【東京都】「こども都庁モニター」アンケート結果(令和8年度第1回~第3回)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:東京都「「こども都庁モニター」アンケート結果のご報告(令和8年度第1回~第3回)」令和8年10月14日
概要
東京都子供政策連携室は令和8年10月14日、「こども都庁モニター」の令和8年度第1回から第3回までのアンケート結果を公表しました。こども都庁モニターは、子供の意見やニーズを把握するために都が選任しているモニターで、都内在住の未就学児(0歳から2歳)の保護者、未就学児(3歳以上)の保護者、小学校低学年、小学校高学年、中学生、高校生年齢相当(15歳から18歳)の6区分から各200名、計1,200名で構成されています。「チルドレンファースト」の社会の実現に向けて子供目線で政策をバージョンアップするための取組と位置づけられ、2050東京戦略の戦略1「子供目線に立った政策の推進」を推進する取組とされています。
3回の調査は令和8年5月から8月にかけて実施され、回答率は第1回が97.0%(1,164名)、第2回が94.4%(1,133名)、第3回が93.4%(1,121名)でした。取り上げたテーマは3回で14に及び、大気汚染、ヤングケアラー、生成AI、子供の事故予防、こども向け予算書(動画)、高齢者との多世代交流、気候変動適応策、子供の権利擁護専門相談事業の愛称、技能やものづくりの仕事、芸術文化、東京都子供・子育て支援総合計画(第3期)の中間見直し、東京版救急受診ガイド(Web版)、子供向けホームページ、グローバルな感覚を育む機会の創出と、所管は環境局、福祉局、財務局、スポーツ推進本部、産業労働局、生活文化局、東京消防庁、子供政策連携室にまたがります。
結果からは、子供や保護者が行政に求める情報の具体像と、行政の発信が届いていない領域の両方が浮かび上がります。大気の状態について「注意が必要な日がわかる情報」を求める回答は77.6%に達し、子供・子育て支援総合計画の目標では「子供の成長段階に応じた支援の充実」にあたる目標が44.8%で最も多く選ばれました。一方で、中高生向けの「Tokyo中高生Webサイト」を知っていたのは6.4%にとどまり、80.9%が「知らなかった」と回答しています。ヤングケアラーという言葉を知っていた人のうち、18歳以上の若者も含まれることを知っていたのは33.4%でした。
特別区の実務にとって、この調査は二つの意味を持ちます。ひとつは、こども基本法が地方公共団体に求める子供の意見の反映を、常設のパネルと全庁的な相乗りの仕組みで実装している先行例としての意味です。もうひとつは、熱中症、乳幼児の事故、ヤングケアラー、子供の居場所といった、区が窓口と現場を持つ分野について、都内の子供と保護者の受け止めを示す材料としての意味です。
意義
子供の声を常設の仕組みで聴く
行政が子供の意見を聴く方法には、計画策定時のパブリックコメント、ワークショップ、学校を通じたアンケートなどがあります。いずれも特定の施策や時期に合わせて単発で実施されることが多く、テーマが生じるたびに対象者を集め直す必要があります。
こども都庁モニターは、6区分各200名のパネルをあらかじめ選任し、年6回程度の頻度で調査を重ねる仕組みです。調査のたびに対象者を募る必要がなく、短い期間で結果を得られます。令和8年度の3回の調査は、いずれも実施期間が9日間で、回答率は93%を超えました。施策の検討スケジュールに合わせて子供の声を機動的に取り込める点に、常設のパネルという設計の意義があります。
部局横断の「相乗り」で聴く
3回の調査で扱われた14のテーマは、八つの部局等にまたがっています。大気汚染と気候変動適応策は環境局、ヤングケアラーと子供の権利擁護専門相談事業と子供・子育て支援総合計画は福祉局、こども向け予算書は財務局、多世代交流はスポーツ推進本部、ものづくりの仕事は産業労働局、芸術文化は生活文化局、救急受診ガイドは東京消防庁がそれぞれ所管しています。
各部局が個別に子供向けの調査を設計し、対象者を集め、実施するとすれば、手間と費用は大きくなります。子供政策連携室が窓口となって一つのパネルを全庁で共有し、各部局が設問を持ち寄る形をとることで、子供の声を聴く機会が特定の部局に偏らず、都政の幅広い分野に及んでいます。子供に関係しないように見える分野、例えば予算や産業、救急の分野でも子供の視点を取り入れられることは、この相乗りの仕組みがあって初めて実現していると考えられます。
聴いた後の反映までを公表する
意見を聴く仕組みが形骸化する最大の要因は、聴いた結果がどう使われたのかが見えないことです。こども都庁モニターのホームページには、年度ごとの結果に加えて「アンケートの振り返りと東京都の取組」が掲載されており、令和7年度分では、アンケート結果を受けた都の取組が数多く紹介されています。
子供・子育てメンター「ギュッとチャット」では、保護者や高校生から夜間の利用希望が多かったことを受け、令和8年度から相談対応時間を24時まで延長するとされました。中高生向けの租税教育デジタルコンテンツでは、「スマホで操作しにくい」という意見を受けて、レイアウトや文字サイズ、ボタン配置などの操作性を見直したとされています。ヤングケアラーについては、認知度の低さやホームページの読みにくさの指摘を受け、15秒の動画を制作してSNSなどで発信し、ホームページの読みやすさも改善したとされています。聴いた声と行政の対応を対にして示すことは、モニターとして参加する子供にとっても、意見を表明することの意味を実感できる仕組みになっていると考えられます。
歴史・経過
こども基本法と意見反映の位置づけ
令和5年4月1日に施行されたこども基本法は、第11条で、国と地方公共団体がこども施策を策定し、実施し、評価するに当たって、施策の対象となるこどもや、こどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものと定めています。この規定は国だけでなく地方公共団体にも及びます。
同法第10条は、都道府県に対して都道府県こども計画を、市町村に対して市町村こども計画を定めるよう努めることを求めています。計画づくりの過程でも、子供の意見をどう聴き、どう反映するかが問われることになります。こども都庁モニターは、この法の要請に応える仕組みの一つとして位置づけられます。
こども都庁モニターの歩み
こども都庁モニターのホームページには、令和5年度からのアンケート結果が掲載されています。令和8年度のモニターは令和8年3月27日から5月6日まで募集され、小学生400人、中学生200人、高校生年齢相当200人、小学校入学前の子供の保護者400人の計1,200人で構成されています。アンケートは年6回程度実施するとされ、令和8年度は第6回までが予定されています。
結果の公表の仕方にも工夫があります。報道発表では回答の分布をグラフで示すとともに、最も多く選ばれた選択肢と、その差が5ポイント以内の選択肢を赤枠で囲んで太字にしています。数ポイント差の選択肢を同じ扱いで強調することで、1位の選択肢だけが過度に注目されることを避ける配慮だと読めます。ホームページでは全体版に加えて、小学校低学年向け、小学校高学年向け、中高生向けの版が用意されており、回答した子供自身が結果を読めるように編集されています。
個別テーマの制度的背景
ヤングケアラーについては、令和6年6月12日に公布・施行された子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律により、子ども・若者育成支援推進法に、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者が、国と地方公共団体等による支援の対象として明記されました。支援の対象には18歳以上の若者も含まれ、おおむね30歳未満を中心としつつ、状況に応じて40歳未満も対象となり得るとされています。報道発表でも、令和6年の法改正を踏まえた年齢による切れ目のない支援体制の整備に触れられています。
東京都子供・子育て支援総合計画(第3期)は令和7年3月に策定され、計画期間は令和7年度から令和11年度までの5年間です。地域における妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援の仕組みづくり、乳幼児期における教育・保育の充実、子供の成長段階に応じた支援の充実、子供の貧困の解消に向けた対策の推進、特に支援を必要とする子供や家庭への支援の充実、次代を担う子供たちを健やかに育む基盤の整備の6つの目標を掲げています。今回のアンケートは、この計画の中間見直しをテーマとして実施されました。
東京版救急受診ガイド(Web版)は、病院を受診するか救急車を呼ぶか迷った際に、症状を音声やテキストで入力することで緊急度を判定できるもので、東京消防庁が令和8年3月2日にリリースしました。今回の調査では、リリース後の使いやすさが利用者の立場から評価されています。
現状データ
調査の規模と回答率
3回の調査の回答率は、第1回が97.0%(1,164名/1,200名)、第2回が94.4%(1,133名/1,200名)、第3回が93.4%(1,121名/1,200名)でした。回を追うごとにわずかに低下していますが、いずれも9割を超える高い水準です。設問ごとに対象となる区分が異なるため、集計の母数は設問によって異なります。
第1回:求められる情報と認知の差
大気汚染について、どのような情報があると助かるかを尋ねた設問(複数回答、1,164名)では、「注意が必要な日がわかる情報」が77.6%で最も多く、「今日、外遊びをしてもよいかどうかがわかる情報」が62.1%、「子供にもわかりやすい大気の解説」が54.1%と続きました。「特に必要ない」は2.5%にとどまります。その他の回答には、1週間程度の予想を洗濯や外遊びの参考にしたいという保護者の声もありました。抽象的な大気の状態より、今日どう行動すればよいかに直結する情報が求められていることが読み取れます。
ヤングケアラーという言葉を知っていたかを尋ねた設問(1,164名)では、「知っていた」が61.3%、「聞いたことはあるが、よく知らない」が14.0%、「知らなかった」が24.7%でした。区分別では、「知っていた」の割合は0歳から2歳の保護者で85.7%、3歳以上の未就学児の保護者で88.2%、小学校低学年で8.7%、小学校高学年で30.1%、中学生で66.7%、高校生で88.4%と、学年が上がるにつれて大きく高まります。さらに、ヤングケアラーを知っていた未就学児の保護者と中高生(638名)に、18歳以上の若者も含まれることを知っていたかを尋ねたところ、「知っていた」は33.4%で、66.6%が「知らなかった」と回答しました。言葉を知っている人の間でも、法改正で明確になった支援対象の広がりは十分に浸透していないことがうかがえます。
生成AIについては、生成AIを利用していると回答した子供(497名)に用途を尋ねています(複数回答)。「わからないことを調べるのに使う」が76.1%で最も多く、「アイディア出しに使う」が49.1%、「文章を書いたり、要約・翻訳するのに使う」が48.5%、「自分の悩みごとを相談するのに使う」が32.4%、「動画や写真を作ったり加工するのに使う」が26.4%でした。前段の設問で生成AIを「知っていて、どんなことができるかわかる」と答えた割合は、小学校低学年で36.4%、小学校高学年で72.0%、中学生で88.2%、高校生で92.1%であり、学年による差が大きいことも示されています。利用している子供の3人に1人近くが悩みごとの相談に生成AIを使っているという結果は、相談支援の在り方を考えるうえで見過ごせない数値です。
子供の事故予防について、未就学児の保護者(391名)に詳しく予防策を知りたいものを尋ねた設問(複数回答)では、「ものがつまる等」が35.5%で最も多く、「かまれる・刺される」が31.2%で続きました。以下、「落ちる」27.6%、「おぼれる」24.6%、「はさむ・はさまれる」22.8%、「やけど」22.0%、「転ぶ」20.5%、「切る・刺さる」20.2%、「ぶつかる」19.4%の順です。「ものがつまる等」は0歳から2歳の保護者で39.3%、3歳以上の未就学児の保護者で31.8%と、年齢の低い子を持つ保護者ほど関心が高くなっています。
第2回:伝え方とつながり方への声
こども向け予算書(動画)を見て都の予算への関心が深まったかを尋ねた設問(554名)では、「とても深まった」が19.1%、「深まった」が63.9%で、合わせて83.0%が関心の深まりを感じたと回答しました。「あまり深まらなかった」は15.0%、「全然深まらなかった」は2.0%です。自由回答には、道路や信号、バス、水族館や動物園など普段使っているものに予算が使われていると知り、身近に感じたという声が寄せられています。こども向け予算書(動画)は令和7年度にも取り上げられ、文字を読むのが大変で音声の追加を求める声があったことから、都は今後の構成や表現の検討に活用するとしていました。
高齢者から教えてもらって良かったことや一緒にやって楽しかったことを尋ねた設問(複数回答、744名)では、「おしゃべりをすること、一緒に過ごすこと」が66.4%で突出し、料理や生活の知恵を教えてもらうことが39.7%、編み物や工作、絵画などのものづくりが38.0%、けん玉やコマ回し、あやとりなどの昔遊びが34.0%、歩いたり体を動かしたりすることが32.3%、歴史や昔の体験談を話してもらうことが30.9%で続きました。特別な体験よりも、ともに過ごす時間そのものが子供にとって価値を持っていることが示されています。
気候変動の影響を日常のどのようなことから感じるかを尋ねた設問(複数回答、子供のみ744名)では、「夏の異常な高温、熱中症の増加」が85.9%に達しました。「米や野菜など、農作物の品質や収穫量の低下」53.2%、「豪雨や暴風による被害」48.8%、「渇水の増加」42.2%、「野生生物や植物の生息域の変化」40.3%が続き、「気候変動の影響を感じていない」は2.6%でした。子供にとって気候変動は将来の問題ではなく、すでに体感している現在の問題になっています。
子供の権利擁護専門相談事業の愛称について、どのような愛称であれば相談してみようと思うかを尋ねた設問(3つまでの複数回答、744名)では、「ちょっとしたことでも相談してよいことがわかる愛称」が53.4%、「ちゃんと話を聞いてくれることがわかる愛称」が53.1%、「誰にも知られず、秘密が守られることがわかる愛称」が51.7%と、上位3つがほぼ並びました。「いじめ、体罰、虐待などについて相談できることがわかる愛称」は32.9%、「電話やメールで相談できることがわかる愛称」は20.6%にとどまります。相談内容の深刻さや相談手段より、相談の敷居の低さ、傾聴、秘密の保持という三つの安心感が重視されていることが読み取れます。
ものづくりや匠の技を発信するイベントにどのような内容があれば参加したいかを中高生(364名)に尋ねた設問(複数回答)では、「本格的な体験(実際の工具や技術を使う体験)ができる」が61.3%、「友人同士で参加しやすい企画がある」が58.5%で上位となり、「収入やキャリア(将来像)がわかる」が42.6%で続きました。
第3回:計画とサービスへの評価、認知の壁
東京都子供・子育て支援総合計画(第3期)の目標のうち、もっと充実してほしいものを尋ねた設問(2つまでの複数回答、1,121名)では、子供の成長段階に応じた支援の充実にあたる目標3が44.8%で最も多く選ばれました。調査票では、一人ひとりの状況に合わせて勉強や体験ができる機会をつくることや、児童館や学童クラブなど子供が安心して行ける地域の場所をつくることが例として示されています。次いで、次代を担う子供たちを健やかに育む基盤の整備にあたる目標6が38.3%、妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援にあたる目標1が35.7%、乳幼児期の教育・保育にあたる目標2が27.7%、特に支援を必要とする子供や家庭への支援にあたる目標5が22.7%、子供の貧困の解消にあたる目標4が19.3%でした。
東京版救急受診ガイド(Web版)を使ってみた感想を尋ねた設問(746名)では、「とても使いやすかった」が16.2%、「使いやすかった」が65.8%で、合わせて82.0%が使いやすいと評価しました。「あまり使いやすくなかった」は14.3%、「使いにくかった」は3.6%です。
子供向けホームページの認知では、対照的な結果が出ました。小学生(375名)に「東京都こどもホームページ」を知っていたかを尋ねた設問では、「知っていた(見たことがある)」が40.0%、「名前は聞いたことがあるが、見たことはなかった」が12.8%、「知らなかった」が47.2%でした。中高生(362名)に「Tokyo中高生Webサイト」を知っていたかを尋ねた設問では、「知っていた(見たことがある)」は6.4%にとどまり、「名前は聞いたことがあるが、見たことはなかった」が12.7%、「知らなかった」が80.9%に達しています。中高生と都政を直接結ぶ「都政の玄関口」と位置づけられるサイトが、対象である中高生のおよそ5人に4人に知られていないという結果です。
将来グローバルに活躍できる可能性が魅力的かを尋ねた設問(1,121名)では、「とてもそう思う」が52.7%、「そう思う」が35.8%で、合わせて88.5%が魅力的だと回答しました。理由には、日本の良いところを実感・再確認できること、違う文化を知りたいこと、色々な人と交流できることなどが挙げられています。
読み取る際の注意点
こども都庁モニターは募集に応じた応募者から選任されたパネルであり、無作為抽出による標本ではありません。回答者は都政への関心が比較的高い層に偏っている可能性があり、結果を都内の子供と保護者全体の意見とそのまま同一視することはできません。特に認知度を尋ねる設問では、関心の高い層ほど知っている割合が高くなりやすいため、実際の認知度はさらに低い可能性も考えられます。
設問ごとに回答の対象と母数が異なる点にも注意が必要です。生成AIの用途は生成AIを利用している子供のみ、ヤングケアラーに18歳以上が含まれることの認知は言葉を知っていた未就学児の保護者と中高生のみが対象です。また、複数回答の設問では各選択肢の割合を合計すると100%を超えます。数値を引用する際には、誰を対象とした何の割合なのかを併せて示すことが欠かせません。
政策立案の示唆
この取組を行政が行う理由
第一の理由は、法的な要請です。こども基本法第11条は、地方公共団体に対して、こども施策の策定、実施、評価に当たり、こどもや養育者などの意見を反映させるために必要な措置を講ずることを求めています。意見を反映させるには、まず意見を聴く仕組みが必要であり、常設のパネルはその実装方法の一つです。
第二の理由は、子供の視点が政策の質を左右する分野が多いことです。大気の情報、救急受診の判断支援、相談窓口の愛称など、利用者である子供や保護者にとって使えるものになっているかどうかは、提供する側の想定だけでは判断できません。子供・子育て支援総合計画の中間見直しのように、計画の優先順位そのものを問う場面でも、当事者の声は判断材料になります。
第三の理由は、発信の効果を測る必要があることです。Tokyo中高生Webサイトの認知が6.4%にとどまったという結果は、行政がつくった発信手段が対象に届いているかを、対象自身に尋ねて初めて分かる情報です。発信の効果を測る手段を持たなければ、届いていない発信を続けることになります。
行政側の意図
第一の意図は、子供の意見を施策の検討過程に組み込むことだと考えられます。各テーマの所管部署が問い合わせ先として明記され、結果が所管部署の施策検討に用いられることが前提とされています。令和7年度の振り返りで示されたように、相談時間の延長や操作性の改善、広報手法の見直しといった具体的な対応につなげることが想定されています。
第二の意図は、子供が都政を身近に感じる機会をつくることです。こども向け予算書(動画)を見て83.0%が予算への関心の深まりを感じたという結果は、調査そのものが子供にとって都政に触れる機会になっていることを示しています。調査に回答すること自体が、主権者教育や行政への理解の入口として機能していると考えられます。
第三の意図は、全庁での子供の声の活用を促すことです。子供政策連携室が窓口となって各部局のテーマを集約する仕組みは、子供施策を所管しない部局にも子供の視点を取り入れる機会を提供します。2050東京戦略が子供目線に立った政策の推進を戦略の一つとして掲げていることとも整合します。
期待される効果
最も直接的に期待されるのは、施策の改善です。大気の情報では「注意が必要な日」と「外遊びの可否」が求められ、事故予防では誤飲・窒息への関心が高く、相談窓口の愛称では敷居の低さ、傾聴、秘密の保持が重視されています。いずれも施策の設計や広報の内容にそのまま反映できる具体的な知見です。
次に、計画の優先順位づけの根拠になることが期待されます。子供・子育て支援総合計画の目標について、成長段階に応じた支援が44.8%で最も多く選ばれ、子供の貧困対策が19.3%であったという結果は、どの目標に重点を置くかを議論する際の材料になります。ただし、選ばれた割合の低い目標の重要性が低いことを意味するわけではない点には留意が必要です。困難を抱える子供や家庭への支援は、対象が限られるために多数の支持を集めにくいという性質を持つためです。
さらに、発信手段の見直しにつながることが期待されます。東京都こどもホームページの認知が40.0%であるのに対し、Tokyo中高生Webサイトの認知が6.4%にとどまるという差は、中高生に届く経路の検討が必要であることを示しています。令和7年度の振り返りでは、若者向けの健康支援についてInstagramやTikTokの利用が多いという結果を広告媒体の検討に活用したとされており、同様の手法が考えられます。
課題・次のステップ
第一の課題は、代表性の確保です。応募による選任のパネルは、関心の高い層に偏る可能性があります。困難を抱える子供や家庭、ヤングケアラーの当事者のように、調査に参加しにくい層の声は届きにくくなります。パネル調査とは別に、支援の現場や当事者団体を通じて声を聴く経路を組み合わせることが求められます。
第二の課題は、反映の検証です。令和7年度の振り返りでは多くの反映事例が示されていますが、反映の仕方には、具体的な制度変更から「検討に活用する」という段階のものまで幅があります。どの意見がどの程度反映されたのかを、時間をおいて検証できる形で記録していくことが、仕組みへの信頼を保つうえで重要になります。
第三の課題は、同じテーマを継続的に測ることです。こども向け予算書(動画)は令和7年度と令和8年度の両方で取り上げられましたが、設問が異なれば改善の効果を比べることはできません。ヤングケアラーの認知のように継続的に追うべき指標については、設問をそろえて経年で測ることが望ましいと考えられます。
第四の課題は、結果を区市町村と共有することです。熱中症、乳幼児の事故、ヤングケアラーの相談、子供の居場所といったテーマは、区市町村が窓口と現場を持つ分野です。都のパネルで得られた知見が区市町村の施策にも生かされるよう、結果の共有や活用の仕組みを整えることが次の段階として考えられます。
特別区への示唆
第一の示唆は、相乗り型のパネルという仕組みそのものの参照価値です。こども基本法第11条の要請は特別区にも及びますが、施策ごとに子供の意見を聴く場を設けるのは負担が大きく、実施が一部の部署にとどまりがちです。企画部門が窓口となって常設のパネルを持ち、各部署が設問を持ち寄る形をとれば、少ない負担で全庁的に子供の声を聴けます。区の規模に応じてパネルの人数や区分を調整し、学校や児童館と連携して参加者を確保する方法も考えられます。
第二の示唆は、区が現場を持つ分野の結果を自区の施策に引きつけて読むことです。乳幼児の保護者が最も詳しく知りたい事故予防策が誤飲・窒息であり、0歳から2歳の保護者では39.3%に達するという結果は、区の母子保健事業や乳幼児健診での情報提供の重点を考える材料になります。気候変動の影響として85.9%が熱中症を挙げたことは、区の暑さ対策や子供の外遊び環境の整備と結びつきます。子供・子育て支援総合計画で児童館や学童クラブを含む成長段階に応じた支援が最も求められたことは、区の子供の居場所施策の優先度を考える手がかりになります。
第三の示唆は、ヤングケアラーの若者層への周知です。言葉を知っている人の中でも、18歳以上の若者が支援の対象に含まれることを知っていたのは33.4%にとどまりました。区には若者の相談に応じる窓口や、要保護児童対策地域協議会などの連携の場があります。18歳を過ぎた若者が支援の対象であり続けることを、本人と周囲の大人の双方に伝える工夫が求められます。
第四の示唆は、相談窓口の設計と生成AIの関係です。相談窓口の愛称について、子供たちは敷居の低さ、傾聴、秘密の保持を重視しました。同時に、生成AIを利用している子供の32.4%が悩みごとの相談に使っていると回答しています。子供が相談相手として生成AIを選ぶ理由は、いつでも、気軽に、誰にも知られずに相談できる点にあると推測されます。区が運営する子供の相談窓口が、この三つの条件をどこまで満たしているかを点検し直すことには意味があると考えられます。
第五の示唆は、発信が届いているかを確かめることです。Tokyo中高生Webサイトの認知が6.4%にとどまったことは、行政が用意した子供向けの発信手段が、対象に届かないまま運用され得ることを示しています。区が運営する子供向けのホームページやSNS、広報紙についても、対象となる子供自身に知っているか、使っているかを尋ねてみることが、発信を見直す第一歩になります。
まとめ
東京都子供政策連携室が令和8年10月14日に公表したこども都庁モニターのアンケート結果は、6区分各200名、計1,200名のパネルに対して令和8年5月から8月にかけて実施した3回の調査をまとめたものです。回答率は93.4%から97.0%と高く、大気汚染から救急受診ガイド、子供・子育て支援総合計画の中間見直しまで、八つの部局等にまたがる14のテーマが扱われました。一つのパネルを全庁で共有して各部局が設問を持ち寄る相乗りの仕組みと、聴いた意見がどう施策に反映されたかを振り返って公表する運用が、この取組の特徴です。
結果は、子供と保護者が行政に求めるものの具体像を示しています。大気の情報では注意が必要な日がわかる情報が77.6%、救急受診ガイドは82.0%が使いやすいと評価し、こども向け予算書(動画)では83.0%が予算への関心の深まりを感じました。相談窓口の愛称では敷居の低さ、傾聴、秘密の保持がいずれも5割を超えて並び、子供・子育て支援総合計画では成長段階に応じた支援を求める声が44.8%で最も多くなりました。気候変動の影響として熱中症を挙げた子供は85.9%に達し、生成AIを利用している子供の32.4%は悩みごとの相談にも使っていると回答しています。
同時に、行政の発信が届いていない領域も明らかになりました。Tokyo中高生Webサイトを知っていた中高生は6.4%にとどまり、ヤングケアラーという言葉を知っている人の中でも、18歳以上の若者が含まれることを知っていたのは33.4%でした。モニターは応募による選任のパネルであり、関心の高い層に偏る可能性があることを踏まえると、実際の認知はさらに低い可能性もあります。設問ごとに対象と母数が異なるため、数値は誰を対象とした割合かを併せて読む必要があります。
特別区にとっての含意は、子供の意見を聴く仕組みを常設化し、全庁で共有し、反映の結果まで示すという設計の参照価値にあります。こども基本法第11条の要請は区にも及びますが、施策ごとに個別に意見を聴くだけでは、実施が一部の部署にとどまりがちです。誤飲・窒息への関心の高さ、熱中症の体感、居場所への期待、若者ケアラーへの周知不足、相談窓口に求められる条件、届いていない発信。都の調査が示したこれらの知見は、区が窓口と現場を持つ分野にこそ直結しています。都の結果を自区の施策に引きつけて読み、自区でも子供自身に尋ねてみることが、子供目線の政策づくりへの現実的な一歩になると考えられます。




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