【特別区長会】不合理な税制改正に対する特別区の主張(令和7年度版)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
(出典)特別区長会「不合理な税制改正に対する特別区の主張(令和7年度版)」令和7年度
概要
本稿は、特別区長会が公表した「不合理な税制改正に対する特別区の主張(令和7年度版)」を基に、国の税制改正が東京都特別区の財政基盤に与える影響と、それに対する特別区の主張を体系的に整理し、解説するものです。地方創生の推進と税源の偏在是正を名目として進められてきた一連の税制改正は、応益負担や負担分任といった地方税の基本原則を損ない、特別区の自治体経営の根幹を揺るがす深刻な事態を招いています。
国による法人住民税の一部国税化、地方消費税清算基準の見直し、そしてふるさと納税制度といった「不合理な税制改正」による影響は、年々拡大しています。令和7年度単年度における特別区全体の減収影響額は、試算で約3,600億円に達します。さらに、平成27年度からの減収累計額は、令和7年度末には約2兆3,000億円という、極めて甚大な規模に膨れ上がる見込みです。特に、ふるさと納税制度による住民税の減収額は令和7年度だけで約1,065億円に上り、これは特別区民税収入の10%に迫る水準です。
これらの税制改正の背景には、「東京は財源に余裕がある」という一方的な見方が存在します。しかし、地方交付税を合算した人口一人当たりの地方財源で比較すると、東京都の水準は全国平均と大差なく、突出しているわけではありません。むしろ、東京都の住民や法人が納める税金は、地方交付税の原資の約5割弱(約8.9兆円)を負担しており、既に地域間の財政力格差の是正に大きく貢献しているのが実態です。
加えて、特別区は今後、公共施設の大量更新(2044年度までに約8兆円)、急速な高齢化に伴う介護需要の増大(2040年までに約2.7兆円の施設整備費)、そして首都直下地震への備えといった、国家の持続可能性にも関わる膨大な財政需要を抱えています。現在の税源流出は、これらの不可欠な行政サービスを提供する能力を著しく削いでいます。
特別区の主張の核心は、地方の財源不足や地域間格差の是正は、特定の自治体の財源を奪うことによってではなく、国の責任において地方交付税制度を通じて行うべきであるという点にあります。本稿では、これらの主張の根拠となるデータを詳細に示し、自治体経営の前提となる基幹財源を取り巻く状況を、国と東京都・特別区の立場の違いという観点から客観的に整理していきます。
不合理な税制改正が特別区財政に与える深刻な影響
全体像:奪われる基幹財源の規模
令和7年度における減収額の試算
国が推進する一連の税制改正は、特別区の財政に直接的かつ深刻な打撃を与え続けています。特別区長会の試算によると、令和7年度の単年度だけで、特別区全体で約3,600億円もの財源が失われる見込みです。この巨額の減収は、主に以下の三つの制度改正が複合的に影響した結果です。
- 法人住民税の一部国税化
- 地方消費税清算基準の見直し
- ふるさと納税制度による住民税の流出
これらの改正は、それぞれが異なる税目に影響を及ぼしながら、結果として特別区の基幹歳入である区税収入を多角的に侵食しています。約3,600億円という数字は、一時的な影響ではなく、制度として定着したことによる恒常的な財源の流出を意味しており、特別区の財政構造そのものを脆弱化させる深刻な問題です。
平成27年度からの減収累計額の推移
問題の深刻さは、単年度の影響額だけでなく、その累積額の推移を見ることでより一層明確になります。平成27年度から始まったこれらの不合理な税制改正による減収額は、雪だるま式に増加の一途を辿っています。
累計額は、令和5年度時点で約1兆6,000億円、令和6年度時点では約1兆9,000億円と推計されていましたが、令和7年度末にはついに約2兆3,000億円に達する見込みです。この推移は、国による税源偏在是正措置が段階的に、しかし確実に強化されてきた結果を示しています。平成26年度及び28年度の法人住民税の一部国税化、平成29年度及び30年度の地方消費税清算基準の見直し、そして令和元年度の新たな地方法人課税の偏在是正措置など、ほぼ毎年のように特別区の財源を奪う制度改正が積み重ねられてきました。
一つ一つの改正は小規模に見えるかもしれませんが、それらが長期にわたって累積することで、もはや看過できない規模の財政的ダメージとなっているのです。この静かで継続的な財源の流出は、財政の自由度が気づかぬうちに失われかねない危機をはらんでいます。
減収額のインパクト:区民生活への換算
約3,600億円や約2兆3,000億円といった数字はあまりに巨大で、その影響を直感的に理解することは困難です。しかし、これを区民の生活に身近な行政サービスに置き換えてみると、その深刻さが浮き彫りになります。
- 令和7年度の減収見込み額である約3,600億円は、23区全体のごみの収集・運搬にかかる費用の約3年分に相当します。
- ふるさと納税制度による令和7年度の住民税減収額約1,065億円だけでも、人口約90万人を抱える最大の区の年間決算額に匹敵する規模です。
これらの比較は、失われている財源が、本来であれば区民の安全・安心な暮らしを守り、子育て支援や高齢者福祉、教育環境の整備といった基礎的な行政サービスを充実させるために使われるべきものであったことを明確に示しています。税制改正は、抽象的な数字の移動ではなく、区民一人ひとりの生活に直結する問題なのです。
「税源偏在是正」の名の下に進められる国税化の流れ
地方税の本旨と乖離する国の手法
国は、一連の税制改正の目的を「地方創生の推進」と「税源の偏在是正」にあると説明しています。しかし、その手法は地方税の根幹をなす理念から大きく乖離していると、特別区は強く主張しています。
地方税の基本原則には、行政サービスを受ける受益(利益)に応じて住民が経費を負担する「応益負担」と、地域社会の構成員としてその能力に応じて経費を分担し合う「負担分任」があります。例えば、法人住民税は、企業がその地域で事業活動を行い、道路や消防、清掃といった行政サービスから便益を受ける対価として納める税金です。
しかし、国が進める法人住民税の一部国税化は、特別区内で事業を行う企業が納めた税金を国が一旦吸い上げ、地方交付税の原資として全国に再配分する仕組みです。これは、サービスを提供する自治体と税を負担する企業との直接的な関係を断ち切り、地方税を事実上の国税へと変質させるものです。この手法は、税負担と行政サービスの受益関係を不明確にし、地方税の本旨を根本から揺るがすものと言わざるを得ません。
応益負担・負担分任の原則の軽視
このような国の手法は、地方分権の理念にも逆行します。真の地方分権とは、各自治体が自らの判断と責任で地域の実情に応じた行政を展開できるよう、課税自主権を含む安定した自主財源を保障することにあります。
しかし、現在の税制改正は、自治体の重要な自主財源である地方税を縮小し、国からの交付金への依存度を高める方向へと進んでいます。これは、自治体の財政的自立性を損ない、国への従属を強めるものであり、結果として画一的な行政運営を招きかねません。自治体が自らの創意工夫で税源を涵養し、住民サービスを向上させるインセンティブも削がれてしまいます。
この問題は、単なる財源の奪い合いではなく、日本の地方自治のあり方をめぐる思想的な対立でもあります。国は「偏在是正」という分かりやすい言葉で国民の公平感に訴えかけますが、その裏で進んでいるのは、地方の自立性を削ぎ、中央集権的な財政構造を強化する流れです。特別区の主張は、この大きな流れに対し、地方自治の原則に立ち返るべきだという警鐘を鳴らしているのです。
主要な税制改正の問題点と特別区の主張
ふるさと納税制度:地方自治の根幹を揺るがす制度的欠陥
住民税減収額の急増と将来推計
数ある税制改正の中でも、ふるさと納税制度は特別区の財政に最も深刻な影響を与えている制度の一つです。当初の「ふるさとへの貢献」という理念とはかけ離れ、実質的な減税と返礼品獲得の手段として利用が拡大した結果、特別区からの住民税流出は爆発的に増加しています。
特別区全体の住民税減収額は、平成27年度からの累計で、令和7年度末には5,600億円を超える見込みです。特に令和7年度の単年度減収額は約1,065億円と推計されており、これは特別区民税全体の10%に迫る異常事態です。
この急増の背景には、平成27年に導入された「ワンストップ特例制度」が大きく影響しています。確定申告を不要にすることで手続きが大幅に簡素化され、納税者の利用が飛躍的に増加しました。制度の利便性向上が、結果として受益と負担の原則を歪める住民税の流出を加速させてしまったのです。
「寄附」の名目で行われる実質的な税の付け替え
ふるさと納税制度は法律上「寄附」と位置づけられていますが、その実態は大きく異なります。多くの利用者にとって、この制度は応援したい自治体への純粋な寄附ではなく、魅力的な返礼品を提供する自治体へ自身の納税先を選択する「税の付け替え」行為となっています。
自治体間での過度な返礼品競争は、自治体が多額の経費を返礼品の調達やポータルサイトへの手数料、広告宣伝費に投じる事態を招いています。結果として、納税者は消費者として最も有利な「商品」を探し、自治体は税収を奪い合う「事業者」として競争するという、歪んだ市場が形成されています。
受益と負担の乖離:住民税の根幹を破壊
この制度が持つ最大の問題点は、住民税の根幹である「受益と負担の一致」の原則を完全に破壊していることです。住民税は、私たちが居住する自治体から受ける教育、福祉、消防、ごみ収集といった日常的な行政サービスの費用を、その地域の住民が分かち合って負担するための税金です。
しかし、ふるさと納税制度を利用すると、特別区に居住し、その行政サービスを日々享受している住民が、税金だけは全く無関係の遠隔地の自治体に納めることが可能になります。これは、サービスは受けるが、その対価は支払わないという状況を生み出し、地域社会を支える住民税の存在意義そのものを失わせるものです。
不交付団体への一方的な不利益
さらに、ふるさと納税制度は、地方交付税の不交付団体である特別区にとって、構造的に著しく不公平な制度となっています。地方交付税の交付団体がふるさと納税によって減収した場合、その減収額の75%が後年度の基準財政需要額に算入され、国によって補填される仕組みがあります。
一方で、地方交付税を受け取っていない不交付団体である特別区には、このような補填措置が一切ありません。つまり、減収額の全額が純粋な損失となります。これは、財政的に自立している自治体ほど大きな不利益を被るという、制度設計そのものに大きな矛盾を抱えています。
特別区の主張:廃止を含めた抜本的見直し
これらの深刻な問題点を踏まえ、特別区長会は、ふるさと納税制度について「廃止を含めた抜本的な見直しを行うべき」と、最も強い言葉で主張しています。小手先の修正では解決できない構造的な欠陥を抱えている以上、制度そのものの存廃にまで踏み込んだ議論が必要であるという、強い危機感の表れです。
法人住民税の一部国税化:地方分権への逆行
税制改正の経緯と影響額の変遷
法人住民税の一部国税化は、国の偏在是正措置の中核をなすものであり、地方分権の流れに明確に逆行する動きです。この措置は、平成26年度税制改正で法人住民税法人税割の一部が国税化され「地方法人税」が創設されたことに始まります。さらに、消費税率10%への引き上げに合わせて、令和元年度税制改正では国税化がさらに拡大されました。
自主財源の縮小がもたらす自治体経営へのリスク
法人住民税は、固定資産税と並ぶ基礎自治体の基幹税目であり、自治体経営の安定性を支える自主財源の柱です。この自主財源が国の政策によって一方的に縮小されることは、自治体の財政的自立性を著しく損ないます。
国からの交付金に頼る割合が高まれば、国の意向に沿った事業が優先され、地域の実情や住民のニーズに基づいた独自の政策を展開する余地が狭まります。また、企業誘致や産業振興を通じて税源を涵養しようとする自治体の努力が、税収増として十分に報われなくなるため、地域経済の活性化に向けたインセンティブを削ぐことにも繋がりかねません。
特別区の主張:地方税の自主性尊重と国税化の中止
特別区は、法人住民税の一部国税化は地方分権の流れに逆行するものであり、中止すべきであると主張しています。地方間の財源確保や格差是正は、国の責任において、地方交付税制度など国の財源を用いて行うべきであり、特定の自治体の固有財源を奪って他の自治体に配分するという手法は、断じて容認できません。
地方消費税清算基準の見直し:最終消費地に帰属原則の歪曲
清算基準変更の歴史と特別区への影響
地方消費税は、その名の通り「消費」に着目した税であり、「最終消費が行われた場所の自治体の税収とする」という大原則(消費地帰属原則)に基づいています。しかし、国は複数回にわたり、この税収を各都道府県に配分するための「清算基準」を見直し、その結果、特別区を含む東京都の減収を招いています。
具体的には、平成29年度、30年度の改正により、清算基準における人口のウェイトが15%から50%へと大幅に引き上げられる一方で、小売年間販売額といった消費動向をより正確に反映する統計指標のウェイトが引き下げられました。
統計データと実態の乖離
この基準変更は、昼間人口が多く、観光客や通勤・通学者による消費(いわゆる「交流消費」)が非常に大きい大都市の実態を無視するものです。特別区内では、居住者以外の多くの人々が日々消費活動を行っていますが、清算基準が人口(夜間人口)に偏重したことで、実際に消費が行われた場所ではなく、消費者の居住地である他の道府県に税収が流出する構造が強化されました。
特別区の主張:本来の趣旨に沿った客観的基準への回帰
特別区の主張は明確です。地方消費税の清算基準は、本来の趣旨に立ち返り、消費の実態を客観的かつ正確に反映する統計指標に基づくべきであるというものです。人口という指標だけでなく、販売統計などを用いて、税収が最終消費地に適切に帰属するよう、基準を是正することを強く求めています。
「東京は財源に余裕がある」という誤解への反論
人口一人当たり地方財源の比較分析
地方税収と地方交付税を合算した実態
国による一連の税源偏在是正措置の根底には、「東京は財源が豊かで余裕がある」という単純化されたイメージがあります。しかし、自治体が実際に活用できる財源の全体像を把握するためには、地方税収に加えて、国からの地方交付税などを合算した「一般財源」で比較する必要があります。
全国平均と遜色ない財源水準
この地方交付税等を加味した人口一人当たりの地方財源で全国の道府県を比較すると、東京都の財源水準は、全国平均と比べて決して突出しているわけではなく、ほぼ同水準なのです。
このデータは、「東京だけが豊かである」という偏在是正の前提そのものが、実態とは異なる誤解に基づいていることを示しています。既存の地方交付税制度が、既に地域間の財政力格差を平準化する機能を十分に果たしているのです。
地方交付税制度への多大な貢献
交付税原資に占める東京都の負担割合
さらに重要なのは、東京都が地方交付税制度を通じて、既に全国の地域社会に多大な貢献をしているという事実です。地方交付税の原資となる国税(所得税、法人税、消費税など)のうち、実にその5割弱にあたる約8.9兆円は、東京都に住む住民や都内に拠点を置く法人が負担した税金で賄われています。
既に果たしている地域間格差是正の役割
つまり、東京都は「富を独占している」のではなく、むしろ「全国最大の仕送り元」として、地域間格差の是正において中心的な役割を既に担っているのです。これほどの貢献をしているにもかかわらず、その貢献には光が当てられることなく、追加的な財源の吸い上げが行われているのが現状です。
特別区が抱える膨大な将来財政需要
「東京は財源に余裕がある」という見方は、特別区が直面している、そして将来的にさらに深刻化する膨大な財政需要を全く考慮に入れていない点で、極めて表層的です。
公共施設の老朽化対策と更新需要
2044年までに約8兆円に上る改築需要
特別区が抱えるインフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、一斉に更新時期を迎えています。特別区長会の推計によれば、2044年度までに必要となる公共施設の改築需要は、総額で約8兆円という天文学的な規模に達します。
特に深刻な小中学校の老朽化
中でも、子どもたちの学びの場である小中学校の老朽化は特に深刻です。特別区の学校施設は、築45年を超える建物の面積が全体の5割を超えるなど、全国平均と比較しても著しく老朽化が進行しています。国の税制改正によって、こうした次世代への投資に必要な財源が奪われることは、将来の日本を担う人材育成の基盤を揺るがすことに他なりません。
急速な高齢化への対応
介護施設の不足と整備費用
全国で最も速いスピードで高齢化が進行しているのが、東京圏です。特別区においても、高齢者人口の急増は、介護サービスの需要を爆発的に増大させています。
2040年に向けた需要予測と財源確保の課題
推計では、2040年には介護入所施設が約51,515床不足すると見込まれており、これを新たに整備するためには約2.7兆円もの莫大な経費が必要となります。これらの対応には、継続的かつ安定的な財源が不可欠であり、現在の税源流出は、高齢者が安心して暮らせる社会を築くための準備を著しく阻害しています。
首都直下地震等への防災・減災対策
被害想定と対策の緊急性
首都・東京が抱える最大のリスクは、いつ発生してもおかしくないと言われる首都直下地震です。東京都防災会議の被害想定によれば、特別区内だけで全壊家屋約82,000棟、焼失家屋約119,000棟、避難者約300万人という、国家の存亡に関わるほどの壊滅的な被害が予測されています。
避難所機能の強化と木密地域の不燃化
この国家的危機から国民の生命と財産を守るための防災・減災対策は、一刻の猶予もありません。避難所となる公共施設の耐震化や機能強化、そして大規模な延焼火災のリスクが高い木造住宅密集地域(木密地域)の不燃化対策などが急務とされています。国による税源収奪は、こうした日本の安全保障に直結する投資を遅らせ、結果的に国全体のリスクを高める行為であるという視点が不可欠です。
あるべき地方税財政の姿:特別区の提言
特別区の主張は、単に失われた財源の返還を求めるという後ろ向きなものに留まりません。むしろ、日本の地方自治が将来にわたって持続可能であるための、より建設的で原則に基づいた地方税財政制度のあり方を提言するものです。
地方の財源を奪うのではなく、地方税財源総体を拡充すべき
特別区が提唱する最も基本的な理念は、限られた財源を自治体間で奪い合うのではなく、国全体の地方税財源のパイそのものを拡大すべきであるという点です。地方分権の本来の姿は、国の税源の一部を地方に移譲するなどして、各地域が自らの財源で責任をもって住民サービスを提供できるようにすることにあります。
財源調整は国の責任で地方交付税制度を通じて行うべき
地域間の財政力格差の是正は、国民全体の利益のために不可欠な機能です。しかし、その調整は、特定の自治体の固有財源を場当たり的に奪うという不透明な手法ではなく、国の責任において、地方交付税という公平で透明性の高い公式な制度を通じて行うべきです。この正規のルートを用いず、個別の税法改正で特定の自治体を狙い撃ちにするような手法は、制度の安定性を損ないます。
自治体間の不毛な対立を生まない制度設計の必要性
現在の不合理な税制改正、特にふるさと納税制度は、自治体同士を競争させ、税収を奪い合わせる「ゼロサムゲーム」の構造を生み出しています。これは、自治体間に不毛な対立と分断をもたらします。求められているのは、全ての地域が共存共栄できるような制度設計です。各地域が自らの魅力を高め、住民サービスを向上させることで発展し、その結果として国全体が豊かになる。そのような好循環を生み出す税財政制度こそが、真の地方創生に資するのではないでしょうか。
まとめ
国が進める一連の「不合理な税制改正」は、単に東京都特別区という一地域の財政問題に留まらず、日本の地方自治の根幹と将来のあり方を問う、極めて重要な課題です。法人住民税の一部国税化、地方消費税清算基準の恣意的な見直し、そして制度的欠陥を抱えるふるさと納税制度によって、特別区の基幹財源は平成27年度以降、累計で2兆3,000億円という異常な規模で奪われ続けています。
この背景には、「東京は財源に余裕がある」という、地方交付税による調整後の実態を無視した一方的な認識が存在します。しかし、特別区は公共施設の大量更新や急速な高齢化、そして首都直下地震への備えといった、国家の持続可能性にも関わる膨大な財政需要を抱えており、現在の財源流出はこれらの不可欠な責務を果たす能力を著しく削いでいます。
特別区の主張は、特定の自治体の財源を奪う対症療法的な手法を改め、国の責任で地方交付税制度を通じて公平な財源調整を行うという、地方税財政の王道に立ち返ることを求めるものです。それは、自治体間の不毛な対立を乗り越え、全ての地域が自らの創意工夫で発展できる、真の地方分権社会を実現するための建設的な提言に他なりません。
