第1章 新たな時代に対応した教育政策の推進
教育政策をめぐる動き
※以下は、基礎自治体に関係のある部分(主に小中学校等)の抜粋です。
教育未来創造会議
教育未来創造会議は、我が国の未来を担う人材を育成するために、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進することを目的としています。この会議は、令和3年12月から内閣総理大臣を議長として開催されています。
令和4年5月には「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」が取りまとめられました。また、同年9月には第一次提言の工程表を作成し、随時フォローアップが行われています。さらに、5年4月に取りまとめられた「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(第二次提言)」においては、コロナ後のグローバル社会を見据えた人への投資の具現化に向けて、以下の具体的な方策が示されました
- コロナ後の新たな留学生派遣・受入れ方策
- 留学生の卒業後の活躍に向けた環境整備
- 教育の国際化の推進
コロナ後の新たな留学生派遣・受入れ方策
初等中等教育段階における英語教育・国際理解教育、課題発見・解決能力等を育む学習等の推進
- 英語4技能(読む、書く、聞く、話す)の育成に向けた、デジタルを活用したパフォーマンステストの実施促進
- 探究学習、自然・社会・文化芸術への興味関心を育む体験活動、国際理解教育の推進
- 国際バカロレアなどの国際的な教育プログラムが履修できる教育環境の整備
- 教員養成段階の留学や採用後の海外経験機会の拡充、実践的な教員研修の充実を通じた教員の英語教育・国際理解教育の指導力強化
- 1人1台端末を活用した海外とのオンライン交流の促進 等
教育振興基本計画に基づく教育施策の推進
我が国における今後の教育政策の方向性
次期計画のコンセプトは下記の2つ。
- 持続可能な社会の創り手の育成
- 日本社会に根差したウェルビーイングの向上
その下に5つの基本的な方針を掲げる。
- グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成
- 誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進
- 地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進
- 教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
- 計画の実効性確保のための基盤整備・対話
新たな教育振興基本計画について(概要)
第3章 生涯学習社会の実現
現代的・社会的な課題に対応した学習等の推進
児童虐待の防止
- 全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数が令和3年度には20万7,660件と過去最多
- 児童虐待の未然防止や、早期発見・早期対応、虐待を受けた児童生徒の支援については、家庭・学校・地域社会・関係機関が緊密に連携する必要がある
- 学校教育関係者等に対する児童相談所への通告義務や関係機関との連携等を図る上での留意点等の周知、教職員の対応スキルの向上を図るための研修教材の作成・配布などを行ってきたほか、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等を活用した学校における教育相談体制の整備、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チーム等による保護者に対する学習機会や情報の提供、相談対応等、地域の実情に応じた家庭教育支援に関する取組の充実に取り組んでいる
- 引き続き、①専門スタッフの配置等による学校・教育委員会の体制強化、②学校・教育委員会と児童相談所、警察等の関係機関との連携強化等の子供たちを守り通すための取組を一層強化するとともに、地域全体で子供たちを見守り育てるための取組を推進していく
読書活動の推進
- 「学校教育法」には、義務教育として行われる普通教育の目標の一つとして、「読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」が規定されている
- 文部科学省の調査によると、令和元年度末現在、全校一斉の読書活動(いわゆる「朝読」を含む。)を実施している公立学校の割合は、小学校で90.5%(27年97.1%)、中学校で85.9%(27年88.5%)、高等学校で39.0%(27年42.7%)となっている
- 読書活動を実施している公立学校の割合は減少していることのエビデンス
- 公立図書館との連携を実施している学校も増加しており、各学校において積極的な取組が行われている
社会教育の振興と地域全体で子供を育む環境づくり
社会全体で子供たちの学びを支援する取組の推進
- 社会総掛かりでの教育の実現を図る上で、学校は、地域社会の中でその役割を果たし、地域とともに発展していくことが重要
- 学校と地域がパートナーとして連携・協働するために、これからの学校は、 地域でどのような子供たちを育てるのか、何を実現していくのかという目標やビジョンを保護者や地域住民等と共有し、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していく必要がある
- また、地域においても、学校と連携・協働してより多くの地域住民等が子供 たちの成長を支える活動に参画するための基盤を整備していくことが重要
コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進
コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入状況
- 令和4年5月1日現在において、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を導入している学校数は1万5,221校であり、全体の42.9%
- 小学校はR4は9,121校でR3の7,051校から2,070校増(11.5ポイント増)
- 中学校はR4は4,287校でR3の3,339校から948校増(10.8ポイント増)
- 特別支援学校はR4は395校でR3の286校から109校増(9.8ポイント増)
- なお、東京都の設置率は30%以上に留まり、全国平均42.9%より低くなっていることは課題(コミュニティ・スクール設置を推進すべきエビデンス)
- また、地域学校協働本部がカバーする学校数は、2万568校であり、本部数で見ると、1万2,333本部が整備
- 地域学校協働活動の一環として、地域住民等の協力を得て子供たちに学習・体験活動等を提供する「放課後子供教室」は1万7,129教室が実施
家庭教育支援の推進と青少年の健やかな成長
子育てについての悩みや不安
- 子育てについての悩みや不安について、感じている割合は計67.8%
- 子供の行動・気持ちが分からないが31.2%
- しつけの仕方が分からないが25.4%
- 子供の生活習慣の乱れについて悩みや不安があるが25.4%
- 子供の健康や発達について不安があるが24%
- 子育てをする上で経済的に厳しいが19.6%
子供の基本的な生活習慣の現状
- 令和4年度「全国学力・学習状況調査」によると、子供の睡眠習慣については、毎日、同じくらいの時刻に寝ている小学校6年生の割合は約81%、中学校3年生の割合は80%、また、毎日、同じくらいの時刻に起きている小学校6年生の割合は約90%、中学校3年生の割合は約92%となっています。
- さらに、同調査において、子供の朝食摂取については、朝食を毎日食べている小学校6年生の割合は約85%、中学校3年生の割合は約80%となっているほか、毎日朝食を食べる子供の方が、同調査の平均正答率が高い傾向
朝食摂取と学力調査の平均正答率との関係
第4章 初等中等教育の充実
学習指導要領が目指す教育の実現
教育内容の主な改善事項
- 言語能力の確実な育成
- 理数教育の充実
- 伝統や文化に関する教育の充実
- 道徳教育の充実
- 体験活動の充実
我が国の子供たちの学力・学習状況
国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)
- 日本は、前回調査と比べ、小学校理科の平均得点が有意に低下しているものの、国際的に見て引き続き上位に位置
学校における働き方改革の推進
- 我が国の学校教育の中核であり、その成否を左右する教師に質の高い人材を確保することは必須であり、抜本的に教職の魅力を向上させることは喫緊の課題となっている
- そのため、教師の長時間勤務の是正は待ったなしである
学校・教師が担ってきた代表的な業務の考え方
基本的には学校以外が担うべき業務
- 登下校に関する対応
- 放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
- 学校徴収金の徴収・管理
- 地域ボランティアとの連絡調整
※その業務の内容に応じて、地方公共団体や教育委員会、保護者、地域学校協働活動推進員や地域ボランティア等が担うべき
学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 調査・統計等への回答等(事務職員等)
- 児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
- 校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
- 部活動(部活動指導員等)
※部活動の設置・運営は法令上の義務ではないが、ほとんどの中学・高校で設置。多くの教師が顧問を担わざるを得ない実態
教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
- 給食時の対応(学級担任と栄養教諭等との連携等)
- 授業準備(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 学習評価や成績処理(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 学校行事の準備・運営(事務職員等との連携、一部外部委託等)
- 進路指導(事務職員や外部人材との連携・協力等)
- 支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門スタッフとの連携・協力等)
令和4年度教員勤務実態調査の実施と速報値の公表
- 平成28年度に実施した前回の調査に比べて、①全ての職種で、平日・土日ともに在校等時間が減少していること、②業務内容別では、成績処理や学年・学級経営、学校行事、部活動など様々な業務で減少が見られること、③働き方改革の取組に一定の進捗が見られることや、学期中と長期休業期間中で繁閑の差が大きいことなどが明らかになった
- 今回の調査結果を基に推計した年間を通じた教諭の月当たりの時間外在校等時間は、小学校は約41時間、中学校は約58時間となっており、依然として長時間勤務の教師も多く、引き続き取組を加速させていく必要ある
グローバル社会における人材育成に向けた教育の充実
グローバル社会の中で特に求められる力
- グローバル化が進行する社会においては、多様な人と関わり様々な経験を積み重ねるなど「社会を生き抜く力」を身に付ける過程の中で、未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神、強い意志を持って迅速に決断し組織を統率するリーダーシップ、国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力・コミュニケーション能力、異文化多様性の理解、日本人としてのアイデンティティーなどを培っていくことが、一層重要になってくる
いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応
生徒指導上の諸課題
- 令和3年度の調査結果では、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約7万6,000件、小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約61万5,000件、いじめの重大事態の件数は705件、小・中・高等学校における不登校児童生徒数は約29万5,000人となっている
いじめの認知(発生)件数の推移
不登校
- 令和3年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約24万5,000人、 高等学校は約5万1,000人と、依然として相当数に上っている
自殺
- 厚生労働省・警察庁「令和4年中における自殺の状況」(5年3月)によると、4年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は過去最多の514人(前年473人)となり、大変憂慮すべき状況にある
- 18歳以下の自殺は、学校の長期休業明けにかけて急増する傾向があることから、長期休業前から期間中、長期休業明けの時期にかけて学校における早期発見に向けた取組、保護者に対する家庭における見守りの促進、学校内外における集中的な見守り活動、ネットパトロールの強化を実施するよう、夏休み等の長期休業前にそれぞれ対応を求めた
教育相談体制の整備・充実
- 児童生徒のいじめの問題などに適切に対処するためには、児童生徒の悩みや不安などを受け止めて、速やかに相談できるよう教育相談体制を整備することが重要
- 5年度予算では、全公立小中学校に対するスクールカウンセラーの配置(2万7,500校)に加え、いじめ・不登校対策のための重点配置(2,900校)や虐待対策のための重点配置(2,000校)、貧困対策のための重点配置(2,300校)、教育支援センターの機能強化(250箇所)、オンライン活用拠点(67箇所)に必要な経費を計上するとともに、スーパーバイザーの配置(90人)に必要な経費を計上
- 5年度予算では、全中学校区に対するスクールソーシャルワーカーの配置(1万中学校区)に加え、いじめ・不登校対策のための重点配置(3,000校)や虐待対策のための重点配置(2,500校)、貧困対策のための重点配置(3,500校)、教育支援センターの機能強化(250箇所)、オンライン活用拠点(67箇所)に必要な経費を計上するとともに、スーパーバイザーの配置(90人)に必要な経費を計上
※以降の掲載は省略
出典
文部科学省ホームページ.令和4年度 文部科学白書.https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0229/agenda.html.(公開 2023-07-18.参照 2024-03-20)
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