07 自治体経営

行政手続きのオンライン化

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(行政手続きのオンラはじめに

概要(行政手続きのオンライン化を取り巻く環境)

  • 自治体が行政手続きのオンライン化を行う意義は「住民の利便性向上によるウェルビーイングの実現」と「行政運営の抜本的な効率化による持続可能なサービス提供体制の構築」にあります。
  • 行政手続きのオンライン化とは、従来、区役所の窓口等で行われていた各種申請、届出、証明書発行といった手続きを、スマートフォンやパソコンを通じて、いつでも、どこからでも行えるようにする取り組みです。
  • これは単に紙の申請書をデジタル形式に置き換えるだけでなく、デジタル技術を活用して行政サービス全体のあり方を変革し、住民一人ひとりのニーズに合った、より質の高いサービスを提供することを目的としています。
  • 特に、人口が集中し多様な住民が暮らす東京都特別区においては、国の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」と歩調を合わせ、全ての住民がデジタル化の恩恵を享受できる、人に優しいデジタル化の実現が急務となっています。

意義

住民にとっての意義

24時間365日、場所を問わない利便性の向上
  • 区役所の開庁時間に縛られることなく、夜間や休日でも自宅や職場から手続きが可能になります。
  • これにより、窓口への移動時間や待ち時間が削減され、住民の貴重な時間を節約できます。
    • 客観的根拠:
      • デジタル庁や総務省は、オンライン化の最大のメリットとして、時間や場所の制約を受けない利便性の向上を挙げています。
      • (出典)デジタル庁「行政手続のオンライン化」令和7年度
      • (出典)総務省「デジタル化の推進が地域社会・経済に与える影響に関する調査研究」令和5年度
手続きの簡素化と時間短縮
プッシュ型・ワンストップサービスの実現
  • マイナポータルを通じて、個々の状況に応じた利用可能な行政サービス(例:子育て支援給付金)のお知らせが届く「プッシュ型」支援が可能になります。
  • 引越しや死亡・相続など、複数の機関にまたがる手続きを一度で済ませられる「ワンストップサービス」が実現し、住民の負担が大幅に軽減されます。

地域社会にとっての意義

デジタル・インクルージョンの促進
  • 適切な支援策と組み合わせることで、これまで物理的な制約(高齢、障害、育児など)により区役所への来庁が困難だった人々にとって、新たな行政サービスのアクセス手段を提供できます。
  • 全ての住民がデジタル社会に参加できる基盤を構築することは、共生社会の実現に不可欠です。
地域経済の活性化
  • 事業者向けの許認可申請や補助金申請手続きがオンラインで迅速化されることで、企業の事業活動における行政手続きの負担が軽減されます。
  • これにより、新規創業や事業拡大が促進され、地域経済の活性化に繋がります。

行政にとっての意義

業務の抜本的な効率化
  • 紙媒体の受付、内容確認、データ入力、保管といった手作業が大幅に削減されます。
  • これにより創出された人的資源を、より専門的な相談業務や企画立案など、付加価値の高い業務へ再配分することが可能になります。
    • 客観的根拠:
データ駆動型行政(EBPM)の基盤構築
  • オンラインで集積された申請データは、政策立案や効果検証のための貴重な資源となります。
  • どのような住民が、どのサービスを、いつ利用しているかをデータで分析することで、より効果的で客観的根拠に基づく政策立案(EBPM)が可能になります。
行政コストの削減
  • 申請用紙の印刷費、郵送費、書類の保管スペースや管理コストなどが削減されます。
  • 中長期的には、業務効率化による人件費の抑制にも繋がります。

(参考)歴史・経過

  • 行政手続きオンライン化の取り組みは、20年以上にわたる試行錯誤の歴史を経て、現在の形に至っています。この変遷は、単なる技術導入から、利用者の視点を重視するアプローチへと成熟していく過程を示しており、今後の政策立案において重要な示唆を与えます。
2001年:e-Japan戦略
  • 「2003年度までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」という高い目標を掲げ、オンライン化の幕開けとなりました。
  • しかし、利用者の利便性よりも「オンラインで提供すること」自体が目的化し、利用率が伸び悩むという課題に直面しました。
2006年:IT新改革戦略
  • e-Japan戦略の反省を踏まえ、オンライン化する手続きの数を追うのではなく、利用率の向上へと方針を転換しました。
  • 利用頻度の高い手続きに重点化し、「2010年度までにオンライン利用率50%以上」という具体的な目標を設定しました。これは、供給側の視点から需要側の視点へと移行する重要な転換点でした。
2016年:官民データ活用推進基本法
2019年:デジタル手続法
2021年:デジタル庁発足
  • 国のデジタル改革を強力に推進する司令塔として設置されました。
  • 自治体情報システムの標準化・共通化や、マイナンバーカードの普及促進など、国全体のデジタル基盤整備を主導しています。
    • (出典)(https://note.com/polipoli_info/n/n2268850520e9)
2023年以降:デジタル社会の実現に向けた重点計画

行政手続きのオンライン化に関する現状データ

  • 行政手続きのオンライン化は、国全体のデジタル戦略の中核として急速に進展しています。特にマイナンバーカードの普及を起爆剤として、関連サービスの利用者数は飛躍的に増加しています。しかし、その進捗は手続きの種類や地域によって大きな差があり、量的な拡大と質的な課題が混在しているのが現状です。
全体的なオンライン化率の進展
マイナンバーカードの普及と利用の急増
マイナポータルの利用者数の飛躍的増加
住民の利用状況と意識の格差
  • 行政側で「オンライン化」された手続きの割合(オンライン化率)は高い水準にある一方で、住民が実際にオンラインで手続きを行う割合(オンライン利用率)は、手続きの種類によって極端な差が見られます。この「化率」と「利用率」のギャップが、現在の大きな課題を示唆しています。
  • 利用率のばらつき: 例えば、世田谷区の令和5年度データでは、「文化・スポーツ施設等の利用予約」や「道路占用許可申請」のオンライン利用率は100%である一方、「児童手当等の認定請求」は0.4%、「妊娠の届出」は0.6%と、極めて低い水準に留まっています。
    • この差は、手続きの性質に起因すると考えられます。施設予約のように頻繁に行われ、内容が単純な手続きはオンラインとの親和性が高い一方、児童手当や妊娠届のようなライフイベントに関わる、あるいは説明や相談を伴う可能性がある手続きでは、住民が依然として対面の窓口を好む傾向がうかがえます。
    • (出典)世田谷区「行政手続等に係るオンライン利用状況」令和6年
  • 満足度の課題: 東京都が実施した調査では、オンライン手続きの利点として「24時間申請可能」(82.4%)や「手続きにかかる時間の短縮」(78.2%)が高く評価される一方、課題として「システムの使いやすさ」(43.7%)や「必要情報の見つけやすさ」(38.2%)の満足度が低いことが明らかになりました。

課題

住民の課題

デジタルデバイドの深刻化(高齢者・障害者)
  • 行政サービスのデジタル化が加速する一方で、スマートフォンやインターネットを使いこなせない人々が、必要な情報やサービスから取り残される「デジタルデバイド(情報格差)」が深刻な課題となっています。特に高齢者や障害を持つ人々への配慮が不可欠です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「令和6年通信利用動向調査」によると、個人のスマートフォン保有率は全体で80.5%と高い水準ですが、年齢が上がるにつれて保有率は低下する傾向にあります。
      • 内閣府の調査では、70歳以上の高齢者がスマートフォン等を利用しない理由として、「自分の生活には必要ないと思っている」(52.3%)、「どのように使えばよいかわからない」(42.4%)が上位を占めており、機器の有無だけでなく、利用意欲やスキルの面での障壁が大きいことが示されています。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%89%E5%AF%BE%E7%AD%96/)
      • 国は、令和7年版高齢社会白書および障害者白書においても、情報アクセシビリティの確保を重要な政策課題として位置づけており、この問題の重要性を認識しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政サービスのデジタル化が進むほど、情報弱者が不可欠な情報や支援から取り残され、社会的な孤立が深まります。
システムの使いにくさと信頼性への不安
  • 多くの住民がオンライン手続きシステムの操作性に不満を抱いています。目的の手続きにたどり着けない、入力項目が多くて分かりにくい、といった「使いにくさ」が利用の大きな障壁となっています。
  • また、相次ぐマイナンバーカード関連のトラブル報道などもあり、個人情報の漏洩や不正利用に対する漠然とした不安感が、オンラインでの手続きを躊躇させる一因となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 信頼性と利便性の欠如はオンラインチャネルの利用率を低迷させ、デジタル化への投資効果を著しく損ないます。

地域社会の課題

中小企業・地域コミュニティのデジタル対応の遅れ
  • デジタル化の波は、地域社会の隅々まで均等に及んでいるわけではありません。特に、地域経済を支える小規模事業者や、地域の共助機能の中核を担う町会・自治会などでは、デジタル対応の遅れが顕著です。
  • これにより、行政からの重要な情報(補助金、災害情報など)が届きにくくなったり、行政手続きの効率化の恩恵を受けられなかったりする格差が生じています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域内でのデジタル格差が固定化し、情報や行政サービスへのアクセスに基づく社会経済的格差が拡大します。

行政の課題

手続きごとの利用率の極端な格差と「やったふり」のオンライン化
  • 行政側が提供するオンライン手続きの数(オンライン化率)は増えているものの、実際に住民に利用されている手続きは一部に限られ、多くが「塩漬け」状態になっているという実態があります。
  • これは、住民のニーズや利用シーンを考慮せず、単に紙の様式をウェブ上に配置しただけの「やったふり」のオンライン化が横行していることを示唆しています。真の業務改革(BPR)を伴わないデジタル化は、効果が限定的です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 形骸化したオンライン化は、行政資源の無駄遣いであると同時に、住民の期待を裏切り行政への不信感を増大させます。
デジタル人材の圧倒的な不足と組織文化
  • 高品質なデジタルサービスを企画・開発・運用するためには、UI/UXデザイナー、データサイエンティスト、サービスデザイナーといった専門人材が不可欠ですが、多くの自治体でこうした人材が圧倒的に不足しています。
  • また、前例踏襲を重んじ、失敗を恐れる硬直的な組織文化が、アジャイルな開発や継続的なサービス改善といったDXに不可欠な取り組みを阻害する要因となっています。
    • 客観的根拠:
      • 国が策定した「自治体DX推進計画」においても、推進上の課題として「組織体制・人材がいない」という実情が明確に指摘されています。
      • 全国の自治体において生成AIの利用意欲は高まっていますが、それを戦略的に活用し、業務改革に繋げられる専門人材は極めて限られています。
        • (出典)(https://graffer.jp/govtech/articles/govtech-digitalization-report-2024)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 内製化能力の欠如により外部ベンダーに過度に依存し、コスト増大と、住民ニーズに迅速に対応できない硬直的なシステムを生み出します。
縦割り行政によるデータ連携の阻害
  • 多くの自治体では、各部署が個別のシステムを管理・運用しており、組織の壁がデータの壁となっています。
  • この「縦割り行政」の構造が、部署をまたいだデータの連携を妨げ、住民に何度も同じ情報の提出を強いるなど、「ワンスオンリー」や「コネクテッド・ワンストップ」の実現を困難にしています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 縦割り構造が温存される限り、住民は「たらい回し」にされ続け、行政サービスの全体最適化は実現不可能です。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • ※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の資産(マイナンバーカード基盤等)を最大限活用できる施策の優先度を高めます。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、デジタルデバイドを助長しない施策を優先します。一過性で終わらない持続的な仕組みを高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や先進自治体の事例等で、効果が実証されている、あるいは強く示唆されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 行政手続きのオンライン化を真に成功させるためには、「①サービスの抜本的改善」「②利用者の徹底的な支援」「③行政組織の変革」という3つの要素を一体的に進める「三位一体改革」が不可欠です。これらは相互に関連しており、どれか一つが欠けても改革は頓挫します。
  • 最優先(Priority 1):支援策① 徹底した利用者中心のサービス設計とBPR
    • どんなに優れた支援体制や組織があっても、提供するサービス自体が使いにくければ誰も利用しません。全ての努力の土台となるため、最優先で取り組むべきです。住民の満足度に直結し、即効性と波及効果が最も高い施策です。
  • 優先(Priority 2):支援策② デジタル・インクルージョン推進プログラム
    • 高品質なサービスを開発すると同時に、それを利用できない人々を支援することは、公平性の観点から絶対条件です。支援策①と両輪で、並行して強力に推進する必要があります。
  • 中長期的(Priority 3):支援策③ DXを牽引する行政組織への変革
    • 組織文化の変革や人材育成には時間を要しますが、これなくして持続可能なDXは実現できません。支援策①②を推進しながら、中長期的な視点で着実に土台を築いていくべき施策です。

各支援策の詳細

支援策①:徹底した利用者中心のサービス設計とBPR(業務改革)

目的
    • 目的を「オンライン化率」の向上から、「オンライン利用率」と「住民満足度」の向上へと転換します。
    • 全てのオンライン手続きを「簡単、便利、ストレスフリー」なものへと作り変えることを目指します。
主な取組①:UI/UXデザイン原則の策定と全手続きへの適用
    • スマートフォンでの利用を第一に考える「モバイルファースト」の設計思想を徹底します。
    • UI/UX(利用者インターフェース/利用者体験)の専門家監修のもと、全区で統一された「オンライン手続きデザインガイドライン」を策定します。
    • ガイドラインに基づき、入力フォームの項目数、ボタンの配置や色、説明文言などを標準化し、一貫性のある使いやすいサービスを提供します。
      • 客観的根拠:
        • 渋谷区の事例では、UI/UXを改善した結果、オンライン申請率が改善前の32.7%から52.3%へと大幅に上昇し、住民満足度も向上したという成果が報告されています。
        • (出典)(https://ai-government-portal.com/%E4%BD%8F%E6%B0%91%E5%90%91%E3%81%91%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E7%94%B3%E8%AB%8B%E3%81%AE%E6%8B%A1%E5%85%85%E3%81%A8%E5%88%A9%E7%94%A8%E4%BF%83%E9%80%B2/)
主な取組②:手続きのオンライン完結とワンスオンリーの徹底
    • マイナポータルが提供するAPI(外部連携機能)と積極的に連携し、マイナンバーカードによる本人確認後、氏名・住所・生年月日・性別の基本4情報を申請フォームに自動入力することを標準機能とします。
    • 添付書類の原則撤廃を目指し、行政内部のシステム間で情報を連携させる「バックオフィス連携」を強化します。
主な取組③:「書かない・待たない・行かせない」窓口改革との連動
    • オンライン申請を、窓口業務改革の中核として明確に位置づけ、来庁した住民に対しても、職員がタブレット端末等を用いてオンライン申請を案内・補助する「書かない窓口」を推進します。
    • この取り組みにより、住民は来庁をきっかけにオンライン申請の利便性を体験・学習でき、職員は単純な転記作業から解放され、より丁寧な相談対応に時間を割くことができます。
    • デジタルとアナログのチャネルを敵対させるのではなく、相互に補完し、住民をデジタル利用へと円滑に誘導する役割を窓口が担います。
KGI・KSI・KPI
    • KGI(最終目標指標)
        • 主要手続き(子育て・介護・転出入等)のオンライン利用率:70%以上
          • データ取得方法: 電子申請システムのログデータと、各窓口の受付件数(基幹システム)を突合し、全申請件数に占めるオンライン申請の割合を算出。
        • オンライン手続きの住民満足度:85%以上(「満足」「やや満足」の合計)
          • データ取得方法: 全てのオンライン手続き完了画面に表示される5段階評価アンケートの集計結果。及び、年1回実施する住民意識調査の結果。
    • KSI(成功要因指標)
        • 手続き完了までの平均時間:5分以内
          • データ取得方法: 電子申請システムのアクセスログを解析し、申請開始から完了までの平均滞在時間を計測。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
        • 申請内容の不備による差し戻し・補正率:5%未満
          • データ取得方法: 電子申請システム及び基幹システム上の申請ステータス(承認、差戻、補正依頼等)を集計。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
        • デザインガイドライン適用済み手続き数:オンライン化されている全手続きの100%
          • データ取得方法: DX推進部門による各手続きの改修状況の進捗管理。

支援策②:デジタル・インクルージョン推進プログラム

目的
    • 高齢者、障害者、外国人など、デジタル機器の利用に不安や困難を抱える住民を誰一人取り残すことなく、行政手続きデジタル化の恩恵を等しく享受できる環境を整備します。
主な取組①:身近な場所での「スマホ・コンシェルジュ」の配置
    • 区内の公共施設(図書館、地域センター、ふれあい館等)、多くの人が集まる商業施設、高齢者施設などに、スマートフォンの基本操作からオンライン申請の具体的な方法まで、マンツーマンで気軽に相談できる相談員(デジタル活用支援員)を常設または巡回で配置します。
    • 地域の実情に詳しいシニア人材や、デジタルネイティブである学生ボランティアなどを積極的に活用し、住民が心理的な抵抗なく相談できる雰囲気を作ります。
主な取組②:体験・伴走型のデジタル活用講座の展開
    • 「必要性を感じない」という最大の障壁を乗り越えるため、行政手続きそのものではなく、住民の生活が豊かになる具体的な目的を入り口とした講座(例:「スマホで撮った孫の写真を共有しよう」「地域のキャッシュレス決済を使ってみよう」「災害時に役立つ情報アプリを入れよう」など)を多数開催します。
    • 一度きりの講座で終わらせず、受講後も「スマホ・コンシェルジュ」が継続的にフォローアップする伴走支援体制を構築し、学習内容の定着を図ります。
主な取組③:ウェブアクセシビリティの徹底
    • 全てのオンラインサービスが、公的機関のウェブサイトが準拠すべき日本産業規格「JIS X 8341-3:2016」の適合レベルAAに準拠することを、システム調達時の必須要件とします。
    • 視覚障害のある方向けのスクリーンリーダー(音声読み上げソフト)への対応や、色覚の多様性に配慮したカラーユニバーサルデザインを徹底します。
    • 外国人住民向けに、主要な手続きページには多言語(英語、中国語、韓国語など)による説明や、自動翻訳機能へのリンクを標準で実装します。
      • 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
    • KGI(最終目標指標)
        • 65歳以上の高齢者のオンライン手続き利用率:40%以上
          • データ取得方法: 電子申請システムのログデータを年齢別にクロス集計して算出。
    • KSI(成功要因指標)
        • デジタル活用講座受講者のうち、講座受講後にオンライン手続きを1回以上利用した人の割合:70%以上
          • データ取得方法: 受講者アンケート(受講3ヶ月後)と、同意を得た上での利用ログとの突合分析。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
        • 高齢者の「デジタル行政サービスに満足している」割合:75%以上
          • データ取得方法: 年1回実施する住民意識調査の結果を年齢別にクロス集計。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
        • デジタル活用支援員の配置拠点数:各区内に20箇所以上(常設・巡回含む)
          • データ取得方法: DX推進部門による拠点設置状況の管理・集計。
        • デジタル活用講座の年間開催回数および延べ参加者数:年間100回以上、延べ2,000人以上
          • データ取得方法: 事業委託先からの実績報告および参加者名簿の集計。

支援策③:DXを牽引する行政組織への変革

目的
主な取組①:CDO(最高デジタル責任者)補佐官の設置と専門人材の登用
    • 各区に、民間IT企業等での実務経験が豊富な専門家を、首長の直属としてCDO(最高デジタル責任者)補佐官として登用します。
    • CDO補佐官は、全庁的なDX戦略の策定、各部署の取り組みへの助言、予算獲得の支援など、組織全体を俯瞰して改革を主導する役割を担います。
    • UI/UXデザイナー、データサイエンティスト、サービスデザイナーといった高度専門人材を、任期付き職員や業務委託契約など柔軟な形態で積極的に確保・活用します。
主な取組②:全職員向けデジタルリテラシー研修の義務化
    • 管理職から若手まで、役職や所属部署に関わらず、全職員を対象としたデジタルリテラシー・スキル研修の受講を義務化します。
    • 研修内容には、情報セキュリティの基礎、個人情報保護法、データ活用の基本的な考え方、利用者視点でのサービスデザインの重要性など、DX推進に不可欠な知識を網羅します。
主な取組③:部局横断の「サービス改善チーム」の常設
KGI・KSI・KPI
    • KGI(最終目標指標)
        • 職員の業務時間に占める定型業務(紙の転記、データ手入力等)の割合:30%削減
          • データ取得方法: BPR(業務改革)の前後で、対象業務に従事する職員への業務量調査(サンプル調査)を実施し、業務内容ごとの所要時間を比較分析。
    • KSI(成功要因指標)
        • データ分析に基づいて改善提案が行われ、実行に移された行政サービスの数:年間10件以上
          • データ取得方法: 各「サービス改善チーム」からの成果報告をDX推進部門が集計・評価。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
        • 政策立案におけるデータ活用度(職員自己評価):5段階評価で平均4.0以上
          • データ取得方法: 年1回実施する職員意識調査において、「自身の業務において、客観的なデータを根拠に企画・立案を行っているか」を質問。
    • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
        • 確保したデジタル専門人材(CDO補佐官、任期付職員、外部委託含む)の人数:10名以上
          • データ取得方法: 人事部門および財政部門による契約・配置状況の管理。
        • 全職員のデジタルリテラシー研修受講率:95%以上
          • データ取得方法: 人事部門の研修管理システムによる全職員の受講履歴の集計。

先進事例

東京都特別区の先進事例

港区「原則100%オンライン化の達成」

  • 港区は令和6年(2024年)3月、法令上の制約がある998件の手続きを除く、区が受け付ける全2,427件の手続きのオンライン化を都内で初めて達成しました。
  • この取り組みの成功要因は、明確な目標設定とトップダウンによる強力な推進力にあります。まず全庁的に3,425件に及ぶ行政手続きを徹底的に棚卸しし、「オンライン化できるもの/できないもの」を客観的に仕分けました。その上で「できるものは全てやる」という明確な方針を掲げ、各部署の「やらない理由」を排し、全庁一丸となって改革を進めた点が最大の特長です。
    • 客観的根拠:

渋谷区「高齢者デジタルデバイド解消事業」

  • 渋谷区は、スマートフォンを所有していない65歳以上の高齢者約1,500人に対し、端末を2年間無償で貸与し、使い方講習会や個別相談会(スマホサロン)をセットで提供するという、世界でも類を見ない大規模な実証事業を実施しました。
  • 成功要因は複合的です。①単に機器を配るだけでなく、学習機会(講習会)と継続的なサポート(相談会、コールセンター)を組み合わせた手厚い「伴走支援」を行ったこと。②地域通貨「ハチペイ」の利用など、高齢者が「使ってみたい」と思える具体的な目的や楽しみを提供し、利用への動機付けを行ったこと。③KDDIや津田塾大学といった民間企業・大学と連携し、専門的な知見やノウハウを活用したことが挙げられます。
  • この事業は、デジタルデバイドが単なる「スキル」の問題ではなく、「動機」や「心理的障壁」の問題であることを実証し、効果的な支援モデルとして全国から注目されています。

板橋区「書かないワンストップ窓口」

  • 板橋区では、来庁者が申請書に一切記入することなく、職員が対話を通じて必要な情報を聞き取り、システムに直接入力することで手続きが完了する「書かない窓口」を導入しています。
  • 成功要因は、住民にとって最も煩わしい「書く」という行為をなくすことで、手続きの負担感を劇的に軽減し、満足度を直接的に向上させた点にあります。また、この窓口は、デジタルとアナログを巧みに融合させた過渡期の優れたモデルです。職員は住民との対話を通じてオンライン申請システムへの入力を補助するため、住民はデジタル手続きを自然に体験でき、職員は将来の完全オンライン化に向けた案内役としてのスキルを習得できます。
    • 客観的根-拠:
      • この取り組みは、デジタル庁が推進する「自治体窓口DX」の一環として位置づけられており、住民の負担軽減と職員の業務効率化の両立を目指すものとして評価されています。
      • (出典)(https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/page/001/049/746/2024_2_fulltext.pdf)

全国自治体の先進事例

群馬県「ぐんまDX推進計画」

  • 群馬県は「もうハンコは押さない」というキャッチーな宣言のもと、知事の強力なリーダーシップで県庁全体の業務プロセス改革と組織文化の変革を断行しています。
  • 特に注目すべきは、技術導入と並行して、職員の意識改革に徹底的に取り組んでいる点です。若手職員が幹部職員にデジタルツールの使い方を教える「リバースメンタリング」制度や、県民が県のDXについて直接意見を投稿できる「デジタル目安箱」の設置など、トップダウンの改革とボトムアップの意見吸い上げを両立させています。成功要因は、DXを単なるツール導入ではなく、「組織文化の変革」と捉え、全職員を巻き込む仕組みを構築したことにあります。
    • 客観的根拠:

会津若松市「スマートシティ会津若松」

  • 会津若松市は、市民が自身の情報(パーソナルデータ)を、自らの意思(オプトイン)で行政や民間企業に提供することに同意し、その対価として個別最適化された便利なサービスを受ける、という先進的なデータ活用モデルを構築しています。
  • 成功要因は、「市民中心」の思想を徹底し、データ提供の主権はあくまで市民にあるという透明性と信頼性の高い仕組みを構築した点です。これにより、プライバシーへの懸念を払拭し、市民の積極的なデータ提供を促しています。収集されたデータは、交通、健康、防災、決済など様々な分野で官民が連携して活用され、住民のウェルビーイング向上と地域課題解決を同時に実現しています。

参考資料[エビデンス検索用]

内閣府関連資料
デジタル庁関連資料
総務省関連資料
東京都関連資料
特別区・その他自治体関連資料
その他研究機関・メディア資料

まとめ

 東京都特別区における行政手続きのオンライン化は、住民の利便性向上と持続可能な行政運営を実現する上で不可欠な改革です。現状では高いオンライン化率を達成しつつも、手続きごとの利用率の格差や深刻なデジタルデバイドといった課題が浮き彫りになっています。今後は、単なる「オンライン化」から「オンライン利用の最大化」へと目標を転換し、徹底した利用者中心のサービス設計、誰一人取り残さないデジタル・インクルージョンの推進、そしてDXを牽引する組織への変革を三位一体で進めることが強く求められます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました