07 自治体経営

スライド条項

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(施設整備案件におけるスライド条項を取り巻く環境)

意義

受注者(建設事業者)にとっての意義

経営の安定化
適正な利益の確保

地域社会にとっての意義

公共施設の着実な整備
  • 事業者の採算割れによる工事の遅延や品質の低下、最悪の場合には工事の中断といった事態を防ぎます。これにより、学校、福祉施設、防災拠点など、住民生活に不可欠な社会資本が計画通り、かつ必要な品質を確保して整備されることを保証します。
地域経済の健全な維持

行政(発注者)にとっての意義

契約の公平性と信頼の確保
公共事業の品質確保
  • 受注者がコスト増を吸収するために、安価な資材の使用や人員の削減といった「無理・無駄」を強いられる状況を回避します。これにより、公共インフラとして求められる品質、性能、安全性が確実に担保されます。

(参考)歴史・経過

1950年(昭和25年):制度の誕生
1973年(昭和48年):第一次オイルショックとインフレスライドの発動
1981年(昭和56年):単品スライド条項の追加
2008年(平成20年):単品スライド条項の本格運用
2021年(令和3年)以降:近年の資材・労務費高騰と運用の活発化

施設整備案件に関する現状データ

建設コストの急激な上昇

  • 公共工事の費用動向を測る上で重要な指標が、建設コストの変動です。国土交通省が公表する建設工事費デフレーター(2015年度基準)は、2021年以降、顕著な上昇傾向を示しており、建設コストがかつてない水準で高騰していることを裏付けています。
  • 民間の調査機関のデータも同様の傾向を示しています。例えば、建設物価調査会によると、2024年3月時点の東京における鉄筋コンクリート(RC)造集合住宅の建築費指数(2015年=100)は129.7となり、前年同月比で6.9%もの大幅な上昇となりました。木造住宅に至っては、同2.2%の上昇となる136.9を記録しています。
    • (出典)(https://cbo.craft-bank.com/article/detail/construction-price-index/) 22
  • 資材価格の高騰がこの大きな要因です。建設物価調査会の建設資材物価指数(東京、2015年=100)は、2025年7月時点で143.0となり、前年同月比で3.4%上昇しました。特に、生コンクリートや燃料油は、製造・輸送コストの上昇が価格に転嫁され、値上がり傾向が続いています。

労務単価の継続的な引き上げ

スライド条項の適用件数の増加

  • このようなコストの急騰を背景に、スライド条項の適用は全国的に増加しています。国土交通省が実施した調査では、令和5年度にスライド条項を適用した工事件数が前年度より増加した都道府県・政令市は、全体の半数を超える36団体に上りました。
  • 業界団体の調査でも、この傾向は明らかです。全国生コンクリート工業組合連合会が令和5年末に実施した調査では、調査対象となった14の都道府県だけで、生コンクリート価格の上昇を理由とする単品スライドの適用事例が213件確認されました。これは、スライド条項が多くの現場で実際に活用されている実態を示しています。
    • (出典)(https://kd-file.jp/wp/10447/) 27
  • これらのデータは、公共事業が直面する厳しい現実を浮き彫りにしています。一つは、高齢化と若者離れによる「構造的な労務費の上昇」、もう一つは、国際情勢に左右される「変動の激しい資材価格の高騰」です。この二つの異なる性質を持つコスト上昇要因が同時に発生していることで、公共工事の価格算定における従来の前提であった「契約期間中の価格安定性」が根本から揺らいでいます。スライド条項の適用件数の増加は、この新たな経済環境への合理的な対応であり、一過性の現象ではなく、今後も常態化する可能性が高いことを示唆しています。したがって、行政はスライド条項を「非常時の特例」としてではなく、「標準的な契約管理ツール」として位置づけ、その運用体制を恒久的に整備していく必要があります。

課題

受注者(建設事業者)の課題

煩雑な事務手続きと膨大な作業負担
  • スライド条項の適用を申請するためには、膨大な書類の作成と事務手続きが求められます。受注者は、請求時点の出来高を正確に算出し、残りの工事量を積算し直した上で、変動前後の単価比較資料や内訳書を作成しなければなりません。この作業は極めて煩雑で、特に中小の建設事業者にとっては大きな負担となります。
立証責任の困難さと実勢価格との乖離
  • コストが上昇したことの立証責任は、原則として請求者である受注者側にあります。そのため、全ての対象資材について、購入時期、購入先、価格を証明する納品書や請求書等の膨大な証憑書類を整理・提出する必要があります。
  • 加えて、市場での資材価格が急騰しても、それが発注者側の積算に用いる公的な物価資料(建設物価等)に反映されるまでにはタイムラグが生じます。この「価格反映の遅れ」により、受注者が実際に支払った価格と、発注者が協議の基準とする価格との間に乖離が生まれ、協議が難航する一因となっています。
下請けへの価格転嫁の壁
  • 発注者から元請事業者にスライドによる増額分が支払われても、それが下請事業者まで適切に行き渡らないケースが問題となっています。公共工事標準下請契約約款の使用が徹底されておらず、下請契約にスライド条項自体が含まれていない場合が多いのが実情です。
  • 元請事業者が下請事業者のためにスライド申請を行うインセンティブが乏しく、また、個々の下請契約ごとに再度煩雑な手続きを行う必要があるため、価格転嫁が進みにくい構造になっています。
  • これらの課題は、スライド条項という制度そのものの欠陥ではなく、その「運用プロセス」における深刻な機能不全を示しています。制度は存在するものの、その利用にあたっての「活性化エネルギー」があまりにも高すぎるのです。煩雑な事務手続きと実勢価格との乖離という二重の障壁は、多くの事業者、特にリソースの限られる中小企業にとって、制度を事実上利用不可能なものにしています。この結果、入札市場では、事業者が将来のリスクを過剰に見積もって高値で入札するか、あるいはリスクを度外視して安値で受注しスライド適用を期待するという、不健全な状況を生み出しかねません。最も深刻な影響を受けるのは、交渉力が最も弱い下請事業者であり、建設産業のサプライチェーンの根幹を揺るがす問題です。したがって、政策的な課題の中心は、条項の理念そのものではなく、その実用性をいかに高めるかという点にあります。

地域社会の課題

公共事業の遅延・品質低下リスク
  • 受注者が採算度外視で工事を続行せざるを得ない状況は、地域社会にとっても大きなリスクとなります。経営状況の悪化は、工事の遅延や、最悪の場合には事業者の倒産による工事中断につながる可能性があります。また、コストを吸収するために安価で質の低い資材を使用したり、必要な人員を削減したりするインセンティブが働き、公共施設の品質や安全性が損なわれる恐れがあります。
地域建設業の疲弊と担い手不足の加速
  • 地域の建設事業者は、平時の経済活動のみならず、災害時の応急復旧などを担う社会インフラの維持に不可欠な存在です。スライド条項が機能せず、コスト増が適正に価格転嫁されなければ、これらの事業者の経営体力は着実に削られていきます。利益が圧迫されれば、賃上げや労働環境の改善、若手人材への投資も困難になり、既に深刻化している建設業界の担い手不足をさらに加速させることになります。

行政(発注者)の課題

職員の業務量増大と専門知識の不足
予算確保の困難性
  • スライド条項の適用は、当初の事業計画にはない予算の増額を意味します。特に大規模な工事で大幅な増額が必要となった場合、年度途中で追加の財源を確保することは、議会の承認を要するなど、内部的な手続きが複雑で時間を要することがあります。この予算措置の遅れが、契約変更の遅延につながるケースも少なくありません。
運用の不統一と公平性の課題
  • 明確で統一された運用基準がなければ、スライド条項の解釈や適用判断が、担当部署や担当者個人の裁量に委ねられがちになります。これにより、類似の案件でも対応が異なるなど、事業者から見て不公平な状況が生まれる可能性があります。
  • また、過去の適用事例や判断基準が公表されていないため、手続きの透明性が欠如しています。事業者は、どのような場合に、どの程度の増額が認められるのか予測が立てにくく、情報公開の不足が不信感につながっています。
    • 客観的根拠:
      • 全国生コンクリート工業組合連合会の調査では、スライド条項の適用状況に関する情報公開が自治体によってまちまちであり、「見える化」が十分でないことが課題として指摘されています。
      • (出典)(https://kd-file.jp/wp/10447/) 27
  • 行政は、二つの相反する要請の板挟みになっています。一つは、公金を扱う立場として、支出を厳格に管理し、安易な増額を避けなければならないという「財政規律上の要請」です。もう一つは、契約の当事者として、公平性の原則に基づきスライド条項を適切に運用し、公共事業を確実に完成させ、健全な産業を維持しなければならないという「契約上・政策上の要請」です。このジレンマの中で、職員の過大な業務負担と専門知識の不足が重なると、どうしても対応は慎重かつ遅れがちになります。この行政内部のボトルネックが、結果として受発注者双方に不利益をもたらす根本的な構造問題となっています。したがって、この問題全体の解決には、まず行政職員を適切なツール、研修、そして明確な権限委譲によって支援し、能力を最大限に発揮できる環境を整えることが不可欠です。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、多くの工事案件や関係事業者に横断的に良い影響を及ぼす施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の範囲内で、比較的速やかに着手・実現できる施策を優先します。既存の仕組みを改良・活用できる施策は、新たな体制構築を要する施策より優先度を高く設定します。
  • 費用対効果
    • 投じる行政コスト(予算・人員・時間)に対して、得られる業務効率化や公平性の向上といった効果が大きい施策を優先します。将来的な紛争予防コストの削減なども含めて判断します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の事業者だけでなく、規模の大小を問わず全ての受注者にとって公平に機能する施策を優先します。また、一時的な対応ではなく、長期的に安定して運用できる持続可能な仕組みの構築を目指します。
  • 客観的根拠の有無
    • 国土交通省の指針や他の自治体での成功事例など、効果が実証されている、あるいは強く推察されるエビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • スライド条項の運用を巡る課題解決には、「①手続きの円滑化」「②情報共有とコミュニケーションの促進」「③組織・職員の能力強化」という3つの柱から総合的にアプローチすることが不可欠です。これらの施策は相互に関連しており、一体的に推進することで相乗効果が期待できます。
  • 最優先(高):**支援策①「スライド条項の運用円滑化と手続きの標準化」**です。これは、受注者・発注者双方が直面している最大の課題である「煩雑な事務負担」に直接的に対処するものであり、即効性と波及効果が最も高いと判断されるため、最優先で取り組むべき施策です。
  • 優先度(中):**支援策②「情報提供の強化とリスクコミュニケーションの促進」**です。手続きのハードルを下げると同時に、制度の透明性を高め、誰もが公平に利用できる環境を整えることは、制度への信頼を醸成し、持続可能な運用を実現するために不可欠です。
  • 優先度(低・長期的):**支援策③「職員の専門性向上と組織体制の強化」**です。即効性は低いものの、行政側の対応能力向上は、全ての施策の質を担保する基盤となる長期的な投資です。安定的かつ質の高い行政サービスを提供し続けるために、継続的に取り組むべき重要な施策と位置づけます。

各支援策の詳細

支援策①:スライド条項の運用円滑化と手続きの標準化

目的
  • 受注者・発注者双方の事務負担を大幅に軽減し、スライド協議に要する時間を短縮します。
  • 手続きの透明性と予測可能性を高めることで、円滑な合意形成を促し、迅速な契約変更を実現します。
主な取組①:統一的な運用マニュアルの策定・公開
主な取組②:申請様式の標準化と簡素化
  • 特別区共通の標準申請様式(変更請求書、計算書、概算調書など)を定め、誰でも容易にダウンロードして利用できるようにします。
  • 提出を求める書類を必要最小限に絞り込み、特に証憑書類(納品書、請求書等)の提出方法について、受注者の負担を軽減する柔軟なルールを設けます。例えば、鋼橋上部工工事など商慣行上、実際の購入価格の証明が困難な場合には、購入時期と数量が証明できれば当該月の物価資料の単価を用いることを許容します。
主な取組③:協議プロセスの迅速化ルールの設定
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • スライド協議の平均所要期間(請求受付日から契約変更日まで)を現行から50%短縮する。
    • データ取得方法: 契約管理システムにおける各案件の請求受付日と契約変更日の実績データを記録・集計する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 標準マニュアル及び標準様式の利用率100%を達成する。
    • データ取得方法: 全てのスライド協議案件において、標準マニュアル・様式が使用されたかを確認・記録する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • スライド条項を適用した受注者の手続きに対する満足度を80%以上とする。
    • データ取得方法: 契約変更手続き完了後の受注者を対象とした、オンラインアンケート調査を年2回実施する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 標準マニュアルのウェブサイトからの年間ダウンロード数 1,000件以上。
    • データ取得方法: ウェブサイトのアクセスログを解析する。

支援策②:情報提供の強化とリスクコミュニケーションの促進

目的
  • スライド条項に関する情報の非対称性を解消し、特に中小の事業者が必要な情報を容易に入手し、制度を適切に活用できる環境を整備します。
  • 受発注者間のオープンなコミュニケーションを促進し、信頼関係を構築することで、無用な紛争や不信感を未然に防止します。
主な取組①:スライド条項専門の相談窓口(ヘルプデスク)の設置
  • 契約担当部署内に、スライド条項に関する手続きや書類作成方法など、受注者からの様々な問い合わせに一元的に対応する専門の相談窓口(電話・メール)を設置します。
  • 申請前の段階での疑問や不安を解消することで、申請のハードルを下げ、手続きの円滑化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 円滑なコミュニケーションは、工事の進行におけるリスクや遅延を最小限に抑えるために不可欠であり、特に発注・納品スケジュールの調整等で重要となります。
      • (出典)(https://www.kentem.jp/blog/construction-communication-smooth/) 36
主な取組②:定期的な説明会の開催と情報発信
  • 特別区内の建設業界団体と連携し、受注者向けにスライド条項の運用に関する説明会を少なくとも年1回以上、定期的に開催します。
  • 最新の資材価格や労務単価の動向、制度の運用改善(マニュアル改訂等)に関する情報を、区のウェブサイトや広報誌を通じてタイムリーに発信します。
主な取組③:適用実績の透明化(公表)
  • 受注者のプライバシーや企業の営業秘密に配慮した上で、前年度のスライド条項の適用件数、増減額の平均・範囲、対象となった主な資材などの統計情報を、年度ごとに集計しウェブサイト等で公表します。
  • これにより、他の受注者が適用を検討する際の客観的な参考情報となり、運用の公平性・透明性に対する信頼を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 全国生コンクリート工業組合連合会の調査では、スライド条項の適用状況に関する情報公開が自治体によって不十分であることが課題として指摘されており、「見える化」の必要性が示唆されています。
      • (出典)(https://kd-file.jp/wp/10447/) 27
主な取組④:下請契約におけるスライド条項導入の推奨
  • 入札公告時や契約時の特記仕様書において、元請事業者に対し、公共工事標準下請契約約款に準拠したスライド条項を下請契約にも設定することを強く推奨します。
  • スライド協議が成立し元請契約が増額変更された際には、その内容を速やかに下請代金へ反映させるよう指導を徹底します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省の調査では、下請階層になるほど契約変更条項がない契約が多く、価格転嫁が困難になっている実態が指摘されています。この構造的課題の解決には、発注者からの働きかけが重要です。
      • (出典)国土交通省「価格転嫁の円滑化について」令和5年 30
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 下請事業者への適正な価格転嫁がなされたと回答する元請・下請事業者の割合を80%以上とする。
    • データ取得方法: スライド適用案件の元請・主要下請事業者を対象とした匿名アンケート調査を実施する。
  • KSI(成功要因指標)
    • スライド条項に関する相談窓口への相談件数及びウェブサイトの関連ページへのアクセス数が対前年比で20%増加する。
    • データ取得方法: ヘルプデスクの相談記録、ウェブサイトのアクセスログを分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 事業者向け説明会参加者の制度理解度が、参加前後で30%以上向上する。
    • データ取得方法: 説明会参加者に対し、開始前と終了後に同内容の理解度テスト(アンケート形式)を実施し、正答率の変化を測定する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 事業者向け説明会の年間開催回数:2回以上。
    • 相談窓口の年間対応件数:100件以上。
    • データ取得方法: 事業実施記録を管理・集計する。

支援策③:職員の専門性向上と組織体制の強化

目的
  • 契約や積算を担当する行政職員の対応能力を体系的に向上させ、複雑なスライド協議において、迅速かつ的確な判断を下せる体制を構築します。
  • 知識やノウハウが特定の職員に偏る「属人化」を防ぎ、組織として安定した品質の対応を継続的に提供できる基盤を整備します。
主な取組①:専門研修プログラムの実施
  • 契約担当職員を対象に、スライド条項の法的根拠(契約約款、民法等)、関連する経済指標(建設物価指数、労務単価等)の読み解き方、具体的な積算・算定実務、受注者との協議に臨む際の交渉術など、実践的な内容を含む専門研修を定期的に実施します。
  • 研修効果を高めるため、国土交通省の担当官や建設物価調査会の専門家、弁護士などを外部講師として招聘します。
主な取組②:ICTツールの活用による業務効率化
  • スライド額の算定を補助する標準化されたスプレッドシートや、協議の進捗状況を管理するツールを導入し、手作業による計算ミスや確認作業の負担を軽減します。
  • 将来的には、受注者からの申請、書類のやり取り、協議、契約変更までをオンラインで一元的に管理できる電子システムの導入を検討し、抜本的な業務効率化を目指します。
    • 客観的根拠:
      • ICTツールは、図面確認や書類管理、取引先との情報共有など、建設業務に関わる様々なコミュニケーションコストを削減し、業務効率を向上させることが可能です。
      • (出典)(https://www.kentem.jp/blog/construction-communication-smooth/) 36
      • (出典)(https://www.kentem.jp/blog/construction-communication-smooth/) 36
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員一人当たりのスライド協議対応に要する時間を、施策実施前から20%削減する。
    • データ取得方法: 契約担当職員を対象とした業務量調査(タイムスタディ)を施策実施前後で実施し、比較分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 契約担当職員(係長級以下)の専門研修受講率100%を維持する。
    • データ取得方法: 人事部門が管理する研修受講記録を確認する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 研修受講後の職員の自己評価において、「スライド協議への対応能力が向上した」と回答する割合が90%以上となる。
    • データ取得方法: 研修終了後に実施するアンケート調査で測定する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 専門研修の年間開催回数:2回以上。
    • 業務効率化ツールの導入数:2種類以上(例:算定用スプレッドシート、進捗管理表)。
    • データ取得方法: 事業実施記録及びシステム導入記録を管理・集計する。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「3種のスライド条項に関する詳細な運用基準の公開」

  • 世田谷区は、公共工事標準請負契約約款に定められている「全体スライド」「単品スライド」「インフレスライド」の3つの条項すべてについて、それぞれの運用方針、適用対象、金額の変更方法、提出書類、手続きのフロー図を区のウェブサイト上で極めて詳細に公開しています。
  • 成功要因:
    • 情報の徹底的な透明化:受注者は、申請を検討する段階で、手続きの全体像から必要書類の様式まで、全ての情報を一元的に入手できます。これにより、申請への心理的・実務的なハードルが大幅に低減されています。
    • 実践的な情報提供:特に、受注者負担額(例:全体スライドでは残工事費の1.5%)の具体的な計算例を図解入りで示しており、専門家でなくとも理解しやすい内容となっています。これは、受注者の的確な判断と迅速な書類作成を支援する上で非常に効果的です。
  • 客観的根拠:

千代田区「暫定的なインフレスライド運用の機動的対応」

  • 千代田区は、近年の急激な物価変動という社会経済情勢に機動的に対応するため、「賃金等の変動に対する工事請負契約約款第24条第6項(インフレスライド条項)の運用について(暫定版)」を策定し、迅速な対応を図っています。
  • 成功要因:
    • 迅速性と明確性:「令和7年3月1日が工期内にある工事」といった形で適用対象工事を明確に定義し、請求から契約変更までの期間目標を定めたフローを示すことで、事業者に予測可能性を与えています。これは、行政の硬直的な対応ではなく、情勢変化に柔軟に対応しようとする姿勢の表れであり、事業者からの信頼獲得につながります。
  • 客観的根拠:

葛飾区「技能労働者の賃金水準確保を目的とした積極的な適用」

  • 葛飾区は、スライド条項を適用する意義について、「労務単価を含めた物価水準の上昇を既契約工事の契約金額に適切に反映し、技能労働者の適切な賃金水準の確保を図る」と明確にウェブサイトで表明しています。
  • 成功要因:
    • 政策目的の明確化:スライド条項の運用を、単なるコスト補填という事務的な処理に終わらせず、「建設業界の担い手確保」という、より上位の政策目的と結びつけています。このような高い視座を示すことで、受発注者双方が前向きな協力関係のもとで協議に臨むことを促す効果が期待できます。
  • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

国土交通省「運用ルールの柔軟な改定」

兵庫県「その他の主要な資材への対象品目拡大」

  • 兵庫県は、単品スライド条項の対象品目について、従来の「鋼材類」「燃料油」「アスファルト類」「生コンクリート」に加え、「その他の主要な資材」を受発注者間の協議により対象とすることを可能とする、先進的な運用を行っています。
  • 成功要因:
    • 制度の柔軟性向上:対象品目をあらかじめ固定せず、個別の工事内容や予期せぬ資材の高騰に柔軟に対応できる仕組みを構築しています。これにより、契約約款が本来持つ「契約の公平性」をより高いレベルで実現しようとしており、他の自治体にとっても大いに参考となる取り組みです。
  • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

国土交通省関連資料
地方自治体関連資料
業界団体・調査機関等資料
その他

まとめ

 施設整備案件におけるスライド条項の適用は、近年の建設コスト高騰を受け、公共事業の品質確保と地域建設業の維持に不可欠です。しかし、手続きの煩雑さや運用の不統一が課題となっています。今後は、運用マニュアルの標準化や情報提供の強化、職員の専門性向上を通じて、迅速かつ公平な運用体制を構築し、受発注者間の信頼に基づく円滑な事業執行を目指すべきです。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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