【財政分析レポート】目黒区:コロナ禍前後の比較分析(令和元年度決算→令和5年度決算)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載数字は普通会計ベースであるほか、数字のチェックは未実施であるため、あくまで傾向分析のレポートである点に留意してください。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
目黒区は、中目黒・自由が丘を核とし、代官山・恵比寿にも隣接するブランド住宅地区を擁する人口約28.9万人の特別区です。クリエイティブ層・若年富裕層の流入と人口の安定的増加という人口特性、高級住宅地としてのブランド価値、目黒川桜並木、ファッション・カフェ文化という産業特性を持ち、特別区23区の中では「中堅区」グループに位置づけられます。
本分析は、財政指標・一般財源等のギャップ・義務的経費・投資的経費・コロナ禍4年間の構造変化の5軸で目黒区固有の財政運営の現状と中期論点を整理し、区の経営方針との突合、議会・予算編成過程にみる論点整理を経て、戦略的示唆へ接続します。なお、構成比は当該年度の決算総額に占める割合、金額は原則として億円単位(小数第1位まで)に丸めて表記し、構成比の差(ポイント)や変化率は丸め後の表示数値から算出しているため、端数処理の関係で内訳と合計等が一致しない場合があります。マイナスの数値は▲で表記します。また、本分析は令和元年度と令和5年度の両端比較であるため、令和2〜4年度に生じた特別定額給付金・ワクチン接種・検査体制等によるコロナ対応経費のピークとその縮小は捨象されている点に留意が必要です。
エグゼクティブサマリー
コロナ禍4年間の目黒区財政を一言で要約すれば、「無借金化と基金の積み増しで堅実さを一段と強めつつ、投資を抑え、給付と委託で膨らんだ4年間」です。歳出総額は+20.4%(+210億円)と特別区平均並みに拡大しましたが、目黒区の際立った動きは財政の守りを固めた点にあります。地方債は令和元年度の12.5億円から令和5年度は0.0億円へと完全な無借金運営に移行し、積立金フローは6.91%→9.99%(+3.08ポイント)へと逆に厚みを増しました。経常収支比率も78.5%→76.1%(▲2.4ポイント)と改善しており、好況期の税収を将来への備えに回した堅実な4年間だったと評価できます。
一方、この期間に投資的経費は10.63%→6.21%(▲4.42ポイント)と低下し「投資の谷」を形成しました。本版で区の公表物と突合すると、この谷は一時的なものです。区立中学校の統合・統合新校の整備(令和8年度予算の教育費を前年比約137億円押し上げ)と中目黒・自由が丘の駅前再開発により、投資的経費は令和8年度以降に復元へ向かい、令和8年度一般会計当初予算は1,620億円余(前年度比13.9%増・5年連続過去最大)と史上最高額を更新しました。もっとも、目黒区の歳入は自主財源(特別区税)への依存が高く、財調のクッションが薄い分、景気変動を受けやすい構造は変わりません。コロナ後の課題は、無借金・厚い基金という堅実さを保ちつつ、変動しやすい税源を前提に投資復元をどう賄うかにあります。
①財政指標の状況
目黒区の主要財政指標は、総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」令和元年度・令和5年度版および公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」に基づき、特別区23区単純平均と比較すると以下の構造にあります。
財政力指数
令和元年度0.75→令和5年度0.73(▲0.02、23区平均0.581→0.571、▲0.010)です。23区平均を大きく上回る水準を維持しており、23区でも上位の財政力を保っています。わずかな低下は、扶助費需要等の基準財政需要額の伸びを税収の伸びが完全には相殺しなかったことを示します。
経常収支比率
78.5%→76.1%(▲2.4ポイント、23区平均78.83%→76.18%、▲2.66ポイント)です。特別区平均と並行して改善し、令和5年度にはほぼ平均並みの水準となりました。経常一般財源の増加が経常経費の増加を上回った局面ですが、目黒区の経常一般財源は自主財源(特別区税)への依存が高いため、この改善は好況期の税収に支えられたものである点に留意が必要です。景気後退局面では分母が縮小して比率が急悪化しやすい構造的な脆さを併せ持ちます。
実質公債費比率
▲4.0%→▲3.8%(+0.2ポイント、23区平均▲3.06%→▲2.34%、+0.72ポイント)です。数値上はほぼ横ばいで、マイナス値は実質的な公債費負担が標準財政規模との対比で事実上ゼロ以下であることを意味します。無借金化を進めた目黒区は、23区でもマイナス幅の大きい上位グループを維持しています。
将来負担比率
地方債残高等の将来負担額を基金等の充当可能財源等が上回っているため、比率が算定されない(公表上「-」表記となる)状況が23区全区でコロナ禍4年間を通じて継続しています。市区町村の早期健全化基準(350%)とは比較にならない健全水準です。
ラスパイレス指数
99.8→99.6(▲0.2、23区平均99.80→98.63)で、国家公務員給与水準(=100)とほぼ同等の標準的水準にあります。ラスパイレス指数は地域手当等を含まない給料ベースの比較である点には留意が必要ですが、23区内では相対的に高めの位置が続いており、人件費構成比の高さと併せて職員給与・定数の中期的最適化が論点となり得ます。
②1人当たり一般財源等と歳出ギャップ
令和5年度の目黒区の歳入総額は1,312.2億円、歳出総額は1,237.7億円であり、4年間で歳入は+227億円・+20.9%、歳出は+210億円・+20.4%拡大しました(参考:特別区23区合計では歳入+20.0%・歳出+19.5%)。特別区税構成比39.26%・特別区財政調整交付金構成比16.16%(令和元年度16.85%、▲0.69ポイント)との組み合わせで一般財源を確保する構造です。歳出と一般財源等のギャップへの対応として、財政基金の戦略的活用と歳入確保策の両面が中期的論点となります。
足元では、令和8年度一般会計当初予算が1,620億円余(前年度比197億円余・13.9%増)と5年連続で過去最大を更新し、史上最高額となりました。区はこれを「守る、つなぐ、未来へ活かす――責任と希望をかたちにする予算」と位置づけ、子育て・教育・健康・福祉・防災・DX・まちづくり・環境の諸課題への対応と、デジタル活用・公共施設マネジメントによる次代につながる区政展開を掲げています。歳出内訳では健康福祉費が720億円(構成比44.4%)と最大で、教育費が367億円と前年比約137億円増で、中学校統合に伴う新校舎建設等が押し上げ要因です。自主財源依存ゆえの景気変動リスクを抱える中で、歳出に対し一般財源等が不足しやすい財政環境の継続が想定されます。
③義務的経費(人件費・扶助費・公債費)の構造
義務的経費は人件費・扶助費・公債費の3項目で構成され、目黒区の令和5年度実績は人件費202.0億円(構成比16.32%)、扶助費344.5億円(同27.83%)、公債費11.3億円(同0.91%)、合計45.06%の水準です。特別区平均は人件費12.93%・扶助費31.74%・公債費1.27%の合計45.94%であり、目黒区の義務的経費合計は特別区平均比▲0.88ポイントとほぼ平均並みですが、内訳の構成は大きく異なります。
人件費
令和元年度19.86%→令和5年度16.32%へ▲3.54ポイントと大きく縮小しました。会計年度任用職員制度の導入による人件費への編入という押し上げ要因があったにもかかわらず、絶対額でも204.2億円→202.0億円(▲1.1%)と減少しており、直営構造の見直しが一定程度進んだことを示します。それでも特別区平均を+3.39ポイント上回る位置が続く点が目黒区の特徴です。
扶助費
26.50%→27.83%へ+1.34ポイント拡大しました。特別区平均を大きく下回る軽い水準ながら、児童福祉・障害福祉・生活保護等の法定扶助の構造的な積み上がりが継続しています。
公債費
2.30%→0.91%へ▲1.39ポイントと大きく縮小しました。地方債の完全償還・無借金化を反映したものであり、将来世代への負担軽減として作用し続けています。
義務的経費は法定義務の性格上抑制余地が限定的ですが、目黒区の場合はとりわけ人件費(直営構造)の見直しと、扶助費の給付プロセスの効率化(資格審査・AI・RPA活用)が現実的な改善余地となります。
④投資的経費の状況と起債発行余力
令和5年度の目黒区の投資的経費(普通建設事業費+災害復旧事業費)は76.8億円(構成比6.21%)であり、特別区平均13.07%比▲6.86ポイントと23区でも低い水準です。令和元年度の109.2億円(構成比10.63%)から▲29.7%・▲4.42ポイントと大きく低下しており、コロナ禍4年間は「投資の谷」に当たります。
今後の投資需要は復元へ向かいます。第一に、区立中学校の統合と統合新校の整備で、令和8年度予算の教育費が前年比約137億円増と膨らんだ主因であり、目黒区固有の中期投資需要です。第二に、高度経済成長期に整備された区有施設の一斉老朽化への対応と、中目黒・自由が丘の駅前再開発です。これらが、低水準にあった投資的経費を数年にわたり押し上げます。
起債発行余力は最大級に温存されています。実質公債費比率▲3.8%・公債費0.91%・地方債0.00%という無借金水準は、更新投資の財源として特別区債を計画的に活用する余地が極めて大きいことを示します。もっとも目黒区は伝統的に起債を極力用いない堅実運営を続けており、区の実施計画・財政計画も「基金や特別区債といった財政対応力を将来負担も見据えながら適切に活用する」としています。無借金という強みを保つか、投資復元のピークに向けて世代間負担の公平の観点から起債を計画的に導入するかが、目黒区固有の選択となります。
⑤性質別構成比のコロナ禍4年間の構造変化(令和元年度→令和5年度)
目黒区の歳出構造は令和元年度から令和5年度の4年間で変容しました。性質別構成比の主要項目を比較すると、以下の通りの変動が見られます。
人件費
19.86%から16.32%(▲3.54ポイント)へと縮小しました。
物件費
17.17%から18.75%(+1.58ポイント)へと拡大しました。
扶助費
26.50%から27.83%(+1.34ポイント)へと拡大しました。
補助費等
7.38%から11.41%(+4.02ポイント)へと拡大しました。
普通建設事業費
10.63%から6.21%(▲4.42ポイント)へと縮小しました。
公債費
2.30%から0.91%(▲1.39ポイント)へと縮小しました。
積立金
6.91%から9.99%(+3.08ポイント)へと拡大しました。
総じて「人件費・公債費・普通建設事業費の縮小と、物件費・扶助費・補助費等・積立金の拡大」という動きを示しました。目黒区の特徴は、多くの区が積立金フローを細らせるなかで逆に積立金を厚くし(+3.08ポイント)、地方債を完全に償却して無借金化を進めた点にあり、コロナ禍を財政の守りを固める機会として活用した堅実な運営がうかがえます。目的別では、土木費が5.30%→7.18%(+1.88ポイント)、教育費が13.95%→15.59%(+1.65ポイント)、衛生費が8.38%→10.77%(+2.40ポイント)と上昇する一方、民生費が51.69%→49.28%(▲2.41ポイント)と低下しました。「投資から給付へ」の潮流にコロナ禍の重点シフトが重なった一方、投資の谷と基金の積み増しが同時に進んだ点が、この期間の目黒区固有の姿です。
総論:規模・人口・財政力ポジション
基礎情報と23区内ポジション
目黒区は、中目黒・自由が丘を核とし、代官山・恵比寿にも隣接するブランド住宅地区を擁する人口約28.9万人の特別区です。区域には、高級住宅地、目黒川の桜並木、ファッション・カフェ・アートの集積が共存し、住宅と文化・商業がバランスした都市を形成しています。クリエイティブ層・若年富裕層の流入と人口の安定的増加が人口動態の特徴です。
23区内では「中堅区」グループに分類されますが、財政力は23区でも上位に位置します。もっとも、その豊かさは自主財源(特別区税)への依存として現れ、財調交付金による財源保障のクッションが薄い分、景気変動の影響を受けやすい構造を併せ持ちます。区立中学校の統合・統合新校の整備、中目黒・自由が丘の駅前再開発、目黒川の防災という固有課題への対応が、目黒区の財政運営における最大の中期論点となります。
目黒区の経営方針
目黒区の経営方針は、最上位計画である目黒区基本構想(令和3年3月策定・2040年を目途とする将来像)を頂点に、目黒区基本計画(令和4年3月策定・10か年計画)、目黒区実施計画(5年以下の行財政計画)、目黒区実施計画・財政計画(令和4年3月策定・令和4〜令和8年度)、目黒区中期経営指針、目黒区区有施設見直し計画(平成29年6月策定)、目黒区職員定数計画等の複数の計画体系で構成されており、これらの一体運用により持続可能な自治体経営の実現を目指しています。
基本構想
目黒区基本構想(令和3年3月策定)は、2040年を目途とする区の最上位指針であり、将来像として「さくら咲き 心地よいまち ずっと めぐろ」を掲げています。ブランド住宅地区という地域特性を活かしつつ、人口構造の変化・超高齢社会の進展を見据えた区政運営の理念を示しています。
基本計画(実施計画を含む)
目黒区基本計画(令和4年3月策定・10か年計画)は基本構想を実現するための中期的な施策体系を示すもので、政策・施策・事務事業の階層構造で整理され、各分野で成果指標を設定しPDCAサイクルによる進捗管理を行う構造です。これを具体化する目黒区実施計画(5年以下の行財政計画)が、各年度予算編成と直結する事業ベースの実行計画として機能しています。令和8年度予算における重点施策(子育て・教育・健康・福祉・防災・DX・まちづくり・環境、デジタル活用と公共施設マネジメント、中目黒駅前・自由が丘駅前再開発、学校施設の計画的更新等)も、基本計画の方針と直結した政策展開です。
中期財政計画
目黒区実施計画・財政計画(令和4年3月策定・令和4〜令和8年度)は、5年間の事業費約472億円を含む実施計画と財政計画を一体化したもので、基金や特別区債といった財政対応力を将来負担も見据えながら適切に活用するとともに、事務事業の成果向上とコスト精査を徹底し、「強固で弾力的な財政基盤の堅持」を図る基本方針を示しています。自主財源依存の高さゆえに景気変動リスクを抱える目黒区にとって、この財政計画による備えは他区以上に重要な意味を持ちます。
行財政改革・経営改革の取組
目黒区は、目黒区中期経営指針を策定し、5つの基本目標と3つの行政運営方針(持続可能な行財政運営を含む)で構成しています。中目黒・自由が丘の駅前再開発や区立小中学校の計画的更新を経営方針の柱に据えつつ、組織力向上・業務効率化・公共施設マネジメント・財政基盤強化等を柱とした経営改革を進めています。過去にリーマンショック後の税収急減を契機に財政健全化の取組を進めた経験は、自主財源依存型財政の脆さと備えの重要性を区が実感してきたことを示しており、コロナ禍の無借金化・基金積み増しはその教訓を反映した運営と読み取れます。
公共施設の総合的・計画的管理
目黒区も特別区共通の課題として、高度経済成長期に整備された公共施設の一斉老朽化に直面しており、目黒区区有施設見直し計画(平成29年6月策定)に基づき、施設の見直し・更新方針を示しています。学校施設の改築需要は今後の投資的経費の中核であり、区立中学校の統合・統合新校の整備が現在進行中であることが目黒区固有の事情です。
職員定数の管理
目黒区が直面する経営課題の一つが、目黒区職員定数計画に基づく職員定数の管理です。多様化・複雑化する行政需要に対応する業務量の増加と、定年退職の増加・採用環境の悪化に伴う職員確保の困難という需給ギャップへの対応が求められています。人件費構成比が23区平均を上回る目黒区にとって、直営構造の見直しと定数管理は財政運営上とりわけ重い論点です。
特別区職員採用を巡る環境
特別区人事委員会が実施するⅠ類採用試験の申込者数・倍率は長期的な低下傾向にあります。平成22年度には申込者19,910人・倍率7.6倍であったものが、令和6年度には申込者5,179人・倍率2.1倍まで低下しており、人材確保の困難さが23区共通の構造的課題となっています。
区の対応と重要性
これに対し区は、人材確保(採用数の増加・長く働き続けられる環境整備・会計年度任用職員の活用)と業務量最適化(事務事業の見直し・民営化・委託化・DX推進・業務改革)の両面から対応を進めており、財政運営の質を支える「ヒト」という経営資源の確保が、令和9年度以降の予算編成における最重要視点となります。
財政運営の目標値と実績の突合
本版で新たに、区が実施計画・財政計画や中期経営指針で示す考え方とコロナ禍を経た実績を突き合わせます。区の掲げる「強固で弾力的な財政基盤の堅持」という物差しで区の現在地を測る作業です。
財政の弾力性:経常収支比率78.5%→76.1%と改善
目黒区の経常収支比率はコロナ前の78.5%からコロナ後の76.1%へ改善し、区の掲げる「弾力的な財政基盤」に照らせば良好な現在地に到達しました。もっとも、この弾力性は好況期の税収に支えられたものであり、自主財源依存の高い目黒区では景気後退で分母が縮むと比率が急悪化しやすいため、好況期にこそフローの備えを厚くすることが「弾力性の堅持」の要諦となります。コロナ禍の積立金積み増しは、この考え方に沿った運営です。
強固な財政基盤:無借金化と基金の積み増し
地方債を12.5億円から0.0億円へ完全に償却し、積立金フローを6.91%→9.99%へ厚くしたことは、区の掲げる「強固で弾力的な財政基盤の堅持」をコロナ禍の中で一段と強めたことを意味します。多くの区が積立フローを細らせるなか、目黒区は逆に守りを固めました。実施計画・財政計画(令和4〜令和8年度)が示す財政対応力の活用は、この堅実な蓄積を前提としています。
自主財源依存の景気変動リスク:地方税140%・財調16.16%の構造
1人当たり地方税140%・地方税構成比39.26%(特別区平均比+13.95ポイント)・財調構成比16.16%(同▲8.59ポイント)という歳入構造は、コロナ後も豊かさと脆さの両面を持ちます。財調依存型の区は景気後退時に財調で歳入変動が緩和されますが、自主財源依存の目黒区はそのクッションが薄く、税収の落ち込みをまともに受けます。過去のリーマンショック後の税収急減の経験が、この構造的リスクを裏づけます。
投資復元と起債の選択:投資的経費6.21%・地方債0.00%
投資的経費6.21%という谷は、中学校統合新校・駅前再開発により復元へ向かいます。地方債0.00%という無借金の強みを保つか、更新投資のピークに向けて世代間負担の公平の観点から起債を計画的に導入するかが、目黒区固有の選択です。厚い基金で投資を賄うか、基金温存のため一部を起債に振り向けるか、実施計画・財政計画の改定でこの判断がどう示されるかが焦点となります。
歳入構造の特徴
令和5年度の目黒区歳入総額1,312.2億円の主要項目を、構成比・特別区平均との差・令和元年度→令和5年度の4年間変化率の3軸で分析します。歳入総額は令和元年度の1,085.4億円から+20.9%増加しました。
特別区税(構成比39.26%・515.2億円)
特別区税構成比は特別区平均(25.31%)と比較して+13.95ポイントの位置にあり、23区でも自主財源基盤の厚い区です。4年間の変化率は+9.4%(特別区平均+9.9%)で、令和元年度の470.9億円から令和5年度の515.2億円へ推移しました。構成比は43.38%→39.26%へ▲4.12ポイント低下しましたが、これは都支出金等の移転財源が急拡大した裏返しであり、自主財源比率の高さそのものは維持されています。所得課税への依存が高く、富裕層の所得動向に左右されやすい点が、目黒区の税収の特徴です。
特別区財政調整交付金(構成比16.16%・212.1億円)
特別区財政調整交付金構成比は特別区平均(24.75%)比▲8.59ポイントと大きく下回り、自主財源比率の高さを反映した構造です。4年間の変化率は+15.9%(特別区平均+10.0%)で、令和元年度の182.9億円から令和5年度の212.1億円へ推移しました。制度面では、令和7年度から配分割合が55.1%から56%へ引き上げられ、併せて特別交付金の割合も5%から6%に変更されており、今後の歳入見通しの変数として作用します。
国庫支出金(構成比13.88%・182.2億円)・都支出金(構成比11.99%・157.3億円)
国庫支出金は令和元年度139.3億円→令和5年度182.2億円へ+30.8%増加し、構成比は12.83%→13.88%へ+1.05ポイント上昇しました。都支出金は令和元年度104.0億円→令和5年度157.3億円へ+51.3%と大きく増加し、構成比は9.58%→11.99%へ+2.41ポイント上昇しています。これは、東京都が広域自治体として実施したコロナ関連支援策・物価高対策・子育て支援策の補助金フローが、区を経由して住民に届けられた構造変化を示しており、コロナ禍4年間で最も大きく動いた歳入項目です。国・都の負担金を伴う法定扶助には区の一般財源負担(裏負担)が組み込まれているため、移転財源の拡大は区の経常負担の拡大と表裏一体である点に留意が必要です。
地方消費税交付金・寄附金・地方債
地方消費税交付金は令和元年度49.7億円→令和5年度70.8億円へ+42.5%増加し、消費税率10%への引き上げ効果の通年化が歳入を下支えしました。寄附金は令和元年度0.9億円→令和5年度3.2億円で、ふるさと納税制度導入後の住民税控除による流出超過構造が継続しています。富裕住民の多い目黒区は1人当たりの流出額が大きく、制度開始からの累計流出額は約260億円超に達しています。法人住民税の一部国税化と合わせた不合理な税源偏在是正措置による一般財源毀損は、自主財源依存の高い目黒区にとって直接税源を削る要因であり、特別区長会・東京都との連携による制度抜本見直し要求が継続されています。地方債は令和元年度12.5億円→令和5年度0.0億円へと完全に償却され、構成比は1.15%→0.00%(特別区平均2.05%)へ移行し、無借金運営が確立しました。
目的別歳出の主要項目分析
令和5年度の目黒区歳出総額1,237.7億円を目的別に主要項目で分析します。歳出総額は令和元年度の1,028.1億円から+20.4%増加しました。
民生費(構成比49.28%・610.0億円)
社会福祉・児童福祉・老人福祉・生活保護等の福祉関連経費で、歳出総額の最大費目であり扶助費の大部分を含みます。令和5年度の構成比49.28%は特別区平均50.79%と比較して▲1.51ポイント、4年間の変化率は+14.8%(特別区平均+17.0%)で、令和元年度の531.4億円から令和5年度の610.0億円へ推移しました。構成比は51.69%→49.28%へ▲2.41ポイント低下しましたが、これは衛生費・教育費・積立金の伸びに構成比を譲ったもので、実額は増加しています。
総務費(構成比13.95%・172.6億円)
内部管理・庁舎管理・人事・徴税・選挙・統計調査・DX投資等を含みます。令和5年度の構成比13.95%は特別区平均13.17%と比較して+0.78ポイント、4年間の変化率は+5.7%で、令和元年度の163.3億円から令和5年度の172.6億円へ推移しました。構成比は15.88%→13.95%へ▲1.93ポイント低下しています。人件費比重の高い目黒区では、内部管理・直営体制の効率化が総務費・人件費の双方に関わる論点です。
教育費(構成比15.59%・193.0億円)
学校教育・社会教育・保健体育を含みます。令和5年度の構成比15.59%は特別区平均14.28%と比較して+1.31ポイント、4年間の変化率は+34.6%(特別区平均+20.9%)と平均を大きく上回り、令和元年度の143.4億円から令和5年度の193.0億円へ推移しました。構成比は13.95%→15.59%へ+1.65ポイント上昇しています。GIGAスクール環境整備・給食費無償化に加え、区立中学校の統合・統合新校の整備が、中期的に教育費を大きく押し上げます(令和8年度予算では前年比約137億円増)。
衛生費(構成比10.77%・133.3億円)
保健衛生・環境衛生・清掃・公衆衛生を含みます。令和5年度の構成比10.77%は特別区平均8.10%と比較して+2.67ポイントと平均を上回り、4年間の変化率は+54.9%(特別区平均+39.2%)と大きく増加し、令和元年度の86.1億円から令和5年度の133.3億円へ推移しました。構成比は8.38%→10.77%へ+2.40ポイント上昇しており、コロナ禍における保健所機能の強化・予防接種事業の拡大・公衆衛生体制の構築が反映されています。なお令和5年度は5類移行年度であり、両端比較の性質上、令和3〜4年度のピーク時の衛生費はさらに高水準であった点に留意が必要です。
土木費・商工費・消防費・公債費
土木費(道路・橋りょう・公園・都市計画・住宅)は令和元年度54.5億円→令和5年度88.9億円へ+63.2%と大きく増加し、構成比は5.30%→7.18%(特別区平均9.29%)へ上昇しました。中目黒・自由が丘の駅前再開発や目黒川の防災対策等が反映されています。商工費は令和元年度8.6億円→令和5年度12.2億円へ+42.4%変化し、コロナ禍で打撃を受けた中小企業支援・商店街振興施策が反映されています。消防費は令和元年度7.6億円→令和5年度7.0億円へ▲7.3%変化しました。公債費は令和元年度23.7億円→令和5年度11.3億円へ▲52.2%と大きく減少し、構成比は2.30%→0.91%へ▲1.39ポイント低下、無借金化を反映しています。
性質別歳出の主要項目分析
人件費(構成比16.32%・202.0億円)
人件費構成比は特別区平均12.93%比+3.39ポイントと23区でも高く、直営事業比重の高さを反映します。令和元年度の19.86%から令和5年度の16.32%へ▲3.54ポイント低下し、絶対額も204.2億円→202.0億円(▲1.1%)と減少しました。会計年度任用職員制度による人件費への編入を踏まえると、実質的な縮減はさらに進んでいると解釈できます。それでも平均を上回る位置が続く点が目黒区の特徴であり、直営構造の見直しが中期的検討課題です。
扶助費(構成比27.83%・344.5億円)
扶助費は特別区平均31.74%を▲3.91ポイント下回る軽い水準ですが、絶対額は令和元年度の272.4億円から令和5年度の344.5億円へ+26.5%増加、構成比は26.50%→27.83%へ+1.34ポイント上昇しました。生活保護費・障害福祉サービス費・児童手当・子ども子育て給付等の法定扶助が中心です。相対的な軽さは強みですが、伸び自体は継続するため、給付プロセスの効率化が現実的な改善余地となります。
物件費(構成比18.75%・232.1億円)
業務委託料・指定管理料・情報システム経費等で構成され、特別区平均18.39%比+0.36ポイントとほぼ平均並みです。令和元年度17.17%→令和5年度18.75%へ+1.58ポイント上昇し、絶対額は176.6億円→232.1億円(+31.4%)と拡大しました。コロナ対応の業務委託費、GIGAスクール関連経費、電力・ガス・燃料費の高騰、各種システム経費の拡大が複合的に作用しています。人件費が平均を上回る目黒区では、直営から委託への転換余地が他区より大きい一方、委託の長期契約化による固定費化に留意が必要です。
公債費・積立金・普通建設・繰出金
公債費は特別区平均1.27%比▲0.36ポイントで、実質公債費比率▲3.8%は早期健全化基準25%を大幅に下回り、無借金化の帰結です。積立金構成比は9.99%(特別区平均6.07%比+3.92ポイント)で、令和元年度6.91%→令和5年度9.99%へ+3.08ポイントと逆に厚みを増しました。多くの区が積立フローを細らせるなかでの積み増しは、自主財源依存の景気変動リスクへの備えを固めた目黒区の堅実さを示します。普通建設事業費は特別区平均13.07%比▲6.86ポイント、令和元年度10.63%→令和5年度6.21%へ▲4.42ポイント低下し、絶対額は109.2億円→76.8億円(▲29.7%)と「谷」を形成しました。繰出金は国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険等の特別会計への繰出が中心で、構成比は7.86%→7.32%(特別区平均7.87%)の位置にあります。
議会答弁にみる財政運営の論点
本版で新たに、目黒区議会の予算・決算審議、区の予算編成概要・公表資料から、財政運営に関する直近の論点を整理します。引用はいずれも要旨であり、正確な内容は区議会の公式会議録および区の公表資料をご確認ください。
論点①:ふるさと納税と不合理な税制改正の影響
目黒区はふるさと納税による住民税の流出が年々拡大し、制度開始からの累計流出額が約260億円超に達したことを公式サイトで区民に向けて発信しています。23区全体の流出は令和7年度に初めて1,000億円を超えて約1,065億円(平成27年度からの累計約5,600億円)に達しました。富裕住民の多い目黒区は1人当たりの流出額が大きく、自主財源依存の高い財政構造ゆえに流出が一般財源を直接削る影響も大きくなります。区は返礼品の導入等で受入も進める一方、特別区長会「ふるさと納税制度に対する特別区の主張」(令和7年8月)に沿った制度の抜本見直し(廃止を含む)を国に求めており、攻めと守りの両面をどう進めるかが議会審議の継続的な論点です。
論点②:予算編成と財政運営・史上最高額予算の持続可能性
令和8年度予算は1,620億円余(前年度比13.9%増)と5年連続で過去最大を更新し、史上最高額となりました。健康福祉費720億円(構成比44.4%)と教育費の急増(前年比約137億円増・中学校統合新校舎等)が押し上げ要因です。予算特別委員会では、「守る、つなぐ、未来へ活かす」を掲げた積極予算の下で、自主財源依存ゆえの景気変動リスクにどう備えるか、コロナ禍で固めた無借金・厚い基金という堅実さを保ちつつ投資復元を賄えるか、事務事業評価に基づく歳出精査が論点となります。好況を前提とした積極予算の持続可能性が、目黒区財政の中心的な問いです。
論点③:区立中学校の統合・統合新校と駅前再開発に伴う投資復元
コロナ禍で投資的経費6.21%と谷にあった目黒区は、区立中学校の統合・統合新校の整備(令和8年度予算の教育費を前年比約137億円押し上げ)と、中目黒・自由が丘の駅前再開発により、投資復元の局面に入ります。コロナ禍で完全無借金化し、積立金を厚くした財政対応力をこの投資の山にどう配分するか、基金の取り崩しで賄うか一部を起債に振り向けるか、投資の時期分散をどう図るかが、実施計画・財政計画の改定における最大の焦点です。豊かだが変動しやすい税源を前提に、堅実さを損なわずに投資を進める規律が問われます。
構造的特徴と戦略的示唆
本分析の総まとめとして、目黒区財政の構造的な特徴・構造的な課題・対応の方向性の3軸で論点を整理します。
構造的な特徴
特徴①:主要財政指標の総合評価
目黒区の主要財政指標を総合評価すると、財政力指数0.73(23区平均0.571比+0.16)・経常収支比率76.1%(23区平均76.18%比▲0.08ポイント)・実質公債費比率▲3.8%(23区平均▲2.34%比▲1.46ポイント)・ラスパイレス指数99.6(23区平均98.63比+0.97)の組み合わせから、23区上位の財政力と無借金の堅実さを持つ一方、人件費比重が高く自主財源依存の景気変動リスクを抱える目黒区固有のポジションが浮かび上がります。
特徴②:歳入構造とコロナ禍4年間の変化
目黒区の歳入構造は、特別区税構成比39.26%(特別区平均比+13.95ポイント)、特別区財政調整交付金構成比16.16%(同▲8.59ポイント)、国庫支出金13.88%・都支出金11.99%の組み合わせで構成されます。コロナ禍4年間で最も顕著な変化は都支出金構成比の上昇(9.58%→11.99%、+2.41ポイント)であり、国・都の制度設計への依存度が高まった点が特徴です。
特徴③:義務的経費の構造
令和5年度の義務的経費(人件費・扶助費・公債費の3項目)は合計45.06%であり、特別区平均45.94%とほぼ同水準ですが、人件費が平均を+3.39ポイント上回る一方、扶助費(▲3.91ポイント)・公債費が下回るという直営志向・無借金型の独特の構成です。4年間で人件費構成比は▲3.54ポイント、公債費構成比は▲1.39ポイントと縮小しました。
特徴④:投資的経費の動向と起債発行余力
投資的経費(普通建設事業費+災害復旧事業費)は構成比6.21%(特別区平均13.07%比▲6.86ポイント)で、4年間で10.63%→6.21%へ▲4.42ポイント低下し「谷」を形成しましたが、中学校統合新校・駅前再開発で復元へ向かいます。公債費0.91%・地方債0.00%の無借金水準は、起債発行余力が最大級に温存されていることを示します。
特徴⑤:基金のストックとフローの非対称の逆転
多くの区がコロナ禍で積立金フローを細らせたのに対し、目黒区は6.91%→9.99%へ積み増し、地方債を完全に償却しました。ストックの健全性を保ちつつフローも厚くした「守りを固めた」運営が、この期間の目黒区財政の姿です。
構造的な課題
課題①:自主財源依存ゆえの景気変動リスク
地方税140%・財調16.16%という歳入構造は、好況期には豊かさとして現れる一方、景気後退期には財調のクッションが薄い分、歳入の落ち込みをまともに受けます。過去のリーマンショック後の税収急減の経験が示す通り、これは目黒区最大の構造的リスクであり、コロナ禍の基金積み増しはこの備えを固めたものと評価できます。
課題②:扶助費の継続的増加圧力と財政硬直化
扶助費構成比27.83%は特別区平均を下回りますが、4年間で絶対額は272.4億円→344.5億円(+26.5%)と拡大しました。法定扶助の累積増は今後も継続し、相対的な軽さという強みを徐々に薄めながら、経常収支比率の硬直化に作用します。
課題③:人件費(直営構造)と物件費・補助費等の構造的重さ
人件費構成比16.32%(特別区平均比+3.39ポイント)という直営志向は目黒区固有の重さであり、コロナ禍で縮小は進んだものの委託化の余地を残します。あわせて物件費(17.17%→18.75%)・補助費等(7.38%→11.41%)の拡大が進み、これらの構造的経費の管理が中期論点です。
課題④:ふるさと納税流出と法人住民税国税化による財源毀損
富裕住民の多い目黒区は1人当たり流出額が大きく、累計流出約260億円超に達しています。自主財源依存の高さゆえに流出の影響が直接的で、法人住民税の一部国税化と合わせた税源毀損への対応が、特別区長会・東京都との連携による制度抜本見直し要求として継続されています。
課題⑤:職員定数管理と業務量増加の需給ギャップ
多様化・複雑化する行政需要に対応する業務量の増加と、定年退職の増加・採用試験倍率の低下(平成22年度7.6倍→令和6年度2.1倍)による職員確保の困難という需給ギャップが、23区共通の構造的課題となっています。コロナ禍4年間で人件費が▲1.1%にとどまる一方、業務領域は拡大しており、職員一人当たり負担の実質的増加が進行しています。人件費比重の高い目黒区では、この課題は直営構造の見直しと表裏一体です。
課題⑥:投資復元と好況前提の積極予算の持続可能性
中学校統合新校・駅前再開発による投資復元と、5年連続過去最大・史上最高額の令和8年度予算(1,620億円余)は、好況期の税収を前提とした積極財政です。自主財源依存ゆえの変動性を踏まえると、税収の潮目が変わった際に歳出水準をどう調整するか、無借金・厚い基金という堅実さをどう守るかが、目黒区の持続可能性を左右します。
対応の方向性(案)
方向性①:扶助費の給付プロセス効率化
扶助費の給付水準そのものは法定で抑制余地が限定的ですが、資格審査の精度向上による不適正給付の防止、AI・RPAによる事務自動化、自立支援の強化、ケースワーカー業務のデジタル化を一体的に進めることで、給付の質を維持しながら事務コストを圧縮する余地があります。
方向性②:基金・起債の戦略的活用と世代間負担調整
コロナ禍で固めた無借金・厚い基金という堅実さを保ちつつ、中学校統合新校・施設更新の投資復元に対し、基金の取り崩しと起債の計画的活用のバランスを設計することが要諦です。好況期に基金を厚く積み、投資期・後退期に取り崩す運営を、世代間負担調整の考え方とともに実施計画・財政計画に明示します。
方向性③:公共施設マネジメントの高度化
目黒区区有施設見直し計画(平成29年6月策定)に基づき、長寿命化、複合化・集約化、民間活力の活用、未利用地の利活用を組み合わせた計画的整備・適正配置を推進します。中学校統合を核とした再編と時期分散が中期論点です。
方向性④:DX投資による業務改革と人材確保
業務量増加と職員確保困難の需給ギャップ、そして人件費比重の高さに対しては、直営構造の見直しを含むDX・生成AI・RPAによる定型業務の自動化、業務委託の質的見直しと長期契約最適化、複数自治体での共同調達、事業評価に基づく事務事業の見直しを一体的に進めるとともに、処遇改善・職場環境整備・メンタルヘルス対策・育児介護両立支援等のエンプロイヤーブランディング投資により職員確保困難に対応します。
方向性⑤:税源偏在是正措置への対抗
自主財源依存の高い目黒区にとって、税源基盤を守ることは財政運営の生命線です。特別区長会・東京都と連携した制度抜本見直し要求の継続と、返礼品・シティプロモーションによる受入開拓を進めます。
方向性⑥:行財政改革・経営改革計画の着実な実行
既に策定済みの目黒区中期経営指針・実施計画・財政計画の着実な実行に加え、進捗のモニタリングと外部環境変化への機動的な見直し、計画間の連動性確保が中期的な経営改革の継続的成果に直結します。とりわけ直営構造の見直しは目黒区固有の重点課題です。
まとめ
目黒区の財政運営は、コロナ禍4年間(令和元年度→令和5年度)で財政力指数0.75→0.73(▲0.02)、経常収支比率78.5%→76.1%(▲2.4ポイント)、実質公債費比率▲4.0%→▲3.8%(+0.2ポイント)、ラスパイレス指数99.8→99.6(▲0.2)という主要財政指標の動きを示しました。歳出規模は+20.4%・+210億円拡大した一方、目黒区の際立った動きは地方債の完全償却(12.5億円→0.0億円)と積立金フローの積み増し(6.91%→9.99%)であり、コロナ禍を財政の守りを固める機会として活用しました。歳入面では都支出金が+51.3%と急増して構成比11.99%に達し、国・都の制度設計への依存度が高まりました。
本版の突合で確認した通り、投資的経費(10.63%→6.21%)の谷は一時的なものであり、区立中学校の統合・統合新校の整備や駅前再開発により、投資的経費は令和8年度以降に復元へ向かいます。無借金・厚い基金という堅実さを固めた目黒区が、自主財源依存ゆえの景気変動リスクを抱えたまま、5年連続過去最大・史上最高額の積極予算の下で投資復元をどう賄うかが、中期の分水嶺となります。これらの構造的特徴と課題を踏まえると、本稿の「対応の方向性(案)」で整理した6つの戦略軸を、令和9年度以降の予算編成・中期財政運営において一体的に推進することが求められます。
戦略軸の推進と経営改革
効率化によるコスト抑制
資格審査の精度向上・AIやRPAによる事務自動化・自立支援強化により、法定で抑制余地が限定的な扶助費の質を維持しながら事務コストを圧縮します。
財政運用の平準化
好況期の厚い基金積立と、投資復元期の基金・起債の計画的活用を、世代間負担調整の考え方とともに実施計画・財政計画に組み込みます。
包括的な資産管理
目黒区区有施設見直し計画に基づく長寿命化・複合化・集約化・民間活力活用・未利用地利活用と、中学校統合新校を組み合わせた計画的整備・適正配置を推進します。
業務プロセス改革と職場投資
直営構造の見直しを含むDX・生成AI・RPAによる定型業務自動化、業務委託の質的見直し、複数自治体での共同調達、事業評価に基づく事務事業の見直しを一体的に進めるとともに、処遇改善・メンタルヘルス対策・育児介護両立支援等のエンプロイヤーブランディング投資により職員確保困難に対応します。
税源対策の実施
自主財源依存ゆえに税源基盤の毀損が痛手となる目黒区にとって、特別区長会・東京都と連携した制度抜本見直し要求の継続と、返礼品・シティプロモーションによる受入開拓が生命線となります。
行財政改革および経営改革の継続的実行
目黒区中期経営指針・実施計画・財政計画の着実な実行、進捗モニタリング、外部環境変化への機動的見直しが、中期的な経営改革の継続的成果に直結します。
「ヒト」という経営資源における深刻な課題
また、これら戦略軸の実行を支える前提として、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中でも「ヒト」の問題への対応が極めて重要な論点となります。目黒区の人件費は令和元年度の204.2億円から令和5年度の202.0億円へ▲1.1%とわずかに減少した一方、歳出総額は1,028.1億円から1,237.7億円へ+20.4%拡大しており、職員1人当たりが担う歳出規模の負担はコロナ禍4年間でさらに大きく増しています。人件費比重の高い目黒区にとって、この「ヒト」の課題は財政運営と直結します。決算額と業務量は必ずしも比例するものではありませんが、この4年間で職員1人が背負う行政運営の規模感が大幅に増している事実は明白です。職員定数計画が示唆する「業務量が職員定数を上回る転換期」の到来は、財政指標のいずれよりも深刻な構造課題です。
現場職員の負担と組織の持続可能性
さらに、職員のプライベートな側面についても看過できません。共働き世帯の増加、未就学児を抱える子育て世代の急増、親世代の介護問題の本格化(いわゆるダブルケア・ヤングケアラー問題を含む)等により、職員一人ひとりが家庭で担う負担も従来比で大きく増しています。一人の人間が公務員として担えるキャパシティという観点から見ると、現場はかなり厳しい状況にあるのではないかと推察されます。コロナ禍4年間の対応がこの構造を一段と顕在化させたといえます。メンタル不調による病気休職者の増加傾向が公務職場の課題として指摘される背景には、職場と家庭双方からの過重負荷が複合的に作用している可能性があると考えられます。
自治体経営としての最重要論点
だからこそ、目黒区の自治体経営としては、持続可能な財政運営に加えて「業務量の削減」を経営上の最重要課題として位置づけることが求められます。具体的には、方向性①の扶助費給付プロセス効率化、方向性④の直営構造の見直しを含むDX・生成AI・RPAによる定型業務自動化と事業評価に基づく事務事業の見直し、複数自治体での共通業務の共同化等を一体的に推進し、限られた人的資源で持続可能な行政サービスを提供できる体制を構築することこそが、令和9年度以降の目黒区経営の最重要論点であると結論づけられます。豊かだが変動しやすい税源という前提の下で、コロナ禍で固めた無借金・厚い基金という堅実さを守り抜くことが、富裕住宅区・目黒区の持続可能性を決定づけます。
参考資料
主要なデータ元
公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」令和2年版(令和元年度決算)・令和6年版(令和5年度決算)、総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」令和元年度・令和5年度
国の公開統計情報
総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」、e-Stat地方財政状況調査(統計コード00200251)、総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」
外部関係機関資料
公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」「都区財政調整制度のあらまし」、特別区長会「ふるさと納税制度に対する特別区の主張」(令和7年8月)、特別区人事委員会「特別区職員採用試験(選考)実施状況」
区の公式情報および経営計画等
目黒区公式ホームページ「令和8年度予算編成概要」「予算編成過程の公表」「不合理な税制改正等に対する特別区の主張」関連資料、目黒区基本構想(令和3年3月策定)、目黒区基本計画(令和4年3月策定・10か年計画)、目黒区実施計画、目黒区実施計画・財政計画(令和4年3月策定・令和4〜令和8年度)、目黒区中期経営指針、目黒区区有施設見直し計画(平成29年6月策定)、目黒区職員定数計画
議会関係資料
目黒区議会予算・決算特別委員会関連公表資料、目黒区議会会議録検索システム




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