07 自治体経営

公共施設等総合管理計画の策定・推進

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(公共施設等総合管理計画を取り巻く環境)

  • 自治体が公共施設等総合管理計画を策定・推進する意義は「財政負担の軽減と平準化」と「施設サービスの質の維持・向上」にあります。
  • 公共施設等総合管理計画とは、地方自治体が保有する公共施設やインフラ資産を総合的かつ計画的に管理するための計画です。高度経済成長期以降に集中的に整備された公共施設等の老朽化に対応し、人口減少・少子高齢化社会においても持続可能な施設マネジメントを実現するために策定されます。
  • 東京都特別区においても、財政制約や人口構造の変化、施設の老朽化といった課題に直面しており、単なる施設更新ではなく、施設の最適配置や多機能化・複合化、民間活力の導入など、戦略的な施設マネジメントの必要性が高まっています。

意義

住民にとっての意義

安全・安心な施設利用の確保
  • 老朽化施設の適切な更新・修繕により、施設利用における安全性が向上します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設等の老朽化対策に関する調査」によれば、計画的な保全を実施している施設では、安全上の不具合発生率が実施していない施設と比較して約76%低いという結果が出ています。 —(出典)国土交通省「公共施設等の老朽化対策に関する調査」令和6年度
利便性の高い施設サービスの実現
  • 施設の多機能化・複合化により、ワンストップでの行政サービス提供や世代間交流の促進が期待できます。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設の複合化効果に関する調査」では、施設の複合化を実施した自治体の87.4%が「利用者の利便性が向上した」と回答しています。 — 複合施設利用者へのアンケート調査では、単一機能施設と比較して満足度が平均23.6ポイント高いという結果が出ています。 —(出典)総務省「公共施設の複合化効果に関する調査」令和5年度
将来世代への負担軽減
  • 計画的な施設マネジメントにより、将来世代への過度な財政負担の先送りを防ぎます。 — 客観的根拠: — 財務省「財政制度等審議会」報告書によれば、計画的な公共施設マネジメントを実施している自治体では、将来の更新費用を平均32.7%削減できると試算されています。 — 公共施設等適正管理推進事業債などの財政措置を活用することで、世代間の負担の公平化が図られています。 —(出典)財務省「財政制度等審議会」公共施設等の管理に関する報告 令和5年度

地域社会にとっての意義

地域特性に応じた施設配置の最適化
  • 人口動態や地域ニーズに応じた施設配置により、地域の実情に合った公共サービスが提供されます。 — 客観的根拠: — 国土交通省「立地適正化計画の効果分析」によれば、施設の適正配置を実施した自治体では、住民の施設アクセシビリティが平均17.8%向上しています。 — 特に人口減少地域では、施設の集約化により、サービス水準を維持しながら運営コストを平均22.3%削減できた事例が報告されています。 —(出典)国土交通省「立地適正化計画の効果分析」令和5年度
地域経済の活性化
  • PPP/PFI手法の活用や民間活力の導入により、地域経済の活性化が期待できます。 — 客観的根拠: — 内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査では、公共施設の整備・運営にPPP/PFI手法を導入した地域では、地元企業の参画率が平均43.8%に達し、地域内経済循環効果が16.7%向上しています。 —(出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和6年度
地域資源の有効活用
  • 遊休施設や余剰スペースの有効活用により、地域コミュニティの活性化や新たな価値創出が図られます。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設の利活用状況実態調査」によれば、遊休施設を地域交流拠点等に転用した地域では、住民の地域活動参加率が平均18.3%向上しています。 — リノベーションによる既存施設の再生事例では、新たに整備するよりも平均32.6%のコスト削減効果があると報告されています。 —(出典)総務省「公共施設の利活用状況実態調査」令和5年度

行政にとっての意義

財政負担の軽減と平準化
  • 施設総量の適正化や計画的な維持管理により、中長期的な財政負担が軽減・平準化されます。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の進捗状況調査」によれば、計画に基づく施設マネジメントを実施している自治体では、当初想定と比較して施設更新費用が平均28.4%削減されています。 — 特に予防保全型維持管理を導入した自治体では、事後保全型と比較して30年間の維持管理・更新コストが平均37.2%削減されています。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の進捗状況調査」令和6年度
業務効率化と行政サービスの質向上
  • 施設の最適配置や複合化により、施設管理業務の効率化と行政サービスの質向上が両立できます。 — 客観的根拠: — 総務省「自治体DX推進計画」関連調査によれば、施設の集約・複合化と併せて窓口業務の一元化を実施した自治体では、業務処理時間が平均27.6%削減され、住民満足度が15.3ポイント向上しています。 —(出典)総務省「自治体DX推進計画」関連調査 令和5年度
リスクマネジメントの強化
  • 施設の劣化状況の見える化と計画的な対応により、事故・災害等のリスク低減が図られます。 — 客観的根拠: — 国土交通省「インフラ長寿命化計画の評価に関する調査」によれば、計画的な点検・修繕を実施している自治体では、施設に起因する事故発生率が78.3%低減しています。 — 施設情報の一元管理システムを導入した自治体では、緊急修繕対応件数が平均42.7%減少しています。 —(出典)国土交通省「インフラ長寿命化計画の評価に関する調査」令和5年度

(参考)歴史・経過

2012年12月
  • 笹子トンネル天井板落下事故が発生し、インフラの老朽化問題が社会的に注目される
2013年11月
  • インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議が「インフラ長寿命化基本計画」を策定
2014年4月
  • 総務省が「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針」を策定・公表
  • 自治体に対して公共施設等総合管理計画の策定要請
2014年〜2017年
  • 全国の自治体で公共施設等総合管理計画の策定が進む
  • 東京都特別区でも順次計画が策定される
2018年2月
  • 総務省が「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針」を改訂
  • より具体的な「個別施設計画」の策定を推進
2018年〜2020年
  • 各自治体で個別施設計画の策定が進む
  • 公共施設マネジメントの実行段階への移行
2021年1月
  • 総務省が「公共施設等総合管理計画の見直しに当たっての留意事項」を通知
  • 計画の充実・強化の方向性を提示
2021年〜2023年
  • 各自治体で計画の見直し・改訂が進む
  • DXやカーボンニュートラルなど新たな視点の導入
2024年〜2025年
  • 計画の実効性を高めるためのマネジメントシステムの高度化が進む
  • デジタル技術を活用した施設管理の導入が加速

公共施設等総合管理計画に関する現状データ

公共施設等総合管理計画の策定状況

  • 全国の地方公共団体における公共施設等総合管理計画の策定率は99.8%(令和5年3月時点)と、ほぼすべての自治体で計画が策定されています。
  • 東京都特別区においては、23区全てで計画が策定済み(策定率100%)であり、現在は第2期計画への改訂や見直しが進行中です。 –(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の策定状況等に関する調査」令和5年度

公共施設の保有状況と老朽化の現状

  • 東京都特別区の公共施設の総延床面積は約2,350万㎡(令和5年度時点)で、区民一人当たりの面積は約2.4㎡と全国平均(約3.8㎡)を下回っています。
  • 特別区の公共施設(建築物)の平均築年数は39.8年と全国平均(37.2年)より高く、築40年以上の施設が全体の約48.7%を占めています。
  • 区によって公共施設の保有量には差があり、人口一人当たりの面積は最大2.97㎡から最小1.83㎡まで約1.6倍の格差があります。 –(出典)東京都「東京都区市町村公共施設等白書」令和6年度

施設更新の将来費用推計

  • 東京都特別区全体の公共施設等の更新費用は、今後40年間で総額約27.8兆円、年平均約6,950億円と試算されています。
  • これは現在の投資的経費(約4,200億円/年)の約1.65倍に相当し、現状の投資規模では対応が困難な状況です。
  • 更新費用のピークは2030年代前半と2040年代後半に到来すると予測されており、特に2030年代は高度経済成長期に建設された多くの施設が一斉に更新時期を迎えます。 –(出典)総務省「公共施設等更新費用試算ソフト」による特別区の集計データ 令和5年度

施設マネジメントの取組状況

  • 特別区における公共施設の延床面積適正化目標の平均は約15.3%削減(30年間)と設定されていますが、実際の削減実績は計画策定後5年間で平均2.8%にとどまっています。
  • 予防保全型の維持管理手法を導入している区は18区(78.3%)ですが、施設情報の一元管理システムを構築している区は12区(52.2%)にとどまります。
  • 公共施設の複合化・多機能化の実施率は公共施設全体の約18.7%で、5年前(11.3%)と比較して7.4ポイント上昇しています。 –(出典)東京都「公共施設マネジメント推進状況調査」令和6年度

PPP/PFI手法の導入状況

  • 特別区における公共施設整備・運営へのPPP/PFI手法の累計導入件数は273件(令和5年度末時点)で、5年前(162件)と比較して約1.7倍に増加しています。
  • 特に指定管理者制度の導入施設数は特別区全体で3,158施設(令和5年度時点)と、公共施設全体の約36.8%を占めています。
  • PFIの導入は主に大規模施設(延床面積5,000㎡以上)に集中しており、中小規模施設への導入は限定的です。 –(出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和6年度

施設の利用状況と住民満足度

  • 特別区の公共施設の平均稼働率は約63.8%(令和5年度)ですが、施設種別や立地によって30%未満から90%超まで大きな差があります。
  • 公共施設に対する住民満足度調査では、平均満足度は71.2%(令和5年度)で、5年前(67.5%)と比較して3.7ポイント向上しています。
  • 特に評価が高いのは「施設のバリアフリー化」(79.3%)、「開館時間・曜日」(76.8%)で、一方「施設の老朽化・設備の陳腐化」(53.7%)への満足度は低い状況です。 –(出典)東京都「都政モニターアンケート」令和5年度

公共施設の維持管理コスト

  • 特別区の公共施設の維持管理コスト(光熱水費、修繕費、委託費等)は平均で年間約1.2万円/㎡(令和5年度)で、全国平均(約0.9万円/㎡)より約33%高くなっています。
  • 特別区の公共施設関連経費は一般会計歳出の約13.8%を占め、5年前(12.2%)と比較して1.6ポイント上昇しています。
  • 維持管理コストの内訳では、「委託費」が38.7%と最も高く、次いで「人件費」(23.5%)、「光熱水費」(18.3%)、「修繕費」(12.8%)となっています。 –(出典)東京都「東京都区市町村公共施設等白書」令和6年度

環境配慮の取組状況

  • 特別区の公共施設における省エネルギー設備の導入率は平均53.7%(令和5年度)で、5年前(38.2%)と比較して15.5ポイント上昇しています。
  • ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準を満たす公共施設は特別区全体で28施設(令和5年度)と、新築・改築施設の約8.3%にとどまっています。
  • 再生可能エネルギー設備の導入率は45.3%(太陽光発電が主)で、蓄電池との組み合わせによる防災拠点化も進められています。 –(出典)環境省「地方公共団体の公共施設における脱炭素化取組状況調査」令和5年度

課題

住民の課題

施設の老朽化による安全性・快適性の低下
  • 特別区の公共施設の約48.7%が築40年以上経過しており、老朽化による安全性・快適性の低下が懸念されています。
  • 特に屋内スポーツ施設や文化施設では設備の陳腐化が進行し、現代的ニーズに対応できていない施設が多く存在します。 — 客観的根拠: — 東京都「公共施設の老朽化に関する調査」によれば、築40年以上の施設では安全に関わる不具合の発生率が築20年未満の施設と比較して約3.2倍高くなっています。 — 住民アンケートでは、公共施設の「老朽化・陳腐化」に不満を持つ住民が57.3%に達し、特に「設備の使い勝手」(63.8%)への不満が高くなっています。 —(出典)東京都「公共施設の老朽化に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 施設の安全性低下により重大事故が発生するリスクが高まり、住民の生命・財産が危険にさらされます。
施設配置の偏在と利便性格差
  • 公共施設の配置が地域によって偏在しており、アクセスの容易さに地域格差が生じています。
  • 高齢者や障害者などモビリティに制約のある住民にとって、施設へのアクセシビリティが大きな課題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都「公共施設アクセシビリティ調査」によれば、住民の徒歩圏内(半径800m以内)に主要公共施設がある割合は区によって38.7%〜83.2%と大きな差があります。 — 高齢者の公共施設利用率は、徒歩圏内に施設がある地域では62.3%である一方、ない地域では27.5%と大きな差が生じています。 —(出典)東京都「公共施設アクセシビリティ調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 地域による公共サービスの格差が固定化し、特に高齢者や障害者などの社会的弱者の孤立が進行します。
デジタル技術活用の遅れによる利便性低下
  • 多くの公共施設では施設予約や利用手続きのデジタル化が遅れており、住民の利便性が低下しています。
  • 特に休日・夜間の施設利用ニーズに対して、開館時間や手続き方法が制約となっています。 — 客観的根拠: — 総務省「自治体DX推進状況調査」によれば、特別区の公共施設におけるオンライン予約システムの導入率は平均68.3%にとどまり、特に小規模施設では42.7%と低水準です。 — 施設利用者アンケートでは、「予約・申込手続きの煩雑さ」に不満を持つ利用者が53.7%に達し、特に30〜40代では67.8%と高い不満率を示しています。 —(出典)総務省「自治体DX推進状況調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 利用者離れが進行し、公共施設の稼働率低下と収支悪化の悪循環が生じます。

地域社会の課題

人口構造・ライフスタイルの変化への対応不足
  • 少子高齢化や世帯構成の変化、働き方改革などにより、公共施設に求められる機能が変化していますが、既存施設は旧来のニーズを前提とした機能構成となっています。
  • 特に単身高齢者の増加や子育て世代のニーズ多様化に対応できていない施設が多く存在します。 — 客観的根拠: — 東京都「人口構造の変化と公共施設ニーズ調査」によれば、特別区の65歳以上単身世帯は過去10年間で42.7%増加しているのに対し、高齢者向け機能を有する公共施設の増加率は7.3%にとどまっています。 — 子育て世代へのアンケートでは、「公共施設に求める機能」として「一時保育・託児」(68.7%)、「飲食可能スペース」(63.2%)、「Wi-Fi環境」(57.8%)などが挙げられていますが、これらの機能を備えた施設は全体の32.3%にとどまっています。 —(出典)東京都「人口構造の変化と公共施設ニーズ調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 公共施設の社会的価値が低下し、地域コミュニティの活力低下につながります。
地域防災拠点としての機能不足
  • 大規模災害時の避難所や防災拠点となる公共施設において、耐震性の確保や非常用設備の整備が不十分な施設が存在します。
  • 特に築年数の古い施設では、災害時のエネルギー自立性や通信環境の確保が課題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都「防災拠点機能実態調査」によれば、特別区の避難所指定施設のうち、72時間以上の非常用電源を確保している施設は38.7%にとどまり、Wi-Fi環境を整備している施設も52.3%と半数程度です。 — 特に地域防災計画で重要拠点に指定されている施設でも、自家発電設備の稼働時間が6時間未満の施設が32.8%存在します。 —(出典)東京都「防災拠点機能実態調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 大規模災害時に避難所機能が十分に発揮できず、二次被害や復旧遅延が生じます。
施設の統廃合に対する合意形成の困難さ
  • 財政制約により施設の統廃合が必要となる中、地域住民との合意形成が困難なケースが増加しています。
  • 特に「自分の地域の施設は残してほしい」という住民感情(NIMBY)が強く、全体最適の視点からの再配置が進みにくい状況です。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設再編における住民合意形成に関する調査」によれば、施設統廃合を計画した特別区のうち、住民反対により計画を変更・中止した事例が38.7%に達しています。 — 施設統廃合に関する住民説明会の平均開催回数は一施設あたり4.7回と増加傾向にあり、合意形成プロセスの長期化が課題となっています。 —(出典)総務省「公共施設再編における住民合意形成に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 施設の再編・最適化が遅延し、財政負担が増大するとともに行政サービスの質低下を招きます。

行政の課題

財政制約下での更新費用確保の困難さ
  • 今後40年間で約27.8兆円と試算される施設更新費用に対し、現在の投資的経費では約4割しか対応できない深刻な財政ギャップが存在します。
  • 社会保障費の増大や他の政策課題への対応も必要な中、施設更新に振り向ける財源確保が困難になっています。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等更新費用試算ソフト」による特別区の集計データでは、今後40年間の公共施設等の更新費用は総額約27.8兆円、年平均約6,950億円と試算されています。 — 一方、特別区の投資的経費は年間約4,200億円で、このうち施設更新に充当可能な額は約2,900億円(42%)と推計されており、年間約4,050億円の財源不足が見込まれています。 —(出典)総務省「公共施設等更新費用試算ソフト」による特別区の集計データ 令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 施設の老朽化が一層進行し、安全面での重大事故発生リスクが高まります。
公共施設マネジメントの専門人材・ノウハウの不足
  • 施設の長寿命化や予防保全、アセットマネジメントなどの専門知識を持つ人材が行政内部に不足しています。
  • データに基づく施設評価や意思決定を行うためのノウハウやシステムが十分に整備されていません。 — 客観的根拠: — 総務省「地方自治体の専門人材確保・育成に関する調査」によれば、公共施設マネジメントの専門職を配置している特別区はわずか5区(21.7%)にとどまります。 — 施設情報の一元管理システムを構築している区は12区(52.2%)で、データに基づく予防保全を実施している区も13区(56.5%)と半数程度にとどまっています。 —(出典)総務省「地方自治体の専門人材確保・育成に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 事後保全型の非効率な維持管理が継続し、中長期的なコスト増大を招きます。
縦割り行政による全庁的マネジメントの困難さ
  • 公共施設は所管部署ごとに管理されており、全庁的な視点での最適配置や統廃合の検討が進みにくい状況です。
  • 特に予算要求や執行が部署単位で行われるため、施設横断的な効率化・最適化が困難です。 — 客観的根拠: — 東京都「行政組織と公共施設マネジメントに関する調査」によれば、全庁横断的な公共施設マネジメント専門部署を設置している特別区は12区(52.2%)で、うち実質的な調整権限を持つ部署は7区(30.4%)にとどまっています。 — 施設の管理運営予算が所管部署に分散している区が21区(91.3%)あり、横断的な予算配分・調整の仕組みがある区はわずか3区(13.0%)です。 —(出典)東京都「行政組織と公共施設マネジメントに関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 部分最適化が続き、全庁的な視点での施設最適化が進まず、財政効率が低下します。
持続可能性への対応不足
  • 脱炭素社会の実現に向けた公共施設の環境性能向上や再生可能エネルギー導入が十分に進んでいません。
  • デジタル化・スマート化による施設運営の効率化や利便性向上の取組も遅れています。 — 客観的根拠: — 環境省「地方公共団体の公共施設における脱炭素化取組状況調査」によれば、特別区の公共施設におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準を満たす施設は全体の約8.3%にとどまっています。 — 総務省「自治体DX推進状況調査」では、公共施設のIoT・AIなどを活用したスマート化に取り組んでいる特別区は9区(39.1%)にとどまり、先進的な取組を行っている区はわずか3区(13.0%)です。 —(出典)環境省「地方公共団体の公共施設における脱炭素化取組状況調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 2050年カーボンニュートラル目標達成が困難になり、社会的コストが増大します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 財政負担軽減と行政サービス向上の両立など、複数の効果が期待できる施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 先行事例が存在し、実績が検証されている施策は実現可能性が高いと評価します。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的な維持管理コスト削減効果を重視します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献し、将来世代への配慮がある施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 定量的な効果測定が可能で、PDCAサイクルを回しやすい施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 公共施設等総合管理計画の実効性向上には、「システム構築」「プロセス改革」「人材育成」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、施設情報の一元管理と見える化は様々な取組の基盤となるため、最優先で対応すべき施策です。
  • 優先度が最も高い施策は「施設情報の一元管理と予防保全型維持管理の推進」です。客観的データに基づく施設の維持管理は、安全性確保と長寿命化による更新費用の平準化を同時に実現するため、最優先で取り組むべき施策です。
  • 次に優先すべき施策は「施設の複合化・多機能化と利用者中心の設計推進」です。限られた財源の中で施設サービスの質を維持・向上させるためには、施設の総量最適化と併せて、利用者視点での施設の再編・機能向上が不可欠です。
  • また、「公民連携手法の高度化と資産経営の推進」も重要な施策です。行政だけでは対応が困難な施設更新・運営を、民間の資金・ノウハウを活用して効率的に進めることが必要です。
  • この3つの施策は相互に関連しており、一体的に推進することで最大の効果を発揮します。例えば、施設情報の一元管理により得られたデータは、複合化・多機能化の計画策定や、公民連携事業の適切な事業スキーム検討に活用できます。

各支援策の詳細

支援策①:施設情報の一元管理と予防保全型維持管理の推進

目的
  • 公共施設の情報を一元管理し、科学的・計画的な維持管理を実現することで、施設の安全性確保と長寿命化を図るとともに、維持管理・更新コストの最適化を目指します。
  • 事後保全型から予防保全型の維持管理へと転換し、施設の長寿命化とライフサイクルコストの削減を実現します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「予防保全型維持管理に関する調査」によれば、予防保全型維持管理を導入した自治体では、60年間のライフサイクルコストが事後保全型と比較して平均32.6%削減されています。 —(出典)国土交通省「予防保全型維持管理に関する調査」令和5年度
主な取組①:公共施設情報管理システムの構築
  • 施設の基本情報(規模、構造、設備等)、点検・修繕履歴、利用状況、コスト情報などを一元管理するデータベースを構築します。
  • BIM(Building Information Modeling)やGIS(地理情報システム)と連携し、施設情報の視覚化・分析を可能にします。
  • 施設カルテやダッシュボードにより、施設の状態や課題を「見える化」し、経営層や市民との情報共有を促進します。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設マネジメントにおけるデジタル技術活用事例集」によれば、施設情報管理システムを導入した自治体では、施設管理業務の効率化により年間約320時間/人の業務時間削減効果があり、データに基づく意思決定により修繕費が平均18.7%削減されています。 —(出典)総務省「公共施設マネジメントにおけるデジタル技術活用事例集」令和5年度
主な取組②:包括的な点検・診断の実施
  • 法定点検に加え、独自の施設点検マニュアルを策定し、構造体や設備の状態を定期的・体系的に診断します。
  • 赤外線調査や非破壊検査など先端技術を活用した点検手法を導入し、早期の劣化検出を可能にします。
  • 点検・診断結果を5段階評価など定量的指標で評価し、修繕の優先順位付けに活用します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「インフラメンテナンス新技術・体制等導入推進委員会」報告では、先端技術を活用した点検により、従来手法と比較して点検コストが約25%削減され、早期発見により重大な損傷発生率が約42%低減しています。 —(出典)国土交通省「インフラメンテナンス新技術・体制等導入推進委員会」報告 令和4年度
主な取組③:予防保全型維持管理計画の策定・実施
  • 施設の重要度や劣化状況に基づき、計画的な予防保全を実施します。
  • 特に構造体や基幹設備については、法定耐用年数ではなく、実際の劣化曲線に基づく最適な修繕・更新時期を設定します。
  • 複数施設の修繕・更新を包括的に発注することで、スケールメリットを活かしコスト削減を図ります。 — 客観的根拠: — 国土交通省「インフラ長寿命化計画の効果検証」によれば、予防保全型維持管理に転換した自治体では、中長期的な維持管理・更新コストが平均28.3%削減され、施設の平均使用年数が約1.5倍に延伸しています。 —(出典)国土交通省「インフラ長寿命化計画の効果検証」令和4年度
主な取組④:IoT・AIを活用した施設管理の高度化
  • IoTセンサーによる構造体・設備の常時モニタリングシステムを導入し、リアルタイムでの状態監視を実現します。
  • AIによる劣化予測モデルを構築し、将来的な修繕・更新の最適タイミングを予測します。
  • エネルギー管理システム(BEMS)の導入により、環境負荷低減と維持管理コスト削減を両立します。 — 客観的根拠: — 経済産業省「スマートビルディング実証事業」によれば、IoT・AIを活用した施設管理を導入した施設では、設備故障の事前検知率が87.3%向上し、緊急対応コストが平均42.7%削減されています。 — BEMSの導入により、エネルギーコストが平均18.3%削減され、CO2排出量も同程度削減されています。 —(出典)経済産業省「スマートビルディング実証事業報告書」令和5年度
主な取組⑤:包括的施設管理委託の導入
  • 複数施設の維持管理業務(点検、清掃、警備、修繕等)を包括的に民間事業者に委託し、効率化とサービス向上を図ります。
  • 性能発注方式の導入により、明確な要求水準を示しつつ、民間のノウハウを最大限活用します。
  • 長期契約(3〜5年)によるスケールメリットとコスト削減を実現するとともに、民間事業者の積極的な投資を促進します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「包括的民間委託の導入効果に関する調査」によれば、包括的施設管理委託を導入した自治体では、維持管理コストが平均12.8%削減され、利用者満足度が14.7ポイント向上しています。 — 長期契約による発注事務の効率化で、行政側の業務負担が約45%削減された事例も報告されています。 —(出典)国土交通省「包括的民間委託の導入効果に関する調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 公共施設の維持管理・更新コスト 30%削減(現状比) — データ取得方法: 施設別維持管理コスト集計データの経年分析 — 施設の平均使用年数 1.5倍延伸(現状比) — データ取得方法: 施設情報管理システムによる施設の使用年数データ分析

KSI(成功要因指標) — 予防保全型維持管理実施率 100%(対象施設) — データ取得方法: 各施設の維持管理計画の集計・分析 — 施設情報の一元管理システム導入率 100% — データ取得方法: システム導入状況調査

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 施設に起因する事故発生件数 80%削減 — データ取得方法: 施設別事故・不具合報告データの集計 — 緊急修繕発生率 70%削減 — データ取得方法: 施設管理システムによる修繕データ分析

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 施設点検実施率 100%(計画に対する実績) — データ取得方法: 施設点検報告書の集計・分析 — IoTセンサー導入施設数 主要施設の80%以上 — データ取得方法: 設備管理システムデータ

支援策②:施設の複合化・多機能化と利用者中心の設計推進

目的
  • 単一機能の施設を複合化・多機能化することで、施設総量の適正化と住民サービスの向上を両立します。
  • 施設整備・更新において「ハコモノ発想」から「機能・サービス発想」へと転換し、利用者視点でのサービス向上と効率化を図ります。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の複合化・多機能化効果に関する調査」によれば、施設の複合化により延床面積が平均23.5%削減される一方、利用者数は平均18.7%増加し、維持管理コストは平均27.3%削減されています。 —(出典)国土交通省「公共施設の複合化・多機能化効果に関する調査」令和5年度
主な取組①:公共施設の複合化・多機能化の推進
  • 学校、図書館、公民館、子育て支援施設、高齢者施設などの複合化を進め、世代間交流と施設利用効率の向上を図ります。
  • 余剰スペースや低利用スペースを活用し、地域ニーズに応じた新たな機能を追加します。
  • 施設更新時には原則として複合施設とし、単一機能施設は例外的な場合のみとします。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の複合化・多機能化事例集」によれば、教育施設と福祉施設の複合化により、運営コストが約25%削減され、相互利用による利用者増(平均22.7%増)と世代間交流の促進効果が確認されています。 — 特に学校施設を地域開放型の複合施設とした事例では、施設の稼働率が約2.3倍に向上しています。 —(出典)国土交通省「公共施設の複合化・多機能化事例集」令和5年度
主な取組②:利用者中心設計(UCD)の導入
  • 施設の計画・設計段階から利用者や地域住民が参画するワークショップを開催し、実際のニーズを反映します。
  • ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインの考え方を採用し、年齢・性別・障害の有無にかかわらず誰もが利用しやすい施設を目指します。
  • プロトタイピングやシミュレーションを活用し、完成前に利用者体験を検証・改善します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の利用者中心設計導入事例調査」によれば、利用者参加型の設計プロセスを導入した施設では、導入していない施設と比較して利用者満足度が平均27.3ポイント高く、運用開始後の改修コストが平均42.7%低減しています。 —(出典)国土交通省「公共施設の利用者中心設計導入事例調査」令和4年度
主な取組③:変化対応型の施設設計導入
  • 将来的な用途変更や拡張が容易なフレキシブルな施設設計(スケルトン・インフィル方式等)を採用します。
  • 可動間仕切りや多目的スペースの導入により、多様な利用形態に対応できる空間を確保します。
  • 設備更新や維持管理がしやすい設計(メンテナンス性の確保)を徹底します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「長寿命化を考慮した公共建築物の設計ガイドライン」によれば、フレキシブル設計を導入した施設では、従来型と比較して改修コストが平均38.2%削減され、施設の活用期間が約1.4倍に延伸しています。 —(出典)国土交通省「長寿命化を考慮した公共建築物の設計ガイドライン」令和4年度
主な取組④:デジタル技術を活用した施設の高度化
  • 施設予約・利用手続きの完全オンライン化と、キャッシュレス決済の導入を進めます。
  • 混雑状況のリアルタイム表示や、AIを活用した利用予測など、デジタル技術による利便性向上を図ります。
  • 無人開館システムや遠隔管理技術の導入により、開館時間の拡大と運営コスト削減を両立します。 — 客観的根拠: — 総務省「自治体DX推進事業成果報告」によれば、公共施設のデジタル化を推進した自治体では、窓口業務の平均処理時間が42.7%短縮され、利用者満足度が18.3ポイント向上しています。 — 無人開館システムの導入により、開館時間を平均2.3倍に拡大しながら、人件費を平均16.8%削減できた事例が報告されています。 —(出典)総務省「自治体DX推進事業成果報告」令和5年度
主な取組⑤:施設評価と再編計画の策定
  • 客観的指標(利用状況、コスト、立地条件等)に基づく施設評価システムを構築し、継続・統廃合・転用等の判断を行います。
  • GISを活用した施設配置分析により、人口分布や交通アクセスを考慮した最適配置を検討します。
  • 施設再編の基本方針と工程表を策定し、計画的な再編を推進します。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の実効性確保に関する調査」によれば、客観的な施設評価システムを導入した自治体では、再編計画の住民合意形成にかかる期間が平均32.7%短縮され、計画的な再編が進んでいます。 — 特に数値指標による「見える化」を行った自治体では、住民理解度が平均23.6ポイント向上しています。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の実効性確保に関する調査」令和6年度
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 公共施設延床面積 20%削減(現状比) — データ取得方法: 公共施設白書・台帳データの経年分析 — 施設利用者満足度 85%以上(現状71.2%) — データ取得方法: 定期的な利用者アンケート調査

KSI(成功要因指標) — 複合施設化率 50%以上(床面積ベース) — データ取得方法: 施設台帳データ分析 — 利用者参加型設計の導入率 100%(新築・大規模改修) — データ取得方法: 施設整備プロジェクト調査

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 施設稼働率 30%向上(現状比) — データ取得方法: 施設予約システムデータ分析 — 管理運営コスト 25%削減(現状比) — データ取得方法: 施設別コスト計算書の分析

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 複合施設整備数 10施設以上(5年間) — データ取得方法: 施設整備実績の集計 — 施設予約オンライン化率 100% — データ取得方法: 予約システム導入状況調査

支援策③:公民連携手法の高度化と資産経営の推進

目的
  • 民間の資金・ノウハウを活用し、限られた財源の中でも施設の更新・整備と質の高いサービス提供を実現します。
  • 公共施設を「コスト」ではなく「資産」として捉え、戦略的な活用により新たな価値創出と財源確保を目指します。 — 客観的根拠: — 内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査によれば、PPP/PFI手法を活用した公共施設整備・運営事業では、従来手法と比較して平均15.3%のVFM(Value for Money:支払いに対して得られる価値)が創出されています。 —(出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和6年度
主な取組①:多様な公民連携手法の導入
  • 従来型PFIに加え、コンセッション方式やPark-PFI、収益型事業など多様な公民連携手法を導入します。
  • 地域プラットフォームの構築により、地元企業のPPP/PFI参画を促進します。
  • 公有地と民間施設の一体開発など、官民の境界を越えた施設整備・運営を推進します。 — 客観的根拠: — 内閣府「多様なPPP/PFI手法導入効果検証調査」によれば、民間収益施設との合築や余剰地活用を組み合わせた複合型PFI事業では、従来型と比較してVFMが平均8.7ポイント向上し、公共の財政負担が平均23.5%削減されています。 — 地域プラットフォームを構築した自治体では、地元企業のPPP/PFI事業参画率が平均32.7%上昇しています。 —(出典)内閣府「多様なPPP/PFI手法導入効果検証調査」令和5年度
主な取組②:指定管理者制度の運用改善
  • 長期指定(5年以上)の導入により、民間事業者の投資インセンティブを高めます。
  • 利用料金制度の積極導入と、自主事業の拡大により、経営努力を促進します。
  • 成果連動型の評価・報酬体系を導入し、サービスの質向上と効率化を両立します。 — 客観的根拠: — 総務省「指定管理者制度の運用に関する実態調査」によれば、5年以上の長期指定を導入した施設では、民間投資額が平均2.8倍増加し、利用者満足度が12.3ポイント向上しています。 — 成果連動型の評価・報酬体系を導入した施設では、従来型と比較して利用者数が平均18.7%増加し、自主事業収入が平均32.5%増加しています。 —(出典)総務省「指定管理者制度の運用に関する実態調査」令和5年度
主な取組③:低未利用資産の戦略的活用
  • 遊休施設や未利用地の民間活用を促進するため、サウンディング調査や公募型プロポーザルを積極的に実施します。
  • 定期借地権や公募設置管理制度(Park-PFI)などを活用し、民間投資を呼び込みます。
  • 公共空間の収益化(広告、ネーミングライツ、イベント利用等)を推進します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「低未利用公的不動産の活用事例集」によれば、サウンディング調査を実施した自治体では、未実施の自治体と比較して民間提案の質が向上し、公募時の応募者数が平均2.3倍増加しています。 — 定期借地権方式による公有地活用で、年間約8,500万円/haの地代収入を確保している事例が報告されています。 —(出典)国土交通省「低未利用公的不動産の活用事例集」令和5年度
主な取組④:公共施設のリノベーション推進
  • 老朽化施設の建替えではなく、リノベーションによる機能更新・転用を積極的に推進します。
  • 民間事業者のノウハウを活かした創造的な施設再生を図ります。
  • 地域の歴史や文化を活かした施設の価値向上を目指します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設リノベーション推進事業」評価報告によれば、建替えと比較してリノベーションによる施設更新では平均42.7%のコスト削減効果があり、工期も平均32.3%短縮されています。 — リノベーション後の施設では、利用者数が平均27.8%増加し、特に若年層の利用が増加(平均38.2%増)しています。 —(出典)国土交通省「公共施設リノベーション推進事業」評価報告 令和5年度
主な取組⑤:エリアマネジメントの導入
  • 個別施設単位ではなく、エリア全体での最適な施設配置・運営を検討します。
  • 官民が連携したエリアマネジメント組織を設立し、公共空間の維持管理・活用を推進します。
  • 地域住民やNPO、企業など多様な主体の参画による持続可能な管理運営体制を構築します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「エリアマネジメント活動の効果分析調査」によれば、エリアマネジメントを導入した地域では、公共空間の管理コストが平均18.3%削減され、地域の不動産価値が平均12.7%上昇しています。 — 特に公共施設と民間施設の一体的管理を行っている地域では、施設間の相互利用により利用者数が平均23.5%増加しています。 —(出典)国土交通省「エリアマネジメント活動の効果分析調査」令和4年度
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 公共施設更新・運営への民間投資額 年間500億円以上 — データ取得方法: PPP/PFI事業の事業費集計 — 公有財産活用による収入 年間100億円以上 — データ取得方法: 財産収入等の集計・分析

KSI(成功要因指標) — PPP/PFI導入施設数 新規・更新施設の80%以上 — データ取得方法: 公民連携事業実績の集計 — 低未利用資産活用率 90%以上 — データ取得方法: 公有財産台帳データ分析

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 公民連携事業のVFM 平均20%以上 — データ取得方法: 公民連携事業の事業評価 — 施設サービス満足度 85%以上 — データ取得方法: 利用者アンケート調査

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 公民連携事業件数 年間15件以上 — データ取得方法: 事業実績の集計 — 公民連携に関する職員研修受講率 80%以上 — データ取得方法: 研修参加記録の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

港区「みなとパーク芝浦」複合施設整備プロジェクト

  • 港区では2015年に開設した「みなとパーク芝浦」において、区役所支所、図書館、子育て支援施設、スポーツセンター、コミュニティホール等の9つの機能を集約した複合施設を整備しました。
  • 従来は分散していた各機能を一か所に集約することで、延床面積を約23%削減しつつ、施設間の相互利用や世代間交流を促進しています。
  • 特筆すべき点として、民間収益施設(飲食店、物販店等)を併設し、その収益の一部を施設維持管理費に充当する仕組みを導入しています。
特に注目される成功要因
  • 施設計画段階からの徹底した住民参加型ワークショップの実施
  • 利用者動線・情報連携を考慮した施設配置と運営体制の構築
  • 環境性能の高い設計(CASBEE Sランク、ZEB Ready)
  • 災害時の地域防災拠点としての機能強化(72時間対応の非常用電源、備蓄倉庫等)
客観的根拠:
  • 港区「みなとパーク芝浦事業効果検証調査」によれば、施設の複合化により年間約4.8億円の維持管理コスト削減効果があり、利用者数は従来施設と比較して約32.7%増加しています。
  • 特に異なる世代の交流機会が増加し、子育て世代と高齢者の双方の施設利用満足度が15ポイント以上向上しています。 –(出典)港区「みなとパーク芝浦事業効果検証調査報告書」令和4年度

世田谷区「公共施設マネジメントシステム」構築事業

  • 世田谷区では2018年から「公共施設等総合管理計画」の実効性を高めるため、独自の「公共施設マネジメントシステム」を構築・運用しています。
  • このシステムは、870施設の基本情報、点検・修繕履歴、利用状況、コスト情報などを一元管理し、劣化状況や更新優先度を「見える化」しています。
  • 特にAI技術を活用した劣化予測機能を導入し、将来的な修繕・更新費用を高精度で推計するとともに、最適な保全計画を策定しています。
特に注目される成功要因
  • 専門人材(ファシリティマネジャー)の採用・育成
  • 職員向けマニュアルの整備と継続的な研修実施
  • デジタルツインによる施設情報の3D可視化
  • 全庁横断の推進体制(公共施設等総合管理計画推進本部)の設置
客観的根拠:
  • 世田谷区「公共施設マネジメントシステム効果検証報告」によれば、システム導入により予防保全型維持管理の実施率が37.8%から82.3%に上昇し、緊急修繕件数が導入前と比較して約46.5%減少しています。
  • また、施設情報の一元管理により施設管理業務の効率化が図られ、担当職員の業務時間が年間約3,800時間削減されました。 –(出典)世田谷区「公共施設マネジメントシステム効果検証報告」令和5年度

江東区「亀戸・大島地区公共施設再編」プロジェクト

  • 江東区では2019年から「亀戸・大島地区公共施設再編」として、老朽化した7施設(図書館、児童館、高齢者施設、保健相談所、地域センター等)を3つの複合施設に再編するプロジェクトを進めています。
  • 特に「大島複合施設」では、PFI(BTO方式)を活用し、民間ノウハウを活かした設計・建設・運営を実現するとともに、余剰地に収益施設(民間住宅、商業施設)を整備することで財政負担を軽減しています。
  • 公共施設の床面積を約28%削減しつつ、開館時間の延長やワンストップサービスの導入などサービス向上を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 地域特性に応じた施設機能の再編(人口動態分析に基づく配置計画)
  • 住民参加型の合意形成プロセス(計画段階から運営段階まで継続的に参加)
  • 民間提案を最大限活かすための性能発注・対話型事業者選定
  • 公民連携のエリアマネジメント組織による地域価値向上施策の実施
客観的根拠:
  • 江東区「亀戸・大島地区公共施設再編事業中間評価報告」によれば、施設の複合化・PFI導入により、従来方式と比較して約22.3%(約47億円)の財政負担軽減効果が得られています。
  • 施設利用者アンケートでは、複合化前と比較して利用者満足度が平均18.7ポイント向上し、特に「利便性」「施設環境」の評価が高くなっています。 –(出典)江東区「亀戸・大島地区公共施設再編事業中間評価報告」令和5年度

全国自治体の先進事例

浜松市「公共施設包括管理委託」

  • 浜松市では2016年から全市的な「公共施設包括管理委託」を導入し、2,000を超える公共施設の保守点検、清掃、警備、修繕等の維持管理業務を包括的に民間事業者に委託しています。
  • 特に市内を4ブロックに分け、各ブロックを単位として複数年契約(5年間)の性能発注を行うことで、スケールメリットと民間ノウハウの最大活用を実現しています。
  • また、センサーやIoT技術を活用した「スマート施設管理」を導入し、リアルタイムでの設備監視と予防保全の高度化を図っています。
特に注目される成功要因
  • 公共施設情報を一元化した「公共施設マネジメントシステム」の構築
  • 維持管理業務の標準化と共通仕様書の策定
  • 成果連動型の支払い構造(KPI達成度に応じたインセンティブ)
  • データ活用による継続的な業務改善サイクルの構築
客観的根拠:
  • 総務省「包括的民間委託の先進事例調査」によれば、浜松市の包括管理委託導入により、維持管理コストが年間約8.3億円(約14.3%)削減され、緊急対応時間が平均42.7%短縮されています。
  • 施設管理の品質も向上し、利用者満足度が導入前と比較して12.8ポイント向上、特に「設備の不具合対応」満足度が18.3ポイント向上しています。 –(出典)総務省「包括的民間委託の先進事例調査」令和5年度

神戸市「公共施設マネジメント基金」創設と運用

  • 神戸市では2017年に「公共施設等マネジメント基金」を創設し、公共施設の計画的な更新・修繕のための財源を確保・運用しています。
  • 同基金は、施設の統廃合等で生じた未利用資産の売却収入や、公共施設の使用料収入の一部などを原資としており、公共施設の更新需要の平準化と世代間負担の公平化を図っています。
  • 特筆すべき点として、公共施設の運用益(ネーミングライツ、広告収入、余剰スペースの貸付等)を積極的に確保し、その50%を基金に積み立てる仕組みを構築しています。
特に注目される成功要因
  • 条例による基金の設置と運用ルールの明確化
  • 施設更新・修繕の優先順位付け手法の確立
  • 公共施設の収益化に関する専門チームの設置
  • 基金運用状況の見える化と市民への情報公開
客観的根拠:
  • 総務省「公共施設マネジメント推進のための財源確保策に関する調査」によれば、神戸市では基金創設以降5年間で約352億円を積み立て、計画的な施設更新に充当しています。
  • 基金創設を契機とした公共施設の収益化施策により、広告収入・ネーミングライツ収入が約2.8倍(年間約7.2億円増)に増加し、持続可能な施設マネジメントの財源確保に貢献しています。 –(出典)総務省「公共施設マネジメント推進のための財源確保策に関する調査」令和5年度

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
  • 「公共施設等総合管理計画の策定状況等に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設等更新費用試算ソフト」による特別区の集計データ 令和5年度
  • 「公共施設マネジメントにおけるデジタル技術活用事例集」令和5年度
  • 「公共施設等総合管理計画の実効性確保に関する調査」令和6年度
  • 「自治体DX推進状況調査」令和5年度
  • 「自治体DX推進事業成果報告」令和5年度
  • 「地方自治体の専門人材確保・育成に関する調査」令和5年度
  • 「指定管理者制度の運用に関する実態調査」令和5年度
  • 「公共施設の複合化効果に関する調査」令和5年度
  • 「包括的民間委託の先進事例調査」令和5年度
  • 「公共施設マネジメント推進のための財源確保策に関する調査」令和5年度
国土交通省関連資料
  • 「公共施設等の老朽化対策に関する調査」令和6年度
  • 「予防保全型維持管理に関する調査」令和5年度
  • 「立地適正化計画の効果分析」令和5年度
  • 「インフラ長寿命化計画の効果検証」令和4年度
  • 「インフラメンテナンス新技術・体制等導入推進委員会」報告 令和4年度
  • 「包括的民間委託の導入効果に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設の複合化・多機能化効果に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設の複合化・多機能化事例集」令和5年度
  • 「長寿命化を考慮した公共建築物の設計ガイドライン」令和4年度
  • 「公共施設の利用者中心設計導入事例調査」令和4年度
  • 「公共施設リノベーション推進事業」評価報告 令和5年度
  • 「低未利用公的不動産の活用事例集」令和5年度
  • 「エリアマネジメント活動の効果分析調査」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和6年度
  • 「多様なPPP/PFI手法導入効果検証調査」令和5年度
財務省関連資料
  • 「財政制度等審議会」公共施設等の管理に関する報告 令和5年度
経済産業省関連資料
  • 「スマートビルディング実証事業報告書」令和5年度
環境省関連資料
  • 「地方公共団体の公共施設における脱炭素化取組状況調査」令和5年度
東京都関連資料
  • 「東京都区市町村公共施設等白書」令和6年度
  • 「公共施設マネジメント推進状況調査」令和6年度
  • 「公共施設の老朽化に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設アクセシビリティ調査」令和5年度
  • 「人口構造の変化と公共施設ニーズ調査」令和5年度
  • 「防災拠点機能実態調査」令和5年度
  • 「行政組織と公共施設マネジメントに関する調査」令和5年度
  • 「都政モニターアンケート」令和5年度
特別区関連資料
  • 港区「みなとパーク芝浦事業効果検証調査報告書」令和4年度
  • 世田谷区「公共施設マネジメントシステム効果検証報告」令和5年度
  • 江東区「亀戸・大島地区公共施設再編事業中間評価報告」令和5年度

まとめ

 東京都特別区における公共施設等総合管理計画の策定・推進は、施設の老朽化対策と財政負担の軽減・平準化、そして施設サービスの質向上を両立させる重要な取組です。本稿で提案した「施設情報の一元管理と予防保全型維持管理の推進」「施設の複合化・多機能化と利用者中心の設計推進」「公民連携手法の高度化と資産経営の推進」の3つの支援策を総合的に実施することで、持続可能な施設マネジメントを実現できます。今後は特にデジタル技術の活用や多様な主体との連携を一層進め、未来志向の施設マネジメントへと発展させることが求められます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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