07 自治体経営

公務員のお仕事図鑑(企画課)

masashi0025

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

はじめに

 「企画課」と聞くと、多くの職員は「庁内の中枢を担うエリート集団」といった、華やかで知的なイメージを抱くかもしれません。首長の政策を形にし、自治体の未来を描くその仕事は、確かに組織の頭脳であり、花形部署の一つと言えるでしょう。しかし、その裏側では、深夜まで続く調整業務、複雑に絡み合う利害関係の板挟み、そして組織の意思決定を左右するという、計り知れないプレッシャーが存在します。その厳しさは庁内でも随一であり、心身ともに削られる経験をした職員も少なくないはずです。

 しかし、もしあなたが今、その過酷な環境の中で自身のキャリアに疑問を感じているのなら、少しだけ視点を変えてみてください。その一見すると報われないかのような厳しい経験こそが、実は他のどの部署でも得られない、極めて市場価値の高い「キャリア資産」をあなたの中に築き上げているのです。このレポートは、そんな企画課での経験が持つ「逆説的な価値」を解き明かし、あなたのこれまでの奮闘が、庁内はもちろん、民間企業という全く異なるフィールドでさえも通用する、強力な武器になることを証明するための一助となるでしょう。

仕事概要

 企画課の役割は、一言で言えば「自治体という船の進むべき未来を描き、その航路を示す総合調整部署」です。目先の課題解決に追われる事業部署とは一線を画し、数年、時には数十年先を見据えて組織全体の舵取りを担う、まさに羅針盤のような存在と言えます。その業務は多岐にわたりますが、主に以下のようなものが挙げられます。

総合計画の策定・進行管理

 これは、10年、20年といった長期的な視点で自治体の将来像を描き、その実現に向けた道筋を定める、いわば「自治体の憲法」を創る仕事です。なぜこれが必要かと言えば、場当たり的な行政運営ではなく、一貫したビジョンに基づいて全ての施策が展開されるようにするためです。このプロセスでは、市民アンケートやワークショップを通じて住民の声を丹念に拾い上げ、各部局の専門的知見を集約し、議会での議論を経て、一つの壮大な計画へと結実させます。この計画が、今後10年間の予算編成や個別の事業計画の最上位の指針となり、まちづくり全体の方向性を決定づけるという、極めて大きな影響力を持ちます。

重要施策の企画・立案・調整

 首長が掲げるマニフェストや、社会情勢の大きな変化に対応するための新たなプロジェクトをゼロから企画・立案します。例えば、「公民連携による新たな産業団地の創設」といった抽象的なテーマに対し、関係部署(産業振興、都市計画、財政など)を横断的に束ね、具体的な事業スキーム、予算、スケジュールを策定していく司令塔の役割を担います。各部署の利害が対立することも日常茶飯事であり、その間に入って組織全体の最適解を見出すという、高度な調整力が求められます。この業務がなければ、首長の重要政策は絵に描いた餅で終わってしまい、行政は前例踏襲から抜け出せなくなってしまいます。

行財政改革・組織改革の推進

 限られた財源の中で、より質の高い行政サービスを効率的に提供し続けるための改革を主導します。これには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化、社会情勢の変化に合わせた部局の再編(行政組織の見直し)、そして職員定数の適正化などが含まれます。時には既存のやり方を変えることへの抵抗や痛みを伴いますが、この改革なくして自治体の持続可能な経営はあり得ません。組織という巨大な船のエンジンルームにメスを入れ、その性能を最大化させることがこの業務のインパクトです。

議会との総合調整

 個別の部署がそれぞれ議会対応を行うのではなく、議会に提出する議案全体を俯瞰し、執行部としての方針を統一する総合調整役を担います。定例会ごとに各部署から提出される議案の内容を精査し、関連部署間の矛盾がないかを確認。さらには、議員からの厳しい質問が予想される議案については、関係部署と連携して答弁の骨子を作成するなど、議会と執行部の円滑な関係構築に不可欠な役割を果たします。一つ一つの言葉が公式な議事録として永久に残るという緊張感の中で、行政全体の信頼性を担保する重要な仕事です。

公民連携(PPP)の推進に係る調整

 行政だけでは解決が困難な地域課題に対し、民間企業の持つノウハウや資金、アイデアを積極的に活用するための「公」と「民」の橋渡し役です。民間事業者からの提案を受け付ける統一的な窓口となり、その内容に応じて庁内の担当部署とマッチングさせたり、新たな事業を立ち上げる前に「サウンディング型市場調査」を実施して民間事業者の意向を探ったりします。これにより、行政の論理だけでは生まれ得ない革新的な市民サービスや、効率的な公共施設の運営が実現可能となり、地域全体の活性化に繋がります。

主要業務と一年のサイクル

 企画課の業務サイクルは、行政の最重要イベントである「議会」と「予算編成」を中心に、まるで壮大な交響曲のように緩急をつけて進んでいきます。特に、年4回(概ね3月、6月、9月、12月)開催される定例会が、業務の大きな節目となります。

4月~5月:比較的平穏な「第一楽章」
 新年度が始まり、前年度の予算議会という最大の繁忙期を乗り越えた後の、比較的落ち着いた時期です。この期間は、新たに始まった事業の進捗管理の仕組みを整えたり、6月議会に提出する比較的小規模な議案の調整が中心となります。残業は比較的少なく(月20~30時間程度)、溜まった代休を消化できる貴重な時期でもあります。

6月~8月:次年度への助走となる「序章」
 6月議会をこなしつつ、次年度に向けた準備が本格化する時期です。夏頃から、次年度の重点施策に関する各部署からのヒアリングや、自治体の根幹となる総合計画の中間見直し作業などが始まります。徐々にエンジンがかかり始め、残業時間も少しずつ増えていきます(月30~45時間程度)。

9月~11月:創造と調整の「展開」
 次年度の政策と予算の骨格を固める、最も知的で創造的な作業が集中する時期です。9月議会をこなしながら、首長の施政方針演説に盛り込むべき新たな政策の検討や、各部署から提出される次年度の予算要求の内容を政策的な観点から精査する作業がピークを迎えます。庁内のあらゆる部署との調整会議が連日連夜行われ、残業時間は一気に跳ね上がります(月60~80時間程度)。

12月~3月:クライマックスの「最終楽章」
 まさに一年で最も過酷な時期です。12月議会が終わると同時に、次年度の予算案の最終決定と、2月または3月の定例会で行われる首長の施政方針演説の原稿作成、そして議会答弁の準備が並行して進みます。特に1月から2月にかけては、深夜までの残業や休日出勤が常態化し、残業時間はピークを迎えます(60~80時間以上)。自治体という船の翌年の航路を決定づける最終作業であり、心身ともに極限の集中力が求められる時期です。

異動可能性

 評価:★☆☆☆☆(極めて低い)

 企画課は、新卒職員が最初に配属されるような「スターター部署」ではありません。むしろ、様々な部署で経験を積み、優秀な実績を上げた職員が、キャリアの中盤(概ね入庁5年目から15年目あたり)に選抜されて配属される「エース候補の登竜門」としての性格が強い部署です。なぜなら、企画課の仕事は、特定の分野の専門知識だけでなく、行政全体の仕組みや各部署の役割、さらには財政や議会との関係性までを俯瞰的に理解していなければ務まらないからです。したがって、人事課は、将来の幹部候補として育成したい人材を意図的に企画課に配置し、組織全体を動かす経験を積ませる傾向があります。企画課への異動辞令は、単なる部署移動ではなく、「組織から将来を期待されている」という明確なメッセージでもあるのです。

大変さ

 評価:★★★★★(極めて大変)

 企画課の仕事は、質・量ともに極めて高い水準が求められ、その大変さは庁内でもトップクラスと言えます。その要因は複合的であり、主に以下の4点が挙げられます。

 第一に、圧倒的な責任の重さと精神的プレッシャーです。自らが作成した一枚の資料やデータが、数億円規模の事業の方向性を決定づけたり、首長の重要な判断の根拠となったりします。議会での答弁資料に誤りがあれば、行政全体の信頼を失墜させかねません。常に「失敗が許されない」という緊張感の中で、膨大な情報を正確に処理し続ける必要があります。

 第二に、複雑なステークホルダーとの調整業務です。庁内に目を向ければ、予算や権限を巡って対立する各部署の間に立ち、落としどころを探らなければなりません。外に目を向ければ、議会、地域の各種団体、民間企業など、それぞれ異なる思惑を持つ相手との交渉が待っています。全員を満足させることは不可能であり、時には厳しい批判の矢面に立つことも覚悟しなければなりません。

 第三に、扱う課題の抽象性の高さです。「人口減少対策」や「地域経済の活性化」といったテーマには、絶対的な正解が存在しません。明確なマニュアルや前例がない中で、データ分析や情報収集を基に、手探りで最適解を模索していく知的体力が求められます。これは、申請書をルール通りに処理する定型業務とは全く異なる、創造的であるがゆえの苦しさを伴います。

 そして第四に、単純な業務量の多さです。長期的な計画策定と並行して、突発的な特命事項や議会対応が次々と舞い込んできます。業務の繁閑の波が激しく、特に年度末や議会前には、終わりが見えないほどの業務量に忙殺されることになります。

大変さ(職員の本音ベース)

 「またこの季節が来たか…」。12月になると、企画課の誰もが心の中で呟きます。公式な説明では語られない、現場の職員が感じる生々しい大変さは、こうした言葉に集約されます。

 精神的に最も消耗するのは、延々と続く「すり合わせ」と呼ばれる調整会議です。「総合計画のこの一文を『推進します』にするか、『検討します』にするかで、関係する3つの部が3時間議論している…結局、課に持ち帰りだ」。利害が対立する部署間の落としどころを探るため、双方の顔を立てるための絶妙な言い回しを捻り出す作業は、知的なパズルというよりは、精神的な消耗戦です。

 そして、全ての努力が一瞬で無に帰す理不尽さも日常茶飯事です。「明日の朝イチの部長レク資料、ほぼ完成という深夜に『やっぱり、あの件は首長の意向で方向性を変えることになったから』と電話一本。今から全部やり直しか…」。トップの鶴の一声で、何日もかけて積み上げたロジックや資料が根底から覆される瞬間の絶望感は、経験した者でなければ分かりません。

 また、常に組織全体を相手にしているがゆえの孤独感もあります。事業部署の職員が住民から直接「ありがとう」と言われるような手触り感のある達成感は、企画課の仕事にはほとんどありません。「10年後の人口動態の予測グラフを睨みながら、自分がやっているこの仕事は、今、目の前で困っている一人の住民の役に立っているのだろうか」と、ふと我に返り、虚しさを感じる瞬間もあります。調整役であるがゆえに、手柄は事業部署のものになり、失敗の責任は調整不足として企画課が負わされがちなのも、職員が疲弊する一因です。

想定残業時間

 通常期:月30~45時間程度

 繁忙期:月60~80時間以上

 企画課において「定時で帰れる日」は稀です。通常期であっても、進行管理業務や次なる繁忙期に向けた情報収集・準備などで、一定程度の残Со常態化しています。

 繁忙期は、主に予算編成と首長の施政方針演説の準備が重なる12月から2月にかけてです。この時期は、各部署との最終調整、膨大な資料作成、幹部への説明などが深夜まで続き、月間の残業時間が100時間を超えることも決して珍しくありません。これは、地方公務員全体の平均残業時間(月12.5時間程度)と比較しても、突出して高い水準であり、企画課の業務がいかに過酷であるかを物語っています。

やりがい

 その過酷さの裏返しとして、企画課でしか味わえない、スケールの大きなやりがいが存在します。

未来のまちづくりに直接貢献できる実感

 自分が関わった総合計画が、10年後のまちの姿を形作っていく。自分が起案したプロジェクトが、新たなランドマークや市民サービスとして実現する。日々の業務は地味な調整作業の連続かもしれませんが、その一つ一つが、未来の住民の暮らしを豊かにするための礎を築いているという実感は、何物にも代えがたい誇りとなります。自分の仕事が、数十年単位で地域に影響を与えるレガシー(遺産)となる可能性を秘めているのです。

組織全体を動かすダイナミズム

 一つの部署では到底成し遂げられないような、全庁的なプロジェクトを司令塔として動かしていく経験は、企画課の醍醐味です。バラバラに動いていた各部署が、自分が描いた計画の下に一つの目標に向かって連携し、大きなうねりを生み出していく様を目の当たりにした時の高揚感は格別です。まるでオーケストラの指揮者のように、様々な専門性を持つプレーヤー(職員)を束ね、一つの壮大なハーモニー(政策実現)を奏でる。そのダイナミズムは、他の部署では決して味わえません。

首長の政策実現を支える達成感

 首長や副市長といった組織のトップと直接仕事をする機会が多いのも企画課の特徴です。彼らが抱く政策への想いやビジョンを、最も近くで聞き、それを具体的な計画や言葉に落とし込んでいく。そして、それが議会で承認され、実際の事業として動き出した時、「自分がこのまちのトップの意思決定を支えたんだ」という強い達成感と自負心を感じることができます。行政という巨大な組織の中枢で、その意思決定プロセスに深く関与できることは、大きな魅力です。

やりがい(職員の本音ベース)

 公式なやりがいとは別に、職員が密かに胸に抱く、内面的な満足感も存在します。

 一つは、庁内の力学や情報の流れを全て把握できる「神の視点」を持てることです。どの部署にキーマンがいるのか、どの事業が今、政治的に重要視されているのか、水面下でどのような調整が行われているのか。そうした組織の裏側まで含めた「生きた情報」が自然と集まってくるため、物事の本質を見通す力が養われます。このインサイダーとしての知見は、庁内で仕事を進める上で静かな自信と優越感をもたらしてくれます。

 また、誰もが匙を投げたような難題を解決した時の「超難解パズルを解いた達成感」も格別です。予算を巡って財政課と事業課が完全に対立し、プロジェクトが暗礁に乗り上げた際、双方の面子を保ちつつ、政策的にも意義のある第三の道(例えば、国の補助金を活用する新たなスキーム)を提示し、合意形成にこぎつけた時の全能感。これは、困難な知的挑戦を乗り越えた者だけが味わえる快感です。

 そして、何よりの財産となるのが「最強の人脈」です。全庁的な調整業務を通じて、あらゆる部署に「あの人に聞けば何とかなる」と思える知人・友人ができます。この人的ネットワークは、企画課を離れた後も、部署の壁を越えてスムーズに仕事を進めるための、極めて強力な武器となります。

得られるスキル

 企画課での経験は、公務員として、また一人のビジネスパーソンとして極めて価値の高いスキルセットをもたらします。それは、専門的なスキルと、どこでも通用するポータブルスキルに大別できます。

専門スキル

  • 政策立案・評価能力
     これは単に計画書を書く能力ではありません。地域の課題をデータに基づいて客観的に分析し(現状把握)、その原因を特定し(原因分析)、解決のための具体的な政策オプションを複数描き出し(選択肢の提示)、それぞれの効果やコスト、リスクを比較検討して最適な案を形成する(意思決定支援)という、一連の論理的思考プロセスが体系的に身につきます。これはまさに、近年重視されているEBPM(証拠に基づく政策立案)を実践する能力そのものです。
  • 行政計画策定スキル
     総合計画のような、策定に1~2年を要する大規模な計画プロジェクトを管理・遂行する能力です。どのようなスケジュールで、どのタイミングで住民参加(ワークショップ、アンケート等)の機会を設け、審議会や議会での議論をどう計画に反映させていくか。こうした複雑で長期にわたるプロセス全体を設計し、多くの関係者を巻き込みながら着実に前に進めていくプロジェクトマネジメント能力が鍛えられます。
  • 行政マネジメント知識
     予算編成プロセス、人事異動や組織改編の仕組み、条例や規則の制定・改正手続き、議会の運営ルールなど、自治体という巨大な組織が「どのように動いているか」というメカニズムを、理論ではなく実務として深く理解できます。この知識は、将来、組織のどの部署に行っても、物事を円滑に進めるための基盤となります。

ポータブルスキル

  • 高度な調整・交渉力
     企画課の日常は、利害が対立する当事者間の調整の連続です。例えば、「新規事業に予算をつけたい事業部」と「歳出を抑制したい財政部」との間で板挟みになりながら、双方の主張の根拠を深く理解し、データや上位計画を盾に粘り強く交渉し、最終的な落としどころを見出す。こうした経験を通じて、単なる「お願い」ではない、論理と共感に基づいた高度な交渉術が血肉となります。
  • 抽象的課題の構造化能力
     「本市の魅力を向上させよ」といった、首長からの極めて抽象的な指示を、具体的なアクションプランに落とし込む能力です。この漠然としたテーマを、「ターゲットは誰か」「魅力の源泉は何か」「競合となる他都市の強みは何か」「具体的なKPI(重要業績評価指標)をどう設定するか」といった、分析・実行可能な小さな問いに分解していく思考力は、コンサルタントに求められる核心的なスキルと全く同じものです。
  • 経営層への説明・説得能力
     何百ページにも及ぶ詳細な計画書やデータを、わずか数ページのサマリーや10分程度の口頭説明で、首長や副市長といった多忙な経営層に的確に伝え、意思決定を促す能力です。要点を絞り込み、専門用語を避け、相手の関心事を予測して説明のロジックを組み立てる。このスキルは、あらゆる組織でリーダーシップを発揮する上で不可欠です。
  • マクロ的・長期的視点
     日々の業務に追われると、どうしても目の前のことに視野が狭まりがちです。しかし企画課では、常に市全体の状況や、10年、20年先を見据えた社会経済の動向を意識することが求められます。この経験を通じて、個別の事象をより大きな文脈の中で捉え、短期的な利益だけでなく長期的な影響までを考慮して判断する、大局的な視野が自然と身につきます。

キャリアへの活用(庁内・管理職)

 企画課での経験は、将来、課長、部長といった管理職、さらにはその先の幹部職員を目指す上で、他のどの部署の経験よりも強力なアドバンテージとなります。その理由は、他の部署出身の管理職にはない、圧倒的な「視野の広さ」と「組織運営能力」が身についているからです。

 企画課出身の管理職は、自部署の事業を考える際に、無意識のうちに「全庁的な視点」で物事を捉えることができます。例えば、新たな事業を立ち上げる際も、それが財政に与える影響、関連する他の部署との連携の必要性、議会で説明する際の論点などを瞬時に頭の中で整理し、最適な戦略を立てることができます。これは、一つの分野で専門性を磨いてきた管理職にはない、極めて大きな強みです。

 また、予算編成や組織改編のプロセスを内部から熟知しているため、自部署の予算を獲得したり、必要な人員を確保したりするための「勘所」を心得ています。どうすれば財政課や人事課を説得できるか、どのような理屈とデータを用意すれば首長や議会が納得するかを、肌感覚で理解しているのです。これは、自部署のパフォーマンスを最大化させる上で、決定的な差となります。

キャリアへの活用(庁内・一般職員)

 企画課での経験は、管理職にならずとも、その後の庁内キャリアを非常に豊かで効果的なものにします。特に、企画課で築いた「人的ネットワーク(人的資本)」は、異動先で計り知れない価値を発揮します。

 例えば、あなたが企画課から福祉部門に異動したとします。そこで新たな福祉サービスを立ち上げようとした際、条例改正が必要になれば、すぐに法規担当の元同僚に電話して勘所を聞くことができます。予算確保で壁にぶつかれば、財政課の旧知の担当者に「どういうロジックなら通りやすいか」とこっそり相談することも可能です。このように、部署の壁をいとも簡単に飛び越え、非公式なルートで情報を得たり、協力を仰いだりできる能力は、あなたを単なる一職員ではなく、部署の課題解決を加速させる「ハブ人材」として際立たせるでしょう。

 特に、財政課や人事課、あるいは各事業部署の企画・庶務担当といった、他部署との連携が必須となるポストに異動した場合、企画課で培った調整能力と人脈は、まさに「即戦力」として絶大な効果を発揮します。あなたは、新しい部署の「対外的な交渉役」として、すぐに中心的な存在になることができるはずです。

キャリアへの活用(民間企業への転職)

求められる業界・職種

 企画課での経験は、民間企業の特定の業界・職種で「喉から手が出るほど欲しい」と評価される可能性があります。

 筆頭は、コンサルティングファーム、特に国や自治体をクライアントとする公共セクター向けのチームです。行政特有の意思決定プロセスや予算制度、議会との関係性といった「お作法」を内部から熟知している人材は極めて希少であり、クライアントの懐に深く入り込み、現実的な改革案を提示できる即戦力として高く評価されます。

 次に、インフラ、エネルギー、不動産デベロッパー、鉄道といった、事業の遂行に行政の許認可や連携が不可欠な企業の「経営企画」や「事業企画」部門です。こうした企業にとって、行政の論理や力学を理解し、円滑な官民連携プロジェクトを推進できる人材は、事業リスクを管理し、新たなビジネスチャンスを創出する上で死活的に重要です。

 また、ITメガベンチャーなどが展開するGovTech(ガブテック)領域の事業開発担当も有望な転職先です。行政の非効率な部分を熟知しているからこそ、どのようなデジタルサービスが本当に現場で求められているかを的確に捉え、自治体への導入を成功に導くことができます。

企業目線での価値

 民間企業が企画課経験者を評価する際、単なるスキル以上に、その経験の「希少性」や「スタンス」に価値を見出します。

 まず、何よりも評価されるのが「大規模組織での複雑な合意形成能力」です。数千人規模の職員と多様な価値観を持つ住民、そして政治家という、市場原理だけでは動かない巨大で複雑な組織を、粘り強い調整と交渉で動かしてきた経験は、どんな大企業の社内調整よりも難易度が高いと見なされます。この経験は、そのまま大企業の部門横断的なプロジェクトマネジメントに活かせます。

 次に、「極度のストレス耐性」です。首長の鶴の一声によるちゃぶ台返し、議会での厳しい追及、深夜まで続く終わりの見えない作業。こうした極限状況を乗り越えてきたという事実は、精神的な強靭さの何よりの証明です。プレッシャーの大きい職務でも、冷静にパフォーマンスを発揮できる人材として信頼されます。

 そして、「高い倫理観とコンプライアンス意識」も大きな魅力です。公務員として、公平性・公正性や法令遵守を徹底的に叩き込まれているため、ガバナンスを重視する企業にとっては非常に安心できる人材です。企業の社会的責任(CSR)やESG経営といった分野でも、その素養を高く評価されるでしょう。

求人例

求人例1:大手コンサルティングファーム(公共セクター担当コンサルタント)

  • 想定企業: 外資系・国内系大手コンサルティングファーム
  • 年収: 700万円~1,200万円
  • 想定残業時間: 月45時間程度(プロジェクトによる)
  • 働きやすさ: ★★★☆☆(激務だが、リモートワークなど柔軟な働き方も可能)
  • 自己PR例
     現職の自治体企画課において、10年先を見据えた「第5次総合計画」の策定プロジェクトを主担当として推進しました。当初、各部局から提出された施策案は総花的で優先順位が不明確な状態でした。
    この課題に対し、私はまずEBPM(証拠に基づく政策立案)の手法を用い、人口動態や産業構造のデータを分析し、本市が直面する本質的な課題を3点に特定しました。その上で、全庁の課長級職員を対象としたワークショップを5回にわたり開催し、課題認識の共有と、部局横断での施策の再構築をファシリテートしました。特に、財政的な制約と政策効果のバランスを取るため、独自の評価指標を用いた施策の優先順位付けを提案し、最終的には約200の事業を重点・推進・見直しの3つに分類することに成功しました。
    結果として、策定された計画は首長から「これまでで最も戦略的で、市民にも分かりやすい」と高い評価を受け、その後の予算編成においても実質的な指針として機能しました。この経験で培った、抽象的な課題を構造化し、多様なステークホルダーを巻き込みながら具体的なアクションプランへと落とし込む能力は、貴社で自治体のDX推進や行財政改革プロジェクトに貢献する上で必ず活かせると確信しております。

求人例2:大手インフラ企業の経営企画職

  • 想定企業: 大手私鉄、電力会社、通信会社など
  • 年収: 650万円~1,000万円
  • 想定残業時間: 月30~40時間程度
  • 働きやすさ: ★★★★☆(福利厚生が手厚く、長期的なキャリア形成が可能)
  • 自己PR例
     企画課在籍時、市が推進する「駅周辺再開発事業」において、行政側の総合調整担当を務めました。この事業は、複数の民間デベロッパー、交通事業者、そして地元商店街など、利害関係が複雑に絡み合う極めて難易度の高いプロジェクトでした。
    私は、行政としての都市計画上の指針を明確に提示する一方、民間事業者の持つ事業性や収益性に関する視点を深く理解するため、個別に数十回以上のヒアリングを実施しました。その中で、行政が求める公共性と民間が求める事業性の最大の対立点となっていた「公開空地の設置義務」について、容積率の緩和措置と固定資産税の減免措置を組み合わせた新たなインセンティブ案を、財政課や税務課と粘り強く交渉し、制度化しました。
    この提案が突破口となり、停滞していた官民協議会が大きく前進。最終的には、総事業費500億円規模の再開発計画の合意形成に成功しました。行政の論理と民間企業の論理の双方を理解し、両者の「共通言語」を見つけ出してWin-Winの関係を構築する交渉力には自信があります。貴社が今後、行政との連携をさらに深め、大規模なインフラプロジェクトを推進していく上で、私のこの経験は必ずや貢献できるものと考えております。

求人例3:ITメガベンチャーの事業開発(GovTech担当)

  • 想定企業: 急成長中のIT企業(SaaS、AI関連など)
  • 年収: 800万円~1,400万円(ストックオプション含む)
  • 想定残業時間: 月20~30時間程度(裁量労働制)
  • 働きやすさ: ★★★★★(フルリモート、フルフレックスなど自由度が非常に高い)
  • 自己PR例
     私は、行政手続きのオンライン化を推進するプロジェクトのリーダーとして、庁内15部署が関わるシステム導入を担当しました。当初、各部署は既存の紙ベースの業務フローに固執しており、全庁的なシステム導入への抵抗が非常に強い状況でした。
    この状況を打開するため、私は単にシステムの利便性を説くだけでなく、各部署の業務を徹底的にヒアリングし、年間でどれだけの作業時間と印刷コストが無駄になっているかを数値で「見える化」しました。その上で、最も抵抗の強かった福祉部門と戸籍部門をパイロット部署として説得し、導入後の業務削減効果を実証する「成功事例」を意図的に作り出しました。この成功事例を庁内広報で大々的に展開した結果、他の部署からも「うちでも導入したい」という声が上がるようになり、最終的には計画を半年間前倒しして全庁展開を達成しました。
    結果として、年間約5,000時間の事務作業と約300万円のコスト削減を実現しました。この経験から、行政組織の硬直的な文化や意思決定プロセスを熟知した上で、現場の職員を巻き込みながら変革を推進するノウハウを体得しました。貴社の先進的なソリューションを全国の自治体に展開していくにあたり、私の「行政の翻訳家」としての能力は、強力な推進力となると確信しています。

求人例4:独立系シンクタンクの政策研究員

  • 想定企業: 政策研究・提言を行うNPO、一般社団法人など
  • 年収: 550万円~800万円
  • 想定残業時間: 月20~30時間程度
  • 働きやすさ: ★★★★☆(専門性を高めながら、社会貢献とワークライフバランスを両立)
  • 自己PR例
     現職では、市の「子育て支援政策」の効果検証と次期計画策定を担当しました。従来、政策評価が担当者の主観に偏りがちであるという課題認識から、私は統計解析の手法を用いた客観的な効果測定を導入することを提案し、実行しました。
    具体的には、過去5年間に実施した10種類の支援事業(保育料補助、一時預かりサービス拡充など)について、利用実績データと住民アンケートデータを組み合わせ、どの事業が「子育て世帯の定住意向」に最も強く相関しているかを重回帰分析によって明らかにしました。分析の結果、これまで重視されてきた現金給付型の支援よりも、病児保育などの「いざという時に頼れるサービス」の充実度の方が、定住意向への寄与度が約1.5倍高いという、従来の見解を覆すエビデンスを得ました。
    この分析結果に基づき、次期計画では事業の選択と集中を断行。現金給付型事業の予算を一部削減し、病児保育施設の新設に重点配分する政策転換を実現しました。データに基づき、政策の費用対効果を最大化するこの一連のプロセスは、貴社が自治体に対して行っている政策立案支援業務において、即戦力として貢献できる経験であると考えております。

求人例5:地方創生系ベンチャーの地域連携マネージャー

  • 想定企業: 古民家再生、観光開発、特産品ブランディングなどを手掛けるソーシャルベンチャー
  • 年収: 500万円~750万円
  • 想定残業時間: 月30時間程度
  • 働きやすさ: ★★★★☆(地域の未来を創るやりがいと、柔軟な働き方を両立)
  • 自己PR例
     企画課の業務として、地域のNPOや民間事業者と連携して空き家対策と移住促進に取り組む「公民連携プラットフォーム」の立ち上げと運営を3年間担当しました。
    当初、行政、不動産業界、移住支援NPOはそれぞれがバラバラに活動しており、連携が全く取れていない状態でした。私はまず、各団体のキーパーソンを一人ずつ訪ね、彼らが抱える課題や行政への要望を徹底的にヒアリングすることから始めました。その結果、最大の障壁が「信頼関係の欠如」と「情報の非対称性」にあると突き止め、月1回の情報交換と相互理解を目的とした連絡会議の設置を提案し、自らが事務局となって運営しました。会議では、行政の補助金メニューや法規制について分かりやすく解説する一方、民間からは現場のリアルな課題や成功事例を共有してもらい、相互理解の土壌を育みました。
    この地道な活動が実を結び、3年間で20件以上の空き家改修プロジェクトが官民連携で実現し、移住者も年間5名から30名へと増加しました。この経験で培った、多様なバックグラウンドを持つ地域プレーヤーの間に立ち、共通のビジョンを育みながら具体的な協働事業を創出していく「触媒」としての役割は、貴社が全国各地で地域を巻き込みながら事業を展開していく上で、必ずやお役に立てると信じております。

最後はやっぱり公務員がオススメな理由

 これまでの内容で、ご自身の市場価値やキャリアの選択肢の広がりを実感いただけたかと思います。その上で、改めて「公務員として働き続けること」の価値について考えてみましょう。

 確かに、提示された求人例のように、民間企業の中には高い給与水準を提示するところもあります。しかし、その働き方はプロジェクトの状況に大きく左右されることが少なくありません。繁忙期には予測を超える業務量が集中し、プライベートの時間を確保することが難しくなる場面も考えられます。特に、子育てなど、ご自身のライフステージに合わせた働き方を重視したい方にとっては、この予測の難しさが大きな負担となる可能性もあります。

 その点、公務員は、長期的な視点でライフワークバランスを保ちやすい環境が整っており、仕事の負担と処遇のバランスにも優れています。何事も、まずは安定した生活という土台があってこそ、仕事にも集中し、豊かな人生を築くことができます。

 公務員という、社会的に見ても非常に安定した立場で、安心して日々の業務に取り組めること。そして、その安定した基盤の上で、目先の利益のためではなく、純粋に「誰かの幸せのために働く」という大きなやりがいを感じられること。これこそが、公務員という仕事のかけがえのない魅力ではないでしょうか。その価値を再認識し、自信と誇りを持ってキャリアを歩んでいただければ幸いです。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました