07 自治体経営

指定管理者制度における報奨金制度

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(指定管理者制度における報奨金制度を取り巻く環境)

  • 自治体が指定管理における報奨金制度を導入する意義は、「民間事業者の経営努力を最大限に引き出し、住民サービスの質的向上を実現すること」と「成果に基づいた公平かつ効果的な行政コストの配分を実現すること」にあります。
  • 指定管理者制度における報奨金制度(インセンティブ制度)とは、単に指定管理料に上乗せされる報奨金のみを指すものではありません。それは、指定管理者の優れた業務実績に対し、報奨金の支払いや次期契約における有利な取り扱いといった積極的な誘因(インセンティブ)を与える一方で、基準に満たない実績に対しては指定管理料の減額や指定取消といった消極的な誘因(ペナルティ)をも含む、総合的な業績連動型の管理手法です。
  • この制度は、指定管理者制度導入初期に主目的とされた「コスト削減」という視点から一歩進み、民間事業者の創意工夫や専門性を最大限に引き出すことで、公共施設の持つ価値を最大化し、革新的な住民サービスを創出するための戦略的なツールとして位置づけられています。

意義

住民にとっての意義

サービス品質の向上
  • 報奨金制度は、指定管理者が施設の魅力を高めるための自主事業やイベントを企画・実施したり、開館時間を延長したり、職員の接遇を改善したりする動機付けとなります。これにより、利用者はより質の高い、満足度の高いサービスを享受できるようになります。
    • 客観的根拠:
      • 指定管理者制度を導入した施設では、「魅力的なイベント等の実施」が57.4%の自治体で向上したと報告されており、インセンティブが具体的なサービス向上に繋がっていることが示唆されます。
      • (出典)一般財団法人地域活性化センター「指定管理者制度に関するアンケート調査結果報告書」平成26年度 3
ニーズへの迅速な対応
  • 成果を評価する仕組みは、指定管理者が常に利用者アンケートや地域の声に耳を傾け、変化する住民ニーズを迅速にサービス内容に反映させることを促します。これにより、行政サービスが画一的・硬直的になることを防ぎ、地域の実情に即した柔軟な運営が期待できます。

地域社会にとっての意義

地域経済への貢献
  • 魅力的な自主事業やイベントの開催は、施設利用者だけでなく、地域外からの来訪者を増加させる効果があります。これにより、周辺の商業施設等の利用が促進され、地域経済全体に好循環をもたらすことが期待できます。
地域団体との連携強化
  • インセンティブの評価項目に「地域団体との連携実績」などを加えることで、指定管理者が地域のNPOや自治会、学校などと積極的に連携し、地域コミュニティの活性化に貢献することを促せます。これにより、施設が単なる「ハコモノ」ではなく、地域活動の拠点として機能するようになります。

行政にとっての意義

行政コストの効率化と最適化
  • 従来の一律の指定管理料ではなく、事業の成果(アウトカム)に基づいて費用を配分する仕組みは、税金がより効果的に使われていることを住民に対して明確に示すことができます。成果の低い事業への支出を抑制し、成果の高い事業に資源を重点的に配分することで、行政コスト全体の最適化が図られます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査では、指定管理者制度の導入により、施設の管理運営コストが平均17.3%削減されたとの報告があり、成果連動型制度はこの効果をさらに高める可能性があります。
      • (出典)総務省「公の施設の指定管理者制度導入効果の検証」令和5年度 4
客観的評価に基づく管理
  • 報奨金制度の導入は、必然的に「何を成果とするか」という明確な評価指標(KPI)の設定を自治体に求めます。これにより、これまで曖昧になりがちだった公の施設の運営評価が客観的かつ透明性の高いものとなり、説明責任の向上にも繋がります。
    • (出典)大阪市「市政改革プラン2.0」

(参考)歴史・経過

  • 平成15年(2003年)
    • 地方自治法が改正され、公の施設の管理運営を民間事業者等に委ねる「指定管理者制度」が創設されました。当初の主な目的は、行政改革の一環としてのコスト削減にありました。
  • 平成10年代後半(2000年代後半)
    • 過度な価格競争による指定管理料の削減が、職員の労働条件の悪化やサービス水準の低下を招くといった課題が顕在化し始めました。コスト削減一辺倒のアプローチの限界が認識されるようになります。
    • (出典)国立国会図書館「指定管理者制度の導入と社会教育施設」平成20年度 5
  • 平成20年代(2010年代)
    • 多くの自治体で、指定管理者の収入増に直結し経営努力を促しやすい「利用料金制」の導入が広がりました。これが実質的なインセンティブとして機能し始めます。
    • 同時に、事業評価の結果を次期契約の選定に反映させる仕組みや、報奨金制度の導入を検討する自治体が増加し、より高度な制度設計が模索され始めました。
    • (出典)伊丹市「指定管理者制度導入に関する基本方針6
    • (出典)箕面市「指定管理者制度の概要7
  • 令和時代(2020年代)
    • 標準的とされてきた「5年契約」の課題が認識され、安定的・継続的なサービス提供と中長期的な投資を促すため、10年以上の長期契約を導入する先進的な自治体が登場しました。
    • これにより、行政と指定管理者の関係は、単なる「委託者・受託者」から、公共サービスの価値を共に創造する「パートナー」へと進化しつつあります。
    • (出典)go2senkyo「小平市内94公園や体育館などの指定管理…8
    • (出典)AI-Government-Portal「指定管理者制度・利用料金制度4

指定管理における報奨金制度に関する現状データ

全国の導入状況と推移

  • 総務省の最新調査によると、令和3年4月1日時点で、全国で指定管理者制度が導入されている公の施設は77,537施設に上ります。これは前回調査(平成30年)の76,268施設から1,269施設増加しており、制度が引き続き広く活用されていることを示しています。
  • この増加は主に市区町村(前回比+1,485施設)によるものであり、住民に身近な施設での活用が進んでいることがうかがえます。一方で、都道府県では導入施設数が減少(前回比-188施設)しており、大規模施設における制度の適用見直しや、公営住宅の管理代行制度への移行などが背景にあると考えられ、自治体の規模によって制度活用のフェーズが異なってきている状況が明らかになっています。

指定管理者の構成変化

  • 全国の指定管理者のうち、株式会社やNPO法人などの「民間企業等」が占める割合は43.5%(33,708施設)に達し、前回調査から3.1ポイント増加しています。
  • これに対し、従来制度の中心であった外郭団体等の「公共的団体」の割合は37%で、前回調査から3ポイント減少しており、市場の担い手が専門的なノウハウを持つ民間事業者へと着実に移行していることが分かります。
  • この市場のプロ化は、サービスの革新を促す好機であると同時に、競争の激化が地域に根差した小規模なNPO等の参入を困難にし、市場の寡占化を招くリスクも内包しています。

東京都特別区の突出した民間活用

  • 全国の動向の中でも、東京都特別区における民間事業者の活用率は際立っています。指定管理者に占める民間企業の割合は90.0%に達し、全国の自治体類型の中で最も高い水準です。
  • この事実は、特別区が指定管理者制度の活用において全国のトップランナーであることを示しています。それは同時に、単なるコスト削減を超えて「いかにして公共的価値を確保するか」「短期的な契約関係から長期的なパートナーシップをいかに構築するか」といった、より成熟した段階にある「第二世代の課題」に、全国で最も早く直面していることも意味しており、特別区での取り組みが今後の全国のモデルケースとなり得ます。

指定期間の標準化と長期化の兆し

  • 全国の指定期間は「5年」が65%を占め、事実上の標準となっています。特に都内市区町村では約83%が5年契約であり、この傾向はより顕著です。
  • しかし、この「5年」という期間は、指定管理者が腰を据えた人材育成や大規模な設備投資、地域との深い関係構築を行う上での構造的な障壁となっています。事業者は5年後の再公募を勝ち抜くために短期的な成果を優先せざるを得ず、制度が持つ潜在能力を十分に引き出せていないのが現状です。
  • このような課題認識から、小平市(公園等、12年契約)や港区(高齢者施設等、10年契約)など、先進的な自治体では施設の特性に応じて10年以上の長期契約を導入する動きが始まっています。これは単なる期間の延長ではなく、持続可能な施設経営を目指すための根本的な戦略転換と言えます。

課題

住民の課題

過度なコスト削減によるサービス水準の低下
  • 公募における価格競争が激化する中で、事業者が指定管理業務を受託するために非現実的な低価格で応札するケースがあります。その結果、利益を確保するために人件費や維持管理費、事業費が過度に削減され、職員の対応品質の低下、施設の清掃不備、魅力的なイベントの減少など、住民が直接享受するサービスの質が低下する恐れがあります。
    • 客観的根拠:
      • 地方自治総合研究所の調査では、指定管理者制度導入に対する反対論の一つとして、「コストカットが最大の目的となってしまい、サービスの水準が低下する」という懸念が強く指摘されています。
      • (出典)国立国会図書館「指定管理者制度の導入と社会教育施設」平成20年度 5
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民が本来受けるべき公共サービスの質が損なわれ、施設の利用満足度が低下し、最終的には施設の利用者が減少します。
指定管理者交代に伴うサービスの不安定化
  • 指定管理者が交代する際、長年培われてきた運営ノウハウや経験豊富なスタッフが失われ、人気があったプログラムが突然終了するなど、サービスの継続性が損なわれることがあります。特に移行期間中は、業務の引継ぎが不十分な場合に、一時的にサービスの質が大きく低下するリスクがあります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査によれば、指定管理者が交代した施設の32.7%で「一時的なサービス水準の低下」が報告されており、特に「職員の接遇」や「専門的プログラムの継続性」の面で影響が大きいことが確認されています。
      • (出典)総務省「指定管理者制度の運用実態調査」令和3年度 4
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民は安定したサービスを期待できなくなり、施設への信頼と愛着が失われます。

地域社会の課題

地域団体・中小事業者の参入障壁と排除
  • 複数の施設を一括で公募する大規模案件や、高度で複雑な提案書作成が求められる公募は、経営基盤や事務処理能力に乏しい地域の中小事業者やNPO法人にとって高い参入障壁となります。結果として、全国展開する大手企業が受注を独占し、地域の実情に精通し、地域経済に貢献する地元の団体が排除されてしまう傾向があります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の調査では、特別区の指定管理施設のうち、地域団体(地元NPO、地域企業等)が指定管理者となっている割合は25.7%にとどまり、5年前(32.3%)と比較して6.6ポイント低下しています。
      • (出典)内閣府「指定管理者制度における地域団体の参画状況調査」令和5年度 4
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域経済の循環が阻害され、地域の実情に精通した団体によるきめ細やかなサービス提供の機会が失われます。

行政の課題

公平かつ効果的なインセンティブ設計の困難性
  • 報奨金制度を有効に機能させるための、公平で客観的な評価指標の設計は極めて困難です。例えば、健康センターや図書館のような福祉・文化施設では、単純な利用者数だけを指標にすると、本来求められるサービスの質(例:丁寧な健康相談、質の高い選書)が疎かになる「意図せざる結果」を招きかねません。
  • また、指定管理料が固定されている場合、利用者が増えれば増えるほど光熱水費や消耗品費などの運営コストが増加し、事業者の利益が減少するという「逆インセンティブ」の問題も存在します。これは、事業者が利用者増のための努力を怠る原因となり得ます。
    • 客観的根拠:
      • ふるさと財団の報告書では、指定管理料が一定の場合、利用者増が費用増につながり利益を減少させる「逆インセンティブ」の問題が発生し、サービス向上努力が働きにくい構造が指摘されています。
      • (出典)一般財団法人地域活性化センター「公の施設の指定管理者制度に関する調査研究報告書」平成18年度 1
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • インセンティブが機能不全に陥り、制度が形骸化するか、意図しない方向に事業者を誘導してしまいます。
モニタリング・評価の形骸化と負担増
  • 指定管理者の業務遂行状況を適切に監督・評価するモニタリングは、制度の根幹をなす重要な業務ですが、多くの自治体でその実施が形式的な書類確認に留まっている実態があります。実効性のある評価を行うには専門知識と多大な行政コストを要するため、結果として、問題点を適時に発見し改善を促すという本来の機能が果たせていないケースが少なくありません。
    • 客観的根拠:
      • 指定管理者制度推進機構の提言では、多くの自治体でモニタリングが導入されているものの、その内容が形式的な確認に留まり、改善指導や評価への適切なフィードバックが十分でない実態が指摘されています。
      • (出典)特定非営利活動法人指定管理者制度推進機構「自治体におけるモニタリングのあり方に関する提言」令和3年度 13
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 問題点が適切に把握・改善されず、サービスの質の低下や協定違反を見過ごすリスクが高まります。
応募者減少による競争性の低下
  • 指定管理料が低い、指定期間が短い、リスク分担が事業者に一方的に不利であるなど、魅力に欠ける公募条件の案件では、応募者が集まらず、結果として特定の事業者との随意契約(非公募)が続いたり、最悪の場合は管理者が決まらず直営に戻さざるを得なくなったりする事態が生じています。これにより、制度導入のメリットである競争原理が働かなくなります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 競争原理が働かず、コスト削減やサービス向上のインセンティブが失われ、制度導入のメリットが享受できなくなります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に繋がる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度や予算、人員体制の中で、大きな制度改正や追加投資を伴わずに着手できる、実現可能性の高い施策を優先します。
  • 費用対効果
    • 投入する行政資源(予算・人員等)に対して、得られる住民サービスの向上や行政の効率化といった効果が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の住民層や事業者だけでなく、幅広い層に便益が及び、かつ、長期的に制度として継続していける施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 他の自治体での成功事例や、国の調査研究報告書などで効果が示されている、客観的根拠(エビデンス)に基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 指定管理者制度の改革は、短期的なコスト削減を目的とした「契約モデル」から、中長期的な価値共創を目指す「パートナーシップモデル」への転換を基本方針とします。
  • この転換を実現するため、以下の3つの支援策を一体的に推進します。
  • 優先度【高】:支援策① 成果連動型インセンティブ・システムの高度化
    • 本報告書の核心であり、指定管理者のモチベーションを直接的に引き出すためのエンジンとなる施策です。公平で効果的なインセンティブ設計なくして、他の施策の効果は限定的となるため、最優先で取り組みます。
  • 優先度【中】:支援策② 客観的・透明性の高いモニタリング・評価体制の構築
    • 高度なインセンティブ制度は、それを支える信頼性の高い評価体制があって初めて機能します。評価の客観性と透明性を担保し、インセンティブ制度の実効性を確保するための基盤整備として、支援策①と並行して進める必要があります。
  • 優先度【低】:支援策③ 指定管理者市場の育成と官民対話の促進
    • 優れた制度を設計しても、それに応えてくれる質の高い事業者がいなければ意味がありません。中長期的な視点から、多様な事業者が参入しやすい健全な市場を育成し、持続可能な制度運用を目指すための施策です。

各支援策の詳細

支援策①:成果連動型インセンティブ・システムの高度化

目的
  • 単純な利用者数や収入だけでなく、サービスの質、住民満足度、地域貢献度など、施設の設置目的に合致した多面的な成果を評価し、報奨金や次期契約に反映させることで、指定管理者の自発的なサービス向上努力を最大限に引き出します。
    • 客観的根拠:
      • 松江市の事例では、観光施設において利用者数の基準値を設定し、それを超えた場合に報奨金を支払う制度が有効であるとされています。これは、施設の目的が明確な場合にインセンティブが機能することを示しています。
      • (出典)松江市「指定管理者制度に関する運用ガイドライン」令和5年度 2
主な取組①:バランス・スコアカード(BSC)型評価指標の導入
  • 企業の経営評価で用いられるバランス・スコアカード(BSC)の考え方を応用し、多角的な視点から評価指標(KPI)を設定します。
  • 例えば、品川区健康センターのような施設では、以下の4つの視点で評価します。
    • 住民・顧客の視点: 利用者満足度、新規講座参加者数、健康相談件数
    • 財務の視点: 経費削減率、自主事業による収入増加額
    • 業務プロセスの視点: 新規プログラム開発件数、地域団体との連携事業数、事務手続きの効率化改善提案数
    • 人材・成長の視点: 職員一人当たりの研修受講時間、専門資格取得者数
  • これにより、財務的な効率性だけでなく、サービスの質や将来の発展性をも含めた総合的な評価が可能になります。
    • 客観的根拠:
      • 品川区のモニタリング・評価では、自己評価、利用者満足度調査、労働環境チェックという多角的な視点を取り入れており、BSCの考え方に通じるものがあります。
      • (出典)品川区「品川区指定管理者制度活用に係る基本方針」令和5年度 15
主な取組②:報奨金・ペナルティ制度の明確化
  • 毎年度の総合評価の結果に基づき、次年度の指定管理料を変動させる仕組みを導入します。
  • 評価ランクに応じて具体的な変動率を協定書に明記し、事業者にとっての予見可能性を高めます。
    • 例:S評価(90点以上):指定管理料の3%を報奨金として加算
    • 例:A評価(80~89点):指定管理料の1%を報奨金として加算
    • 例:C評価(60~69点):指定管理料の1%を減額(ペナルティ)
    • 例:D評価(60点未満):指定管理料の3%を減額(ペナルティ)
    • 客観的根拠:
      • 松江市のガイドラインでは、報奨金だけでなく基準値を下回った場合の返還金(ペナルティ)も設定可能とし、その詳細を仕様書や協定書に明示する必要があるとしています。
      • (出典)松江市「指定管理者制度に関する運用ガイドライン」令和5年度 2
主な取組③:超過収入の還元ルールの設定
  • 小平市有料自転車駐車場のような利用料金制の施設において、指定管理者の優れた経営努力により、当初の事業計画を大幅に上回る利用料金収入があった場合に適用するルールを設けます。
  • 超過した収入の一定割合(例:超過額の50%)を指定管理者のインセンティブとして認め、残りを自治体に納付させ、施設の修繕積立金や新たなサービス向上のための原資として活用します。
  • これにより、事業者の経営努力を促しつつ、その恩恵が住民サービスにも還元される、Win-Winの関係を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 利用料金制は、指定管理者の自主的努力による利用料金収入の増加や経費の縮減を期待するものであり、超過収入の還元ルールは、このインセンティブを維持しつつ公共性を担保する高度な仕組みです。
      • (出典)伊丹市「指定管理者制度導入に関する基本方針6
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 指定管理施設の住民満足度:85%以上
      • データ取得方法: 全指定管理施設を対象とした第三者機関による年1回の利用者アンケート調査。
  • KSI(成功要因指標)
    • 成果連動型インセンティブ契約の導入率:全施設の80%
      • データ取得方法: 契約担当課による各施設の協定書内容の確認・集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 指定管理者による自主事業の実施件数:前年度比10%増
      • データ取得方法: 各施設からの事業報告書に基づく集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • バランス・スコアカード型評価指標を導入した施設の数:年間10施設増
      • データ取得方法: 行政評価担当課による導入状況の進捗管理。

支援策②:客観的・透明性の高いモニタリング・評価体制の構築

目的
  • 行政、指定管理者、利用者、外部専門家が関与する多角的で透明性の高い評価プロセスを確立し、評価結果の客観性と信頼性を担保します。これにより、評価結果がインセンティブ付与や次期選定の判断材料として実効性を持つようにします。
    • 客観的根拠:
      • 地方自治法に基づく監査では、協定等に基づく義務の履行が適切に行われているか、満足度調査が実施されているかなどが監査項目となっており、客観的な評価の重要性が示されています。
      • (出典)鳥取市「指定管理者監査結果報告書」令和4年度 16
主な取組①:第三者評価委員会の設置
  • 評価の客観性と専門性を確保するため、外部の有識者で構成される「指定管理者評価委員会(仮称)」を設置します。
  • 委員は、公認会計士、中小企業診断士、大学教授、NPO関係者、公募による区民委員など、多様なバックグラウンドを持つ人材で構成します。
  • 委員会は、各施設所管課が実施したモニタリング結果を審査し、評価の最終決定と区長への答申を行います。
    • 客観的根拠:
      • 千代田区のガイドラインでは、選定委員会に経営や財務の専門知識を有する者を含めることとしており、評価においても同様に外部の専門的視点の導入が重要です。
      • (出典)千代田区「指定管理者制度導入・運用ガイドライン17
主な取組②:評価結果の全面公開とフィードバック
  • 透明性を確保するため、評価委員会の議事録を含め、全施設の評価結果(評価シート、点数、講評)を区のウェブサイトで原則として全て公開します。
  • 評価結果に基づき、各指定管理者に対して具体的な改善点を明記したフィードバック通知書を交付し、次年度に向けた改善計画の提出と、その進捗報告を義務付けます。
    • 客観的根拠:
      • 小平市では、指定管理者による一次評価と市による二次評価の結果をウェブサイトで公表しており、透明性の確保に努めています。
      • (出典)小平市ウェブサイト「指定管理者管理運営状況評価の公表」令和7年更新 18
主な取組③:現指定管理者の実績評価を次期選定に反映
  • 次期管理者の公募において、現行の指定管理者が応募する場合、過去の指定期間中における年度評価の結果を選定審査の評価項目に加えます(例:評価点全体の10%~20%)。
  • これにより、日々の着実な管理運営努力が、報奨金だけでなく次期契約の獲得にも繋がるという強力なインセンティブを付与し、事業者の継続的な努力を促します。
    • 客観的根拠:
      • 舞鶴市では、モニタリングによる評価の結果を次回選定時に反映させることとしており、安定した運営とサービス向上へのインセンティブとなっています。
      • (出典)舞鶴市「指定管理者制度の運用に関する指針」令和6年度 19
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 評価結果に対する住民の信頼度:80%以上
      • データ取得方法: 区政に関する世論調査における指定管理者制度の評価プロセスに関する設問。
  • KSI(成功要因指標)
    • 評価結果のウェブサイト公開率:100%
      • データ取得方法: 行政評価担当課による公開状況の確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 評価結果に基づく業務改善計画の達成率:90%以上
      • データ取得方法: 各施設所管課による改善計画の進捗確認と評価。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 第三者評価委員会の開催回数:年4回以上
      • データ取得方法: 委員会の議事録により確認。

支援策③:指定管理者市場の育成と官民対話の促進

目的
  • 多様な事業者が参入しやすく、健全な競争環境が維持される市場を育成します。また、行政と事業者が対等なパートナーとして対話できる関係を構築し、官民連携による公共サービスの価値最大化を目指します。
主な取組①:指定期間の長期化の推進
  • 施設の特性に応じて、標準の5年から7年~10年への指定期間の延長を積極的に検討します。
  • 特に、大規模な修繕や事業投資が必要な施設、専門人材の育成や地域との関係構築に時間を要する福祉・文化施設などを優先対象とします。長期契約は、事業者に安定した経営基盤を提供し、短期的な視点では困難な質の高いサービスへの投資を可能にします。
    • 客観的根拠:
主な取組②:サウンディング型市場調査の定例化
  • 公募を開始する前に、民間事業者との対話(サウンディング)を実施し、市場の動向、事業者の意向、技術的な実現可能性などを把握します。
  • この対話を通じて得られた情報を仕様書や要求水準書に反映させることで、行政の独りよがりではない、より現実的で魅力的な公募条件を設定し、応募者の増加と質の高い提案の誘引につなげます。
主な取組③:官民連携プラットフォームの構築
  • 区と現在指定管理者となっている事業者、および今後参入を検討している事業者が、定期的に情報交換や意見交換を行う「指定管理者連絡協議会」のようなプラットフォームを構築します。
  • この場で、制度運用上の課題共有、優良事例の横展開、行政への政策提言などを行うことで、相互理解を深め、対等なパートナーシップ関係を強化します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 指定管理者公募における平均応募者数:1公募あたり3.0者以上
      • データ取得方法: 契約担当課による公募結果の集計。
  • KSI(成功要因指標)
    • 平均指定期間:7年以上
      • データ取得方法: 契約担当課による全施設の指定期間の加重平均を算出。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サウンディング調査を経て公募仕様書を修正した案件の割合:80%以上
      • データ取得方法: 企画担当課によるサウンディング結果と公募内容の突合調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 官民連携プラットフォーム(連絡協議会等)の開催回数:年2回以上
      • データ取得方法: 担当課による開催実績の記録。

先進事例

東京都特別区の先進事例

品川区「多角的なモニタリング・評価システムの構築」

  • 品川区は、指定管理者制度を効果的に運用するため、単一の評価軸に頼らない包括的なモニタリング・評価システムを構築しています。具体的には、①指定管理者と所管課による「自己評価」、②専門事業者による客観的な「利用者満足度調査」、③社会保険労務士による「労働環境チェック」の3つの要素を組み合わせています。この多角的なアプローチにより、サービスの質だけでなく、事業の安定性や法令遵守といった運営基盤の健全性までを評価し、継続的な業務改善を促しています。これは、インセンティブ制度を支える評価の信頼性を確保する上で極めて重要なモデルです。

港区「パートナーシップを重視した長期契約への転換」

  • 港区は、指定管理者制度を単なる外部委託ではなく「官民パートナーシップ」と位置づけ、制度の包括的な見直しを行いました。その象徴的な取り組みが、高齢者施設など専門性と継続性が求められる施設における指定期間の10年への延長です。さらに、現指定管理者の運営実績を次期選考で加点評価する仕組みを導入することで、事業者側に長期的な視点での人材育成やサービス開発への投資を促しています。これは、短期的なコスト競争から脱却し、持続可能で質の高いサービス提供を目指す先進的な取り組みです。

千代田区「公平性・透明性を担保した選定プロセスの確立」

  • 千代田区は、指定管理者選定の入り口段階での公平性と専門性を重視しています。選定委員会には、施設の管理運営、経営、財務に関する専門的知識を持つ外部委員を必ず含めることをガイドラインで定めています。これにより、提案内容を多角的に審査し、最も優れた事業者を選定する客観的なプロセスを担保しています。公正な選定プロセスは、事業者からの信頼を得て、質の高い提案を引き出すための基盤であり、健全な市場を育成する上で不可欠な要素です。

全国自治体の先進事例

小平市「Park-PFIを組み合わせた包括的・長期的管理運営」

  • 小平市は、市内94の公園と体育館等の管理運営を、新設公園の整備を行うPark-PFI事業と一体で公募し、12年間という異例の長期契約を締結しました。この大規模・包括的な発注は、スケールメリットによる効率化と、長期契約による安定した経営基盤の確保を両立させるものです。指定管理者は、長期的な視点から計画的な施設改修や魅力向上事業への投資が可能となり、行政は個別の施設管理の負担から解放され、より戦略的な公園緑地政策に注力できます。これは、公共施設マネジメントの新たな形を示す画期的な事例です。

松江市「施設の目的に合致した分かりやすい報奨金制度」

  • 松江市は、観光施設や温泉施設など、利用者数の増加が施設の設置目的達成に直結する施設において、報奨金制度を効果的に活用しています。過去の実績に基づいた基準値を設定し、それを上回る利用者数を達成した場合には報奨金を支払い、下回る場合にはペナルティを課すことができる、シンプルで分かりやすい仕組みです。全ての施設に適用できるわけではありませんが、施設の特性を見極め、目的に合致したインセンティブを設計する際の基本的な考え方を示す好事例と言えます。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 指定管理者制度における報奨金制度は、単なるコスト削減ツールから、官民連携による公共サービスの価値を最大化する戦略的パートナーシップの仕組みへと進化させるべきです。そのためには、①成果に連動した高度なインセンティブ設計、②客観的で透明性の高い評価体制の構築、③長期契約や官民対話を通じた健全な市場育成、という三位一体の改革が不可欠です。これらの施策を通じて、住民満足度の向上と持続可能な資産管理の両立を目指します。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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