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【2025年10月10日】東京都知事記者会見と政策立案のヒント

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1. 台風22号

概要

ニュース概要
 非常に強い台風22号により、伊豆諸島で多数の建物被害が発生したことを受け、都は災害救助法の適用を決定しました。被災町村の要請に基づき、食料や水などの物資輸送、給水車の派遣、都職員によるきめ細かな支援を実施します。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 災害発生時に住民の生命と財産を守り、生活の早期復旧を支援するため、迅速な初動対応と被災自治体への支援は不可欠です。

具体的なアクション
 災害救助法の適用、救援物資の輸送、給水車の派遣、応援職員の派遣。

行政側の意図
 国や関係機関と連携し、都として主体的に被災地支援に取り組む姿勢を示すことで、島民の不安を軽減し、復旧を加速させます。

期待される効果
 被災者の生活基盤の早期安定化と、被災町村の行政機能の回復支援。

課題・次のステップ
 接近が予測される台風23号への備えと、今回の被害を踏まえた継続的な防災対策の強化。

特別区への示唆
 首都直下地震など大規模災害に備え、島しょ部のような孤立しやすい地域との連携体制や、職員派遣、物資輸送に関する具体的な計画を再確認することが重要です。また、住民への情報伝達手段の多重化も検討すべきです。

2. 女性活躍条例の基本的な考え方に関するパブリックコメント

概要

ニュース概要
 働く場における女性の活躍を一層推進するため、都は新たに条例の策定を目指しています。その素案として「基本的な考え方」を取りまとめ、都民からの意見を募集するパブリックコメントを開始しました。日本のジェンダーギャップ指数の低迷が背景にあります。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 日本の潜在能力を最大限に引き出すため、特に遅れが指摘される経済分野での女性活躍を制度的に後押しし、社会全体の活力を向上させる必要があります。

具体的なアクション
 条例の基本的な考え方(理念共有、責務の明確化、指針策定)を示し、パブリックコメントを実施。

行政側の意図
 都、事業者、都民が一体となって女性活躍を推進する社会的な機運を醸成し、誰もがいきいきと暮らせる社会の実現を目指します。

期待される効果
 働く場での環境改善が進み、男女間の格差が是正されることによる経済の活性化。

課題・次のステップ
 パブリックコメントで得られた意見を反映し、実効性のある条例を策定・施行すること。

特別区への示唆
 都の条例制定を見据え、区独自の女性活躍推進策を検討することが求められます。例えば、区内事業者向けのセミナー開催や、女性管理職登用を促すインセンティブ設計、男性の育児休業取得促進など、具体的な支援策の立案が考えられます。

3. 「出会い・結婚」をテーマとした動画、育業出前講座

概要

ニュース概要
 若者が抱く結婚や子育てへの不安を払拭するため、都は新たな情報発信を開始しました。大学生や若手社会人の意見を取り入れた「出会い・結婚」がテーマの動画を公開したほか、大学生向けに「育業」をテーマとした出前講座を開催します。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 少子化対策の一環として、若年層が将来にポジティブな展望を持てるよう、結婚や子育てに関する正確な情報提供とイメージ改善が不可欠だからです。

具体的なアクション
 YouTuberを起用した動画の制作・配信、タレントを講師に招いた大学での出前講座の実施。

行政側の意図
 若者のリアルな声や関心を反映したアプローチにより、効果的にメッセージを届け、結婚や育業(育児休業)への理解と関心を深めてもらうことを狙います。

期待される効果
 若者の意識変容を促し、将来的な婚姻率や出生率の向上につなげること。

課題・次のステップ
 継続的な情報発信と、講座参加者がさらに学びを深められるような機会の提供。

特別区への示唆
 若者へのアプローチとして、SNSや動画プラットフォームの活用は有効です。区の特性に合わせて、地域の若者や子育て世代が参加しやすいイベントや情報発信を企画することが考えられます。大学や企業と連携した出前講座の実施も参考になります。

4. 「すくわくナビゲーター園」の募集

概要

ニュース概要
 都が推進する、全ての乳幼児の育ちを応援する「とうきょう すくわくプログラム」について、プログラムの質をさらに高めるため、他の園の手本となる「すくわくナビゲーター園制度」を創設しました。ナビゲーター園は、見学の受け入れや助言を行います。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 保育の質の向上と平準化を図るため、先進的な取組を行う園のノウハウを他の園に共有する仕組みを構築し、地域全体の子育て支援のレベルアップを目指します。

具体的なアクション
 実施園同士の学び合いを促進する「すくわくナビゲーター園制度」の創設と募集開始。

行政側の意図
 園同士の自発的な学び合いを促すことで、行政主導の一律の研修だけでなく、現場に即した実践的な保育の質の向上を図ります。

期待される効果
 都内全域の幼稚園・保育所等における保育の質の底上げと、保育士のスキルアップ。

課題・次のステップ
 多くの園に応募してもらい、制度を軌道に乗せること。ナビゲーター園の活動を支援する体制構築。

特別区への示唆
 区内の保育施設間での連携を強化する施策として参考になります。優れた実践事例を持つ園をモデル園として認定し、園同士の見学や情報交換会を区が主体的に企画・支援することで、地域全体の保育の質の向上につながります。

5. 水素燃料電池船の活用

概要

ニュース概要
 都は脱炭素化に向け、水素エネルギーの活用を推進しています。この度、岩谷産業株式会社と協定を締結し、大阪・関西万博で運航された水素燃料電池船を無償で提供受け、来年度から東京港で活用する共同事業を開始します。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 脱炭素社会の実現に向け、次世代エネルギーである水素の有用性を都民に広く周知し、社会実装を加速させるため、象徴的な取組が求められます。

具体的なアクション
 民間企業との協定締結による水素燃料電池船の導入と、運航に向けた設備整備。

行政側の意図
 都民が実際に乗船できる機会を提供することで、水素エネルギーを身近に感じてもらい、環境問題への関心を高め、都の先進的な取組をアピールします。

期待される効果
 水素エネルギーの認知度向上と、関連産業の集積による東京の国際競争力強化。

課題・次のステップ
 安定的な運航に向けたインフラ整備と、多くの都民が利用できるような具体的なプログラムの策定。

特別区への示唆
 水素エネルギーのような先進技術について、住民の理解を深めるための普及啓発活動は重要です。例えば、小中学校での環境学習のテーマとして取り上げたり、区のイベントで関連技術の展示を行ったりするなど、都の取組と連携した啓発が考えられます。

6. TOKYOレジリエンスボンドの発行

概要

ニュース概要
 都は、気候変動による自然災害への対応など、都市の強靭化(レジリエンス)を目的とした資金を調達するため、世界で初めて国際認証を受けた「TOKYOレジリエンスボンド」を海外市場で発行します。発行規模は500億円相当を見込んでいます。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 激甚化する自然災害から都民の生命と財産を守るためには、継続的かつ大規模なインフラ整備が不可欠であり、そのための安定的な財源確保が課題となります。

具体的なアクション
 レジリエンスボンドを海外市場で発行し、調達資金を調節池整備や無電柱化などの事業に充当。

行政側の意図
 新たな資金調達手法を用いることで、都の強靭化への取組を国際社会にアピールし、同様の課題を持つ世界の都市への投資を促進する先導的な役割を担います。

期待される効果
 強靭化プロジェクトの着実な推進と、サステナブルファイナンス分野での東京の地位向上。

課題・次のステップ
 市場の状況を見極めた上での発行と、調達資金による事業の着実な執行、および投資家への成果報告。

特別区への示唆
 自治体の資金調達手法の多様化として注目すべき事例です。区が実施する防災・減災対策や環境対策など、特定の目的を持つ事業について、クラウドファンディングや地域限定の債券発行など、住民や企業が参画しやすい新たな財源確保の方法を検討するきっかけになります。

7. ファンモアタイム新宿2025及びスマートシティフェスタの開催

概要

ニュース概要
 新宿駅西口で進められている「人が中心のウォーカブルなまちづくり」を体験できるイベントが開催されます。期間中は一部道路を歩行者専用とし、キッチンカーの出店や、空飛ぶクルマのVR体験など未来の技術に触れるコンテンツも提供されます。

政策立案への示唆

この取組を行政が行う理由
 都市の再開発プロジェクトの意義や将来像を住民に分かりやすく伝え、理解と協力を得るため、完成後の姿を体験できるイベントは効果的です。

具体的なアクション
 道路の歩行者天国化、キッチンカー出店、デジタルスタンプラリー、最新デジタル技術の体験コンテンツ提供。

行政側の意図
 まちづくりのビジョンを具体的に示し、賑わいを創出することで、再開発への期待感を醸成するとともに、スマートシティ化への取組を広くPRします。

期待される効果
 新しい西新宿の魅力向上と、まちづくりへの住民参加意識の向上。

課題・次のステップ
 イベントでの成果や課題を分析し、今後の恒久的なまちづくり計画に反映させること。

特別区への示唆
 各区で進める駅前再開発や道路空間の再編において、社会実験として期間限定でイベントを実施することは非常に有効です。住民の反応を直接見ることで、計画の妥当性を検証し、より良いまちづくりへとつなげることができます。

質疑応答(要約)

  • デフリンピック開催に向けた準備
    • 開催まで約1ヶ月となり、区市町村や関係団体と連携して機運醸成に努めてきた。大会本番では、多くの人に会場へ足を運んでもらい、手話を使った「サインエール」で選手を応援してほしいと期待を述べました。
  • 高市新総裁への期待
    • 自身も自民党総裁選への立候補経験があることに触れ、高市新総裁には政治分野での女性の活躍を一層推進し、日本のジェンダーギャップ指数の順位を上げることを期待していると述べました。
  • 政治空白への懸念と経済への影響
    • 新政権の枠組みが固まらない現状について、物価高対策などの政策にスピード感が求められる中で課題があると指摘。金利の上昇や円安が都民生活に与える影響を注視し、国の動向と連携した対策の必要性を述べました。
  • 東京の銭湯文化の振興
    • 銭湯はまちの魅力や歴史・伝統を守る重要な要素であり、まちづくりの観点からも大切にしたいと発言。ライフスタイルの変化も踏まえながら、国内外に銭湯文化の魅力を発信し、活用を促していく考えを示しました。
  • 新たな女性活躍条例の制定理由
    • 既存の男女平等参画基本条例に加え、特に「働く」分野に焦点を当てた新条例の必要性を強調。仕事と育児・介護の両立など、時代の変化に応じた課題に対応するため、実効性のある条例を目指す考えを述べました。
  • 臨海副都心のまちづくり
    • 開発から40年を迎え、年間5,000万人以上が訪れる賑わいのある街に発展したと評価。新たに開業したアリーナなどに加え、次世代モビリティも活用し、今後も東京の成長を牽引するポテンシャルの高い地域として発展させていく意欲を示しました。
  • 島しょ部の災害対策
    • 台風被害を受け、ライフライン確保の観点から無電柱化をさらに加速させる必要性を強調。衛星通信「スターリンク」の活用など、通信手段の確保も重要であり、津波対策と合わせて島しょ部の安心・安全を着実に確保していくと述べました。
  • 都営バスの減便への対応
    • 運転手不足は都営バスだけでなく民間事業者とも共通の課題であると認識。免許取得に関する規制緩和などを進めてきたが、人材確保が最重要であり、事業者と連携しながら魅力ある職場づくりなどに取り組む必要性を述べました。
  • 中小企業の賃上げ支援
    • 都議会で関連条例案が否決されたが、都には既に多様な支援策があると説明。まずは既存の支援策が中小企業に十分に活用されるよう、周知を徹底していくことが重要であるとの考えを示しました。
  • クマの出没への対応
    • 生態系の変化が市街地への出没増加の原因との見方を示し、専門家の意見を聞きながら効果的な対策を講じていくと述べました。また、伊豆大島での特定外来生物「キョン」対策の事例も挙げ、動物の種類に応じた適切な対策を進める考えを示しました。
  • 選択的夫婦別姓制度について
    • 女性活躍施策との関連で問われたが、長年の議論があるテーマであり、最高裁の判断なども含め、国会でしっかりと審議し結論を出すべき問題であるとの考えを示すにとどめました。

出典

小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和7年10月10日)

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