07 自治体経営

【財政課】継続費 完全マニュアル

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

継続費の基本理解

制度の意義と目的

 地方自治体の財政運営において、「継続費」は、単なる会計上の一手続に留まらず、長期的な視点に立ったまちづくりを実現するための極めて重要な戦略的ツールです。地方自治法第212条に定められるこの制度は、学校や地域センターの建設、道路や橋梁といった大規模な社会資本整備など、その完成までに複数年度を要する事業について、あらかじめ事業全体の経費の総額と各年度の支出予定額(年割額)を一体として議会の議決を経ることで、複数年度にわたる安定的な支出を法的に担保するものです。

 この制度の根底には、三つの重要な意義が存在します。第一に、「事業の安定的かつ計画的な執行の実現」です。単年度予算主義の下では、次年度以降の財源が保証されないため、大規模事業が景気変動や政策の優先順位の変更によって中断・遅延するリスクが常に伴います。継続費は、事業開始から完了までの財源を法的に確保することで、こうした不確実性を排除し、行政サービスの空白期間を生じさせることなく、計画通りの事業遂行を可能にします。これは、単に予算を確保するという事務的な意味合いを超え、行政が区民に対して行った長期的な約束を確実に履行するという、信頼の証でもあります。継続費を設定するという行為そのものが、当該事業が区の最重要施策の一つであることを内外に示す強力なメッセージとなるのです。

 第二に、「世代間の公平性の確保」です。道路、橋、公共ホールといった社会資本は、完成後、長期にわたり将来の世代も利用する資産です。これらの建設費用を特定の単一年度の予算のみで賄うことは、その年度の納税者に過大な負担を強いることになり、資産から便益を受ける将来世代との間で不公平が生じます。継続費を活用し、建設期間中の複数年度にわたって計画的に支出を平準化することは、世代を超えて負担を分かち合うという、財政における公平性の原則を具現化するものです。

 第三に、「計画的なまちづくりの推進」です。大規模な再開発事業や交通インフラの整備といった、地域の将来像を形作る長期的な都市計画は、安定した財源的裏付けがなければ絵に描いた餅に終わってしまいます。継続費は、事業の全体像と総経費を初期段階で明確にし、議会の議決という民主的なプロセスを経ることで、場当たり的な開発を防ぎ、一貫性のあるまちづくりを着実に推進するための財政的な基盤を提供するのです。

歴史的変遷と制度的位置づけ

 日本の近代的な地方自治制度は、明治11年(1878年)の「三新法(郡区町村編制法・府県会規則・地方税規則)」制定にその源流を見ることができます。この時代から、地方公共団体における予算制度は、行政活動の根幹として位置づけられてきました。その後の地方自治制度の発展の中で、行政が担う役割は拡大し、特に戦後の経済成長期以降、社会資本整備の需要が急増しました。

 このような背景のもと、単年度で完結しない大規模・長期的な事業をいかにして計画的かつ安定的に執行するか、という課題が浮上しました。国の財政制度(財政法)において、同様の目的を持つ継続費制度が先行して存在していましたが、地方公共団体においても同様のニーズがあることから、地方自治法第212条に継続費の規定が設けられました。これは、国の制度と地方の制度が、行政運営における普遍的な課題、すなわち「会計年度ごとの財政規律」と「複数年度にわたる事業遂行の必要性」という二つの要請をいかに調和させるか、という問いに対する共通の答えであったことを示唆しています。

 したがって、継続費は単なる地方独自の特殊な制度ではなく、近代的な行政国家がその責務を果たす上で不可欠な財政手法として確立された、普遍的な位置づけを持つものと理解すべきです。その存在自体が、会計年度独立の原則という厳格な規律だけでは、現代社会の複雑で長期的な行政需要に応えきれないという、制度設計上の現実的な判断を反映しているのです。職員の皆様には、継続費を単なる例外規定として捉えるのではなく、長期的な視点で区民福祉の向上を目指すために法が用意した、積極的かつ戦略的な財政ツールとして認識することが求められます。

会計年度独立の原則との関係

 地方自治体の財政運営における最も基本的な原則の一つが、「会計年度独立の原則」です。地方自治法第208条第2項は、「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない」と定めており、各年度の収支を明確化し、財政責任の所在を明らかにするための根幹をなす規定です。この原則があるからこそ、年度ごとの財政状況が明確になり、議会や住民による民主的なコントロールが可能となります。

 しかし、この原則をあまりに厳格に適用すると、年度をまたぐ事業の実施が極めて困難になります。そこで、地方自治法は、行政運営の現実的な必要性に応えるため、いくつかの計画的かつ意図的な例外を設けています。継続費は、その最も代表的かつ強力な例外規定です。

 継続費は、会計年度独立の原則を否定するものではなく、むしろその原則が持つ硬直性を補い、長期的な視点での財政運営を可能にするための「発展的な例外」と位置づけられます。単年度の財政規律を維持しつつ、複数年度にわたる戦略的な投資を計画的に実行するという、二つの時間軸を同時に管理することを可能にする制度なのです。

 地方自治法には、この他にも「繰越明許費」(年度内に支出が終わらない見込みの経費を翌年度に繰り越す制度)や「事故繰越」(避けがたい事故により年度内に支出が終わらなかった経費を繰り越す制度)といった例外規定が存在します。これらの制度の存在は、単年度での予算執行が常に計画通りに進むとは限らないという現実を法が認識している証左です。中でも継続費は、事故繰越のような事後対応的なものではなく、事業の性質上、当初から複数年度にわたることが明白な場合に、最も計画的かつ積極的に適用されるべき制度として、明確に区別されています。それは、行政における「予見不可能性」への対応ではなく、「予見された長期性」への計画的な対応を可能にする、制度化された先見性(フォーサイト)の表れと言えるでしょう。

法的根拠と関連制度の詳解

地方自治法第212条の逐条解説

 継続費の根拠となるのは、地方自治法第212条です。この条文を正確に理解することが、実務の第一歩となります。

地方自治法第二百十二条

1 普通地方公共団体の経費をもつて支弁する事件でその履行に数年度を要するものについては、予算の定めるところにより、その経経費の総額及び年割額を定め、数年度にわたつて支出することができる。

2 前項の規定により支出することができる経費は、これを継続費という。

 この条文を分解し、実務上の要点を解説します。

  • 「普通地方公共団体の経費をもつて支弁する事件でその履行に数年度を要するもの」: これは継続費の対象となる事業の範囲を定めています。国の財政法が対象を「工事、製造その他の事業」と比較的限定的に規定しているのに対し、地方自治法ではより広く「事件」と表現されており、地方公共団体はより広範な事業を対象とすることが可能です。重要なのは、「履行に数年度を要する」という客観的な事実です。単に予算の都合で分割して支出するのではなく、事業の性質そのものが複数年度にわたることを要求します。
  • 「予算の定めるところにより」: 継続費の設定は、必ず予算の一部として、議会の議決を経なければならないことを意味します。行政の独断で設定することはできず、民主的な統制下に置かれています。
  • 「その経費の総額及び年割額を定め」: これが継続費の最も本質的な要件であり、実務上の最大のポイントです。事業に着手する前に、完了までにかかる「総額」と、各年度に支出する予定の「年割額」を算定し、議会に示さなければなりません。これは、事業所管課に対して極めて高度な事業計画の策定能力と精緻な積算能力を要求します。この要件こそが、継続費の持つ強力な財政規律の源泉であると同時に、手続きが煩雑であると敬遠される一因ともなっています。しかし、この厳格な事前計画こそが、事業の安定的な執行を担保する根幹なのです。

 この条文は、単なる手続き規定ではなく、地方公共団体が長期的な事業に取り組む際の「誓約」の形式を定めたものと解釈できます。総額と年割額を議会に約束することで、将来の財政状況の変動から事業を守り、計画通りに完遂するという強い意志表示となるのです。

関連法令・規則

 継続費の実務を遂行する上では、地方自治法本体だけでなく、関連する法令や各区の条例・規則にも精通している必要があります。

  • 地方自治法施行令: 特に重要なのが、継続費の柔軟な執行を支える「逓次繰越」に関する規定です。地方自治法施行令第145条第1項第1号は、継続費の年割額の執行残額を、事業の完成年度まで順次繰り越して使用できることを定めています。この規定があるおかげで、予期せぬ事情で年度内に予算を消化しきれなかった場合でも、資金を失うことなく翌年度以降の事業に充当できます。
  • 各特別区の財務規則等: 東京都や各特別区では、予算・決算に関する具体的な手続きを財務会計に関する規則(例:東京都会計事務規則)で定めています。継続費を設定する際の予算要求書の様式、議会に提出する議案の記載事項、事業年度が終了した際の「継続費繰越計算書」の作成・提出期限、事業完了後の「継続費精算報告書」の様式など、具体的な事務手続きはこれらの規則に基づきます。財政課職員は、地方自治法という大きな枠組みと、自区の規則という詳細なルールの両方を正確に把握しておく必要があります。

類似制度との比較整理

 実務において職員が最も混乱しがちなのが、継続費と類似の財政制度、特に「債務負担行為」との使い分けです。それぞれの制度の特性を正確に理解し、事業の性質に応じて最適な手法を選択することが、財政課職員の専門性を示す上で不可欠です。以下に、主要な制度を比較整理します。

項目継続費 (Continuing Expenditures)債務負担行為 (Commitment Expenditures)繰越明許費 (Carry-over Approval Expenditures)事故繰越 (Carry-over due to Unforeseen Circumstances)
根拠法令地方自治法第212条地方自治法第214条地方自治法第213条地方自治法第220条第3項
主な目的複数年度にわたる事業の経費総額と年割額を一体で定め、計画的・安定的に執行する。将来の年度にわたる債務(契約等)を負担する権限を、限度額の範囲で設定する。年度内に支出が終わらない見込みの経費を、翌年度に限り繰り越して使用する。支出負担行為後、避けがたい事故により年度内に支出が終わらなかった経費を翌年度に繰り越す。
議決の対象事業の名称、経費の総額、年割額、事業期間債務を負担する事項、期間、限度額繰り越しが必要な経費の事項と金額原則として議決は不要(事後報告)
支出権限の付与総額の範囲内で、各年度の年割額について当初から支出権限が付与される債務負担の権限のみ付与。各年度の実際の支出には、別途その年度の歳出予算の議決が必要。翌年度の支出権限が付与される。翌年度の支出権限が付与される。
繰越の可否と方法逓次繰越が可能。年割額の不用額を事業完了年度まで順次繰り越せる。制度自体に繰越の概念はない。翌年度1年間に限り繰越が可能。翌年度1年間に限り繰越が可能。
主な活用場面大規模な建設工事や施設整備など、事業全体の費用と工程が当初から明確な事業。複数年度にわたる施設の管理委託契約、リース契約、選挙の執行準備など、支出額が年度ごとに変動する可能性があるもの。用地買収の遅延や、設計の完了が年度末になるなど、予算成立後の事由で年度内支出が困難になった場合。災害復旧工事の遅延など、予見不可能な事態により年度内の支払いが完了しなかった場合。

 この表から明らかなように、**継続費と債務負担行為の最大の違いは、「支出権限が当初から付与されるか否か」**にあります。継続費は、一度議決されれば、その後の各年度において改めて支出のための予算議決を経ることなく、年割額の範囲内で安定的に支出が可能です。一方、債務負担行為は、あくまで「契約を結ぶ権限」を先に得るものであり、実際に支払いを行うためには、毎年度の予算編成プロセスの中で歳出予算として計上し、議決を得る必要があります。

 したがって、事業の全体像、総事業費、年度ごとの進捗が明確に計画できる大規模な建設事業などには継続費が適しています。逆に、PFI事業のサービス購入料のように、将来の支払いは確定しているものの、年度ごとの支払額が相手方の実績に応じて変動するような契約には、債務負担行為の方が柔軟に対応できる場合があります。この違いを理解することが、適切な制度選択の鍵となります。

継続費設定の標準業務フロー

予算編成プロセスにおける位置づけ

 継続費の設定は、単独で行われるものではなく、毎年度の当初予算編成という大きなプロセスの中に組み込まれています。地方自治体の予算編成は、一般的に前年度の夏頃から始まり、翌年3月の定例議会での議決まで、半年以上にわたる長期的かつ体系的なプロセスを経て進められます。

 継続費という複数年度にわたる財政的コミットメントを伴う案件は、このプロセスの中でも特に早期の段階でその必要性が検討され、計画が具体化されている必要があります。

  1. 予算編成方針の策定(9月~10月頃): 財政課は、国の動向や税収見込み等を踏まえ、次年度の予算編成の基本方針を策定し、庁内に通知します。大規模な投資的経費を伴う継続費事業を新たに立ち上げる場合、この方針の中にその方向性が示されることが理想的です。
  2. 各部局からの予算要求(10月~11月頃): 各事業所管課は、予算編成方針に基づき、次年度の予算要求書を財政課に提出します。継続費の設定を求める場合、この段階で、事業の全体計画、総事業費、年割額、財源内訳などを盛り込んだ詳細な要求資料を提出する必要があります。
  3. 財政課による査定(11月~12月頃): 財政課は、各部局からの要求内容を精査し、ヒアリング(査定)を実施します。継続費の要求は、将来の財政を長期間にわたって拘束するため、他の経費よりも格段に厳格な審査の対象となります。事業の必要性、効果、効率性はもちろんのこと、総事業費の妥当性や将来にわたる財政負担の持続可能性が、極めて重要な論点となります。

 このように、継続費の設定要求は、予算編成プロセスにおける「一大イベント」です。それは、単年度の予算配分を求めるのではなく、将来の予算配分の自由度を意図的に制約し、特定の事業に資源を優先的に投入することを求める、高度に戦略的な行為だからです。したがって、事業所管課は、なぜ他の事業に優先して長期的な財政的コミットメントが必要なのか、その戦略的意義を財政課や首長、そして最終的には議会に対して明確に説明する責任を負います。

事業所管課における起案と要求

 継続費の設定を成功させるためには、事業を所管する課における入念な準備と、正確な手続きが不可欠です。

  1. 事業計画の策定と合意形成: まず、事業の全体像を明確にする必要があります。事業の目的、全体工程、完成までの各年度の事業内容、そして最も重要な総事業費と年割額の精緻な積算が求められます。この計画は、単に課の内部で作成するだけでなく、部内の上層部、そして関係各課との十分な調整を経て、組織としての意思決定を経る必要があります。
  2. 正式な起案手続き: 計画が固まったら、継続費を新規に設定するための正式な起案(稟議)を行います。この起案書には、事業の必要性、計画の詳細、財政的な影響などを明記し、財政部長や財政調整課長、総務課長などの合議を得る必要があります。この庁内での合意形成プロセスが、円滑な予算要求の前提となります。
  3. 財務会計システムへの入力と要求書提出: 起案が承認された後、財務会計システムを用いて予算要求データを入力します。システムには、継続費の総事業費、各年度の計画年割額、そして国庫支出金、地方債、一般財源といった財源内訳を正確に入力する必要があります。システムから出力した要求様式と、承認された起案書の写し、積算の根拠となる見積書や図面などの詳細資料を添付して、財政課に正式に予算要求を行います。

財政課における査定と調整

 事業所管課から提出された継続費の設定要求に対し、財政課は区の財政全体の守護者として、多角的な視点から厳格な査定を行います。

  1. 要求内容の精査: 財政課の担当者は、まず提出された資料一式を精査します。総事業費の積算根拠は妥当か、年割額の配分は事業工程と整合しているか、財源計画に無理はないか、といった点を詳細に検証します。特に、将来にわたる一般財源の負担額を算出し、中期的な財政見通しと照らし合わせて、持続可能であるかを評価します。
  2. ヒアリング(査定)の実施: 予算編成プロセスの中核をなすのが、財政課と事業所管課との間のヒアリングです。この場で、財政課は以下の三つの観点から要求の妥当性を徹底的に問い質します。
    • 必要性 (Need): なぜこの事業を今、複数年度にわたって実施する必要があるのか。法令上の義務か、総合計画上の位置づけは明確か。区民のニーズはどの程度高いのか。
    • 効果性 (Effectiveness): 投じる費用に見合う効果(費用対効果)は期待できるのか。事業の成果目標(アウトカム)は具体的かつ測定可能か。
    • 効率性 (Efficiency): より少ない経費で同様の効果を上げる代替案はないか。PFI/PPPなど民間活力の活用は検討したか。
  3. 調整と予算案への反映: ヒアリングの結果、要求内容に修正が必要と判断された場合、財政課は事業所管課との間で調整を行います。総事業費の圧縮、年割額の見直し、財源構成の変更などが主な調整内容となります。双方の合意が得られた後、財政課は最終的な内容を予算案の一部として取りまとめ、首長の最終査定(首長ヒアリング)を経て、議会に提出する予算案を確定させます。

予算書・議案の作成実務

 首長の最終査定を経て継続費の設定が内定すると、財政課はそれを公式な予算書及び予算議案として形式を整える実務に入ります。

 当初予算案には、「歳入歳出予算」や「債務負担行為」などと並んで、「継続費」という独立した項目が設けられます。ここには、継続費を設定する全ての事業について、以下の事項を一覧形式で記載した「継続費調書」が添付されます。

  • 事項: 事業の正式名称
  • 経費の総額: 事業完了までに見込まれる費用の総額
  • 年割額: 各年度に支出を予定している金額
  • 事業の期間: 事業を開始する年度から完了する年度までの期間

 この調書は、議会が継続費の全体像を正確に把握し、審議するための最も基本的な資料となります。記載内容に誤りや曖昧さがあると、議会審議に支障をきたすため、財政課は事業所管課と連携し、最終的な内容を慎重に確認しなければなりません。この公式文書を作成し、議会に提出して議決を得ることで、初めて継続費はその法的効力を持ち、複数年度にわたる安定的な事業執行の道が開かれるのです。

継続費事業の執行と管理

年度ごとの支出と執行管理

 議会で継続費を含む当初予算が可決・成立すると、いよいよ事業の執行段階に入ります。継続費が設定された事業は、その初年度から、予算書に定められた「年割額」の範囲内で支出が可能となります。

 事業所管課は、この年割額を当該年度の歳出予算として扱い、事業計画に基づいて契約や支払いといった支出負担行為及び支出命令を行います。財政課及び会計管理者は、これらの支出が年割額の範囲内で行われているか、また、定められた事業目的に沿って適正に執行されているかを管理・監督します。

 重要なのは、継続費といえども、各年度の執行は通常の予算と同様に、会計年度独立の原則の枠内で管理されるという点です。つまり、ある年度の年割額を超えて前倒しで支出したり、将来の年割額を流用したりすることはできません。各年度の執行は、あくまでその年度に配分された年割額の範囲内で厳格に行われます。この年度ごとの規律と、事業全体を通した財源の担保が両立している点が、継続費の執行管理における特徴です。

逓次繰越の手続きと留意点

 継続費の制度を真に強力かつ柔軟なものにしているのが、「逓次繰越(ていじくりこし)」という仕組みです。これは、継続費に特有の繰越制度であり、その運用をマスターすることが実務上極めて重要です。

 大規模な建設事業などでは、天候不順、用地買収の遅れ、資材納入の遅延など、予測不可能な事由によって、計画通りに事業が進捗しないことが少なくありません。その結果、年度末に、その年度の年割額を使い切れない「執行残額(不用額)」が生じることがあります。

 通常の予算であれば、この不用額は会計年度末をもって失効してしまいます。しかし、継続費の場合、この執行残額を、事業が完了する最終年度まで、翌年度、翌々年度へと順次繰り越して使用することが法的に認められています。これが逓次繰越です。繰越明許費や事故繰越が原則として翌年度1年間にしか繰り越せないのに対し、逓次繰越は事業期間内であれば何年でも繰り越せる点に大きな違いがあります。

 この制度は、厳格な事前計画を求められる継続費に、執行段階での現実的な「柔軟性」を与える、いわば衝撃を吸収するショックアブソーバーのような役割を果たします。当初の計画という「縦糸」と、現場の状況に応じた柔軟な執行という「横糸」を織りなすことで、継続費事業は堅牢かつしなやかな管理が可能となるのです。

 【手続きの流れ】

  1. 繰越額の確定: 年度末(出納閉鎖期日)をもって、当該年度の年割額に係る執行残額を確定させます。
  2. 繰越計算書の作成: 事業所管課は、繰り越すべき金額を算出し、「継続費繰越計算書(調書)」を作成します。
  3. 財政課への提出と承認: 作成した繰越計算書を、定められた期日(例:翌年度5月15日)までに財政課(財務局長等)に提出します。財政課は内容を確認し、承認手続きを行います。
  4. 議会への報告: 繰越しの実績は、最終的に決算の一部として議会に報告され、その承認を得ることになります。

 留意点として、逓次繰越はあくまで執行残額を将来の年度に送る手続きであり、事業全体の総額を増額するものではないことを正確に理解しておく必要があります。

事業計画の変更への対応

 長期にわたる事業では、社会経済情勢の変化、予期せぬ技術的な問題、物価の著しい高騰などにより、当初の計画を変更せざるを得ない事態が発生することがあります。継続費事業において、特に重大な変更は「経費の総額」または「事業の完了年度」の変更です。

 これらは、当初議会が議決した事業の根幹をなす要素であるため、行政の判断だけで変更することは許されません。経費の総額を増額したり、事業期間を延長したりする必要が生じた場合は、その変更内容を反映した新たな予算議案(補正予算案)を作成し、再度、議会に提出してその議決を得る必要があります。

 この手続きは、継続費が議会との約束事であることを再確認させる重要なプロセスです。事業所管課は、なぜ計画変更が必要になったのか、その理由と変更内容の妥当性を、財政課を通じて議会に丁寧に説明する責任を負います。財政課は、安易な計画変更が財政規律の緩みにつながらないよう、変更の必要性を厳しく吟味する役割を担います。

事業完了後の精算報告

 複数年度にわたる事業が完了した際には、その最終的な結果を明確にするための会計上の締めくくりが必要です。それが「継続費精算報告書」の作成と提出です。

 この報告書には、以下の内容が記載されます。

  • 当初議決された経費の総額
  • 各年度の年割額の予算額
  • 実際に支出された各年度の支出済額
  • 逓次繰越によって繰り越された金額の実績
  • 最終的な支出総額と、当初の総額との比較
  • 不用額が生じた場合は、その金額と理由

 精算報告書は、事業所管課が作成し、財政課を通じて首長に報告され、最終的には決算の一部として議会の審査を受けることになります。これは、事業の開始から完了までの一連の財政活動について、議会と区民に対して最終的な説明責任(アカウンタビリティ)を果たすための重要な手続きです。財政課は、提出された報告書の内容が正確であるかを確認し、継続費事業全体の評価を行い、その経験を将来の同種事業の計画策定や予算査定に活かしていくことが求められます。

東京都・特別区における先進事例と応用

大規模インフラ整備における活用事例

 継続費は、その制度的特性から、特に大規模で計画的な投資が不可欠な事業においてその真価を発揮します。東京都及び特別区においても、区民の生活基盤を支える重要な施設整備等に活用されています。

 具体的な事例として、港区の令和7年度(2025年度)予算案に計上された「あっぴぃ高輪等整備」事業が挙げられます。これは、子育て支援施設等の整備を目的としたものであり、複数年度にわたる計画的な建設工事が見込まれるため、継続費【臨時(継続)】として予算計上されています。このような子育て支援施設は、待機児童問題の解消など、区民の喫緊のニーズに応えるための最重要施策の一つです。事業を単年度予算の制約から解放し、計画通りに着実に完成させるために継続費を選択することは、行政の強い意志の表れであり、極めて合理的な判断と言えます。

 また、足立区の予算編成資料では、学校施設や一般施設の更新経費、道路の新設・改修、橋りょうの架け替えといったインフラ整備経費が投資的経費の大部分を占めることが示されています。これらの事業は、いずれも完成までに数年を要し、事業費も巨額になる典型的な例です。これらの「待ったなし」の更新需要に対して、継続費を戦略的に活用することで、財政負担を平準化しつつ、安全で快適な都市基盤を計画的に維持・更新していくことが可能となります。

 これらの事例が示唆するのは、継続費が、単なる選択肢の一つではなく、区の将来を左右するような「必ずやり遂げなければならない」高優先度の基幹プロジェクトを、財政的な不確実性から守るための「防護壁」として機能しているという事実です。財政課職員は、このような戦略的視点から、どの事業に継続費を適用すべきかを判断する能力が求められます。

公共施設等総合管理計画との連携

 現在、全国の地方自治体では、高度経済成長期に集中的に整備された公共施設の老朽化が一斉に進むという大きな課題に直面しています。この課題に対応するため、各区では「公共施設等総合管理計画」を策定し、施設の統廃合や長寿命化を含めた、長期的かつ計画的な施設マネジメントに取り組んでいます。

 この公共施設等総合管理計画は、まさに継続費の活用が最も効果を発揮する領域です。計画に盛り込まれた個々の施設の建て替えや大規模改修プロジェクトは、その多くが複数年度にわたる事業となります。これらのプロジェクトに対して継続費を適用することは、場当たり的な修繕の繰り返しから脱却し、計画で定められた更新スケジュールを着実に実行するための強力な財政的裏付けとなります。

 財政課は、公共施設を所管する部署と緊密に連携し、総合管理計画の実行ツールとして継続費を積極的に活用するよう働きかけるべきです。例えば、今後10年間で更新が必要な複数の学校施設について、計画的に継続費事業を立ち上げていくことで、財政の健全性を維持しつつ、将来世代に安全な教育環境を引き継いでいくことが可能になります。継続費は、総合管理計画という「設計図」を「現実の建物」へと変えるための、不可欠なエンジンなのです。

特別区間の連携事業と課題

 行政課題が広域化・複雑化する中で、単一の区だけでは解決が困難な問題に対し、複数の特別区が連携して取り組む事業の重要性が増しています。例えば、複数の区にまたがる河川の改修や、広域的な交通網の整備、共同で利用する大規模な廃棄物処理施設の建設などが考えられます。

 このような区間連携事業は、性質上、大規模かつ長期にわたることが多く、継続費の適用が非常に有効なケースと言えます。関係する全ての区が、それぞれ継続費を設定し、足並みをそろえて財源を確保することで、事業の安定的な推進が可能となります。

 しかし、その実現にはいくつかの課題も存在します。

  • 意思決定の同期: 複数の区の議会で、それぞれ関連する継続費の議案を同時に、あるいは連携して可決する必要があります。一つの区でも議決が得られなければ、事業全体が停滞するリスクがあります。
  • 費用負担の公平性: 事業から得られる便益に応じて、各区の経費負担割合をどのように公平に定めるか、という難しい調整が求められます。
  • ガバナンスの確立: 事業の進捗管理や計画変更時の意思決定を、誰がどのようなプロセスで行うのか、明確なガバナンス体制を事前に構築しておく必要があります。

 これらの課題を乗り越えるためには、財政課が中心となり、関係区との間で粘り強い事前調整を行うことが不可欠です。区間連携事業における継続費の活用は、財政課職員の高度な調整能力と、広域的な視点が試される応用的なテーマと言えるでしょう。

業務改革とDX・生成AIの活用

ICT活用による予算編成・執行の効率化

 継続費の手続きが「煩雑で burdensome」と認識される一因は、そのプロセスに多くの手作業が介在することにあります。この課題を解決し、継続費をより活用しやすい制度にするためには、ICT(情報通信技術)の積極的な活用による業務改革(BPR: Business Process Re-engineering)が不可欠です。

 多くの自治体では、既に財務会計システムが導入されており、予算要求もシステムを通じて行われています。この基盤をさらに発展させ、継続費に関連する業務の効率化を図ることが可能です。

  • RPA (Robotic Process Automation) の活用: RPAは、人間がPC上で行う定型的な繰り返し作業を自動化する技術です。継続費業務においては、以下のような活用が考えられます。
    • データ入力の自動化: 事業所管課が作成した積算データ(Excel等)を、財務会計システムの要求様式へ自動で転記する。
    • 帳票作成の自動化: 年度末の「継続費繰越計算書」や事業完了後の「継続費精算報告書」を、システム上の執行データから自動で生成する。 札幌市や長岡市など、RPAの全庁的な導入で大幅な時間削減を実現した事例もあり、定型業務の多い予算・決算業務への応用は極めて有効です。
  • 電子契約・電子決裁システムの導入: 継続費事業に伴う複数年度契約において、電子契約システムを導入することで、契約書の印刷、郵送、保管にかかるコストや時間を大幅に削減できます。また、繰越や計画変更に関する庁内の起案・決裁プロセスを電子化(ワークフロー化)することで、意思決定の迅速化とペーパーレス化を推進できます。

 これらのICTツールを導入することで、職員を煩雑な事務作業から解放し、より創造的・戦略的な業務、すなわち「どの事業に継続費を適用すべきか」という本質的な検討に注力できる環境を整えることが、業務改革の目指す姿です。

生成AIの活用可能性

 近年急速に発展する生成AIは、予算編成や執行管理のあり方を根底から変えるポテンシャルを秘めています。定型業務を自動化するRPAに対し、生成AIは、非定型的な知的作業を支援する強力なパートナーとなり得ます。

  • 計画・査定段階での分析支援:
    • 妥当性の検証: 事業所管課から提出された継続費の要求内容について、AIに関連する総合計画、法令、過去の議会議事録などを読み込ませ、計画との整合性や過去の指摘事項との関連性を瞬時に要約・提示させることができます。これにより、査定の客観性と深度を高めます。
    • 費用対効果の予測補助: 類似事業を実施した他の自治体の決算データや、関連する社会経済指標をAIに分析させ、事業効果の予測や費用対効果分析のたたき台を作成させることが可能です。
  • 議案作成・議会対応の支援:
    • 答弁案の自動生成: 過去の予算委員会の議事録をAIに学習させることで、議員からの想定質問に対する答弁案の骨子や、根拠となるデータ・資料のリストを自動生成できます。相模原市の実証実験では、この手法で議会答弁の作成時間が40%削減されたとの報告もあり、大きな効果が期待できます。
    • 議案説明資料のドラフト作成: 継続費の必要性や効果を説明する、議会向けのプレゼンテーション資料や説明文の初稿をAIに作成させることで、資料作成の時間を大幅に短縮できます。
  • 執行・管理段階でのリスク検知:
    • 進捗遅延の予測: 事業の進捗報告データや関連ニュース(例:資材価格の高騰)をAIが継続的に監視し、計画からの乖離や将来のコスト増のリスクを早期に検知し、担当者にアラートを出すような仕組みも考えられます。

 生成AIの活用は、単なる効率化に留まりません。これまで人間が時間をかけて行っていた情報収集・分析・文書作成といった作業をAIに任せることで、財政課職員は、より高度な判断や戦略立案、関係部署との対話といった、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できるようになります。これにより、財政課の役割は、手続きの番人から、区の未来を構想する戦略パートナーへと進化していくでしょう。ただし、AIの出力には誤情報(ハルシネーション)が含まれる可能性があるため、最終的なファクトチェックは必ず人間が行うこと、また、機密情報を入力しないといった厳格なガイドラインの遵守が不可欠です。

民間活力の導入とPFI/PPP事業

 公共施設の整備・運営において、民間の資金やノウハウを活用するPFI (Private Finance Initiative) やPPP (Public-Private Partnership) といった手法が注目されています。これらの事業は、設計・建設から維持管理・運営までを一体的に、十数年から数十年という極めて長期の契約で民間事業者に委ねるものです。

 自治体は、この期間にわたって、提供されるサービスに対する対価(サービス購入料)を毎年支払うことになります。この将来にわたる財政支出の約束は、地方自治法上、「債務負担行為」として設定されるのが一般的です。

 継続費とPFI/PPPは直接的な関係ではありませんが、財政課職員としては、両者の関連性を理解しておくことが重要です。

  • 手法選択の比較検討: 新たな施設整備を計画する際、「区が直接建設し、継続費を組む」という従来型の公設公営方式と、「PFI/PPP方式を導入し、債務負担行為を設定する」という公民連携方式の、どちらがライフサイクルコストの観点から優れているかを比較検討(VFM: Value for Money評価)する能力が求められます。
  • 財政規律の視点: どちらの手法を選択するにせよ、将来の財政を長期間にわたって拘束する点では共通しています。財政課は、PFI/PPP事業による将来の支払いも、継続費と同様に、中期的な財政見通しの中に正確に位置づけ、財政の持続可能性を常に監視する必要があります。

 継続費を深く理解することは、他の長期的な財政負担を伴う手法を評価・管理するための基礎的な知識と視座を養うことにも繋がるのです。

実践的スキル向上に向けて

組織レベルで実践するPDCAサイクル

 継続費の活用を単発の成功で終わらせず、組織全体の財政運営能力を向上させるためには、一連のプロセスをPDCAサイクルとして捉え、継続的に改善していく視点が不可欠です。

  • Plan (計画): 継続費の設定要求そのものが、壮大な「Plan」です。事業の目的を明確化し、総事業費と年割額を精緻に計画します。この段階の質が、サイクル全体の成否を左右します。組織としては、過去の事業実績データを蓄積・分析し、より精度の高いコスト積算モデルを構築することや、事業目的を具体化するためのフレームワーク(例:京都市が活用するロジックモデル)を導入することが考えられます。
  • Do (実行): 計画に基づき、各年度の予算を執行し、事業を遂行する段階です。組織としては、事業の進捗状況と経費の執行状況をリアルタイムで可視化できるプロジェクト管理ツールを導入し、事業所管課と財政課が常に情報を共有できる体制を構築することが重要です。
  • Check (評価): 計画と実行結果を比較・評価する段階です。年度ごとの執行状況の確認、逓次繰越の妥当性の検証、そして事業完了後の精算報告による最終評価が含まれます。組織としては、単に会計上の数字が合っているかを確認するだけでなく、「計画通りの費用で、期待された成果(アウトカム)は得られたか」という視点での事業評価(行政評価)を実施し、その結果を公表することで、説明責任を果たします。
  • Act (改善): 評価結果を踏まえ、次の行動を決定する段階です。精算報告で明らかになった課題(例:積算の甘さ、工程管理の問題)を分析し、次回の継続費事業の計画策定や査定のプロセスにフィードバックします。例えば、「継続費事業計画・執行マニュアル」を改訂したり、若手職員向けの研修プログラムに事例研究を取り入れたりすることが具体的な改善アクションとなります。

 このPDCAサイクルを組織的に回し続けることで、継続費の活用ノウハウが個人の経験知から組織全体の共有知へと昇華し、財政運営の質が着実に向上していきます。

個人レベルで実践するPDCAサイクル

 組織全体の仕組みだけでなく、財政課職員一人ひとりが日々の業務の中でPDCAを意識することが、専門能力の向上に直結します。

  • Plan (計画): 事業所管課から継続費の査定案件が配分された際、いきなりヒアリングに臨むのではなく、まず自身の「査定計画」を立てます。
    • 事前調査: 関連する総合計画や過去の類似事業の資料を読み込む。
    • 論点整理: この査定で絶対に確認すべきポイントは何か、主要な論点をリストアップする。
    • 資料要求: ヒアリングの場で効率的に議論できるよう、事前に所管課に追加で必要な資料を要求しておく。
  • Do (実行): 計画に基づき、ヒアリングを実施し、所管課と議論を尽くします。単に要求を査定するだけでなく、より良い事業にするための代替案を提示するなど、建設的な対話を心がけます。
  • Check (評価): 査定が一段落した後、自身の業務を振り返ります。
    • 自己評価: 事前に立てた論点は全て解消できたか。所管課との交渉は円滑に進んだか。積算の妥当性を十分に検証できたか。
    • フィードバック: 上司や同僚に査定のプロセスや結果を報告し、客観的なフィードバックを求める。
  • Act (改善): 振り返りで得られた気づきを、次の仕事に活かします。
    • ナレッジの形式知化: 査定で得た知見や、効果的だった質問などを自身のマニュアルやチェックリストに追記する。
    • スキル向上: 交渉術に課題を感じたなら、関連書籍を読んだり、先輩のヒアリングに同席させてもらったりして、スキルアップを図る。
    • 情報共有: チームのミーティングで自身の経験を共有し、課全体のノウハウ向上に貢献する。

 このように、日々の担当業務一つひとつを小さなPDCAサイクルと捉えて実践することで、職員個人の能力は飛躍的に向上し、それが組織全体の力を底上げすることに繋がるのです。

まとめ

財政課職員として継続費を使いこなすために

 本研修資料を通じて、継続費が単なる会計年度独立の原則の例外規定ではなく、区の未来を形作るための計画的かつ戦略的な財政ツールであることをご理解いただけたことと存じます。その本質は、複数年度にわたる事業の財源を法的に担保することで、行政の「長期的な約束」を確実なものにし、区民の信頼に応えることにあります。

 継続費を真に使いこなすためには、地方自治法第212条の条文知識や、債務負担行為との制度的な違いを理解するだけでは不十分です。なぜその事業に長期的な財政的コミットメントが必要なのかという戦略的意義を深く洞察し、事業所管課と建設的な対話を行い、そして議会や区民に対してその必要性を論理的かつ情熱的に説明する能力が求められます。

 手続きの煩雑さを乗り越え、ICTやAIといった新しい技術を積極的に活用して業務を効率化し、PDCAサイクルを通じて組織と個人の能力を常に高めていく。そうした不断の努力を通じて、財政課職員は、単なる予算の査定者から、区の持続的な発展を財政面から支える「戦略的パートナー」へと進化することができるのです。

未来の区民サービスを支える財政運営へのエール

 財政課の仕事は、時に地道で、区民の皆様から直接感謝の言葉をいただく機会は少ないかもしれません。しかし、皆様が日々向き合っている予算の一つひとつが、未来の子供たちが学ぶ校舎となり、高齢者が安心して集える施設となり、私たちが毎日利用する安全な道路や橋へと姿を変えていきます。

 特に継続費は、数年先、あるいは十数年先の未来の区の姿を直接的に形作る、時間と世代を超えた仕事です。皆様の専門的な知識と、公正で大局的な判断こそが、その礎を築いています。

 変化の激しい時代にあって、将来を見通すことはますます困難になっています。しかし、そのような時代だからこそ、継続費という制度に込められた「計画性」と「安定性」の価値は、より一層輝きを増すはずです。

 皆様が、本研修で得た知識とスキルに誇りを持ち、これからも未来の区民サービスを支えるという崇高な使命を全うされることを心から期待し、本研修の結びとさせていただきます。

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