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【2025年11月21日】東京都知事記者会見と政策立案のヒント

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知事冒頭発言(要約)

1. 台風22号、23号による被害への対応

概要

  • ニュース概要
     - 台風被害を受けた八丈町等において、都は関係機関と連携し復旧に尽力。特に水道は目標を前倒しし、11月15日に断水を完全解消しました。また、自衛隊による給水・入浴等の生活支援活動も終了しました。都は引き続き安定給水や復旧・復興に向け、八丈町への職員派遣や農業復旧支援の補助率引き上げなど、人的・財政的な支援を継続して実施します。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 基礎自治体単独では対応困難な激甚災害に対し、広域自治体が補完・支援を行うことで、被災住民の生命維持と早期の生活再建を保障するため。
  • 具体的なアクション
     - 水道復旧支援、自衛隊要請と連携、職員派遣、農業復旧費用の補助率嵩上げ。
  • 行政側の意図
     - インフラ復旧(ハード)と生活支援(ソフト)を並行して進め、被災地の不安を払拭するとともに、島の主要産業である農業等の事業継続を支える。
  • 期待される効果
     - ライフラインの早期安定化による住民生活の安心確保と、離島の過疎化防止。
  • 課題・次のステップ
     - 応急復旧から本格的な復興への移行、および気候変動による将来の災害に備えたインフラ強靭化。
  • 特別区への示唆
     - 今回は島しょ部の事例ですが、大規模災害時には特別区も他自治体からの支援受け入れ(受援)や、都との連携が不可欠となります。特にインフラ復旧におけるリエゾン(連絡員)の重要性や、自衛隊との連携手順を再確認する機会となります。また、被災自治体への職員派遣は、区職員の防災対応能力向上にも寄与するため、都の要請に基づき積極的に協力体制を整えておくことが望まれます。

2. 四定補正予算案(災害復旧・強靭化・ゼロエミッション)

概要

  • ニュース概要
     - 総額644億円の補正予算案を発表しました。柱は「災害からの復旧・復興」と「強靭な都市実現」です。台風被災者への住宅補修や事業者支援に加え、都内の浸水対策として止水板設置を行う区市町村への補助を実施します。また、来夏の電力需給を見据え、家庭用太陽光・蓄電池の設置支援や「東京ゼロエミポイント」の拡充を盛り込みました。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 直近の災害対応に加え、将来の気候変動リスクへの適応(防災)と緩和(脱炭素)を、財政措置を通じて迅速かつ一体的に推進する必要があるため。
  • 具体的なアクション
     - 被災住宅・事業者への助成、止水板設置補助、省エネ家電買替促進(ポイント拡充)。
  • 行政側の意図
     - 災害復旧を急ぐとともに、都民個人では負担の重い防災・省エネ設備への投資を行政が補助し、都市全体のレジリエンスを高める。
  • 期待される効果
     - 被災地の経済再生、都市部の浸水被害軽減、家庭部門のエネルギー自給率向上。
  • 課題・次のステップ
     - 予算成立後の速やかな執行と、各補助制度の複雑化を防ぎ、都民が利用しやすい広報を行うこと。
  • 特別区への示唆
     - 「止水板設置を行う区市町村への補助」は、特別区の浸水対策事業に直結します。区独自の助成制度がない場合は新設を、ある場合は都補助を活用した拡充を検討すべきです。また、ゼロエミポイントの拡充は区民の関心が高いため、区の窓口や広報紙で積極的に案内することで、区民サービス向上と環境施策の推進を同時に図ることができます。

3. 東京2025デフリンピック、スポーツFUN PARK

概要

  • ニュース概要
     - 開催中のデフリンピックは10万人以上が来場し、手話やデジタル技術を活用した応援で盛り上がりを見せています。大会後半の3連休には、駒沢オリンピック公園でイベント「スポーツFUN PARK」を開催。選手との交流やパラスポーツ体験、応援ブースなどを通じ、障害の有無を超えた共生社会の実現と大会のラストスパートを後押しします。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 国際大会の開催を契機として、パラスポーツの認知度向上と、障害者理解を深める「心のバリアフリー」を社会全体に浸透させるため。
  • 具体的なアクション
     - 競技会場でのデジタル観戦技術導入、ファンイベントの開催、体験コーナーの設置。
  • 行政側の意図
     - 単なるスポーツ観戦にとどまらず、きこえる人ときこえない人が共に楽しむ体験を提供し、インクルーシブな社会風土を醸成する。
  • 期待される効果
     - 障害者スポーツへの関心層拡大、共生社会への理解促進、大会の成功。
  • 課題・次のステップ
     - 大会終了後もこの機運を一過性にせず、手話言語の普及やユニバーサルデザインの街づくりにつなげること。
  • 特別区への示唆
     - デフリンピックの盛り上がりを地域の障害福祉施策にどう波及させるかが重要です。区内のパラスポーツイベントや学校教育において、大会のレガシー(「ミルオト」などの技術や応援スタイル)を取り入れることが考えられます。また、手話言語条例を制定している区では、大会の実践事例を参考に、聴覚障害者への情報保障やコミュニケーション支援をさらに強化するヒントとなります。

4. 東京グリーン・ブルーボンドの発行

概要

  • ニュース概要
     - 個人投資家向けに、環境施策の財源となる「東京グリーン・ブルーボンド」を発行します。今回はオーストラリアドル建てで、利率は年3.00%〜5.00%を予定。12月5日から売り出されます。先月発行したレジリエンスボンドに続き、都の強靭化・環境施策への資金を幅広く呼び込み、サステナブル・ファイナンス先進都市を目指します。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 環境対策には巨額の資金が必要であり、税収だけでなく市場から資金調達を行うとともに、都民の環境施策への参画意識を高めるため。
  • 具体的なアクション
     - 個人向け外貨建債券の発行、金融機関を通じた販売、使途の明確化(再エネ等)。
  • 行政側の意図
     - 魅力的な利率と環境貢献という付加価値を提供し、貯蓄から投資への流れを呼び込みつつ、都の施策への理解者・応援者を増やす。
  • 期待される効果
     - 安定的な財源確保、都民の環境意識および金融リテラシーの向上、国際的な都市評価の向上。
  • 課題・次のステップ
     - 為替リスク等の投資家への丁寧な説明と、調達資金による事業成果の透明性確保。
  • 特別区への示唆
     - 住民参加型の資金調達手法として参考になります。特別区においても、特定の公共施設整備や環境プロジェクトに対して、住民債(ミニ公募債)の発行を検討する余地があります。また、区民からの資産運用に関する相談が増える可能性があるため、こうした公的な投資機会の情報を適切に提供できる体制(消費生活センター等での情報整理)も有効です。

5. 結婚応援イベント

概要

  • ニュース概要
     - 都のAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」の成婚数が100組を突破しました。これを記念し、更なる利用促進のため、「TOKYO結婚おうえんフェスタ」(有楽町)と「お台場de縁結び」(交流イベント)を開催します。著名人によるトークショーや相談会、イルミネーション下での交流などを通じ、結婚を望む人の背中を押します。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 少子化の主要因である未婚化・晩婚化に対し、民間のサービスではカバーしきれない層へ、信頼性の高い出会いの場を公的に提供するため。
  • 具体的なアクション
     - AIマッチングの運用継続、大規模イベント開催、無料相談、写真撮影体験。
  • 行政側の意図
     - 行政主催という「安心感」をフックに、婚活に消極的な層の掘り起こしを図り、結婚に向けた具体的な行動変容を促す。
  • 期待される効果
     - 成婚数の増加、婚活への心理的ハードルの低下、少子化対策への寄与。
  • 課題・次のステップ
     - 一過性のイベントに終わらせず、参加者を継続的な婚活支援(AIマッチング登録等)へどう誘導するか。
  • 特別区への示唆
     - マッチング事業は規模の経済が働くため、区単独よりも都の広域システムへの誘導が効果的です。区としては、都のイベント情報を若年層へ確実に届ける広報支援が求められます。一方で、区主催イベントを行う場合は、都の大規模交流とは差別化し、区内の商店街や文化施設を活用した「地域密着型・体験型」の企画にすることで、結婚支援と地域活性化の相乗効果を狙う戦略が有効です。

6. 東京エコビルダーズアワード

概要

  • ニュース概要
     - 脱炭素化に向け、環境性能の高い建築物を供給する事業者を表彰する制度。今年度は新たに地域工務店向けの「地域ビルダー部門」を設け、昨年度を上回る応募がありました。11月末に表彰式、12月にはビッグサイトで受賞者によるプレゼンイベントを開催し、先進的な家づくりのノウハウを広く発信・普及させます。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 2030年カーボンハーフ実現には、家庭部門のCO2排出削減が不可欠であり、規制だけでなく表彰を通じて事業者の自発的な技術向上を促すため。
  • 具体的なアクション
     - 優良事業者の選定・表彰、地域工務店部門の新設、事例発表会の開催。
  • 行政側の意図
     - 大手だけでなく地域工務店の取組を評価し、業界全体の底上げを図るとともに、消費者が環境配慮住宅を選びやすい市場環境を作る。
  • 期待される効果
     - 高性能住宅の供給拡大、中小工務店の競争力強化、施主の環境意識向上。
  • 課題・次のステップ
     - 受賞企業の技術や工夫を、他の事業者へ横展開する仕組みづくりと、コスト面での消費者理解。
  • 特別区への示唆
     - 区内の建築行政や産業振興において、アワード受賞企業との連携は有効です。例えば、区の住宅改修助成において環境性能向上を要件とする際、施工業者選びの参考として受賞企業を紹介することや、区内の工務店に対して本アワードへの挑戦を促すことで、地域産業の技術力向上と脱炭素化を同時に支援できます。

7. TOURISE AWARDS 2025

概要

  • ニュース概要
     - サウジアラビア政府系の観光プラットフォーム「TOURISE」が主催するアワードで、東京が「世界で最も卓越した観光地(総合1位)」に選ばれました。また、「食と料理」「エンターテインメント」部門でも受賞。1,000件以上の候補地から選出され、東京の多様な魅力が国際的に高く評価されていることが確認されました。

政策立案への示唆

  • この取組を行政が行う理由
     - 観光都市としての国際的なブランド力を確立・維持し、インバウンド誘致による経済活性化を持続させるため。
  • 具体的なアクション
     - 国際的な評価の広報活用、受賞部門(食・エンタメ)の更なる磨き上げ。
  • 行政側の意図
     - 受賞をフックに海外プロモーションを強化し、高品質な観光体験を求める旅行者層を呼び込み、消費単価向上につなげる。
  • 期待される効果
     - 訪都外国人旅行者の増加、観光関連産業の活性化、都民のシビックプライド醸成。
  • 課題・次のステップ
     - オーバーツーリズムへの懸念に対するマネジメントと、多摩・島しょ部など都心部以外の魅力発信強化。
  • 特別区への示唆
     - 世界的評価を裏付けとして、各区の観光資源(食文化、地域のお祭り、サブカルチャー等)を再定義する好機です。特に「食」と「エンタメ」が評価されたことを踏まえ、区内の飲食店街やイベント情報を外国人向けに多言語化・整理することが推奨されます。また、都心部に集中する観光客を区内の魅力的なスポットへ分散・回遊させるためのプロモーション戦略を練ることが求められます。

質疑応答(要約)

  • デフリンピックの所感
     - 陸上での金メダル獲得など選手が活躍。「ミルオト」などの新技術により、障害の有無に関わらず一体となって応援できる新しい観戦の形が示されている。
  • 女性活躍推進条例への意見
     - パブコメでは賛同の一方で、男性や全労働者を対象とすべき等の意見もあった。これらを踏まえ、速やかに条例案を議会提出できるよう準備する。
  • 中国の水産物禁輸等の影響
     - 禁輸は以前から続いているが、科学的根拠に基づく判断を期待する。観光については、中国に限らず世界中から旅行者を誘致していく方針に変わりはない。
  • 柏崎刈羽原発再稼働
     - 安全確保と地元理解が大前提であり、新潟県知事の判断と考える。都はHTT推進や補正予算での省エネ支援等で、電力需給対策を進める。
  • 副首都構想
     - 報道等の議論の詳細は承知していない。中身が不明確であり、注視していく。
  • 台風被災地の復興目標
     - 災害対応はフェーズごとに進める。今回の補正予算では、農業等の産業事業者が意欲を持って再建できるよう、経済的な下支えを重視した。
  • 都議会の深夜化と働き方改革
     - 議会運営は議会の決定事項だが、職員の深夜対応は現実である。そうした状況も踏まえ、議会の対応を見ていく。
  • 取り違え事案の調査
     - 調査開始から半年経過。対象者の心情や高齢などの事情に配慮し、個別に丁寧な調査を継続している。
  • パンダ貸与と外交
     - 総理との面会で個別の話はしていない。上野動物園での野生生物保全の繁殖研究プロジェクトとして継続していく。

出典

小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和7年11月21日)

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