【港区】EBPMにAIを融合させた政策立案手法「みなとAIPM」を始動

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

出典:港区「EBPM(エビデンスに基づく政策立案)にAIを融合させた政策立案手法「みなとAIPM」を始動します」令和8年8月31日

概要

 東京都港区は、令和8年8月31日の区長記者発表で、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)にAIを融合させた政策立案手法「みなとAIPM」を始動すると公表しました。AIPMはAI Policy Makingの略とされ、区民起点でより速く的確な政策形成を進めるプロジェクトとして位置づけられています。所管は企画経営部企画課です。

 区が示した出発点は、区政課題が分野をまたいで複雑・多様化しているという認識です。区民の声や地域の実態、統計等の客観的データに基づいた政策形成が重要であり、「世界一のAI先進都市」を目指す港区はこれまでもEBPMの活用に取り組んできたものの、今後は職員が立案した政策案についてEBPMとともにAIにより多様な視点から検証・補強することが欠かせない、という論理でAIPMが導かれています。

 仕組みの中核は、多様なペルソナの設定です。子育て世帯や高齢者といった複数の立場の区民、企画・財政・法務といった様々な立場の職員など、AIに人格を持たせた検証者を複数用意し、AIがオーケストラの指揮者のように各ペルソナを指揮しながら政策をチェックする構成が示されています。あわせて、デザイナーペルソナにより資料の見せ方もAIが支援し、政策内容を分かりやすく区民へ還元して、情報や支援を必要な人へ必要な時に届けることを目指すとされています。

試行の入口は予算要求様式

 注目すべきは、最初の適用対象が抽象的な政策議論ではなく、令和9年度予算編成に向けて職員が作成する予算要求様式だという点です。発表資料には様式9「令和9年度予算要求事業概要書」が別紙として添付されており、この様式に対して複数の立場のペルソナがそれぞれの視点で妥当性や効果を確認し、予算要求資料を多角的に検証・補強する仕組みの構築を試行的に実施すると明記されています。

 この様式の構成自体が、AIによる検証を受けやすい設計になっています。事業説明文は「○○(対象)が、○○(目的)できるよう、○○(手法)します」という一文の型が指定されており、対象・目的・手法という政策の骨格が構造化されて書き込まれます。経緯・背景・現状課題等の欄には「根拠データや区民ニーズも含めながら」「国や都の状況だけではなく、港区の状況が分かるように」という注記が置かれ、国・都・他区等の具体的な取組状況を書く欄が独立して設けられています。効果・成果の欄には「可能な限り数値目標を記載」と指示され、要求内容と財源内訳、将来コストや債務負担行為までが同じ1枚に収まる構成です。

 つまり、AIに検証させる前段として、人間が書く様式の側で対象・目的・手法・根拠・比較対象・数値目標・財源という論点が既に切り分けられています。この様式は策定中のMINATOビジョンの政策番号・施策番号・リーディングプロジェクトを選択する欄も備えており、個別事業と上位計画の紐づけも様式上で担保される構造です。AIの検証精度は入力の構造化度合いに左右されるため、この様式設計はAIPMの成否を左右する要素だと考えられます。

意義

EBPMの「積み上がらない」問題に手をつけた

 EBPMは、国の推進が始まってから相当の年数が経過していますが、自治体の現場では定着に課題が残ってきました。理由の一つは、エビデンスの収集と整理に要する時間が、予算編成のスケジュールに収まらないことです。事業課の担当者が、根拠データを探し、他自治体の状況を調べ、効果の見込みを数値で置き、財政部門と法務部門の想定質問に備えるという作業を、通常業務と並行して短期間で行うのは容易ではありません。

 みなとAIPMは、この時間の制約に対して、検証工程をAIで並列化するという解を出しています。財政部門の視点、法務部門の視点、子育て世帯の視点、高齢者の視点を、それぞれ別のペルソナとして同時に走らせれば、本来は複数の関係者との往復で数週間を要する確認作業を、担当者が机上で先回りできます。EBPMを「やるべきこと」から「限られた時間内で実行できること」に近づける工夫だと位置づけられます。

多視点の検証を仕組みとして組み込んだ

 もう一つの意義は、検証の視点を個人の力量に依存させない設計にある点です。経験を積んだ職員は、起案の段階で財政部門や法務部門の指摘を予想し、あらかじめ手当てを打ちます。しかしその能力は属人的で、異動や世代交代で失われやすいものです。ペルソナという形で視点を明示的に定義しておけば、誰が担当しても一定水準の多角的チェックを受けられます。

 特に「区民のペルソナ」を置いた点は、行政内部の論理だけで政策が完結することを避ける仕掛けとして注目されます。庁内の関係部署の視点は、いわば供給側の視点です。子育て世帯や高齢者のペルソナを同じ土俵に乗せることで、受け手にとって使いやすいか、そもそも届くかという問いが検証工程に組み込まれます。区が「区民起点」という表現を用いているのは、この構造を指しているものと考えられます。

伝え方を政策形成の一部に位置づけた

 デザイナーペルソナによる資料の見せ方の支援を、政策検証と同じプロジェクトの中に置いた点も見逃せません。行政においては、制度の設計が正しくても、伝わらなければ利用されないという問題が繰り返し起きます。申請主義のもとでは、対象者が制度の存在を知らないまま支援を受けられないという事態が生じます。

 港区が「情報や支援を必要な人へ必要な時に届けます」と述べているのは、この課題への言及だと読めます。政策の内容を決める工程と、それを住民に伝える工程を別々の部署の別々の作業として扱うのではなく、同じ検証の枠組みに含めるという発想は、政策形成の考え方としては小さくない転換です。

歴史・経過

国のEBPM推進とガイドブックの整備

 EBPMについて、内閣府は、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠に基づいて行うものと説明しています。内閣官房行政改革推進本部事務局は令和4年11月にEBPMガイドブックVer1.0を公表し、政策手段と目的の論理的なつながりを明確にし、そのつながりの裏付けとなるデータ等のエビデンスを可能な限り求めて「政策の基本的な枠組み」を明確にする取組と定義しました。

 このガイドブックは、EBPMが必要とされる背景として、政策に国民の声が反映されていると考える者が約3割にとどまることや、若手職員のやりがい実感の低下を挙げています。前例踏襲に陥ると社会課題への対応が不十分になるという問題意識です。方法論としては、政策目的の明確化に必要な4要素と、政策手段に至るロジックの明確化に必要な5要素からロジックモデルを構成し、政策形成とブラッシュアップ、モニタリング、対外コミュニケーションに活用することが示されています。エビデンスについても、狭義には定量的因果効果と定性的因果効果、広義にはデータ・ファクトや将来予測を含むという階層が整理されています。

 みなとAIPMの構成をこの枠組みに重ねると、位置づけが見えてきます。ロジックモデルが担ってきた「目的と手段のつながりを明確にする」役割は、予算要求様式の事業説明文と効果・成果の欄が引き受けています。AIのペルソナが担うのは、その明確化されたロジックに対する批判的検証です。EBPMを置き換えるのではなく、EBPMの検証工程を補強する構図だと理解できます。

生成AIの政策業務への浸透

 国においても、生成AIをEBPMの支援に使う動きが進んでいます。令和8年2月の政府のEBPM関連会議に提出された資料では、生成AIが膨大なデータの迅速な分析と要約を可能にし、政策立案に必要なエビデンスの収集・整理を効率化するとされ、農林水産省の事例として通常2か月を要する分析が約3日間の作業に短縮された例が挙げられています。パブリックコメントの処理やSNSの分析など、複数の府省で実装が進んでいることも示されています。

 制度面の整備も進んでいます。令和7年12月19日に人工知能戦略本部が開催され、同月23日には人工知能基本計画が閣議決定されました。総務省は令和7年12月16日に「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」の第4版を公表し、生成AIシステム導入ガイドラインを別紙として新たに加えるとともに、自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループの議論を踏まえてAI活用の法的側面に関する記載を追加しました。ハルシネーション、個人情報の取扱い、人間による確認の必要性は、いずれもこのガイドブックで留意事項として扱われています。

港区のこれまでの積み上げ

 港区は、令和3年度から令和8年度までを計画期間とする港区DX推進計画を持っています。この計画は当初「港区情報化推進計画」という名称でしたが、計画期間の中間年度である令和5年度の改定で現在の名称に変更されました。官民データ活用推進基本法第9条に規定する市町村官民データ活用推進計画としても位置づけられています。

 生成AIの住民向け活用も先行しています。港区LINE公式アカウントでは、区ホームページの情報を生成AIに学習させ、チャット形式で質問に自動回答する機能を令和6年10月18日から本格運用しています。庁内業務の効率化にとどまらず、住民接点での生成AI活用に踏み出していた点が、今回のAIPMの前提になっていると考えられます。

 計画体系そのものも転換期にあります。港区は令和8年度に、港区基本構想・港区基本計画・港区実施計画を統合した新たな総合計画としてMINATOビジョンを策定する予定です。2040年代を見据えた構想として、学識経験者11人によるコ・デザイン会議や区民参画のタウンフォーラム、区民意識調査などを重ねて検討が進められてきました。予算要求様式にMINATOビジョンの政策番号・施策番号を選択する欄が設けられていることは、新しい計画体系と予算編成をAIPMを通じて接続しようとする意図の表れだと読めます。

現状データ

自治体の生成AI導入は規模による差が大きい

 総務省の調査によれば、令和6年12月31日時点で生成AIを導入済みの団体は、都道府県で87.2%、指定都市で90.0%に達する一方、その他の市区町村では29.9%にとどまっています。実証中や導入予定を含めると、都道府県と指定都市はいずれも100%が取り組み中であるのに対し、その他の市区町村は51%です。規模の大きい団体ほど導入が進み、小規模団体との差が開いている構造が数値に表れています。

 利用の枠組みづくりも途上です。同じ調査系統では、生成AIの利用に関するガイドラインを策定済みの団体が647、未策定の団体が1,004とされており、導入が先行してルール整備が追いかける状況がうかがえます。港区が属する特別区は、規模と財政力の面で導入が進みやすい層にありますが、その分だけ先行事例としての責任も大きくなります。

国の分析業務で確認されている効率化の幅

 生成AIによる効率化の程度については、府省の事例が参考になります。前述のとおり、通常2か月を要する分析が約3日間の作業に短縮された例が政府資料に示されています。単純に日数だけを比較すれば20分の1程度ですが、これは分析という特定の工程についての数値であり、政策形成の全工程が同じ比率で短縮されるわけではありません。合意形成や議会対応、住民説明に要する時間はAIでは圧縮できないためです。

 みなとAIPMが狙う効率化も、この構造のなかで理解する必要があります。予算要求資料の多角的検証という工程は、担当者と関係部署の往復に時間がかかる部分であり、AIによる先回りの効果が出やすい領域だと考えられます。一方で、最終的な査定や政策判断そのものが速くなるかは別問題です。

港区の予算規模と編成過程の公開

 港区の令和8年度当初予算は、一般会計で2,143億円と過去最大の規模になりました。後期高齢者医療会計255億円、介護保険会計83億円、国民健康保険事業会計200億円を合わせた4会計の総額は2,681億円です。重点的な取組は4本柱で構成され、子どもの可能性が広がる未来に向けて種をまく施策に159億9,272万円、一人ひとりの健やかな暮らしに寄り添い支える施策に100億8,586万円、揺るぎない安全と美しい街並みを未来につなぐ施策に20億8,140万円、彩りと活気に満ちた誇れる先進都市を共に描く施策に78億4,779万円が計上されています。

 編成過程の公開も進んでいます。令和8年度当初予算では、要求額2,296億円が令和7年12月25日時点で公表され、前年度比253億円・12.4%の増となっていました。新規事業とレベルアップ事業について、事業の内容や区民ニーズ、実施により得られる成果、経費の内訳等をまとめた資料が開示されています。今回のAIPMが対象とする予算要求事業概要書は、この公開の対象となってきた文書と同じ系統のものです。すなわち、AIによる検証が加えられる資料は、最終的に区民の目に触れることが想定された文書だという点を押さえておく必要があります。

他区にも先行する動きがある

 特別区のなかでも、生成AIをEBPMに用いる試みは既に始まっています。目黒区では、部署横断のデータ活用チームが令和7年11月に生成AIを活用したEBPMの実証実験を報告しています。中期経営指針に基づき、ヒト・モノ・カネの観点から施設運営事業を分析する取組で、「この事業は大幅な見直しが必要である」といった仮説をあらかじめ定義したうえでデータ分析を行い、その仮説が棄却できるかを検証するアプローチが採られました。

 この実証からは課題も報告されています。「利用率」といった用語の定義が曖昧であったこと、欠損データを0と誤認する事象が生じたことなど、データ定義や分析条件の共有不足が問題として挙げられています。AIの側の性能ではなく、投入するデータと定義の整備が結果を左右したという指摘であり、みなとAIPMにおいても同じ論点が生じる可能性があります。

政策立案の示唆

この取組を行政が行う理由

 第一の理由は、政策形成に投入できる時間と人員が有限であることです。区政課題が分野をまたいで複雑化するほど、一つの事業を組み立てるために確認すべき視点は増えます。しかし職員数を比例して増やすことはできません。検証の視点を増やしながら所要時間を増やさないという要求に応えるには、検証工程そのものを機械化する以外に方法が乏しいという判断が働いていると考えられます。

 第二の理由は、予算編成という工程が持つ性質にあります。予算要求は、事業課が原案を作り、財政部門が査定するという構造上、要求段階での資料の完成度が結果を大きく左右します。要求側が財政部門や法務部門の視点をあらかじめ織り込んだ資料を作れれば、査定のやり取りは論点の本質に集中できます。AIによる事前検証は、査定を有利にするための道具ではなく、議論の水準を上げるための準備だと位置づけられます。

 第三の理由は、説明責任の要請です。港区は予算要求段階の事業概要書を公開しており、区民が要求内容を確認できる状態を作っています。公開される文書である以上、根拠が薄い記述や説明の飛躍は、区民や議会からの指摘の対象になります。公開に耐える水準まで資料を引き上げる作業を、担当者一人の力量に委ねずに支援する必要があったものと推測されます。

行政側の意図

 第一の意図は、EBPMの形骸化を避けることだと考えられます。ロジックモデルや数値目標の記載は、様式に欄を設ければ形の上では埋まりますが、内容が伴うとは限りません。複数のペルソナに検証させる工程を挟むことで、記載が形式的に埋められただけの状態を洗い出そうとしているものと読めます。

 第二の意図は、政策形成のノウハウを組織に蓄積することです。どのペルソナがどの論点を指摘したかという記録は、そのまま政策検証のチェックリストとして機能します。異動の多い行政組織において、暗黙知として個人に蓄積されてきた検証の勘所を、明示的な資産に変える意味を持ちます。

 第三の意図は、区民への伝達までを射程に入れることです。デザイナーペルソナを検証者の一員として置く構成は、資料が分かりやすいかどうかを政策の質の一部として扱うという宣言でもあります。制度が届かないことによる取りこぼしを、政策形成の段階から減らそうとする狙いがうかがえます。

 なお、AIPMという名称そのものにも意図が読み取れます。EBPMという既存の概念を否定せず、AIを融合させるという表現を選んでいることから、EBPMの枠組みは維持したうえでその実行力を高める位置づけであると考えられます。

期待される効果

 最も直接的に期待されるのは、予算要求資料の質の底上げです。根拠データの不足、他自治体との比較の欠落、効果指標の曖昧さといった典型的な弱点は、複数の視点からの機械的な点検で相当程度が検出できると考えられます。査定段階で初めて指摘されていた不備が要求段階で解消されれば、査定の回数と往復の時間が減る可能性があります。

 次に、若手職員や異動直後の職員の立ち上がりが早くなる効果が見込まれます。財政部門がどこを見るか、法務部門が何を確認するかという暗黙のルールは、通常は経験を通じて身につけるものです。ペルソナによる検証がその一部を可視化すれば、経験の浅い職員でも一定の水準の資料を作れるようになります。

 さらに、政策の受け手側の視点が早期に入ることで、事業設計そのものが変わる可能性があります。対象者にとって申請手続が重すぎないか、周知の方法が届く相手と合っているかといった論点が、予算要求の段階で検討されれば、実施後の手戻りを減らせます。

 資料の分かりやすさの向上も、副次的な効果にとどまらないと考えられます。区民が予算要求段階の資料を読んで内容を理解できる状態は、行政の透明性を実質化するものであり、公開制度の実効性を高めます。

課題・次のステップ

 第一の課題は、AIが生成した検証結果の妥当性をどう担保するかです。生成AIには事実と異なる内容を出力するハルシネーションのリスクがあり、総務省のガイドブックでも人間による確認の必要性が留意事項として示されています。ペルソナが指摘した論点をそのまま資料に反映すれば、誤った根拠が公開文書に載る可能性があります。検証結果を採用するかどうかを人間が判断する工程と、その判断の記録を残す仕組みが不可欠です。

 第二の課題は、ペルソナ設定の妥当性です。AIに与える人格の定義は、設計者の想定を反映します。子育て世帯のペルソナをどう定義するかによって、指摘される論点は変わります。実在の区民の多様性を、限られた数のペルソナで代表させることには原理的な限界があり、ペルソナによる検証を実際の区民参画の代替と位置づけないことが重要だと考えられます。区が区民意識調査やタウンフォーラムといった実地の参画手法を並行して持っていることは、この点で意味を持ちます。

 第三の課題は、データ定義の整備です。他区の先行事例では、用語定義の曖昧さや欠損データの誤認が分析結果を歪める要因として報告されています。AIの検証精度は投入する情報の質に依存するため、庁内のデータ定義を揃える作業がAIPMの実効性を左右する可能性があります。

 第四の課題は、多様性の確保と均質化のバランスです。同じペルソナ設計を全庁で使えば、指摘される論点も全庁で似通います。効率化と引き換えに、想定外の視点が失われるリスクは意識しておく必要があります。ペルソナの定義を定期的に見直す仕組みが求められます。

 第五の課題は、個人情報と機密情報の取扱いです。予算要求資料には、事業の対象者や単価、契約に関する情報が含まれます。どの情報をAIに投入してよいかの線引きと、利用するシステムの環境要件を明確にしておくことが前提になります。

 次のステップとしては、令和9年度予算編成での試行を経て、検証結果の採否の記録、指摘類型の整理、ペルソナ定義の改訂、そして効果の検証という循環が想定されます。特に効果の検証は難しく、資料の質が上がったかどうかを何で測るのかという指標設計が課題になります。査定での指摘件数の減少、要求から確定までの往復回数、区民からの問い合わせの内容といった代理指標を、試行の開始時点で決めておくことが望ましいと考えられます。

特別区への示唆

 第一の示唆は、AI活用の入口として予算要求様式を選んだ判断の合理性です。予算要求は、全部署が同じ様式で、同じ時期に、同じ目的で作成する数少ない文書です。標準化された入力があり、成果物の質の差が明確に表れ、改善の効果が測りやすい領域だと言えます。AIの活用先を探している部署にとって、業務の探し方そのものが参考になります。

 第二の示唆は、AIの役割を「生成」ではなく「検証」に置いた設計です。生成AIの自治体導入は、文書の下書き作成や要約から始まることが多い一方、みなとAIPMは職員が立案した政策案をAIが検証・補強するという順序を明示しています。人間が考え、AIが批判するという役割分担は、最終的な判断の所在を曖昧にしないという点で、行政における責任の所在の観点からも整理しやすい構図です。

 第三の示唆は、様式の設計とAI活用が一体であるということです。対象・目的・手法を一文で書かせる型、根拠データと区民ニーズを求める注記、国・都・他区の状況を独立の欄として置く構成、数値目標を求める指示。これらはAIのためというより本来のEBPMのための設計ですが、結果としてAIが検証しやすい構造化された入力を生んでいます。AIを導入する前に、様式と業務プロセスの側を整えることの重要性を示しています。

 第四の示唆は、規模による格差への視点です。生成AIの導入率は都道府県や指定都市で9割前後に達する一方、その他の市区町村では3割程度にとどまっています。特別区は導入が進みやすい層にあり、実装のノウハウを蓄積できる立場にあります。ペルソナの定義や検証結果の採否の判断基準といった知見は、他自治体にも移転可能性が高い資産です。区をまたいで共有する枠組みを持てるかどうかが、特別区全体の政策形成力に影響すると考えられます。

 第五の示唆は、AIを使うことと説明できることは別だという点です。AIの検証を経た政策であっても、議会や区民に対して説明する責任は職員が負います。AIがそう指摘したという説明は成立しません。検証の過程で何を採用し何を採用しなかったかを、人間の言葉で説明できる状態を保つことが、AI活用の前提条件になります。総務省がガイドブックでAI活用の法的側面に関する記載を拡充している背景にも、同様の問題意識があるものと考えられます。

まとめ

 港区が令和8年8月31日に公表した「みなとAIPM」は、EBPMを置き換える取組ではなく、EBPMの検証工程をAIで補強する取組です。子育て世帯や高齢者といった区民の立場、企画・財政・法務といった職員の立場を、それぞれAIのペルソナとして設定し、AIが指揮者のように各ペルソナを指揮しながら政策案をチェックする構成が示されています。デザイナーペルソナによる資料の見せ方の支援まで含めることで、政策の内容と伝え方を一つの検証枠組みに置いた点が特徴です。

 最初の適用対象が令和9年度予算編成の予算要求様式であることは、この取組を評価するうえで重要です。予算要求事業概要書は、対象・目的・手法を一文で書かせ、根拠データと区民ニーズを求め、国・都・他区の状況を独立の欄で問い、効果には可能な限り数値目標を求める構成になっています。AIが検証しやすい構造化された入力が、様式の側で既に用意されている状態です。加えて港区は予算要求段階の事業概要書を公開しており、令和8年度当初予算では要求額2,296億円が令和7年12月25日時点で公表されました。AIの検証が加えられるのは、最終的に区民の目に触れる文書だという点が、この取組の緊張感を高めています。

 背景には、国と自治体の双方でAIの政策活用が加速している状況があります。内閣官房行政改革推進本部事務局は令和4年11月にEBPMガイドブックを公表してロジックモデルとエビデンスの階層を整理し、政府のEBPM関連会議では生成AIによってエビデンスの収集・整理が効率化されている実態が報告されています。総務省は令和7年12月16日に自治体向けAI活用・導入ガイドブックの第4版を公表し、生成AIシステム導入ガイドラインを追加しました。一方で自治体の生成AI導入率は、令和6年12月31日時点で都道府県87.2%、指定都市90.0%に対し、その他の市区町村は29.9%と差が開いています。

 課題は、AIそのものよりも運用の側にあります。ハルシネーションを含む出力の妥当性を人間がどう確認するか、ペルソナの定義が実際の区民の多様性をどこまで代表できるか、庁内のデータ定義が揃っているか、そして検証で何を採用し何を採用しなかったかを人間の言葉で説明できるか。目黒区の先行事例で報告された用語定義の曖昧さや欠損データの誤認は、いずれもAIの性能ではなく入力側の整備に関わる論点でした。特別区にとっての実践的な学びは、AIを導入する前に様式とデータ定義と業務プロセスを整えることの重要性にあると考えられます。令和9年度予算編成での試行がどのような記録を残すかは、他区が同種の取組を検討する際の判断材料になります。


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