な役割を担っています。
センサスの数字は、こうした役割を支える基盤がどの程度残っているかを示す指標でもあります。区の緑の基本計画、防災計画、食育推進計画など、農業以外の計画にとっても、区内の農地と担い手の動向は前提条件になります。
歴史・経過
農林業センサスの位置づけ
農林業センサスは、5年ごとに行われる農林業の全数調査で、2025年調査は令和7年2月1日を調査期日として実施されました。調査の対象となる農業経営体は、経営耕地面積が30アール以上の農業を営む者や、露地野菜の作付面積15アール、施設野菜の栽培面積350平方メートル、果樹の栽培面積10アールなど一定規模以上の農業を営む者、調査期日前1年間の農産物の総販売額が50万円相当以上の者、農作業の受託事業を行う者などです。
この外形基準は、区部の農業を読むうえで重要な意味を持ちます。住宅地の中の小さな農地で、販売額も少ない営農は、基準を下回って調査の対象外となる場合があります。センサスが捉えているのは一定規模以上の経営体であり、区内で行われている農的な活動のすべてではない点に留意が必要です。
都市農地の位置づけの転換
都市の農地は、長く宅地化を前提とした土地として扱われてきました。この位置づけを転換したのが、平成27年4月22日に施行された都市農業振興基本法です。同法は都市農業の安定的な継続と、都市農業の有する多様な機能の十分な発揮を図り、良好な都市環境を形成することを目的としています。これに基づく都市農業振興基本計画は平成28年5月13日に閣議決定されました。
制度面の手当ても続きました。平成29年の生産緑地法の改正では特定生産緑地制度が創設され、指定から30年を経過した生産緑地について、税制の特例措置を続けたうえで、買取りの申出ができる時期を10年延ばせるようになりました。平成30年には都市農地の貸借の円滑化に関する法律が制定され、生産緑地を貸し借りしやすくする仕組みが整えられています。
2022年問題とその後
平成4年(1992年)の新しい生産緑地法の施行時に指定された生産緑地は、令和4年(2022年)に指定から30年を迎えました。所有者が一斉に買取りを申し出て、大量の農地が宅地として市場に出るのではないかという懸念は「2022年問題」と呼ばれました。
東京都の調査によれば、令和4年11月30日現在で、平成4年度に指定された都内の生産緑地地区2,388ヘクタールのうち、93.7%にあたる2,239ヘクタールが特定生産緑地に指定されています。大量の農地が一度に失われる事態は避けられたと見ることができます。一方で、特定生産緑地に指定されなかった生産緑地や、指定後に相続などを契機として解除される生産緑地もあり、農地の減少そのものが止まったわけではありません。今回のセンサスで区部の経営耕地面積が5年間で1割余り減少したことも、この状況と整合的です。
現状データ
東京都全体の推移
東京都の農林業経営体数は、2015年が6,212経営体、2020年が5,224経営体、2025年が4,281経営体です。農業経営体は6,023経営体、5,117経営体、4,184経営体、林業経営体は302経営体、152経営体、128経営体と推移しました。農業経営と林業経営を併せて営む経営体があるため、農業経営体数と林業経営体数の合計は農林業経営体数と一致しません。
全国と比べると、全国の農林業経営体数は2015年の140万4,488経営体から2025年の84万7,031経営体へ、農業経営体数は137万7,266経営体から83万6,054経営体へと減少しています。直近5年の減少率は、農林業経営体で全国22.5%に対し東京都18.1%、農業経営体で全国22.3%に対し東京都18.2%、林業経営体で全国31.5%に対し東京都15.8%でした。林業経営体の都道府県別順位は、2015年の44位から2020年の42位、2025年の39位へと上がっていますが、これは東京都の林業経営体が増えたからではなく、他の道府県の減少がより大きかったことによるものです。
全国の確定値では、個人経営体が79.6万経営体で23.3%減少する一方、団体経営体は4万経営体で4.9%増加し、うち法人経営体は3.4万経営体で10.1%増加しました。1経営体当たりの経営耕地面積は3.6ヘクタールで、16.1%拡大しています。基幹的農業従事者は103.6万人で24.0%減少し、平均年齢は67.7歳です。経営体の数が減るなかで、残った経営体の規模が拡大し、法人化が進むという構造の変化が全国で進んでいます。
区部の農業の規模と変化
東京都の統計表によれば、区部の農業経営体は2020年の809経営体から2025年の669経営体へ、140経営体(17.3%)減少しました。同じ期間に市部は3,629経営体から2,970経営体へ18.2%、町村部は679経営体から545経営体へ19.7%減少しています。町村部の内訳を見ると、島部は507経営体から395経営体へ22.1%減少した一方、西多摩郡は172経営体から150経営体へ12.8%の減少でした。区部の減少率は市部や町村部をやや下回るものの、その差は大きくありません。
区別では、練馬区が211経営体で最も多く、区部全体の約3割を占めます。次いで世田谷区が150経営体、江戸川区が90経営体、葛飾区が63経営体、杉並区が56経営体、足立区が55経営体です。2020年と比べると、練馬区は275経営体から64経営体(23.3%)、世田谷区は195経営体から45経営体(23.1%)減少しており、経営体数の多い区ほど減少の実数も大きくなっています。江戸川区は102経営体から90経営体、葛飾区は70経営体から63経営体、杉並区は60経営体から56経営体、足立区は58経営体から55経営体でした。
区部の経営耕地面積は、2020年の5万763アールから2025年の4万5,282アールへ、5,481アール(10.8%)減少しました。東京都全体の経営耕地面積は同じ期間に17.2%減少しており、区部の減少率はこれを下回ります。経営耕地のある経営体1つ当たりに直すと、2020年の約62.9アールから2025年の約68.6アールへ拡大しています。経営体の数の減少率に比べて面積の減少率が小さいことから、営農をやめた経営体の農地の一部が、残った経営体に引き継がれている可能性があります。
この点に関連して注目されるのが、借り入れた耕地の増加です。区部で耕地を借り入れている経営体は2020年の29経営体から2025年の37経営体へ増え、借入耕地の面積は5,298アールから9,042アールへと約7割増加しました。区部の経営耕地に占める借入耕地の割合は、約1割から約2割に高まっています。両年の統計表では項目の表記が異なり、対象となる経営体の数も少ないため幅を持って見る必要がありますが、農地の貸し借りが、農地を引き継ぐ経路の一つになりつつある可能性を示す数字です。
ただし、農林業センサスは他の地域に通って耕作している耕地も経営体の経営耕地として数える属人統計であり、区部の経営耕地面積は区内にある農地の面積と必ずしも一致しません。区部の経営耕地の約8割は畑です。
販売金額規模の地域差
農産物販売金額規模別の構成比を地域別に見ると、区部の特徴がはっきりします。区部では「販売なし」が5.4%と、都内の地域の中で最も低く、全国の6.7%も下回ります。「50万円未満」も15.5%と最も低く、「50万円~100万円未満」が19.6%、「100万円~300万円未満」が28.6%、「300万円~500万円未満」が13.9%、「500万円~1000万円未満」が10.0%、「1000万円以上」が7.0%です。販売金額300万円以上の経営体は合わせて30.9%で、東京都全体の29.0%を上回ります。
市部の構成は東京都全体とほぼ同じで、「100万円~300万円未満」が24.7%で最も多くなっています。これに対し西多摩郡は「販売なし」が25.3%と突出する一方、「1000万円以上」も14.7%と都内で最も高く、販売をしない経営と販売金額の大きい経営が併存する構造がうかがえます。島部は「50万円未満」が26.1%で最も多く、「1000万円以上」は3.0%にとどまります。全国では「1000万円以上」が15.1%を占めており、東京都全体の6.6%との差は、販売金額の大きい経営が全国に比べて少ないという東京の農業の特徴を表しています。
区部の構成からは、一定の販売を行う中小規模の経営が中心であることがうかがえます。農地の規模が限られるなかで、庭先や直売所での販売、学校給食への供給、市場への出荷などを通じて、多くの経営体が一定の販売を行っていると考えられます。
担い手の年齢と後継者
個人経営体の基幹的農業従事者の平均年齢は、東京都全体で65.2歳、区部で64.8歳、市部で65.1歳、町村部で67.0歳、島部で67.7歳です。全国の基幹的農業従事者の平均年齢が67.7歳であることと比べると、区部の担い手は全国平均より3歳ほど若いことになります。農業従事者全体の平均年齢も、区部は63.2歳で、東京都全体の63.7歳をやや下回ります。
とはいえ、区部の基幹的農業従事者の平均年齢が60歳代半ばにあることを踏まえると、今後10年から15年の間に多くの経営で世代交代か廃業かの判断が迫られる可能性が高いと見られます。
この点で重要なのが後継者の確保状況です。区部の農業経営体669経営体のうち、後継者を確保していない経営体は280経営体で、全体の41.9%を占めます。東京都全体の49.8%よりは低いものの、区部でも4割を超える経営体で後継者が決まっていません。後継者を確保している389経営体のうち375経営体は後継者が親族で、親族以外の経営内部の人材や経営外部の人材は合わせて14経営体にとどまります。5年以内に後継者に経営を引き継ぐ意向がある経営体は210経営体(31.4%)です。担い手の承継が円滑に進むかどうかが、区部の農業の将来を左右すると考えられます。
読み取る際の注意点
農林業センサスの対象は一定規模以上の経営体に限られるため、規模の小さい農的な活動は数に含まれません。区民農園や体験農園の利用者、小規模な自家消費の栽培などは、センサスの数字には表れません。
経営耕地面積は属人統計であり、区部の経営体が区外で耕作する農地も含まれる一方、区外の経営体が区内で耕作する農地は含まれません。区内の農地の面積を把握するには、生産緑地の指定面積や固定資産の課税台帳など、別の資料と組み合わせる必要があります。
区別の数値は東京都の統計表から引用しています。区によっては経営体数が少なく、数経営体の増減で割合が大きく変動するため、区ごとの減少率を単純に比べる際には注意が必要です。
政策立案の示唆
この取組を行政が行う理由
第一の理由は、都市の農業の実態を把握する手段が限られていることです。都市の農地は相続や売却によって一筆単位で失われていき、その変化は日常の行政事務の中では見えにくいものです。全数調査を5年ごとに同じ基準で実施し、区市町村別に公表することで、行政は変化の総量と速度を把握できます。
第二の理由は、農業施策が農業部門だけの問題ではないことです。都市農業振興基本法が都市農業の多様な機能の発揮を掲げているように、都市の農地は防災、環境、景観、教育、福祉など多くの政策分野にかかわります。これらの分野の計画を立てる際に、農地と担い手の動向を示す客観的な数字が必要になります。
第三の理由は、施策の効果を検証することです。特定生産緑地制度や都市農地の貸借の仕組みは、都市農地の減少に歯止めをかけることを狙った制度です。その効果を測るには、制度の前後で経営体や耕地面積がどう変化したかを確かめる必要があり、センサスはその基礎資料となります。
行政側の意図
東京都が全国の公表とは別に東京都分の結果を取りまとめて公表する意図は、都内の区市町村や関係者が地域の実情に即して数字を使えるようにすることにあると考えられます。区部、市部、西多摩郡、島部という地域区分で販売金額規模の構成比を示したことは、都内の農業が一様ではないことを示す狙いがあると読めます。
統計表を区市町村別に公表していることも、各区市町村が自らの施策に活用することを想定したものです。区の農業振興の担当部署にとっては、自区の数値を都内の他の区市町村や全国と比較し、施策の優先順位を考える材料になります。
期待される効果
区の施策において最も直接的に期待されるのは、担い手支援の重点化です。区部の基幹的農業従事者の平均年齢が64.8歳で、後継者を確保していない経営体が4割を超えることは、承継支援の必要性が高まっていることをうかがわせます。後継者の有無や経営の意向を個別に把握し、承継の見込みが立たない農地については貸借の仕組みを活用して新たな担い手につなぐといった取組の優先度を判断する材料になります。
次に、農地保全施策の検証が期待されます。区部の経営耕地面積の減少率が経営体数の減少率より小さく、借入耕地の面積が5年で約7割増えたことは、営農をやめた経営体の農地の一部が貸借などを通じて他の経営体に引き継がれている可能性を示唆します。この動きがどの程度、貸借や特定生産緑地制度によるものかを、区が持つ生産緑地や農地の台帳と照合して確かめることができれば、施策の効果をより正確に評価できます。
さらに、販売の支援策の検討にも役立ちます。区部では販売金額100万円以上の経営体が多く、販売をしない経営体は少数です。直売所の情報発信、学校給食での地場産物の活用、区内の飲食店や商店との連携など、販売を後押しする施策は、区部の経営体の多くにとって実利のある支援になると考えられます。
課題・次のステップ
第一の課題は、センサスの数字だけでは農地の行方が分からないことです。経営体が減った理由が高齢化による廃業なのか、相続による農地の転用なのか、経営の統合なのかは、センサスからは判別できません。区が把握している生産緑地の解除や農地転用の届出などと組み合わせて分析する必要があります。
第二の課題は、外形基準を下回る農的な活動の把握です。区部では、センサスの対象とならない小規模な営農や、区民農園、体験農園、福祉施設による農作業など、多様な形の農的活動が行われています。こうした活動は都市農業の多様な機能の一部を担っているにもかかわらず、センサスには表れません。区が独自に把握する仕組みを持つことが望まれます。
第三の課題は、担い手の承継です。後継者を確保している区部の経営体の9割以上で後継者が親族であるように、区部の農業の承継は家族内で決まることが多くなっています。後継者を確保していない経営体の農地を、親族以外の担い手にどうつなぐかが論点になります。行政が介入できる範囲は限られますが、承継の意向を早めに把握し、承継が難しい場合に貸借や新規就農者への引き継ぎにつなげる相談体制を整えることは可能です。
第四の課題は、区の間の差への対応です。練馬区の経営体数は区部全体の約3割を占める一方、経営体が数えるほどしかない区もあります。農業の規模が大きく異なる区が同じ施策を展開することは合理的ではありません。農地の多い区は農業振興を、農地の少ない区は残された農地の保全や区民の農業体験の機会確保を重点とするなど、区の実情に応じた施策の組み立てが求められます。
特別区への示唆
第一の示唆は、自区の数字を時系列で押さえることです。東京都の統計表には区市町村別の農業経営体数、経営耕地面積、借入耕地の面積、後継者の確保状況、年齢別の従事者数などが掲載されています。2015年、2020年、2025年の3時点の自区の数値を並べ、減少の速度が都内平均や他区と比べてどうかを確認することが、施策を見直す出発点になります。区の農業振興計画や緑の基本計画の改定時期に合わせて、この作業を定例化しておくことが望ましいと考えられます。
第二の示唆は、農地を農業部門だけで扱わないことです。区部の農地は、災害時の一時的な避難空間や復旧のための用地として活用できる可能性があるほか、子供の食育や農業体験、障害のある人の就労の場としての農福連携、高齢者の生きがいづくりなど、多様な政策の資源になります。防災、教育、福祉、環境の各部署が、区内の農地を自らの施策の資源として位置づけることで、農地を保全する理由が増え、保全の取組にも厚みが出ます。
第三の示唆は、承継と貸借の仲介に区が関与することです。都市農地の貸借の円滑化に関する法律により、生産緑地を貸し借りする仕組みが整えられています。営農をやめる意向のある所有者と、農地を借りたい担い手や事業者を結びつける仲介の役割を、区やJA、農業委員会が担うことで、農地が宅地に転用される前に農地として引き継がれる可能性が高まります。区部で借入耕地の面積が5年で約7割増えていることは、貸借による引き継ぎが広がりつつある可能性をうかがわせます。後継者を確保していない経営体が4割を超えることを踏まえると、親族以外への引き継ぎを支える仲介の重要性は今後さらに高まると考えられます。
第四の示唆は、販売を軸にした支援です。区部の経営体の多くは、販売金額100万円から300万円未満を中心とする販売を行う経営体です。区内での販売の場を広げることは、経営の継続を後押しするとともに、区民が地元の農業を身近に感じる機会にもなります。学校給食への地場産物の供給や、区の施設での直売の場の提供など、区が直接関与できる取組は少なくありません。
第五の示唆は、統計の限界を補う独自の把握です。センサスの外形基準を下回る営農や、区民農園、体験農園の利用状況は、区が独自に把握しなければ見えません。生産緑地の台帳、農地転用の届出、区民農園の利用状況などを一元的に整理し、センサスの数字と組み合わせて区内の都市農業の全体像を描くことが、実効性のある施策の前提になると考えられます。
まとめ
東京都が令和8年10月15日に公表した2025年農林業センサスの東京都分の結果によれば、都内の農業経営体は4,184経営体で、2020年から933経営体、18.2%減少しました。全国の22.3%より減少率は小さいものの、都道府県別の順位は2015年、2020年、2025年のいずれも47位であり、5年で2割近い経営体が姿を消したことに変わりはありません。農産物の販売金額規模別では「100万円~300万円未満」が25.0%で最も多く、区部と市部ではこの層が最多である一方、西多摩郡では「販売なし」、島部では「50万円未満」が最も多いなど、都内の農業は地域によって異なる姿を見せています。
区部の農業経営体は669経営体で、2020年の809経営体から17.3%減少しました。練馬区の211経営体を筆頭に、世田谷区、江戸川区、葛飾区、杉並区、足立区が続き、上位3区で区部の約3分の2を占めます。区部の経営耕地面積は約453ヘクタールで、5年で10.8%減少しましたが、減少率は経営体数より小さく、経営耕地のある経営体1つ当たりの面積は約62.9アールから約68.6アールへ拡大し、借入耕地の面積は約7割増えています。区部では「販売なし」の経営体が5.4%と都内で最も少なく、販売金額300万円以上の経営体が30.9%を占めます。基幹的農業従事者の平均年齢は64.8歳で全国の67.7歳より若いものの、後継者を確保していない経営体が41.9%を占めており、承継への備えが問われる段階に入っていると考えられます。
都市農業振興基本法の施行から10年余り、特定生産緑地制度の創設や都市農地の貸借の円滑化により、都市の農地を保全する制度は整ってきました。平成4年度に指定された都内の生産緑地地区の93.7%が特定生産緑地に指定され(令和4年11月30日現在)、農地が一度に大量に失われる事態は避けられたと見ることができます。それでもなお、区部の農業経営体は5年で2割近く減少しており、制度を整えるだけでは農業の縮小を止めることが難しい現実がうかがえます。
特別区にとっての要点は、センサスの数字を自区の施策の見直しに結びつけることにあります。自区の経営体数と経営耕地面積を時系列で押さえ、生産緑地の台帳や農地転用の届出と組み合わせて農地の行方を確かめること。農地を防災、教育、福祉、環境の資源として位置づけ、保全する理由を増やすこと。承継が難しい農地を貸借によって新たな担い手につなぐ仲介に関与すること。そして、センサスの外形基準を下回る農的な活動を独自に把握し、都市農業の全体像を描くこと。区部に残された農地と担い手をどう次の世代に引き継ぐかは、5年後の次回調査の数字に表れることになります。




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