2025.12.12 04 東京都 【2025年12月12日】東京都知事記者会見と政策立案のヒント masashi0025 目次 国による地方法人課税等の見直しに係る動き概要政策立案への示唆パラスポーツの振興とバリアフリー推進に向けた懇談会概要政策立案への示唆東京女性未来フォーラム概要政策立案への示唆闇バイト防止啓発漫画概要政策立案への示唆江戸東京博物館リニューアルオープン概要政策立案への示唆質疑応答(要約)国による地方法人課税等の見直しに係る動き 概要 ニュース概要 国が進める地方法人課税の偏在是正措置に対し、小池知事は「東京を狙い撃ちにし、税収を一方的に収奪する不合理な改悪である」として断固反対を表明しました。 知事は、客観的なデータとして、人口流動は東京だけでなく札幌・仙台・名古屋・大阪・福岡等の大都市圏に集まっている事実や、都の税収伸び率が全国34位(7%増)にとどまり、他道府県平均(12%増)より低い事実を提示しました。 また、地方税収が増えると地方交付税が減額される現行制度を「自治体の成長努力を阻害するビジネスモデル」と批判し、パイの奪い合いではなく、日本全体の成長を促す議論への転換を訴えました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 東京都の財源が不合理に奪われることは、首都としての強靭化対策(防災インフラ整備等)、治安維持、福祉サービス、そして日本経済のエンジンとしての機能維持に致命的な悪影響を及ぼすためです。また、地方自治の本旨である「自主的な財政運営」を守るためでもあります。 具体的なアクション 記者会見の場で「ファクト(客観的事実)」に基づいたスライド資料を提示し、国側の主張(東京一極集中論など)にあるバイアスを指摘。 「情報戦・心理戦・法律戦」という言葉を用い、国側のプロパガンダに対抗する姿勢を鮮明にし、世論への正しい理解を求めました。 行政側の意図 国民や地方自治体の間に広まる「東京だけが富裕である」という誤解(アンコンシャス・バイアス、あるいは意図的なバイアス)を解くことが最大の狙いです。 議論の焦点を「東京の富の再分配」から、「地方交付税制度そのものの構造的欠陥(稼げば稼ぐほど交付金が減る仕組み)」へと移し、抜本的な制度改革を促そうとしています。 期待される効果 都民および国民に対し、都財政の現状と国の制度的問題点についての正しい理解を浸透させること。 国による一方的な税制改正の動きを牽制し、地方分権の理念に即した、自治体の自助努力が報われる税財政制度への議論を喚起すること。 課題・次のステップ 「東京対地方」という対立構造に陥ることなく、他の不交付団体や指定都市とも連携しながら、地方全体の財源拡充を国に求める建設的な議論へどう導くかが課題となります。 特別区への示唆 【財政影響の直視】 都区財政調整制度の仕組み上、都の税収減少は特別区の財源(調整交付金)減少に直結します。これは区の独自サービス縮小にもつながりかねない重大事案です。 【説明責任の遂行】 各区の企画・財政担当者は、都が提示した論拠(人口1人当たりの財源は全国平均並みであること、昼間人口や警察・消防等の特殊需要など)を正確に理解し、区議会や住民から問われた際に論理的に説明できるようにしておく必要があります。 【自律性の確保】 国の制度変更リスクを改めて認識し、特定財源に依存しすぎない、持続可能な区財政運営の在り方を検討する契機とするべきです。 パラスポーツの振興とバリアフリー推進に向けた懇談会 概要 ニュース概要 12月18日に「世界陸上とデフリンピックのレガシーを未来へつなぐ」をテーマとした第5回懇談会を開催します。 パラ応援大使やパラアスリート、有識者が参加し、2025年デフリンピックに向けた気運醸成や、ユニバーサルデザイン先進都市・東京の実現について議論します。 会見では、応援文化の一つとして視覚的な応援「サインエール」などが紹介され、当日はオンライン配信も行われます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 東京2020大会で培ったバリアフリーの土壌を一過性のものとせず、2025年のデフリンピック等の国際大会を新たな契機(レガシー)として、ハード・ソフト両面での共生社会実現を加速させるためです。 具体的なアクション 有識者・当時者(アスリート)を交えた公開懇談会の開催。 大会独自の手法(サインエール等)を用いた具体的な応援スタイルの普及啓発。 オンライン配信による広範な都民への周知。 行政側の意図 単なるスポーツ振興にとどまらず、「心のバリアフリー」の浸透や、都市基盤のユニバーサルデザイン化を推進するための社会的合意形成を図る意図があります。 期待される効果 パラスポーツおよび聴覚障害者スポーツ(デフスポーツ)への関心と理解の向上。 障害の有無に関わらず、誰もが活動しやすい都市環境の整備促進と、都民の意識変革(障害理解)。 課題・次のステップ 大会終了後も、地域コミュニティや学校教育の中でパラスポーツ体験やバリアフリー教育が継続的に行われる仕組みを構築すること。 デフリンピック特有の「情報アクセシビリティ(手話通訳、字幕等)」の確保を社会全体に広げること。 特別区への示唆 【デフリンピックを契機とした施策】 各区において、手話言語条例の制定・運用強化や、窓口対応へのデジタル技術(音声文字変換等)導入を進める絶好の機会です。 【地域スポーツとの連携】 区のスポーツセンターや学校開放において、パラスポーツ種目の体験会を企画したり、ボランティア育成講座を開催したりすることで、地域住民の巻き込みを図ることができます。 【ハード整備の点検】 区立施設の改修計画において、ユニバーサルデザインの基準を再確認し、当事者の意見を取り入れた設計を行う参考になります。 東京女性未来フォーラム 概要 ニュース概要 女性活躍推進の一環として、企業の経営者や人事担当者の意識変革を目的としたイベント「東京女性未来フォーラム」を1月26日に東京国際フォーラムで開催します。 株式会社ルミネ社長など先進企業のトップによる対談、ダイバーシティ経営に向けた共同宣言、アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)に関するワークショップなどが実施されます。 学生と企業の交流会も設け、次世代のキャリア形成支援も行います。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 女性のキャリア形成を阻む要因は、個人の能力よりも、企業の組織風土や経営層の意識(アンコンシャス・バイアス)にあることが多く、トップダウンでの改革を促す必要があるためです。 具体的なアクション 大規模フォーラムによる社会的インパクトの創出。 ロールモデルとなる企業トップの招聘による説得力の向上。 「共同宣言」という形でのコミットメントの引き出し。 中高生・大学生を巻き込んだ次世代育成。 行政側の意図 「女性活躍の輪(Women in Action)」等のキャッチフレーズを用い、女性活躍を「企業の成長戦略」として位置づけさせ、経営者の行動変容を促す狙いがあります。 期待される効果 企業における女性管理職比率の向上、男性の育休取得促進など働きやすい環境整備。 多様な人材が活躍することによる企業の生産性向上とイノベーション創出。 課題・次のステップ 人材リソースに余裕のない中小・零細企業に対し、どのように意識改革と制度整備を波及させるか。実効性のある支援策(奨励金やコンサル派遣等)とのセット展開が鍵。 特別区への示唆 【区内企業への波及】 区の産業振興部門として、区内の中小企業経営者にこのフォーラムへの参加を呼びかけるほか、区版の「働き方改革セミナー」や「女性活躍推進表彰」などを実施し、身近なロールモデルを示すことが有効です。 【役所内部の改革】 特別区職員自身も「アンコンシャス・バイアス」とは無縁ではありません。管理職研修に同様のワークショップを取り入れるなど、組織風土改革の好事例として活用できます。 【教育との連携】 区立中学校・高校(ある場合)に対し、キャリア教育の一環として本フォーラムの内容や関連動画を案内することも考えられます。 闇バイト防止啓発漫画 概要 ニュース概要 SNS等を通じて若者が強盗や特殊詐欺の実行役として犯罪組織に使い捨てにされる「闇バイト」被害を防ぐため、都は年代別(小学生・中学生・高校生・大学生等)の啓発ウェブ漫画を作成しました。 「高額報酬」等の甘い誘い文句から犯罪に巻き込まれるプロセスをリアルに描写。 冬休み直前のタイミングに合わせ、学校での周知に加え、ファミレスや駅周辺のデジタルサイネージ、SNS広告などで集中的に配信し、家庭内での対話を促します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 闇バイトは一度加担すると抜け出せなくなる深刻な犯罪であり、判断力の未熟な若年層を守るためには、従来の文字情報による注意喚起では不十分で、より訴求力の高いコンテンツが必要だからです。 具体的なアクション ターゲット層(デジタルネイティブ)に親しみやすい「漫画」という媒体の採用。 生活動線(ファミレス、駅)とデジタル空間(SNS)を組み合わせたクロスチャネルでの広報展開。 「冬休み前」というリスクが高まる時期を狙った集中広報。 行政側の意図 抽象的な「犯罪防止」ではなく、具体的な手口(「ホワイト案件」「即日払い」等の偽装)と末路(逮捕、実名報道、賠償責任)を可視化し、応募ボタンを押す前の「踏みとどまり」を生み出す意図があります。 期待される効果 若年層における防犯リテラシーの向上と、闇バイトへの応募抑止。 親子間や友人までの話題喚起による相互監視・抑止効果。 課題・次のステップ 犯罪グループの手口は日々巧妙化(シグナル等の秘匿アプリへの誘導など)しており、コンテンツの内容を常に最新の実態に合わせてアップデートしていくこと。 特別区への示唆 【教育委員会との連携】 区立小中学校で配備されているタブレット端末に、この漫画コンテンツへのリンクを一斉配信したり、朝の会などで指導するよう通知を出したりする即時対応が可能です。 【地域拠点での周知】 青少年センター、児童館、図書館などの若者が集まる区立施設に、漫画のQRコード付きポスターを掲示する等の対策が有効です。 【相談窓口の提示】 漫画を見て不安になった若者がすぐに相談できるよう、区の若者相談窓口や警察署への連絡先をセットで案内する工夫が求められます。 江戸東京博物館リニューアルオープン 概要 ニュース概要 大規模改修のため長期休館中だった「江戸東京博物館(愛称:えどはく)」が、2026年3月31日にリニューアルオープンすることが決定しました。 オープン100日前を記念し、12月18日から4日間、JR両国駅の「幻のホーム(3番線)」で特別イベントを開催。鴨南蛮そばの振る舞いや、着物での記念撮影、ライトアップなどを実施します。 また、館内レストランの新メニューとして、公募によるアイデアを取り入れた「幕の内弁当」の提供も発表されました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 東京の歴史・文化発信の核となる施設の魅力を再構築し、回復するインバウンド需要や国内観光客を呼び込み、地域経済を活性化させるためです。 具体的なアクション 「リニューアル100日前」という節目を捉えた話題作り(PRイベント)。 普段は入れない「幻のホーム」という地域資源(遺産)を活用した特別感の演出。 民間アイデア(お弁当コンテスト)を取り入れた参加型企画の実施。 行政側の意図 長期間の休館により忘れられがちな施設の存在感を再び高め、「えどはく」への期待感(ワクワク感)を醸成して、オープン直後の来館ロケットスタートを狙っています。 期待される効果 両国エリアを中心とした観光客の増加と、周辺商店街への経済波及効果。 江戸・東京の歴史文化に対する都民の再評価とシビックプライドの醸成。 課題・次のステップ リニューアルオープンを一過性の祭りにせず、継続的にリピーターを確保するための企画展やイベント運営。 近隣の文化施設(すみだ北斎美術館等)や水辺空間と連携した周遊ルートの確立。 特別区への示唆 【施設の休館・再開戦略】 特別区でも区立ホールや博物館の改修は頻繁に行われます。「休館中も忘れさせない」「再開に向けて期待感を高める」ためのプレイベントの手法として、非常に参考になります。 【地域資源の活用】 「幻のホーム」のように、区内にある普段使われていない施設や空間をイベント活用することで、低コストで高い話題性を生むことができます。 【広域連携の視点】 特に施設が立地する墨田区や隣接区にとっては、来館者を区内周遊にどう誘導するか、商店街連携や観光マップの更新など具体的な準備を進めるタイミングです。 質疑応答(要約) 記者会見の後半で行われた質疑応答の要点は以下の通りです。 地震・防災対策(青森県東方沖地震を受けて) 知事は被災地へのお見舞いと、要請があれば全国知事会と連携して直ちに支援する体制にあることを表明。 首都直下地震に対しては、ハード面(耐震化・不燃化)とソフト面(マンション防災・避難所改革)の両輪で対策を進めており、「備えよ常に」の精神で都民の安全を守ると強調しました。 税源偏在是正議論(国との攻防) 国の試算(都の財源が他道府県の3.6倍あるとする説)について、「昼間人口300万人のインフラ需要や警察・消防等の首都特有のコストを無視した意図的なバイアス(数字の操作)」と強く反論。 「人口1人当たりの一般財源で見れば、東京は全国平均並み」と主張し、偏在そのものが存在しないとの立場を明確にしました。また、固定資産税まで再配分の議論対象とすることには「論外」と切り捨てました。 給食費・高校授業料無償化(財源負担のあり方) 国政3党(自民・維新・公明)による「都道府県負担」案に対し、本来は国の責任と全額国費で行うべき性質のものであると反論。 不交付団体である東京を狙い撃ちにして制度設計から外す動きや、選挙目当てでコロコロ変わる政策決定プロセスを批判。「チルドレンファーストの視点で、シームレスかつ安定した制度にすべき」と主張しました。 今年の漢字 知事は今年の世相を表す漢字として「変」を選定しました。 理由として、気候変動(ネガティブ)、AI等の技術革新や産業構造の変化(激動)、国際情勢の激変(不安)、そして東京都の出生数が10年ぶりに増加に転じたこと(ポジティブな変化)など、様々な「変化」が凝縮された1年であったことを挙げました。 物価高騰対策(重点支援地方交付金の使途) 政府の交付金を活用した「お米券」等の配布については、一律に都が決めるのではなく、基礎自治体である区市町村が、地域の実情(高齢者が多い、子育て世帯が多い等)に応じて最適な支援策を判断・実施すべきとの認識を示しました。 原発再稼働(柏崎刈羽原発) 再稼働に向けた議論が進む現状について、地元(新潟県)の知事や関係者の努力によるものと認識。 都としては、エネルギー消費地として、産地(新潟県)との農産物連携などを通じて地域間の信頼関係を深めていくことが重要との姿勢を示しました。 女性議員の増加(都議会の変化) 都議会において女性議員が増加している現状を、多様な意見が反映され、生活者視点の政策議論が活発化する「ポジティブな変化」として評価しました。従来の役所の縦割りを打破する力になっているとの認識を示しました。 出典 小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和7年12月12日) #04 東京都#07 自治体経営#91 取組#92 行政ニュース#99 その他 ABOUT ME 行政情報ポータルあらゆる行政情報を分野別に構造化行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。