【政府】第7期科学技術・イノベーション基本計画
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:内閣府「第7期科学技術・イノベーション基本計画」令和7年度
概要
2026年3月27日、政府は「第7期科学技術・イノベーション基本計画」(計画期間:2026~2030年度)を閣議決定しました。科学技術・イノベーション基本法に基づき5年ごとに策定される同計画は、日本の科学技術政策の最上位文書であり、今後5年間の研究開発投資や技術戦略の方向性を定めるものです。
第7期計画の最大の特徴は、政府研究開発投資の目標額を従来の30兆円から60兆円へ倍増させ、官民合わせた研究開発投資の総額を120兆円から180兆円へ引き上げたことにあります。さらに、基本計画史上初めてデュアルユース(軍民両用)技術の研究開発推進を明記し、「防衛産業」を国家戦略技術領域の一つに位置づけました。高市早苗内閣総理大臣は「新技術立国」を掲げ、科学技術を国の成長戦略・国家安全保障・外交力を支える中核に位置づけており、木原稔官房長官も「科学技術・イノベーションは国力の源泉」として計画の着実な実行を表明しています。
日本の研究力は深刻な低下傾向にあり、注目度の高い論文(Top10%補正論文数)の国際ランキングは2000年代の世界第4位から2021~2023年には第13位へ後退しました。研究開発費総額は世界第3位を維持するものの、伸び率は主要国と比べて小さく、とりわけ企業部門と大学部門の伸び率低迷が長年にわたって続いています。こうした危機的状況を背景に、第7期計画は「科学技術立国の再興」を第一の柱に据え、基礎研究の強化、若手研究者の支援、博士人材の育成、研究時間の確保など、研究力の根本的な立て直しを図る内容となっています。
特別区の職員にとって、同計画は単なる国の科学技術政策にとどまらず、スマートシティ推進、デジタル化、地域イノベーション・エコシステムの形成、防災・減災技術の社会実装など、基礎自治体の政策立案に直結する多くの要素を含んでいます。以下、計画の意義、歴史的経緯、現状データ、第6期からの主要変更点、そして特別区への政策的示唆を詳細に解説します。
第7期基本計画の意義
国家戦略としての科学技術政策の転換
第7期計画は、従来の科学技術政策の枠組みを大きく超え、経済安全保障・外交・防衛と科学技術を一体的に推進する「国家戦略としての科学技術政策」への本格的な転換を示しています。第6期計画がSociety 5.0の実現を中心理念に据え、社会変革のビジョンを描いたのに対し、第7期計画は地政学的リスクの高まりや技術覇権競争の激化を正面から受け止め、科学技術を「国力の源泉」として明確に位置づけました。
この転換の背景には、ロシアによるウクライナ侵略を契機とした国際秩序の動揺、米中間の技術覇権競争の先鋭化、そして新興技術が安全保障に与えるインパクトの増大があります。各国が技術を国家戦略の中心に据える中、日本も科学技術政策と国家安全保障戦略・外交政策との連携を強化し、戦略的かつ機動的に政策を実行する必要性が高まっています。
研究力低下への危機意識と「科学技術立国の再興」
第7期計画が「科学技術立国の再興」を第一の柱に掲げた背景には、日本の研究力の著しい低下があります。科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の「科学技術指標2024」によれば、日本のTop10%補正論文数の世界シェアは1990年代後半の約7%から2020年代には約2%台にまで低下し、世界ランキングも第4位から第13位へ後退しました。一方で中国は同期間に急速に順位を上げ、現在は米国を抜いて世界第1位となっています。
博士課程への進学者数も減少傾向が続いており、人口100万人当たりの博士号取得者数は、米国・ドイツ・韓国など主要国と比較して日本は著しく低い水準にあるとされています。さらに、大学教員の研究時間割合は2002年の46.5%から2018年には32.9%にまで減少しており(NISTEPの大学等における教員の職務活動状況調査より)、研究者が研究に専念できる環境の整備が喫緊の課題となっています。
投資規模の抜本的拡大
第7期計画では、政府研究開発投資の目標を5年間で60兆円(科学技術関係予算45兆円に加え、大学ファンドの運用益、財政投融資、研究開発税制等を含む)、官民合わせた研究開発投資の総額を180兆円と設定しました。これは第6期計画の政府30兆円・官民120兆円という目標からそれぞれ倍増・1.5倍増にあたります。
第6期計画期間中の実績をみると、政府研究開発投資は科学技術関係予算ベースで計43.6兆円(基金として計上され第7期期間中に執行されるものを含む)と、30兆円の目標を上回りました。一方、官民合わせた研究開発投資は4年連続で過去最高を更新したものの、2024年度までの合計は約86.3兆円にとどまり、120兆円の目標を大幅に下回っています。この乖離を踏まえ、第7期計画では多様な財源・政策ツールを活用し、投資を大幅に拡充する方針を打ち出しています。
歴史・経緯
科学技術基本法の制定と基本計画の変遷
日本の科学技術基本計画は、1995年に制定された科学技術基本法に基づき、1996年の第1期計画を皮切りに5年ごとに策定されてきました。2020年の法改正により「科学技術・イノベーション基本法」に改称され、イノベーション創出が法の目的に明記されるとともに、人文・社会科学の知見の活用が位置づけられました。
第1期から第5期までの流れ
第1期計画(1996~2000年度)は、政府研究開発投資の目標額を初めて17兆円と明示し、科学技術振興の基盤を整備しました。第2期計画(2001~2005年度)では21兆円の目標とともに、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野を重点推進分野に選定しました。第3期計画(2006~2010年度)は25兆円の投資目標を掲げ、「選択と集中」を基本方針として社会還元を重視しました。第4期計画(2011~2015年度)は東日本大震災を受けてレジリエンス強化を盛り込み、科学技術とイノベーション政策の一体化を進めました。第5期計画(2016~2020年度)は「Society 5.0」の概念を初めて提唱し、超スマート社会の実現に向けた科学技術イノベーションの方向性を示しました。政府研究開発投資の目標は26兆円でした。
第6期計画(2021~2025年度)の概要
第6期計画は、Society 5.0の実現を中心に据え、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会」「知と価値を創造し世界と協働する教育・人材育成」「一人ひとりの多様な幸せ(ウェルビーイング)が実現できる社会」を目指しました。政府研究開発投資は5年間で30兆円、官民合わせて120兆円を目標としました。デジタル社会の実現、カーボンニュートラルの推進、レジリエントで安全・安心な社会の構築、スマートシティの展開、スタートアップ・エコシステムの形成などが具体的な取組として掲げられました。
第7期計画策定の経緯
第7期計画の策定にあたっては、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)を中心に、有識者議員懇談会や関係府省との調整が重ねられました。2025年中に議論が本格化し、国際情勢の激変(ウクライナ侵略の長期化、米中技術覇権競争の深刻化、AI技術の爆発的発展など)を踏まえた計画の方向性が検討されました。そして2026年3月27日に閣議決定に至っています。
現状データ
研究開発費の国際比較
日本の研究開発費総額は近年の調査で世界第3位を維持していますが、その伸び率は他の主要国と比べて小さい状況が続いています。日本の4倍以上の額を投資する米国との差は拡大する一方であり、首位を争う中国との差も急速に広がっています。さらに、ドイツや韓国にも肉薄されつつある状況です。
とりわけ懸念されるのは、企業部門と大学部門の研究開発費の伸び率が長年にわたり低迷していることです。物価や人件費の上昇が続く中、研究開発投資の実質的な伸び率を上げていかなければ、日本の科学技術の国際的な存在感は将来的に埋没していく恐れがあります。
論文数と研究力の推移
日本の研究力を示す論文指標は深刻な低下傾向にあります。NISTEPの「科学技術指標2024」によれば、注目度の高い論文(Top10%補正論文数)の国際ランキングにおいて、日本は2000年代前半には世界第4位でしたが、2021~2023年の最新データでは第13位にまで後退しました。同期間に中国は順位を大幅に上げ、現在は世界第1位に立っています。論文総数においても日本は低迷しており、量・質の両面で国際競争力の低下が顕著です。
博士人材の状況
博士課程への進学者数は、2003年度の約1万8,000人をピークに減少傾向が続き、近年は約1万5,000人前後で推移しています(文部科学省「学校基本調査」より)。博士人材のキャリアパスの不透明さや処遇の低さが進学を阻害する要因として指摘されており、第7期計画ではこの問題への対策が重点的に盛り込まれています。
大学発ベンチャーの動向
大学発ベンチャーの設立数は増加傾向にあり、経済産業省の調査によると2023年度時点で累計設立数が大きく伸びています。VC等による投資額も2019年度時点で年間2,891億円・1,824件(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター「ベンチャー白書2020」より)と、エコシステムの成長が見られます。ただし、ユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場ベンチャー)の数は米国・中国と比較して日本は著しく少なく、スケールアップが課題として残っています。
研究者の研究時間
大学教員の研究時間割合は、2002年の46.5%から2008年に36.2%、2013年に35.0%、2018年には32.9%と一貫して低下しています(NISTEPの大学等における教員の職務活動状況調査より)。大学教員が教育・管理運営・社会サービス等に時間を割かれ、研究に専念できる環境が年々悪化していることを示すデータです。第7期計画では、教員の役割分担や大学内の会議の見直し、研究費の管理・使用に関するルールの改善等を通じて研究時間の確保を推進するとしています。
第6期から第7期への主要変更点
第7期計画における変更点は、特別区の職員を含む公務員が今後の政策立案において把握しておくべき最重要事項です。以下、第6期計画との比較において特に注目すべき変更点を詳述します。
計画の基本理念と構造の転換
第6期計画はSociety 5.0の実現を中心理念に据え、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会」「知と価値を創造し世界と協働する教育・人材育成」等のビジョンを掲げていました。これに対し、第7期計画は6本の柱(「科学技術立国の再興」「戦略的な重要技術の特定・育成」「国家安全保障との連動」「イノベーション・エコシステムの強化」「戦略的科学技術外交の推進」「推進体制・ガバナンスの改革」)を明確に設定し、より実行力を重視した構成に転換しています。Society 5.0の理念は引き続き背景として位置づけられていますが、計画の前面に出る形ではなくなりました。
研究開発投資目標の倍増
最も目を引く変更は、政府研究開発投資の目標額が30兆円から60兆円へ倍増されたことです。第6期計画では科学技術関係予算を中心に30兆円を目標としていましたが、第7期計画では科学技術関係予算目標45兆円に加え、大学ファンドの運用益による助成、財政投融資、研究開発税制等の多様な財源・政策ツールを駆使して60兆円を目指すとしています。官民合わせた研究開発投資の総額目標も120兆円から180兆円へ引き上げられました。これは第6期期間中に官民投資が86.3兆円にとどまり120兆円の目標を大幅に下回った反省を踏まえ、より意欲的かつ多角的な投資拡大策を講じるものです。
デュアルユース技術の明記(史上初)
第7期計画の最大の転換点の一つが、基本計画史上初めてデュアルユース(軍民両用)技術の研究開発推進を正面から明記したことです。第6期計画では「安全・安心の確保」の文脈で安全保障関連の研究に言及していたものの、デュアルユースという概念を正面から取り上げてはいませんでした。第7期計画では、民生技術と防衛技術の境界が曖昧になっている現実を踏まえ、デュアルユース技術の研究開発を国家として戦略的に推進する方針を明確にしました。高市内閣総理大臣も「新技術立国」の旗印の下でデュアルユース技術の研究開発推進を基本計画に初めて盛り込んだことを重要な施策転換として位置づけています。
「国家安全保障との連動」の新設
第6期計画では安全保障は「レジリエントで安全・安心な社会」の文脈に含まれていましたが、第7期計画では「国家安全保障との連動」を独立した柱として新設しました。科学技術・イノベーション政策と国家安全保障戦略の連携を制度的に強化し、重要技術の育成・保全と安全保障を一体的に推進する体制の構築を目指しています。具体的には、研究開発成果の大量破壊兵器等への転用防止の観点から技術流出対策を実施するとともに、重要技術分野への重点的な資源配分を行うとしています。
新興・基盤技術領域(11領域)と国家戦略技術領域(6領域)の新設
第7期計画では、重点技術分野の選定において大幅な見直しが行われました。第6期計画では「AI技術」「バイオテクノロジー」「量子技術」「マテリアル」を重点分野として掲げていましたが、第7期計画ではこれを再編・拡充し、「新興・基盤技術領域」として11領域(AI、バイオテクノロジー、量子技術、マテリアル、半導体、通信・ネットワーク、宇宙、海洋、エネルギー、環境、健康・医療)を設定しました。さらに、その中から特に国家として戦略的に取り組むべき技術として「国家戦略技術領域」6領域を選定しています。この中には基本計画史上初めて「防衛産業」が含まれており、安全保障と科学技術の一体化をより鮮明にしています。
「AI for Science」の新規概念
第7期計画では「AI for Science」(科学研究におけるAI活用)を新たな重要概念として導入しました。第6期計画でもAI研究開発の推進は掲げられていましたが、AI自体の開発に主眼が置かれていました。第7期計画では、AIを科学研究そのものの方法論として活用し、材料科学、創薬、気象予測、ゲノム解析など幅広い分野でAIが研究の質・速度を飛躍的に向上させる可能性に着目し、その推進を明確に位置づけています。
経済安全保障トランスフォーメーション(ES-X)
第7期計画では「経済安全保障トランスフォーメーション(ES-X)」という新しい概念が導入されました。これは経済安全保障推進法を基盤とし、重要物資のサプライチェーン強靱化、重要技術の育成・保全、基幹インフラの安全確保等を科学技術政策と一体的に推進する概念です。第6期計画にはこのような統合的な概念は存在しませんでした。
重要技術戦略研究所(仮称)の設置構想
第7期計画では、国家として戦略的に重要な技術領域を特定し、優先度合いを判断するための調査分析機能を強化するため、「重要技術戦略研究所(仮称)」の2026年中の設置が構想されています。CSTIの司令塔機能を補完し、各国の技術動向や日本の技術的優位性・脆弱性を分析する専門機関として位置づけられます。第6期計画にはこのような専門機関の設置構想はありませんでした。
科学技術外交の格上げ
第6期計画では国際連携は各施策の中に分散して記載されていましたが、第7期計画では「戦略的科学技術外交の推進」を独立した章(第6章)として新設しました。Science for Diplomacy(外交のための科学)とDiplomacy for Science(科学のための外交)の双方の視点から、同盟国・同志国との協働強化とグローバル・サウス諸国への科学技術協力の推進を一体的に進める方針が示されています。「デュアルトラック・アプローチ」として、同盟国・同志国との戦略的な連携と、グローバル・サウス諸国を含む各国との国際的な連携の両方を同時に進める枠組みが新たに導入されました。
研究セキュリティの強化
第6期計画でも研究のインテグリティ(研究公正)の確保は掲げられていましたが、第7期計画では「研究セキュリティ」をより広い概念として位置づけ、その強化を明確に打ち出しています。具体的には、技術流出防止、知財保護、投資審査、輸出管理等に関する国際的協力を推進しつつ、重要技術の保全・開発促進、サプライチェーンの強靱化・多様化、戦略的自律性・不可欠性の強化を図るとしています。国際共同研究の信頼性を向上させるため、産学官連携の中でリスクマネジメントを推進する方針も新たに盛り込まれました。
CSTIの司令塔機能の強化
第7期計画では、CSTIの司令塔機能をさらに強化し、研究開発投資の促進と国家安全保障との有機的連携の観点から、国家として戦略的に重要な技術領域を特定し、優先度合いを判断して政策体系を構築する役割が明確化されました。第6期計画でもCSTIの機能強化は掲げられていましたが、第7期計画ではより具体的に調査分析機能の強化や関係府省との連携深化が記述されています。
国立大学法人運営費交付金の大幅拡充
第7期計画では、国立大学法人等の基盤的経費である運営費交付金について、物価・人件費の上昇等を踏まえつつ基礎研究の充実等を行うため「大幅な拡充を図る」と明記しました。第5期中期目標期間(2028~2033年度)に向けて、教育研究をベースとした経費について物価等の変動に対応させる仕組みへの見直しにも言及しています。第6期計画でも基盤的経費の確保は掲げられていましたが、「大幅な拡充」という表現はより踏み込んだものとなっています。
広島AIプロセスの継続と「信頼できるAI」
第7期計画では、2023年のG7広島サミットで日本が主導した「広島AIプロセス」の成果を踏まえ、グローバル・サウス諸国を含む各国において安全・安心で「信頼できるAI」ガバナンス及びエコシステムを構築していくことが新たに盛り込まれました。AIガバナンスの国際的なルール形成において日本が主導的な役割を果たす方針が明確化されています。
政策立案の示唆
この取組を行政が行う理由
科学技術・イノベーション基本計画は、科学技術・イノベーション基本法に基づく政府の責務として策定されるものです。科学技術の振興は、経済成長、国際競争力の維持・向上、国民の安全・安心の確保、地球規模課題の解決など、広範な公共利益に直結する取組であり、市場原理のみでは最適な水準の研究開発投資が実現されない「市場の失敗」が存在することから、政府が主導的に投資目標を設定し、推進体制を整備する必要があります。
特に基礎研究は、成果が出るまでに長期間を要し、その恩恵が社会全体に広く波及する「公共財」としての性格が強いため、民間企業のみに委ねることは困難です。また、経済安全保障の観点から重要技術の流出防止やサプライチェーンの強靱化を図ることは、国家の安全保障に直結する政府固有の責務です。さらに、国際的な技術覇権競争が激化する中で、政府が戦略的な方向性を示し、官民の投資を誘導する役割はますます重要性を増しています。
行政側の意図
第7期計画における行政側の意図は、大きく分けて四点に集約されます。
第一に、日本の研究力の回復と科学技術立国の再興です。Top10%論文数の国際ランキング低下に象徴される研究力の衰退を食い止め、基礎研究の強化、若手研究者の育成・支援、博士人材の処遇改善等を通じて、日本の研究基盤を立て直すことが最優先課題として位置づけられています。
第二に、経済安全保障と科学技術の一体的推進です。デュアルユース技術の推進、国家戦略技術領域の設定、研究セキュリティの強化等を通じて、技術的優位性の確保と国家安全保障を同時に実現することが目指されています。
第三に、イノベーション・エコシステムの強化によるスタートアップの創出促進です。大学発ベンチャーの支援強化、Gap Fundの拡充、SBIR制度の推進等を通じて、研究成果の社会実装を加速し、経済成長につなげる意図があります。
第四に、国際社会における日本の科学技術的プレゼンスの向上です。科学技術外交を戦略的に展開し、同盟国・同志国との連携強化とグローバル・サウス諸国への協力を通じて、国際的なルール形成における日本の発言力を高めることが意図されています。
期待される効果
第7期計画の着実な実行により期待される効果は多岐にわたります。
研究力の回復と人材育成の面では、基盤的経費の大幅拡充や研究環境の改善により、日本の大学・研究機関の研究力が回復に向かうことが期待されます。博士人材の処遇改善やキャリアパスの多様化により、博士課程への進学者が増加し、中長期的にイノベーションの担い手となる高度人材の層が厚くなることが見込まれます。
経済成長とイノベーションの面では、官民合わせた研究開発投資180兆円の実現により、スタートアップの創出・成長が加速し、新産業の創出や既存産業の高度化が進むことが期待されます。AI for Scienceの推進により、創薬・材料科学・エネルギーなど幅広い分野で研究開発の効率が飛躍的に向上する可能性があります。
安全保障と技術優位性の面では、国家戦略技術領域への重点投資と研究セキュリティの強化により、日本の技術的優位性が確保・強化され、経済安全保障の基盤が整備されることが期待されます。
国際的地位の向上の面では、科学技術外交の戦略的展開により、国際的なルール形成における日本の発言力が高まり、グローバルな課題解決における日本のプレゼンスが向上することが見込まれます。
課題・次のステップ
第7期計画の実効性を確保するためには、いくつかの課題を克服する必要があります。
投資目標の達成に向けた財源確保が最大の課題です。第6期計画では官民合わせた研究開発投資が120兆円の目標に対し86.3兆円にとどまりました。第7期計画でさらに高い180兆円の目標を掲げる中、その達成に向けた具体的な財源確保策と民間投資を誘引する仕組みの構築が不可欠です。
デュアルユース技術の推進にあたっては、学術界との合意形成が重要な課題となります。日本学術会議は長年にわたり軍事研究に慎重な姿勢を示してきた経緯があり、基礎研究の自由と安全保障上の要請のバランスをどのように取るかについて、丁寧な議論と制度設計が求められます。
研究人材の確保・育成は中長期的な課題です。博士人材の処遇改善やキャリアパスの多様化は、制度改革だけでなく、産業界の意識改革や社会全体の価値観の変容を伴う取組であり、5年の計画期間を超えた継続的な取組が必要です。
CSTIの司令塔機能の実効性確保も課題です。重要技術戦略研究所(仮称)の設置は計画されていますが、各府省間の縦割りを超えた政策の一体的推進を実現するためには、CSTIの権限と実行力をどこまで強化できるかが鍵となります。
特別区への示唆
第7期計画は国の科学技術政策の最上位文書ですが、その内容は特別区の政策立案にも多くの示唆を与えるものです。
スマートシティ・デジタル化の推進
第7期計画は、スマートシティやデータ連携基盤の全国展開を引き続き推進する方針を示しています。特別区は人口密度が高く、都市課題(交通渋滞、高齢化、防災、環境)が集中するエリアであるため、スマートシティ関連の国の施策や補助事業を積極的に活用し、データ駆動型の行政サービス向上を図ることが有効です。都市OS(データ連携基盤)の導入やオープンデータの推進、AI・IoTを活用した行政DXの加速など、計画に沿った取組を進めることで国の支援を受けやすい環境を整備できます。
防災・減災技術の社会実装
第7期計画では、頻発化・激甚化する自然災害への対応として、先端ICTや人文・社会科学の知見を活用した総合的な防災力の発揮が掲げられています。特別区においても、首都直下型地震への備え、水害対策、感染症対応等に関連する国の研究開発成果や技術実証の成果を、防災計画やBCPに反映させることが重要です。SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)等のプラットフォームとの連携も検討に値します。
スタートアップ・エコシステムとの連携
第7期計画はスタートアップ支援を重点施策としており、大学・研究機関と地域の連携によるイノベーション創出が推進されます。特別区内には多くの大学や研究機関が立地しており、産学官連携による社会課題解決型のスタートアップとの協働や、オープンイノベーション拠点の活用、公共調達における新技術の積極的な導入など、エコシステムの一翼を担う取組を検討すべきです。
人材育成とSTEAM教育
第7期計画は博士人材の育成や理数教育の充実を強調しています。特別区の教育行政においても、プログラミング教育やSTEAM教育の充実、科学技術に関する区民向けリテラシー向上施策、区内の大学・研究機関と連携した子ども向け科学体験事業などを通じて、次世代の人材育成に貢献することが可能です。
経済安全保障への対応
第7期計画が経済安全保障を前面に出したことにより、地方自治体においても重要インフラの安全確保やサプライチェーンの把握、サイバーセキュリティの強化などが求められる場面が増えることが見込まれます。特別区においても、情報セキュリティ対策の高度化、公共調達における経済安全保障の視点の導入など、計画の趣旨を踏まえた対応を検討していくことが有益です。
国際連携と多文化共生
第7期計画は国際頭脳循環の推進や海外人材の受入れ強化を掲げています。特別区には多くの外国人研究者・留学生が居住しており、多文化共生の推進や外国人研究者・高度人材の生活環境の整備は、間接的に日本の科学技術力の強化に貢献する取組です。住居、教育、行政サービスの多言語化など、特別区ならではの施策が求められます。
カーボンニュートラルとグリーンイノベーション
第7期計画はグリーントランスフォーメーション(GX)とカーボンニュートラルの実現を引き続き重要課題として位置づけています。特別区においても、ゼロカーボンシティ宣言に基づく具体的な取組の推進、再生可能エネルギーの導入促進、建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化、EV充電インフラの整備など、計画の方向性に沿った環境施策を加速させることが重要です。
まとめ
第7期科学技術・イノベーション基本計画は、日本が直面する研究力の低下、地政学的リスクの高まり、技術覇権競争の激化という三重の危機に対し、科学技術政策を国家戦略の中核に据えて総合的に対応するための5年間の行動計画です。政府研究開発投資60兆円・官民合わせて180兆円という過去最大の投資目標、デュアルユース技術の初明記、国家安全保障との連動の新設、11の新興・基盤技術領域と6つの国家戦略技術領域の設定、科学技術外交の独立章としての格上げ、そしてCSTI司令塔機能の強化と重要技術戦略研究所(仮称)の設置構想など、第6期計画から大幅に踏み込んだ内容となっています。特別区の職員としては、同計画が示すスマートシティ・デジタル化、防災・減災技術、スタートアップ支援、人材育成、経済安全保障、カーボンニュートラルなどの方向性を自区の政策立案に反映させるとともに、国の各種施策・補助事業の動向を注視し、計画の趣旨に沿った施策を先行的に展開していくことが、今後5年間の行政運営において重要な意味を持ちます。科学技術とイノベーションが国力の源泉であるという認識は、国の政策のみならず基礎自治体の政策にも通底するものであり、住民に最も近い行政としての特別区が果たすべき役割は決して小さくありません。




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