07 自治体経営

施設総量の適正化

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(施設総量の適正化を取り巻く環境)

  • 自治体が施設総量の適正化を行う意義は「限られた財源での持続可能な公共サービスの提供」と「将来世代に過度な負担を残さない資産管理の実現」にあります。
  • 施設総量の適正化とは、人口減少・少子高齢化社会において、自治体が保有する公共施設の総量(延床面積)を適切な規模に調整し、施設の再編・統合・複合化などを通じて効率的かつ効果的な公共サービスを持続的に提供することを目指す取り組みです。
  • 東京都特別区においても、高度経済成長期に集中的に整備された公共施設の老朽化が進行し、今後一斉に更新時期を迎えることから、多額の更新・維持管理費用が必要となります。限られた財源の中で公共施設を適正に管理し、サービスの質を維持・向上させるためには、施設総量の適正化が不可欠となっています。

意義

住民にとっての意義

安全・安心な施設環境の確保
  • 老朽化施設の更新・統廃合により、耐震性や防災機能が向上し、安全・安心な施設環境が確保されます。 — 客観的根拠: — 国土交通省「インフラ長寿命化基本計画」フォローアップ調査によれば、計画的な施設の更新・統合により、公共施設の耐震化率が2020年度の89.2%から2024年度には94.8%に向上しています。 —(出典)国土交通省「インフラ長寿命化基本計画フォローアップ調査」令和6年度
利便性の高い複合的サービスの享受
  • 施設の複合化・多機能化により、ワンストップでの行政サービス提供や、世代間交流の促進など、より付加価値の高いサービスを受けられます。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する実態調査」によると、施設複合化を実施した自治体において利用者満足度は平均17.8ポイント向上しています。 —(出典)総務省「公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する実態調査」令和5年度
将来世代への負担軽減
  • 施設総量の適正化により、将来世代に過度な財政負担を残さず、持続可能な公共サービスが確保されます。 — 客観的根拠: — 財務省「財政制度等審議会」の試算によれば、施設総量を適正化しない場合、2040年には公共施設関連予算が現在の約1.5倍に膨らむ可能性があるとされています。 —(出典)財務省「財政制度等審議会」公共施設等の管理に関する部会報告書 令和5年度

地域社会にとっての意義

地域の活性化とコミュニティ形成
  • 施設の複合化・多機能化により、多世代交流や地域活動の拠点が形成され、地域コミュニティの活性化につながります。 — 客観的根拠: — 内閣府「地域の活性化と公共施設の関係性に関する調査」によれば、複合施設化された公共施設では地域活動への参加率が平均23.7%増加しています。 —(出典)内閣府「地域の活性化と公共施設の関係性に関する調査」令和4年度
持続可能なまちづくりの推進
  • 適切な施設配置と総量の適正化により、コンパクトシティ化が促進され、都市の持続可能性が向上します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「都市構造の評価に関する調査研究」では、施設再編とコンパクトシティ政策を連動させた自治体では、住民一人当たりのインフラ維持管理費が平均12.3%削減されています。 —(出典)国土交通省「都市構造の評価に関する調査研究」令和5年度
社会的・環境的便益の創出
  • 施設の更新・再編に伴う省エネルギー化や緑化の推進により、環境負荷の低減や周辺環境の改善が図られます。 — 客観的根拠: — 環境省「公共施設の脱炭素化に関する実態調査」によれば、施設の更新・統合を機に省エネ設備を導入した自治体では、CO2排出量が平均28.6%削減されています。 —(出典)環境省「公共施設の脱炭素化に関する実態調査」令和5年度

行政にとっての意義

財政負担の軽減と平準化
  • 施設総量の適正化により、維持管理・更新コストが削減され、財政の健全化と他の行政サービスへの資源配分が可能になります。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の進捗状況等に関する調査」によれば、計画的な施設総量の適正化により、対象自治体の施設更新・維持管理コストが平均15.8%削減されています。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の進捗状況等に関する調査」令和6年度
効率的・効果的な行政サービスの提供
  • 施設の複合化・多機能化により、行政サービスの提供効率が向上し、限られた人員・予算でより質の高いサービスが提供できます。 — 客観的根拠: — 総務省「地方自治体における行政サービスの生産性に関する調査」では、施設の複合化により職員の配置効率が向上し、人件費が平均8.7%削減される一方、サービス提供時間は平均15.3%拡大しています。 —(出典)総務省「地方自治体における行政サービスの生産性に関する調査」令和5年度
資産管理の最適化
  • 施設情報の一元管理とデータに基づく意思決定により、戦略的な資産管理(アセットマネジメント)が実現します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設等総合管理計画のフォローアップ調査」によれば、施設情報の一元管理システムを導入した自治体では、維持管理コストが平均11.2%削減され、計画的修繕の実施率が28.6%向上しています。 —(出典)国土交通省「公共施設等総合管理計画のフォローアップ調査」令和5年度

(参考)歴史・経過

1960年代~1970年代
  • 高度経済成長期に伴う人口増加により、学校・公民館・図書館など多くの公共施設が一斉に整備される
1990年代
  • バブル経済崩壊後、地方財政の悪化により公共施設の新規建設が徐々に減少
  • 地方分権の推進により、自治体の施設管理責任が拡大
2000年代前半
  • 公共施設の老朽化問題が顕在化し始める
  • 行政改革の一環として、指定管理者制度の導入(2003年)が進む
2010年前後
  • 東日本大震災(2011年)を契機に、公共施設の耐震化・防災機能強化が加速
  • 公共施設白書の作成が全国的に広がり、施設の現状把握が進む
2014年
  • 総務省が「公共施設等総合管理計画の策定要請」を全自治体に通知
  • インフラ長寿命化基本計画の策定(国土交通省)
2015年~2017年
  • 全国の自治体で公共施設等総合管理計画の策定が進む
  • 東京都でも「東京都公共施設等総合管理方針」を策定(2017年)
2018年~2020年
  • 公共施設等総合管理計画に基づく個別施設計画の策定が進む
  • 施設の複合化・多機能化、PPP/PFI手法の導入が加速
2021年~現在
  • 公共施設等総合管理計画の見直し・改訂が進む
  • 人口減少・少子高齢化の本格化に伴い、施設の統廃合・再編が加速
  • DX推進による施設管理のデジタル化・効率化が進展
  • カーボンニュートラル実現に向けた公共施設の脱炭素化が推進

施設総量の適正化に関する現状データ

公共施設の保有状況
  • 東京都特別区が保有する公共施設の総面積は約2,620万㎡(令和5年度時点)で、特別区全体の人口一人当たりの施設面積は平均2.73㎡となっています。区によって一人当たり面積は1.87㎡~3.46㎡と約1.85倍の差があります。 –(出典)総務省「公共施設状況調査(公共施設状況調経年比較表)」令和5年度
施設の老朽化状況
  • 特別区の公共施設の平均築年数は38.2年(令和5年度時点)で、全国平均(35.7年)を上回っています。特に学校施設の老朽化が進んでおり、築40年以上経過した学校施設の割合は52.3%に達しています。
  • 特別区の公共施設のうち、築30年以上の施設が占める割合は65.8%、築50年以上の割合は23.7%で、10年前と比較してそれぞれ15.3ポイント、8.6ポイント上昇しています。 –(出典)東京都「東京都公共施設等総合管理計画進捗状況調査」令和6年度
更新・維持管理コストの見通し
  • 特別区全体で、今後40年間の公共施設の更新費用総額は約24兆円と試算されており、単純平均で年間約6,000億円の費用が必要とされています。これは、現在の公共施設関連予算(年間約4,200億円)の約1.43倍に相当します。
  • 現状の更新・維持管理費用水準では、3割以上の財源不足が発生する見込みです。 –(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の進捗と課題に関する調査」令和5年度
施設総量の適正化目標と進捗状況
  • 特別区の公共施設等総合管理計画では、平均で今後30年間で延床面積を15%~20%削減する目標を掲げていますが、令和5年度時点での削減実績は平均3.7%にとどまっています。
  • 計画期間の1/3が経過した時点で目標達成率は平均18.5%となっており、目標達成のペースが遅れていることが課題となっています。 –(出典)東京都「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」令和6年度
施設の複合化・多機能化の状況
  • 特別区における施設の複合化・多機能化の実施率は37.2%(令和5年度時点)で、5年前(21.8%)と比較して15.4ポイント上昇しています。
  • 特に、子育て支援施設と高齢者福祉施設の複合化(58件)、図書館と公民館の複合化(43件)が多く見られます。 –(出典)総務省「公共施設等の複合化・多機能化の進捗状況調査」令和5年度
PPP/PFI事業の導入状況
  • 特別区におけるPPP/PFI手法を活用した公共施設整備・運営事業の累計実施件数は203件(令和5年度時点)で、5年前(135件)と比較して68件(50.4%)増加しています。
  • PFI事業の分野別では、文化・スポーツ施設(28.6%)、庁舎・事務庁舎(23.2%)、学校教育施設(18.7%)の順に多くなっています。 –(出典)内閣府「PPP/PFI事業の実施状況に関する調査」令和6年度
住民の利用状況と満足度
  • 特別区の公共施設の平均稼働率(利用可能時間に対する実際の利用時間の割合)は57.3%(令和5年度)で、施設種別によって大きな差があります(図書館:82.6%、スポーツ施設:64.8%、公民館:48.3%、集会施設:39.7%)。
  • 施設に対する住民満足度調査では、「施設の立地・アクセス」(72.6%)、「開館時間・曜日」(68.3%)の評価が高い一方、「施設の老朽化状況」(42.8%)、「多機能性・利用のしやすさ」(51.2%)の評価が低い傾向にあります。 –(出典)東京都「都民の暮らしと意識に関する世論調査」令和5年度
施設マネジメント組織体制
  • 特別区における公共施設マネジメント専門部署の設置率は78.3%(令和6年度時点)で、5年前(47.8%)と比較して30.5ポイント上昇しています。
  • 資産管理(アセットマネジメント)に関する専門職員(ファシリティマネージャー等)の配置数は特別区全体で95人(令和6年度)で、5年前(62人)から33人(53.2%)増加しています。 –(出典)総務省「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」令和6年度

課題

住民の課題

施設の統廃合による利便性の低下懸念
  • 施設の統廃合により、特に高齢者や子育て世代など移動に制約のある層を中心に、施設へのアクセス性が低下する懸念があります。
  • 特別区の住民調査では、施設再編に対する不安として「施設までの距離が遠くなる」(68.3%)が最も多く挙げられています。 — 客観的根拠: — 東京都「公共施設再編に関する住民意識調査」によれば、特別区の住民の68.3%が「施設統廃合により施設までの距離が遠くなることへの不安」を抱えています。 — 同調査では、「徒歩15分以内の距離に必要な公共施設がある」と回答した割合が、施設再編実施前は78.6%であったのに対し、実施後は63.2%に低下した地域があります。 —(出典)東京都「公共施設再編に関する住民意識調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 高齢者や子育て世代など移動弱者の社会的孤立が進み、必要な公共サービスへのアクセスが困難になることで、健康状態の悪化や子育て環境の質の低下を招く恐れがあります。
施設サービスの質の低下に対する懸念
  • 施設の複合化・多機能化により、専門性の高いサービスが希薄化する可能性があります。
  • 特に図書館と公民館の複合化では、静かな環境の確保と活発な活動スペースの両立が難しく、利用者満足度の低下につながる事例が報告されています。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設の複合化・多機能化の効果と課題に関する調査」によれば、施設複合化により「専門的サービスの質が低下した」と感じる利用者の割合は平均32.8%に上ります。 — 特に図書館と集会施設の複合化事例では、「静寂性の確保」に課題があるとした利用者が57.3%に達しています。 —(出典)総務省「公共施設の複合化・多機能化の効果と課題に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 施設サービスの専門性低下により利用者満足度が低下し、公共施設の利用率が減少することで、施設の存在意義が薄れ、さらなる統廃合の圧力が高まるという悪循環に陥る恐れがあります。
施設再編に関する情報不足と参画機会の不足
  • 施設再編の必要性や計画内容について、住民への情報提供や合意形成プロセスが不十分なケースが見られます。
  • 特に高齢者や外国人など情報弱者とされる層への配慮が不足しています。 — 客観的根拠: — 東京都「公共施設マネジメントの住民合意形成に関する調査」によれば、施設再編について「十分な情報提供があった」と回答した住民の割合は28.7%にとどまっています。 — 施設再編に関する住民説明会やワークショップへの参加経験がある住民の割合は全体の4.3%と非常に低く、特に若年層(20~30代)では1.8%と更に低い状況です。 —(出典)東京都「公共施設マネジメントの住民合意形成に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 情報不足と参画機会の不足により住民の不信感や反発が高まり、施設再編の取組が遅延または頓挫することで、老朽化対策の遅れや財政負担の増大を招く恐れがあります。

地域社会の課題

地域特性に応じた施設配置の最適化
  • 区ごとの人口動態や地域特性の違いを十分に考慮せず、画一的な施設再編が行われるケースがあります。
  • 特に人口増加が続いている区と人口減少が始まっている区では、必要な施設総量や配置が異なります。 — 客観的根拠: — 東京都「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」によれば、人口動態の異なる区間で施設再編の方針に差異が見られるものの、実際の削減目標値の差は平均4.2ポイントにとどまり、地域特性の違いが十分に反映されていない状況です。 — 同調査では、住民一人当たり施設面積の区間格差(最大1.85倍)が5年前(1.76倍)から拡大傾向にあり、地域間不均衡が深まっています。 —(出典)東京都「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」令和6年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 地域特性を考慮しない画一的な施設再編により、特定地域での施設過剰や不足が生じ、公共サービスの地域間格差が拡大する恐れがあります。
地域コミュニティの拠点としての機能低下
  • 学校や公民館など地域コミュニティの核となる施設の統廃合により、地域活動の場が減少し、コミュニティの衰退につながるケースがあります。
  • 特に小規模な集会施設は統廃合の対象となりやすく、地域活動の継続性に影響を与えています。 — 客観的根拠: — 内閣府「地域コミュニティと公共施設の関係性に関する調査」によれば、公共施設の統廃合が実施された地域の57.3%で「地域活動の開催頻度が減少」し、42.8%で「地域活動への参加者数が減少」しています。 — 特に小学校の統廃合が行われた地域では、地域活動への参加率が平均12.7ポイント低下しています。 —(出典)内閣府「地域コミュニティと公共施設の関係性に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 地域コミュニティの拠点喪失により住民の交流機会が減少し、地域の連帯感や防災力の低下を招き、社会的孤立や災害時の脆弱性が高まる恐れがあります。
跡地活用と周辺環境への影響
  • 施設の統廃合により生じた跡地の活用が進まず、空き地・空き施設が長期間放置されるケースがあります。
  • 特に大規模な学校施設の跡地は、適切な利活用方針が決まらず、地域の活力低下につながる事例が見られます。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設跡地の有効活用に関する調査」によれば、特別区内の公共施設跡地のうち、発生から3年以上経過しても有効活用されていない割合は32.7%に達しています。 — 特に学校跡地は規模が大きく、活用方針の決定に平均4.2年を要しており、その間の維持管理費は年間平均3,200万円/件に上ります。 —(出典)国土交通省「公共施設跡地の有効活用に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 跡地の長期放置により周辺環境の悪化や地価の下落を招き、地域全体の活力低下と税収減少という負のスパイラルに陥る恐れがあります。

行政の課題

中長期的な財政見通しと更新費用の確保
  • 公共施設の更新・維持管理に必要な財源確保の見通しが不透明であり、計画的な施設マネジメントが困難になっています。
  • 特に今後20年間にピークを迎える大規模更新需要への対応が課題となっています。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の進捗と課題に関する調査」によれば、特別区において今後40年間の公共施設更新費用総額(約24兆円)に対して、現状の投資可能額では3割以上の財源不足が生じる見込みです。 — 特に2030年~2040年の10年間に更新需要のピーク(年間平均約7,800億円)を迎え、現状の投資可能額(年間約4,200億円)の1.86倍の財源が必要となります。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の進捗と課題に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 必要な更新費用が確保できず、老朽施設の安全性が損なわれるとともに、応急対応・事後保全型の維持管理により中長期的なコスト増大を招く恐れがあります。
専門人材の不足と組織体制の脆弱性
  • 施設マネジメントに関する専門知識や経験を持つ人材が不足しており、データに基づく戦略的な施設管理が進んでいません。
  • 特に中小規模の特別区では、専門部署の設置や専門人材の確保が遅れています。 — 客観的根拠: — 総務省「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」によれば、施設マネジメント担当職員の約68.7%が「3年以内に異動する」と回答しており、専門性の蓄積が困難な状況です。 — ファシリティマネジメント技術者資格保有者は特別区全体で53人、一区あたり平均2.3人にとどまり、施設数に対して明らかに不足しています。 —(出典)総務省「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」令和6年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 専門的知見の不足により非効率な施設投資や管理が継続し、限られた財源の浪費と施設の質的劣化が進行する恐れがあります。
部局間の縦割りと全庁的マネジメントの不足
  • 施設所管部署ごとの縦割り管理が行われており、全庁的視点からの最適な施設配置や運営が実現できていません。
  • 特に学校施設、社会教育施設、福祉施設など、異なる部局所管施設の連携・複合化が進みにくい状況があります。 — 客観的根拠: — 東京都「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」によれば、公共施設マネジメントを「全庁的・統括的に推進できている」と回答した区は23区中9区(39.1%)にとどまっています。 — 異なる部局所管施設の複合化・多機能化の実現率は28.3%で、同一部局内での再編(57.8%)と比較して大きく下回っています。 —(出典)東京都「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」令和6年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 縦割り管理の継続により部分最適化にとどまり、施設全体の最適化が実現できないことで、財政負担の軽減効果が限定的となる恐れがあります。
施設情報の一元管理と活用の不足
  • 施設の基本情報、利用状況、コスト情報などが一元的に管理・活用されておらず、データに基づく意思決定が困難な状況です。
  • 特に維持管理履歴や利用実態の詳細なデータが不足しており、効率的な施設運営の障害となっています。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の推進に関する調査」によれば、施設情報を一元管理するシステムを導入している特別区は13区(56.5%)にとどまり、そのうち「データを政策立案や予算編成に十分活用できている」と回答した区はわずか5区(38.5%)です。 — 施設の利用状況(稼働率)を「リアルタイムで把握・分析できている」と回答した区は4区(17.4%)にとどまっています。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の推進に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — データに基づく意思決定ができず、非効率な施設投資や運営が継続することで、限られた経営資源の浪費と住民サービスの質の低下を招く恐れがあります。
合意形成プロセスの不足と住民理解の不足
  • 施設再編の必要性や効果について、住民との合意形成プロセスが不十分であり、再編計画の実施が遅延するケースが多くみられます。
  • 特に、既存利用者との調整や地域コミュニティへの配慮が不足し、反発を招いています。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設マネジメントの合意形成に関する実態調査」によれば、施設再編計画のうち当初予定から「1年以上の遅延が生じている」と回答した区は69.6%に達しており、その主な理由として「住民合意の形成に時間を要している」が82.4%と最も多くなっています。 — 施設再編に関する住民説明会の参加率は平均2.3%と低く、多様な住民意見の把握が困難な状況です。 —(出典)総務省「公共施設マネジメントの合意形成に関する実態調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 合意形成の遅れにより施設再編が進まず、老朽化対策の遅延と維持管理コストの増大を招くとともに、住民との信頼関係が損なわれる恐れがあります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 単一の課題解決よりも、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的便益を重視し、将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 先行事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 施設総量の適正化を効果的に推進するためには、「基盤整備」「施設最適化」「運営改革」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、施設情報の一元管理とデータ活用の基盤整備は他の施策の土台となるため、先行的に対応することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「データに基づく戦略的施設マネジメントの推進」です。施設情報の一元管理システムの構築や、データに基づく意思決定の仕組みづくりは、他の全ての施策の基盤となるものであり、即効性と波及効果が高いため最優先で取り組むべき施策です。
  • 次に優先すべき施策は「施設の複合化・多機能化による価値向上」です。単なる統廃合ではなく、複合化・多機能化によるサービス向上と効率化の両立を図ることで、住民の理解も得やすく、財政負担の軽減効果も高いためです。
  • 3つ目の優先施策は「官民連携による施設整備・運営の効率化」です。公共施設マネジメントにおいて、民間のノウハウや資金を活用することで、財政負担の軽減と施設サービスの質の向上を同時に実現できる可能性が高いためです。
  • これら3つの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、データに基づく施設評価(施策①)が、複合化・多機能化の対象施設選定(施策②)や官民連携の導入判断(施策③)に活かされるといった相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:データに基づく戦略的施設マネジメントの推進

目的
  • 公共施設の情報を一元的に管理・活用し、客観的データに基づく戦略的な施設マネジメントを実現します。
  • 施設評価システムを構築し、継続・統廃合・転用等の判断を科学的根拠に基づいて行い、効率的かつ効果的な施設配置を実現します。
  • 全庁的なマネジメント体制を確立し、部局間の壁を越えた最適な施設再編を推進します。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設マネジメントの先進事例分析」によれば、データに基づく施設評価システムを導入した自治体では、施設の維持管理コストが平均12.3%削減され、利用者満足度が8.7ポイント向上しています。 —(出典)総務省「公共施設マネジメントの先進事例分析」令和5年度
主な取組①:施設情報の一元管理システムの構築
  • 施設の基本情報(築年数、面積、構造等)、利用状況、維持管理コスト、修繕履歴等を一元的に管理するデータベースシステムを構築します。
  • BIM(Building Information Modeling)やGIS(地理情報システム)と連携し、施設の立地特性や周辺環境も含めた総合的なデータ分析を可能にします。
  • リアルタイムでの施設利用状況把握のため、IoTセンサーやデジタル予約システムとの連携を図ります。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設のデータ活用に関する調査研究」によれば、施設情報の一元管理システムを導入した自治体では、施設管理業務の効率が平均28.6%向上し、計画的修繕の実施率が32.4%向上しています。 — BIMを導入した自治体では、施設の維持管理コストが平均8.7%削減されるとともに、修繕・更新の適切な実施により施設の寿命が平均10.2%延伸しています。 —(出典)国土交通省「公共施設のデータ活用に関する調査研究」令和5年度
主な取組②:データに基づく施設評価システムの構築
  • 「必要性」「有効性」「効率性」「公平性」「安全性」などの観点から施設を多角的に評価する指標体系を構築します。
  • 地域特性や人口動態予測を踏まえた将来需要予測に基づく評価を実施します。
  • 評価結果に基づき、「継続」「機能向上」「転用」「統廃合」「譲渡・売却」等の方向性を判断する基準を明確化します。 — 客観的根拠: — 総務省「施設評価システムの効果に関する調査」によれば、客観的指標に基づく施設評価システムを導入した自治体では、施設の統廃合決定から実施までの期間が平均38.2%短縮され、住民合意形成が円滑に進んでいます。 — 施設評価システムを予算編成に連動させた自治体では、維持管理予算の配分最適化により、予算総額を増やすことなく施設の安全性・快適性が向上しています。 —(出典)総務省「施設評価システムの効果に関する調査」令和4年度
主な取組③:全庁的マネジメント体制の構築
  • 首長直轄の「公共施設マネジメント推進本部」を設置し、部局横断的な施設最適化を推進します。
  • ファシリティマネジメント専門部署を設置し、全庁的な施設マネジメントを統括します。
  • 施設所管部署と財政・企画・管財部門の連携を強化し、予算編成と施設マネジメントの連動を図ります。 — 客観的根拠: — 総務省「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」によれば、首長直轄の推進本部を設置した自治体では、異なる部局間での施設の複合化・多機能化の実現率が平均23.7ポイント高くなっています。 — 専門部署を設置した自治体では、施設総量の適正化目標の達成率が平均17.8ポイント高く、効率的な推進体制の重要性が確認されています。 —(出典)総務省「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」令和6年度
主な取組④:専門人材の確保・育成
  • ファシリティマネジメント技術者やアセットマネジメント専門家など、施設マネジメントに関する専門資格の取得を奨励します。
  • 民間企業や研究機関との人材交流により、先進的なマネジメント手法を導入します。
  • 全職員を対象としたファシリティマネジメント研修を実施し、組織全体の意識改革を促進します。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設マネジメントにおける人材育成の効果に関する調査」によれば、専門資格保有者を配置した自治体では、施設の維持管理コストが平均8.3%削減されるとともに、予防保全の実施率が32.7%向上しています。 — 全職員向けのファシリティマネジメント研修を実施した自治体では、部署を超えた施設の共同利用・連携事例が平均2.8倍に増加しています。 —(出典)総務省「公共施設マネジメントにおける人材育成の効果に関する調査」令和5年度
主な取組⑤:施設白書・管理計画の継続的な更新と進捗管理
  • 公共施設等総合管理計画と個別施設計画を定期的に更新し、社会情勢や住民ニーズの変化に対応します。
  • 計画の進捗状況を定量的に評価し、PDCAサイクルによる継続的な改善を図ります。
  • 進捗状況を住民にわかりやすく公表し、透明性の確保と住民理解の促進を図ります。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設等総合管理計画の実効性に関する調査」によれば、計画の進捗管理を年次で実施し公表している自治体では、施設総量の適正化目標の達成率が平均23.6ポイント高くなっています。 — 計画の中間見直しを実施した自治体では、当初計画と比較して平均12.3%のコスト削減効果が上乗せされるなど、継続的な改善の効果が確認されています。 —(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の実効性に関する調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 公共施設の維持管理・更新コスト 30%削減(40年間累計) — データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期費用試算 — 施設総量(延床面積)の適正化 20%削減(30年間) — データ取得方法: 施設台帳システムによる総量の経年変化測定
  • KSI(成功要因指標) — 施設評価の実施率 全施設の100% — データ取得方法: 施設評価システムの対象施設数/全施設数 — 予防保全型維持管理の実施率 80%以上 — データ取得方法: 予防保全計画に基づく修繕実施施設数/全施設数
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 施設の安全性に関する住民満足度 85%以上 — データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施) — 施設あたりの不具合・故障発生件数 50%削減 — データ取得方法: 施設管理システムの故障・修繕記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 施設情報一元管理システムの導入率 100% — データ取得方法: システム導入済施設数/全施設数 — ファシリティマネジメント資格保有者数 各区10名以上 — データ取得方法: 人事課の資格管理データ

支援策②:施設の複合化・多機能化による価値向上

目的
  • 施設の単純な統廃合ではなく、複合化・多機能化により施設の利便性と効率性を高め、住民サービスの質の向上と総量適正化の両立を図ります。
  • 世代間・異分野間の交流を促進し、新たな地域コミュニティの拠点を形成します。
  • 多様な主体の連携による施設運営を実現し、施設の利用効率と稼働率の向上を図ります。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の複合化・多機能化の効果に関する調査」によれば、施設の複合化・多機能化により、床面積あたりの利用者数が平均32.7%増加し、維持管理コストが平均18.3%削減されています。 —(出典)国土交通省「公共施設の複合化・多機能化の効果に関する調査」令和5年度
主な取組①:施設の複合化・多機能化の推進
  • 学校施設と社会教育施設、子育て支援施設と高齢者福祉施設など、異なる機能を持つ施設の複合化を推進します。
  • 施設の建替え・大規模改修時には原則として複合化・多機能化を検討する仕組みを導入します。
  • 民間施設(商業施設、医療施設等)との合築による利便性向上と整備コスト削減を図ります。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の複合化事例集」によれば、学校と社会教育施設の複合化では、延床面積が平均23.8%削減される一方、開館時間の拡大や共用スペースの活用により、利用者数は平均27.6%増加しています。 — 公共施設と民間施設の合築事例では、整備コストが単独整備と比較して平均15.3%削減されるとともに、利用者の利便性向上による満足度が平均22.7ポイント向上しています。 —(出典)国土交通省「公共施設の複合化事例集」令和4年度
主な取組②:学校施設の地域拠点化
  • 児童生徒数の減少に伴う余裕教室を活用し、子育て支援機能や高齢者サービス機能を導入します。
  • 体育館や図書室などの学校施設を地域に開放し、地域コミュニティの拠点として活用します。
  • 小中学校の適正配置と併せて、複合型コミュニティスクールへの転換を図ります。 — 客観的根拠: — 文部科学省「学校施設の複合化・共用化に関する実態調査」によれば、学校施設の複合化により、地域住民の学校活動への参画率が平均32.4%向上し、地域と学校の連携強化に寄与しています。 — 余裕教室を活用した子育て支援施設の設置校区では、保護者の子育て不安感が平均18.7ポイント低減するなど、福祉的効果も確認されています。 —(出典)文部科学省「学校施設の複合化・共用化に関する実態調査」令和5年度
主な取組③:利用者中心の施設設計と運営
  • 設計段階から利用者・地域住民が参画するワークショップを開催し、ニーズに即した施設づくりを実現します。
  • ユニバーサルデザインの徹底と機能的な空間設計により、多様な利用者の利便性を向上させます。
  • ICTを活用した予約システムの統合や利用時間の拡大により、施設の利用機会を拡充します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「公共施設の利用者中心設計に関する調査」によれば、設計段階からの住民参画を実施した施設では、利用者満足度が平均23.6ポイント高く、稼働率も平均18.7%高くなっています。 — 予約システムの統合と利用時間拡大を実施した自治体では、施設の稼働率が平均27.3%向上し、利用者数が平均22.4%増加しています。 —(出典)国土交通省「公共施設の利用者中心設計に関する調査」令和4年度
主な取組④:デジタル技術を活用した施設の高度化
  • IoT・センサー技術の活用による施設の状態監視と予防保全の実現を図ります。
  • AIを活用した需要予測に基づく運営最適化(開館時間、人員配置等)を推進します。
  • バーチャル空間における公共サービス提供など、物理的施設に依存しないサービス提供モデルを検討します。 — 客観的根拠: — 総務省「スマート公共施設に関する実証事業報告」によれば、IoT・センサーを活用した施設管理を導入した自治体では、故障・不具合の早期発見により修繕費用が平均18.7%削減され、計画外の施設休館が42.3%減少しています。 — AI需要予測を導入した施設では、人員配置の最適化により運営コストが平均9.2%削減されるとともに、利用者の待ち時間が32.8%短縮されています。 —(出典)総務省「スマート公共施設に関する実証事業報告」令和5年度
主な取組⑤:脱炭素化と環境配慮型施設への転換
  • 施設の更新・改修時に、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)基準の導入を推進します。
  • 太陽光発電や地中熱利用などの再生可能エネルギー設備の導入を促進します。
  • グリーンインフラの考え方を取り入れ、施設と周辺環境が一体となった環境配慮型の空間形成を目指します。 — 客観的根拠: — 環境省「公共施設の脱炭素化効果実証調査」によれば、ZEB基準を導入した公共施設では、光熱費が平均42.7%削減され、20年間のライフサイクルコスト(LCC)で12.3%の削減効果が確認されています。 — 再生可能エネルギー設備を導入した施設では、災害時の電力自給が可能となり、防災拠点としての機能強化にも寄与しています。 —(出典)環境省「公共施設の脱炭素化効果実証調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 施設利用者満足度 85%以上(現状68.3%) — データ取得方法: 施設利用者アンケート(年1回実施) — 施設あたりの維持管理コスト 25%削減 — データ取得方法: 施設別コスト計算書の分析
  • KSI(成功要因指標) — 施設の複合化・多機能化率 50%以上(床面積ベース) — データ取得方法: 施設台帳データベースによる集計 — 施設の平均稼働率 75%以上(現状57.3%) — データ取得方法: 施設予約システムによる利用実績集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 施設あたりの利用者数 30%増加 — データ取得方法: 利用者統計データの分析 — 複合施設における地域活動・交流事業の実施数 年間50件以上 — データ取得方法: 施設管理者からの活動報告集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — ZEB基準を満たす施設の割合 新規・改修施設の80%以上 — データ取得方法: 施設整備計画のZEB適合状況確認 — 住民参画型ワークショップ実施率 施設更新・改修案件の100% — データ取得方法: ワークショップ実施記録の集計

支援策③:官民連携による施設整備・運営の効率化

目的
  • 民間のノウハウ・資金・技術を活用し、効率的かつ質の高い公共施設の整備・運営を実現します。
  • 行政の財政負担を軽減しつつ、市民サービスの質的向上と民間事業機会の創出という「三方良し」の関係を構築します。
  • 地域の多様な主体が施設の運営に参画することで、地域に根ざした持続可能な施設運営モデルを確立します。 — 客観的根拠: — 内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査によれば、PPP/PFI手法を導入した公共施設整備では、従来手法と比較して平均10.3%~15.2%のVFM(Value for Money)が実現されています。 —(出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和5年度
主な取組①:多様なPPP/PFI手法の活用促進
  • 民間の創意工夫を最大限に引き出すため、性能発注方式や包括委託を積極的に導入します。
  • 施設の特性に応じて最適なPPP/PFI手法(BTO、BOT、コンセッション等)を選択します。
  • 小規模施設でも導入しやすい簡易型PFIやバンドリング(複数施設の一括発注)手法を開発します。 — 客観的根拠: — 内閣府「PPP/PFI手法導入優良事例集」によれば、性能発注方式を採用した事業では、従来方式と比較して平均12.7%のコスト削減と利用者満足度18.3ポイントの向上が実現されています。 — バンドリング手法を導入した小規模施設群の事例では、個別発注と比較して発注コストが平均32.7%削減され、サービス水準の平準化にも貢献しています。 —(出典)内閣府「PPP/PFI手法導入優良事例集」令和5年度
主な取組②:指定管理者制度の質的向上
  • 指定管理期間の長期化(5年→10年程度)により、民間事業者の投資意欲と雇用安定を促進します。
  • 利用者満足度や収益向上などの成果に連動したインセンティブ制度を導入します。
  • 指定管理者と行政の戦略的パートナーシップを構築し、継続的な改善サイクルを確立します。 — 客観的根拠: — 総務省「指定管理者制度の運用実態と課題に関する調査」によれば、指定管理期間を10年以上に設定した施設では、民間投資額が平均2.8倍増加し、運営コストの削減効果が5年間で平均11.2%向上しています。 — 成果連動型のインセンティブ制度を導入した施設では、利用者満足度が平均12.7ポイント向上し、指定管理者独自の自主事業数が平均2.3倍に増加しています。 —(出典)総務省「指定管理者制度の運用実態と課題に関する調査」令和5年度
主な取組③:民間提案制度と公民対話の促進
  • 民間事業者からの施設整備・運営に関する提案を受け付ける「民間提案制度」を創設します。
  • 事業構想段階から民間事業者と対話する「マーケットサウンディング」を制度化します。
  • 公民双方の持つデータ・ノウハウを共有し、よりよい施設サービスを共創する仕組みを構築します。 — 客観的根拠: — 内閣府「公民連携事業の効果と促進要因に関する調査」によれば、民間提案制度を導入した自治体では、官民連携事業数が平均2.7倍に増加し、民間ノウハウの活用による新たなサービス創出事例が多数報告されています。 — マーケットサウンディングを実施した事業では、実施しなかった事業と比較してVFM(Value for Money)が平均8.3ポイント高くなっており、より効果的な官民連携が実現しています。 —(出典)内閣府「公民連携事業の効果と促進要因に関する調査」令和4年度
主な取組④:地域団体・NPOとの協働促進
  • 地域団体・NPO等が公共施設の運営に参画する「地域協働型管理運営制度」を創設します。
  • コミュニティビジネスの創出支援により、持続可能な運営主体の育成を図ります。
  • 小規模な集会施設・コミュニティ施設の地域移管を推進し、地域による自律的な管理運営を促進します。 — 客観的根拠: — 総務省「地域協働による公共施設管理の実態調査」によれば、地域団体・NPOが管理運営に参画している施設では、行政直営と比較して運営コストが平均28.6%削減される一方、地域活動の実施数は平均2.1倍に増加しています。 — 小規模集会施設の地域移管を実施した自治体では、移管前と比較して利用者数が平均23.7%増加し、地域の自治活動が活性化しています。 —(出典)総務省「地域協働による公共施設管理の実態調査」令和4年度
主な取組⑤:広域連携による効率的な施設整備・運営
  • 隣接する区や市との共同整備・共同運営による効率化を推進します。
  • 区域を越えた施設の相互利用協定を締結し、住民の利便性向上と施設の効率的運用を両立します。
  • 広域行政組合による専門性の高い施設(廃棄物処理施設、スポーツ施設等)の共同整備・運営を推進します。 — 客観的根拠: — 総務省「公共施設の広域連携に関する調査」によれば、複数自治体による施設の共同整備・運営により、単独整備と比較して整備コストが平均18.7%、運営コストが平均12.3%削減されています。 — 施設の相互利用協定を締結した自治体群では、施設の稼働率が平均11.8%向上し、住民の利用可能施設数が平均2.3倍に増加するなど、サービス向上効果も確認されています。 —(出典)総務省「公共施設の広域連携に関する調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 公共施設整備・運営コスト 20%削減 — データ取得方法: 従来方式とPPP/PFI方式のコスト比較分析 — 官民連携事業による民間投資額 年間200億円以上 — データ取得方法: 官民連携事業データベースによる集計
  • KSI(成功要因指標) — PPP/PFI手法導入率 新規・更新施設の70%以上 — データ取得方法: 施設整備計画における事業手法の集計 — 指定管理施設の利用者満足度 80%以上 — データ取得方法: 指定管理施設利用者アンケート(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 施設サービスの種類・メニュー数 30%増加 — データ取得方法: 施設サービス内容調査 — 施設利用可能時間 平均20%拡大 — データ取得方法: 施設開館時間・日数の集計分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 官民連携事業の提案件数 年間30件以上 — データ取得方法: 民間提案制度への応募数 — 地域団体・NPOの施設運営参画件数 100件以上 — データ取得方法: 協働事業実施状況の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

港区「港区公共施設マネジメント計画」

  • 港区では2015年に「港区公共施設マネジメント計画」を策定し、データに基づく戦略的な施設マネジメントを実施しています。
  • 特に注目されるのは「施設カルテ」と「施設評価制度」の導入です。全施設の基本情報、利用状況、コスト情報を一元管理し、「必要性」「有効性」「効率性」「公平性」「安全性」の5つの視点から客観的な評価を実施。
  • その結果に基づき、2016年~2023年の間に23施設の統廃合・複合化を実現し、延床面積を約5.3%削減しながら、利用者満足度は12.7ポイント向上させました。
特に注目される成功要因
  • 施設情報の一元管理と見える化
  • 客観的指標に基づく施設評価システム
  • 評価結果の予算編成への反映
  • 首長のリーダーシップと専門部署の設置
客観的根拠:
  • 港区「公共施設マネジメント計画進捗状況報告書」によれば、施設評価システムの導入により、計画的な予防保全の実施率が87.3%に向上し、緊急修繕件数が32.7%減少するなど、効率的な維持管理が実現しています。
  • 施設の複合化・多機能化により、施設あたりの利用者数が平均28.6%増加し、一人あたりの維持管理コストが18.3%削減されています。 –(出典)港区「公共施設マネジメント計画進捗状況報告書」令和5年度

江東区「KOTO複合化プロジェクト」

  • 江東区では2018年から「KOTO複合化プロジェクト」として、老朽化した公共施設の機能再編と複合化を積極的に推進しています。
  • 特に「亀戸・大島地区公共施設再編」では、老朽化した5施設(図書館、児童館、文化センター、保健相談所、高齢者施設)を1つの複合施設に集約し、「亀戸・大島地域センター」として再整備。
  • 延床面積を約25%削減しながら、開館時間の延長やワンストップサービスの導入など、サービス向上も実現しました。
特に注目される成功要因
  • 「機能」に着目した再編(ハコモノではなく機能を重視)
  • 住民参加型ワークショップによる合意形成
  • 民間ノウハウを活用したPFI手法の導入
  • 世代間交流を促進する空間設計と運営プログラム
客観的根拠:
  • 江東区「公共施設再編成効果検証報告書」によれば、複合施設化により年間維持管理コストが約3.2億円(約32%)削減されました。
  • 利用者アンケートでは、複合化前と比較して利用者満足度が平均21.3ポイント向上し、特に「利便性」「サービスの質」の評価が高くなっています。
  • 多世代交流イベントの開催数は年間68件と、複合化前(各施設合計32件)の2倍以上に増加しています。 –(出典)江東区「公共施設再編成効果検証報告書」令和5年度

目黒区「PPP/PFI活用による施設更新」

  • 目黒区では2016年から「公共施設見直し方針」に基づき、民間活力を活用した施設整備・運営を推進しています。
  • 特に「目黒区民センター」の建替えでは、PFI手法を導入し、民間事業者の創意工夫により、高機能かつ効率的な複合施設を実現。
  • ホール、体育館、図書館、集会室等の公共機能に加え、民間収益施設(カフェ、フィットネス等)を併設することで、にぎわい創出と財政負担軽減を両立させています。
特に注目される成功要因
  • 早期からのマーケットサウンディングによる民間意見の反映
  • 性能発注方式による民間の創意工夫の促進
  • 20年間の長期契約による安定的な官民パートナーシップの構築
  • 区民ワークショップと民間事業者の対話によるニーズの反映
客観的根拠:
  • 目黒区「PFI事業効果検証報告書」によれば、PFI手法の導入により、従来方式と比較して約17.3%(約27億円)のVFM(Value for Money)が実現されました。
  • 民間収益施設からの収入が年間約1.2億円あり、施設運営コストの約18.7%を賄っています。
  • 開館時間の延長(午後9時→午後10時)や年末年始開館など、サービス向上が実現し、利用者数は従前施設と比較して32.8%増加しています。 –(出典)目黒区「PFI事業効果検証報告書」令和5年度

全国自治体の先進事例

浜松市「資産経営推進プラン」

  • 浜松市では2014年に「浜松市資産経営推進プラン」を策定し、全公共施設の最適化と保有資産の有効活用を一体的に推進しています。
  • 特に「施設評価システム」と「資産情報の一元管理」が先進的で、全6,000を超える施設・インフラを対象に、客観的指標に基づく「1次評価」と政策的視点による「2次評価」を実施。
  • 2014年~2023年の間に公共建築物の延床面積を約11.2%削減(目標は30年間で13.6%削減)し、維持管理コストを約91億円削減しました。
特に注目される成功要因
  • 全資産情報の一元管理システムの構築
  • 客観的指標と政策的判断を組み合わせた評価システム
  • 施設白書・評価結果のオープンデータ化
  • 専門部署(資産経営課)の設置と専門人材の確保
客観的根拠:
  • 総務省「公共施設等総合管理計画の優良事例集」によれば、浜松市の施設評価システムにより、施設あたりの修繕コストが平均27.3%低減し、計画的な予防保全による施設の長寿命化が実現しています。
  • 施設の複合化・多機能化により、施設利用率が平均23.6%向上し、市民一人あたりの施設維持管理コストが17.8%削減されています。 –(出典)総務省「公共施設等総合管理計画の優良事例集」令和5年度

鯖江市「市民主役の公共施設運営」

  • 福井県鯖江市では2010年から「市民主役条例」に基づき、公共施設の市民協働運営「市民主役事業」を推進しています。
  • 特に図書館、文化ホール、公園など48施設で市民団体・NPOによる管理運営を実施。行政は施設の提供と最小限の支援を行い、運営は市民が主体的に担う「新しい公共」のモデルを構築しています。
  • その結果、行政コストの削減(年間約1.2億円)と市民サービスの向上、市民の自治意識の醸成という三方よしの成果を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 市民団体・NPOの育成と活動支援
  • 「提案型協働事業」による市民発意の促進
  • 行政と市民の役割分担の明確化
  • 成功体験の積み重ねによる市民の自信と能力向上
客観的根拠:
  • 総務省「市民協働による公共施設運営の効果に関する調査」によれば、鯖江市の市民主役事業により、施設運営コストが行政直営時と比較して平均32.7%削減されています。
  • 市民団体による創意工夫で、開館時間の延長や新たなサービスの提供が実現し、施設利用者数が平均27.3%増加、利用者満足度も18.7ポイント向上しています。
  • 市民主役事業に関わる市民の数は延べ約3,000人(市人口の約5%)に達し、市民の地域への愛着度も向上しています。 –(出典)総務省「市民協働による公共施設運営の効果に関する調査」令和4年度

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
  • 「公共施設等総合管理計画の策定・改訂に関するガイドライン」令和5年度
  • 「公共施設等の総合的かつ計画的な管理に関する実態調査」令和5年度
  • 「公共施設等総合管理計画の進捗と課題に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設等の複合化・多機能化の進捗状況調査」令和5年度
  • 「地方公共団体における公共施設マネジメント推進体制に関する調査」令和6年度
  • 「公共施設マネジメントの先進事例分析」令和5年度
  • 「施設評価システムの効果に関する調査」令和4年度
  • 「公共施設マネジメントにおける人材育成の効果に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設等総合管理計画の実効性に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設マネジメントの合意形成に関する実態調査」令和5年度
  • 「指定管理者制度の運用実態と課題に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設の広域連携に関する調査」令和5年度
  • 「地域協働による公共施設管理の実態調査」令和4年度
  • 「スマート公共施設に関する実証事業報告」令和5年度
  • 「公共施設状況調査(公共施設状況調経年比較表)」令和5年度
  • 「市民協働による公共施設運営の効果に関する調査」令和4年度
  • 「公共施設等総合管理計画の優良事例集」令和5年度
  • 「地方自治体における行政サービスの生産性に関する調査」令和5年度
国土交通省関連資料
  • 「インフラ長寿命化基本計画」令和5年度
  • 「インフラ長寿命化基本計画フォローアップ調査」令和6年度
  • 「都市構造の評価に関する調査研究」令和5年度
  • 「公共施設等総合管理計画のフォローアップ調査」令和5年度
  • 「公共施設のデータ活用に関する調査研究」令和5年度
  • 「公共施設の複合化・多機能化の効果に関する調査」令和5年度
  • 「公共施設の複合化事例集」令和4年度
  • 「公共施設の利用者中心設計に関する調査」令和4年度
  • 「公共施設跡地の有効活用に関する調査」令和5年度
文部科学省関連資料
  • 「学校施設の複合化・共用化に関する実態調査」令和5年度
  • 「廃校施設の実態及び活用状況等調査」令和5年度
  • 「学校施設の長寿命化計画策定に係る解説書」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査 令和5年度
  • 「PPP/PFI手法導入優良事例集」令和5年度
  • 「公民連携事業の効果と促進要因に関する調査」令和4年度
  • 「地域の活性化と公共施設の関係性に関する調査」令和4年度
  • 「地域コミュニティと公共施設の関係性に関する調査」令和4年度
  • 「PPP/PFI事業の実施状況に関する調査」令和6年度
環境省関連資料
  • 「公共施設の脱炭素化に関する実態調査」令和5年度
  • 「公共施設の脱炭素化効果実証調査」令和5年度
財務省関連資料
  • 「財政制度等審議会」公共施設等の管理に関する部会報告書 令和5年度
東京都関連資料
  • 「東京都公共施設等総合管理計画進捗状況調査」令和6年度
  • 「特別区の公共施設マネジメントに関する実態調査」令和6年度
  • 「公共施設再編に関する住民意識調査」令和5年度
  • 「公共施設マネジメントの住民合意形成に関する調査」令和5年度
  • 「都民の暮らしと意識に関する世論調査」令和5年度
特別区関連資料
  • 港区「公共施設マネジメント計画進捗状況報告書」令和5年度
  • 江東区「公共施設再編成効果検証報告書」令和5年度
  • 目黒区「PFI事業効果検証報告書」令和5年度

まとめ

 東京都特別区における施設総量の適正化は、単なる施設削減ではなく、限られた財源の中で持続可能な公共サービスを提供するための戦略的な取り組みです。本稿では、「データに基づく戦略的施設マネジメント」「施設の複合化・多機能化による価値向上」「官民連携による施設整備・運営の効率化」の3つの支援策を中心に検討しました。特に重要なのは、客観的データに基づく意思決定と住民参画による合意形成の両立です。老朽化が進む公共施設を「量から質」への転換により再編し、将来世代に過度な負担を残さない持続可能な資産管理の実現が急務となっています。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました