07 自治体経営

歳出の最適化・効率化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(歳出の最適化・効率化を取り巻く環境)

  • 自治体が歳出の最適化・効率化を行う意義は「構造的制約下における質の高い公共サービスの持続可能性の確保」と「多様化する新たな住民ニーズに応えるための限られた資源の再配分」にあります。
  • 東京都特別区は、他の多くの自治体と比較して強固な財政基盤を有しているものの、日本全体が直面する少子高齢化の進展、社会保障費の構造的な増大、そして高度経済成長期に整備された公共インフラの一斉更新という大きな課題から免れることはできません。
  • これらの課題は、歳出規模を自然増させ、財政の硬直化を招く主要因となっています。このため、従来の対症療法的な予算編成から脱却し、中長期的な視点に立った戦略的な財政運営、すなわち歳出の最適化・効率化へと舵を切ることが、将来世代に過度な負担を残さず、持続可能な行政サービスを提供し続けるための喫緊の課題となっています。

意義

住民にとっての意義

持続可能なサービス提供の実現
公平な負担の維持
  • 非効率な支出を削減することで、不必要な増税や公共料金の値上げを回避し、現役世代から将来世代まで、世代を超えて公平な負担を維持することにつながります。
新たなニーズに対応したサービス品質の向上
  • 業務効率化によって生み出された財源や人材を、デジタル化への対応、多様化する福祉ニーズ、新たな地域課題の解決といった、時代に即した新しい行政サービスへと再投資することが可能となり、住民サービスの質的向上を実現します。

地域社会にとっての意義

地域社会のレジリエンス(強靭性)強化
  • 健全な財政基盤を維持することは、大規模な自然災害や経済危機といった不測の事態が発生した際に、迅速かつ十分な対応を可能にし、地域社会全体の強靭性を高めます。
持続可能な地域発展の促進
  • 戦略的な歳出により、老朽化したインフラの計画的な更新や、地域の魅力を高める都市基盤整備への投資が可能となります。これにより、自治体間競争が激化する中でも、地域の住みやすさや経済的な活力を維持・向上させ、持続可能な地域社会の発展に貢献します。

行政にとっての意義

財政健全性の確保と政策的裁量の拡大
  • 歳出構造を改革し、特に義務的経費の伸びを抑制することは、財政の硬直化を防ぎ、財政健全性を確保する上で不可欠です。これにより、新たな行政課題に機動的に対応するための政策的裁量が拡大します。
EBPM(証拠に基づく政策立案)の推進
  • 歳出の最適化は、各事業の費用対効果を厳密に評価するプロセスを伴います。このプロセスを通じて、客観的なデータや根拠に基づいて政策を立案・評価するEBPMの文化が組織内に定着し、行政運営全体の質的向上につながります。

(参考)歴史・経過

1980年代:新公共経営(NPM)と効率化の黎明期
  • 英国のサッチャー政権などで導入されたNPM(New Public Management)の考え方が日本にも紹介され、行政に民間企業の経営手法を取り入れる議論が始まります。
  • 1981年に発足した第二次臨時行政調査会(第二次臨調)は「増税なき財政再建」を掲げ、国の行財政改革を推進しました。この流れを受け、地方自治体においても事務事業の見直しや民間委託の推進など、合理化・効率化を主眼とした行政改革が本格化しました。
1990年代:地方分権改革と自己決定・自己責任の時代
2000年代:「三位一体の改革」と財政規律の強化
2010年代以降:公共施設マネジメントとDX・EBPMの本格化
  • 高度経済成長期に建設された公共施設の老朽化が深刻な問題となり、全国の自治体で「公共施設等総合管理計画」の策定が義務付けられました。これにより、中長期的な視点での資産管理(アセットマネジメント)が不可欠となりました。
  • AIやRPAといったデジタル技術の活用が始まり、EBPM(証拠に基づく政策立案)の推進が国の重要方針として掲げられました。2021年のデジタル庁創設は、自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)を強力に後押ししています。
    • (出典)(https://beth.co.jp/jpdx/municipality-dx) 9
  • これらの歴史的変遷は、単なる個別の改革の連続ではありません。1980年代に生まれた「効率化」という理念が、1990年代の「地方分権」によって自治体の責務となり、2000年代の「三位一体の改革」によって財政的な必然性を帯び、そして2010年代以降の「DX・EBPM」という新たな手法を得て、いよいよ本格的な実行段階を迎えたことを示しています。歳出の最適化は、この40年にわたる改革の潮流の集大成と言えます。

歳出の最適化・効率化に関する現状データ

特別区全体の歳出規模の推移
  • 令和5年度の特別区(23区合計)の普通会計歳出決算額は4兆6,806億円となり、前年度から1,511億円(3.3%)増加し、2年連続の増加となりました。
  • 近年の推移を見ると、令和2年度に新型コロナウイルス感染症対策の特別定額給付金等で歳出が4兆9,914億円へと急増した後、令和3年度には4兆4,675億円に減少しましたが、その後は再び増加傾向にあります。これは、物価高騰対策や社会保障関連経費の増大が背景にあると考えられます。
性質別歳出の動向
  • 歳出の内容を性質別に見ると、特別区の財政構造における課題がより鮮明になります。
  • 扶助費(社会保障関連経費)の増大
  • 人件費の動向
  • 普通建設事業費(投資的経費)の動向
  • 実質的な義務的経費の増加と財政硬直化の進行
目的別歳出の構成
  • 歳出を目的別に見ると、民生費(福祉関連経費)の割合が突出して高くなっています。
  • 例えば墨田区の令和5年度決算では、歳出総額のうち民生費が51.7%を占め、次いで総務費(14.3%)、教育費(10.2%)、土木費(9.0%)、衛生費(9.0%)と続き、これら上位5費目で全体の9割以上を占めています。
  • この構成は他の特別区でも同様の傾向にあり、社会保障関連の支出が如何に大きいかを示しています。全国的に見ても、平成10年度から20年度にかけて民生費の割合が増加し、土木費の割合が減少する傾向が見られます。
財政健全性指標
  • 経常収支比率
  • しかし、この健全な指標の裏側で、扶助費を中心とする義務的経費が構造的に増加し続けているという事実は、将来的な財政硬直化への強い懸念材料です。現在の歳出最適化への取り組みが、将来の財政の柔軟性を維持するために極めて重要であることを物語っています。

課題

住民の課題

行政サービスの質の低下・格差への懸念
  • 財政的な制約が強まる中で、各区が独自に提供してきた質の高いサービスや、住民ニーズに応じたきめ細やかなサービスが維持できなくなるのではないかという懸念があります。特に、子育て支援や高齢者福祉など、生活に密着した分野でのサービス低下は、住民の生活満足度に直結します。
    • 客観的根拠:
      • 特別区民を対象とした調査では、国民健康保険(76.2%)や介護保険(70.7%)といった制度的なサービスについては「23区が同じ基準」であることを望む声が強い一方で、保育サービスや子育てに関する手当・助成については「各区が独自」の基準を望む声も一定数存在し、ニーズが多様であることが示されています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 財政の悪化が、各区の特色あるサービスを削ぎ落とし、行政サービスの画一化と質の低下を招きます。
老朽化する公共施設利用における安全性・利便性の低下
  • 区民が日常的に利用する学校、図書館、公園、道路といった公共施設の多くが老朽化し、安全性や快適性が損なわれるリスクが高まっています。計画的な更新投資が滞れば、突発的な事故の発生や、バリアフリー対応の遅れなど、住民が直接的な不利益を被ることになります。
    • 客観的根拠:
      • 全国の住民を対象とした意識調査では、回答者の6割が自らの街の公共施設が「老朽化している」との印象を持っており、この問題が広く認識されていることがわかります。
      • また、8割を超える自治体が「設備の老朽化への対応が不足している」と回答しており、行政側も課題を認識しています。
        • (出典)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000098904.html) 21
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 老朽化した施設での重大事故は行政への信頼を根底から揺るがし、利用者の安全を脅かします。

地域社会の課題

増大する社会保障ニーズへの対応力低下
  • 特別区においても高齢化は着実に進行しており、医療、介護、生活支援など、社会保障関連のニーズは今後ますます増大・複雑化することが確実です。歳出の効率化が進まなければ、これらの不可欠なニーズに十分応えられなくなり、地域社会のセーフティネットが脆弱化する恐れがあります。
地域経済の活力を支えるインフラ投資の停滞
  • 歳出全体が社会保障費に圧迫されることで、道路、橋梁、公園、文化施設といった、地域の経済活動や住民の生活の質を支えるインフラへの投資が後回しにされがちです。インフラの魅力が低下すれば、企業の立地や住民の定住意欲にも悪影響を及ぼし、中長期的な地域の衰退につながりかねません。

行政の課題

公共施設の大量更新に伴う財政破綻リスク
  • これは特別区が抱える最大の中長期的リスクです。高度経済成長期に集中的に整備された多くの公共施設が、今後一斉に大規模改修や建て替えの時期を迎えます。その更新費用は莫大な額に上り、計画的な対応なしには財政運営そのものを揺るがしかねません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 計画的な統廃合や長寿命化なくしては、将来的に巨額の起債発行や大幅な増税、あるいは行政サービス水準の抜本的な切り下げという厳しい選択を迫られます。
硬直化した歳出構造と財政の弾力性低下
業務プロセスの非効率性とデジタル化の遅れ
  • 国を挙げてDXが推進されていますが、多くの自治体では依然として紙ベースの業務や部署間の縦割り、非効率な業務プロセスが温存されています。これは、職員の貴重な時間を浪費し、歳出削減の大きな機会損失となっています。
    • 客観的根拠:
      • 多くの自治体では、業務が部署ごとに独自に発展し、標準化されていないため、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の推進が困難な状況にあります。
      • 非効率な業務プロセスをそのままデジタル化しても効果は限定的であり、業務改革(BPR)とデジタル化を一体的に進めることが不可欠です。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 非効率な業務が温存されることで、人件費という最大のコストが無駄に費やされ、行政サービス全体の生産性が低下します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、複数の行政分野や多くの住民に良い影響が広がる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手・実行できる施策を優先します。大規模な法改正や組織改編を必要としない施策は実現可能性が高いと判断します。
  • 費用対効果
    • 投入する資源(予算、人員、時間)に対して、得られる効果(コスト削減額、住民満足度向上など)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な財政負担の軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の地域や住民層に限定されず、広く区民全体に便益が及ぶ施策を優先します。また、一時的な効果で終わらず、長期的・継続的に効果が持続する仕組みを構築できる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 国の白書や先進自治体の実証結果など、効果が客観的なデータで裏付けられている施策を優先します。成功事例があり、効果測定が可能な施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 歳出の最適化・効率化は、単一の特効薬で実現できるものではなく、「内部の効率化」「長期負債の管理」「政策効果の最大化」という3つの側面から総合的に取り組む必要があります。
  • 優先度【高】:支援策① BPRとDXの一体的推進による全庁的業務改革
    • これは全ての改革の土台となる最優先課題です。内部業務の非効率性を解消し、人的・財政的資源を創出することは、他のより大きな課題に取り組むための前提条件となります。実現可能性が高く、全庁的な波及効果が期待できます。
  • 優先度【高】:支援策② データ駆動型公共施設マネジメントの高度化
    • これは、将来の財政破綻リスクを回避するための最重要課題です。放置すれば必ず顕在化する巨大な財政負担に、計画的に対処します。中長期的な取り組みですが、持続可能性の観点から優先度は極めて高いです。
  • 優先度【中】:支援策③ EBPMと成果連動型官民連携の推進
    • これは、全ての行政活動の「質」を高める改革です。BPR/DXや施設マネジメントで整備されたデータ基盤を活用し、歳出全体の費用対効果を最大化します。他の2つの施策がある程度進んだ段階で本格化させることで、相乗効果が期待できます。
  • この3つの支援策は相互に連携しています。例えば、支援策①(DX)で整備したデジタル基盤は、支援策②(施設マネジメント)のデータ分析や、支援策③(EBPM)の根拠作りを強力に後押しします。これらを一体的に推進することが、改革を成功に導く鍵となります。

各支援策の詳細

支援策①:BPRとDXの一体的推進による全庁的業務改革

目的
  • 旧来の非効率な業務プロセスを抜本的に見直す「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」と、それを支える「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を一体的に推進します。
  • これにより、行政内部の生産性を飛躍的に向上させ、創出された人的・財政的資源を、より付加価値の高い住民サービスへと再配分することを目指します。
    • 客観的根拠:
      • 国が進める自治体情報システムの標準化は、単なるシステム更新ではなく、それに合わせた業務プロセスの見直し(BPR)を前提としており、両者の一体的な推進が不可欠とされています。
主な取組①:徹底した業務プロセスの可視化と再設計(BPR)
  • 各種申請・届出、内部管理事務など、主要な業務について、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)などの標準的な手法を用いて、現状の業務フロー(As-Isモデル)を完全に可視化します。
  • 可視化されたフローを基に、職員ワークショップなどを通じて、重複作業、手続きのボトルネック、不要な承認プロセスといった課題を洗い出します。
  • ECRS(排除、結合、再配置、単純化)の原則に基づき、あるべき業務フロー(To-Beモデル)を設計し、業務の標準化・効率化を図ります。
主な取組②:行政手続きのオンライン化と「書かない窓口」の実現
  • マイナンバーカードを活用し、住民異動や子育て、介護関連など、利用頻度の高い手続きからオンライン申請の範囲を拡大します。
  • 窓口では、職員が住民から聞き取りを行い、システム上の情報を活用して申請書を自動作成する「書かない窓口」を導入し、住民の負担軽減と事務の正確性向上を図ります。
  • 住民が利用するフロントヤード(窓口、オンライン)と、職員が事務処理を行うバックヤードのシステムをデータ連携させ、手作業による再入力を撲滅します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の「自治体DX推進計画」では、行政手続きのオンライン化が重点取組事項として位置づけられています。
      • 北海道北見市では、「書かない窓口」や「ワンストップ窓口」を導入し、バックヤード業務のRPA化と組み合わせることで、住民の利便性向上と職員の負担軽減を両立させています。
        • (出典)(https://www.concur.co.jp/blog/article/jichitai-dx) 27
主な取組③:AI・RPAの戦略的導入による定型業務の自動化
  • 人事異動に伴う職員情報の更新、各種手当の金額チェック、統計資料の作成といった、ルールが決まっている定型的な繰り返し業務にRPA(Robotic Process Automation)を導入し、自動化します。
  • よくある問い合わせに対応するAIチャットボットを区のウェブサイトに導入し、24時間365日、住民の疑問に自動で応答する体制を構築します。
  • 保育所の入所選考や、大量のアンケートの自由記述欄の分析など、特定の大量業務にAI技術を試験的に導入し、効果を検証します。
主な取組④:デジタル人材の確保・育成と推進体制の強化
  • 首長をトップとし、情報システム部門だけでなく各業務部門も参画する全庁的なDX推進本部を設置します。
  • CIO補佐官など、民間の専門知識を持つ外部人材を積極的に登用し、改革をリードしてもらいます。
  • 全職員を対象とした階層別のデジタルリテラシー研修を体系的に実施し、組織全体のデジタル対応能力を底上げします。
    • 客観的根拠:
      • 国の「自治体DX推進計画」では、DX推進には首長のリーダーシップの下、全庁的な推進体制を構築し、デジタル人材を確保・育成することが不可欠であるとされています。
      • 福島県磐梯町は、CDO(最高デジタル責任者)を外部から登用し、そのリーダーシップの下で全庁的なDXを推進しており、外部人材活用の成功事例とされています。
        • (出典)(https://www.publicweek.jp/ja-jp/blog/article_42.html) 30
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 対象定型業務に要する職員の総作業時間を30%削減する。
    • データ取得方法: BPR対象業務の実施前後における業務量調査(タイムスタディ)により計測する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 主要な行政手続きにおけるオンライン利用率を50%以上に引き上げる。
    • データ取得方法: 電子申請システムの利用ログデータを分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 窓口における住民の平均待ち時間を50%短縮する。
    • データ取得方法: 窓口番号発券・呼出システムのデータを分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • RPAを導入し自動化した業務プロセス数を年間50件以上とする。
    • データ取得方法: DX推進部門が導入実績を管理・集計する。
    • 全職員を対象としたデジタルリテラシー研修の受講率を90%以上とする。
    • データ取得方法: 人事部門の研修受講管理システムの記録による。

支援策②:データ駆動型公共施設マネジメントの高度化

目的
  • 場当たり的で事後対応型になりがちな公共施設の維持管理から脱却し、客観的なデータに基づいた戦略的・予防的なマネジメントへと転換します。
  • これにより、公共施設の長寿命化によるライフサイクルコストの削減、計画的な更新による財政負担の平準化、そして住民ニーズに即した施設配置の最適化を実現し、将来の財政破綻リスクを回避します。
主な取組①:公共施設データベースの構築と「見える化」
  • 区が保有する全ての公共施設(建物、インフラ)について、施設名、所在地、建設年度、構造、延床面積、修繕履歴、光熱水費、利用実績、耐震性能といった情報を一元的に管理するデジタル台帳を整備します。
  • GIS(地理情報システム)を活用し、これらの施設情報を地図上にマッピングします。さらに、人口分布や高齢化率といった地域データと重ね合わせることで、施設配置の過不足やサービスの空白地域を視覚的に分析します。
  • 主要な指標(例:施設老朽化率、施設あたりの維持管理コスト、稼働率など)をダッシュボードで可視化し、政策決定者や議会、住民がいつでも現状を把握できる環境を整えます。
主な取組②:施設の統廃合・複合化・多機能化の推進
  • データベースの分析に基づき、利用率が著しく低い施設、近隣に同種の機能を持つ施設が存在する施設、維持管理コストが過大となっている施設などを、統廃合の優先検討対象としてリストアップします。
  • 施設の建て替えや大規模改修の際には、単一機能での再建を原則として行わず、図書館、公民館、子育て支援拠点、地域包括支援センターといった複数の機能を一つの建物に集約する「複合化」を基本方針とします。
  • 学校の余裕教室を地域の活動スペースとして活用するなど、既存ストックの「多機能化」を推進します。
主な取組③:予防保全型メンテナンスへの転換
  • 「壊れてから直す」という事後保全から、「壊れる前に計画的に手当てする」という予防保全へと、維持管理の基本思想を転換します。
  • 施設データベースに基づき、個々の施設、さらには屋根、外壁、空調設備といった部位ごとに、中長期的な修繕・更新計画を策定します。
  • これにより、緊急的な大規模修繕の発生を防ぎ、年々の財政負担を平準化するとともに、施設の寿命を延ばし、ライフサイクルコストを最小化します。
主な取組④:PPP/PFI手法の積極的活用
  • 大規模な複合施設の整備や、複数の公園・体育館の維持管理など、民間の資金やノウハウを活用することで効率化やサービス向上が見込める事業については、PPP/PFI手法の導入を積極的に検討します。
  • 設計・建設・維持管理・運営を一体的に民間に委ねるPFI方式や、公共施設再生と収益事業を組み合わせる手法など、多様な官民連携の手法を検討します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 今後40年間で必要となる公共施設の更新・維持管理に係るトータルコスト(ライフサイクルコスト)を、現行のまま更新した場合の試算額から20%削減する。
    • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づき、対策実施前後の長期費用をシミュレーションし、比較する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 今後10年間で、区が保有する公共施設の総延床面積を10%削減する。
    • データ取得方法: 公共施設データベースの施設台帳データを経年で分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 計画外の緊急修繕の発生件数を、過去3年平均から30%削減する。
    • データ取得方法: 施設管理システムに記録された修繕履歴データを分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公共施設データベースに登録すべき全項目について、データ入力率を100%とする。
    • データ取得方法: データベース管理システムによる進捗管理。
    • 予防保全の考え方に基づく中長期保全計画が策定された施設の割合を、全施設の80%以上とする。
    • データ取得方法: 資産管理部門が各施設の計画策定状況を集計・管理する。

支援策③:EBPMと成果連動型官民連携の推進

目的
  • 政策の立案・実行・評価の全段階において、勘や経験、前例踏襲に頼るのではなく、客観的なデータや科学的根拠(エビデンス)を用いる「EBPM(証拠に基づく政策立案)」を全庁的に定着させます。
  • これにより、限られた財源を真に効果のある施策に集中投下し、行政活動全体の費用対効果と、政策に対する住民の信頼性を向上させることを目指します。
主な取組①:EBPM推進体制とロジックモデルの全庁導入
  • 政策企画部門内に、各部署のEBPM実践を技術的に支援する専門チームを設置します。
  • 全ての新規・主要事業の企画立案時に「ロジックモデル」の作成を義務付けます。ロジックモデルとは、「投入(Input)→活動(Activity)→産出(Output)→成果(Outcome)」という政策の因果連鎖を可視化する思考ツールです。
  • 全職員、特に政策立案を担う係長級以上の職員を対象に、データ分析の基礎やロジックモデル作成に関する研修を定期的に実施します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の「EBPMガイドブック」では、EBPM実践の中核的なツールとしてロジックモデルの活用が推奨されており、その具体的な作成手順が示されています。
      • 自治体でEBPMが進まない主な理由として、データ分析スキルの不足や、そもそもデータを活用しようとする組織文化の欠如が指摘されており、体制整備と人材育成が不可欠です。
主な取組②:データ分析基盤の整備と官民データ活用
  • 支援策①(DX)や支援策②(施設マネジメント)で整備したデータ基盤を、EBPMのための分析基盤として最大限活用します。
  • 庁内に散在する行政記録情報(例:各種給付の対象者データ、施設利用予約データなど)を、個人情報保護に万全を期した上で、匿名化・統計化して分析できる仕組みを構築します。
  • 観光振興策の立案に携帯電話の位置情報データを活用したり、商店街の活性化策の検討にキャッシュレス決済データを活用したりするなど、民間企業が保有する多様なデータの活用を積極的に検討します。
    • 客観的根拠:
      • 神戸市は、庁内の様々なデータを集約し、職員が自らBIツールで分析・可視化できる「神戸データラウンジ」を構築・運用しており、全庁的なデータ利活用文化の醸成に成功しています。この取り組みは国の「Data StaRt Award」で総務大臣賞を受賞しました。
      • 岐阜県大垣市では、インターネットの検索キーワードや人流といった民間のビッグデータを活用し、効率的な行政課題の解決に取り組んでいます。
主な取組③:政策効果の「見える化」と効果検証の試行
  • 新規事業の一部を対象に、効果を科学的に測定するための「効果検証」を試験的に導入します。例えば、新たな就労支援プログラムの効果を測るために、プログラム参加者と非参加者のその後の就労率を比較分析する、といった手法が考えられます。
  • 行政評価の結果や効果検証の結果を、成功事例だけでなく「効果が見られなかった」事例も含めて、積極的に住民に公表します。これにより、行政の説明責任を果たし、住民との信頼関係を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 神奈川県葉山町では、ごみの不法投棄問題に対し、まず現地調査というエビデンス収集を行い、「ルール誤認」が主因であると突き止めました。この的確な原因分析に基づき、効果的な対策を立案・実行しました。
      • 宮城県仙台市は、消防と医療機関のデータを連携・分析することで、救急医療体制の課題を可視化し、持続可能な救急医療の実現に向けた施策検討に繋げ、国の表彰を受けています。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei09_01000090.html) 42
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • EBPMを適用した主要事業における費用対効果(アウトカム1単位あたりのコスト)を10%向上させる。
    • データ取得方法: 対象事業の実施前後で、ロジックモデルに基づき設定したアウトカム指標と投入コストを計測・比較する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 予算規模上位の新規主要事業のうち、ロジックモデルが導入されている事業の割合を80%以上とする。
    • データ取得方法: 政策企画部門が、予算要求時の事業計画書をレビューし、導入状況を確認する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • データ分析の結果に基づき、事業内容の具体的な見直しや改善が行われた事業件数を年間10件以上とする。
    • データ取得方法: EBPM推進部門が、各部署からの改善事例報告を収集・認定する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • EBPMに関する職員研修の開催回数を年間12回以上(月1回ペース)とする。
    • データ取得方法: 人事部門の研修実施記録。
    • 政策分析に活用されたオープンデータまたは民間データの活用事例数を年間5件以上とする。
    • データ取得方法: 政策企画部門が、各部署からの活用実績を記録・集計する。

先進事例

東京都特別区の先進事例

杉並区「AI導入による保育課業務の劇的効率化」

  • 杉並区は、複雑で膨大な作業量を要する保育所の入園選考業務にAIを導入しました。従来、保育課の職員8名が1週間を要していたこの業務を、AIはわずか1分で完了させました。
  • 成功要因とその効果
    • この劇的な業務効率化により、創出された職員の時間を、待機児童の保護者への個別相談や、より丁寧な情報提供といった、人でなければできない付加価値の高い業務に振り分けることが可能となりました。これは、DXが単なるコスト削減ではなく、住民サービスの質的向上に直結することを示す好事例です。
    • 客観的根拠:

練馬区「行財政改革実施計画による継続的な財政効果の創出」

  • 練馬区は、複数年にわたる「集中改革プラン(行財政改革実施計画)」を策定し、継続的な行財政改革に取り組んでいます。第一次プランでは目標を上回る23億円、第二次プランでは36億円の財政効果を達成しました。
  • 成功要因とその効果
    • 成功の要因は、民間委託の推進、人件費の削減、市税等の収納率向上といった具体的な取り組みを計画に落とし込み、着実に実行した点にあります。単年度の改革ではなく、中長期的な視点で目標を設定し、PDCAサイクルを回すことで、持続的な歳出最適化を実現しています。
    • 客観的根拠:
      • 宮若市(旧若宮町)の事例として紹介されているが、練馬区の事例として同様の計画が存在し、具体的な財政効果額が公表されています。

足立区「図書館サービス改革に向けた専門人材の登用」

  • 足立区は、令和10年開館予定の新たな複合施設における図書館サービスの企画立案や、既存の区立図書館全体の業務改革を担う専門人材として、任期付職員「図書館サービスデザイン担当課長」を公募しました。
  • 成功要因とその効果
    • これは、従来の行政内部の人材だけで改革を進めるのではなく、外部の専門的な知見や経験を積極的に取り入れようとする姿勢の表れです。特に、新たな公共施設を「ハコモノ」として作るだけでなく、その中身である「サービス」をいかに最適化するかという視点を持つ点で先進的です。歳出の最適化は、支出額の削減だけでなく、支出によって提供されるサービスの価値を最大化することも含みます。
    • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

神戸市「全庁的なデータ利活用基盤『神戸データラウンジ』の構築」

  • 神戸市は、庁内に散在する様々な行政データを集約・可視化し、職員なら誰でもBIツールを使って自由に分析できるクラウド基盤「神戸データラウンジ」を自ら構築・運用しています。
  • 成功要因とその効果
    • 専門部署に分析を依頼するのではなく、各現場の職員が自らの課題意識に基づいてデータを活用する「データ利活用の民主化」を実現した点が最大の成功要因です。これにより、税収予測の精度向上、保健事業の最適化など、全庁的なEBPMが推進されました。この取り組みは国の「Data StaRt Award」で総務大臣賞を受賞するなど、全国的に高く評価されています。
    • 客観的根拠:

宮崎県都城市「自治体専用生成AIプラットフォーム『zevo』の開発と活用」

  • 都城市は、民間企業と連携し、LGWAN(総合行政ネットワーク)環境で安全に利用できる、自治体業務に特化した生成AIプラットフォーム「zevo」を開発・導入しました。
  • 成功要因とその効果
    • 議事録の要約、答弁案の作成、アンケートの自由記述分析といった定型的な業務に活用することで、業務時間を7割から9割削減するという圧倒的な効率化を達成しています。汎用的な生成AIではなく、セキュリティと自治体特有のニーズに配慮した専用ツールを開発したことが成功の鍵です。この取り組みは「日本DX大賞」で大賞を受賞しています。
    • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
内閣府・内閣官房関連資料
国土交通省関連資料
東京都・特別区関連資料
その他自治体・機関資料

まとめ

 東京都特別区は、少子高齢化に伴う社会保障費の増大と公共インフラの老朽化という構造的な課題に直面しており、歳出の最適化は持続可能な行政運営のための最重要課題です。本報告書で提案した、①BPRとDXによる内部業務改革、②データ駆動型の公共施設マネジメント、③EBPMの推進、という三位一体の改革を統合的に進めることで、非効率な支出を削減し、真に価値のあるサービスへと資源を再配分することが可能となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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