はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要(MICE誘致を取り巻く環境)
- 自治体がMICE誘致を行う意義は「高い付加価値を持つ経済活動の創出」と「都市のグローバルなブランド力と競争力の強化」にあります。
- MICEとは、Meeting(会議・研修)、Incentive Travel(報奨・招待旅行)、Convention(国際会議・学会)、Exhibition/Event(展示会・イベント)の頭文字を取った造語です。一般的な観光とは異なり、ビジネスや学術交流を目的とした旅行形態であり、開催地域に大きな経済的・社会的効果をもたらすビジネスイベントの総称として認識されています。
- (出典)観光庁「MICEとは」
- (出典)(https://www.iace.co.jp/bts/column/detail/202408bri_05)
- 新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックを経て国際的な人の往来が再開する中、世界の主要都市は経済回復と都市の成長を加速させるための戦略的ツールとして、MICEの誘致競争を激化させています。東京都の特別区にとって、MICE誘致は単なる観光振興策に留まらず、地域経済の活性化、特定産業の振興、国際的な知見の集積、そして持続可能な都市開発を実現するための極めて重要な政策課題となっています。
意義
住民にとっての意義
雇用の創出と安定化
- MICEの開催は、宿泊、飲食、交通、通訳、イベント設営・運営など、非常に幅広い分野で多様な雇用機会を創出します。
- 一般的な観光が週末や休日に需要が集中するのに対し、MICEは平日に開催されることが多いため、関連産業における雇用の平準化と安定化に大きく貢献します。
世界最先端の知見・文化へのアクセス
- 大規模な国際会議や学術大会では、一般市民が参加可能な公開講座や展示会が併催されることが多くあります。
- これにより、住民は世界最先端の科学技術や学術研究、多様な文化に触れる貴重な機会を得ることができます。
都市への誇りと愛着(シビックプライド)の醸成
- 国際的に権威のあるイベントや会議が自らの居住する地域で開催されることは、都市の国際的な評価を高め、住民が自らのまちに対して抱く誇りや愛着(シビックプライド)の醸成につながります。
地域社会にとっての意義
高い経済波及効果
- MICE参加者は、ビジネス目的で滞在期間が長く、会議参加費、宿泊費、飲食費、交通費などの支出額が一般の観光客と比較して格段に高い傾向にあります。
- この旺盛な消費活動は、開催地域における宿泊業、飲食業、小売業、交通業など、裾野の広い産業に大きな経済的恩恵をもたらします。
- 客観的根拠:
- 観光庁の調査によると、一般の訪日外国人観光客の一人当たり消費額が約16万円であるのに対し、海外からのMICE参加者は約34万円(国際航空券代を含む)と、2倍以上の消費額を記録しています。
- 観光庁の最新の調査では、令和5年(2023年)に日本で開催された国際MICEによる経済波及効果は総額で約8,520億円と推計されています。このうち、直接的な消費支出等による「直接効果」が約4,044億円、関連産業への生産誘発や雇用者所得の増加を通じた「間接効果」が約4,476億円に上り、MICE開催が経済全体に広範な好循環を生み出すことが示されています。
ビジネス・イノベーション機会の創出
- MICEの開催は、世界中から特定の産業分野や研究分野のキーパーソン、専門家、投資家を一堂に集める絶好の機会です。
- このような知的人材の集積と交流は、新たなビジネスパートナーシップの構築、共同研究の開始、新規事業の創出、さらには企業誘致や投資の呼び込みといったイノベーションを生み出す土壌となります。
都市ブランドと国際競争力の向上
- 権威ある国際会議や大規模なイベントを成功裏に開催することは、その都市が持つ国際水準のインフラ、運営能力、安全性を世界に示すことになります。
- これにより、「ビジネス・学術・文化の拠点」としての都市ブランドが確立され、世界の都市間競争における地位向上に直結します。
行政にとっての意義
税収の増加
- MICE開催によって生み出される活発な経済活動は、法人税、事業所税、消費税、宿泊税といった地方税および国税の増収に直接的に貢献します。
- 客観的根拠:
- 平成28年(2016年)の国際MICE開催による税収効果は、国・地方合わせて約820億円に上ると試算されており、行政の財政基盤強化に寄与します。
都市インフラの効率的活用
- MICEイベントは平日に開催されることが多いため、週末や観光シーズンに需要が偏りがちな宿泊施設、交通機関、文化施設などの稼働率を平準化させます。
- これにより、都市インフラ全体の投資効率と運営効率が向上します。
都市開発の戦略的ツール
- MICE誘致は、特定の産業(例:金融、IT、ライフサイエンス)や特定地域(例:臨海部、再開発エリア)の振興を目的とした戦略的な都市開発の起爆剤として活用できます。
- 特定分野の国際会議を誘致することで、その分野の企業や研究機関の集積を促し、都市の産業構造の高度化を図ることが可能です。
(参考)歴史・経過
1980年代~1990年代(黎明期・アジアのリーダー)
- 日本はアジアにおけるMICEの先進国であり、1988年の「国際コンベンション・シティ構想」や1994年の「コンベンション法」制定を通じて、全国に会議施設などのハードインフラ整備を推進しました。
- 1991年時点では、アジア・大洋州地域における国際会議開催シェアの約51%を占めるなど、圧倒的な地位を築いていました。
2000年代(競争の激化と政策転換)
- 2003年に開始された「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は一般観光客の誘致に重点が置かれ、MICEへの国の支援は相対的に手薄になりました。
- この間にシンガポールや韓国などが国策としてMICE振興に乗り出し、アジア域内の競争が激化しました。
- 2008年の観光庁発足を機に、政府は国際会議の開催件数を5割以上増やす目標を掲げ、専門部署を設置するなど、国を挙げた誘致体制の強化に乗り出しました。
2010年代(戦略の再構築)
- 2010年の「Japan MICE Year」を契機に、国際会議(C)だけでなく、MICE全般の振興へと政策の舵が切られました。
- しかし、競争激化によりアジアでのシェアは2012年に27%まで低下。この危機感から2012年に「MICE国際競争力強化委員会」が設置され、「グローバルMICE都市」の育成、「MICEアンバサダー」制度の導入、「ユニークベニュー」の活用といった、今日のMICE政策の根幹をなす新戦略が打ち出されました。
- 政府は「2030年までにアジアNo.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という高い目標を掲げました。
2020年代(コロナ禍後の新たな潮流)
- 新型コロナウイルスの影響で、オンラインやハイブリッド形式での開催が主流となりましたが、ポストコロナ時代においては対面開催への回帰が鮮明になっています。
- 2023年には、対面開催の国際会議件数が2020年以降で初めてハイブリッド開催を上回りました。
- 一方で、サステナビリティ(持続可能性)やDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が新たな国際標準となるなど、MICE誘致における競争の軸が変化し、新たな課題が浮上しています。
MICE誘致に関する現状データ
訪日観光市場の回復と高付加価値化の傾向
- 令和5年(2023年)の訪日外国人旅行者数は約2,507万人となり、コロナ禍前の2019年比で約8割まで回復しました。
- 一方で、同年の訪日外国人旅行消費額は5兆3,065億円と過去最高を記録し、2019年比で10.2%増となりました。これは、一人当たりの消費額が増加し、観光の質的な高付加価値化が進んでいることを示唆しています。
国際会議開催件数:国内基準と国際基準
- JNTO(日本政府観光局)基準:
- 令和5年(2023年)に日本で開催された国際会議は1,376件で、前年比2.5倍と大幅に回復しました。
- 参加者総数は約101.6万人(うち外国人参加者12.9万人)でした。
- 開催形態別では、対面開催が736件と全体の53%を占め、2020年以降で初めてハイブリッド開催を上回りました。
- (出典)(https://www.congre.com/news/20241216/)
- (出典)(https://www.congre.com/news/20241216/)
- ICCA(国際会議協会)基準:
- 令和5年(2023年)に日本で開催された国際会議は428件で、世界ランキングでは7位、アジア・大洋州地域では1位を維持しました。
- 都市別では、東京(23区)が91件でアジア・大洋州地域で3位にランクインし、日本のMICE開催における中心的な役割を担っています。
MICEの経済波及効果(令和5年/2023年開催分)
- 総額:
- 国際MICE全体による経済波及効果は約8,520億円と推計されています。
- MICEタイプ別内訳:
- 国際会議(Convention):約3,701億円
- 展示会・見本市等(Exhibition/Event):約2,315億円
- 企業会議(Meeting):約1,592億円
- 報奨・研修旅行(Incentive):約911億円
- 特筆すべき点:
- 高単価なM/I: 企業会議(M)と報奨・研修旅行(I)は、参加者一人当たりの総消費額がそれぞれ約84.4万円、約83.4万円と他類型に比べて突出して高く、極めて高付加価値なセグメントであることがわかります。
- ビジネス創出効果を持つE: 展示会・見本市等(E)は、出展費用に対して約2.2倍の新規契約誘発効果(約942億円)が見込まれ、直接的な消費喚起に留まらない、強力なビジネスプラットフォーム機能を有しています。
東京都のMICE開催実績
- JNTO基準による令和4年(2022年)の国際会議開催件数は136件で、国内都市別で1位でした。
- 一方、ICCA基準による同年の開催件数は39件で、国際都市別順位では41位となっています。
- このように、統計基準によって件数や順位が大きく異なるため、政策目標を設定する際には、どの基準を用いるかを明確にすることが重要です。
課題
住民の課題
地域への利益還元と理解不足
- MICE開催によるマクロな経済効果が、必ずしも地域住民に直接的な利益として実感されていない場合があります。
- 大規模イベント開催時には、交通機関の混雑や飲食店の予約難など、一部でオーバーツーリズムに類似した住民生活への負担が生じる可能性があり、MICE開催に対する住民の理解や協力が得られにくくなる懸念があります。
- 客観的根拠:
- シンクタンクのレポートでは、コロナ禍を経て、域外から多数が参集するMICEに対し住民が懸念を抱く可能性が指摘されており、地元への利益還元措置の必要性が強調されています。
- バルセロナやアムステルダムなど海外の先進都市では、観光客の急増が住民生活に与える負荷(オーバーツーリズム)が問題となり、観光税の導入や民泊規制の強化といった対策が講じられています。MICEも大規模な人の移動を伴うため、同様の視点での配慮が不可欠です。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- MICE開催に対する地域住民の支持が得られなくなり、円滑なイベント運営が困難になります。
地域社会の課題
国際都市間競争の激化
- シンガポール、ソウル、バンコクといったアジアの主要都市は、国策としてMICE誘致に巨額の投資を行い、最新鋭の施設整備や手厚い助成金制度で猛烈な追い上げを見せています。
- 日本のMICE市場は回復基調にあるものの、一部の競合都市と比較して回復ペースが遅れており、国際的な誘致競争において厳しい状況に置かれています。
- 客観的根拠:
- ICCA(国際会議協会)の統計によると、令和5年(2023年)の日本の国際会議開催件数は、コロナ禍前の2019年比での回復度合いにおいて、韓国やシンガポールを下回っています。これは、競合都市がより迅速に市場回復を遂げていることを示唆しています。
- アジアの競合都市は、MICE誘致に対して数億円規模の強力な助成金制度を設けており、日本の都市が価格競争力で劣後するケースが少なくありません。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 国際的に重要な会議やイベントの誘致機会を失い、東京の国際的地位が相対的に低下します。
「東京ならでは」の体験価値(コンテンツ)不足
- 競合都市との差別化を図る上で、単に会議施設を提供するだけでは不十分であり、開催地に東京を選ぶ「必然性」や「付加価値」の提供が不可欠です。
- 歴史的建造物や文化施設を活用した「ユニークベニュー」でのレセプション、区内に集積する先端企業や研究機関を視察する「テクニカルビジット」など、東京ならではの体験型コンテンツの造成が十分に進んでいないのが現状です。
- 客観的根拠:
- 観光庁の調査では、外国人MICE参加者が関心を持つコンテンツとして「日本食」が全タイプでトップですが、企業会議(M)や報奨旅行(I)では「伝統文化体験」、展示会(E)では「ショッピング」への関心も高く、ターゲット層のニーズに合わせた多様なコンテンツ提供が消費拡大の鍵とされています。
- 東京都のMICE誘致戦略においても、「東京が有するポテンシャル(高度な技術力を持つ企業等の集積・豊富な観光資源等)の活用が不十分」であることが課題として明確に指摘されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 価格競争に陥りやすくなり、高付加価値なMICEの誘致が困難になります。
行政の課題
大規模MICE施設の不足と機能の陳腐化
- 東京は、世界トップクラスのMICE都市であるシンガポールやパリなどと比較して、数千人から1万人規模を収容できる大規模な国際会議場や、最新鋭の機能を備えた展示場が不足しています。
- この施設面の制約が、最大規模の国際会議や展示会の誘致における根本的な足かせとなっています。
- 客観的根拠:
- 専門家からは、「東京都MICE誘致戦略(案)」に対して、「国際会議場も展示施設も欧米アジアの主要国の大都市に比べて東京が劣後している」という厳しい指摘がなされており、施設整備が急務であることが示されています。
- (出典)(https://japan-ir.org/wp-content/uploads/2023/01/%E3%80%8C%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BDMICE%E8%AA%98%E8%87%B4%E6%88%A6%E7%95%A5%EF%BC%88%E6%A1%88%EF%BC%89%E3%80%8D%E3%81%B8%E3%81%AE-%E6%84%8F%E8%A6%8B%EF%BC%88%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BA%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A6%B3%E5%85%89%E3%83%BBIR%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%A9%9F%E6%A7%8B%EF%BC%892023.01.19.pdf)
- 先進事例である横浜市では、アジア諸国との差別化を図るため、単なる施設規模の競争ではなく、会議・展示・宿泊機能が一体となった「ALL IN ONE」型施設への機能強化が必要であると分析されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 最大規模の国際会議や展示会を誘致できず、経済効果の最大化が阻害されます。
専門人材の不足と育成の遅れ
- MICEの誘致・企画・運営には、国際的なマーケティング能力、語学力、交渉力、危機管理能力など、高度な専門性を有する人材が不可欠です。
- しかし、日本ではこうした専門人材が慢性的に不足しており、大学や専門機関における体系的な育成システムも確立されていません。
- 客観的根拠:
- 観光庁の調査によると、タイやシンガポールなどアジアの競合国では、政府が主導して体系的なMICE人材育成プログラムを実施し、国家資格制度を設けるなど、戦略的に人材を育成しています。日本の取り組みはこれに比べて遅れていると指摘されています。
- 国内のMICE関連事業者からは、「社員教育を実施したいが時間がない」「どのような研修が適切かわからない」といった声が上がっており、行政による体系的な人材育成の仕組みづくりが求められています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 国際水準のサービスを提供できず、主催者や参加者の満足度が低下し、リピート開催につながらなくなります。
縦割り行政と公民連携の不足
- MICE振興は、観光、産業、文化、都市計画など複数の行政分野にまたがる複合的な政策ですが、部署間の連携が不十分な「縦割り行政」が、迅速で効果的な施策展開を阻害しています。
- また、行政、コンベンションビューロー、施設運営者、民間事業者(ホテル、PCO、DMC等)が一体となって誘致に取り組む「オールジャパン」「オール東京」といった公民連携体制(One Team体制)の構築も道半ばです。
- 客観的根拠:
- 東京都のMICE誘致戦略では、課題として「誘致・開催を効果的に行う連携体制の不足」が挙げられ、関連事業者や関係主体が連携し総合力を発揮する必要性が指摘されています。
- 観光庁の資料でも、日本のMICE産業の競争力強化のポイントとして「ワンチーム」の重要性や「企業パートナーとのタイアップ不足」が課題として挙げられており、官民連携の強化が不可欠であることが示唆されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 誘致活動や開催支援が非効率的になり、国際競争で競り負ける一因となります。
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
- 即効性・波及効果:
- 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決やより多くの住民・事業者への便益につながる施策を高く評価します。
- 実現可能性:
- 現行の法制度や予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行が可能な施策を優先します。既存の仕組みや組織を活用できる施策は、優先度が高くなります。
- 費用対効果:
- 投入する経営資源(予算・人員等)に対して、得られる成果(経済効果、ブランド向上等)が大きいと見込まれる施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な財政負担の軽減効果も考慮します。
- 公平性・持続可能性:
- 特定の事業者や地域だけでなく、幅広い住民や地域社会全体に便益が及び、一過性で終わることなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
- 客観的根拠の有無:
- 政府の白書や調査研究、先進自治体の成功事例など、効果が客観的なデータやエビデンスによって裏付けられている施策を優先します。
支援策の全体像と優先順位
- 東京都特別区におけるMICE誘致を成功に導くためには、「基盤強化」「魅力創造」「連携推進」という3つの柱から総合的かつ戦略的に取り組むことが不可欠です。
- 中でも、施設や人材といった「基盤」の脆弱性は、あらゆるMICE活動の根本的な制約要因となるため、最優先で取り組むべき課題と位置づけます。この基盤なくして、魅力的なコンテンツも効果的なプロモーションも成り立ちません。
- その上で、強化された基盤を活かし、国際競争を勝ち抜くための差別化要因となる「魅力創造」と、施策の効果を最大化するための「連携推進」を両輪として進めていくことが重要です。
- 【優先度:高】支援策①:MICE開催基盤の戦略的強化
- 位置づけ: 全てのMICE施策の土台となる最重要施策。ハード(施設)・ソフト(人材)両面のボトルネックを解消し、東京のMICE受入能力を根本から引き上げる。
- 【優先度:中】支援策②:「体験価値」を最大化するコンテンツ開発支援
- 位置づけ: 競争優位を確立するための差別化戦略。強化された基盤の上で、東京ならではのユニークな体験価値を創造し、高付加価値なMICEを惹きつける。
- 【優先度:中】支援策③:「オールエリア」での誘致推進体制の構築
- 位置づけ: 施策効果を最大化するための実行体制改革。官民の縦割りを排し、エリア全体の総合力を結集して、迅速かつ効果的な誘致・支援活動を展開する。
各支援策の詳細
支援策①:MICE開催基盤の戦略的強化
目的
- MICE誘致における根本的な制約要因である、ハード(物理的施設)とソフト(専門人材)両面の不足を解消します。
- これにより、東京都特別区が世界トップレベルのMICEイベントを安定的かつ高品質に開催できるための強固な基盤を構築することを目指します。
主な取組①:MICE専門人材育成プログラムの創設・拡充
- 区が主体となり、地域の業界団体(ホテル協会、商店会連合会等)や大学と連携し、MICEの企画・誘致・運営に関する実践的な人材育成プログラムを創設します。
- プログラム内容には、MICEマーケティング、国際入札(ビッド)書類の作成、サステナブル・イベントの運営手法、デジタル技術を活用したイベント企画など、現代のMICEに必要な専門知識を盛り込みます。
- 区内事業者が従業員を国内外のMICE専門資格(CMP、CMM等)取得のための研修へ派遣する際の費用の一部を助成する制度を新設します。
- 客観的根拠:
- 観光庁の調査では、アジアの競合国が政府主導で体系的な人材育成を行っている成功事例が報告されており、官民学連携でのプログラム構築は極めて有効です。
- 福岡市では、大学生等を対象としたMICE人材育成事業を22プログラム実施し、201名の人材を育成した実績があり、若手人材の育成と確保に成功しています。
主な取組②:次世代MICE施設整備に向けたフィージビリティスタディの実施
- 区内に不足している中~大規模(1,000~5,000人規模)の会議施設や、特色ある展示施設の整備可能性について、官民連携でフィージビリティスタディ(事業化可能性調査)を実施します。
- 調査では、未利用の公有地や再開発計画エリアを候補地とし、将来の需要動向、事業採算性、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)など民間活力を導入する手法の妥当性、周辺地域への経済波及効果などを総合的に検証します。
- 客観的根拠:
- 横浜市のMICE戦略では、民設民営のパシフィコ横浜が成功を収めており、PFI等の公民連携手法がMICE施設整備において有効であることが示されています。このモデルは、財政負担を抑えつつ最新鋭の施設を整備したい特別区にとって大いに参考になります。
- 専門家から東京の施設不足は明確に指摘されており、計画的な施設整備の必要性は極めて高い状況です。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- アジア・大洋州地域における国際会議開催件数シェアを30%以上に回復(ICCA統計ベース)
- データ取得方法: ICCA(国際会議協会)が毎年公表する年次統計レポートの分析
- KSI(成功要因指標)
- 区内のMICE専門資格(CMP等)保有者数を5年間で倍増させる
- データ取得方法: 区が実施する助成金制度の申請・実績報告に基づく資格取得者数の集計
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- MICE主催者満足度調査における「人材の専門性」「サポート体制」に関する項目のスコアを5年間で15%向上させる
- データ取得方法: 公益財団法人東京観光財団等が実施するMICE主催者への事後アンケート調査結果の分析
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 区が主催・支援するMICE人材育成プログラムの年間受講者数:500人
- データ取得方法: 育成プログラムの申込・修了者数の実績集計
- 次世代MICE施設整備に関するフィージビリティスタディ報告書の策定:1件
支援策②:「体験価値」を最大化するコンテンツ開発支援
目的
- 激化する都市間競争において、価格競争から脱却し、「ここでしか体験できない価値」を提供することで、高付加価値なMICEデスティネーションとしての東京の地位を確立します。
- 各区が持つ文化、産業、歴史、自然といった固有の資産を最大限に活用し、MICE参加者の満足度と消費額を向上させることを目指します。
主な取組①:ユニークベニュー活用促進助成制度の強化
- 美術館、博物館、歴史的建造物、庭園、寺社仏閣などを会議やレセプション会場として利用する「ユニークベニュー」の活用を強力に推進します。
- 既存の東京都の助成金に上乗せする形で、区独自の助成制度を創設し、会場利用料や特別設営費に対する支援を手厚くします。
- 区の観光協会等に「ユニークベニュー・コンシェルジュ」を配置し、利用希望者に対して、許認可手続きの代行、ケータリング業者やエンターテイメントの紹介など、ワンストップでの支援を提供します。
- 客観的根拠:
- 東京都および東京観光財団は、既にユニークベニューの利用支援制度やショーケースイベントを実施しており、区としてこれらと連携・拡充することは実現可能性が高い施策です。
- 観光庁も国策としてユニークベニューの活用を推進しており、全国に多数の認定施設が存在します。これらの活用は国の政策方向とも合致しています。
主な取組②:産業・学術テクニカルビジットプログラムの開発
- 区内に集積する有力企業、特徴的な中小企業、大学、研究機関と連携し、MICE参加者向けの特別な視察・交流プログラム(テクニカルビジット)を造成します。
- 例えば、金融機関が集積する区では「FinTech最前線ツアー」、アニメ・ゲーム関連企業が多い区では「クールジャパン・スタジオビジット」など、各区の産業特性を活かしたプログラムを開発します。
- 開発したプログラムは、東京観光財団や海外メディアを通じて積極的にプロモーションします。
- 客観的根拠:
- 神戸市では、スーパーコンピュータ「富岳」や最先端の医療研究施設へのテクニカルツアーが、MICE誘致における強力なコンテンツとして機能しています。この成功モデルは、多様な産業が集積する東京の各区において、より多彩な形で応用可能です。
- 東京都のMICE誘致戦略でも、強みである産業集積の活用が重要課題として挙げられており、本取組は戦略に完全に合致するものです。
主な取組③:サステナブルMICE開催支援制度の新設
- 環境配慮や社会貢献を重視する国際的な潮流に対応するため、「サステナブルMICE認証・支援制度」を新たに創設します。
- フードロス削減、地産地消の食材利用、再生可能エネルギーの活用、地域コミュニティへの貢献活動(市民向け公開講座の実施など)といった基準を満たすMICEイベントを区が認証し、認証取得にかかる経費や広報活動を支援します。
- 持続可能なイベント運営に関する専門家によるコンサルティングサービスも提供します。
- 客観的根拠:
- 近年、特に欧米の企業や団体は、MICE開催地の選定においてサステナビリティを重要な評価基準としています。しかし、日本の都市はサステナビリティに関する国際的な評価指標(GDS-Index等)で後れを取っており、この分野での取り組み強化は喫緊の課題かつ大きな差別化の好機です。
- 京都市では既に「サステナブルなMICE開催支援補助制度」が導入され、カーボンオフセットやリサイクル可能な資材の利用などを支援しています。この先進事例は、特別区でも効果的に導入可能です。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- MICE参加者一人当たりの消費額を5年間で20%増加させる(高付加価値化の実現)
- データ取得方法: 観光庁「MICEの経済波及効果算出事業報告書」の個票データ、または東京観光財団が実施する参加者消費動向調査の分析
- KSI(成功要因指標)
- 区内ユニークベニューでのMICE関連イベント開催件数を年間50件以上にする
- データ取得方法: 区が実施する助成金制度の申請・実績報告に基づく開催件数の集計
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- MICE主催者アンケートにおける「開催地としての魅力・独自性」の満足度スコアを5年間で20%向上させる
- データ取得方法: 公益財団法人東京観光財団等が実施するMICE主催者への事後アンケート調査結果の分析
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 新規に開発・商品化したテクニカルビジットプログラム数:年間10本
- データ取得方法: 担当部署によるプログラム開発実績の集計
- サステナブルMICE認証の取得件数:年間15件
支援策③:「オールエリア」での誘致推進体制の構築
目的
- 行政の縦割り構造を打破し、区、地域の関連事業者、住民が一体となった強力な公民連携(Public-Private Partnership)体制を構築します。
- これにより、エリア全体の総合力を結集し、グローバル市場での誘致競争に対して、迅速かつ効果的に対応できる「稼げるMICE推進体制」を確立することを目指します。
主な取組①:区版「MICEアライアンス」の設立
- 区役所(観光・産業振興担当部署)、地域の観光協会、主要なホテル、会議施設、DMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)、PCO(会議運営専門会社)、地域の有力企業などを構成員とする、公式な公民連携組織「(区名)MICEアライアンス」を設立します。
- このアライアンスが、区のMICE戦略の策定、共同での海外セールス活動、大型案件に対する共同提案(入札)など、誘致活動の中核を担います。
- 客観的根拠:
- 渋谷区では、東急グループなどが中心となり「渋谷MICE協会」が設立され、エリア内の事業者が連携して「エンタメMICE」をテーマにワンストップでの受注体制構築を目指しています。この民間主導の成功モデルは、他の区でも応用可能です。
- 横浜市では、行政と民間で構成されるDMO(横浜観光コンベンション・ビューロー)がハブとなり、MICEを「地域づくり産業」と位置づけて戦略的に推進しています。このような強力な公民連携体制が、都市の競争力を高める上で不可欠です。
主な取組②:ワンストップ支援窓口の機能強化
- MICEに関するあらゆる相談・手続きを一つの窓口で完結できる「ワンストップ支援窓口」を区役所内またはMICEアライアンス事務局に設置します。
- この窓口は、単なる案内業務に留まらず、会場や宿泊施設の手配支援、助成金申請のサポート、さらには道路使用許可(警察)や食品衛生許可(保健所)など、開催に必要な関係機関との調整役までを担う、強力なコーディネーション機能を持つことを目指します。
- 客観的根拠:
- 福岡市では、福岡観光コンベンションビューローがワンストップで手厚い支援を提供することで高い評価を得ており、令和5年度には70件の具体的なサポート実績を上げています。この利用者視点に立った手厚い支援体制が、誘致成功の鍵となります。
- 東京観光財団もユニークベニューやサステナビリティに関する専門のワンストップ窓口を設けています。区の窓口は、これら広域の支援機関と緊密に連携し、より地域に密着したきめ細やかなサポートを提供することで、相乗効果を生み出します。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- MICE誘致のリードタイム(主催者からの初期コンタクトから開催正式決定までの期間)を3年間で20%短縮する
- データ取得方法: ワンストップ支援窓口における案件管理データベースによる期間の計測・分析
- KSI(成功要因指標)
- 区版「MICEアライアンス」への加盟事業者・団体数を3年間で100社(団体)以上にする
- データ取得方法: MICEアライアンス事務局による加盟者リストの管理
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 官民連携による共同誘致活動での成功率(成約数 ÷ 提案数)を30%以上にする
- データ取得方法: MICEアライアンスで取り組む共同誘致案件の成果追跡調査
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- ワンストップ支援窓口での年間相談対応件数:200件
- データ取得方法: 支援窓口の相談記録(CRMシステム等)の集計
- MICEアライアンス主催の共同セールス・プロモーション活動回数:年間4回(海外2回、国内2回)
- データ取得方法: アライアンスの事業報告書による活動実績の確認
先進事例
東京都特別区の先進事例
渋谷区「エンターテイメントMICE戦略」
- 渋谷区は、「若者文化」「音楽」「IT・スタートアップ」といった街のDNAをMICE戦略に色濃く反映させています。
- 民間主導で設立された「渋谷MICE協会」が中心となり、再開発で生まれた新たな施設群を活用し、渋谷を「エンタメMICE」の聖地としてブランディングしています。単なる会議の場ではなく、ビジネスとエンターテイメントが融合した、創造性を刺激する体験を提供することで、特にクリエイティブ産業やテクノロジー分野のイベント誘致に成功しています。
- 成功要因:
- エリアのアイデンティティと直結した明確なブランディング
- 東急グループをはじめとする民間事業者の強力なリーダーシップ
- 渋谷でしか体験できないユニークなコンテンツ提供への集中
- 客観的根拠:
- 渋谷MICE協会は、エリア内の多様な事業者(ホテル、ホール、商業施設等)をネットワーク化し、MICEのワンストップ受注窓口となることを目指して活動しています。
港区「都心複合型MICE戦略」
- 港区は、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズ、東京ミッドタウンといった大規模複合施設や、多数の高級ホテル、外資系企業の本社が集積する強みを最大限に活用しています。
- これらの施設が持つ高度な会議機能、宿泊機能、商業機能、文化機能が一体となった「ALL IN ONE」の利便性を武器に、特に金融、IT、国際関係などの大規模で格式の高い国際会議や企業ミーティングの誘致で実績を上げています。
- 成功要因:
- 世界水準の質と規模を誇る都市インフラの集積
- 大企業や大使館との強固なパートナーシップ
- 移動の少ないコンパクトなエリア内で全ての活動が完結する利便性の提供
- 客観的根拠:
- 虎ノ門ヒルズフォーラムや六本木ヒルズは、金融サミット「FIN/SUM」や東京国際映画祭など、大規模な国際イベントのメイン会場として豊富な開催実績を誇ります。
江東区「大規模展示会拠点戦略」
- 江東区は、臨海副都心に位置する日本最大のコンベンション施設「東京ビッグサイト」を核としたMICE戦略を展開しています。
- その圧倒的な施設規模を活かし、自動車、アニメ、IT、環境技術など、日本の基幹産業を代表する大規模な国際見本市・展示会(Exhibition)の開催地として、国内で不動の地位を築いています。
- 成功要因:
- 他の追随を許さない施設の規模と収容能力
- MICEの「E(展示会)」に特化した専門性と運営ノウハウの蓄積
- 羽田空港からのアクセスの良さと周辺のホテル集積
- 客観的根拠:
- 東京ビッグサイトは10万平方メートルを超える展示面積を有し、「コミックマーケット」のような数十万人が来場するイベントから、「自治体総合フェア」のような専門的な展示会まで、多種多様な大規模イベントを年間を通じて開催しています。
全国自治体の先進事例
横浜市「公民連携による戦略的MICE都市」
- 横浜市は、MICE施設を単なるハコモノではなく、都市の成長を支える「産業インフラ」と明確に位置づけ、長期的な戦略に基づいて誘致活動を展開しています。
- 市、DMOである(公財)横浜観光コンベンション・ビューロー、そして民設民営の施設運営者である(株)パシフィコ横浜が「三位一体」となった強力な公民連携体制を構築し、特に医学会や大型国際会議の誘致に強みを発揮しています。
- 成功要因:
- 2030年を見据えた明確な長期戦略と数値目標の設定
- 役割分担が明確な強力な公民連携(PPP)フレームワーク
- みなとみらいの美しい景観や歴史的建造物を活用したユニークなコンテンツ開発
- 客観的根拠:
- 横浜市は「横浜市観光・MICE戦略」を策定し、2030年までに観光消費額5,000億円(2015-2019年平均3,467億円)という具体的な数値目標を掲げ、オール横浜で取り組みを進めています。
福岡市「ワンストップ支援とアジアゲートウェイ戦略」
- 福岡市は、アジアの玄関口という地理的優位性を活かし、特にアジアからの国際会議やインセンティブツアーの誘致に注力しています。
- (公財)福岡観光コンベンションビューローが提供する、誘致活動の初期段階から開催後のフォローアップまでをきめ細かく支援する「ワンストップサービス」は、主催者から高い評価を得ています。また、大学や地元経済界との連携も密で、地域一体となった受入体制が強みです。
- 成功要因:
- 主催者のニーズに徹底的に寄り添う、迅速かつ手厚いワンストップ支援体制
- アジア市場にターゲットを絞った明確なマーケティング戦略
- MICE専門人材の育成に市として積極的に取り組む姿勢
- 客観的根拠:
- 令和5年度、福岡市は国際コンベンション51件、参加者12,515人にのぼるインセンティブツアーの誘致・開催を決定しました。また、大学生等を対象としたMICE人材育成事業を22プログラム実施するなど、将来を見据えた投資も積極的に行っています。
参考資料[エビデンス検索用]
観光庁
内閣府
日本政府観光局(JNTO)
- 「MICEとは」(ウェブサイト)-(https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/resources/3902.html)(ウェブサイト)
- 「国際会議の開催がもたらす効果」(ウェブサイト)-(https://www.congre.com/news/20241216/)(令和6年)
- 「神戸市のMICE情報」(ウェブサイト)
東京都
公益財団法人東京観光財団
その他自治体・関連団体
シンクタンク・研究機関・大学等
-(https://www.jri.co.jp/file/report/jrireview/pdf/14629.pdf)(令和5年度)
民間企業・メディア
-(https://www.iace.co.jp/bts/column/detail/202408bri_05)(令和6年度)
まとめ
東京都特別区が激化する国際都市間競争を勝ち抜き、MICE誘致を成功させるためには、従来のプロモーション活動に留まらず、①高度な専門性を持つ人材の育成、②地域固有の魅力を活かした体験価値の高いコンテンツ開発、③官民が一体となった戦略的な連携体制の構築、という3つの柱への構造的な投資が不可欠です。量から質への転換を図り、高付加価値なMICEデスティネーションを目指すことが、持続的な経済成長と都市の国際的地位向上に繋がります。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。
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