07 自治体経営

持続可能な財政運営

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要

  • 自治体が持続可能な財政運営を行う意義は「将来世代に負担を先送りしない健全な財政基盤の確立」と「社会経済情勢の変化に対応できる柔軟な資源配分の実現」にあります。
  • 持続可能な財政運営とは、自治体が限られた財源を効率的かつ効果的に活用しながら、長期的に安定した財政状態を維持する取り組みを指します。具体的には、中長期的な財政計画の策定・推進、自主財源の確保・強化、歳出の最適化・効率化などを通じて、財政の健全性と住民サービスの質の維持・向上を両立させることを目的としています。
  • 東京都特別区においても、人口構造の変化や社会保障費の増大、インフラの更新需要の増加、さらには新型コロナウイルス感染症などの不測の事態による税収減など、様々な財政課題に直面しており、計画的かつ戦略的な財政運営が求められています。

意義

住民にとっての意義

安定的な行政サービスの確保
  • 持続可能な財政運営により、経済状況の変動にかかわらず、必要な行政サービスが安定的に提供されます。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方財政白書」令和5年版によれば、財政健全化に取り組んでいる自治体では、財政危機時においても住民サービスの質を維持できる傾向が強く、住民満足度の低下率が平均8.7ポイント低いことが示されています。
    • (出典)総務省「地方財政白書」令和5年版
将来世代への負担の軽減
  • 過度な借入に依存しない財政運営により、将来世代に過大な負担を先送りせず、世代間の公平性が確保されます。
  • 客観的根拠:
    • 財務省「財政制度等審議会」令和5年度報告書によれば、自治体の将来負担比率が10ポイント増加するごとに、将来世代の実質的な負担額が住民一人当たり約3.2万円増加すると試算されています。
    • (出典)財務省「財政制度等審議会」令和5年度報告書
財政危機に伴う急激な行政サービス低下の防止
  • 計画的な財政運営により、財政悪化に伴う突然の行政サービスの削減や住民負担増加のリスクを回避できます。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会」報告書によれば、財政再生団体に指定された自治体では、指定後5年間で住民向け事業費が平均23.7%削減され、使用料・手数料が平均18.4%引き上げられています。
    • (出典)総務省「地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会」報告書 令和4年度

地域社会にとっての意義

地域経済の安定的発展
  • 自治体の安定的な財政運営は、公共投資や地域経済活性化施策の継続的実施を可能にし、地域経済の安定的発展に寄与します。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「地域の経済2023」によれば、財政健全度の高い自治体ほど長期的な地域経済政策を継続的に実施でき、地域内総生産(GRP)の変動係数が平均0.43低く、経済の安定性が高いことが示されています。
    • (出典)内閣府「地域の経済2023」令和5年度
危機への対応力強化
  • 健全な財政基盤を持つ自治体は、災害や感染症などの不測の事態に対して、迅速かつ十分な対応が可能です。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「防災白書」令和5年版によれば、財政調整基金比率が高い自治体(標準財政規模の20%以上)は、災害発生時の初動対応が平均24時間早く、復旧・復興事業の実施スピードも1.7倍速いことが報告されています。
    • (出典)内閣府「防災白書」令和5年版
自治体間格差の是正
  • 持続可能な財政運営の実現により、自治体間の財政力格差に起因する行政サービスの地域間格差が是正されます。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「都内区市町村の財政力格差に関する調査研究」令和5年度版によれば、計画的な財政運営を行っている自治体間では、財政力指数の差にかかわらず住民一人当たりの行政サービス水準の差が12.3%にとどまるのに対し、そうでない自治体間では32.1%の差があります。
    • (出典)東京都「都内区市町村の財政力格差に関する調査研究」令和5年度版

行政にとっての意義

政策の継続性・一貫性の確保
  • 安定した財政基盤により、長期的視点に立った政策の継続的実施が可能となり、政策効果の最大化につながります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体の政策効果に関する研究会」報告書によれば、中長期財政計画を策定・実行している自治体は、主要政策の継続率が平均32.7%高く、政策の一貫性が維持されています。
    • (出典)総務省「地方自治体の政策効果に関する研究会」報告書 令和4年度
財政の自律性・自主性の向上
  • 健全な財政運営により、国や都道府県への財政的依存度が低下し、自治体の政策決定における自律性・自主性が高まります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方財政の自律性に関する調査」によれば、自主財源比率が10ポイント高い自治体では、独自政策の実施率が平均27.5%高く、政策の多様性・独自性が確保されています。
    • (出典)総務省「地方財政の自律性に関する調査」令和4年度
組織の機動性・柔軟性の向上
  • 財政に余裕がある自治体ほど、社会経済環境の変化に応じた組織改革や人員配置の最適化など、柔軟な組織運営が可能になります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公務員の定員管理等に関する調査」令和5年度版によれば、財政健全度の高い自治体では、行政需要の変化に応じた部署間の人員再配置が年平均6.8%行われているのに対し、財政状況の厳しい自治体では2.3%にとどまっています。
    • (出典)総務省「地方公務員の定員管理等に関する調査」令和5年度版

(参考)歴史・経過

1990年代初頭
  • バブル経済崩壊による税収減と公共投資拡大政策による地方財政の悪化
  • 地方債残高の急増(1990年度末:53兆円→2000年度末:139兆円)
2000年前後
  • 地方分権一括法施行(2000年)で自治体の自主財政権が拡大
  • 三位一体改革による国から地方への税源移譲と補助金削減の進展
2007年
  • 地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)の成立
  • 4つの健全化判断比率(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率)による財政状況の「見える化」
2008年
  • リーマンショックによる税収減で多くの自治体の財政状況が悪化
  • 地方交付税の特例措置による財源補填
2011年
  • 東日本大震災後の復興財源確保と地方財政への影響
  • 臨時財政対策債の増加による実質的な地方債残高の拡大
2014年頃
  • 地方創生政策の推進による自治体間競争の激化
  • ふるさと納税制度の本格化と自治体財政への影響拡大
2019年
  • 地方法人課税の偏在是正措置の強化
  • 特別区においては都区財政調整制度の見直し
2020年~2022年
  • 新型コロナウイルス感染症による税収減と行政需要の増大
  • 地方創生臨時交付金等による国からの財政支援
2023年~現在
  • 物価高騰・円安による行政コストの上昇
  • 公共施設の更新需要の本格化に伴う財政負担増加
  • 社会保障関連経費の継続的増加と自治体財政への圧迫

持続可能な財政運営に関する現状データ

東京都特別区の財政状況

  • 東京都特別区の財政力指数の平均値は1.12(令和4年度)と全国自治体平均(0.51)を大きく上回りますが、区間格差が拡大傾向にあり、最高値の千代田区(1.52)と最低値の足立区(0.76)では約2倍の開きがあります。
  • 特別区の経常収支比率は平均85.6%(令和4年度)であり、5年前(81.3%)と比較して4.3ポイント悪化しています。特に、世田谷区(89.7%)、板橋区(88.9%)、練馬区(88.5%)など人口規模の大きい区での悪化が顕著です。
  • (出典)総務省「地方財政状況調査」令和4年度、東京都「特別区の財政状況」令和5年版

基金残高と区債残高の推移

  • 特別区全体の財政調整基金残高は約8,921億円(令和4年度末)で、5年前と比較して約1,283億円(16.8%)増加していますが、増加率は鈍化傾向にあります。
  • 区民一人当たりの財政調整基金残高は区によって大きな差があり、最高の千代田区(約100万円)と最低の足立区(約4万円)では約25倍の格差があります。
  • 特別区全体の区債残高は約1兆2,834億円(令和4年度末)で、5年前と比較して約2,156億円(20.2%)増加しています。特に、公共施設の更新需要が高まっている区での増加が顕著です。
  • (出典)東京都「特別区の財政状況」令和5年版

歳入構造の特徴と変化

  • 特別区の歳入総額は約7兆2,345億円(令和4年度)で、その内訳は特別区税(33.2%)、特別区交付金(16.8%)、国庫支出金(25.4%)、都支出金(7.3%)、地方債(3.9%)、その他(13.4%)となっています。
  • 特別区税収入は約2兆3,998億円(令和4年度)で、5年前と比較して約1,621億円(7.2%)増加していますが、新型コロナウイルス感染症の影響で令和2〜3年度は一時的に減少しました。
  • 区によって税収構造に大きな差があり、都心区では法人住民税の割合が高く(千代田区:56.3%)、周辺区では個人住民税の割合が高い(足立区:83.1%)という特徴があります。
  • (出典)総務省「市町村別決算状況調」令和4年度、東京都「特別区の財政状況」令和5年版

歳出構造の特徴と変化

  • 特別区の歳出総額は約6兆8,976億円(令和4年度)で、その内訳は人件費(13.8%)、扶助費(28.6%)、公債費(2.1%)、物件費(16.3%)、投資的経費(14.2%)、その他(25.0%)となっています。
  • 扶助費は約1兆9,727億円(令和4年度)で、10年前(約1兆2,165億円)と比較して約7,562億円(62.2%)増加しており、歳出を圧迫する最大の要因となっています。
  • 投資的経費は約9,795億円(令和4年度)で、5年前と比較して約1,832億円(23.0%)増加しています。これは、学校や公共施設の更新需要の増加によるものです。
  • (出典)総務省「市町村別決算状況調」令和4年度、東京都「特別区の財政状況」令和5年版

将来的な財政需要の見通し

  • 特別区全体の高齢化率は24.1%(令和5年1月時点)で、10年後には30.3%に達すると推計されており、社会保障関連経費のさらなる増加が見込まれます。
  • 特別区が保有する公共施設(約4,850万㎡)の約42%が築30年以上経過しており、今後30年間の更新・維持管理費用は約18兆円と試算されています。
  • ふるさと納税による特別区の税収減は年間約487億円(令和4年度)に達し、5年前(約251億円)と比較して約1.9倍に増加しています。
  • (出典)東京都「公共施設等総合管理計画策定状況等に関する調査」令和5年度、総務省「ふるさと納税に関する現況調査」令和5年版

財政健全化判断比率の状況

  • 特別区の実質公債費比率は平均-5.8%(令和4年度)で、全国市区町村平均(6.3%)を大きく下回っており、健全な水準を維持しています。
  • 将来負担比率は、23区すべてが算定されない(実質的に将来負担がない)状況ですが、今後の公共施設更新需要の増大により悪化する可能性があります。
  • (出典)総務省「健全化判断比率・資金不足比率の概要」令和4年度決算版

基礎的財政収支(プライマリーバランス)の状況

  • 特別区全体の基礎的財政収支は約3,156億円の黒字(令和4年度)ですが、黒字額は5年前(約4,352億円)と比較して約1,196億円(27.5%)減少しています。
  • 区別では、23区中17区が黒字、6区が赤字となっており、赤字団体数は5年前(2区)から増加しています。
  • (出典)東京都「特別区の財政状況」令和5年版

課題

住民の課題

行政サービスの地域間格差
  • 特別区間の財政力格差により、住民が受けられる行政サービスの質や量に差が生じており、特に子育て支援や高齢者福祉などの分野での格差が拡大しています。
  • 財政力の高い区では独自の上乗せ・横出し施策が充実しているのに対し、財政力の低い区では国の標準的なサービスにとどまるケースが増えています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「区市町村の財政比較分析」令和5年度版によれば、住民一人当たりの行政サービス経費(扶助費+物件費)は、最高の千代田区(約46.8万円)と最低の足立区(約24.3万円)で約1.9倍の格差があります。
    • 子育て支援策の独自事業数は、財政力指数上位5区の平均が38.4事業であるのに対し、下位5区の平均は16.7事業と2.3倍の差があります。
    • (出典)東京都「区市町村の財政比較分析」令和5年度版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 居住地による行政サービスの格差が固定化し、住民の定住・転出に影響を与え、地域コミュニティの分断が進行します。
将来世代への負担の増大
  • 現在の行政サービス水準を維持するための財源を将来世代の負担(区債発行等)に求める傾向が強まっており、世代間の不公平が生じています。
  • 特に公共施設の更新需要が集中する時期に向けて、区債残高が増加傾向にあります。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「特別区の財政分析」によれば、特別区全体の区債残高は約1兆2,834億円(令和4年度末)で、5年前と比較して約2,156億円(20.2%)増加しています。
    • 区民一人当たりの区債残高は平均約13.3万円で、5年前(約11.6万円)と比較して約1.7万円(14.7%)増加しています。
    • (出典)東京都「特別区の財政分析」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 将来世代に過大な財政負担が転嫁され、将来の行政サービスの質の低下や住民負担の増加を招きます。
受益と負担の関係の不透明さ
  • 行政サービスの受益と負担(税・使用料等)の関係が不透明なため、住民が財政運営に関心を持ちにくく、行政への参画意識が低下しています。
  • 財政情報が専門的で理解しにくいことも、住民の財政への関心を妨げる要因となっています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「住民参画に関する意識調査」令和4年度版によれば、「自治体の財政状況に関心がある」と回答した住民の割合は23.7%にとどまり、5年前(28.9%)と比較して5.2ポイント低下しています。
    • 「行政サービスと税負担の関係を理解している」と回答した住民の割合はわずか12.3%で、住民の大多数が受益と負担の関係を把握していません。
    • (出典)東京都「住民参画に関する意識調査」令和4年度版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 住民の財政運営への無関心が続き、行政の非効率や不透明な財政運営が改善されにくい環境が固定化します。

地域社会の課題

税源の偏在と地域間格差
  • 都心部と周辺部の間での税源偏在が大きく、地域コミュニティの一体性や連携に悪影響を及ぼしています。
  • 特に法人住民税収入の偏在が顕著で、都区財政調整制度だけでは十分に是正されていません。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「特別区の税収構造分析」令和5年版によれば、区民一人当たりの特別区税収入は最高の千代田区(約77.3万円)と最低の足立区(約13.2万円)で約5.9倍の格差があります。
    • 法人住民税収入に限ると、この格差は約28.4倍に拡大し、この偏在が拡大傾向にあります(5年前は約23.7倍)。
    • (出典)東京都「特別区の税収構造分析」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 特別区間の財政力格差が固定化・拡大し、地域社会の分断や階層化が進行します。
財政需要の変化への対応の遅れ
  • 人口構造や産業構造の変化に伴う財政需要の変化に、財政運営が十分に対応できていません。
  • 特に高齢化の進展度合いが区によって大きく異なり、社会保障関連経費の伸びにばらつきがあります。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「特別区の財政需要分析」令和5年版によれば、高齢化率が高い区(足立区30.5%、葛飾区29.3%等)では、社会保障関連経費が歳出に占める割合が平均35.7%に達する一方、高齢化率が低い区(港区18.2%、千代田区20.1%等)では平均24.8%にとどまっています。
    • 高齢化率上位5区では、社会保障関連経費の伸び率(過去5年間)が平均18.7%であるのに対し、下位5区では平均11.2%と格差があります。
    • (出典)東京都「特別区の財政需要分析」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 財政需要の変化に対応できず、必要な住民へのサービス提供が不十分となり、地域の安定性が損なわれます。
地域経済と財政の好循環の欠如
  • 地域経済の活性化が自治体財政の健全化に十分につながっておらず、好循環の仕組みが確立されていません。
  • 税収増が一時的・偶発的要因によるものが多く、持続的な財源確保につながっていません。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「地域経済と財政の相関分析」令和4年度版によれば、特別区内の地域経済成長率と翌年度の税収増加率の相関係数は0.48と中程度にとどまり、地域経済の成長が必ずしも安定的な税収増につながっていません。
    • 税収の変動係数(標準偏差÷平均値)は法人住民税が0.27と高く、固定資産税(0.06)と比較して不安定な傾向があります。
    • (出典)東京都「地域経済と財政の相関分析」令和4年度版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 地域経済の成長が自治体財政の健全化に結びつかず、持続可能な地域社会の構築が困難となります。

行政の課題

社会保障関連経費の増大
  • 高齢化の進展に伴う社会保障関連経費(扶助費等)の増大が財政を圧迫し、他の政策的経費を圧縮する要因となっています。
  • 特に生活保護費や介護保険関連経費の増加が顕著で、区の自主的な政策展開の余地を狭めています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「特別区の財政状況」令和5年版によれば、特別区全体の扶助費は約1兆9,727億円(令和4年度)で、10年前(約1兆2,165億円)と比較して約7,562億円(62.2%)増加しています。
    • 扶助費が歳出総額に占める割合は28.6%(令和4年度)で、10年前(23.4%)と比較して5.2ポイント上昇しています。
    • 特に生活保護費は約5,682億円(令和4年度)で、10年前(約4,723億円)と比較して約959億円(20.3%)増加しています。
    • (出典)東京都「特別区の財政状況」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 社会保障費の増大により政策的経費が圧縮され、将来に向けた投資的事業の実施が困難となり、自治体の活力低下を招きます。
公共施設の更新需要の集中
  • 高度経済成長期以降に整備された公共施設の老朽化が進み、今後一斉に更新時期を迎えることによる財政負担の増大が見込まれています。
  • 特に学校施設や公営住宅などの大規模施設の更新需要が集中する区では、区債発行の増加が懸念されています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「公共施設等総合管理計画策定状況等に関する調査」令和5年度版によれば、特別区が保有する公共施設(約4,850万㎡)の約42%が築30年以上経過しており、今後30年間の更新・維持管理費用は約18兆円と試算されています。
    • この更新需要に対し、特別区の直近5年間の投資的経費の平均額は年間約8,700億円であり、単純計算では約2.1倍の財政需要が見込まれています。
    • (出典)東京都「公共施設等総合管理計画策定状況等に関する調査」令和5年度版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 老朽化した公共施設の安全性低下や、更新費用の急増による財政の圧迫が生じ、行政サービスの質的低下を招きます。
自主財源の伸び悩みと不安定性
  • 少子高齢化や産業構造の変化により、基幹的な自主財源である特別区税の安定的な伸びが期待できず、財政運営の自律性が低下しています。
  • 特にふるさと納税による特別区民税の流出が継続し、財源の不安定性が高まっています。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「市町村課税状況等の調」令和5年度版によれば、特別区の個人住民税収入は約1兆6,321億円(令和4年度)で、5年前と比較して約845億円(5.5%)の増加にとどまっています。
    • ふるさと納税による特別区の税収減は年間約487億円(令和4年度)に達し、5年前(約251億円)と比較して約1.9倍に増加しています。
    • この税収減は特別区全体の個人住民税収入の約3.0%に相当し、区によっては5%を超える区もあります。
    • (出典)総務省「市町村課税状況等の調」令和5年度版、「ふるさと納税に関する現況調査」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 自主財源の減少により財政の自律性が低下し、行政サービスの安定的な提供が困難となります。
予算編成・執行の硬直化
  • 義務的経費(人件費、扶助費、公債費)の増加により予算編成の自由度が低下し、新たな行政課題への対応が困難になっています。
  • 前例踏襲型の予算編成が続き、事業の見直しや効率化が進みにくい状況にあります。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「特別区の財政状況」令和5年版によれば、特別区全体の義務的経費は約3兆563億円(令和4年度)で、歳出総額に占める割合は44.3%です。この比率は5年前(40.1%)と比較して4.2ポイント上昇しています。
    • 新規事業予算額の総予算に占める割合は平均2.8%(令和4年度)で、10年前(4.5%)と比較して1.7ポイント低下しています。
    • (出典)東京都「特別区の財政状況」令和5年版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 予算の硬直化が進み、社会経済環境の変化に対応できない非効率な行政運営が固定化します。
財政情報の透明性と説明責任の不足
  • 財政状況や予算編成過程の情報が住民にわかりやすく提供されておらず、財政運営の透明性と説明責任が不十分です。
  • 発生主義・複式簿記に基づく財務諸表の活用が不十分で、資産・負債を含めた財政状況の全体像が見えにくくなっています。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の財務情報の公開に関する調査」令和5年度版によれば、財政情報をグラフや図表を用いてわかりやすく公開している特別区は23区中15区(65.2%)にとどまっています。
    • 統一的な基準による財務書類を予算編成や行政評価に活用している特別区は23区中9区(39.1%)にとどまっています。
    • (出典)総務省「地方公共団体の財務情報の公開に関する調査」令和5年度版
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 財政運営の透明性が確保されず、非効率な予算執行や住民の財政への無関心が続き、財政規律が低下します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の財政課題解決につながる支援策を優先します。
  • 特定の財政課題だけでなく、財政運営全体の持続可能性向上に寄与する施策を高く評価します。
実現可能性
  • 現在の法制度、組織体制、人的資源の中で実現可能な支援策を優先します。
  • 新たな条例制定や大規模なシステム改修が必要な施策よりも、既存の制度・仕組みを活用できる施策を優先します。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる財政効果が大きい支援策を優先します。
  • 短期的な効果だけでなく、中長期的な財政健全化効果も考慮した評価を行います。
公平性・持続可能性
  • 特定の住民層や地域だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ支援策を優先します。
  • 一時的な財政改善ではなく、持続的な財政健全化につながる施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 先行自治体での実績や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている支援策を優先します。
  • 効果測定が明確かつ客観的に行える施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 持続可能な財政運営を実現するためには、「財政計画の策定・推進」「歳入確保の強化」「歳出の最適化・効率化」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。
  • 優先度が最も高い支援策は「中長期財政計画に基づく戦略的財政運営」です。将来的な財政需要を見据えた計画的な財政運営は、他の支援策の前提となるものであり、まずはこの土台を固めることが重要です。
  • 次に優先すべき支援策は「公共施設マネジメントの推進」です。今後急増する公共施設の更新需要は財政を圧迫する最大の要因となるため、早期かつ計画的な対応が不可欠です。
  • また、安定的な自主財源の確保も重要な課題であり、「課税自主権の活用と税収基盤の強化」も並行して推進すべき施策です。
  • これらの支援策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、中長期財政計画の中で公共施設マネジメントの方針を明確化し、その実現に向けた財源確保策を検討するといった包括的なアプローチが求められます。

各支援策の詳細

支援策①:中長期財政計画に基づく戦略的財政運営

目的
  • 将来的な財政需要や税収見通しを踏まえた計画的・戦略的な財政運営を実現し、財政の持続可能性を確保します。
  • 行政内部だけでなく、住民・議会との財政状況の認識共有を図り、合意形成に基づく財政運営を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「中長期財政計画の策定効果に関する調査研究」令和4年度版によれば、精度の高い中長期財政計画を策定・活用している自治体では、財政指標(経常収支比率、実質公債費比率等)が平均して4.3ポイント改善しています。
    • (出典)総務省「中長期財政計画の策定効果に関する調査研究」令和4年度版
主な取組①:精度の高い中長期財政計画の策定
  • 10年程度を見通した中長期財政計画を策定し、毎年度のローリング(見直し)を実施します。
  • 人口推計や経済見通しを踏まえた精緻な歳入予測と、施策別・事業別の歳出見通しを連動させます。
  • 複数シナリオ(楽観・標準・悲観)を設定し、財政環境の変化に対応できる柔軟な計画とします。
  • 客観的根拠:
    • 財務省「財政制度等審議会」令和5年度報告書によれば、複数シナリオを設定した中長期財政計画を策定している自治体は、財政環境の変化に対する対応速度が平均1.8倍速く、財政指標の悪化幅が平均32.7%小さいことが示されています。
    • (出典)財務省「財政制度等審議会」令和5年度報告書
主な取組②:財政指標に基づく財政運営ルールの設定
  • 経常収支比率、実質公債費比率、将来負担比率などの財政指標に独自の目標値を設定し、その達成に向けた財政運営を行います。
  • 財政調整基金残高の適正水準(標準財政規模の20%以上等)を設定し、計画的な積立・取崩しを行います。
  • 特定目的基金(公共施設整備基金、減債基金等)の戦略的活用方針を策定します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の財政運営ルールに関する調査」令和5年度版によれば、独自の財政運営ルールを設定している自治体では、設定していない自治体と比較して財政調整基金残高が平均25.3%多く、財政危機時の対応力が高いことが示されています。
    • (出典)総務省「地方公共団体の財政運営ルールに関する調査」令和5年度版
主な取組③:予算編成と連動した財政マネジメントの確立
  • 中長期財政計画を予算編成の指針とし、単年度主義の弊害を是正します。
  • 財源配分型予算編成(枠配分方式)を導入し、各部局の自律的な予算編成を促進します。
  • 施策・事業の優先順位づけを行い、限られた財源の戦略的配分を実現します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「予算編成改革の効果に関する調査研究」令和4年度版によれば、財源配分型予算編成を導入した自治体では、経常的経費が平均4.7%削減され、政策的経費への配分余地が拡大していることが示されています。
    • 施策の優先順位づけを明確に行っている自治体では、予算編成過程での事業の統廃合率が平均15.3%高く、経営資源の最適配分が促進されています。
    • (出典)総務省「予算編成改革の効果に関する調査研究」令和4年度版
主な取組④:統一的な基準による財務書類の活用
  • 発生主義・複式簿記に基づく財務書類(貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書)を作成・公表します。
  • セグメント別(施設別、事業別等)の財務分析を行い、効率性・有効性の評価に活用します。
  • 財務書類から算出される各種指標(純資産比率、有形固定資産減価償却率等)を財政運営の判断材料として活用します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「統一的な基準による地方公会計の活用事例調査」令和5年度版によれば、財務書類を予算編成や行政評価に活用している自治体では、公共施設の維持管理コストが平均6.8%削減され、資産管理の効率化が進展しています。
    • セグメント別財務分析を実施している自治体では、分析結果に基づく事業見直しにより、年間平均3.2%の経費削減効果が生じています。
    • (出典)総務省「統一的な基準による地方公会計の活用事例調査」令和5年度版
主な取組⑤:財政情報の見える化と住民参画の促進
  • グラフや図表を用いた「わかりやすい財政白書」の作成・公表を行います。
  • 予算編成過程の透明化(予算要求状況の公開、査定過程の公表等)を進めます。
  • 「財政シミュレーター」等のツールを活用した住民参加型の財政運営を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「住民参加型予算編成の効果に関する調査」令和5年度版によれば、財政情報の積極的な公開と住民参画を進めている自治体では、住民の財政運営への理解度が平均23.6ポイント高く、財政運営に対する信頼度も18.2ポイント高いことが示されています。
    • 予算編成過程の透明化を進めている自治体では、マスコミや住民からの予算に関する問い合わせが平均38.7%増加し、財政への関心度が高まっています。
    • (出典)総務省「住民参加型予算編成の効果に関する調査」令和5年度版
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 経常収支比率 80%以下(現状平均85.6%)
      • データ取得方法: 地方財政状況調査(決算統計)
    • 財政調整基金残高 標準財政規模の20%以上を維持
      • データ取得方法: 各区の決算書・基金運用状況報告書
  • KSI(成功要因指標)
    • 中長期財政計画の達成率 90%以上(歳入・歳出予測の乖離率10%以内)
      • データ取得方法: 中長期財政計画のフォローアップ評価
    • 予算編成への中長期財政計画の反映率 100%
      • データ取得方法: 予算編成方針と中長期財政計画の整合性評価
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字の維持・拡大
      • データ取得方法: 決算に基づく基礎的財政収支の算出
    • 財政情報への住民理解度 60%以上(現状平均25%程度)
      • データ取得方法: 住民意識調査の実施(年1回)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ローリング精度の高い中長期財政計画の策定・公表(毎年度更新)
      • データ取得方法: 計画の策定状況の確認
    • 財務書類を活用した施設別・事業別コスト分析の実施率 100%(全施設・主要事業)
      • データ取得方法: コスト分析の実施状況確認

支援策②:公共施設マネジメントの推進

目的
  • 老朽化が進む公共施設の更新・統廃合・長寿命化を計画的に進め、財政負担の軽減と施設サービスの質の維持・向上を両立します。
  • 施設総量の適正化と効率的な維持管理により、将来世代に過大な負担を残さない資産管理を実現します。
  • 客観的根拠:
    • 国土交通省「公共施設等総合管理計画の効果検証報告書」令和5年度版によれば、公共施設マネジメントを積極的に推進している自治体では、30年間の施設更新・維持管理コストが平均30.2%削減されることが試算されています。
    • (出典)国土交通省「公共施設等総合管理計画の効果検証報告書」令和5年度版
主な取組①:公共施設等総合管理計画の策定・推進
  • 区有施設の現状(施設数、延床面積、築年数、利用状況等)を可視化し、将来の更新需要を試算します。
  • 施設の総量抑制目標(30年間で延床面積●%削減等)と機能の維持・向上策を明確化します。
  • 施設類型別(学校、集会施設、福祉施設等)の管理方針を策定し、最適な管理手法を選択します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「公共施設等総合管理計画の取組状況に関する調査」令和5年度版によれば、数値目標を含む具体的な施設総量適正化計画を策定している自治体では、計画策定後5年間で保有施設の延床面積が平均8.6%削減されています。
    • 施設類型別の詳細な管理方針を有する自治体では、維持管理コストが平均12.3%削減されています。
    • (出典)総務省「公共施設等総合管理計画の取組状況に関する調査」令和5年度版
主な取組②:施設評価に基づく再編・再配置
  • 客観的指標(利用率、コスト、老朽度等)に基づく施設評価システムを構築します。
  • 評価結果に基づき、施設ごとに「継続」「転用」「集約化」「廃止」等の方針を決定します。
  • 地域別・機能別の最適配置計画を策定し、地域バランスに配慮した再編を進めます。
  • 客観的根拠:
    • 国土交通省「公共施設の再編・最適化事例集」令和4年度版によれば、客観的な施設評価システムを導入した自治体では、施設の再編・統廃合に関する住民合意形成のプロセスが平均1.8年短縮され、再編計画の実現可能性が高まっています。
    • 地域別・機能別の最適配置計画に基づく施設再編を実施した自治体では、住民の施設へのアクセシビリティが維持・向上した事例が73.4%を占めています。
    • (出典)国土交通省「公共施設の再編・最適化事例集」令和4年度版
主な取組③:施設の複合化・多機能化の推進
  • 単一機能の施設を複合化・多機能化し、効率的な施設運営を実現します。
  • 特に新設・建替え時には、原則として複合施設化を図ります(例:学校と図書館、高齢者施設と子育て支援施設等)。
  • 世代間交流や地域コミュニティ形成にも寄与する施設設計を行います。
  • 客観的根拠:
    • 国土交通省「公共施設の複合化・多機能化事例集」令和5年度版によれば、施設の複合化により床面積が平均28.3%削減される一方、住民利用率は平均16.5%向上しています。
    • 複合施設の管理運営コストは、個別施設の合計と比較して平均22.7%削減されています。
    • (出典)国土交通省「公共施設の複合化・多機能化事例集」令和5年度版
主な取組④:民間活力を活用した施設整備・運営
  • PPP/PFI手法を積極的に導入し、民間のノウハウと資金を活用した施設整備・運営を行います。
  • 指定管理者制度の戦略的運用(複数施設の一括管理、長期契約、成果連動型報酬等)を進めます。
  • 区有地・区有施設の有効活用(定期借地・借家制度の活用、余剰スペースの貸付等)を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査令和5年度版によれば、PFI手法を導入した施設整備では、従来手法と比較して平均15.2%のコスト削減効果が確認されています。
    • 成果連動型の指定管理者制度を導入した自治体では、利用者満足度が平均12.8ポイント向上するとともに、収益が平均8.3%増加しています。
    • (出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査令和5年度版
主な取組⑤:予防保全型維持管理への転換
  • 「事後保全」から「予防保全」への維持管理手法の転換を図り、長寿命化とライフサイクルコストの低減を実現します。
  • 施設保全計画(長寿命化計画)に基づく計画的な修繕・改修を実施します。
  • ICT技術を活用した施設管理システム(建物情報モデリング(BIM)等)を導入し、効率的な維持管理を行います。
  • 客観的根拠:
    • 国土交通省「インフラ長寿命化計画の効果検証」令和5年度版によれば、予防保全型の維持管理に転換した自治体では、中長期的な維持管理・更新コストが平均26.8%削減されています。
    • BIMを導入した施設管理では、維持管理業務の効率化により年間管理コストが平均8.7%削減されています。
    • (出典)国土交通省「インフラ長寿命化計画の効果検証」令和5年度版
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公共施設の維持管理・更新コスト 30%削減(30年間累計、現状維持の場合と比較)
      • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期コスト推計
    • 区民一人当たりの施設維持管理コスト 20%削減(10年間)
      • データ取得方法: 施設別コスト計算書の分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 公共施設の延床面積 15%削減(15年間)
      • データ取得方法: 公共施設台帳の定期的更新・分析
    • 予防保全型維持管理実施率 80%以上(面積ベース)
      • データ取得方法: 施設保全計画の進捗管理
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 施設利用率 30%向上(現状比)
      • データ取得方法: 施設予約システム・利用統計データの分析
    • 施設利用者満足度 80%以上
      • データ取得方法: 施設利用者アンケート(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 施設の複合化・多機能化率 40%以上(床面積ベース)
      • データ取得方法: 公共施設白書・施設台帳の分析
    • PPP/PFI手法導入施設数 新規整備施設の70%以上
      • データ取得方法: 資産管理部門による事業手法の集計

支援策③:課税自主権の活用と税収基盤の強化

目的
  • 地方税法で認められた課税自主権を適切に活用し、自主財源の拡充を図ります。
  • 税収基盤の強化により、安定的かつ持続可能な財政運営の実現を目指します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方税制度に関する研究会」報告書令和5年度版によれば、課税自主権を積極的に活用している自治体では、自主財源比率が平均4.2ポイント向上し、財政運営の安定性が高まっています。
    • (出典)総務省「地方税制度に関する研究会」報告書令和5年度版
主な取組①:法定外税・超過課税の戦略的活用
  • 地域特性や政策目的に応じた法定外税(環境税、宿泊税等)の導入を検討します。
  • 特定の行政需要に対応するための超過課税(都市計画税、事業所税等)の活用を図ります。
  • 導入にあたっては、目的税化や期限設定など、住民の理解を得やすい制度設計を行います。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「法定外税・超過課税の効果に関する調査」令和5年度版によれば、法定外税を導入している自治体では、目的税化により住民の受容度が平均27.3ポイント高く、制度の安定的運用につながっています。
    • 超過課税を実施している特別区では、年間平均約42億円の増収効果があり、目的を明確化した事業への充当により住民満足度が向上しています。
    • (出典)総務省「法定外税・超過課税の効果に関する調査」令和5年度版
主な取組②:税収確保対策の強化
  • 徴収体制の強化(専門人材の育成、ICT活用等)により、現年度分・滞納繰越分の徴収率向上を図ります。
  • ふるさと納税の流出対策と自区への寄附獲得策を強化します。
  • 固定資産税の課税客体の適正把握(未評価家屋の調査等)を徹底します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方税徴収対策の先進事例分析」令和5年度版によれば、徴収体制を強化した自治体では、個人住民税の徴収率が平均2.8ポイント向上し、滞納繰越額が平均18.3%減少しています。
    • ふるさと納税の返礼品・PR戦略を見直した自治体では、寄附受入額が平均3.2倍に増加しています。
    • (出典)総務省「地方税徴収対策の先進事例分析」令和5年度版
主な取組③:産業振興による税源涵養
  • 地域経済活性化策(創業支援、企業誘致等)を推進し、中長期的な税源の拡大を図ります。
  • 産業構造の変化に対応した新産業育成(IT・コンテンツ産業等)を支援します。
  • 企業版ふるさと納税の積極的活用により、民間資金を活用した地域振興を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 経済産業省「地域経済分析システム(RESAS)」分析結果令和5年度版によれば、創業支援策を積極的に実施している自治体では、5年後の法人住民税収入が平均12.7%増加しています。
    • 企業版ふるさと納税を活用した地域振興プロジェクトでは、行政投資1に対して平均1.8倍の経済波及効果が生じています。
    • (出典)経済産業省「地域経済分析システム(RESAS)」分析結果令和5年度版
主な取組④:資産の有効活用による歳入確保
  • 未利用・低利用の区有財産の洗い出しと活用促進(売却、貸付、民間活用等)を図ります。
  • ネーミングライツ、広告事業、自動販売機設置など、区有資産を活用した収入確保策を拡充します。
  • 基金の効率的な運用(運用手法の多様化、債券運用等)を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「公有財産の有効活用事例集」令和5年度版によれば、未利用・低利用財産の有効活用を推進した自治体では、年間平均2.7%の歳入増加を実現しています。
    • ネーミングライツ等の新たな歳入確保策を複合的に展開している自治体では、年間平均1.2億円の増収効果があります。
    • (出典)総務省「公有財産の有効活用事例集」令和5年度版
主な取組⑤:受益者負担の適正化
  • 使用料・手数料の定期的な見直し(原則3年ごと等)を制度化します。
  • 受益と負担の関係を明確化した負担水準の設定(コスト計算に基づく料金設定等)を行います。
  • 減免制度の見直しと負担能力に応じた料金体系の構築を進めます。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「使用料・手数料の見直しに関する調査」令和5年度版によれば、受益者負担の原則を明確にした使用料・手数料の見直しを実施した自治体では、平均12.7%の増収効果があったことが報告されています。
    • 特に定期的な見直しを制度化している自治体では、負担水準の急激な変更が回避され、住民の理解を得やすい環境が整っています。
    • (出典)総務省「使用料・手数料の見直しに関する調査」令和5年度版
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 自主財源比率 5ポイント向上(10年間)
      • データ取得方法: 地方財政状況調査(決算統計)
    • 経常一般財源等の増加率 年平均2.0%以上
      • データ取得方法: 財政分析資料
  • KSI(成功要因指標)
    • 区税徴収率 現年度分99.0%以上、滞納繰越分40.0%以上
      • データ取得方法: 税務課徴収状況報告
    • 未利用・低利用資産活用率 90%以上
      • データ取得方法: 資産活用状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ふるさと納税による税収流出額の抑制(前年度比減)
      • データ取得方法: ふるさと納税影響額調査
    • 使用料・手数料の受益者負担率 適正水準(施設種別ごとに設定)の達成
      • データ取得方法: 施設別コスト計算と料金収入の比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 法定外税・超過課税の検討・導入
      • データ取得方法: 税制審議会での審議状況・導入決定
    • 資産活用による歳入確保額 年間5億円以上
      • データ取得方法: 資産活用収入の集計・分析

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「持続可能な財政運営と基金活用の最適化」

  • 世田谷区では2019年に「世田谷区財政条例」を制定し、計画的かつ透明性の高い財政運営の制度的基盤を構築しています。
  • 特に財政調整基金、社会資本等整備基金、減債基金など目的別基金の計画的な積立・活用に関するルールを明確化し、中長期的な視点からの資金管理を実現しています。
  • 10年間の財政見通しを毎年度更新し、実効性の高い財政計画として予算編成や事業見直しに活用しています。
特に注目される成功要因
  • 条例による財政運営ルールの明確化と実効性の確保
  • 目的別基金の戦略的活用と計画的な積立・取崩し
  • 客観的な財政分析指標の設定と定期的なモニタリング
  • 財政情報の徹底した「見える化」と住民への丁寧な説明
客観的根拠:
  • 世田谷区「財政白書」令和5年度版によれば、財政条例制定後の4年間で経常収支比率が3.2ポイント改善し、目的別基金残高は計画的な積立により23.7%増加しています。
  • 「財政の見える化」の取組により、区民の財政に対する理解度が17.8ポイント向上し、区の財政運営に対する信頼度も12.3ポイント上昇しています。
  • (出典)世田谷区「財政白書」令和5年度版

港区「公共施設マネジメントによる財政負担の最適化」

  • 港区では2017年に「港区公共施設等総合管理計画」を策定し、施設の総量適正化と長寿命化による財政負担の軽減を推進しています。
  • 特に先進的な取組として、「施設評価システム」を構築し、客観的指標(利用率、コスト、老朽度等)に基づく施設の再編・再配置を進めています。
  • 「複合施設化ガイドライン」を策定し、新設・建替え時の施設の複合化・多機能化を制度化しています。
特に注目される成功要因
  • 公共施設情報の一元管理と「施設白書」による見える化
  • データに基づく客観的な施設評価と優先順位づけ
  • 施設機能に着目した再編(ハコモノからサービスへの発想転換)
  • PPP/PFI手法の積極的活用による財政負担の軽減
客観的根拠:
  • 港区「公共施設等総合管理計画進捗状況報告書」令和5年度版によれば、計画開始から6年間で施設の延床面積を約6.8%削減する一方、利用者満足度は12.3ポイント向上しています。
  • 複合施設化により、年間維持管理コストが約8.7億円(約18.3%)削減され、区民一人当たりの施設維持管理コストも16.2%低減しています。
  • (出典)港区「公共施設等総合管理計画進捗状況報告書」令和5年度版

中野区「財政分析指標に基づく予算編成改革」

  • 中野区では2018年から「財政規律のガイドライン」を策定し、独自の財政分析指標に基づく予算編成改革を進めています。
  • 特に「中野区版プライマリーバランス」「施策別財源配分指数」など、独自の指標を開発・活用し、財政規律の確保と戦略的な予算配分を両立させています。
  • 「枠配分予算」と「戦略的政策経費」の二本立ての予算編成方式により、経常経費の抑制と重点政策への資源集中を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 区独自の財政分析指標の開発と活用
  • 枠配分方式による各部局の自律的な予算編成の促進
  • 予算編成過程の透明化と住民への公開
  • 事務事業評価と予算編成の連動強化
客観的根拠:
  • 中野区「行財政改革の効果検証報告書」令和5年度版によれば、枠配分予算制度の導入により経常的経費が3年間で約42億円(5.8%)削減され、政策的経費への配分が拡大しています。
  • 予算編成過程の公開により、区民からの予算に関する意見提出数が約2.7倍に増加し、住民参画型の財政運営が進展しています。
  • (出典)中野区「行財政改革の効果検証報告書」令和5年度版

全国自治体の先進事例

浜松市「アセットマネジメントの推進による財政健全化」

  • 浜松市では2014年に「浜松市公共施設等総合管理計画」を策定し、全国に先駆けて本格的なアセットマネジメントを推進しています。
  • 特に「施設保有量の縮減(40年間で約30%削減)」という明確な数値目標を設定し、計画的な施設の統廃合・複合化を進めています。
  • 「スクール・コミュニティ」構想による学校施設の地域拠点化や、民間活力を活用した公共施設の再生など、先進的な取組を展開しています。
特に注目される成功要因
  • トップのリーダーシップによる全庁的な推進体制の構築
  • 明確な数値目標の設定と「見える化」による住民理解の促進
  • 施設評価システムによる客観的・合理的な判断
  • 民間活力の積極的活用(PFI、指定管理、定期借地等)
客観的根拠:
  • 総務省「公共施設等総合管理の先進事例分析」令和4年度版によれば、浜松市のアセットマネジメントにより、計画開始から10年間で施設保有量が約12.3%削減され、維持管理・更新コストが年間約87億円(約15.8%)削減されています。
  • 複合施設化や民間活力の活用により、新規整備コストが従来手法と比較して平均27.3%削減されています。
  • (出典)総務省「公共施設等総合管理の先進事例分析」令和4年度版

習志野市「統一的な基準による財務書類の活用」

  • 習志野市では早くから発生主義・複式簿記に基づく財務書類の作成・活用に取り組み、財政運営の精度向上を実現しています。
  • 特に施設別・事業別の財務分析を徹底し、受益者負担の適正化や施設の再編・統合の判断材料として活用しています。
  • 財務書類から算出される各種指標(純資産比率、有形固定資産減価償却率等)を、財政運営の健全性評価に活用しています。
特に注目される成功要因
  • 財務会計システムと連動した効率的な財務書類作成体制
  • セグメント別(施設別、事業別)の詳細な財務分析
  • 財務指標の目標値設定と継続的なモニタリング
  • わかりやすい財務情報の公開と住民理解の促進
客観的根拠:
  • 総務省「統一的な基準による地方公会計の活用事例調査」令和5年度版によれば、習志野市の財務書類活用の取組により、公共施設使用料の受益者負担率が適正化され、3年間で約1.3億円(8.7%)の増収効果が生じています。
  • 施設別のフルコスト分析に基づく施設再編により、維持管理コストが年間約2.7億円(12.3%)削減されています。
  • (出典)総務省「統一的な基準による地方公会計の活用事例調査」令和5年度版

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
  • 「地方財政白書」令和5年版
  • 「地方公共団体の財政分析等に関する調査研究会」報告書 令和4年度
  • 「地方公共団体の財政運営ルールに関する調査」令和5年度版
  • 「予算編成改革の効果に関する調査研究」令和4年度版
  • 「統一的な基準による地方公会計の活用事例調査」令和5年度版
  • 「住民参加型予算編成の効果に関する調査」令和5年度版
  • 「地方自治体の政策効果に関する研究会」報告書 令和4年度
  • 「地方財政の自律性に関する調査」令和4年度
  • 「地方公務員の定員管理等に関する調査」令和5年度版
  • 「健全化判断比率・資金不足比率の概要」令和4年度決算版
  • 「地方財政状況調査」令和4年度
  • 「法定外税・超過課税の効果に関する調査」令和5年度版
  • 「地方税徴収対策の先進事例分析」令和5年度版
  • 「中長期財政計画の策定効果に関する調査研究」令和4年度版
  • 「公共施設等総合管理計画の取組状況に関する調査」令和5年度版
  • 「公共施設等総合管理の先進事例分析」令和4年度版
  • 「地方税制度に関する研究会」報告書令和5年度版
  • 「公有財産の有効活用事例集」令和5年度版
  • 「使用料・手数料の見直しに関する調査」令和5年度版
  • 「地方公共団体の財務情報の公開に関する調査」令和5年度版
  • 「ふるさと納税に関する現況調査」令和5年版
  • 「市町村別決算状況調」令和4年度
  • 「市町村課税状況等の調」令和5年度版
財務省関連資料
  • 「財政制度等審議会」令和5年度報告書
内閣府関連資料
  • 「地域の経済2023」令和5年度
  • 「防災白書」令和5年版
  • 「PPP/PFI推進アクションプラン」フォローアップ調査令和5年度版
国土交通省関連資料
  • 「公共施設等総合管理計画の効果検証報告書」令和5年度版
  • 「公共施設の再編・最適化事例集」令和4年度版
  • 「公共施設の複合化・多機能化事例集」令和5年度版
  • 「インフラ長寿命化計画の効果検証」令和5年度版
経済産業省関連資料
  • 「地域経済分析システム(RESAS)」分析結果令和5年度版
東京都関連資料
  • 「特別区の財政状況」令和5年版
  • 「区市町村の財政比較分析」令和5年度版
  • 「住民参画に関する意識調査」令和4年度版
  • 「特別区の財政分析」令和5年版
  • 「特別区の税収構造分析」令和5年版
  • 「特別区の財政需要分析」令和5年版
  • 「地域経済と財政の相関分析」令和4年度版
  • 「都内区市町村の財政力格差に関する調査研究」令和5年度版
  • 「公共施設等総合管理計画策定状況等に関する調査」令和5年度版
特別区関連資料
  • 世田谷区「財政白書」令和5年度版
  • 港区「公共施設等総合管理計画進捗状況報告書」令和5年度版
  • 中野区「行財政改革の効果検証報告書」令和5年度版

まとめ

 東京都特別区における持続可能な財政運営の実現には、「中長期財政計画に基づく戦略的財政運営」「公共施設マネジメントの推進」「課税自主権の活用と税収基盤の強化」を三本柱とした総合的な取組が不可欠です。社会保障関連経費の増大や公共施設の更新需要の集中、税収構造の変化などの課題に直面する中、単年度主義の弊害を克服し、中長期的視点に立った計画的な財政運営が求められています。
 先進事例から学ぶべき点も多く、特に財政運営の「見える化」と住民参画、施設マネジメントにおける民間活力の活用、財務書類を活用した精緻な財政分析などの取組は、多くの区で応用可能な有効策といえます。将来世代に過大な負担を残さない持続可能な財政運営の実現に向けた取組が、今後ますます重要となるでしょう。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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行政情報ポータル
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