07 自治体経営

庁内広報

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(庁内広報を取り巻く環境)

  • 自治体が庁内広報を行う意義は「職員のエンゲージメント向上による組織活力の最大化」と「持続可能な行政サービス提供体制の構築」にあります。
  • 現代の行政運営において、庁内広報は単なる「お知らせ」を伝達するツールから、組織全体のパフォーマンスを左右する戦略的な機能へとその役割を大きく変化させています。
  • 若手職員の離職率上昇、複雑化する行政課題、デジタル化の進展といった環境変化の中で、従来のトップダウン型・一方向の情報伝達では、職員の意欲や主体性を引き出し、組織としての一体感を醸成することは困難です。
  • 本稿では、庁内広報を「職員のエンゲージメントを高め、組織風土を改革し、人材育成と定着を促進するための経営ツール」と再定義し、東京都特別区が直面する課題を客観的データに基づき分析した上で、具体的な支援策を提案します。

意義

職員にとっての意義

モチベーションとエンゲージメントの向上
  • 組織のビジョンや目標、各施策の社会的意義が明確に伝わることで、職員は自らの業務の価値を再認識し、仕事への誇りとやりがいを高めることができます。
  • エンゲージメントの高い職員は、組織への貢献意欲が高く、主体的に業務改善に取り組む傾向があります。
    • 客観的根拠:
      • 千葉県が実施した職員エンゲージメント調査では、「仕事へのやりがい・働きがい」を感じるために「仕事を通じて社会への貢献を実感できること」が重要と考える職員が40.2%に上りました。
      • (出典)千葉県「(仮称)千葉県職員人材基本方針【骨子】の主な取組に関連する項目を抽出「職員のエンゲージメントに関するアンケート」概要」令和6年度 ((出典元))
キャリアパスの可視化と成長実感
  • 研修制度、昇進・昇格事例、多様なキャリアを歩む職員の紹介などを通じて、組織内でのキャリアパスが可視化されます。
  • これにより、特に若手職員が抱えるキャリア形成への不安が軽減され、自己成長の実感を得やすくなります。
    • 客観的根拠:
      • 若手公務員の離職理由として「成長実感が得られない」「キャリアアップが遅い」といったキャリアへの不安が上位に挙げられています。
      • (出典)株式会社Ame&Company「若手公務員の早期離職を防ぐには? 原因と対策を解説」2024年
      • 人事院の調査では、国家公務員の約3分の1が勤務継続に不安を感じており、特に30代以下の若手・中堅層でその割合が高くなっています。
      • (出典)人事院「令和6年度 勤務条件等に関する職員アンケート調査」令和6年度 ((出典元))
心理的安全性の醸成
  • 双方向のコミュニケーションチャネルが確保されることで、職員が安心して意見や懸念を表明できる「心理的安全性」の高い職場環境が育まれます。
  • 風通しの良い職場は、メンタルヘルスの向上、ハラスメントの抑制、そして建設的な議論の活性化につながります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査によると、ハラスメントが起こりにくい職場の特徴として「同僚同士のコミュニケーションが多い/活発である」(56.9%)、「上司・部下のコミュニケーションが多い/活発である」(52.9%)が挙げられており、コミュニケーションの活性化がハラスメント防止に有効であることが示唆されています。
      • (出典)総務省「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」令和6年 ((出典元))

組織全体(行政)にとっての意義

組織文化の醸成と理念浸透
  • 庁内広報は、組織が目指す姿や価値観を全職員に共有し、一貫した組織文化を醸成するための強力なツールです。
  • 区長や幹部職員からのメッセージを定期的に発信することで、経営層の考えや方針が組織の隅々まで浸透し、全庁的な一体感が生まれます。
    • 客観的根拠:
      • 伊賀市の広報戦略では、市が発信した情報を受け取った相手に「何をしてほしいのか」「どうなってほしいのか」という明確な目標を持つ「戦略的広報」の推進を掲げており、理念浸透の重要性を示しています。
      • (出典)伊賀市「伊賀市シティプロモーション推進指針」令和6年 ((出典元))
人材の定着と離職率の低下
  • 職員エンゲージメントの向上は、離職率の低下に直結します。特に、採用・育成にコストのかかる若手職員の定着は、組織の持続可能性を確保する上で極めて重要です。
  • 魅力ある職場環境を内外に示すことは、新規採用における競争力向上にも寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 株式会社リンクアンドモチベーションの調査では、自治体においてエンゲージメントスコアが低い組織群(スコア40未満)の退職率は4%を超える一方、高い組織群(スコア55以上)では2%を下回るという明確な相関関係が示されています。
      • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション「自治体における職員のエンゲージメントと退職率の関係性について」令和6年度 ((出典元))
ナレッジマネジメントと業務効率化
  • 各部署の優れた取り組み(グッドプラクティス)や業務改善のノウハウを共有するプラットフォームとして機能させることで、組織全体の知識レベルが向上します。
  • これにより、業務の属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上と業務効率化を実現します。
    • 客観的根拠:
      • ビジネスチャットツールの導入により、職員1人あたり平均で1日約25分、年間約98時間の業務削減効果が試算されており、情報共有の効率化が生産性向上に直結することがわかります。
      • (出典)株式会社トラストバンク「LoGoチャット導入自治体の職員1,700名に調査」令和4年 ((出典元))

区民サービスにとっての意義

職員の当事者意識向上によるサービス品質向上
  • 組織への帰属意識や仕事への誇りを持った職員は、区民に対してより質の高いサービスを提供しようと努めます。
  • 職員一人ひとりのモチベーション向上が、結果として区民満足度の向上につながる好循環を生み出します。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区では、職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」が、最終的に「区民サービス向上→区民満足度向上の好循環へ」つながることを期待効果として掲げています。
      • (出典)新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))
部門間連携によるワンストップサービスの実現
  • 庁内広報を通じて部門間の相互理解が深まることで、いわゆる「縦割り行政」の弊害が緩和されます。
  • 円滑な部門間連携は、区民から見て「たらい回し」のない、スムーズなワンストップサービスの提供に不可欠です。
    • 客観的根拠:
      • デジタル庁が推進する「書かないワンストップ窓口」などの取り組みは、バックオフィスでのデータ連携が前提となっており、円滑な内部コミュニケーションが住民サービスの向上に不可欠であることを示しています。
      • (出典)デジタル庁「窓口DXSaaS」 ((出典元))

(参考)歴史・経過

  • 日本の行政広報の変遷は、行政と職員・住民との関係性の変化を映し出す鏡です。
1940年代~1950年代:誕生期(PROの設置と「お知らせ広報」)
  • 1947年、GHQの指令により、日本の民主化を目的として各都道府県にPRO(Public Relations Office)の設置が求められたことが、日本の行政広報の原点です。
  • この時期の広報は、行政から住民・職員へ決定事項を一方的に伝達する「お知らせ型広報」が中心でした。
    • (出典)上野征洋『広報・広告・プロパガンダ』ミネルヴァ書房 2003年 ((出典元))
    • (出典)地方自治研究機構「自治体広報の戦略的展開に関する調査研究報告書」令和5年 ((出典元))
1960年代~1980年代:成長期(行政主導と広報紙の普及)
  • 高度経済成長期において、行政主導のまちづくりが進む中、広報紙が主要な情報伝達手段として全国の自治体に普及しました。
  • 内容は、行政サービスや事業の案内が中心で、依然として一方向の情報提供が主でした。
    • (出典)おおさか市町村職員研修研究センター「自治体広報のあり方に関する調査研究報告書」 ((出典元))
1990年代~2000年代:転換期(地方分権と双方向性の模索)
  • 地方分権一括法の施行(2000年)などを背景に、住民とのパートナーシップが重視され始め、広報に「広聴」の視点が加わりました。
  • パブリックコメント制度の導入など、双方向コミュニケーションの試みが始まりましたが、庁内コミュニケーションは依然として旧来の手法が中心でした。
2010年代:デジタル化黎明期(ウェブサイトとSNSの登場)
  • 庁内ポータルサイトやウェブサイトが普及しましたが、多くは紙媒体の情報を電子化しただけの「デジタル掲示板」にとどまり、双方向性は限定的でした。
  • 対外的にはシティプロモーションの一環としてSNS活用が始まりましたが、庁内広報への戦略的活用は遅れました。
    • (出典)花村広報事務所「自治体広報に求められる3つの役割」 ((出典元))
2020年代~現在:エンゲージメント改革期(人材危機と戦略的広報への転換)
  • 若手職員の離職率急増や働き方の多様化という「人材危機」に直面し、庁内広報の役割が抜本的に見直されています。
  • 「エンゲージメント」「心理的安全性」といった概念が重視され、双方向のデジタルツール活用や、データに基づく組織風土改革を目指す「戦略的庁内広報」へと転換が進んでいます。
    • (出典)オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))

庁内広報に関する現状データ

職員のエンゲージメントスコアの低迷
  • 自治体職員のエンゲージメントは、組織の活力を示す重要な指標ですが、特に若手・中堅層で低い傾向が見られます。
  • グラビス・アーキテクツ社の調査では、公務員の中でも一般行政職員のワークエンゲージメントは比較的低い傾向にあります。
    • (出典)グラビス・アーキテクツ株式会社「行政機関勤務者のワークエンゲージメントに関する調査」2023年 ((出典元))
  • また、同社の別調査では、一般行政職員は25~34歳の年代でエンゲージメントが最も低くなる傾向が示されています。
    • (出典)オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))
  • 株式会社リンクアンドモチベーションの調査によると、自治体の初回エンゲージメントスコアの平均は「42」(偏差値)と、民間企業を含む全組織平均の「50」を大きく下回る水準です。
    • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション「自治体における職員のエンゲージメントと退職率の関係性について」令和6年度 ((出典元))
若手職員の深刻な離職率
  • 特別区を含む地方自治体では、若手職員の早期離職が深刻な経営課題となっています。
  • 地方公務員の30代以下の普通退職者数は、過去10年間で2倍以上に増加し、全普通退職者の7割以上を占めています。
    • (出典)都市問題経営研究所「自治体の若手職員の離職意思を抑制する職場の要因」2025年
  • 新宿区では、平成25年度から30年度の平均普通退職者数が19.3人だったのに対し、令和元年度から6年度の平均は58.3人と、約3倍に急増しています。
    • (出典)新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))
  • エンゲージメントスコアと退職率には強い相関があり、スコアが低い組織ほど退職率が高いことがデータで裏付けられています。
    • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション「自治体における職員のエンゲージメントと退職率の関係性について」令和6年度 ((出典元))
メンタルヘルス不調による休職者の高止まり
  • 職場のストレスやコミュニケーション不全は、職員のメンタルヘルスに大きな影響を与えています。
  • 特別区人事委員会の報告によると、病気休職者数のうち心の健康問題による割合は80%を超え、高水準で推移しています。
    • (出典)特別区人事委員会「令和5年 特別区職員の給与等に関する報告及び勧告」令和5年 ((出典元))
  • 東京都庁においても、精神疾患を理由とする長期療養者数は増加傾向にあり、深刻な状況が続いています。
    • (出典)東京都庁職員労働組合「2024年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度」2024年 ((出典元))
コミュニケーション手段の旧態依然
  • 多くの自治体で、情報伝達手段が紙媒体や一方的な電子メール、掲示板形式のポータルサイトに依存しており、双方向のコミュニケーションが不足しています。
  • 伊賀市の調査では、庁内の情報収集が不十分であることや、発信が一方通行の「伝える広報」に留まっていることが課題として指摘されています。
    • (出典)伊賀市「伊賀市シティプロモーション推進指針」令和6年 ((出典元))
  • 新聞購読世帯の減少に伴い、従来は有効とされた広報紙の全戸配布も、その効果が限定的になってきており、情報伝達チャネルの多様化が求められています。
    • (出典)公益社団法人 静岡県国際交流協会「多文化共生社会に対応した自治体広報のあり方に関する調査研究」 ((出典元))
職員意識のギャップ
  • 職員が抱える意識と、組織が提供する環境との間にはギャップが存在します。
  • 人事院の調査では、国家公務員の約3分の2(67.2%)が職場を「働きやすい」と感じる一方で、約3割(29.3%)が「勤務継続に不安がある」と回答しており、働きやすさの実感と将来への不安が共存しています。
    • (出典)人事院「令和6年度 勤務条件等に関する職員アンケート調査」令和6年度 ((出典元))
  • キャリアパスに関しては、公正取引委員会の職員調査で「キャリアパスが明確化されている」と感じる職員は2割程度に留まっています。
    • (出典)公正取引委員会「令和6年度エンゲージメント調査結果」令和7年 ((出典元))
  • 練馬区の職員アンケートでは、73%の職員がやりがいを感じていると回答する一方で、「頑張っているのに評価されない」「職場で意見交換する雰囲気もない」といった不満も挙げられており、やりがいと職場環境への満足度が一致していない状況がうかがえます。
    • (出典)練馬区「第3期 練馬区特定事業主行動計画」 ((出典元))

課題

職員の課題

キャリア形成への不安と成長実感の欠如
  • 多くの若手職員は、組織内での自身の将来像を明確に描けず、キャリア形成に強い不安を抱いています。昇進・昇格の基準や多様なキャリアパスが不透明であり、日々の業務を通じて成長しているという実感を得にくい構造になっています。
    • 客観的根拠:
      • 若手公務員が離職を考える大きな理由として「成長実感が得られない」「キャリアアップが遅い」といったキャリアへの不安が挙げられています。
      • (出典)株式会社Ame&Company「若手公務員の早期離職を防ぐには? 原因と対策を解説」2024年
      • 公正取引委員会の調査では、職員の7割以上が組織のミッションに共感している一方で、「キャリアパスが明確化されている」と感じる職員は2割程度に過ぎません。
      • (出典)公正取引委員会「令和6年度エンゲージメント調査結果」令和7年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 向上心のある有能な若手職員から流出し、組織の将来を担う人材の空洞化が進みます。
組織への貢献実感・当事者意識の希薄化
  • 縦割り組織の弊害と一方向の情報伝達により、職員は自分の仕事が区政全体の目標や区民生活にどのように貢献しているのかを実感しにくい状況にあります。これにより、「言われたことをこなすだけ」という受け身の姿勢が生まれ、当事者意識が希薄化しています。
    • 客観的根拠:
      • 練馬区の職員アンケートでは、「頑張っているのに評価されない」「仕事の成果が見えない」といった声が挙がっており、貢献が可視化されにくい職場環境がうかがえます。
      • (出典)練馬区「第3期 練馬区特定事業主行動計画」 ((出典元))
      • 学生が公務員を志望する理由の上位に「社会・市民のために働ける」ことがある一方、この実感を得られないことが離職につながる可能性があります。
      • (出典)株式会社マイナビ「2025年卒大学生公務員イメージ調査」2024年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 職員のモチベーション低下が区民サービスの質の低下に直結し、組織全体の活力が失われます。
コミュニケーション不全による心理的負担
  • 上意下達のコミュニケーションが主流で、水平方向やボトムアップの意見交換が活発でない職場環境は、職員に大きな心理的負担を与えています。失敗を恐れて新しい挑戦をためらったり、悩みを一人で抱え込んだりする職員が増え、メンタルヘルス不調の一因となっています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査は、職場のコミュニケーションの活発さがハラスメントの発生しにくさと関連していることを示しており、コミュニケーション不全が職場環境の悪化を招くことを裏付けています。
      • (出典)総務省「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」令和6年 ((出典元))
      • 特別区における病気休職者のうち8割以上が心の健康問題によるものであり、職場におけるストレスレベルの高さが深刻な課題です。
      • (出典)特別区人事委員会「令和5年 特別区職員の給与等に関する報告及び勧告」令和5年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 休職者の増加による人員不足と医療費コストの増大を招き、組織全体の生産性を著しく低下させます。

組織(行政)の課題

旧来型の一方向な情報伝達への依存
  • 庁内広報の手段が、依然として紙の回覧や、情報を一方的に掲載するだけの庁内ポータルといった「お知らせ広報」に留まっています。デジタルネイティブ世代の職員にとっては魅力に乏しく、重要な情報が伝わりにくいだけでなく、職員の関心や共感を得ることができません。
    • 客観的根拠:
      • 伊賀市は、従来の「伝える」広報から、相手の行動変容を促す「伝わる・つながる」広報への転換を掲げており、一方向コミュニケーションの限界を明確に認識しています。
      • (出典)伊賀市「伊賀市シティプロモーション推進指針」令和6年 ((出典元))
      • 行政広報の歴史は、GHQによるPRO設置指令に端を発するトップダウン型の情報伝達にあり、この制度的慣性が現代においても根強く残っています。
      • (出典)地方自治研究機構「自治体広報の戦略的展開に関する調査研究報告書」令和5年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 経営層と現場職員との間に意識の乖離が拡大し、組織としての一体感が失われ、重要な施策の実行力が低下します。
縦割り組織による情報・ノウハウのサイロ化
  • 多くの自治体組織が抱える根深い課題として、部署間の壁(サイロ)が挙げられます。有益な情報や業務改善のノウハウが部署内で留まり、全庁的に共有・活用される仕組みがありません。これにより、組織全体の学習能力や課題解決能力が停滞しています。
    • 客観的根拠:
      • 杉並区が「LINE WORKS」のようなコミュニケーションツールを導入し、部署横断での情報共有を目指していること自体が、既存の仕組みではサイロ化を解消できないという課題の裏返しです。
      • (出典)特別区長会「令和4年度調査研究報告書 デジタルで変える区民サービス・変えるしごと」 ((出典元))
      • つくば市の事例では、人事異動によって部署横断プロジェクトが停滞する可能性が指摘されており、個人の努力だけでは組織の壁を越えられない実態が示されています。
      • (出典)海後宗男, 大倉毎子「地方自治体における Facebook を活用した市民協働の可能性と課題」2016年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 類似の課題に対して各部署が個別に対応するため、非効率な業務遂行や二重投資が発生し、行政コストが増大します。
職員の意見・アイデアを吸い上げ、活用する仕組みの欠如
  • 職員意識調査などを実施しても、その結果が具体的にどのように組織改善に活かされているのかが職員に見えにくいのが現状です。現場の職員が持つ貴重な意見や改善提案を吸い上げ、施策に反映させるボトムアップの仕組みが十分に機能していません。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区が「区長提案制度」を創設したことは、既存のルートでは職員の自由な発想や改善策がトップに届きにくいという課題があったことを示唆しています。
      • (出典)新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))
      • エンゲージメント調査を導入する自治体が増える一方で、その成功の鍵は「調査結果の分析と現場へのフィードバック」にあると指摘されており、多くの自治体でこのサイクルが課題となっています。
      • (出典)オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 職員は「意見を言っても無駄だ」という無力感を抱き、改善意欲が低下します。結果として、組織は硬直化し、時代の変化に対応できなくなります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、一部の職員だけでなく、組織全体のコミュニケーション活性化やエンゲージメント向上に広く貢献する施策を高く評価します。
実現可能性
  • 現在の法制度や予算、人員体制の中で、比較的導入障壁が低く、着実に実行可能な施策を優先します。既存の仕組みやツールを活用できる施策は優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入するコスト(予算、人的リソース)に対し、離職率低下による採用・育成コストの削減や、業務効率化による生産性向上など、得られる効果が大きい施策を優先します。
公平性・持続可能性
  • 特定の職層や年代だけでなく、全職員が公平に便益を享受でき、一過性のイベントで終わらず、組織文化として定着・継続していく可能性が高い施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 他の自治体や民間企業での成功事例があり、データによってその効果が裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 庁内広報を核とした組織改革は、「デジタル基盤の整備」「組織風土の改革」「データ駆動型マネジメント」の3つの柱を統合的に推進することが不可欠です。これらは相互に補完し合う関係にあり、個別に実施するよりも、一体的に進めることで相乗効果が最大化します。
  • 最優先で取り組むべきは、**支援策①「双方向コミュニケーションを加速するデジタル基盤の構築」支援策②「エンゲージメントを高める組織風土改革」**です。デジタルツールという「ハードウェア」と、それを活かすための対話や称賛の文化という「ソフトウェア」は、車の両輪であり、どちらが欠けても改革は進みません。これらは即効性が高く、全職員が変化を実感しやすいため、改革の勢いを生み出す上で極めて重要です。
  • 次に、これらの取り組みを持続可能にし、効果を最大化するための仕組みとして、**支援策③「EBPM(証拠に基づく人事管理)サイクルの確立」**を位置づけます。これは、改革の方向性を定め、継続的に改善していくための「羅針盤」であり、中長期的な視点で組織を変革していくための基盤となります。

各支援策の詳細

支援策①:双方向コミュニケーションを加速するデジタル基盤の構築

目的
  • 旧来の一方向な情報伝達から脱却し、全職員がいつでもどこでもアクセスでき、気軽に参加できる現代的な双方向コミュニケーションチャネルを構築します。
  • 情報共有の迅速化とペーパーレス化を推進し、組織全体の業務効率を向上させます。
    • 客観的根拠:
      • ビジネスチャットツールの導入により、職員1人あたり年間約98時間の業務削減効果と、年間約480枚のペーパーレス効果が試算されています。
      • (出典)株式会社トラストバンク「LoGoチャット導入自治体の職員1,700名に調査」令和4年 ((出典元))
主な取組①:統合型庁内ポータルの刷新とパーソナライズ化
  • PC・スマートフォン双方からアクセスしやすい、単一の統合型庁内ポータルを構築します。
  • 単なるリンク集ではなく、人事給与システムや研修申込システム等と連携させ、職員の所属や職層、関心事に応じて表示情報をパーソナライズする機能を持たせます。
  • 新着情報、申請手続き、各種マニュアル、職員検索機能などを集約し、「ここを見れば全てわかる」状態を目指します。
    • 客観的根拠:
      • 自治体DXの推進において、情報システム基盤の共通化・標準化は、データ連携を円滑にし、業務効率化を図る上で不可欠な取り組みとされています。
      • (出典)テックタッチ株式会社「自治体DXにおける先進事例10選」2024年 ((出典元))
主な取組②:ビジネスチャットツールの全庁導入
  • セキュリティが確保されたビジネスチャットツールを全庁的に導入し、リアルタイムのコミュニケーションを活性化させます。
  • 部署内の「報・連・相」はもちろん、部署を横断した照会やプロジェクトチームでの連携など、電話やメールよりも迅速で気軽なコミュニケーションを促進します。
  • 災害時や緊急時の迅速な情報共有手段としても活用します。
    • 客観的根拠:
      • 埼玉県川口市では、ビジネスチャットを緊急時の連絡手段やテレワークで活用し、業務効率化を実現しています。
      • (出典)株式会社トラストバンク「LoGoチャット導入自治体の職員1,700名に調査」令和4年 ((出典元))
主な取組③:職員参加型コンテンツの拡充
  • 庁内ポータル上に、職員が主体的に情報を発信できる「掲示板」や「ブログ」機能を設けます。
  • 「私の仕事紹介」「〇〇課のグッドプラクティス」「業務改善アイデア募集」といったテーマで、職員からの投稿を促進します。
  • サークル活動や趣味のグループなど、業務外のコミュニケーションを活性化させる場としても活用します。
    • 客観的根拠:
      • 埼玉県三芳町の庁内報では、職員からの写真提供や取材依頼が相次ぎ、「新採用職員の顔と名前がわかって話すきっかけになった」など、コミュニケーションツールとしての効果が発揮されています。
      • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション ソリューションデザイン室「庁内報みよし」を、三芳町を盛り上げるカンフル剤に!」 ((出典元))
主な取組④:Web版「庁内報」への完全移行と動画コンテンツの活用
  • 紙媒体の庁内報を廃止し、記事の検索や共有が容易なWebマガジン形式に完全移行します。
  • 区長からのメッセージ、新規事業の紹介、職員インタビューなどを短い動画コンテンツとして制作・配信し、若手職員への訴求力を高めます。
  • コメント機能や「いいね」機能を付け、読者の反応を可視化します。
    • 客観的根拠:
      • 農林水産省のYouTubeチャンネル「BUZZ MAFF」は、若手職員が中心となり動画で情報発信することで、従来の広報の枠を超えた成果を上げており、動画コンテンツの有効性を示しています。
      • (出典)Find Model「【2024年最新】地方自治体のInstagram活用事例15選!」2024年 ((出典元))
主な取組⑤:庁内SNS(クローズド)の試験的導入
  • 職員同士が部署の垣根を越えて自由につながり、知見を共有し合えるクローズドなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を試験的に導入します。
  • プロフィール機能で各自の専門性や経験を可視化し、「庁内の専門家」を探しやすくすることで、部署横断的な課題解決を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 佐賀県武雄市の事例研究では、庁内でのFacebook活用が職員間のソーシャル・キャピタルを高める効果を持つ可能性が指摘されています。
      • (出典)野口・伊藤「Facebookは自治体組織のソーシャル・キャピタルを高めるか」2014年 ((出典元))
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員エンゲージメントスコア(特に「組織風土」「コミュニケーション」関連項目)を3年間で15ポイント向上
      • データ取得方法: 年1回の全職員エンゲージメントサーベイ
  • KSI(成功要因指標)
    • 庁内ポータルおよびビジネスチャットツールの週間アクティブ利用率 85%以上
      • データ取得方法: 各ツールの利用ログ解析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員1人あたりの内線電話・庁内メール件数の20%削減
      • データ取得方法: サンプリングによる業務量調査、職員アンケート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • Web庁内報への動画コンテンツ掲載数 月平均4本以上
      • データ取得方法: ポータルサイトのコンテンツ管理システムによる集計
    • 職員による参加型コンテンツへの投稿数 月間100件以上
      • データ取得方法: ポータルサイトの投稿数集計

支援策②:エンゲージメントを高める組織風土改革

目的
  • 上意下達の組織文化から、対話と共感をベースとしたオープンな組織文化へと転換を図ります。
  • 職員一人ひとりが尊重され、その貢献が正当に評価・称賛される仕組みを構築することで、働きがいと組織への帰属意識を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 若手公務員のエンゲージメントには「上司を含めた職場の人間関係の良さ」が強く関連しており、管理職のコミュニケーションスタイルが部下の満足度を大きく左右します。
      • (出典)グラビス・アーキテクツ株式会社「行政機関勤務者のワークエンゲージメントに関する調査」2023年 ((出典元))
主な取組①:全管理職を対象とした1on1ミーティングの制度化と研修
  • 全ての管理職に対し、部下と定期的に1対1で対話する「1on1ミーティング」(月1回30分程度)を義務付けます。
  • 単なる業務進捗の確認ではなく、部下のキャリア観や悩み、挑戦したいことなどを傾聴し、成長を支援する「コーチング」の場と位置づけます。
  • 管理職向けに、傾聴力やフィードバックのスキルを学ぶ研修を必須で実施します。
    • 客観的根拠:
      • 民間企業では、ヤフーや楽天などが1on1ミーティングを導入し、人材育成や離職率改善に成果を上げています。普段の会話では見えない課題が浮き彫りになり、具体的な解決策につながります。
      • (出典)株式会社KAKEAI「1on1最新事例」2025年 ((出典元))
主な取組②:「ピア・ボーナス」制度の導入
  • 職員同士が日々の業務における協力や貢献に対して、感謝の気持ちをポイントやメッセージとして送り合える「ピア・ボーナス」制度を導入します。
  • 庁内ポータル上で「ありがとう」を可視化することで、互いに認め、称賛し合う文化を醸成します。
    • 客観的根拠:
      • ある企業では、「やるじゃんレター」という、感謝をカードで送り合う仕組みを導入し、日々の小さな承認がモチベーション向上につながっています。
      • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション ソリューションデザイン室「組織改善のプロが語る、モチベーション向上のためのコミュニケーション施策」 ((出典元))
主な取組③:部門横断型ワークショップ「オフサイトミーティング」の定例開催
  • 役職や所属の垣根を越えて、有志の職員が部署外の場所(オフサイト)で組織課題や新規事業について自由に議論する場を定例的に設けます。
  • 役所の会議室とは異なるリラックスした雰囲気の中で、本音の対話を促し、新たなアイデアや部門横断的な連携のきっかけを創出します。
    • 客観的根拠:
      • オフサイトミーティングは、普段は出てこない課題意識やアイデアを共有し、モヤモヤを整理したり、新たなモノを生み出したりする手法として有効であると指摘されています。
      • (出典)株式会社スコラ・コンサルト「組織風土改革の具体的な進め方と成功事例」 ((出典元))
主な取組④:職員表彰制度の抜本的見直し
  • 従来の永年勤続表彰中心の制度から、組織への貢献を多角的に評価する制度へと刷新します。
  • 「業務改善・イノベーション賞」「部門連携貢献賞」「新人賞」など、具体的な行動や成果を称える表彰カテゴリーを新設します。
  • 受賞者の取り組み内容を庁内報で大々的に紹介し、他の職員のロールモデルとして共有します。
    • 客観的根拠:
      • 三重県では、「めざすべき職員像」に繋がる行動をした職員を表彰し、他の職員への波及効果を狙う制度を設けています。
      • (出典)三重県「令和6年度「三重県職員行動表彰」について」 ((出典元))
主な取組⑤:「リバースメンタリング」制度の試行
  • 若手職員がメンターとなり、管理職や幹部職員(メンティー)に対して、デジタルツールの活用法や若者世代の価値観などを教える「リバースメンタリング」を試験的に導入します。
  • 世代間の相互理解を促進し、経営層が現場の感覚や新しい視点を取り入れる機会を創出します。
    • 客観的根拠:
      • 千葉県の職員アンケートでは、エンゲージメント向上に有効な取り組みとして「年齢層に応じてアプローチを変えること」が39.9%と高い支持を得ており、世代間ギャップへの配慮の重要性を示唆しています。
      • (出典)千葉県「(仮称)千葉県職員人材基本方針【骨子】の主な取組に関連する項目を抽出「職員のエンゲージメントに関するアンケート」概要」令和6年度 ((出典元))
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 若手職員(35歳未満)の3年以内離職率を現状から50%低減
      • データ取得方法: 人事部門の退職者データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • エンゲージメントサーベイにおける「上司との関係」「キャリア成長」「承認・称賛」項目のスコアを3年間で20%向上
      • データ取得方法: 年1回の全職員エンゲージメントサーベイ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 1on1ミーティング実施後の部下による「上司への信頼度」に関するアンケートスコア 80点以上(100点満点)
      • データ取得方法: 1on1実施後の匿名パルスサーベイ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全管理職の1on1ミーティング研修受講率 100%
      • データ取得方法: 研修管理システムによる受講履歴管理
    • 月間ピア・ボーナス(感謝メッセージ)送受信総数 職員数×2件以上
      • データ取得方法: ピア・ボーナスシステムのログデータ

支援策③:EBPM(証拠に基づく人事管理)サイクルの確立

目的
  • 職員の意識や組織の状態を客観的なデータで「見える化」し、勘や経験に頼る人事管理から、証拠(エビデンス)に基づく戦略的な人事管理へと転換します。
  • 調査→分析→施策立案→実行→効果検証というPDCAサイクルを確立し、継続的な組織改善を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区では、エンゲージメント調査で課題を明らかにし、職員有志PTによる提言や、コンサルタントによる課長ヒアリングを通じて、調査結果を具体的な組織改善アクションにつなげる仕組みを構築しています。
      • (出典)新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))
主な取組①:全職員エンゲージメントサーベイの定例実施
  • 信頼性・妥当性が検証された調査票を用い、全常勤職員を対象としたエンゲージメントサーベイを年1回実施します。
  • 仕事のやりがい、人間関係、上司のマネジメント、評価・処遇、キャリア、心身の健康など、多角的な項目で組織の状態を網羅的に測定します。
  • 匿名性を担保し、職員が安心して回答できる環境を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 大阪府四條畷市を皮切りに、近年、都道府県・政令市・特別区などでエンゲージメントサーベイを導入する自治体が増加しており、組織の「健康診断」として定着しつつあります。
      • (出典)オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))
主な取組②:サーベイ結果の全庁・部署別フィードバック
  • 調査結果の概要を全職員に透明性高く公開します。
  • 各部・課の管理職には、自部署の結果を全国平均や庁内平均と比較した詳細な分析レポートを提供します。これにより、自部署の強み・弱みを客観的に把握させます。
    • 客観的根拠:
      • 大阪府では、エンゲージメント調査業務の委託事業者選定において、過去の実績から確実かつ正確な調査と分析、結果のフィードバックが期待できることを評価しており、分析とフィードバックの質を重視しています。
      • (出典)大阪府「「職員のエンゲージメント向上に関する調査・分析等業務」に係る最優秀提案事業者の選定結果について」令和7年 ((出典元))
主な取組③:結果に基づく職場改善ワークショップの義務化
  • 全部署において、管理職と職員が自部署のサーベイ結果について対話し、課題を共有するワークショップの開催を義務付けます。
  • ワークショップを通じて、具体的な改善アクションプランを策定し、人事部門に進捗を報告する仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • サーベイは実施して終わりではなく、結果を基にしたアクションプランの策定と実行が最も重要です。専門家によるアクションプランの提言や、ミドルマネジメント層向けの研修と連動させることが効果的です。
      • (出典)オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))
主な取組④:パルスサーベイの導入
  • 年1回の詳細なサーベイを補完するものとして、特定のテーマ(例:業務負荷、施策の浸透度)に関する1~5問程度の簡単な「パルスサーベイ」を月次または四半期ごとに実施します。
  • これにより、組織の状態変化をリアルタイムに把握し、迅速な打ち手を講じることが可能になります。
    • 客観的根拠:
      • ある企業では、毎月4問のアンケートで体調や働きがいを調査し、コンディションの変化を早期に察知して対策を講じることで、定着率向上を目指しています。
      • (出典)厚生労働省 岐阜労働局「働き方改革取組事例」 ((出典元))
主な取組⑤:管理職研修へのエンゲージメント向上策の組込み
  • 新任係長から部長級まで、全ての階層の管理職研修において、「エンゲージメント向上のためのマネジメント」を必須科目にします。
  • 自部署のサーベイ結果の読み解き方、課題設定の方法、部下との対話を通じた改善策の進め方などを具体的に学びます。
    • 客観的根拠:
      • エンゲージメント向上の課題として「管理職層の課題認識が薄い」ことが30.6%で最上位に挙げられており、管理職の意識改革とスキルアップが不可欠です。
      • (出典)パーソル総合研究所「従業員エンゲージメントに関する定量調査」2023年 ((出典元))
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区民満足度調査における「職員の対応」に関する肯定的評価の割合 85%以上
      • データ取得方法: 年1回の区民意識調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 全管理職が自部署のエンゲージメントサーベイ結果を基にした改善計画を策定・実行している状態
      • データ取得方法: 人事部門によるアクションプランの提出・進捗確認(策定・実施率100%)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 次年度のエンゲージメントサーベイにおいて、前年度の課題上位3項目のスコアが全庁平均で5%以上改善
      • データ取得方法: エンゲージメントサーベイ結果の前年比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全職員エンゲージメントサーベイの回答率 90%以上
      • データ取得方法: サーベイシステムの回答状況集計
    • 職場改善ワークショップの全部署での実施率 100%
      • データ取得方法: 人事部門による実施報告の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

新宿区「エンゲージメント調査を起点とした全庁的な働きやすい職場づくり」

  • 若手職員の離職者増加という課題に対応するため、令和7年度から全常勤職員約2,900名を対象としたエンゲージメント調査を開始。
  • 調査で組織の課題を数値化・可視化し、公募による多様な職員17名で構成されるプロジェクトチーム(PT)が分析。PTは組織改善に向けた「区長への提言書」を作成します。
  • データに基づく課題把握、職員参加による解決策の検討、トップへの直接提言というプロセスを通じて、実効性のある「働きやすい職場づくり」を目指しています。
    • 客観的根拠:
      • (出典)新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))

杉並区「コミュニケーションツール活用による業務効率化と情報共有の促進」

  • 法人向けコミュニケーションツール「LINE WORKS」を導入し、情報や予定の共有を円滑化しています。
  • 単なるメッセージ交換だけでなく、電子ファイル格納システム「SideBooks」と連携した資料通知や、災害時の安否確認など、多岐にわたる活用を進めています。
  • また、職員同士の気軽な情報交流を促す「みんなの掲示板とぴっくす」をアプリ内に設けるなど、公式・非公式両面でのコミュニケーション活性化を図っています。
    • 客観的根拠:
      • (出典)特別区長会「令和4年度調査研究報告書 デジタルで変える区民サービス・変えるしごと」 ((出典元))
      • (出典)柏崎市「杉並区におけるICTの取組について」2023年 ((出典元))

品川区「表彰制度や組織的クレーム対応による職員のモチベーション向上」

  • 「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」の認定を受けるなど、職員が働きやすい環境づくりに注力しています。
  • 具体的な取り組みとして、職場内のコミュニケーション活性化策に加え、「表彰制度など職員のモチベーションを高める取組」や、「苦情やクレームに対して、組織として対応する体制」を整備しています。
  • これにより、職員が安心して働ける心理的安全性と、仕事への意欲を両立させる組織風土を醸成しています。
    • 客観的根拠:
      • (出典)東京都福祉人材センター「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言 事業所情報(社会福祉法人 品川区社会福祉事業団)」 ((出典元))

全国自治体の先進事例

埼玉県三芳町「職員が主役の『庁内報みよし』によるコミュニケーション活性化」

  • 従来の庁内報をリニューアルし、職員の活動やプライベートな話題を積極的に取り上げることで、コミュニケーションのカンフル剤としての役割を果たしています。
  • 発行後、「新採用職員の顔と名前がわかり、話すきっかけになった」「ソフトボール大会の取材に来てほしい」といった声が寄せられるようになり、職員間の交流が活性化しました。
  • トップダウンの情報伝達ツールではなく、職員が主役の「みんなの広場」として庁内報を位置づけることで、組織の一体感を醸成した成功事例です。
    • 客観的根拠:
      • (出典)株式会社リンクアンドモチベーション ソリューションデザイン室「『庁内報みよし』を、三芳町を盛り上げるカンフル剤に!」 ((出典元))

静岡県富士市「ビジネスチャット導入による業務時間の大幅削減」

  • 全庁的にビジネスチャット「LoGoチャット」を導入し、業務効率化に大きな成果を上げています。
  • 導入効果の試算では、職員1人あたり1日約25分、年間約98時間の業務時間削減につながるとされています。
  • 特に、会議の日程調整や庁内の報連相にかかる時間が大幅に削減されたほか、土木部など現場からのリアルタイムな状況報告にも威力を発揮しており、デジタルツールが働き方を大きく変えた事例です。
    • 客観的根拠:
      • (出典)株式会社トラストバンク プレスリリース「LoGoチャット導入自治体の職員1,700名に調査を実施」2022年 ((出典元))

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
  • 「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」令和6年 ((出典元))
  • 「地方公務員給与実態調査」令和3年
  • 「地方公共団体の勤務条件等に関する調査」令和5年
人事院関連資料
  • 「令和6年度 勤務条件等に関する職員アンケート調査」令和6年度 ((出典元))
東京都・特別区関連資料
  • 東京都人事委員会「職員の給与等に関する報告及び勧告」
  • 特別区人事委員会「特別区職員の給与等に関する報告及び勧告」令和5年 ((出典元))
  • 新宿区「職員のエンゲージメント向上による「働きやすい職場づくり」の推進について」令和7年 ((出典元))
  • 練馬区「第3期 練馬区特定事業主行動計画」 ((出典元))
  • 杉並区「杉並区におけるICTの取組について」
  • 特別区長会「令和4年度調査研究報告書 デジタルで変える区民サービス・変えるしごと」 ((出典元))
その他自治体関連資料
  • 伊賀市「伊賀市シティプロモーション推進指針」令和6年 ((出典元))
  • 千葉県「(仮称)千葉県職員人材基本方針【骨子】の主な取組に関連する項目を抽出「職員のエンゲージメントに関するアンケート」概要」令和6年度 ((出典元))
  • 大阪府「「職員のエンゲージメント向上に関する調査・分析等業務」に係る最優秀提案事業者の選定結果について」令和7年 ((出典元))
研究機関・民間企業等資料
  • 株式会社リンクアンドモチベーション「自治体における職員のエンゲージメントと退職率の関係性について」令和6年度 ((出典元))
  • グラビス・アーキテクツ株式会社「行政機関勤務者のワークエンゲージメントに関する調査」2023年 ((出典元))
  • オーディーエス株式会社「自治体向けエンゲージメントサーベイのご紹介」2025年 ((出典元))
  • 株式会社トラストバンク「LoGoチャット導入自治体の職員1,700名に調査」令和4年 ((出典元))
  • 株式会社マイナビ「2025年卒大学生公務員イメージ調査」2024年 ((出典元))
  • 都市問題経営研究所「自治体の若手職員の離職意思を抑制する職場の要因」2025年

まとめ

 東京都特別区が直面する若手職員の高い離職率やエンゲージメントの低迷といった課題は、組織の持続可能性を揺るがす喫緊の経営課題です。これらの課題に根本から対処するためには、庁内広報を単なる情報伝達手段から、「職員エンゲージメントを核とした戦略的組織開発ツール」へと昇華させる必要があります。具体的には、デジタル基盤の整備による双方向コミュニケーションの活性化、対話と称賛を重んじる組織風土への改革、そしてデータに基づき継続的に改善サイクルを回すEBPMの確立が不可欠です。これらの統合的な取り組みは、職員の働きがいを高め、組織の活力を最大化するだけでなく、最終的には質の高い区民サービスの提供へとつながります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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