07 自治体経営

予算編成手法(枠配分方式)

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(枠配分方式による予算編成を取り巻く環境)

  • 自治体が枠配分方式による予算編成を行う意義は、「前年度踏襲・積み上げ型の予算文化から、スクラップ・アンド・ビルドを前提とした戦略的な資源配分への転換」と「各部局の裁量と責任を拡大し、現場起点のマネジメント能力を強化すること」にあります。
  • 枠配分方式とは、財政担当部局が各部局に対して予算の総額(枠)を示し、その枠の中で各部局が自主的・主体的に事業の優先順位付けや予算配分を行う手法です 。これは、財政担当部局が個々の事業を詳細に査定する従来の一件査定方式とは一線を画します 。
  • この改革が求められる背景には、地方自治体、特に東京都特別区が直面する厳しい財政環境があります。少子高齢化に伴う社会保障費の構造的な増大と、景気変動に左右されやすい歳入構造という課題を抱える中、限られた財源をこれまで以上に効果的・効率的に配分する必要性が高まっています 。

意義

住民にとっての意義

サービス提供の最適化
  • 現場の住民ニーズを最も把握している事業担当課が、自らの裁量で予算を柔軟に再配分できるため、硬直的な予算制度の下では対応が難しかった、真に住民が求める優先度の高いサービスへ資源を集中させることが可能になります 。
行政の透明性と説明責任の向上
  • 各部局が自らの責任で予算枠内での事業選択を行うため、なぜその事業に予算を配分したのかという意思決定プロセスが明確になります。一部の自治体では、各部局の予算要求額や配分された枠を公表し、住民への説明責任を果たす取り組みも進められています 1

地域社会にとっての意義

地域の優先課題への迅速な対応
  • 社会情勢の変化や新たな地域課題の発生に対し、中央の財政担当部局による長大な再査定プロセスを経ることなく、各部局が機動的に既存事業の見直しや予算の組み替えを行えるため、優先課題へ迅速に対応することが可能となります 。

行政にとっての意義

財政規律の強化と持続可能性の確保
  • 歳入規模に見合った予算の「枠」をあらかじめ設定することで、予算規模全体の無秩序な膨張を抑制し、中長期的な財政の持続可能性を確保する上で有効な手法となります 。これにより、各部局レベルで歳出削減と財源確保の規律が働きます。
部局マネジメント能力の向上
  • 予算編成の権限が各部局に委譲されることで、部局長や職員は単なる事業執行者ではなく、コストと成果を意識する「経営者」としての視点を持つことが求められます。自律的に事業の総点検や見直しを行う過程を通じて、職員の政策形成能力や主体的な姿勢が醸成されます 。
予算編成プロセスの効率化
  • 財政担当部局が全ての事業を一件ずつ査定する必要がなくなるため、事務的な負担が大幅に軽減されます。これにより、財政担当部局はより大局的な視点での財政戦略の立案や、部局横断的な課題への対応に注力できるようになります 。

(参考)歴史・経過

1980年代
  • 英国のサッチャー政権下で提唱されたNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を背景に、行政運営に民間企業的な経営手法を導入する議論が国際的に活発化しました。この時期の日本の行政改革は、主に国の主導による定員合理化などが中心でした 。
2000年代
  • 地方分権一括法(2000年)の施行により自治体の自己決定権が拡大し、三位一体の改革によって国からの補助金が削減される一方、自治体はより自律的な財政運営を迫られました 。
  • このような環境変化を受け、一部の先進的な自治体では、行政評価制度の導入や、市民が予算編成に参加する仕組み(志木市「市民委員会」など)といった、新たな予算編成改革の模索が始まりました 。
2010年代以降
  • 少子高齢化の進展による社会保障費の増大や、公共施設の老朽化といった構造的な財政課題が深刻化し、歳出の効率化が不可避の課題となりました。
  • 多くの自治体で、行政評価の結果を予算に反映させる仕組みと連動させる形で、枠配分方式の導入が本格化しました。これは、単なる歳出削減(シーリング)に留まらず、事業の選択と集中を通じて行政サービスの質を維持・向上させることを目的としています 。

枠配分方式を巡る現状データ

東京都特別区の財政データは、歳出の構造的な増加圧力と歳入の不安定性という「財政の挟み撃ち」状態が進行していることを示しています。この状況は、従来型の積み上げ式予算編成の限界を明らかにし、枠配分方式のような抜本的な改革の必要性を裏付けています。

歳入構造の脆弱性
  • 特別区税の不安定性
    • 歳入の根幹をなす特別区税は、令和5年度決算見込みで13年連続の増収となったものの、その収入は景気動向に大きく左右されるため、将来的な安定性は不透明です 。
  • 区間格差の存在
    • 歳入総額に占める特別区税の割合は、区によって大きく異なり、例えば渋谷区が48.7%であるのに対し、墨田区は20.6%に留まるなど、財政力に著しい格差が存在します 。これにより、自前の財源で柔軟な政策を展開できる区と、そうでない区の二極化が進んでいます。
  • 特別区交付金の伸び悩み
    • 区の重要な一般財源である特別区交付金も、一部の区では過去の伸び率が23区平均を下回っており、増大する行政需要に追いついていない実態があります 。交付金の算定方法自体も、長年の課題とされています 。
歳出構造の硬直化
  • 社会保障関係経費の増大
    • 高齢化の進展を背景に、扶助費(社会保障サービスに係る経費)は増加の一途を辿っています。令和5年度決算見込みでは、物価高騰対策給付金などにより前年度比4.4%増となりました 。
  • 義務的経費の継続的な増加
    • 人件費、扶助費、公債費に医療・介護保険への公費負担を加えた「実質的な義務的経費」の一般財源負担額は、令和5年度決算見込みで6年連続の増加となり、1.5兆円を超える規模に達しています 。この傾向は今後も続くと予測され、財政を構造的に圧迫しています。
  • 政策的経費の圧迫
    • これらの義務的経費の増加は、新規事業や区民ニーズに応えるための投資など、政策的な判断で支出しうる「政策的経費」に充当できる財源を直接的に減少させています。
財政指標が示す警鐘
  • 経常収支比率の区間格差
    • 財政構造の弾力性を示す経常収支比率は、令和5年度の23区平均で76.5%と健全な水準に見えますが 、区別に見ると練馬区が84.8%に達するなど、財政の硬直化が著しい区も存在し、区間格差が深刻です 。
  • ふるさと納税による財源流出
    • ふるさと納税制度による住民税の控除は、特別区全体で年間約430億円規模の減収要因となっており、財政運営上の大きな課題となっています 。

課題

住民の課題

行政サービスの質の低下・硬直化
  • 既存の事業をゼロベースで見直す仕組みがないと、優先度の低い事業が前年度踏襲で温存され、変化する住民ニーズに対応した新しいサービスに資源を振り向けることが困難になります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政は住民ニーズの変化に対応できない「動けない組織」と見なされ、住民満足度と行政への信頼が低下します。

地域社会の課題

財政格差によるサービス水準の不均衡
  • 経常収支比率が高いなど財政の柔軟性を欠く区では、財政力の豊かな区が実施するような独自の子育て支援や高齢者福祉サービスなどを展開できず、居住する区によって受けられるサービスの質に格差が生じます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政サービスが居住地によって決まる「ジップコード・ロッテリー(住所による富くじ)」化が進行し、社会的な不平等を助長します。

行政の課題

予算編成における「前年度踏襲主義」の蔓延
  • 従来の一件査定方式では、各部局は前年度予算を基準に上乗せ要求を行うことが合理的となり、既存事業の必要性や効果を抜本的に見直すインセンティブが働きにくい構造になっています。これは「使い切り予算」文化の温床ともなります 。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政組織は財政的に身動きが取れなくなり、デジタル化や脱炭素化といった社会の大きな変化に対応するための戦略的投資が不可能になります。
部局の当事者意識(コスト意識)の欠如
  • 予算査定の権限が財政担当部局に集中していると、事業担当部局は予算を「獲得するもの」と捉え、自らの事業コストを管理し、効率化を図る「当事者」としての意識が希薄になりがちです。
    • 客観的根拠:
      • 枠配分方式の導入目的の一つに、「自主的に予算を配分するため、事業に取り組む姿勢を促進する」ことや「職員の資質向上」が掲げられており、部局の当事者意識の醸成が重要な狙いとされています。
      • (出典)津市「枠配分方式導入について」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 税金の非効率な使用が常態化し、組織全体のマネジメント能力が低下していきます。
縦割り行政の弊害と全庁的視点の欠如
  • 一件査定方式の下では、各部局が自部署の予算確保のために競い合う構造となり、部局の壁を越えた連携や、全庁的な優先課題への戦略的な資源配分が困難になります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 複数の部局にまたがる複雑な社会課題に対して効果的な対応ができず、行政の信頼性が損なわれます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、財政規律や組織文化といった広範囲な課題に影響を及ぼす施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現行の法制度や組織体制の中で、比較的少ない障壁で実現できる施策を優先します。
  • 費用対効果:
    • 投入する資源(予算・人員)に対して、行政の効率性や効果性の面で大きな改善が見込める施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 全ての部局に対して公平に適用でき、かつ、一過性でなく長期的な財政健全化に貢献する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 他の自治体での成功事例や、公的調査で効果が示されているなど、客観的な根拠に裏付けられた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 枠配分方式の導入は、単一の施策ではなく、包括的な行財政改革の一環として捉える必要があります。その推進にあたっては、以下の3つの柱を一体的に進めることが重要です。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:枠配分方式の段階的導入と自律的マネジメントの基盤構築」**です。これが全ての改革の土台となります。
  • 次に、権限移譲と説明責任を両立させるため**「支援策②:行政評価・EBPMとの連携によるマネジメントサイクルの確立」**が不可欠です。自律的な判断が、客観的根拠に基づく成果志向へと向かうように制度設計を行います。
  • そして、これらの制度改革を組織に根付かせ、持続可能なものにするために**「支援策③:財政マネジメントを担う人材育成と組織文化の醸成」**を長期的に推進します。
  • これら3つの支援策は相互に補完し合う関係にあり、同時並行で進めることで改革の相乗効果が最大化されます。

各支援策の詳細

支援策①:枠配分方式の段階的導入と自律的マネジメントの基盤構築

目的
  • 各部局に「スクラップ・アンド・ビルド」を促し、主体的なコスト管理を根付かせるため、公平で実効性のある予算上限(枠)の仕組みを構築します。
主な取組①:シーリング(予算要求上限)ルールの明確化と段階的適用
  • 導入初期は、人件費や扶助費などコントロールが難しい経費は対象外とし、物件費や維持補修費といった裁量の効く経費から段階的に適用を開始します 2
  • シーリングのルールを明確に定めます。例えば、前年度の一般財源同額を上限とする「ゼロシーリング」3や、前年度比で一定率の削減を求める「マイナスシーリング」(例:前年度一般財源の90%)など、財政状況に応じて設定します。
  • 全庁的な重要戦略に関わる新規事業(例:東京都の「未来の東京」戦略関連事業)はシーリングの対象外とするなど、トップの政策判断を反映させるための柔軟な例外規定を設けます 5
    • 客観的根拠:
      • 愛知県あま市では、マイナスシーリングを基本としつつも、過去の予算要求で抑制に努めた課に対してはシーリングを軽減するなど、公平性に配慮した運用を行っています。
      • (出典)あま市「令和6年度予算編成方針」
主な取組②:インセンティブ制度の導入
  • 各部局が事業見直しや効率化によって経費を節減した場合、その削減額の一部(例:2分の1)を翌年度の新規事業などに活用できる財源として還元する仕組みを導入します。
  • この制度は、年度末に予算を使い切ろうとする「使い切り予算」の慣行を打破し、積極的な経営努力を促す強力な誘因となります。
    • 客観的根拠:
      • 三重県津市では、「使いきり予算を排除するため」として、節減努力によって生じた一般財源の2分の1以上を翌年度に再配分するルールを明記しています。
      • (出典)津市「枠配分方式導入について」
主な取組③:部局長の権限と責任の明確化
  • 部局内の予算配分に関する権限を、条例や規則で正式に部局長へ委譲します。
  • 同時に、部局長は自らの予算配分の決定とその結果(事業の成果)について、首長や議会に対して説明する責任を負うことを制度上明確にします。
    • 客観的根拠:
      • 枠配分方式の目標は、各部の長に「予算査定や執行などの権限を委譲」し、その創意工夫による予算執行を通じて市民サービス向上につなげることにあります。
      • (出典)津市「枠配分方式導入について」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 一般財源に占める政策的経費(新規・拡充事業費)の比率:3年間で5%向上
    • データ取得方法: 予算書における経費性質の分析(財政課による集計)
  • KSI(成功要因指標)
    • 枠配分方式の対象となる経費の割合(裁量的経費に占める割合):導入後2年で80%達成
    • データ取得方法: 財政課の予算編成プロセスデータ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • インセンティブ制度を活用して創出された新規事業の件数:全庁で年間10件以上
    • データ取得方法: 各部局からの予算要求書及び事業報告書
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 枠配分予算編成に関する職員研修の実施回数及び管理職の参加率:初年度に関係管理職の100%が受講完了
    • データ取得方法: 人事課の研修実施記録

支援策②:行政評価・EBPMとの連携によるマネジメントサイクルの確立

目的
  • 枠配分によって与えられた裁量が、客観的な根拠に基づき成果を最大化する方向で使われるように、行政評価やEBPM(証拠に基づく政策立案)と予算編成を一体化したマネジメントサイクルを確立します。
主な取組①:行政評価結果の予算査定への反映
  • 全ての事務事業について、必要性・効率性・有効性といった観点から行政評価を実施します。
  • 評価結果が低い事業(例:「見直し」「廃止・統合」と評価された事業)については、各部局が枠内で予算を編成する際の、削減・廃止の優先候補とすることを制度化します。
    • 客観的根拠:
      • 港区の事務事業評価では、評価区分を「継続」「レベルアップ」「スクラップ(統合、適正化、廃止)」に分け、その結果を次年度予算編成に直接反映させる仕組みを構築しています。
      • (出典)港区「令和5年度港区事務事業評価結果」
主な取組②:ロジックモデルとKPIの導入
  • 主要な事業について、投入する予算(Input)が、どのような活動(Activity)を通じて、どのような直接的産物(Output)を生み出し、最終的にどのような成果(Outcome)につながるのかを示す「ロジックモデル」の作成を義務付けます。
  • 事業の成果(Outcome)を測定するための客観的な指標(KPI:重要業績評価指標)を設定し、その達成度を定期的にモニタリングします。これにより、予算執行の評価軸が「いくら使ったか」から「どのような成果を上げたか」へと転換します。
    • 客観的根拠:
      • EBPMの先進事例である奈良県では、戦略目標ごとに具体的なKPI(例:救急搬送における病院収容所要時間の短縮、県立公園の来園者数)を設定し、その進捗を政策サイクルにフィードバックしています。
      • (出典)奈良県「奈良県基本計画進捗状況報告書」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 費用対効果が低いと評価された事業の削減率:3年間で対象事業数の10%削減
    • データ取得方法: 行政評価報告書と対応する予算執行データの分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 主要事業におけるロジックモデルの導入率:導入後2年で全ての新規・主要事業に導入
    • データ取得方法: 政策企画担当部局による事業計画書のレビュー
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 行政評価結果に基づき予算が削減・廃止された事業の割合:年間で評価対象事業の15%
    • データ取得方法: 財政課と行政改革担当課のデータ連携分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • EBPM・ロジックモデルに関する研修の受講職員数:2年間で200名
    • データ取得方法: 人事課の研修実施記録

支援策③:財政マネジメントを担う人材育成と組織文化の醸成

目的
  • 枠配分方式という新たな制度の下で、職員、特に管理職が資源を効果的に管理するために必要なスキルとマインドセットを習得し、組織全体にコスト意識と成果志向の文化を醸成します。
主な取組①:管理職向けの財政マネジメント研修
  • 全部局の管理職を対象に、コスト計算、業績評価、戦略的な資源配分といったテーマに関する研修を義務付けます。
  • 他の自治体の成功・失敗事例を用いたケーススタディを取り入れ、実践的な知識の習得を目指します。
主な取組②:財政の「見える化」と情報共有
  • 各部局の予算、執行状況、KPIの達成度などを直感的に把握できるダッシュボードを開発します。
  • この情報を庁内で広く共有することで、財政状況に対する共通認識を醸成するとともに、部局間の健全な競争や優良事例の共有を促します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省は「令和6年版 地方財政白書」において、持続可能な財政運営のため「財政マネジメントの強化」を掲げ、その中で地方公会計の活用による財政の「見える化」の推進を重要な取り組みとして位置付けています。
      • (出典)総務省「令和6年版 地方財政白書」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員のコスト意識・経営意識に関する意識調査スコア:3年間で20%向上
    • データ取得方法: 年1回の無記名職員意識調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 財政マネジメント研修を修了した管理職の割合:2年以内に100%達成
    • データ取得方法: 人事課の研修実施記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 各部局から提出される業務改善・コスト削減提案の件数:対前年度比で30%増加
    • データ取得方法: 行政改革担当課による提案制度の集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全庁で共有される財政状況ダッシュボードの月間アクセス数:目標アクセス率を設定し、維持する
    • データ取得方法: 情報システム担当課によるアクセスログ分析

先進事例

東京都特別区の先進事例

東京都特別区内においても、枠配分方式の考え方を取り入れた多様な予算編成改革が既に実践されています。各区の財政状況や政策文化に応じて異なるアプローチが取られており、これから導入を検討する区にとって貴重な学びとなります。

世田谷区「提示枠とインセンティブを組み合わせた自律的予算編成」

  • 世田谷区は、令和7年度の予算編成方針において、各部に一般財源の「提示枠」を示す明確な枠配分方式を採用しています。
  • この制度の最大の特徴は、「各部で生み出した財源は各部で活用することを可とする」というインセンティブ規定です。これにより、各部局がコスト削減に主体的に取り組む動機付けが生まれています。
  • また、公共施設の更新費用など、全庁的な視点が必要な巨額の投資については「枠外」として扱う柔軟性も備えており、硬直的な運用に陥ることを防いでいます。これは、規律と柔軟性を両立させたバランスの取れたモデルと言えます。

足立区「ゼロシーリングによる事業の抜本的見直し」

大田区「戦略的メリハリをつけたシーリング設定」

  • 大田区は、東京都の予算編成方針を参考に、より戦略的なシーリング設定を導入しています。基本はゼロシーリングですが、政策的な「メリハリ」がつけられています。
  • 具体的には、区の重要戦略に関わる事業はシーリングの対象外とする一方、事業評価の結果が芳しくない事業には「原則マイナス10%」という厳しいシーリングを課します。
  • これは、予算配分を事業の成果(パフォーマンス)と戦略的重要性とに直接連動させるものであり、成果を上げる重要事業に資源を集中させる効果的な手法です。

全国自治体の先進事例

横浜市「中期計画と連動したトップダウン型の行財政改革」

  • 横浜市の予算編成は、市の最上位計画である「中期計画」と強く連動しており、予算は計画達成のための手段として明確に位置づけられています。
  • 毎年度の予算編成プロセスにおいて、全部局を挙げた「財源創出」の取り組みを体系的に実施しています。令和6年度予算編成では、1,310件の事業見直しにより153億円の財源を創出しました。
  • これは、トップの強いリーダーシップの下、組織全体で継続的な業務見直しを行い、戦略的な優先事業の財源を確保するという、強力なトップダウン改革の好例です。

三重県「『みえの国づくり』と連動した事業評価・選別システム」

  • 三重県では、県の総合計画「みえ県民力ビジョン」を政策判断の羅針盤とし、全ての事業がビジョンの実現にどう貢献するかという観点で評価されます。
  • 県の戦略目標ごとにKPIを設定し、その進捗状況をデータで追跡・評価しています。この客観的な評価結果が、次年度の予算編成における事業の選択と集中のための重要な判断材料となります。
  • これは、行政のトップビジョン、EBPMによる客観的な業績評価、そして予算配分という3つの要素を、一貫したマネジメントサイクルの中に統合した先進的なモデルです。

参考資料[エビデンス検索用]

国(省庁)関連資料
東京都・特別区関連資料
その他自治体・研究機関資料

まとめ

 社会保障費の増大と不安定な歳入構造という厳しい現実に直面する東京都特別区にとって、枠配分方式の導入は、単なる予算編成手法の変更ではなく、持続可能な行財政運営を実現するための戦略的な一手です。この改革は、前年度踏襲主義という長年の慣行を打破し、各部局に経営者としての当事者意識を植え付け、未来への投資に必要な財源を自ら創出する組織文化を育むための鍵となります。その成功は、明確なルール、成果を促すインセンティブ、そして行政評価と連動した客観的なマネジメントサイクルの確立にかかっています。区内に存在する多様な先進事例は、各区の状況に応じた制度設計が可能であることを証明しており、これらの知見を活かすことで、より質の高い住民サービスと健全な財政を両立する、新時代の自治体経営への転換が期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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