07 自治体経営

地方公会計

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(地方公会計を取り巻く環境)

  • 自治体が地方公会計を行う意義は「財政の透明性と説明責任の向上」と「資産・コスト管理に基づく持続可能な行財政運営の実現」にあります。
  • 地方公会計とは、従来の現金主義・単式簿記(現金の出入りだけを記録)を補完し、企業会計の考え方である発生主義・複式簿記(取引の発生時点で記録)を導入した会計制度です。これにより、減価償却費や将来の退職金支払いに備える引当金といった、現金の支出を伴わない「見えにくいコスト」や、自治体が保有するインフラや建物などの「資産(ストック)」と借入金などの「負債」の全体像を正確に把握することが可能になります。
    • 出典)内田洋行「公会計とは?企業会計との違いや新地方公会計制度について解説」令和6年度
    • 出典)総務省「地方公会計の意義・目的について」令和4年度
    • 出典)神奈川県「地方公会計制度の概要」令和6年度
  • 東京都特別区においては、この制度を通じて、区民や議会に対する財政状況の説明責任をより高度に果たすとともに、得られた財務情報を公共施設マネジメントや政策評価に活用し、限られた財源を最適に配分することが求められています。
    • 出典)滋賀県「統一的な基準による財務書類について」平成29年度
    • 出典)埼玉県「地方公会計制度について」令和6年度
    • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度

意義

住民にとっての意義

財政の透明性向上と分かりやすい情報開示
  • 貸借対照表(バランスシート)や行政コスト計算書といった財務書類が公表されることで、自分たちの納めた税金がどのような資産(道路、学校など)を形成し、行政サービスの提供にどれだけのコストがかかっているのかを、より明確に理解できます。
    • 出典)内田洋行「公会計とは?企業会計との違いや新地方公会計制度について解説」令和6年度
    • 出典)総務省「地方公会計の意義・目的について」令和4年度
行政サービスコストの可視化
  • 図書館の運営やごみ収集といった個別のサービスにかかる「フルコスト」(減価償却費などを含む全てのコスト)が明らかになり、サービスの受益と負担の関係についての議論が深まります。
    • 出典)神奈川県「地方公会計制度の概要」令和6年度
    • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度

地域社会にとっての意義

持続可能な公共サービスの提供
  • 公共施設の老朽化状況(有形固定資産減価償却率など)を数値で把握し、計画的な更新や長寿命化対策を講じることで、将来世代に過度な負担を先送りすることなく、持続的にサービスを提供できます。
    • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度
    • 出典)地方自治研究機構「地方公会計情報の活用と今後の展望」令和4年度
健全な財政運営の確保
  • 資産と負債のバランスを常に監視することで、財政破綻のリスクを早期に察知し、健全な財政運営を維持することにつながります。
    • 出典)内田洋行「公会計とは?企業会計との違いや新地方公会計制度について解説」令和6年度

行政にとっての意義

証拠に基づく政策立案(EBPM)の推進
  • 事業別・施設別のコスト分析が可能となり、政策や事業の費用対効果を客観的に評価し、限られた予算の「選択と集中」を進めるための強力なツールとなります。
    • 出典)埼玉県「地方公会計制度について」令和6年度
    • 出典)総務省「地方公会計の意義・目的について」令和4年度
    • 出典)大原大学院大学「公会計情報の有用性と財務報告の目的」令和5年度
戦略的な資産・債務管理(アセットマネジメント)の実現
  • 全庁的な資産を網羅した固定資産台帳を整備することで、未利用資産の売却・貸付や、公共施設の統廃合・複合化といった戦略的な資産活用(公共施設マネジメント)が可能になります。
    • 出典)総務省「地方公会計の意義・目的について」令和4年度
    • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度

(参考)歴史・経過

2000年代初頭:導入黎明期
  • 地方分権一括法の施行(平成12年)や、夕張市の財政破綻などを背景に、地方自治体の財政状況をより正確に把握する必要性が高まりました。
    • 出典)内田洋行「公会計とは?企業会計との違いや新地方公会計制度について解説」令和6年度
    • 出典)滋賀県「統一的な基準による財務書類について」平成29年度
  • 総務省からバランスシート等の作成モデルが示され、各自治体で取り組みが始まりました。
    • 出典)勝山市「統一的な基準による地方公会計財務書類」令和2年度
2006年(平成18年):モデルの提示
  • 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」が成立し、「基準モデル」「総務省方式改訂モデル」が提示され、財務書類の整備が本格化しました。
    • 出典)勝山市「統一的な基準による地方公会計財務書類」令和2年度
    • 出典)姶良市「新地方公会計制度に基づく財務諸表の公表」平成28年度
  • しかし、複数の作成方法が混在し、自治体間の比較が困難という課題が残りました。
    • 出典)勝山市「統一的な基準による地方公会計財務書類」令和2年度
2015年(平成27年):統一的な基準の策定
  • 比較可能性の確保と本格的な複式簿記導入のため、総務省が「統一的な基準による地方公会計マニュアル」を公表しました。
    • 出典)総務省「統一的な基準による地方公会計マニュアルの改訂について」令和6年度
    • 出典)総務省「統一的な基準による地方公会計マニュアル」令和元年改訂
  • 全ての地方公共団体に対し、固定資産台帳の整備と、この基準に基づく財務書類の作成が原則として平成29年度末までに要請され、現在の地方公会計制度の基盤が確立しました。
    • 出典)総務省「統一的な基準による地方公会計マニュアルの改訂について」令和6年度
    • 出典)新十津川町「統一的な基準による財務書類の公表」令和6年度
2018年(平成30年)以降:活用の時代へ
  • 財務書類の「作成」から「活用」へとフェーズが移行しました。総務省に「地方公会計の活用の促進に関する研究会」が設置され、公共施設マネジメントや予算編成への活用事例の収集・共有が進められています。
    • 出典)公友監査法人「総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会」報告書の公表について」平成30年度
    • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
2024年(令和6年):今後の地方公会計のあり方に関する研究会報告書
  • 約10年間の統一基準の運用で見えた課題の改善を目指し、財務書類の情報充実や固定資産台帳の精緻化など、さらなる進化に向けた検討結果が公表されました。
    • 出典)総務省「統一的な基準による地方公会計マニュアルの改訂について」令和6年度
    • 出典)日本公認会計士協会「「今後の地方公会計のあり方に関する研究会報告書」の公表」令和7年度

地方公会計に関する現状データ

特別区全体の財政を取り巻く外部環境

不合理な税制改正による財源流出
  • ふるさと納税制度や法人住民税の一部国税化などにより、令和6年度には特別区全体で約3,200億円の減収が見込まれています。平成27年度からの減収累計額は約1兆9,000億円に達しており、本来区民サービスに使われるべき財源が流出している状況です。
    • 出典)特別区長会「不合理な税制改正等に対する特別区の主張(令和6年度版)【概要】」令和6年度
増大する将来の財政需要
  • 公共施設の老朽化対策として、2043年度までに約7.4兆円の改築需要が見込まれています。また、高齢化の進展に伴い、2040年には介護施設の整備に約2.1兆円が必要と試算されるなど、将来にわたって膨大な財政需要に直面しています。
    • 出典)特別区長会「不合理な税制改正等に対する特別区の主張(令和6年度版)【概要】」令和6年度

統一的な基準に基づく財務書類から見る特別区の財政状況

資産・負債の状況(令和5年度決算ベースの事例)
  • 港区(一般会計等)
    • 資産合計約3.65兆円に対し、負債合計は約250億円と極めて少なく、純資産合計は約3.62兆円です。純資産比率は99.3%と非常に高く、財政基盤が極めて健全であることを示しています。
      • 出典)港区「令和5年度決算 港区財政レポート」令和6年度
      • 出典)港区「広報みなと(2024年10月21日号)」令和6年度
  • 大田区(一般会計等)
    • 資産合計約1.32兆円、負債合計約2,155億円、純資産合計約1.11兆円となっています。
      • 出典)大田区「地方公会計統一的な基準による財務書類の公表について(令和5年度決算)」令和6年度
  • 世田谷区(一般会計)
    • 資産合計約1.51兆円、負債合計約2,865億円、純資産合計約1.22兆円となっています。
      • 出典)世田谷区「世田谷区の財務諸表」令和6年度
  • 中央区(一般会計等)
    • 資産合計約1.19兆円、負債合計約353億円、純資産合計約1.15兆円となっています。
      • 出典)中央区「統一的な基準による財務書類」令和7年度
行政コストの状況(令和5年度決算ベースの事例)
  • 港区(一般会計等)
    • 純行政コスト(税収等で賄うべきコスト)は約1,412億円です。
      • 出典)港区「令和5年度決算 港区財政レポート」令和6年度
  • 練馬区(普通会計)
    • 経常収支比率は80.6%(令和5年度)と、財政の硬直化を示す指標が適正水準(70%から80%)の上限に近づいており、人件費や扶助費といった経常的な支出の割合が高いことを示唆しています。
      • 出典)練馬区「令和5年度各会計歳入歳出決算説明書」令和6年度
データから得られる示唆
  • 多くの特別区では貸借対照表上、莫大な純資産を保有し、一見すると財政は非常に豊かに見えます。しかし、その資産の大部分は、売却が困難な道路や学校、区役所庁舎などのインフラ資産です。これらは現金化できないばかりか、将来にわたって維持管理や更新のためのコストを発生させる「維持すべき資産」です。
  • 一方で、行政コスト計算書や経常収支比率といったフローの情報に目を向けると、社会保障関連経費(扶助費)の増大により、財政の自由度を圧迫されている区も見られます。
  • このことから、表面的な「資産リッチ」という状況の裏側で、①将来のインフラ更新という「見えない負債」と、②社会保障費増大による「経常経費の硬直化」という二つの圧力が同時に進行している構造が浮かび上がります。これは、将来的に財政の自由度を著しく奪い、新たな住民ニーズへの対応力を削ぐリスクを内包しており、地方公会計は、この「静かなる危機」を可視化する重要なツールとなっています。
    • 出典)東京23区研究所「特別区の財政の特長と課題」令和5年度
    • 出典)練馬区「令和5年度各会計歳入歳出決算説明書」令和6年度

課題

住民の課題

財務情報の難解さとアクセスの壁
  • 公表されている貸借対照表や行政コスト計算書などの財務書類は、専門用語が多く、会計知識のない住民にとっては内容の理解が困難です。グラフや図を多用した分かりやすい解説資料の提供が不足しているのが現状です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の研究会報告書でも、住民や議会に「分かりやすく開示」することが地方公会計の目的の一つとして繰り返し強調されていますが、多くの自治体で専門的な財務書類の公表にとどまっています。
        • 出典)総務省「地方公会計の意義・目的について」令和4年度
        • 出典)内田洋行「公会計とは?企業会計との違いや新地方公会計制度について解説」令和6年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政への無関心や不信感が増大し、財政に関する建設的な対話や協働が阻害されます。

地域社会の課題

公共施設の老朽化と将来負担への懸念
  • 多くの公共施設が高度経済成長期に建設され、一斉に更新時期を迎えています。固定資産台帳データは老朽化の進行を示していますが、統廃合や長寿命化といった具体的な対策に関する住民合意の形成は容易ではありません。
    • 客観的根拠:
      • 特別区全体で2043年度までに必要な公共施設の改築需要が約7.4兆円に上るという試算は、この課題の深刻さを物語っています。
        • 出典)特別区長会「不合理な税制改正等に対する特別区の主張(令和6年度版)【概要】」令和6年度
      • 東京都町田市の事例では、施設類型別の有形固定資産減価償却率を算出したところ、小学校の老朽化(58.5%)が特に進行していることが明らかになりました。これは多くの特別区に共通する課題と考えられます。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用促進に向けた事例集」令和4年度
        • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施設の安全性低下や行政サービスの質の劣化を招き、最終的には財政悪化により必要なサービスが提供できなくなります。

行政の課題

「作成」から「活用」への移行の遅れ
  • 多くの部署で、地方公会計は依然として「会計課が年度末に作成する報告書」と認識されており、予算編成や政策評価、日常業務におけるマネジメントツールとして十分に活用されていません。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査では、財務書類を「適切な資産管理」に活用している自治体の割合は10.2%、「財政指標の設定」に活用している割合は26.4%にとどまっており、活用が一部の取り組みに限定されている状況がうかがえます。
        • 出典)会計検査院「地方自治体の公会計改革に関する会計検査の結果について」平成28年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 多大なコストをかけて整備した財務情報が死蔵され、非効率な財政運営が温存されます。
専門人材の不足と育成の課題
  • 財務書類を分析し、政策提言につなげるための会計知識やデータ分析スキルを持つ職員が不足しています。特に、ジョブローテーションが基本の自治体人事制度の中では、専門性の蓄積が困難です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の研究会でも、職員の継続的な人材育成が重要課題として挙げられており、研修内容を「作成」から「活用」へと転換する必要性が指摘されています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
      • 行政課題の複雑・多様化に伴い、専門人材、特にデジタル人材の育成・確保の必要性が高まっています。
        • 出典)地方自治研究機構「ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会報告書等を踏まえた地方公務員の人材育成・確保に関する指針」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • データに基づかない勘や経験に頼った政策決定が続き、行政サービスの質の低下や財政の非効率化を招きます。
縦割り組織によるデータ活用の阻害
  • 公共施設マネジメントのように、部局を横断した取り組みが必要な課題に対し、公会計データも部局ごとに分断され、全庁的な最適化の視点での活用が進んでいません。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の活用事例集では、埼玉県和光市のように予算科目を公会計と連動させる「予算仕訳」や、千葉県習志野市の「施設マイナンバー」のように、組織横断的なデータ活用を前提とした仕組みの導入が成功の鍵として紹介されています。裏を返せば、こうした仕組みがない多くの自治体で活用が阻害されていることを示唆しています。
        • 出典)多摩地域人づくり事業実行委員会「新地方公会計利活用事例集」平成30年度
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 部分最適の積み重ねが全体の非効率を生み、複合的な行政課題への対応が遅れます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの職員・部署、ひいては区民への便益につながる施策を高く評価します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で、比較的大きな障壁なく着手できる施策を優先します。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果(業務効率化、コスト削減、住民サービス向上)が大きい施策を優先します。
公平性・持続可能性
  • 特定の職員や部署だけでなく、全庁的に効果が及び、一度導入すれば組織文化として継続的に効果が続く仕組み作りを重視します。
客観的根拠の有無
  • 先進自治体の事例等で効果が実証されており、成果を客観的に測定できる施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 地方公会計の「活用」を飛躍的に進めるため、「①人材育成の強化」「②活用基盤の整備」「③実践を通じた定着」の3つの柱で支援策を体系化します。
  • 最優先で取り組むべきは「①人材育成の強化」です。職員のスキルと意識なくして、いかなる基盤や制度も機能しないためです。特に、管理職層への意識改革と、各部署に中核となる実務担当者を育成することが急務です。
  • これと並行して「②活用基盤の整備」を進め、データを誰もが使いやすい形に整えます。
  • その上で「③実践を通じた定着」として、具体的な業務プロセスに公会計情報の活用を組み込み、PDCAサイクルを回していくことで、組織文化として根付かせます。

各支援策の詳細

支援策①:全庁的「公会計リテラシー」向上プログラム

目的
  • 全職員が地方公会計の基本的な意義と役割を理解し、自部署の業務との関連性を意識できる状態を目指します。
  • 特に管理職層が、公会計情報をマネジメントツールとして活用する意識を醸成します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」では、職員の継続的な人材育成が極めて重要であると指摘されています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組①:階層別・職種別研修の体系化
  • 新入職員向け
    • 地方公会計の基礎(なぜ必要か、財務4表の読み方)を学ぶ入門研修を実施します。
  • 中堅・係長級向け
    • 自部署の事業コスト分析や、施設別コスト計算書の見方を学ぶ実践研修を実施します。
  • 管理職(課長級以上)向け
    • 財務情報に基づくマネジメント、行政評価への活用法を学ぶ研修を実施します。
  • 技術職・福祉職向け
    • 担当する公共施設や社会福祉施設のコスト構造を理解するための専門研修を実施します。
    • 客観的根拠:
      • 埼玉県和光市では、公認会計士を特定任期付職員として採用し、職員研修を徹底したことが成功要因の一つとなっています。
        • 出典)多摩地域人づくり事業実行委員会「新地方公会計利活用事例集」平成30年度
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組②:「公会計活用推進リーダー」の育成と配置
  • 各部局から意欲のある中堅職員を選抜し、データ分析や活用事例研究などの高度な研修を実施します。
  • 育成したリーダーを自部署に戻し、日常業務での公会計活用を推進する「伝道師」としての役割を担ってもらいます。
    • 客観的根拠:
      • 専門人材の不足が大きな課題であり、外部採用と並行して内部人材の育成が不可欠です。
        • 出典)総務省「ポストコロナ・ウィズコロナの時代の地方創生」令和3年度
        • 出典)富山県「富山県人材育成・確保基本方針」令和5年度
主な取組③:eラーニングコンテンツの整備
  • 「5分でわかる貸借対照表」「事業コスト分析の初歩」など、短時間で学べる動画コンテンツを整備し、いつでも誰でも学べる環境を提供します。
    • 客観的根拠:
      • 多忙な職員が効率的に学習できるよう、デジタルツールを活用した研修が有効です。
        • 出典)富山県「富山県人材育成・確保基本方針」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 予算要求・事業評価において公会計データを根拠とする議案の割合:3年間で50%向上
    • データ取得方法: 財政課・企画課による予算・決算関連議案の全件分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 管理職の公会計理解度テスト平均点:80点以上
    • データ取得方法: 年1回の管理職向けオンラインテストの実施
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 研修受講後の職員の活用意欲向上率:80%以上
    • データ取得方法: 研修後のアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 階層別研修の年間実施回数:10回以上
    • 公会計活用推進リーダーの育成人数:各部局に1名以上(3年間)

支援策②:公会計データ「見える化・活用」プラットフォームの構築

目的
  • 専門家でなくても、直感的に財務データを把握し、分析できる環境を整備します。
  • 部局の壁を越えたデータ連携を促進し、全庁的な視点での資産・コスト管理を可能にします。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の研究会報告書では、固定資産台帳とGIS(地理情報システム)の連携や、財務会計システムとの連動が先進事例として紹介されており、データ基盤整備の重要性が示されています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組①:対話型「財政状況ダッシュボード」の導入
  • BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを活用し、主要な財政指標(純資産比率、減価償却率等)の推移や、他区との比較をグラフで一覧できるダッシュボードを構築します。
  • 施設類型別、事業分野別など、様々な切り口でデータを深掘りできる機能を搭載します。
    • 客観的根拠:
      • 熊本県宇城市では、施設ごとのコストや貸出実績をグラフで分析し、図書館の統廃合という意思決定に繋げており、「見える化」の有効性を示しています。
        • 出典)多摩地域人づくり事業実行委員会「新地方公会計利活用事例集」平成30年度
        • 出典)宇城市「公会計情報を活用した行財政改革」平成28年度
主な取組②:固定資産台帳と関連情報の一元化
  • 公会計の固定資産台帳に、公有財産台帳、施設カルテ(修繕履歴、利用状況)、GIS(地図情報)を紐付け、一元的に管理できるシステムを構築します。
  • これにより、「この施設はどこにあり、どれくらい古く、維持にいくらかかり、どのくらい使われているか」を瞬時に把握可能にします。
    • 客観的根拠:
      • 千葉県習志野市では、施設に「施設マイナンバー」を付与し、財務会計システムと連携させることで、施設ごとのコスト分析を可能にしています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用促進に向けた事例集」令和4年度
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組③:「オープンデータ化」の推進
  • 個人情報等を除いた固定資産台帳や財務書類の主要データを、機械判読可能な形式(CSV、Excel等)で区のウェブサイトで公開します。
  • 住民や民間企業がデータを自由に活用し、新たな市民サービスやPPP/PFI提案に繋がることを促進します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の研究会報告書では、民間事業者からPPP/PFI提案のために、検索しやすいデータ形式での公表が不可欠であるとの意見が示されています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • データに基づく政策改善提案件数:3年間で倍増
    • データ取得方法: 各部局からの業務改善提案・政策提案の集計
  • KSI(成功要因指標)
    • 財政状況ダッシュボードの月間アクティブユーザー数(職員):全職員の30%以上
    • データ取得方法: ダッシュボードのアクセスログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • データ参照にかかる時間:50%削減
    • データ取得方法: 職員への業務量調査(サンプル調査)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ダッシュボードに搭載する分析テンプレート数:20種類以上
    • オープンデータとして公開するデータセット数:50件以上

支援策③:業務プロセスへの公会計活用ビルトイン

目的
  • 公会計情報の活用を、特定の意識の高い職員の取り組みから、誰もが当たり前に行う「業務の一部」へと転換します。
  • 予算編成、行政評価、公共施設管理といった主要な行政プロセスに、公会計の視点を制度として組み込みます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都町田市では、課別・事業別の行政評価シートに財務情報を組み込み、予算編成に活用することでPDCAサイクルを加速させています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組①:予算編成プロセスへのライフサイクルコスト視点の導入
  • 新規の施設建設や大規模改修事業の予算要求時には、建設費(イニシャルコスト)だけでなく、将来の維持管理・更新費用を含めた「ライフサイクルコスト(LCC)」の試算と、その財源計画の提出を義務化します。
    • 客観的根拠:
      • 愛媛県砥部町の庁舎改修事例では、LCCを比較検討したことで、後年度負担の少ない設備投資を実現しており、この視点の重要性を示しています。
        • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
主な取組②:行政評価シートの様式改訂
  • 全ての事務事業の行政評価シートに、「事業別行政コスト」「関連する固定資産の減価償却費」の欄を設け、記入を必須とします。
  • 事業の成果(アウトカム)と投入コストを対比して評価する文化を醸成します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都港区では、区民に身近な事業のコストを分析した「事業別活動報告書」を作成・公表しており、事業評価と説明責任の両立に成功しています。
        • 出典)港区「令和5年度決算 港区財政レポート」令和6年度
        • 出典)港区「広報みなと(2024年10月21日号)」令和6年度
主な取組③:「施設別カルテ」に基づく個別施設計画の策定
  • 全ての公共施設について、支援策②で整備した一元化データを基に「施設別カルテ」を作成します。
  • このカルテに基づき、施設ごとの「個別施設計画」(維持・更新・統廃合の方針)を策定し、公共施設等総合管理計画の実効性を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 公共施設マネジメントの推進には、固定資産台帳の活用が有効であると繰り返し指摘されています。
        • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度
        • 出典)地方自治研究機構「地方公会計情報の活用と今後の展望」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公共施設の更新・維持管理コスト:長期計画比で10%削減
    • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期費用試算と実績の比較
  • KSI(成功要因指標)
    • LCC試算が提出された新規大規模事業の割合:100%
    • データ取得方法: 予算要求資料の全件確認
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 行政評価の結果、見直し・廃止に至った事業の割合:年間5%以上
    • データ取得方法: 行政評価結果と次年度予算の突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「施設別カルテ」の作成率:100%(3年間)
    • 行政評価シートへのコスト情報記入率:100%

先進事例

東京都特別区の先進事例

港区「『港区財政レポート』による徹底した見える化と事業別コスト分析」

  • 平成11年度決算から企業会計手法を導入し、財務情報を分かりやすく解説する「財政レポート」を毎年公表しています。
  • 「保育園」「清掃事業」など区民に身近な10事業について、事業コストや利用者一人当たりコストを具体的に分析・公開し、住民への説明責任を高いレベルで果たしています。また、施設別のコスト計算書も作成し、指定管理施設の運営評価にも活用しています。
  • 成功要因は、早期からのトップダウンによる導入、住民目線での分かりやすい情報発信の徹底、事業所管課と財政部門の連携にあります。
    • 客観的根拠:
      • 出典)港区「令和5年度決算 港区財政レポート」令和6年度

練馬区「財政の健全性指標と連動させた公会計活用」

  • 財務書類の作成に留まらず、経常収支比率などの主要な財政指標を算出し、財政の健全性を継続的にモニタリングしています。
  • 財政の「見える化」を推進し、公会計情報を財政運営の羅針盤として位置づけています。
  • 成功要因は、財政規律を重視する組織文化、単なるコスト分析だけでなくマクロな財政健全性との連動にあります。
    • 客観的根拠:
      • 出典)練馬区「令和5年度各会計歳入歳出決算説明書」令和6年度

板橋区・足立区「統一的な基準への着実な対応と公共施設マネジメントへの応用」

  • 国の統一的な基準に基づき、一般会計等、全体、連結の各財務書類を着実に作成・公表しています。
  • 整備した固定資産台帳を、今後増大が見込まれる公共施設の更新問題に対応するための基礎情報として活用する動きを進めています。
  • 成功要因は、国の基準への早期かつ着実な準拠、会計情報を資産管理という具体的な行政課題に結びつけようとする姿勢にあります。
    • 客観的根拠:
      • 出典)板橋区「統一的な基準による財務書類について」令和6年度
      • 出典)足立区「あだちの家計簿(財務書類)」令和2年度

全国自治体の先進事例

東京都町田市「有形固定資産減価償却率を用いた公共施設マネジメント」

  • 市全体の資産の老朽化度を示す「有形固定資産減価償却率」を算出するだけでなく、施設類型別(小学校、保育園など)に細分化して分析しています。
  • これにより、特に老朽化が進行している小学校の更新を優先するなど、客観的なデータに基づいたメリハリのある公共施設マネジメントを実践しています。
  • 成功要因は、マクロ指標をミクロな政策判断に落とし込む分析力、公共施設等総合管理計画との連動にあります。
    • 客観的根拠:
      • 出典)総務省「地方公会計の活用促進に向けた事例集」令和4年度
      • 出典)地方公共団体金融機構「地方財政の動向と地方公会計情報の活用」令和4年度

熊本県宇城市「セグメント分析に基づく施設の統廃合と財政効果の検証」

  • 合併により重複していた図書館について、施設ごとの行政コスト計算書を作成し、貸出1冊当たりのコストなどを算出して費用対効果を徹底的に検証しました。
  • この客観的データに基づき住民合意を形成し、一部図書館の統廃合を実施。結果として、資産の増加と負債の減少、純資産の増加という明確な財政改善効果を実現しました。
  • 成功要因は、困難な意思決定から逃げず、客観的なコスト情報を合意形成のツールとして活用した点、改革の前後で財政効果を明確に示した点にあります。
    • 客観的根拠:
      • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
      • 出典)宇城市「公会計情報を活用した行財政改革」平成28年度

参考資料[エビデンス検索用]

  • 出典)総務省「今後の地方公会計のあり方に関する研究会 報告書」令和6年度
  • 出典)総務省「地方公会計の活用の促進に関する研究会 報告書」平成30年度
  • 出典)総務省「統一的な基準による地方公会計マニュアル」令和元年改訂
  • 出典)総務省「地方公会計の活用促進に向けた事例集」令和4年度
  • 出典)特別区長会「不合理な税制改正等に対する特別区の主張(令和6年度版)【概要】」令和6年度
  • 出典)港区「令和5年度決算 港区財政レポート」令和6年度
  • 出典)練馬区「令和5年度各会計歳入歳出決算説明書」令和6年度
  • 出典)板橋区「統一的な基準による財務書類について」令和6年度
  • 出典)世田谷区「世田谷区の財務諸表」令和6年度
  • 出典)大田区「地方公会計統一的な基準による財務書類の公表について(令和5年度決算)」令和6年度
  • 出典)千代田区「財務諸表」令和6年度
  • 出典)中央区「統一的な基準による財務書類」令和7年度

まとめ

 東京都特別区における地方公会計は、財務書類の作成という段階を終え、今まさにその情報をいかにして「活用」し、具体的な行財政運営の改善に繋げるかという新たなステージに立っています。本報告書で示した通り、表面的な財政の健全性の裏に潜む将来リスクを的確に把握し、持続可能な区政を実現するためには、公会計情報の戦略的活用が不可欠です。今後は「人材育成」「基盤整備」「実践定着」を三位一体で推進し、データに基づく政策立案(EBPM)を組織文化として根付かせることが、全ての特別区に共通する重要な課題となります。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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