07 自治体経営

歳入確保の強化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(歳入確保を取り巻く環境)

  • 自治体が歳入確保の強化を行う意義は「質の高い行政サービスを安定的・継続的に提供するための財政基盤の確立」と「社会経済環境の変化に対応しうる持続可能な行政運営の実現」にあります。
  • 東京都特別区は、堅調な企業収益等を背景に、歳入の根幹である特別区税や特別区財政調整交付金が近年増加傾向にあり、一見すると安定した財政状況にあるように見えます。しかし、その歳入構造は景気変動の影響を極めて受けやすく、一度景気が後退すれば急激に財政状況が悪化する脆弱性を内包しています。1
  • さらに近年、ふるさと納税制度による税源の流出が加速度的に拡大しており、特別区の財政に深刻な影響を及ぼしています。これは、住民が享受する行政サービスとその負担の公平性を根本から揺るがす構造的な問題です。
  • このような状況下で、従来の税収に依存する受け身の歳入管理から、あらゆる財源を積極的に確保・創出していく「攻めの歳入確保」へと転換することは、もはや選択肢ではなく、持続可能な区政運営を実現するための喫緊の経営課題となっています。3

意義

住民にとっての意義

安定した行政サービスの享受
  • 景気動向に左右されない強固な財政基盤を確立することで、福祉、教育、防災といった区民生活に不可欠な行政サービスを安定的・継続的に提供することが可能になります。
新たな行政需要への的確な対応
  • 確保・創出した財源を、高齢化の進展に伴う医療・介護ニーズの増大、デジタルデバイドの解消、子育て支援の拡充など、時代とともに変化する新たな行政需要へ的確に振り向けることができます。
受益と負担の公平性確保
  • 本来納付されるべき税や使用料・手数料の徴収を徹底することは、一部の滞納者のために大多数の納税者が不利益を被る状況を是正し、行政サービスを享受する者がその費用を公平に負担するという、地方自治の根幹をなす原則を守ることにつながります。

地域社会にとっての意義

持続可能なまちづくりの推進
  • 安定した財源は、公共施設の計画的な更新や、脱炭素社会の実現に向けた環境対策、魅力ある地域コミュニティの活性化など、将来を見据えた持続可能なまちづくりへの投資を可能にします。
地域経済の活性化
  • 未利用の区有地を事業者に貸し付けたり、公共施設にネーミングライツを導入したりするなど、保有資産を戦略的に活用することで、新たなビジネス機会を創出し、地域経済の活性化に貢献できます。

行政にとっての意義

財政の健全性と自律性の確保
  • 多様な歳入源を確保することで、特別区債(借金)への依存度を低減し、国や都の動向に過度に左右されない、自律的で計画的な財政運営を実現できます。3
中長期的視点に立った政策立案
  • 目先の財源不足に追われることなく、中長期的な視点に立った戦略的な政策立案・実施が可能となり、場当たり的な対応から脱却した質の高い行政経営が実現できます。

(参考)歴史・経過

昭和・戦後復興期
  • 1947年(昭和22年)の地方自治法施行により、特別区は一般市と同格の基礎的自治体として発足しましたが、多くの事務権限が東京都に残され、財政的にも自律性が低い状況でした。
昭和50年代
  • 1975年(昭和50年)の都区制度改革により、区長公選制が復活し、職員の人事権が区に確立されるなど、自治権の拡充が進みました。財政面でも、都の恣意性を排し、客観的な基準で交付額を算定する仕組みが導入され始めました。
平成12年(2000年)地方分権改革
  • 地方分権一括法の施行に伴う地方自治法の改正により、特別区は「基礎的な地方公共団体」として明確に位置づけられました。これに伴い、清掃事業の移管などが行われ、都区財政調整制度も大幅に改革され、特別区の財源保障と自主性が強化されました。
平成19年(2007年)制度改正
  • 三位一体の改革など国の制度改正に対応するため、調整税源の配分割合が、特別区側に52%から55%へと引き上げられました。これは、都と区の事務分担の変化を財源配分に反映させるための重要な調整でした。
平成20年代以降
  • 2008年(平成20年)に創設されたふるさと納税制度が、当初の理念とは裏腹に、自治体間の過度な返礼品競争を招き、特に税源の豊かな特別区から地方への一方的な財源流出を引き起こす制度として定着しました。この影響は年々深刻化し、特別区の財政運営における最大の懸案事項の一つとなっています。4

歳入確保に関する現状データ

歳入構造と推移
  • 歳入総額と歳入構造
    • 令和4年度の特別区の普通会計決算における歳入総額は4兆7,466億円に上ります。歳入の根幹をなすのは、特別区税(25.2%)、特別区財政調整交付金(24.9%)、国庫支出金(15.9%)であり、これらで全体の約3分の2を占めています。6
    • この構造は、地方交付税が交付されない特別区の特殊性を示しており、景気変動に直接的な影響を受ける特別区税と、その影響を大きく受ける調整交付金への依存度が高いことを意味します。6
  • 特別区税の推移
    • 特別区税は、令和4年度決算で1兆1,964億円となり、12年連続で増加しました。これは主に、堅調な経済状況を背景とした特別区民税所得割の増加によるものです。6
    • しかし、その内訳を見ると法人関連の税収(法人住民税、固定資産税等)の割合が高く、企業の業績動向に歳入が大きく左右されるリスクを常に抱えています。
  • 特別区財政調整交付金の推移
    • 都区間の財源調整を行うこの交付金も、令和4年度には過去最高額となり、特別区の財政を下支えしています。令和6年度の交付金総額は1兆2,160億円(対前年度比1.8%増)となる見込みです。
    • しかし、この交付金の原資も景気変動の影響を受けやすい固定資産税や市町村民税法人分であるため、区税と同様の脆弱性を持ち合わせています。また、配分割合(現在は55.1%)は常に都区間の協議の対象であり、政治的な要因にも影響されます。6
財政健全性指標の動向
  • 経常収支比率
    • 人件費や扶助費といった義務的な経費が、税収などの経常的な収入に占める割合を示す経常収支比率は、令和4年度の特別区平均で76.7%と、財政の弾力性がある水準を維持しています。6
    • しかし、過去の景気後退期にはこの比率が急激に悪化した経緯があり、現在の良好な数値が将来も続く保証はありません。特に法人二税の税収動向に大きく左右される構造的特徴があります。6
  • 財政力指数
    • 自治体の財政力を示す財政力指数は、特別区間で極めて大きな格差が存在します。令和4年度のデータでは、港区が1.20と不交付団体である一方、足立区は0.38、荒川区は0.35と、同じ特別区内でありながら4倍近い開きがあります。
    • この著しい税源の偏在こそが、都区財政調整制度の存在意義ですが、同時に、歳入確保策を検討する上で、各区が置かれた財政基盤の圧倒的な違いを考慮する必要があることを示唆しています。9
  • 積立金(基金)残高
    • 将来の財政需要や景気後退に備えるための貯金である基金の残高は、令和4年度末で3兆6,912億円に達し、10年連続で増加しています。これは、景気変動に対する緩衝材として、各区が堅実な財政運営に努めてきた結果です。6
    • しかし、後述するふるさと納税による財源流出の規模を考えると、この「防波堤」がいつまで持ちこたえられるか、予断を許さない状況です。
ふるさと納税制度による影響
  • 減収額の爆発的増加
    • 特別区におけるふるさと納税制度による住民税の減収額は、制度が本格化した平成27年度の約24億円から、令和6年度には約933億円へと、わずか9年間で約39倍にまで膨れ上がっています。
    • 平成27年度からの累計減収額は、約4,500億円を超えており、これはもはや看過できない規模の財源流出です。
    • 個別に見ても、世田谷区では令和5年度に約99億円、杉並区では令和6年度に約53.3億円10もの減収が見込まれており、一つの区だけで学校建設費や大規模な福祉施設の運営費に相当する額が毎年失われている計算になります。
  • 不合理な税制改正全体の影響
    • このふるさと納税による減収に加え、法人住民税の一部国税化など、国による一方的な税制改正の影響を合わせると、令和6年度だけで特別区全体で約3,200億円もの財源が失われる見込みです。平成27年度からの累計影響額は約1兆9,000億円に達します。
    • これは、特別区の行政サービスを支えるべき貴重な財源が、制度的に奪われ続けていることを示しており、歳入確保における最大の外部からの脅威となっています。

課題

住民の課題

行政サービスの低下リスク
  • ふるさと納税制度による毎年1,000億円近い規模の財源流出は、本来、区民のために使われるべき財源が失われていることを意味します。この状況が続けば、図書館の開館時間短縮、公園の維持管理の質の低下、あるいは待機児童対策や高齢者福祉サービスの拡充が困難になるなど、区民の日常生活に直結するサービスの低下を招く恐れがあります。

地域社会の課題

受益と負担の乖離による公平性の毀損
  • 住民は、居住する区が提供する行政サービス(ごみ収集、道路整備、学校教育など)を日々享受しています。その費用は、住民が納める住民税によって賄われるのが地方税の基本原則(受益と負担の関係)です。しかし、ふるさと納税制度は、居住地(受益地)に税金を納めず、返礼品を提供する他の自治体に税金を「寄附」することを可能にします。これにより、受益と負担の関係が完全に断ち切られ、制度の公平性が著しく損なわれています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 真面目に納税している住民の不公平感が増大し、納税意欲の減退や税制度そのものへの信頼が失われます。

行政の課題

景気変動に脆弱な歳入構造
  • 特別区の歳入は、地方交付税という安定化装置を持たず、景気動向に敏感な法人関連税収への依存度が高いという構造的な脆弱性を抱えています。好景気時には税収が大きく伸びる一方で、景気後退期には予測を大幅に下回る税収減に見舞われるリスクが常に存在します。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 景気後退期に急激な財政悪化を招き、計画的な事業の執行が困難になるとともに、財政調整基金の枯渇リスクが高まります。
ふるさと納税制度による財源の構造的流出
  • ふるさと納税による財源流出は、一時的な現象ではなく、制度として定着した構造的な問題です。減収額は毎年拡大を続けており、各区の行財政改革による経費削減努力をはるかに上回る規模の財源が、一方的に失われ続けています。
「稼ぐ力」の不足と資産活用の遅れ
  • 多くの自治体では、伝統的に税や使用料を「徴収する」という発想が強く、区が保有する資産(土地、建物、公共空間、情報など)を「活用して収益を生み出す」という経営的な視点が不足しています。未利用・低利用の公有財産や、広告媒体としての価値を持つ資産が十分に活用されておらず、歳入確保の機会を逸しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 税収への過度な依存から脱却できず、財源の多様化が進まないため、財政構造の脆弱性が改善されません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手・実現できる施策を優先します。新たな条例制定や大規模な組織改編を必要としない施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して、得られる歳入増加効果や歳出削減効果が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、長期的な便益も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の住民層や地域だけでなく、広く区民に便益が及ぶ公平な施策を優先します。また、一度きりの効果で終わらず、長期的・継続的に歳入確保に貢献する持続可能な施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府の報告書や他自治体の成功事例など、効果が客観的なデータで裏付けられている施策を優先します。モデルとなる事例があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 歳入確保の取り組みは、いわば「守り」「最適化」「攻め」の三層構造で総合的に推進する必要があります。
  • まず、最優先で取り組むべきは**「守り」としての「支援策①:既存財源の徴収・管理強化」**です。これは、公平性の確保という行政の根幹に関わる取り組みであり、着実に成果を上げられる実現可能性の高い施策です。
  • 次に、**「最適化」として「支援策②:資産経営(アセットマネジメント)の戦略的推進」**を高い優先度で位置づけます。これは、既存の資産の価値を最大化する取り組みであり、持続的な歳入増につながるポテンシャルを秘めています。
  • そして、これらと並行して、**「攻め」の姿勢で「支援策③:新たな財源創出と『稼ぐ力』の向上」**に挑戦します。ふるさと納税への戦略的な対応やクラウドファンディングの活用は、これまでの行政にはなかった新たな発想と専門性を要しますが、財源流出という最大の課題に直接対抗し、新たな歳入の柱を築く上で不可欠です。
  • これら3つの支援策は、相互補完的な関係にあり、同時に進めることで相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:既存財源の徴収・管理強化

目的
  • 区税や各種保険料、使用料などの既存の歳入源について、徴収率の向上と滞納の圧縮を徹底し、歳入の最大化と納税者・負担者間の公平性を確保することを目指します。
    • 客観的根拠
      • 特別区の区税徴収率は令和4年度で98.1%と高い水準にありますが、100%には至っていません。特に累積滞納額は依然として存在しており、徴収強化の余地は残されています。6
主な取組①:滞納整理の高度化
  • AIを活用した滞納予測モデルを導入し、過去の膨大な滞納データを分析させることで、滞納リスクの高い個人・法人を早期に特定し、予防的なアプローチ(早期の納付相談案内など)を実施します。
  • 高額・悪質な滞納案件については、顧問弁護士等との連携を強化し、訴訟や不動産の公売といった法的措置を迅速かつ的確に実行する体制を構築します。11
  • 大阪府堺市などの事例を参考に、民間の債権回収会社(サービサー)のノウハウを活用した電話などによる納付督促を導入し、職員の専門性をより高度な業務に集中させます。4
主な取組②:課税客体の捕捉徹底
  • GIS(地理情報システム)や航空写真、固定資産税台帳、法人登記情報などを重層的に分析し、未申告の家屋(増改築分など)や事業用償却資産、屋外広告物などを的確に把握し、課税漏れを防止します。
  • 建築指導課、商工課、保健所など、事業者の新規設立や施設の設置に関わる全部署の情報を税務課に即時連携するデータ連携基盤を構築し、新規課税客体を迅速に捕捉します。
主な取組③:納付チャネルの多様化と利便性向上
  • 全ての税・保険料・手数料について、クレジットカード決済、スマートフォン決済アプリ(PayPay, LINE Pay等)での納付を可能とし、24時間365日、どこからでも納付できる環境を整備します。
  • 口座振替の利便性を改めて周知するとともに、新規加入者向けのキャンペーンを実施するなど、キャッシュレス納付への移行を促進します。
    • 客観的根拠
      • 先進自治体では、収納率向上のための具体的な施策として、キャッシュレス決済の拡充・多様化を挙げており、納付者の利便性向上が滞納防止に有効であると認識されています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特別区税の収納率(現年課税分と滞納繰越分の合計): 99.0%を達成する
      • データ取得方法: 総務省「地方財政状況調査」の決算統計データ
  • KSI(成功要因指標)
    • 滞納繰越額の圧縮率: 対前年度比10%削減
      • データ取得方法: 各区税務主管課が管理する滞納整理台帳
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 不納欠損額: 対前年度比5%削減
      • データ取得方法: 各区会計管理部門の決算データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • キャッシュレス納付の利用率: 全納付件数の30%以上
      • データ取得方法: 各決済事業者からの利用実績データ及び会計システムのデータ

支援策②:資産経営(アセットマネジメント)の戦略的推進

目的
  • 区が保有する全ての公有財産(土地・建物)を、単なる「行政コスト」ではなく「経営資源」と捉え直し、その価値を最大限に引き出すことで、新たな財源を創出し、持続可能な行政運営に貢献することを目指します。
    • 客観的根拠
      • 大阪府では、府有財産の自主点検調査を通じて活用可能な財産を掘り起こし、売却や貸付による歳入確保を推進しています。こうした体系的な取り組みが、埋もれた資産価値の顕在化に繋がります。
主な取組①:全庁的な公有財産データベースの構築と評価
  • 区が保有する全ての土地・建物について、所在地、面積、簿価、築年数、耐用年数、維持管理コスト、現在の利用状況、光熱水費、法的制約等の情報を一元的に管理する「公有財産データベース」を構築します。
  • このデータベースに基づき、各資産を「行政目的での利用価値」「財産的価値」「地域貢献価値」等の多角的な視点から評価し、「継続利用」「機能転換・複合化」「売却・貸付」といった方針を客観的に判断する仕組みを確立します。
主な取組②:未利用・低利用資産の売却・貸付の積極化
  • 用途が廃止された施設や、将来的な利用計画のない土地(事業残地など)について、積極的に一般競争入札による売却を進め、一時的な歳入を確保します。
  • 直ちに売却が困難な資産については、民間事業者への定期借地や事業用借地としての貸付を推進し、継続的な賃料収入を確保します。その際、民間事業者が活用しやすいように、公募条件の緩和やサウンディング型市場調査を積極的に実施します。
    • 客観的根拠
      • 名古屋市では、行財政改革プランにおいて未利用土地の売却・貸付を歳入確保策の柱の一つとして掲げ、計画的な財源確保に努めています。
主な取組③:ネーミングライツ(命名権)及び広告事業の拡大
  • 区立のホール、スポーツ施設、公園、橋梁などを対象に、ネーミングライツ・パートナーを積極的に募集します。導入にあたっては、ガイドラインを整備し、透明性の高いプロセスを確保します。
  • 区の公式ウェブサイト、広報紙、各種送付用封筒、公共施設の壁面やフェンス、公用車など、あらゆる区有資産を広告媒体としてリストアップし、広告代理店等と連携して体系的な広告事業を展開します。9
    • 客観的根拠
      • 練馬区では、区の刊行物や区立施設の壁面などを活用した有料広告の拡充を、区政改革計画における自主財源確保策として明確に位置づけています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 資産経営による新規経常収入額: 年間3億円以上(区の規模に応じて設定)
      • データ取得方法: 財産管理主管課及び財政課の歳入決算データ
  • KSI(成功要因指標)
    • 売却・貸付が完了した未利用・低利用資産の面積: 年間5,000平方メートル以上
      • データ取得方法: 財産管理主管課の契約台帳
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ネーミングライツ及び広告事業による収入額: 年間5,000万円以上
      • データ取得方法: 歳入決算データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • サウンディング型市場調査の実施件数: 年間5件以上
      • データ取得方法: 財産管理主管課及び事業所管課の事業実施記録

支援策③:新たな財源創出と「稼ぐ力」の向上

目的
  • ふるさと納税制度による財源流出という構造的な課題に正面から向き合うとともに、クラウドファンディングやデジタル広告といった新たな手法を積極的に導入し、従来の枠組みにとらわれない多様な歳入源を確立することで、行政の「稼ぐ力」を向上させることを目指します。
主な取組①:ふるさと納税の戦略的活用
  • 区の置かれた状況や理念に基づき、以下のいずれか、あるいは両方を組み合わせた戦略を明確に選択し、実行します。
    • (戦略A)理念・共感追求型(杉並区モデル)
      • 過度な返礼品競争とは一線を画し、「寄附文化の醸成」を前面に打ち出します。寄附金の使い道を「NPO支援」「みどりの保全」「子育て支援」など、社会貢献性の高い具体的な事業に限定し、共感を基にした寄附を募ります。返礼品は、障害者施設の製品などに特化し、寄附行為が就労支援にも繋がるストーリーを構築します。
    • (戦略B)歳入回復・地域振興型(泉佐野市モデル)
      • 財源流出が特に深刻な区において、流出額の一部を「取り戻す」ことを主目的とします。区内事業者と連携し、魅力的な地場産品やサービスを返礼品として開発・提供します。これにより、税収の回復を図ると同時に、区内産業の振興とPRにも繋げます。徹底したマーケティングと費用対効果の分析が不可欠です。
    • 客観的根拠
      • 大阪府泉佐野市は、戦略的な返礼品開発とマーケティングにより、令和3年度に約113億円、令和4年度に約137億円の寄附を集め、全国トップクラスの実績を上げています。
      • 杉並区は、返礼品を障害者施設の製品に特化するなど、理念を重視した独自の取り組みを展開しています。
主な取組②:ガバメントクラウドファンディング(GCF)の推進
  • 「子ども食堂の運営支援」「公園の遊具リニューアル」「地域の文化イベント開催」など、住民の関心が高く、成果が目に見えやすいプロジェクトを対象に、GCFを積極的に活用します。
  • 事業の目的や必要性、寄附金の具体的な使途を分かりやすく示す特設ページを作成し、広報紙やSNSを通じて広く寄附を呼びかけます。
    • 客観的根拠
      • 品川区は、「子どもの食の支援」をテーマにしたGCFで、目標額500万円に対し、2,059万円(達成率411.9%)もの寄附を集めることに成功しました。これは、共感を呼ぶテーマ設定と透明性の高い情報公開が成功の鍵であることを示しています。
主な取組③:広告事業の専門化とデジタル化
  • 単に広告枠を販売する受け身の姿勢から脱却し、福岡市のように専門的なマーケティング視点を導入します。
  • 区のウェブサイトやSNSアカウント、公共施設で提供するフリーWi-Fiのログイン画面などを活用したデジタル広告メニューを開発します。
  • 広告収入の最大化を目的として、民間の広告代理店やコンサルティング会社と連携し、広告媒体の価値評価、効果的な広告戦略の立案、営業活動の代行などを委託することも検討します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • ふるさと納税による寄附受入額: 住民税流出額の20%相当額を達成する(※区の戦略により目標値は変動)
      • データ取得方法: 各ふるさと納税ポータルサイトからの実績報告、総務省「ふるさと納税に関する現況調査」
  • KSI(成功要因指標)
    • ガバメントクラウドファンディングのプロジェクト平均達成率: 150%以上
      • データ取得方法: 各GCFプラットフォーム上のプロジェクト実績データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ふるさと納税の寄附件数(区外在住者から): 対前年度比30%増
      • データ取得方法: 各ふるさと納税ポータルサイトからの実績報告データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 新規ガバメントクラウドファンディングの立ち上げプロジェクト数: 年間3件以上
      • データ取得方法: 政策企画主管課等による事業管理記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

品川区「ガバメントクラウドファンディングによる子どもの食支援」

  • 品川区は、区内の子ども食堂の運営支援や、ひとり親家庭等への食品配送を目的としたガバメントクラウドファンディング(GCF)を実施しました。目標金額を500万円に設定したところ、最終的に2,059万円を超える寄附が集まり、達成率は411.9%に達しました。
  • 成功要因
    • 「子どもの食」という、多くの住民が共感しやすい身近で具体的なテーマを設定したこと。
    • 寄附金の使途を「食品配送費用80.6%」「子ども食堂支援4.3%」などと詳細に公開し、透明性を確保したこと。
    • これにより、寄附者は自分の寄附がどのように役立つかを明確にイメージでき、支援の輪が広がりました。この成功は、行政課題の解決に住民参加を促す新たな財源確保の手法として、大きな可能性を示しています。
    • 客観的根拠

杉並区「寄附文化の醸成を目指すふるさと納税」

  • 杉並区は、令和6年度に約53.3億円もの住民税が流出する深刻な状況に直面する中、安易な返礼品競争に陥ることなく、「寄附文化の醸成」という理念を掲げた独自のふるさと納税戦略を展開しています。10
  • 寄附の使い道をNPO支援やみどりの保全などに限定し、返礼品は全て区内の障害者施設で製作された製品とすることで、寄附行為そのものに社会的な価値を持たせています。
  • 成功要因
    • 「モノ」ではなく「コト(社会貢献)」を価値として提供することで、他の自治体との差別化を図っていること。
    • 返礼品を通じて障害者の就労支援に繋がるという明確なストーリーを打ち出し、寄附者の共感を呼んでいること。
    • これは、財源流出という逆境を、区の福祉政策を推進し、シティプロモーションに繋げる好機へと転換する、巧みな戦略と言えます。
    • 客観的根拠

足立区「イベント協賛と出展料による歳入確保」

  • 足立区は、「足立の花火」や「区民まつり」といった区を代表する大規模イベントを、貴重な歳入確保の機会として活用しています。
  • 具体的には、企業からの広告協賛金、有料観覧席の販売収入、会場への出店者からの出展料などを、イベント運営費だけでなく、区の一般財源としても確保しています。令和5年度決算審査資料によると、足立の花火の有料席販売や屋形船出船料、区民まつりの出展料などで相当額の収益を上げています。
  • 成功要因
    • 多くの集客が見込める人気イベントという「資産」の価値を、歳入という形で着実に顕在化させていること。
    • 協賛、有料席、出店という多様なメニューを用意し、企業から個人まで幅広い層が関与できる仕組みを構築していること。
    • これは、地域のにぎわい創出と財源確保を両立させる、伝統的かつ効果的な手法です。
    • 客観的根拠

全国自治体の先進事例

泉佐野市「ふるさと納税の徹底活用による財源確保」

  • 大阪府泉佐野市は、ふるさと納税制度を最大限に活用し、危機的な財政状況から脱却したことで全国的に知られています。一時、制度の対象から除外される事態も経験しましたが、復帰後は「#ふるさと納税3.0」を掲げるなど、常に先進的なマーケティング手法を導入しています。
  • その結果、令和5年度(2023年度)の寄附受入額は約175億円に達し、平成20年度からの累計受入額は全国で初めて1,500億円を突破しました。
  • 成功要因

福岡市「デジタル広告事業の戦略的展開」

  • 福岡市は、市のウェブサイトや公共施設といった資産を広告媒体として活用するにあたり、専門的なデジタルマーケティングの手法を導入しています。
  • 単に広告枠を売るだけでなく、地域特性(博多弁の活用など)やターゲット層(若年層のSNS利用率など)を分析し、最適な広告戦略を立案しています。また、民間コンサルティング会社の知見を活用し、広告媒体の価値を客観的に評価した上で、効果的な営業活動を展開しています。
  • 成功要因
    • 広告事業を「行政の片手間仕事」ではなく、「専門知識を要するビジネス」と認識していること。
    • データ分析に基づき、費用対効果の高い広告メニューを開発していること。
    • 民間の専門知識やノウハウを積極的に活用し、行政内部だけでは難しい戦略的な事業展開を可能にしている点です。これは、特別区が広告収入の拡大を目指す上で、極めて重要な視点です。
    • 客観的根拠
      • (出典)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000143.00016266.html)

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区は、一見安定した財政状況の裏で、景気変動への脆弱性と、ふるさと納税制度による構造的な財源流出という深刻な課題に直面しています。持続可能な行政サービスを提供するためには、従来の歳入管理から脱却し、「守り」「最適化」「攻め」の三位一体での歳入確保改革が不可欠です。既存財源の徴収強化、戦略的な資産経営、そして新たな財源創出への挑戦を断行し、自らの財政基盤を自らの手で確立していく必要があります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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