【財政分析レポート】大田区:コロナ禍前後の比較分析(令和元年度決算→令和5年度決算)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載数字は普通会計ベースであるほか、数字のチェックは未実施であるため、あくまで傾向分析のレポートである点に留意してください。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
本稿は、公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」令和2年版(令和元年度決算)・令和6年版(令和5年度決算)および総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」(令和元年度・令和5年度の2時点)を一次データとし、大田区の財政構造を特別区23区合計から算出した構成比(以下「特別区平均」。23区合計値に基づくため加重平均に相当します。なお財政力指数等の財政指標のみ23区単純平均を用います)との相対比較で抽出するものです。比較の起点となる令和元年度はコロナ禍前の最後の平時決算、終点の令和5年度は感染症法上の5類移行を迎えた正常化初年度に当たります。
大田区は、羽田空港・京浜工業地帯・大規模住宅市街地(蒲田・大森・池上等)・東京湾岸エリアを擁する人口約74万人(23区中3位)の特別区です。子育て世帯と高齢者が併存するバランス型の人口構成とファミリー層の流入という人口特性、京浜工業地帯のものづくり中小企業・羽田空港関連産業・商業集積(蒲田・大森・池上)という産業特性を持ち、特別区23区の中では「大規模住宅地区」グループに位置づけられます。
本分析は、財政指標・一般財源等のギャップ・義務的経費・投資的経費・コロナ禍4年間の構造変化の5軸で大田区固有の財政運営の現状と中期論点を整理し、最後に経営方針(基本構想・基本計画・実施計画・持続可能な自治体経営・公共施設マネジメント・職員定数管理等)への接続を行います。なお、構成比は当該年度の決算総額に占める割合、金額は原則として億円単位(小数第1位まで)に丸めて表記し、構成比の差(ポイント)や変化率は丸め後の表示数値から算出しているため、端数処理の関係で内訳と合計等が一致しない場合があります。また、本分析は令和元年度と令和5年度の両端比較であるため、令和2〜4年度に生じた特別定額給付金・ワクチン接種・検査体制等によるコロナ対応経費のピークとその縮小は捨象されている点に留意が必要です。
エグゼクティブサマリー
コロナ禍4年間の大田区財政を一言で要約すれば、「給付と委託で膨らみ、人件費と公債費で引き締め、投資を復元させた4年間」です。歳出総額は+13.4%拡大しましたが、最も注目すべき動きは経常収支比率の大幅改善(85.9%→78.6%・▲7.3ポイント)であり、コロナ前には23区内でも硬直度が高い部類にあった大田区が、4年間で特別区平均との乖離を+7.07ポイントから+2.42ポイントまで縮めました。一方で、積立金フローはほぼ半減し、都支出金への依存度が上昇しており、「健全性を保ちつつ、将来への備えが細った4年間」という両面評価が妥当です。
①財政指標の状況
大田区の主要財政指標は、総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」令和元年度・令和5年度版および公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」に基づき、特別区23区単純平均と比較すると以下の構造にあります。
財政力指数
令和元年度0.54→令和5年度0.54(±0.00、23区平均0.581→0.571、▲0.010)です。大田区が横ばいを保つ一方で23区平均は低下しており、相対的な位置はわずかに改善方向にあります。扶助費需要等の増加による基準財政需要額の伸びを、特別区税・財調収入の伸びがほぼ相殺した構図と読み取れます。
経常収支比率
85.9%→78.6%(▲7.3ポイント、23区平均78.83%→76.18%、▲2.66ポイント)です。改善幅は特別区平均の2倍超に達し、平均との乖離は令和元年度の+7.07ポイントから令和5年度の+2.42ポイントへ大きく縮小しました。背景には、分母となる経常一般財源(特別区税・特別区交付金・地方消費税交付金等)の増加と、分子側での人件費(4年間で▲31.0億円)・公債費(同▲15.3億円)の縮減が同時に作用したことがあります。コロナ前の大田区は23区内でも財政の硬直度が高い部類にありましたが、この4年間で標準圏へ収束したことが、本データで最も顕著な指標の動きです。
実質公債費比率
-4.0%→-2.1%(+1.9ポイント、23区平均-3.06%→-2.34%、+0.72ポイント)です。数値上は上昇しましたが、マイナス値は実質的な公債費負担が標準財政規模との対比で事実上ゼロ以下であることを意味し、23区平均も同方向に動いていることから、大田区固有の悪化ではなく算定構造上の共通要因による変動と整理できます。地方財政健全化法の早期健全化基準25%とは比較にならない健全水準が継続しています。
将来負担比率
地方債残高等の将来負担額を基金等の充当可能財源等が上回っているため、比率が算定されない(公表上「-」表記となる)状況が23区全区でコロナ禍4年間を通じて継続しています。市区町村の早期健全化基準(350%)とは比較にならない健全水準です。
ラスパイレス指数
101.3→100.5(▲0.8、23区平均99.80→98.63)で、国家公務員給与水準(=100)にわずかに接近しました。ラスパイレス指数は地域手当等を含まない給料ベースの比較である点に留意が必要ですが、23区内では相対的に高めの位置が続いており、定数管理と併せた職員給与の中期的最適化が引き続き論点となります。
②1人当たり一般財源等と歳出ギャップ
令和5年度の大田区の歳入総額は3,156.3億円、歳出総額は3,123.3億円であり、4年間で歳入は+354億円・+12.6%、歳出は+368億円・+13.4%拡大しました。注目すべきは、特別区23区合計の歳入+20.0%・歳出+19.5%(歳入+8,160億円・歳出+7,644億円)と比較して、大田区の伸びが大きく下回っている点です。特別区税の伸びは+5.3%(特別区平均+9.9%)、特別区財政調整交付金は+6.7%(同+10.0%)にとどまり、納税義務者の所得や企業収益の急伸を享受した都心区との対比で、大田区の財政規模の相対的な位置がこの4年間で低下したことを示しています。
構成比でみると、特別区税は27.65%→25.85%(▲1.80ポイント)、特別区財政調整交付金は27.25%→25.82%(▲1.43ポイント)といずれも低下しており、これは後述する国庫支出金・都支出金等の移転財源拡大の裏返しです。歳出と一般財源等のギャップへの対応として、財政基金の戦略的活用と歳入確保策の両面が中期的論点となります。
足元では、令和8年度一般会計当初予算が3,685億円余(前年度比約158億円・4.5%増)と過去最大を更新し、区の公表資料では特別区税と特別区交付金の合計1,813億円が歳入の約5割を占める一方、扶助費と特別会計繰出金の合計は1,363億円に達するとされています。令和8年度予算編成では当初要求段階で229億円の財源不足が生じ、査定による歳出精査と財政基金繰入等で収支を整えた経緯も公表されており、子育て支援・超高齢社会への対応・公共施設の維持更新・社会資本整備など多様な行政需要を抱える中で、歳出に対し一般財源等が不足する厳しい財政環境の継続が想定されます。
③義務的経費(人件費・扶助費・公債費)の構造
義務的経費は人件費・扶助費・公債費の3項目で構成され、大田区の令和5年度実績は人件費382.7億円(構成比12.25%)、扶助費1,145.5億円(同36.68%)、公債費17.3億円(同0.55%)、合計49.48%の水準です。特別区平均は人件費12.93%・扶助費31.74%・公債費1.27%の合計45.94%であり、大田区の義務的経費合計は特別区平均比+3.54ポイントの差です。
人件費
令和元年度15.01%→令和5年度12.25%へ▲2.76ポイント縮小しました。令和2年度の会計年度任用職員制度の導入により、従来は物件費(賃金)に計上されていた非常勤職員の報酬等が人件費へ編入されるという押し上げ要因があったにもかかわらず、絶対額でも413.7億円→382.7億円(▲7.5%)と減少しており、常勤職員人件費の実質的な縮減幅は表示上の数値より大きいと解釈できます。
扶助費
35.24%→36.68%へ+1.44ポイント拡大しました。コロナ禍の臨時給付金の多くは補助費等に計上されるため、扶助費の増加は一時要因ではなく、児童福祉・障害福祉・生活保護等の法定扶助の構造的な積み上がりが主因です。
公債費
1.18%→0.55%へ▲0.63ポイント縮小しました。長年の起債抑制と着実な償還努力の蓄積が、コロナ禍においても将来世代への負担軽減として作用し続けています。
義務的経費は法定義務の性格上抑制余地が限定的ですが、人件費は業務量変化に対応した適正水準への調整、扶助費は給付プロセスの効率化(資格審査・AI・RPA活用)が現実的な改善余地となります。
④投資的経費の状況と起債発行余力
令和5年度の大田区の投資的経費(普通建設事業費+災害復旧事業費)は368.6億円(構成比11.80%)であり、特別区平均比▲1.27ポイントの位置にありますが、令和元年度の255.0億円(構成比9.26%)から+44.5%と大幅に増加しました。平成5年度からの約30年間でみれば「投資から給付へ」が地方財政の大潮流でしたが、直近4年間に限れば、学校改築の本格化を中心に投資的経費はむしろ復元局面に入っており、当初予算ベースでは令和7年度に約502億円と500億円規模に達しています。
今後の投資需要の中核は学校施設です。区立小・中学校87校のうち約8割が築40年以上の校舎棟を有し、統廃合による学校数削減を前提としない計画体系の下で改築・改修需要がほぼそのまま発生する構造であり、大田区公共施設改築・改修等中期プラン(令和5年3月)では、区営住宅・学校施設・インフラ施設を含む今後40年間の整備費用を総額1兆605億円、うち学校施設を3,313億円(最大項目)と試算しています。実質公債費比率-2.1%は早期健全化基準25%を大幅に下回り、起債発行余力は十分に温存されているため、世代間負担調整の論理に基づく計画的な起債活用が選択肢として位置づけられます。毎年度の公債費増加が新規事業の一般財源を圧迫しない範囲内に抑制する仕組みを中期財政計画に組み込むことが、起債活用と財政健全性両立の要諦です。
⑤性質別構成比のコロナ禍4年間の構造変化(令和元年度→令和5年度)
大田区の歳出構造は令和元年度から令和5年度の4年間で変容しました。性質別構成比の主要項目を比較すると、以下の通りの変動が見られます。
人件費
15.01%から12.25%(▲2.76ポイント)へと縮小しました。
物件費
17.16%から19.54%(+2.38ポイント)へと拡大しました。
扶助費
35.24%から36.68%(+1.44ポイント)へと拡大しました。
補助費等
5.31%から6.77%(+1.46ポイント)へと拡大しました。
普通建設事業費
9.26%から11.80%(+2.54ポイント)へと拡大しました。
公債費
1.18%から0.55%(▲0.63ポイント)へと縮小しました。
積立金
3.75%から1.81%(▲1.94ポイント)へと縮小しました。
総じて「人件費・公債費・積立金の縮小と、物件費・扶助費・補助費等・普通建設事業費の拡大」というコロナ禍特有の構造調整パターンを、大田区も特別区共通の傾向に沿って経験しました。目的別では、土木費が9.85%→8.44%(▲1.41ポイント)、消防費が2.85%→1.62%(▲1.23ポイント)と低下する一方、教育費が12.39%→14.50%(+2.11ポイント)、衛生費が6.75%→7.87%(+1.12ポイント)、民生費が54.73%→55.86%(+1.13ポイント)と上昇しています。「ハードからソフトへ」「投資から給付へ」「人件費から委託料へ」という地方財政の大潮流に、コロナ禍に伴う「衛生・教育・給付への重点シフト」と「都支出金の急拡大による移転財源依存の上昇」が重なって4年間に凝縮して進行した一方、投資的経費だけは長期トレンドに反して復元へ転じた点が、この期間の大田区固有のねじれです。
総論:規模・人口・財政力ポジション
基礎情報と23区内ポジション
大田区は、23区中最大の面積61.86平方キロメートル(国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」。令和2年の令和島編入により従来の60.83平方キロメートルから拡大)と、約74万人(23区中3位)の人口を擁する特別区です。区域には羽田空港、京浜工業地帯のものづくり集積、蒲田・大森・池上等の商業・住宅市街地、田園調布・山王等の住宅地、東京湾岸の埋立地が共存し、空港・工業・住宅・商業が一体となった複合都市を形成しています。子育て世帯と高齢者が併存するバランス型の人口構成とファミリー層の流入が人口動態の特徴です。
23区内では「大規模住宅地区」グループに分類され、財調依存度が比較的高く、扶助費需要も人口規模に応じて高水準となる財政構造を持つ区に該当します。人口規模に応じた巨大な行政需要、扶助費の高水準(特別区平均比+4.94ポイント)、公共施設の老朽化(延床面積の約53%が築40年以上・40年間で1兆605億円の整備費用試算)、職員定数管理を巡る中期的な転換期、年間約65億円(令和7年度・区公表)に達したふるさと納税流出という固有課題への対応が、大田区の財政運営における最大の中期論点となります。
大田区の経営方針
大田区の経営方針は、最上位計画である大田区基本構想を頂点に、大田区基本計画、大田区実施計画、持続可能な自治体経営実践戦略(令和7年3月策定)、大田区公共施設等総合管理計画、大田区公共施設改築・改修等中期プラン、職員定数管理に関する計画等の複数の計画体系で構成されており、これらの一体運用により持続可能な自治体経営の実現を目指しています。
基本構想
現行の大田区基本構想(令和6年3月策定)は、令和22年(2040年)頃を見据えた区の最上位指針であり、将来像として「心やすらぎ 未来へはばたく 笑顔のまち 大田区」を掲げています。この将来像の下に、「未来を創り出すこどもたちが夢と希望をもって健やかに育つまち」「文化を伝え育み誰もが笑顔でいきいき暮らすまち」「豊かな環境と産業の活力で持続的に発展するまち」「安全・安心で活気とやすらぎのある快適なまち」の4つの基本目標が設定されており、羽田空港・京浜工業地帯・大規模住宅市街地・東京湾岸エリアという地域特性を活かしつつ、人口構造の変化を見据えた区政運営の理念を示しています。
基本計画(実施計画を含む)
大田区基本計画は基本構想を実現するための中期的な施策体系を示すもので、政策・施策・事務事業の階層構造で整理され、各分野で成果指標を設定してPDCAサイクルによる進捗管理を行う構造です。これを具体化する大田区実施計画は、各年度予算編成と直結する事業ベースの実行計画として位置づけられています。令和8年度予算における重点施策(「住み続けたいまちNo.1へ 暮らしに寄り添い 笑顔と心をつなげていく予算」の下での子育て・教育分野の大幅増額、東京都と連携した児童相談支援の新たな拠点となる大田区こども未来総合センターの開設、学校改築の推進、物価高騰対策・防災施策の充実等)も、基本計画の方針と直結した政策展開です。区の公表資料では、子育て支援関連予算は過去5年で約1.3倍・総額1,227億円(予算総額の3割超)に達するとされています。
行財政改革・経営改革の取組
大田区は、基本構想・基本計画を下支えする戦略として、持続可能な自治体経営実践戦略(令和7年3月策定・計画期間令和7年度〜令和14年度)を位置づけています。人材・財源など区の経営資源の最適化や、デジタル技術を用いた業務の抜本的な変革など、生産性向上に資する取組を体系化したもので、具体的な取組項目は3年間の「取組編」として実施計画と合わせて毎年度更新され、実効性を担保する仕組みとなっています。
公共施設の総合的・計画的管理
大田区も特別区共通の課題として、昭和30年代〜50年代(高度経済成長期)に急激な人口増加へ対応するため整備された公共施設の一斉老朽化に直面しており、区が保有する公共施設の延床面積約123万平方メートルのうち約53%が築40年以上を経過しています(令和3年4月1日時点)。区は大田区公共施設等総合管理計画(令和4年3月改訂)、個別施設計画および大田区公共施設改築・改修等中期プラン(令和5年3月)を策定し、区有施設の長寿命化・適正配置・財政負担の平準化を計画的に進めています。
学校施設の改築需要は今後の投資的経費の中核です。区立小・中学校87校のうち約8割で築40年以上の校舎棟を有し、統廃合による学校数削減を前提としないため改築・改修需要が学校数に応じてほぼそのまま発生する構造であり、中期プランにおける区営住宅・学校施設・インフラ施設を含む今後40年間の整備費用試算1兆605億円のうち学校施設は3,313億円と最大項目を占めています。
職員定数の管理
大田区が直面する経営課題の一つが、職員定数の管理です。多様化・複雑化する行政需要に対応する業務量の増加と、定年退職の増加・採用環境の悪化に伴う職員確保の困難という需給ギャップへの対応が求められています。
特別区職員採用を巡る環境
特別区人事委員会が実施するⅠ類採用試験の申込者数・倍率は長期的な低下傾向にあります。平成20年代前半には申込者が2万人規模・倍率7倍超の年度もあったとされますが、近年の事務区分の倍率は2倍台前半(令和7年度春試験で2.4倍)まで低下しており、人材確保の困難さが23区共通の構造的課題となっています。
区の対応と重要性
これに対し区は、人材確保(採用数の増加・長く働き続けられる環境整備・会計年度任用職員の活用)と業務量最適化(事務事業の見直し・民営化・委託化・DX推進・業務改革)の両面から対応を進めており、財政運営の質を支える「ヒト」という経営資源の確保が、令和9年度以降の予算編成における最重要視点となります。
歳入構造の特徴
令和5年度の大田区歳入総額3,156.3億円の主要項目を、構成比・特別区平均との差・令和元年度→令和5年度の4年間変化率の3軸で分析します。歳入総額は令和元年度の2,802.1億円から+12.6%増加しました。
特別区税(構成比25.85%・815.8億円)
特別区税構成比は特別区平均(25.31%)と比較して+0.54ポイントの位置にあり、自主財源基盤を一定程度確保しています。一方、4年間の変化率は+5.3%(特別区平均+9.9%)にとどまり、令和元年度の774.7億円から令和5年度の815.8億円への伸びは平均を大きく下回ります。構成比も27.65%→25.85%へ▲1.80ポイント低下しました。納税義務者数・所得は底堅いものの、都心区の税収急伸との格差に加え、ふるさと納税による流出(区公表で令和4年度約42億円→令和7年度約65億円へ拡大)が伸びを抑制する一因となっています。
特別区財政調整交付金(構成比25.82%・814.9億円)
特別区財政調整交付金構成比は特別区平均(24.75%)比+1.07ポイントの位置にあり、財調制度の動向が大田区財政に標準的に作用する構造です。4年間の変化率は+6.7%(特別区平均+10.0%)で、令和元年度の763.6億円から令和5年度の814.9億円へ推移しました。
制度面では、固定資産税・市町村民税法人分・特別土地保有税等の調整税等を東京都が都税として徴収し、その一定割合を特別区財政調整交付金として各区の需要算定に基づき配分する仕組みであり、分析対象の令和5年度時点の配分割合は55.1%でした。その後、児童相談所運営の本格化や首都直下地震への備えの強化を背景とする都区合意により、令和7年度から配分割合は56%へ引き上げられ、併せて災害対応経費等に充当される特別交付金の割合も5%から6%に変更されています。羽田空港をはじめとする大規模な固定資産を区域内に擁する大田区にとって、これらに係る固定資産税収が区税として直接帰属せず財調制度を介して還元される構造と、配分割合の引き上げは、今後の歳入見通しの重要変数として作用します。
国庫支出金(構成比18.40%・580.6億円)・都支出金(構成比11.50%・363.0億円)
国庫支出金は令和元年度500.5億円→令和5年度580.6億円へ+16.0%増加し、構成比は17.86%→18.40%へ+0.54ポイント上昇しました。都支出金は令和元年度218.0億円→令和5年度363.0億円へ+66.5%と急増し、構成比は7.78%→11.50%へ+3.72ポイント上昇しています。これは、感染症対応関連の補助に加え、子育て支援分野での東京都の施策拡充(高校生等医療費助成の開始等)や物価高騰対策の補助金が、区を経由する形で住民に届けられた構造変化を示しています。コロナ禍4年間で最も大きく動いた歳入項目であり、国・都の制度設計への連動性が一段と高まりました。なお、国・都の負担金を伴う法定扶助には区の一般財源負担(裏負担)が組み込まれているため、移転財源の拡大は区の経常負担の拡大と表裏一体である点に留意が必要です。
地方消費税交付金・寄附金・地方債
地方消費税交付金は令和元年度129.2億円→令和5年度184.6億円へ+42.9%増加し、消費税率10%への引き上げ効果の通年化と物価・消費の回復が歳入を下支えしました。寄附金は令和元年度0.5億円→令和5年度0.8億円にとどまり、ふるさと納税制度導入後の住民税控除による流出超過構造が継続しています。区の公表によれば流出額は令和7年度に約65億円へ達しており、これは令和5年度決算の特別区税815.8億円の約8%に相当する規模です。法人住民税の一部国税化と合わせた不合理な税源偏在是正措置による一般財源毀損は、特別区共通の中期論点として、特別区長会・東京都との連携による制度抜本見直し要求が継続されています。
地方債は令和元年度4.3億円→令和5年度19.9億円へ増加したものの、構成比は0.15%→0.63%(特別区平均2.05%)と引き続き低水準です。投資的経費の復元を基金・一般財源中心で賄い、起債は抑制的に運用する姿勢が維持されています。
目的別歳出の主要項目分析
令和5年度の大田区歳出総額3,123.3億円を目的別に主要項目で分析します。歳出総額は令和元年度の2,755.4億円から+13.4%増加しました。
民生費(構成比55.86%・1744.6億円)
社会福祉・児童福祉・老人福祉・生活保護等の福祉関連経費で、歳出総額の最大費目であり扶助費の大部分を含みます。令和5年度の構成比55.86%は特別区平均50.79%と比較して+5.07ポイント、4年間の変化率は+15.7%(特別区平均+17.0%)で、令和元年度の1,508.2億円から令和5年度の1,744.6億円へ推移しました。構成比は54.73%→55.86%へ+1.13ポイント上昇しています。児童福祉費・生活保護費・障害福祉サービス費・児童手当等の法定扶助の累積が民生費全体を押し上げており、コロナ禍の一時的給付が剥落した後も水準が切り下がらない、不可逆的な拡大構造にあります。
総務費(構成比8.79%・274.6億円)
内部管理・庁舎管理・人事・徴税・選挙・統計調査・DX投資等を含みます。令和5年度の構成比8.79%は特別区平均13.17%と比較して▲4.38ポイント、4年間の変化率は▲0.4%で、令和元年度の275.8億円から令和5年度の274.6億円へほぼ横ばいです。構成比は10.01%→8.79%へ▲1.22ポイント低下しました。歳出総額が+13.4%拡大する中での総務費横ばいは内部管理コストの抑制を示す一方、DX投資・庁内システム刷新の必要性を考慮すると、戦略的な総務費配分の継続的な見直しが論点となります。
教育費(構成比14.50%・453.0億円)
学校教育・社会教育・保健体育を含みます。令和5年度の構成比14.50%は特別区平均14.28%と比較して+0.22ポイント、4年間の変化率は+32.7%(特別区平均+20.9%)と平均を大きく上回り、令和元年度の341.5億円から令和5年度の453.0億円へ拡大しました。構成比は12.39%→14.50%へ+2.11ポイント上昇しています。GIGAスクール構想下のICT環境整備、給食費無償化等に加え、87校・約8割が築40年以上という学校施設の改築需要が先行的に発現し始めたことが、平均を上回る伸びの背景にあります。
衛生費(構成比7.87%・245.8億円)
保健衛生・環境衛生・清掃・公衆衛生を含みます。令和5年度の構成比7.87%は特別区平均8.10%と比較して▲0.23ポイント、4年間の変化率は+32.2%(特別区平均+39.2%)で、令和元年度の185.9億円から令和5年度の245.8億円へ推移しました。構成比は6.75%→7.87%へ+1.12ポイント上昇しており、保健所機能の強化・予防接種事業の拡大・公衆衛生体制の構築が反映されています。なお、令和5年度は5類移行年度であり、コロナ対応経費は縮小過程にあります。両端比較の性質上、令和3〜4年度のピーク時の衛生費はさらに高水準であった点に留意が必要です。
土木費・商工費・消防費・公債費
土木費(道路・橋りょう・公園・都市計画・住宅)は令和元年度271.4億円→令和5年度263.6億円へ▲2.9%減少し、構成比は9.85%→8.44%(特別区平均9.29%)と維持管理フェーズへの移行を反映しています。なお、大田区は新空港線(いわゆる蒲蒲線)整備という大規模プロジェクトを抱えており、事業の進捗次第では土木費が再び投資局面を迎える可能性があります。商工費は令和元年度49.7億円→令和5年度62.2億円へ+25.1%増加し、コロナ禍で打撃を受けた中小企業支援・商店街振興・ものづくり集積の維持施策が反映されています。消防費は令和元年度78.5億円→令和5年度50.6億円へ▲35.5%減少しましたが、これは令和元年度の防災対策関連の積立等による高水準からの反動であり、年度間変動の大きい費目である点に留意が必要です。公債費は令和元年度32.6億円→令和5年度17.3億円へ▲46.9%減少し、構成比は1.18%→0.55%へ▲0.63ポイント低下、長年にわたる起債抑制と着実な償還努力の継続を反映しています。
性質別歳出の主要項目分析
人件費(構成比12.25%・382.7億円)
人件費構成比は特別区平均12.93%比▲0.68ポイントです。令和元年度の15.01%から令和5年度の12.25%へ▲2.76ポイント低下し、絶対額も413.7億円→382.7億円(▲7.5%)と減少しました。令和2年度の会計年度任用職員制度の導入により非常勤職員の報酬等が物件費から人件費へ編入されたことを踏まえると、常勤職員ベースの実質的な縮減幅は表示上の数値よりさらに大きいと解釈できます。ラスパイレス指数100.5(4年間で▲0.8)は国家公務員給与水準にわずかに接近しており、職員給与の中期的最適化が引き続き論点となります。
扶助費(構成比36.68%・1145.5億円)
扶助費は特別区平均31.74%比+4.94ポイントの位置にあり、絶対額は令和元年度の971.1億円から令和5年度の1,145.5億円へ+18.0%増加、構成比は35.24%→36.68%へ+1.44ポイント上昇しました。生活保護費・障害福祉サービス費・児童手当・子ども子育て給付等の法定扶助が中心です。コロナ禍の臨時給付の多くは補助費等に計上されたため、この期間の扶助費増加は一時要因ではなく構造的な積み上がりであり、コロナ収束後も水準が戻らない性質のものです。義務的経費として抑制余地は限定的であり、給付プロセスの効率化(資格審査の精度向上、AI・RPAによる事務自動化、自立支援強化)が現実的な改善余地となります。
物件費(構成比19.54%・610.4億円)
業務委託料・指定管理料・情報システム経費等で構成され、特別区平均18.39%比+1.15ポイントです。令和元年度17.16%→令和5年度19.54%へ+2.38ポイント上昇し、絶対額は472.9億円→610.4億円(+29.1%)と拡大しました。会計年度任用職員制度の導入で旧来の賃金が人件費へ振り替えられたことを踏まえると、委託・システム経費の実質的な増勢は表示上の伸び率よりさらに強いと解釈できます。コロナ対応の業務委託費、GIGAスクール関連の運用経費、電力・ガス・燃料費の高騰、各種システム経費の拡大が複合的に作用しており、物価高騰と労務単価上昇の継続を踏まえると、業務委託の単価・仕様の定期的な見直し、施設運営コストの最適化、周辺自治体との共同調達が中期的な改善余地となります。
公債費・積立金・普通建設・繰出金
公債費は特別区平均1.27%比▲0.72ポイントで、実質公債費比率-2.1%は早期健全化基準25%を大幅に下回り、長年の起債抑制と着実な償還努力の蓄積が将来世代への負担軽減に直結しています。積立金構成比は1.81%(特別区平均6.07%比▲4.26ポイント)で、令和元年度3.75%→令和5年度1.81%へ▲1.94ポイント低下し、概算額では約103億円から約57億円へとフローがほぼ半減しました。コロナ・物価高対応に追われる中で将来への備えに回す余力が細った構図であり、基金積立フローを中期的に引き上げる目標化が令和9年度以降の予算編成における重要論点です。なお、ここでの積立金は単年度フローであり、基金残高そのものの厚みとは区別して評価する必要があります。
普通建設事業費は特別区平均13.07%比▲1.27ポイントながら、令和元年度9.26%→令和5年度11.80%へ+2.54ポイント上昇し、絶対額は255.0億円→368.6億円(+44.5%)と大きく拡大しました。繰出金は国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険等の特別会計への繰出が中心で、構成比は8.42%→8.44%(特別区平均7.87%)と高止まりしています。高齢化に伴う保険給付の構造増を反映し、区の裁量による抑制余地が乏しい「第二の義務的経費」として、中期財政運営の与件と位置づけるべき費目です。
構造的特徴と戦略的示唆
構造的な特徴
特徴①:主要財政指標の総合評価
大田区の主要財政指標を総合評価すると、財政力指数0.54(23区平均0.571比▲0.031)・経常収支比率78.6%(23区平均76.18%比+2.42ポイント)・実質公債費比率-2.1%(23区平均-2.34%比+0.24ポイント)・ラスパイレス指数100.5(23区平均98.63比+1.87)の組み合わせから、ストック面は極めて健全である一方、フロー面の硬直度がやや高いという大田区のポジショニングが浮かび上がります。コロナ禍4年間で特筆すべきは経常収支比率の大幅改善(▲7.3ポイント)であり、特別区平均との乖離が+7.07ポイントから+2.42ポイントへ縮小し、硬直度の面で23区の標準圏に収束したことが最大の変化です。
特徴②:歳入構造とコロナ禍4年間の変化
大田区の歳入構造は、特別区税構成比25.85%(特別区平均比+0.54ポイント)、特別区財政調整交付金構成比25.82%(同+1.07ポイント)、国庫支出金18.40%・都支出金11.50%の組み合わせで構成されます。コロナ禍4年間で最も顕著な変化は都支出金構成比の上昇(7.78%→11.50%、+3.72ポイント)であり、東京都の財政方針・国の制度設計への依存度が高まりました。あわせて、特別区税・財調の伸びが23区全体を下回ったことで基幹財源の構成比が低下しており、移転財源依存の上昇とその裏負担の累積が中期的な経常負担要因となります。
特徴③:義務的経費の構造
令和5年度の義務的経費(人件費・扶助費・公債費の3項目)は合計49.48%であり、特別区平均45.94%と比較すると+3.54ポイントの差です。4年間で人件費構成比は▲2.76ポイント、扶助費構成比は+1.44ポイント、公債費構成比は▲0.63ポイント変動しました。会計年度任用職員制度の編入を踏まえれば人件費の実質縮減はさらに大きく、義務的経費の中での「人件費・公債費から扶助費への置き換わり」がコロナ禍でも進行したことになります。
特徴④:投資的経費の動向と起債発行余力
投資的経費(普通建設事業費+災害復旧事業費)は構成比11.80%(特別区平均13.07%比▲1.27ポイント)で、4年間で9.26%→11.80%へ+2.54ポイント上昇しました。約30年間の「投資から給付へ」という長期トレンドに対し、直近4年は学校改築を中心に投資の復元が始まった転換点であり、当初予算ベースでは既に500億円規模に達しています。実質公債費比率-2.1%・地方債構成比0.63%の組み合わせは、今後の更新需要ピークに対する起債発行余力が十分に温存されていることを示します。
構造的な課題
課題①:扶助費の継続的増加圧力と財政硬直化
扶助費構成比36.68%は特別区平均比+4.94ポイントの位置にあり、4年間で絶対額は971.1億円→1,145.5億円(+18.0%)と増加しました。生活保護費・障害福祉サービス費・児童手当・子ども子育て給付等の法定扶助の累積増はコロナ収束後も継続する構造的なものであり、義務的経費の性格上抑制余地が限定的なため、財政硬直化の最大要因となっています。
課題②:公共施設老朽化と投資的経費の本格化
高度経済成長期(昭和30年代〜50年代)に集中整備された区有施設の一斉老朽化が進み、コロナ禍4年間で投資的経費構成比は既に+2.54ポイント上昇しました。学校施設は87校のうち約8割が築40年以上の校舎棟を有し、統廃合による学校数削減を前提としないため改築需要がほぼそのまま発生する構造で、40年間の整備費用試算1兆605億円のうち学校施設は3,313億円と最大項目です。投資的経費は中期的にピーク期へ向けて拡大する局面にあり、財源確保と平準化が中期論点となります。
課題③:物件費・補助費等の構造的拡大
物件費構成比は令和元年度17.16%から令和5年度19.54%へ+2.38ポイント、補助費等構成比は5.31%→6.77%へ+1.46ポイント上昇しました。物価高騰・エネルギー価格・労務単価の上昇が委託料・施設運営費を構造的に押し上げており、契約・仕様の見直しを継続しなければ実質的な抑制余地はさらに狭まります。
課題④:ふるさと納税流出と法人住民税国税化による財源毀損
寄附金収入は4年間でほぼ改善せず、ふるさと納税による区民税の流出額は区公表で令和4年度約42億円から令和7年度約65億円へと毎年拡大しています。23区は地方交付税の不交付団体であり流出分の国による補填がないため、影響がそのまま一般財源の毀損となります。法人住民税の一部国税化と合わせた税源偏在是正措置への対応として、特別区長会・東京都との連携による制度抜本見直し要求の継続が必要です。
課題⑤:職員定数管理と業務量増加の需給ギャップ
多様化・複雑化する行政需要に対応する業務量の増加と、定年退職の増加・採用試験倍率の低下(近年の事務区分は2倍台前半)による職員確保の困難という需給ギャップが、23区共通の構造的課題となっています。コロナ禍4年間で人件費は▲7.5%減少した一方、歳出規模と業務領域は拡大しており、職員1人当たり負担の実質的増加が進行しています。
課題⑥:基金積立フローの細りと財政対応力
積立金フローは4年間でほぼ半減(構成比3.75%→1.81%、概算約103億円→約57億円)し、特別区平均(6.07%)との差は▲4.26ポイントに達します。令和8年度予算編成では当初要求段階で229億円の財源不足が生じ、財政基金繰入等で対応した経緯が公表されており、「フローの積み増しが細る一方で、取り崩しに依存する」構図が続けば、公共施設更新ピーク期や景気後退局面での財政対応力を中期的に損ないます。基金積立フローの目標化と取り崩しルールの明確化が急務です。
対応の方向性(案)
方向性①:扶助費の給付プロセス効率化
扶助費の給付水準そのものは法定で抑制余地が限定的ですが、給付プロセスには改善余地があります。資格審査の精度向上による不適正給付の防止、AI・RPAによる申請受付・支給決定・現況確認等の事務自動化、自立支援の強化、ケースワーカー業務のデジタル化等を一体的に進めることで、給付の質を維持しながら事務コストを圧縮する余地があります。
方向性②:基金・起債の戦略的活用と世代間負担調整
実質公債費比率-2.1%・地方債構成比0.63%の水準が示す起債発行余力を、今後の公共施設更新需要に対して計画的に活用する戦略転換が選択肢となります。基金積立フローの中期目標化と併せ、毎年度の公債費増加が新規事業の一般財源を圧迫しない範囲内に抑制する仕組みを中期財政計画に組み込むことが、起債活用と財政健全性両立の要諦となります。なお、区自身も実施計画(令和7年度〜令和9年度)の財政計画において、起債発行余力を活かした特別区債の計画的・戦略的な活用と計画的な基金残高の確保を掲げており、本方向性は区の公式方針とも整合します。
方向性③:公共施設マネジメントの高度化
長寿命化、複合化・集約化、民間活力の活用、未利用地の利活用を組み合わせた総量抑制・適正配置を推進することが求められます。統廃合を前提とせず87校の改築・改修需要がそのまま発生する学校施設の固有事情を踏まえた施設マネジメントの方向性決定が中期論点です。
方向性④:DX投資による業務改革と人材確保
DX・生成AI・RPAによる定型業務の自動化、業務委託の質的見直しと長期契約の最適化、複数自治体での共同調達によるスケールメリットの追求、事業評価に基づく事務事業の見直し(優先度の低い事業からの撤退・事業数の精査)を一体的に進めるとともに、処遇改善・職場環境整備等の人材への環境投資を組み合わせる必要があります。
方向性⑤:税源偏在措置への対抗
特別区長会・東京都と連携した制度抜本見直し要求の継続が不可欠です。同時に、区も令和6年度から区の資源を活用した返礼品の拡充を始めており、独自の寄附受入施策やシティプロモーションによる流出抑制・受入拡大策の組み合わせが、大田区独自の対応策となります。
方向性⑥:行財政改革・経営改革計画の着実な実行
既に策定済みの持続可能な自治体経営実践戦略(令和7年3月策定・計画期間令和7年度〜令和14年度)の着実な実行に加え、進捗のモニタリングと外部環境変化への機動的な見直し、計画間の連動性確保が、中期的な経営改革の継続的成果に直結します。
まとめ
財政運営の現状と構造的論点
大田区の財政運営は、コロナ禍4年間(令和元年度→令和5年度)で財政力指数0.54→0.54(±0.00)、経常収支比率85.9%→78.6%(▲7.3ポイント)、実質公債費比率-4.0%→-2.1%(+1.9ポイント)、ラスパイレス指数101.3→100.5(▲0.8)という主要財政指標の動きを示しました。歳出規模は+13.4%・+368億円拡大し、コロナ対応・物価高対応・社会保障給付の構造的拡大という外部環境変化と大田区固有要因の複合作用を反映しています。経常収支比率が23区の標準圏へ収束した点は前向きに評価できる一方、積立金フローの半減と都支出金依存の上昇は、「健全性を保ちつつ将来への備えが細った」というこの4年間の両面性を示しています。
歳入面では都支出金が+66.5%増加して構成比11.50%に達し、東京都の財政方針・国の制度設計への依存度が高まったことが歳入構造の構造変化として表れています。
戦略軸の推進と経営改革
これらの構造的特徴と課題を踏まえると、「対応の方向性(案)」で整理した6つの戦略軸を、令和9年度以降の予算編成・中期財政運営において一体的に推進することが求められます。
効率化によるコスト抑制
給付プロセス効率化により、法定で抑制余地が限定的な扶助費の質を維持しながら事務コストを圧縮します。
財政運用の平準化
基金積立フローの中期目標化と起債発行余力の計画的活用を、世代間負担調整の考え方とともに中期財政計画に組み込みます。
包括的な資産管理
大田区公共施設等総合管理計画に基づく長寿命化・複合化・集約化・民間活力活用・未利用地利活用を組み合わせた総量抑制と適正配置を推進します。
業務プロセス改革と職場投資
DX・生成AI・RPAによる定型業務自動化、業務委託の質的見直し、複数自治体での共同調達、事業評価に基づく事務事業の見直しを一体的に進めるとともに、処遇改善・メンタルヘルス対策・育児介護両立支援等のエンプロイヤーブランディング投資により職員確保困難に対応します。
税源対策の実施
特別区長会・東京都と連携した制度抜本見直し要求を継続し、同時に返礼品拡充・シティプロモーション・独自の寄附受入策により流出抑制と受入拡大を図ります。
行財政改革および経営改革の継続的実行
既に策定済みの計画の着実な実行と進捗モニタリング、外部環境変化への機動的見直しが、中期的な経営改革の継続的成果に直結します。
「ヒト」という経営資源における深刻な課題
また、これら戦略軸の実行を支える前提として、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中でも「ヒト」の問題への対応が極めて重要な論点となります。
大田区の人件費は令和元年度の413.7億円から令和5年度の382.7億円へ▲7.5%減少した一方、歳出総額は2,755.4億円から3,123.3億円へ+13.4%拡大しており、職員1人当たりが担う歳出規模の負担はコロナ禍4年間でさらに大きく増しています。会計年度任用職員制度の編入という人件費の押し上げ要因を考慮すれば、常勤職員ベースの実質的な縮減はさらに大きく、決算額と業務量は必ずしも比例しないとはいえ、職員1人が背負う行政運営の規模感が4年間で一段と増している事実は明白です。職員定数管理に関する計画が示唆する「業務量が職員定数を上回る転換期(令和14年度頃)」の到来は、財政指標のいずれよりも深刻な構造課題です。
現場職員の負担と組織の持続可能性
さらに、職員のプライベートな側面についても看過できません。以下のような要因が複雑に絡み合い、職員一人ひとりが家庭で担う負担も従来比で大きく増しています。
共働き世帯の一般化
家庭内での協力と就労維持の両立が不可欠となっています。
乳幼児・未就学児を持つ世帯への負担集中
初期の育児ケア負担が特定の年齢層の職員に集中しています。
親世代の介護問題の本格化
いわゆるダブルケア問題を含み、時間的制約をもたらしています。
一人の人間が公務員として担えるキャパシティという観点から見ると、現場はかなり厳しい状況にあるのではないかと推察されます。コロナ禍4年間の対応がこの構造を一段と顕在化させたといえます。メンタル不調による病気休職者の増加傾向が公務職場の課題として指摘される背景には、職場と家庭双方からの過重負荷が複合的に作用している可能性があると考えられます。
自治体経営としての最重要論点
だからこそ、大田区の自治体経営としては、持続可能な財政運営に加えて「業務量の削減」を経営上の最重要課題として位置づけることが求められます。具体的には、方向性①の扶助費給付プロセス効率化、方向性④のDX・生成AI・RPAによる定型業務自動化と事業評価に基づく事務事業の見直し、複数自治体での共通業務の共同化等を一体的に推進し、限られた人的資源で持続可能な行政サービスを提供できる体制を構築することこそが、令和9年度以降の大田区経営の最重要論点であると結論づけられます。
参考資料
主要なデータ元
公益財団法人特別区協議会「特別区の統計」令和2年版(令和元年度決算)・令和6年版(令和5年度決算)
国の公開統計情報
総務省「地方公共団体の主要財政指標一覧」令和元年度・令和5年度、e-Stat地方財政状況調査(統計コード00200251)、国土交通省国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」
外部関係機関資料
東京都「令和7年度都区財政調整方針」関連資料、公益財団法人特別区協議会「都区財政調整制度のあらまし」、特別区人事委員会「特別区職員採用試験(選考)実施状況」
区の公式情報および経営計画等
大田区公式ホームページ「令和8年度予算の概要」「令和8年度予算 予算編成過程の公表」「大田区のふるさと納税」「学校施設の改築」関連資料、大田区基本構想、大田区基本計画、大田区実施計画、持続可能な自治体経営実践戦略(令和7年3月策定)、大田区公共施設等総合管理計画、大田区公共施設改築・改修等中期プラン、大田区学校施設個別施設計画




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