07 自治体経営

施設使用料(受益者負担の適正化)

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(施設利用料を取り巻く環境)

  • 自治体が施設利用料(受益者負担の適正化)を行う意義は「行政サービスの公平性の確保」と「持続可能な行財政運営の実現」にあります。
  • 行政サービスは、道路や消防のように不特定多数の住民が受益するサービスと、特定の住民のみが利用するサービスに大別されます。前者の経費は主に税金で賄われるべきですが、後者については、サービスを受けない住民との公平性を確保するため、利用者(受益者)がサービスの提供に要する費用の一部を応分に負担する「受益者負担の原則」が地方自治法で認められています 1
  • 現在、東京都特別区を含む多くの自治体では、高度経済成長期に集中的に整備された公共施設が一斉に老朽化し、その維持管理・更新費用の増大が深刻な課題となっています。加えて、少子高齢化の進展による税収の伸び悩みや社会保障費の増加が、行財政運営を一層圧迫しています。このような状況下で、持続可能な行政サービスを提供し続けるためには、受益者負担の考え方を再整理し、施設利用料を適正化することが不可欠となっています。

意義

住民にとっての意義

負担の公平性の確保
  • 特定の住民のみが利用するサービスの費用を、その利用者から応分に徴収することで、サービスを利用しない住民が税金を通じて過度に負担することを防ぎます。これにより、納税者全体の負担の公平性が確保されます 。
  • 利用料の算定根拠を明確にすることで、料金設定の透明性が高まり、住民の行政に対する納得感と信頼の醸成につながります。
行政サービスの持続的提供
  • 適正な利用料収入は、施設の維持管理費や運営費の重要な財源となります。これにより、財政状況の悪化を理由としたサービスの質の低下や施設の閉鎖を防ぎ、将来世代にわたって安定的にサービスを提供することが可能になります 1

地域社会にとっての意義

民間活力との適切な役割分担
  • 公共施設の利用料を原価を無視して低廉に設定すると、同様のサービスを提供する民間事業者の経営を圧迫し、健全な市場競争を阻害する恐れがあります。原価を意識した適正な料金設定は、官民の適切な役割分担を促し、地域経済全体の活性化に寄与します 。
公共資産の有効活用促進
  • 利用料を無料または著しく低額に設定すると、一部の利用者による過剰な利用や、施設が十分に活用されない「空予約」などを招く可能性があります。適正な料金体系は、施設の効率的な利用を促し、限りある公共資産の価値を最大限に引き出すことにつながります。

行政にとっての意義

財政の健全化と自主財源の確保
  • 施設利用料は、税収や地方交付税に次ぐ重要な自主財源です。受益者負担の適正化を通じてこの財源を確保・拡大することは、歳入基盤を強化し、財政の健全性を高める上で極めて重要です 4
コスト意識の向上と経営努力の促進
  • 利用料算定の前提となる原価計算のプロセスは、行政が自らのサービス提供コストを正確に把握する機会となります。これにより、職員のコスト意識が向上し、施設の運営方法の見直しや業務効率化といった経営努力を促すインセンティブが働きます 。

(参考)歴史・経過

  • 1980年代~1990年代
    • 行政に経営視点を取り入れるNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の考え方が広まり、受益者負担の議論が活発化しました。バブル経済崩壊後の厳しい財政状況も、歳入確保策として利用料見直しの動きを後押ししました。
  • 2000年代
    • 地方分権一括法の施行(2000年)や三位一体の改革により、自治体の自己決定権が拡大する一方、財政的な自己責任も増大しました。
    • これを受け、多くの自治体で受益者負担に関する基本方針が策定され、利用料の算定基準や見直しのルールが定められ始めました。
    • 指定管理者制度の導入(2003年)により、公の施設の管理運営に民間事業者が参入し、利用料金制の採用など、より柔軟な料金設定が可能となりました 。
  • 2010年代
    • 総務省からの要請(2014年)を受け、全国の自治体で「公共施設等総合管理計画」の策定が義務付けられました。これにより、公共施設の老朽化の実態と将来の膨大な更新費用が可視化され、受益者負担の適正化が単なる公平性の問題ではなく、財政的な持続可能性を確保するための喫緊の課題として認識されるようになりました 。
  • 2020年代以降
    • 人口減少・超高齢社会が本格化し、社会保障費の増大が続く中で、限られた財源の効率的な配分が最重要課題となっています。
    • DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展に伴い、需要に応じて価格を変動させる「ダイナミックプライシング」など、新たな料金設定手法の導入可能性も検討され始めています。

施設利用料に関する現状データ

歳入に占める使用料・手数料の現状
  • 東京都特別区の歳入構造を見ると、基幹収入である区税は景気変動の影響を受けやすい性質があります。例えば、令和4年度決算では特別区民税が前年度比4.7%増となりましたが、令和3年度は新型コロナウイルス感染症対策の給付事業等で国・都支出金が一時的に増加したものの、令和4年度には7.6%減となるなど、外部からの財源は不安定です。
  • このような状況下で、安定的かつ自主的な財源である使用料・手数料の役割は相対的に高まっていますが、歳入全体に占める割合は依然として低い水準にあります。
公共施設の老朽化と更新費用の増大
  • 特別区が保有する公共施設の多くは、建設から30年以上が経過し、一斉に大規模改修や建替えの時期を迎えています。これに伴う将来の財政負担は、極めて深刻なレベルに達しています。
    • 客観的根拠:
      • 練馬区の試算では、今後30年間に必要となる公共施設(建物)の改修・改築費用は約6,450億円に上り、年平均で約215億円が必要となります。これは過去10年間の平均費用(約46億円)の約4.7倍に相当します。
      • (出典)練馬区「練馬区公共施設等総合管理計画」平成29年
    • 客観的根拠:
    • 客観的根拠:
      • 新宿区、渋谷区、文京区、江東区、台東区など、全ての特別区が「公共施設等総合管理計画」を策定または改定し、財政負担の軽減・平準化を最重要課題の一つとして掲げています 。
人口構造の変化(高齢化・障害者数の動向)
  • 人口構造の変化は、行政サービスの需要と供給の両面に大きな影響を与え、受益者負担のあり方を考える上で無視できない要素です。特に高齢者や障害者向けの減免制度は、利用料収入に直接影響します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の令和7年版「高齢社会白書」によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢化率は29.3%(令和6年10月1日現在)に達し、今後も上昇を続け、令和52(2070)年には2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。特に75歳以上人口の増加が顕著です。
      • (出典)内閣府「令和7年版高齢社会白書」令和7年
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の令和7年版「障害者白書」では、障害者の社会参加を支えるための生活支援、保健・医療、バリアフリー環境の整備といった多岐にわたる施策が報告されています。これらの施策の多くは公共施設の利用を前提としており、施設利用料の減免措置などを通じて受益者負担の議論と密接に関連します。
      • (出典)内閣府「令和7年版障害者白書」令和7年

課題

住民の課題

料金設定の不透明性と硬直性
  • 多くの自治体では、利用料がどのような経費(原価)に基づいて、どのような考え方で算定されているのかが住民に十分に伝わっていません。また、一度設定された料金が長期間見直されず、需要の変動や施設の利用実態を反映していないケースが多く見られます。
受益と負担の不均衡
  • 施設の性質やサービス内容に見合わない料金設定は、利用者と非利用者との間に不公平感を生じさせます。特に、本来は利用者が応分に負担すべき選択的なサービス(個人の趣味や娯楽に関するもの)の費用が、過度に税金で賄われている状況は問題視されがちです。
複雑な減免制度
  • 高齢者、障害者、子どもなどを対象とした減免制度は、社会的配慮の観点から重要ですが、制度が複雑化しすぎると、対象者にとって分かりにくく、利用しづらいものになります。また、自治体ごと、施設ごとに基準が異なり、公平性を欠く場合もあります。
    • 客観的根-拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 本来支援を受けるべき人が制度を利用できず、行政サービスの公平性が実質的に損なわれます。

地域社会の課題

公共施設の低利用・非効率な活用
  • 需要と無関係に一律で低廉な料金設定は、施設の効率的な利用を妨げる一因です。平日の昼間など利用者が少ない時間帯は空いたままで、土日や夜間など需要が集中する時間帯は予約が取れないといった非効率が発生し、地域全体の機会損失につながっています。
    • 客観的根拠:
      • 多くの自治体の料金算定において「稼働率」が考慮されていますが、稼働率が低い場合でも利用者の負担が過大にならないよう、一定の稼働率(例:50%)を仮定して計算するなどの補正が行われることがあります。これは、裏を返せば低稼働が常態化している施設が存在することを示唆しています。
      • (出典)箱根町「受益者負担の適正化に関する基本方針」令和3年 6
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 税金で維持される貴重な地域資源が有効活用されず、機会損失が生じ続けます。
民間事業者の事業機会の圧迫
  • 公営のスポーツ施設や貸会議室などが市場価格とかけ離れた低料金で提供されると、近隣で同様のサービスを提供する民間事業者の経営を圧迫する可能性があります。これにより、地域におけるサービスの多様性が損なわれ、健全な経済活動が阻害される恐れがあります。

行政の課題

不十分な原価回収率と財源不足
  • 多くの公共施設では、利用料収入が施設の維持管理費(光熱水費、清掃委託料、小規模修繕費など)すら賄えていないのが実情です。建物の減価償却費といった資本費(フルコスト)まで含めると、原価回収率は極めて低くなり、施設の更新費用を内部財源で確保することはほぼ不可能な構造になっています。
旧態依然とした料金算定・改定プロセス
  • 料金改定が数年に一度のイベントとなり、その都度大きな政治的・行政的コストを要するため、本来必要な見直しが先送りされがちです。また、算定根拠が過去の料金からの引き上げ率や、近隣自治体との横並び意識に依存しているケースも少なくありません。
全庁的な統一基準の欠如
  • 施設を所管する部署ごとに料金算定の考え方や減免基準が異なり、全庁的な統一性が確保されていない場合があります。これにより、類似の施設であるにもかかわらず料金水準が大きく異なるといった不均衡が生じ、住民の混乱や不公平感を招いています。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。将来的な財政負担の軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 政府資料や他の自治体の先進事例等、エビデンスに基づく効果が示されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 受益者負担の適正化は、単なる料金改定にとどまらず、行政経営改革の一環として総合的に推進する必要があります。そこで、「①算定基準の標準化と透明化」「②運営手法の高度化」「③料金体系の柔軟化」という3つの段階的かつ相互補完的な支援策を提案します。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:統一的な算定基準の策定とフルコスト情報の公開」**です。これは全ての議論の土台となるものであり、公平性・透明性を確保する上で不可欠です。
  • 次に、**「支援策②:指定管理者制度の高度化と成果連動型インセンティブの導入」**により、運営の効率化とサービス向上を促します。
  • 最後に、**「支援策③:ダイナミックプライシング等、柔軟な料金体系の導入検討」**を通じて、需要に応じた最適な資源配分と収益最大化を目指します。これらを有機的に連携させることで、持続可能な公共施設マネジメントを実現します。

各支援策の詳細

支援策①:統一的な算定基準の策定とフルコスト情報の公開

目的
主な取組①:フルコスト算定ルールの標準化
  • 施設の維持管理に必要な経費(物件費、維持補修費、委託料等)に加え、管理に携わる職員の「人件費」、さらに建物の「減価償却費」を含めた「フルコスト」を原価として算定するルールを全庁的に統一します。
  • これにより、施設を維持・更新していくために本来必要なコストを正確に把握し、料金算定の客観的な基礎とします。
主な取組②:施設の性質に応じた負担割合の明確化
  • 全施設を「必需性(行政が提供すべき度合い)」と「市場性(民間でも提供可能か)」の2軸で分類し、類型ごとに受益者負担割合(例:0%、25%、50%、75%、100%)を明確に定めます。
  • 例えば、市民生活に不可欠で代替性のないサービス(例:図書館の閲覧)は公費負担率を高く(受益者負担率0%)、個人の選択性が高く民間サービスと競合する施設(例:スポーツ施設の専用利用)は受益者負担率を高く(例:75%~100%)設定します。
主な取組③:算定結果と料金案の積極的な情報公開
  • 各施設のフルコスト、受益者負担割合、それに基づいて算定された「あるべき料金」と「現行料金」の比較、改定案などを、区のウェブサイトや広報誌で分かりやすく公開します。
  • パブリックコメントを実施し、住民意見を丁寧に聴取するプロセスを設けることで、合意形成を図ります。
主な取組④:激変緩和措置と定期的な見直しサイクルの設定
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公共施設維持管理・更新に係る財源不足額の削減率:30%削減(対計画当初)
    • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期財政推計と実績の比較分析
  • KSI(成功要因指標)
    • フルコスト算定ルールの適用施設率:100%
    • データ取得方法: 資産管理所管部署による全庁調査
    • 料金改定に関する住民説明会・パブコメ参加者数:対前回改定比 20%増
    • データ取得方法: 各施設所管課からの報告集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 利用料の原価回収率(フルコストベース):平均30%達成(施設類型により目標値は変動)
    • データ取得方法: 財務会計システムからのデータ抽出・分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 統一基準に基づく料金改定を実施した施設数:全有料施設の95%
    • データ取得方法: 資産管理所管部署による進捗管理
    • 料金算定根拠をウェブサイトで公開している施設率:100%
    • データ取得方法: 広報・広聴所管部署によるウェブサイト掲載状況の確認

支援策②:指定管理者制度の高度化と成果連動型インセンティブの導入

目的
  • 指定管理者制度の運用を改善し、事業者の経営努力がサービスの質の向上と利用促進に結びつくインセンティブ設計を導入することで、施設の価値を最大化します。
  • 従来の仕様規定(仕様書どおりに業務を行う)から、成果(アウトカム)を重視する契約へと転換し、官民連携の効果を高めます。
主な取組①:利用料金制の積極的導入とインセンティブ設計
  • 原則として、利用料収入が見込める全ての施設で「利用料金制」を導入し、指定管理者の収入と経営努力が直結する仕組みを構築します。
  • 指定管理料の算定において、利用率の向上や利用者満足度の改善といった成果指標(KPI)を設け、達成度に応じてインセンティブ(報奨金)やペナルティを課す「成果連動型」の支払いを一部導入します。
主な取組②:PFS/SIB(成果連動型民間委託)のモデル事業実施
  • 健康増進施設や文化施設など、特定の社会的成果(例:健康寿命の延伸、文化活動参加率の向上)が期待される施設運営において、PFS(Pay for Success)/SIB(Social Impact Bond)手法の導入を検討します。
  • まずモデル事業として1〜2施設で試行し、効果を検証した上で他施設への展開を検討します。
    • 客観的根-拠:
      • 八王子市(がん検診受診率向上)や神戸市(糖尿病重症化予防)など、PFSはヘルスケア分野を中心に国内でも導入事例が増加しています。この手法を公共施設の運営に応用することで、財政支出の効率化と社会的インパクトの創出が期待できます。
      • (出典)(https://www.moj.go.jp/content/001345490.pdf)
      • (出典)(https://www8.cao.go.jp/pfs/202402kokkousyoutebiki.pdf)
主な取組③:モニタリング指標の共通化とデータ共有
  • 指定管理者と区が共有するモニタリング指標(利用者数、稼働率、利用者満足度、収支状況など)を標準化し、定期的な報告と評価の仕組みを確立します。
  • 収集したデータを指定管理者と共有し、サービスの改善や新たな企画立案に活用できるよう支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 指定管理施設の利用者満足度:85%以上
    • データ取得方法: 各施設で実施する利用者アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 利用料金制を導入している指定管理施設率:80%以上
    • データ取得方法: 資産管理所管部署による契約内容の確認
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 指定管理施設の平均稼働率:対前年度比 5%向上
    • データ取得方法: 指定管理者からの定期報告データ(施設予約システム等)
    • 指定管理料に占めるインセンティブ報酬の割合:平均5%
    • データ取得方法: 財務会計システムからの支出データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 成果連動型インセンティブを導入した契約件数:年間5件
    • データ取得方法: 契約担当部署における契約実績の集計
    • PFS/SIBモデル事業の実施件数:1件
    • データ取得方法: 政策企画部門による事業進捗管理

支援策③:ダイナミックプライシング等、柔軟な料金体系の導入検討

目的
  • 需要と供給に応じて料金を変動させるダイナミックプライシングや、時間帯別料金などを導入し、施設の稼働率を平準化・最大化します。
  • 利用者の多様なニーズに応え、新たな収益機会を創出することで、施設の財政的自立性を高めます。
主な取組①:需要予測に基づくダイナミックプライシングの導入
  • 体育館、ホール、駐車場など、需要の変動が大きい施設を対象に、過去の利用実績データや周辺イベント情報などをAIで分析し、需要に応じて料金を変動させるダイナミックプライシングを試験的に導入します。
  • 需要の低い時間帯は料金を下げて利用を促し、需要の高い時間帯は料金を上げることで収益を最大化し、混雑を緩和します。
主な取組②:時間帯・曜日別料金の精緻化
  • ダイナミックプライシングの導入が難しい施設においても、平日の昼間、夜間、土日祝日などで明確な料金差を設ける「ピークロードプライシング」を徹底します。
  • これにより、需要をオフピーク時間帯へ誘導し、稼働率の平準化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区では、公共施設の貸室料金について「午前」「午後」「夜間」で異なる料金比率(例:午後を100%とすると夜間は125%)を設定しており、需要に応じた料金設定の考え方が既に一部で取り入れられています。
      • (出典)新宿区「新宿区公共施設等総合管理計画」平成29年
主な取組③:市外利用者料金の適正化
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 対象施設の利用料収入:対前年度比 10%増
    • データ取得方法: 財務会計システムからの収入データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 施設のピーク時とオフピーク時の稼働率格差:20%縮小
    • データ取得方法: 施設予約システムの利用時間帯別データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • オフピーク時間帯(平日昼間等)の利用率:対前年度比 15%向上
    • データ取得方法: 施設予約システムの利用時間帯別データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ダイナミックプライシング導入施設数:3施設
    • データ取得方法: 資産管理所管部署による導入実績の集計
    • 時間帯・曜日別料金を導入している施設率:90%以上
    • データ取得方法: 各施設所管課への調査

先進事例

東京都特別区の先進事例

中野区「全庁統一基準による使用料見直しとスポーツ施設への新たな軽減策」

  • 中野区は、全庁的な「施設使用料の見直し方針」を策定し、公平性と透明性の高い料金体系の構築に取り組んでいます。原価算定に減価償却費を含める一方、区民全体の財産である点を考慮し、その半額を控除する独自の調整を加えています。また、施設の性質に応じて負担割合を0%、50%、70%、100%の4段階に設定し、メリハリのある料金体系としています。特に、東京2020大会を契機としたスポーツ施設の半額措置を終了する代わりに、恒久的な50%減額措置を新たに導入し、利用者の負担に配慮しつつ、受益者負担の適正化を進めています。
    • 客観的根拠:
      • 見直し方針では、原価算定方法、性質別負担割合、引き上げ上限1.5倍(一部2倍)の激変緩和措置などが具体的に示されています。スポーツ施設については、利用者の負担率を70%から50%に見直した上で、さらに料金を半額にする軽減策を講じています。
      • (出典)中野区「施設使用料の見直し方針について」令和6年 5

新宿区「公共施設等総合管理計画に基づく受益者負担の適正化」

  • 新宿区は「公共施設等総合管理計画」の中で、受益者負担の適正化を明確に位置づけています。基本方針として、①施設の性質等を踏まえたコストへの減価償却費の算入検討、②現在無料の施設への利用料金導入の検討、③導入済み施設の料金改定の検討、を掲げています。特に、施設を「非市場性・必需性」から「市場性・選択性」までの4象限に分類し、負担割合を0%、50%、100%と明確に設定している点が特徴です。この客観的な基準に基づき、定期的に料金見直しを行うことで、財政の健全化と効果的・効率的な施設管理を目指しています。
    • 客観的根-拠:

世田谷区「全区的な施設使用料の見直しと条例改正」

  • 世田谷区は、将来にわたる区民サービスの維持・発展を目的として、全区的な施設使用料の見直しを実施し、令和7年第一回区議会定例会で関連条例の改正を可決しました。この取り組みは、特定の施設だけでなく、区が所管する多くの施設を対象とした包括的な見直しであり、受益者負担の適正化を全庁的に推進する強い意志を示すものです。具体的な改定内容や対象施設を区のウェブサイトで公開し、住民への丁寧な情報提供を行っています。

全国自治体の先進事例

恵那市「子育て支援・高齢者支援と連動した使用料・減免制度の見直し」

  • 岐阜県恵那市は、単なるコスト削減や料金引き上げに留まらず、「第2次恵那市総合計画」の理念に基づき、政策目的と連動させた使用料見直しを行いました。具体的には、子育て世帯の経済的負担を軽減するため「18歳以下の団体」の利用料を免除する一方、健康寿命の延伸を図るため「75歳以上の者が半数以上いる団体」の利用も免除対象としています。減免制度を政策誘導のツールとして戦略的に活用し、市民活動の活性化を図りながら受益者負担の公平性を追求している点が特徴です。

岩手県紫波町「官民連携(PPP)による公民複合施設の整備・運営(オガールプロジェクト)」

参考資料[エビデンス検索用]

国・政府機関
東京都・特別区
その他自治体・研究機関

まとめ

 東京都特別区が直面する公共施設の大量更新と厳しい財政状況を踏まえると、受益者負担の適正化は避けて通れない喫緊の経営課題です。その推進には、減価償却費を含むフルコストに基づいた統一的・透明性の高い算定基準の確立を土台とし、指定管理者制度への成果連動型インセンティブの導入による運営の高度化、さらにはダイナミックプライシング等の柔軟な料金体系の導入による収益機会の最大化という、多角的なアプローチが求められます。これらの施策は、単なる歳入確保に留まらず、行政サービスの公平性を担保し、官民の適切な役割分担を促し、持続可能な地域社会を次世代に引き継ぐための重要な改革です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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