【行政分野別レポート】東京都:令和9年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求(令和8年6月22日)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:東京都「令和9年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」令和8年6月
概要
東京都は令和8年6月、「令和9年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求」を取りまとめ、公表しました。一括版で932ページ、26分野・200を超える提案要求事項からなる大部の資料であり、都が国に対して制度改正・財政措置・規制緩和を求める内容を、「ダイバーシティ」「スマートシティ」「セーフシティ」「分野横断的な政策」の4つの柱に整理しています。これに先立つ知事所信表明(令和8年第二回定例会)が都の政策の力点を総論として示すものであるのに対し、提案要求は、その力点を実現するために国へ求める具体的な制度・財源を逐条的に列挙した一次資料です。
本稿は、全項目を網羅するのではなく、夏以降に本格化する特別区の令和9年度予算編成において職員が把握しておくべき論点、および特別区の区域・実務・財政に直接関わる重要事項に絞って、行政カテゴリー別に内容と政策立案上の示唆を整理するものです。とりわけ注目すべきは、第一に、都区財政調整制度の根幹に関わる税財政の構造論点(地方法人課税の不合理な見直しの阻止、地方交付税制度の検証、都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱い)が「構造改革」として明確に打ち出された点、第二に、特別区が区域内の火葬の多くを民間に依存してきた構造に直結する「民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与」が【新規】の最重点事項として加わった点、第三に、子育て・教育・介護・デジタルといった区の基幹業務に関わる分野で、国の責任と財源による全額措置を求める要求が並んでいる点です。
提案要求は、国の概算要求(夏)から年末の政府予算案、翌年の税制改正へと続くサイクルの起点に位置づけられます。特別区にとっては、都が国に何を求めているかを読み解くことが、都の補助事業の方向性、都区財政調整の外部環境、そして区独自施策の設計余地を先取りする手がかりとなります。
(参考)国の施策及び予算に対する提案要求とは
国の施策及び予算に対する提案要求とは、地方自治体が翌年度の国の予算編成や制度設計に向けて、現場で生じている課題の解決や必要な財源措置を国に対して求める活動です。法定の手続ではありませんが、都道府県・指定都市等が例年とりまとめ、府省庁に対して要望活動を行う慣行として定着しています。東京都の場合、毎年6月頃に翌年度分を公表し、これをもとに各府省庁への提案要求活動を展開します。要求内容は「最重点事項」とそれ以外に区分され、最重点事項のうち重点事項に新たに追加されたものには【新規】の表示が付されます。
(参考)提案要求と予算編成サイクルとの関係
国の予算編成は、夏の各省概算要求、年末の政府予算案閣議決定、翌年の通常国会での審議というサイクルで進み、税制に関わる事項は与党税制改正大綱(例年12月)を経て翌年度の税制改正で結論が出されます。6月に公表される都の提案要求は、この概算要求に向けた最も早い段階での働きかけであり、「制度改善」を求める事項は法改正・通知改正の検討へ、「予算措置」を求める事項は概算要求や補正予算への計上へとつながっていきます。特別区の令和9年度予算編成も夏から秋にかけて本格化するため、都の提案要求で示された制度・財源の方向性を早期に把握することは、区の新規事業の企画や財源スキームの検討において先行的な優位性をもたらします。
特別区職員が令和9年度提案要求を把握すべき理由
第一に、都区財政調整制度の外部環境を規定する論点が含まれている点です。後述する地方法人課税の不合理な見直しの阻止、地方交付税制度の検証、都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱いは、いずれも都の財政力と調整税収を通じて、特別区財政調整交付金の原資に中長期的な影響を及ぼし得る事項です。財政・企画部門は最も注視すべき領域です。
第二に、区の基幹業務に直結する制度・財源の方向性を先取りできる点です。基幹業務システムの標準化、子供の医療費助成、保育・学童、介護報酬、外国人との共生など、特別区が現に担っている事務について、都が国に「全額国費」「全自治体への確実な財源措置」を求めている事項を把握しておくことは、区の超過負担や財源不足の議論を整理する材料となります。
第三に、特別区の区域に直接関わる広域・公共インフラの論点が含まれている点です。火葬体制の確保、無電柱化、木造住宅密集地域の改善、治水(調節池)、連続立体交差、感震ブレーカーの普及などは、関係区のまちづくり・防災計画の前提条件を更新するものです。
第四に、前年度要求の実現状況から、国の対応の現実的なテンポを読み取れる点です。後述するとおり、令和8年度の要求は多くが「一部措置」にとどまり、税財政の根幹に関わる事項は依然として実現していません。要求が直ちに制度化されるわけではないという前提を踏まえ、区としての中長期の備えを設計する必要があります。
第五に、議会答弁・計画策定の文脈理解に資する点です。要求事項に付された制度の背景や課題認識は、区の関連計画の改定や議会対応における引用根拠として活用できます。
令和9年度提案要求の全体像
「ダイバーシティ」「スマートシティ」「セーフシティ」「分野横断」の4本柱
提案要求は、子供・子育て・教育・若者・女性活躍・働き方・長寿・コミュニティ・共生社会を束ねる「ダイバーシティ」、スタートアップ・デジタル・国際金融・産業・観光・文化・スポーツ・まちづくり・インフラ・緑と水を束ねる「スマートシティ」、ゼロエミッション・都市の強靭化・防災・まちの安全安心・医療を束ねる「セーフシティ」、そして多摩島しょと構造改革からなる「分野横断的な政策」の4つの柱で構成されています。所信表明が全編を「持続可能性」で貫いていたのと対応して、提案要求も危機対応(物価・エネルギー・防災)と成長投資(デジタル・国際・人材)を両輪に据えた構成です。
新規に加わった最重点事項
今回、重点事項に新たに加わった【新規】の項目には、少子化への対処、出会い・結婚を望む人の後押し、高年齢層職員の人事給与制度の柔軟な運用に向けた見直し、国民のつながれる権利の明確化、公共インフラとしてのデータの連携と利活用、社会の構造変革に資するAXの推進、デジタル社会の共通化・共同化、自治体のサイバーセキュリティ対策の強靭化、行政サービスでの共通IDの活用、経済安全保障上重要な国産物資・技術の維持強化、アフォーダブル住宅の供給促進、民泊制度の適正化、そして民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与などがあります。デジタル・データ・AIに関する新規項目が集中している点と、火葬という生活インフラの公共性確保が新規で加わった点が、今回の特徴を端的に示しています。
前年度(令和8年度)要求の実現状況
都が公表した令和8年度提案要求の実現状況によれば、提案要求事項のうち、予算措置または制度改善の形で何らかの対応が図られたものは100事項を超え、全体の6割程度に上ります。ただし、その多くは交付金等での「一部措置」であり、要求内容が全面的に実現したものは限られます。具体的には、ふるさと納税については令和8年度税制改正で控除額に定額の上限が設けられ、基幹業務システムの標準化についてはデジタル庁の補正予算で運用最適化の補助金が措置され、高等学校等就学支援金制度の見直しによる授業料無償化は令和8年4月から法改正により実現し、学校給食費は小学校段階で負担軽減交付金が措置されました。介護報酬では介護支援専門員の処遇改善が令和8年度改定の審議報告に盛り込まれ、学校空調や耐震化、治水、マンション防災などの防災・インフラ系も交付金で一部措置されています。一方で、地方税財政制度の抜本的改革、東京23区の大学定員規制の撤廃、国庫補助金等に係る超過負担の解消といった構造的・財政的な要求は、令和8年度時点では実現していません。要求の継続には相応の時間を要するという現実を踏まえた上で、令和9年度の動向を追う必要があります。
子育て・子供政策
少子化への対処と結婚・妊娠・出産支援の充実
ダイバーシティの柱の冒頭には【新規】の「少子化への対処」が置かれ、実態に即した将来推計人口を前提に、人口戦略を含めた将来の国家ビジョンの提示と、ライフステージを通じた切れ目ない支援に向けた国家的視点での制度設計を国に求めています。結婚支援では、自治体の結婚支援充実に向けた交付金の補助基準額や補助率の引上げが、母子保健では、不妊治療の経済的負担軽減を国の責任と財源で行うこと、先行自治体の知見を踏まえた卵子凍結モデル事業の見直しなどが要求されています。
保育・学童と子供・子育て施策の推進
子供・子育て施策の推進では、大都市のニーズに柔軟に対応した認証保育所への十分な財政支援、0歳から2歳児の住民税課税世帯の保育料無償化の実現、男性の育児休業取得促進と育児休業給付金の給付率引上げ、そして就学後も児童が安心して過ごせるよう学童クラブへの地域の実情に応じた支援の拡充が求められています。いずれも特別区が現場で担う保育・放課後施策に直結する要求であり、無償化の対象拡大や学童支援の拡充が国の制度として具体化すれば、区の財政負担と運営体制に大きく影響します。
高校・高等教育の無償化と学校給食費の負担軽減
高等学校等の授業料無償化については、全ての自治体に対し必要経費を全額国の負担とすること、高等教育の修学支援新制度の対象拡大・給付額引上げ、貸与型奨学金の支援拡充が要求されています。学校給食費は、義務教育段階に加え夜間課程を置く高等学校、特別支援学校幼稚部及び高等部における抜本的な負担軽減を、全自治体に対し国の責任と財源で早期に実現することが求められています。前年度に小学校段階で給食費負担軽減交付金が措置されたことを踏まえ、対象範囲の拡大が令和9年度の焦点となります。
子供の医療費助成とこども性暴力防止法への対応
医療保険制度の改革等の中で、子供の医療費における患者負担割合の更なる軽減、軽減対象年齢の拡大、医療費助成制度の創設が求められています。子供の医療費助成は特別区が独自に上乗せしてきた典型的な分野であり、国制度として創設されれば区の単独負担の構造が変わります。あわせて、こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行に向けて、事務処理の詳細を示すマニュアルの作成、小規模事業者を含む確実な犯罪事実確認の環境整備、学校設置者等の事務負担軽減に向けたシステム統合、十分な財政措置などが要求されています。区立学校・保育・児童福祉施設の設置者として、施行に伴う実務負担への備えが必要です。
特別区への示唆
子育て・子供政策の要求群は、特別区の基幹的な現場事務に直結しています。0歳から2歳児の保育料無償化、学童クラブの支援拡充、子供の医療費助成の国制度化が実現すれば、区が独自に負担してきた経費の整理や、上乗せ施策の費用対効果の再評価が必要となります。令和9年度予算編成では、国・都の制度拡充を前提とした区の対応シナリオを複数想定し、区独自の上乗せ・横出しの水準を検討しておくことが有効です。こども性暴力防止法への対応は、人事・法務・各施設所管が横断的に準備すべき新たな事務負担として、早期の体制点検が求められます。
教育政策
高等学校における教育のあり方と教育のデジタル化
教育分野の最重点には、柔軟かつ個別最適な学びを展開できる学習指導要領の改訂とデジタルとリアルを適切に組み合わせた教育の実現を求める「高等学校における教育のあり方」、および教育のデジタル化の推進に向けた支援が置かれています。GIGAスクール端末の更新や校務支援システムの整備に必要な財源確保は、区立小中学校を所管する特別区にとっても継続的な関心事項です。
学校における働き方改革といじめ・教職員定数
学校における働き方改革については、教員の働き方改革は全国共通の本質的課題であり、地方へ負担を転嫁することなく国の責任において全自治体に確実に財源を措置することが求められています。あわせて、いじめ問題等への取組の充実、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止、教育支援センターの機能強化と学びの多様化学校(不登校特例校)の拡充、公立学校の教職員定数の充実、外国につながりのある子供に対する教育の充実などが並びます。
特別区への示唆
教育分野は区立小中学校の運営に直結します。教員の働き方改革と教職員定数の充実は、区の人事・学務部門が国・都の財源措置の動向を踏まえて体制を検討すべき領域です。教育支援センターの機能強化と学びの多様化学校の拡充は、増加する不登校への対応として区の重点課題であり、国の財源措置の具体化を待たずに、現場ニーズの把握と候補施設の検討を進める価値があります。外国につながりのある子供への教育充実は、後述する外国人との共生施策と一体で捉える必要があります。
長寿(高齢者・介護)政策
大都市の実態を反映した介護報酬と介護人材の確保
高齢者施策の推進では、物件費や賃借料等の地域差を東京の実態に合わせて適切に介護報酬へ反映すること、物価・賃金上昇の基本報酬への速やかな反映、介護人材の不足を踏まえた複数事業者によるサービス提供や柔軟な職員配置、小規模事業者の経営改善・協働化を進める仕組み、介護人材の確保・育成・定着を図る介護報酬とすること、そして介護支援専門員(ケアマネジャー)の専門性に見合った処遇改善が求められています。前年度にケアマネの処遇改善が介護報酬改定の審議報告に盛り込まれたことを踏まえ、令和9年度は大都市の物件費・賃借料の地域差反映がどこまで進むかが焦点です。
認知症施策と高齢者の就業支援
認知症施策の総合的な推進に向けた国の検討と地域の実情に応じた取組への措置、高齢者の就業支援の一層の充実と企業の受入環境整備が求められています。フレイル対策や認知症施策は、区が地区医師会や地域包括支援センターと連携して担う領域であり、国の制度設計の方向性を把握しておく必要があります。
特別区への示唆
介護分野は、都市部特有の高コスト構造を抱える特別区にとって、事業者の経営安定が地域の介護提供体制の維持に直結します。介護報酬への地域差反映や処遇改善が進めば区内事業者の経営環境が改善する一方、人材不足への対応として柔軟なサービス提供・職員配置の規制緩和が実現すれば、区の指導監督や事業者支援の運用にも影響します。区の高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の改定を見据え、国の制度動向を継続的にフォローすることが望まれます。
共生社会(障害者・外国人)政策
外国人との秩序ある共生社会の推進
最重点として「外国人との秩序ある共生社会の推進」が掲げられ、地域の実情を踏まえた自治体の共生社会づくりに向けた国による法整備と適切な財政措置、在住外国人の生活実態を把握できる仕組みの構築、税制・社会保障・生活習慣等の周知啓発、公租公課等の滞納の未然防止と速やかな債権回収を実施できる制度、外国人患者への医療費不払対策と医療機関の対応力向上、新たな高等学校等就学支援金制度における外国人生徒・保護者への統一的見解の提示などが求められています。
障害者施策の推進
障害者施策の推進が最重点(一部)として掲げられ、働き方の柱では障害者の就業支援策の一層の充実、雇用率制度における対象障害者の範囲拡大も要求されています。
特別区への示唆
外国人住民が増加を続ける特別区にとって、共生社会施策は実務上の最重要課題の一つです。国による法整備と財政措置、在住外国人の実態把握の仕組み、公租公課の滞納対策が制度化されれば、区の窓口対応・税務・国保・教育・防災情報の多言語化などの負担構造が変わります。一方で、生活者としての外国人支援は区が主体的に担う構図が続くため、令和9年度予算では、国・都の制度動向の把握と区独自施策の充実を並行して進める必要があります。区税・国民健康保険料の収納対策、外国人患者の医療費不払への医療機関支援は、債権管理・国保部門が早期に論点整理を行うべき事項です。
デジタル政策
基幹業務システムの標準化と移行経費の全額負担
デジタル分野の最重点には、地方公共団体の基幹業務システムの標準化等に対する支援の充実が置かれ、運用経費削減の目標達成に向けたロードマップの明確化、全自治体に必要な財政措置、そして移行経費の全額負担が求められています。標準化対応は特別区の情報システム部門が現に直面している最大の課題であり、移行経費の超過負担が生じないかは予算編成上の重大な関心事です。前年度にデジタル庁の補正予算で運用最適化の補助金が措置されたものの、全額負担という要求の核心は引き続き国に求められています。
共通化・共同化とサイバーセキュリティの強靭化
【新規】として、デジタル社会の実現に向けた共通化・共同化の推進(基幹業務システムの公共SaaSの構築・提供、共同利用システムの開発運用、国主導での共同調達の促進、自治体の垣根を越えたデジタル人材の活用)、および自治体のサイバーセキュリティ対策の強靭化(オールジャパンのサイバーセキュリティ体制や自治体横断的な支援体制の構築)が掲げられました。
行政サービスでの共通IDの活用とAXの推進
同じく【新規】で、行政サービスでの共通IDの活用(マイナンバーの利用範囲を原則として限定せず円滑に活用するための法制度の整備、全法人・個人事業主のGビズIDの取得活用促進)、社会の構造変革に資するAXの推進(AI基盤の共同利用、AI学習に適したデータ整備、国産AI開発に向けた戦略的投資)、公共インフラとしてのデータの連携と利活用が求められています。所信表明で打ち出された行政特化型の国産AIモデル構築の方向性が、提案要求では国への制度・投資要求として具体化された形です。
特別区への示唆
デジタル分野は、特別区が独自に開発・調達する領域と、国・都・共同利用基盤に相乗りする領域の仕分けが戦略課題となります。基幹業務システム標準化の移行経費が全額国費で措置されるか否かは、区の情報システム予算に直結するため、国の財政措置の動向を注視し、超過負担が生じる場合の財源対応を予算編成段階で想定しておく必要があります。公共SaaSや共同調達、共同利用が進めば、区単独の調達戦略の見直しが必要となり、サイバーセキュリティの自治体横断的な支援体制は、区のセキュリティ対策の前提を変えます。共通ID・AXの動向は、令和9年度以降のシステム投資計画やAI利活用方針の改定に直結するため、情報政策部門による先行的な情報収集が望まれます。
まちづくり・住まい政策
マンションの適正な管理と空き家対策
マンションの適正な管理と円滑な再生では、新築マンションの管理計画認定制度における均等積立方式等の認定要件化、管理不全兆候マンションの改善に取り組む管理組合へのインセンティブ付与、各自治体がマンションの長寿命化に取り組めるよう補助制度を構築する財政措置が求められています。空き家対策では、適切に管理されていない空き家への対策に加え、空き家を地域資源と捉えた利活用を促す施策の拡充が要求されています。
アフォーダブル住宅と公営住宅
【新規】の「アフォーダブル住宅の供給促進」では、子育て世帯等が安心して住まえる住宅の供給拡大に向けた公的住宅の積極的活用と金融支援が、公営住宅の建替え等に必要な予算の確保・配分では、国の責任における国費の確実な措置が求められています。
特別区への示唆
住宅価格の上昇が著しい特別区では、マンションの適正管理・長寿命化、空き家の利活用、アフォーダブル住宅の供給が、区の住宅マスタープランや空家等対策計画の改定論点と直結します。マンション管理計画認定制度の要件強化や長寿命化補助の財政措置が具体化すれば、区の認定事務や助成制度の設計に影響します。老朽マンションと管理不全が課題となる区では、国の制度動向を踏まえた区独自の支援メニューの検討が令和9年度の課題となります。
産業政策
物価高騰下の中小企業支援と価格転嫁
産業分野では、物価高騰等の影響を受ける中小企業への支援の更なる充実、社会経済情勢の影響を受ける中小企業者への資金繰り支援、生産性向上や賃上げへの後押しを含む既存経済対策の継続・拡充、適切な価格転嫁の支援などが最重点として求められています。【新規】の経済安全保障上重要な国産物資・技術の維持強化も掲げられました。
特別区への示唆
中小企業の資金繰り支援や価格転嫁支援は、区の制度融資・経営相談事業と重層的に機能する領域です。区の産業振興部門は、国・都の支援メニューの拡充を踏まえ、区制度融資の対象・限度額・利率等の整合を検討する必要があります。物価高騰局面が続く前提で、区内事業者の実態に即した支援の上乗せ余地を見極めることが求められます。
ゼロエミッション・環境政策
暑さ対策のクールビズ全国展開と再生可能エネルギー
ゼロエミッションの最重点には、再生可能エネルギーの本格的な普及拡大、新築建築物への太陽光発電設備導入義務化に向けた取組推進、そして実効性の高い暑さ対策の推進が並びます。暑さ対策では、暑さチェッカーの活用や新技術の実装、暑熱対応型の勤務制度など「クールビズ」の全国展開、クーリングシェルターの指定・開放支援を含む都市環境の整備が求められています。所信表明の「東京クールビズ」を全国制度へ広げる構図です。
資源循環と学校施設の環境整備
持続可能な航空燃料(SAF)の原料となる廃棄物や廃食用油の活用、リチウムイオン電池の適正管理、食品ロス削減・食品リサイクル、プラスチック対策が最重点として並び、学校施設では空調設備整備に対する支援が求められています。
特別区への示唆
清掃・リサイクル事業を直接担う特別区にとって、廃食用油や使用済み小型家電、リチウムイオン電池、プラスチックの回収は施策の入口です。SAF原料の活用やリチウムイオン電池の火災事故防止は、区の資源回収行政の強化と直結します。クーリングシェルターの指定・開放支援や暑さ対策は、区の熱中症予防の普及啓発、高齢者・低所得世帯への支援と役割分担を整理する局面にあります。学校空調設備整備は、前年度に学校施設環境改善交付金で一部措置された経緯を踏まえ、区立小中学校の整備需要の根拠として令和9年度予算要求に活用できます。
都市の強靭化・防災政策
首都直下地震への備えと建築物の耐震化・木密対策
都市の強靭化では、TOKYO強靭化プロジェクトの推進、首都直下地震における被害想定の分析を踏まえた対策、建築物の耐震化の推進、ライフライン施設・鉄道施設等の耐震化、木造住宅密集地域の改善、無電柱化事業の推進が最重点として並びます。木密地域の不燃化・延焼遮断帯整備や無電柱化に必要な財源確保は、関係区のまちづくり・防災事業に直結します。
治水対策と降灰・ミサイル対策
総合的な治水対策の推進では、環状七号線地下広域調節池の整備等の大規模事業に必要な財源確保、流域貯留浸透事業の制度拡充が求められ、大規模噴火時の降灰対策(火山灰の最終処分の法的整備や指針提示)、ミサイル攻撃に関する避難施設(シェルター)の整備への財政措置も最重点に位置づけられています。
マンション防災・感震ブレーカーと避難者支援
防災分野では、マンション防災の推進(在宅避難に必要な設備設置への補助制度の検討・財政支援)、【新規】の「グラぴたスイッチ(感震ブレーカー)の設置促進」(設置義務化を含む効果的な普及制度の検討)、災害時における避難者生活支援(避難所環境・運営の向上、在宅避難者支援、トイレ環境の確保への財政支援)、被災者支援の充実・迅速化(住家被害認定の判定方法の簡略化、公費解体・撤去ができる制度への見直し)が最重点として並びます。
特別区への示唆
防災・強靭化は特別区の現場実務に最も具体的に関わる領域です。建築物の耐震化や木密地域の改善、無電柱化に係る国費の確保は、関係区の事業進捗を左右します。感震ブレーカーの普及は、区の助成制度との連携が論点であり、設置義務化が制度化されれば区の普及啓発・助成の枠組みの見直しが必要です。避難所のトイレ環境・運営向上や在宅避難者支援への財政措置は、区の避難所運営マニュアルと備蓄計画の更新に直結します。住家被害認定の簡略化や公費解体の制度見直しは、発災後の被災者支援事務を担う区にとって、事務負担と被災者の生活再建の迅速化に関わる重要な制度改正であり、前年度に治水・耐震化・マンション防災が交付金で一部措置された流れを踏まえ、令和9年度の財源確保の行方を追う必要があります。
医療・保健政策
大都市の実態を反映した診療報酬と医療DX
医療分野では、保健医療施策の推進として、物価高騰や大都市の地域特性による医療機関への影響を考慮した診療報酬の引上げ、物価・賃金上昇を迅速に診療報酬へ反映する仕組みの導入、診療報酬改定を待たない機動的な財政支援、出産費用の無償化に係る制度設計が求められています。医療DXの推進では、電子カルテシステムの導入や医療機関のデジタル環境整備への支援策の早期構築と財源確保が要求されています。
民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与
今回の提案要求で特別区に最も直結する【新規】の最重点が、「民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与」です。火葬場は地域住民に必要不可欠な公共インフラであり、東京都では将来的な死亡者数の増加により火葬待ち日数の延長が見込まれることから、安定的な火葬体制の確保が課題とされています。現行制度では、法施行前から火葬場経営を担ってきた民間事業者が附則の規定により許可を受けたものとみなされており、既に許可を受けた民間火葬場について、事業者の判断による火葬能力・運営体制・受入方針・料金改定を前提とする重要な経営方針の変更を、監督官庁が事前に把握し関与する仕組みが設けられていません。また、買収等により実質的な経営主体が変更される場合も、現行法では許可を要しないため、公共インフラの経営者として相応しいかを事前に確認できない構造です。
これを踏まえ、都は、支配株主の変更等により実質的に経営権に変更が生じる場合に事前の許可又は承認を要する仕組みの法上の明確化、火葬場の運営に重要な影響を及ぼす経営方針の変更時の監督官庁への事前協議・届出、監督官庁が必要な助言・指導・報告徴収・計画の見直しを求めることができる制度の整備、そして国によるガイドライン等の策定を求めています。提案要求先は厚生労働省・経済産業省です。
特別区への示唆
火葬体制は、区部の火葬の多くを民間火葬場に依存してきた特別区の火葬行政の構造そのものに関わる歴史的論点です。民間火葬場の投資ファンドへの売却報道を契機に、特別区長会が公共性確保の意思を表明し、都区共同で国へ制度改正を要望してきた経緯を踏まえると、経営権変更時の事前関与という制度改正の行方は、区にとって極めて重要です。生活衛生・企画・財政の各部門が横断的にフォローし、火葬需要の将来推計、料金・受入方針の変動が住民生活に及ぼす影響、自治体による整備の必要性を含めて、区としての立場を整理しておくべき最優先事項といえます。あわせて、大都市の実態を反映した診療報酬や医療DXは、区立病院や地域の医療機関との連携、保健所を設置する区の保健医療行政に関わるため、制度改正の方向性を把握しておく価値があります。
まちの安全・安心政策
消費者保護と治安対策
まちの安全・安心では、総合的な治安対策の充実・強化(特殊詐欺の被害防止、子供・女性等を犯罪から守る対策、AI等先端技術を活用した警察活動の高度化)、地方消費生活行政への財政支援、【新規】のデジタル取引に関する消費者保護規制の強化、霊感商法等による消費者被害の救済の実効化などが求められています。
特別区への示唆
消費生活相談を担う特別区にとって、デジタル取引に関する消費者保護規制の強化や地方消費生活行政への財政支援は、区の消費生活センターの運営と相談体制に関わります。特殊詐欺の被害防止は、高齢者の多い区での啓発活動と直結するため、国・都の対策強化を踏まえた区の取組の点検が求められます。
構造改革(税財政・分権)
東京の財源を狙い撃ちにした地方法人課税の不合理な見直しの阻止
構造改革は、特別区の財政基盤に最も深く関わる柱です。都は、東京の財源を狙い撃ちにした地方法人課税等の不合理な見直しを行わないこと、地方が果たすべき責任と役割に応じた税財源全体の拡充、地方交付税制度を含む地方税財政制度の抜本的な改革に向けた検証を求めています。背景として、国民が負担する租税収入の配分が国税と地方税で6対4であるのに対し、歳出の配分は国と地方で4対6と逆転している構造が指摘されています。
さらに、令和8年度与党税制改正大綱(令和7年12月19日)では、税源の偏在是正の追加的措置として、法人事業税資本割を特別法人事業税・譲与税の対象とすること等を検討し令和9年度税制改正で結論を得ること、加えて特別区の固定資産税にも必要な措置を検討し令和9年度以降の税制改正で結論を得ることが明記されたとされています。都は、地方法人二税の国税化は自主財源を縮小し地方分権の理念に逆行するものであり、固定資産税は所在自治体で課税する市町村税であるにもかかわらず所在地以外への配分を議論することは応益性の原則に反すると主張しています。
地方交付税制度の検証と国庫補助金の超過負担解消
都は、現行の地方交付税制度が、地方自治体の税収が増加した場合も税収増の75%が地方交付税と相殺され、新たな財源として活用できるのは僅か25%分にとどまるなど、地方の増収努力のインセンティブを阻害する仕組みとなっていると指摘し、限られたパイの奪い合いではなくパイの拡大の観点からの制度全体の検証を求めています。あわせて、国庫補助金等に係る超過負担の解消(地方財政法第18条が必要かつ十分な金額の措置を規定しているにもかかわらず、令和7年度に警察費・教育費など複数の経費で国庫補助金等の不足が生じている)、東京23区の大学定員規制の撤廃(令和7年度の都の調査では23区内の41大学が規制の影響を受けたと回答)が最重点として掲げられています。
都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱いの見直し
特別区の財政に直接関わる事項として、「都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱いの見直し」が掲げられています。都区財政調整制度では、都が特別区に交付する特別区財政調整交付金の原資が、地方自治法・同法施行令により調整税(市町村民税法人分、固定資産税、特別土地保有税)等の収入額の一定割合とされています。しかし、調整税に係る過誤納還付金は都の歳出予算として経理されるため、その影響額が交付金の算定上反映されておらず、還付金額が多額に上って都財政に影響を及ぼしているとされています。都が示した参考データによれば、調整税に係る過誤納還付額は平成21年度に759億円(うち特別区の配分割合に相当する額は418億円)、22年度228億円(同125億円)、29年度227億円(同125億円)、30年度151億円(同83億円)と、年度により大きく変動しながら多額に上っています。都は、特別区財政調整交付金の原資について、調整税の収入額から過誤納還付金を控除した額を原資とするよう法令の規定を整備することを求めています。
ふるさと納税の抜本的見直しと個人住民税利子割の住所地課税
最重点として、ふるさと納税制度の廃止を含めた抜本的な見直し、個人住民税利子割における住所地課税の実現が掲げられています。ふるさと納税については、前年度の令和8年度税制改正で控除額に定額の上限が設けられたものの、廃止を含む抜本的見直しという核心は引き続き要求されています。都市部からの税の流出は、特別区の住民税収にも影響する論点です。
特別区への示唆
構造改革の柱は、特別区の財政担当部門が最も注視すべき領域です。地方法人課税の不合理な見直しの阻止、地方交付税制度の検証、国庫補助金の超過負担解消は、都の財政力を通じて都区財政調整制度の外部環境を規定し得るものです。とりわけ、令和9年度税制改正で結論を得るとされた特別区の固定資産税に関する偏在是正措置の検討は、特別区の基幹的な税源である固定資産税に直接関わるため、年末の与党税制改正大綱に向けた議論の行方を最優先で追う必要があります。都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱いの見直しは、過誤納還付金が交付金原資に反映されない現行の取扱いを是正するものであり、実現すれば交付金算定の前提が変わるため、財政部門が制度の趣旨と影響額を正確に把握しておくべき事項です。ふるさと納税の見直しと個人住民税利子割の住所地課税は、区の住民税収に関わる論点として、税務・財政部門が動向を継続的にフォローすることが求められます。
まとめ
令和9年度 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求は、物価・エネルギーの危機対応と、デジタル・人材・国際を軸とした成長投資を両輪に据えながら、特別区の区域・実務・財政に直接関わる論点を数多く含んでいます。所信表明が政策の力点を総論として示したのに対し、提案要求は、その力点を実現するために国へ求める制度改正・財政措置・規制緩和を逐条的に列挙した一次資料であり、特別区にとっては都の補助事業の方向性、都区財政調整の外部環境、区独自施策の設計余地を先取りする手がかりとなります。
特に重要なのは、構造改革の柱に置かれた税財政の論点です。令和9年度税制改正で結論を得るとされた特別区の固定資産税に関する偏在是正措置の検討、地方交付税制度の検証、そして都区財政調整の財源に係る過誤納還付金の取扱いの見直しは、いずれも特別区財政調整交付金の原資と算定の前提に関わるものであり、財政・企画部門は年末の与党税制改正大綱に向けた議論の行方を最優先で追う必要があります。あわせて、民間火葬場の経営権変更に対する行政の関与は、区部の火葬の多くを民間に依存してきた特別区の火葬行政の構造に関わる新規の最重点であり、生活衛生・企画・財政の各部門が横断的にフォローすべき事項です。
基幹業務システム標準化の移行経費の全額負担、子供の医療費助成や保育・学童・給食費の国制度化、大都市の実態を反映した介護報酬、外国人との秩序ある共生に向けた法整備と財政措置は、いずれも特別区が現に担う事務の負担構造を変え得る要求です。前年度の実現状況を見れば、交付金等での一部措置は進む一方、税財政の根幹に関わる要求は依然として実現に至っていません。要求が直ちに制度化されるわけではないという前提のもと、特別区の各所管課は、自区の課題と接点を持つ要求事項を特定し、現場ニーズの把握、候補事業の組成、都への照会を夏の予算見積段階から先行させることで、令和9年度の政策立案における優位性を確保することが期待されます。国・都・特別区の重層的な関係の中で、東京都が国に何を求めようとしているのかを正確に読み解くことが、特別区職員にとっての提案要求の最も有効な活用法といえます。




-320x180.jpg)

-320x180.jpg)



