07 自治体経営

高市新総裁の誕生でどうなる? 日本の金利のゆくえ(2025年~2026年)

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

第1章 はじめに:突然の変化「サナエショック」

 これまで多くの専門家が描いていた日本の経済や金利の未来予想図が、高市早苗氏が自民党の新総裁に選ばれたことで、一夜にして大きく塗り替えられました。これまでは、日本銀行(日銀)が経済のデータを見ながら、ゆっくりと慎重に金利を上げていくだろう、というのが一般的な見方でした。しかし、その穏やかなシナリオは、もはや過去のものとなったのです。

 これは単にリーダーが変わったというだけではありません。日本の経済運営の考え方が根本から変わる可能性があり、市場ではこの衝撃を「サナエショック」と呼んでいます。このレポートでは、この大きな変化が、2025年後半から2026年にかけての日本の金利にどのような影響を与えるのかを、分かりやすく解説していきます。

何が根本的に変わったのか?

 高市氏の勝利が市場に大きな衝撃を与えたのは、これまでの予測の前提がすべて崩れてしまったからです。高市氏が掲げる経済政策、通称「サナエノミクス」は、金利を上げて経済を引き締めることよりも、政府がお金を使って経済を成長させることを優先する考え方です。これにより、今後の金利の動きは、経済のデータよりも、政府の「経済を成長させたい」という政治的な目標に大きく左右されることになりました。

市場は未来をどう見ている?

 この大きな方針転換に対して、市場はすぐさま反応しました。その動きを見ていくと、これから2年間の日本の経済がどうなるのか、ヒントが見えてきます。

  • 株式市場: 日経平均株価は、史上初めて47,000円台まで急上昇しました。これは、新しい政権の政策に対する期待の表れです。特に、自動車や電機といった輸出関連の会社や、不動産会社の株が人気を集めました。その理由は二つあります。一つは、これから円安が進んで輸出企業の利益が増えるだろうという期待。もう一つは、日銀が金利をなかなか上げないだろうから、低い金利でお金を借りられる状況が続くだろうという期待です。一方で、銀行の株価が下がったことは非常に重要です。これは、金利が上がらないと銀行の儲けが増えないため、銀行にとってはマイナスだと市場が判断したことを意味しています。
  • 為替市場: 円の価値は、ドルに対して一時149円台後半まで急落しました。これは、日本の金利がアメリカやヨーロッパに比べて低いままなので、円を売ってドルなどを買う動きが加速した結果です。市場は、サナエノミクスが円安を気にしない、むしろ望んでいる政策だと判断したのです。
  • 債券市場: 国が発行する借用書である国債の市場は、より複雑な反応を見せました。2年物や10年物といった比較的短い期間の国債の金利(利回り)は下がりました。これは、日銀がすぐには利上げをしないだろう、という見方が強まったからです。その一方で、30年物や40年物といった非常に長い期間の国債の金利は急上昇しました。短期金利が下がり、長期金利が上がるという現象は、「サナエノミクスは、短期的には金融緩和を続けるけれど、長期的には物価が上がり、政府がたくさん国債を発行することで将来の金利上昇につながる」と市場が分析したことを示しています。

このレポートでお伝えしたいこと

 このレポートで最もお伝えしたいのは、高市新政権の経済政策によって、日本の金利が上がるペースはこれまで考えられていたよりもずっと遅く、小幅なものになるだろう、ということです。この変化は、短期的には円安や株高といった良い面をもたらすかもしれません。しかしその裏側では、物価の上昇が止まらなくなったり、円安が制御不能になったり、さらには日本という国そのものへの信頼が揺らいだりする、大きなリスクも隠されています。市場の最初の反応は、この新しい現実を織り込み始めたにすぎません。これからの2年間、私たちはこの新しいルールの上で物事を考えていく必要があります。

第2章 「サナエノミクス」を読み解く

 高市新政権の下で金利がどうなるかを予測するためには、その経済政策の考え方である「サナエノミクス」をしっかり理解することが大切です。サナエノミクスは、安倍元首相の「アベノミクス」の考え方を引き継いでいると言われますが、経済の状況は当時と全く違います。アベノミクスがデフレ(モノの値段が下がり続ける状態)と戦うための政策だったのに対し、サナエノミクスは、すでに物価が2%上がるという目標が見えている中で、さらに経済を成長させようとする、より積極的でリスクの高い政策と言えます。

サナエノミクスの3つの柱

 サナエノミクスには、いくつかの明確な特徴があります。

  • 「責任ある積極財政」: これが政策の心臓部です。国の借金が増えることよりも、経済を成長させることを優先するという姿勢をはっきりと示しています。防衛費を増やしたり、災害に強い国を作るための公共事業を行ったり、最先端技術に投資したりするためなら、国債を新たに発行することもためらわない、という強い意志が感じられます。
  • 国の財政黒字化目標を一時停止: サナエノミクスの考え方を最もよく表しているのが、国の財政を黒字にするという目標を、事実上いったん横に置くという点です。高市氏は、この目標が経済成長の邪魔になっていると考えており、物価が安定して2%上昇するようになるまでは、この目標を凍結すべきだと主張しています。これは、国の将来への投資を、財政の都合でためらうべきではない、という考えの表れです。
  • 需要が引っ張るインフレを目指す: 高市氏は、今の物価上昇は輸入コストの上昇が原因の「悪いインフレ」であり、目指すべきは、給料が上がって人々がモノを買うようになり、それによって物価が緩やかに上がる「良いインフレ」だと主張しています。この考え方が、金融緩和を続けて、金利を上げるのを急ぐべきではない、という主張の根拠になっています。

アベノミクスとの違いとリスク

 サナエノミクスはアベノミクスの考え方を引き継いでいますが、経済の状況が全く違います。アベノミクスが始まった2012年頃、日本は深刻なデフレに苦しんでいました。その状況で金融緩和や財政出動を行うことは、病気を治すための強力な薬のようなものでした。

 しかし、2025年の日本経済はデフレから抜け出し、むしろ物価が上がり続けるインフレの状態に移行しつつあります。このような状況で、デフレの時と同じようにアクセルを強く踏み込むと、経済が過熱してインフレがコントロールできなくなるリスクが非常に高くなります。これは、病気が治りかけている人に、さらに強い薬を飲ませるようなもので、サナエエノミクスが抱える最大のリスクと言えるでしょう。

政策を支える人々

 高市氏の経済政策の背後には、金融緩和に積極的な考えを持つ経済学者などの影響が見られます。例えば、アベノミクスの立役者の一人である本田悦朗氏や、元日銀副総裁の若田部昌澄氏といった名前が挙がっています。彼らの存在は、サナエノミクスが単なるスローガンではなく、一貫した考えに基づいていることを示しており、今後、日銀に対して金融緩和を続けるよう求める圧力が、より強くなることを意味しています。

第3章 政府と日本銀行の新しい関係

 サナエノミクスが日本の金利の未来を大きく変える最大の理由は、日本銀行の「独立性」に対する考え方にあります。中央銀行である日銀は、本来、政府から独立して、物価の安定を第一に考えて金融政策を決めるのが世界の常識です。しかし高市新政権の下では、日銀の決定に強い政治的な圧力がかかる可能性が高まります。この「政府と日銀の新しい関係」こそが、今後の金利を予測する上で最も重要なポイントになります。

「金融政策を決めるのは政府」という考え方

 高市氏は、金融政策の大きな方向性を決める責任は政府にある、と繰り返し発言しています。そして日銀の役割は、政府が示した方針を実現するために「最善の方法を考えて実行する」ことだとしています。これは、金融政策の主導権は政府側にあるという考え方で、日銀が専門的な判断で独立して政策を決めるという先進国の標準的なスタイルとは大きく異なります。

 この考え方は、日銀が金利を上げようとする時に、強いブレーキとして働きます。高市氏は過去に「今、金利を上げるのは賢明ではない」という趣旨の発言をしたと報じられており、給料がしっかり上がる「良いインフレ」が実現するまで利上げは避けるべき、という立場を明確にしています。政府と日銀が「緊密に連携する」という言葉の裏には、日銀に政府の意向に従うよう求める強い圧力がかかると考えるのが自然でしょう。

海外の教訓:「トルコ」のようになってはいけない

 政治が中央銀行の金融政策に過度に口出しした結果、経済がどうなってしまうのか。その最も分かりやすい例が、近年のトルコです。トルコのエルドアン大統領は、「金利を高くするとインフレになる」という独自の考えに基づき、猛烈なインフレが起きているにもかかわらず、中央銀行に金利を下げるよう強制しました。

 その結果は悲惨なものでした。通貨(リラ)の価値は暴落し、インフレは制御不能になりました。海外からの投資家は逃げ出し、国の信頼は完全に失われました。もちろん、日本の経済状況はトルコとは大きく異なります。しかし、トルコの例は、中央銀行の独立性が政治によって損なわれると、通貨や物価の安定という経済の土台がいかに簡単にもろく崩れ去るか、という重要な教訓を示しています。

日本銀行は抵抗できるのか?

 法律(日本銀行法)では、日銀の独立性は保障されています。しかし、その独立性は絶対的なものではありません。日銀の総裁や副総裁などを任命するのは政府であり、国会の承認が必要です。強い意志を持った総理大臣が世論を味方につければ、日銀がそれに抵抗し続けるのは難しいかもしれません。

 特に、サナエノミクスのように、政府がお金を使い、日銀が金融緩和を続けるという政策が国民に支持された場合、日銀が「空気が読めない」存在として孤立してしまうリスクがあります。そのため、日銀の抵抗は、あからさまな対立を避け、利上げのタイミングを遅らせたり、利上げの理由付けをより慎重にしたりといった、消極的なものにならざるを得ないでしょう。これからの時代、日銀の決定は、経済のデータよりも、官邸から発せられる政治的なサインに、より大きな影響を受けることになるかもしれません。

第4章 日本銀行の内部はどう動くか?

 高市新政権からの強い政治的圧力を受ける中で、日本の金融政策は、最終的に日本銀行の「政策委員会」という9人のメンバーによる多数決で決まります。ですから、今後の金利を予測するためには、日銀という組織を一つの塊として見るのではなく、メンバー一人ひとりの考え方や専門、そして任期を分析し、委員会全体の雰囲気がどう変わっていくかを読み解く必要があります。

政策委員会のメンバー構成

 2025年後半時点での政策委員会は、植田和男総裁を中心に、比較的バランスの取れたメンバーで構成されています。しかし、その中には金融政策に対する考え方の違いがあります。以下の表は、各メンバーの簡単なプロフィールと、考えられる政策スタンスをまとめたものです。

表1:日本銀行政策委員会 構成とスタンス(2025年後半時点)

役職氏名任期満了日主な経歴想定される政策スタンスと根拠
総裁植田 和男2028年4月8日学者(経済学)、元審議委員中立:理論とデータを重視するタイプ。政治的圧力には抵抗しつつも、経済に大きな混乱を与えない現実的な判断を下すと考えられます。
副総裁内田 眞一2028年3月19日日銀プロパー(企画局長など)ややハト派:日銀の伝統的な考え方を重視。急激な金融引き締めには慎重な姿勢を示す可能性があります。
副総裁氷見野 良三2028年3月19日元金融庁長官中立~ややタカ派:金融システムの安定を重視する立場から、超低金利が長く続くことの副作用を心配しており、金利の正常化に前向きな可能性があります。
審議委員野口 旭2026年3月31日学者(経済学)、リフレ派ハト派:積極的な金融緩和を主張してきた人物。利上げには極めて慎重な立場を取ることが予想されます。
審議委員中川 順子2026年6月29日金融・実業界出身中立:実際の経済の動きを重視するバランスの取れた視点を持つと考えられます。
審議委員高田 創2027年7月23日民間エコノミスト中立:市場との対話を重視し、データに基づいて冷静に判断することが期待されます。
審議委員田村 直樹2027年7月23日金融機関出身ややタカ派:金融機関の経営への影響を考え、金融緩和の副作用を是正すること(つまり金利の正常化)に前向きな発言が見られます。
審議委員小枝 淳子2030年3月25日学者(経済学)中立:金融政策の理論に詳しく、データに基づいて客観的な判断を下すことが期待されます。
審議委員増 一行2030年6月30日実業界(商社CFO)中立:企業の立場から金融政策を評価し、実体経済への影響を重視するスタンスが予想されます。

出典:

人事がもたらす影響

 このメンバー構成は、高市政権の誕生によって大きく変わる可能性があります。特に重要なのが、メンバーの任期が終わるタイミングです。

  • 2026年の重要な人事: 2026年には、2人の委員が任期満了を迎えます。金融緩和に積極的な野口旭氏(2026年3月)と、中立的な中川順子氏(2026年6月)です。これは、高市政権が早い段階で、政策委員会のメンバーに自分たちの考えに近い人物を送り込むチャンスがあることを意味します。
  • 2027年以降の展望: さらに2027年、そして2028年には、植田総裁や両副総裁といった中心メンバーが一斉に任期を迎えます。もし高市政権が長く続けば、政策委員会のメンバー構成を、完全に自分たちの意向に沿ったものに変えることも可能になります。

政策委員会の雰囲気はどう変わるか

 この人事スケジュールを考えると、政策委員会の意思決定は時間とともに変わっていくと予想されます。

  • 2025年後半~2026年前半: 今のメンバー構成では、植田総裁はデータに基づいた判断を続けようとするでしょう。しかし、新政権との対立を避けるため、利上げにはこれまで以上に慎重になるはずです。会合では「利上げの可能性は残しつつも、しばらくは様子を見ます」といった、現状維持が続く可能性が高いでしょう。事実上、利上げプロセスは一旦ストップすることになります。
  • 2026年半ば以降: 新たに2人の金融緩和に積極的な委員が加わると、委員会の雰囲気は明らかに緩和方向へと傾きます。たとえ物価が高止まりしたとしても、「これはまだ『良いインフレ』ではない」「給料の上昇がまだ足りない」といった理由で、利上げは見送られる可能性が非常に高くなります。これにより、2026年中に金利が上がる可能性はほぼなくなると考えられます。

 このように、2026年の金利の行方は、経済の数字よりも、日銀のメンバーが交代するという政治的なスケジュールによって、より強く決まることになりそうです。

第5章 これからの経済と金利の予測

 高市新総裁の誕生により、日本の経済と金利の未来予想図を根本的に描き直す必要が出てきました。ここでは、これまでの予測(ベースライン・シナリオ)と、サナエノミクスを考慮した新しい予測(新シナリオ)を比べて、具体的に何がどう変わるのかを見ていきましょう。

これまでの予測(高市氏登場前)

 「サナエショック」が起こる前、専門家の間では、おおむね次のような見方が一般的でした。

  • 経済成長率: 日本経済は安定して成長し、2025年、2026年ともに年率1.0%~$1.2%$程度の成長が見込まれていました。
  • 物価上昇率: 給料と物価が一緒に上がっていく良い循環が生まれ、物価は日銀の目標である$2%$前後で安定すると予想されていました。
  • 金融政策: 日銀は2025年中に政策金利を$0.50\%$まで引き上げ、2026年末までには$0.75\%$~$1.00%$を目指して、ゆっくりですが着実に利上げを進めていくだろうと考えられていました。

「サナエノミクス」が与える影響

 高市政権の政策は、これらの前提を覆します。

  • 経済成長への影響: 政府がたくさんお金を使うことで、短期的には経済成長率が押し上げられます。しかし、これは経済の実力を超えた需要を生み出し、物価が上がりやすくなるという副作用も伴います。
  • 物価への影響: 政府の支出拡大、円安による輸入品の値上がり、そして日銀が利上げを先送りすること、この3つの要因が重なり、物価上昇率は$2%$を大きく超え、$3%$に迫る水準で高止まりするリスクが高まります。
  • 金融政策への影響: 日銀は、政治的な圧力によって利上げをしにくい状況に置かれます。これまでは、先を見越して利上げをすることも考えられましたが、今後は、誰の目にも明らかな経済の過熱状態になるまで、行動を起こせなくなるでしょう。

新しい金利の予測

 以上の分析から、2025年後半から2026年にかけての金利の予測を、次のように修正します。

  • 政策金利: 2025年中に見込まれていた$0.50%への利上げは、延期または中止される可能性が高いです。政策金利は、現在の水準(例えば0.25%$とします)のまま、2026年末まで据え置かれるでしょう。次の利上げは、早くても2027年以降になると考えられます。
  • 国債の金利(イールドカーブ): 短い期間の国債の金利は低いままですが、長い期間の国債の金利は上昇し続けるでしょう。10年物国債の金利は、現在の$1%$前後から、1.50%~$1.75%$の範囲まで上昇する可能性があります。

表2:主な経済指標の新しい予測(高市政権下シナリオ 2025-2026年)

指標これまでの予測新しい予測(2025年末)新しい予測(2026年末)変化の主な理由
実質GDP成長率(前年比)+1.1%+1.4%+1.3%政府の積極的な財政出動
コアCPI(物価上昇率)+2.1%+2.8%+2.6%財政拡大、円安、金融緩和の継続
政策金利(期末時点)0.50%0.25%0.25%政府からの利上げけん制
10年物国債利回り(期末時点)1.10%1.40%1.75%将来の物価上昇への懸念、国債の増発
ドル/円レート(期末時点)145円152円155円日本とアメリカの金利差の拡大

 この新しい予測は、日本経済が「低い金利・高い物価・円安」という、これまであまり経験したことのない組み合わせの状況に突入することを示しています。これは、私たち投資家にとって、これまでの投資戦略を根本から見直す必要があることを意味しています。

第6章 投資への影響と戦略

 これからの経済と金利の新しい予測は、私たちの投資戦略に直接影響します。高市政権の下で予想される「低金利・高インフレ・円安」という新しい経済環境は、投資の世界で明確な「勝ち組」と「負け組」を生み出すでしょう。

為替(円):円安は続く見込み

 円の価値は、今後も下落基調が続くと考えられます。最大の理由は、金利を低いままに据え置く日本と、依然として比較的高い金利を維持するアメリカやヨーロッパとの「金利差」です。この差がある限り、円を売ってドルなどを買う動きは続きます。ドル/円は150円台が定着し、155円を目指す展開が予想されます。

 さらに、もしサナエノミクスが財政や金融の規律を軽視する政策だと見なされれば、日本という国への信頼が低下し、金利差以外の理由でも円が売られる可能性があります。160円を超えるような急激な円安は、輸入品の価格をさらに押し上げ、経済に悪影響を与えるリスクとして、頭の片隅に置いておく必要があります。

株式:二極化が進む市場

 株式市場全体としては、底堅く推移する可能性がありますが、業種によって明暗がはっきり分かれる「二極化」が進むでしょう。

  • 勝ち組(追い風を受ける業種):
    • 輸出関連企業: 自動車、電子部品、機械といった、海外で製品を売る企業は、円安によって利益が増えるため、大きな恩恵を受けます。
    • 不動産・建設: 金利が低いままなので、不動産業界には追い風です。また、政府が防災などの公共事業を増やすため、建設業界にも仕事が増えるでしょう。
    • 政策関連のテーマ株: 高市氏が力を入れると公言している防衛関連や、原子力発電の再稼働が期待される電力・エネルギー関連の企業も注目される可能性があります。
  • 負け組(逆風を受ける業種):
    • 銀行: 最大の負け組になる可能性があります。金利が上がらないと、銀行の主な収益源である利ザヤ(貸出金利と預金金利の差)が改善しないためです。
    • 国内向けの小売業: 物価の上昇に給料の上昇が追いつかない「実質賃金のマイナス」が続くと、人々の購買力が落ち込み、国内で商品を売る小売業やサービス業の業績に悪影響が出る可能性があります。

債券:難しい投資環境に

 国債への投資は、非常に難しい局面を迎えます。短い期間の金利は低いままですが、長い期間の金利には強い上昇圧力がかかります。つまり、長期の国債を持っていると、金利が上昇したときに価格が下落してしまうリスク(キャピタルロス)が非常に高くなります。したがって、長期国債への投資は避けた方が賢明かもしれません。

注意すべき大きなリスク

 このシナリオには、いくつかの注意すべき大きなリスクがあります。

  1. インフレが行き過ぎるリスク: もし物価上昇率が予想を超えて$3.5%や4%$といった水準まで加速した場合、世論の批判を受けて、日銀が政治的な圧力を振り切って、急激に大幅な利上げに踏み切る可能性があります。これは市場にとって最悪のサプライズとなり、株価や債券価格の暴落を引き起こすかもしれません。
  2. 円安が止まらなくなるリスク: 円安が160円を超えてさらに進むと、それは単なる経済状況の反映ではなく、日本という国への信頼が失われる「ジャパン・セリング」の始まりかもしれません。この場合、円安がさらなる円安を呼ぶ悪循環に陥る危険があります。
  3. 国債が格下げされるリスク: 政府が財政規律を無視して国債を大量に発行し続けると、海外の格付け会社が日本国債の信用格付けを引き下げる可能性があります。これは長期金利のさらなる急騰を招き、国の借金返済の負担を増大させる引き金になりかねません。

第7章 結論:未来を賭けたハイリスクな挑戦

 高市早苗新総裁の誕生は、日本の経済政策を、これまでの安定を重視した路線から、経済成長を追求するための、リスクの高い挑戦へと大きく方向転換させるものです。このレポートで分析してきたように、2025年後半から2026年にかけての日本の金利の未来は、この方針転換によって根本的に変わりました。「利上げの遅れ」と「政治の意向」が、これからの金融政策を読み解くキーワードになります。

このレポートのまとめ

 高市政権は、物価の安定という中央銀行の最も重要な使命を犠牲にしてでも、短期的な経済成長を優先するでしょう。その結果、日本銀行は本来行うべきだった緩やかな利上げを中断せざるを得なくなり、政策金利は低いまま据え置かれる可能性が高いです。この金融緩和と大規模な財政出動の組み合わせは、一時的に円安や株高をもたらすかもしれませんが、その裏では、長期金利の上昇、コントロールできないほどのインフレ、そして円への信頼低下といった深刻な副作用を伴います。

長期的な視点での問い

 この政策転換が私たちに投げかける究極の問いは、「日本は、世界の経済学の常識に逆らうことができるのか?」という点です。日本は海外に多くの資産を持ち、国債のほとんどを国内の投資家が保有しているという特殊な事情があります。この特殊性が、財政や金融の規律が緩んだときに起こりがちな危機(通貨の暴落や金利の急騰)を防ぐ防波堤になるのでしょうか。それとも、中央銀行の独立性を軽視する行為は、国の事情に関わらず、最終的には信頼の危機へとつながる普遍的な法則なのでしょうか。サナエノミクスの実験は、この問いに対する壮大な答え探しの場となるでしょう。

投資家への最後のアドバイス

 高市時代は、市場の変動が大きくなり、政府の政策一つで資産の価値が大きく変わる時代になります。かつてのような、穏やかで予測可能な日本の姿はもうありません。この新しい環境で成功するためには、経済のデータと同じくらい、あるいはそれ以上に、政治の動きに注意を払う、機敏なアプローチが不可欠です。

 私たちが最も注意深く見守るべきは、首相官邸と日本銀行の間の緊張関係です。日銀がどこまで政治的な圧力に抵抗できるのか、あるいはどこで屈するのか。その駆け引きの一つ一つが、金利の、そして市場全体の方向性を決めていきます。これからの2年間、日本の市場という大海原を航海するための羅針盤は、経済統計のレポートの中だけでなく、永田町と日本橋本石町(日銀の所在地)の間の力関係の中にこそ見出されるのです。

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