【行政分野別レポート】2026骨太の方針:経済財政運営と改革の基本方針2026原案
- はじめに:骨太の方針2026とは(いつ閣議決定されるのか)
- 骨太の方針2026(原案)の概要
- (参考)骨太の方針とは
- (参考)骨太の方針2026と特別区の予算編成サイクルとの関係
- 特別区職員が骨太の方針2026原案を把握すべき理由
- 骨太の方針2026原案の全体像
- 骨太の方針2026による財政運営・予算編成の転換
- 子育て・こども政策
- 教育政策
- 社会保障(医療・介護・年金)政策
- 共生社会(外国人)政策
- デジタル(AX・DX)政策
- 地域経済・産業・賃上げ政策
- まちづくり・住まい・インフラ政策
- 防災・国土強靱化・副首都政策
- まちの安全・安心政策
- 構造改革(地方行財政・税財政)
- 骨太方針2025からの新規・拡充事項の総括
- まとめ:骨太の方針2026原案の要点と特別区の対応
はじめに:骨太の方針2026とは(いつ閣議決定されるのか)
骨太の方針2026とは、政府の経済財政政策の基本方針と翌年度の予算編成方針を示す文書「経済財政運営と改革の基本方針2026」の通称です。内閣総理大臣が経済財政諮問会議に諮問し、同会議の審議・答申を経て閣議決定されます。骨太の方針2026(原案)は、令和8年(2026年)6月30日の経済財政諮問会議で公表されました(内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」)。高市内閣として初めての骨太の方針であり、閣議決定は令和8年7月中旬に行われる予定です。本記事は、閣議決定前の原案段階の内容を、東京都特別区の職員向けに行政分野別へ整理して解説します。
骨太の方針2026原案の要点を先に整理します。第一に、財政運営の目標を、従来のプライマリーバランス(PB)黒字化の早期実現から、国・地方の債務残高対GDP比の安定的低下を中核とする枠組みへ改めました。第二に、シーリング(要求上限)を設けない『「強く豊かな日本」投資枠』を創設し、補正予算依存から脱却します。第三に、17の戦略分野・62の主要な製品・技術等へ2040年度まで累計370兆円超の官民投資を想定する「日本成長戦略」と、AI活用を前提とする社会への転換(AX:AIトランスフォーメーション)を前面に据えました。特別区にとっては、税源偏在是正が「令和8年度与党税制改正大綱に沿って具体的な取組を講ずる」段階に進んだこと、そして社会保障の給付と負担の改革が期限付きで並んだことが、最重要の論点となります。
骨太の方針2026(原案)の概要
令和8年6月30日、経済財政諮問会議において「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」(いわゆる骨太の方針2026の原案)が公表されました。高市内閣として初めての骨太の方針であり、前年の骨太方針2025(石破内閣、令和7年6月13日閣議決定)からの最大の変化は、経済財政運営の基本思想そのものの転換です。原案は「責任ある積極財政」を掲げ、財政運営の目標を、従来のプライマリーバランス(PB)黒字化の早期実現から、債務残高対GDP比の安定的低下を中核とする枠組みへ改めました。あわせて、骨太方針2024で定められた「経済・財政新生計画」(対象期間2025〜2030年度)を刷新し、第3章を2027〜2040年度を計画期間とする「中長期経済財政計画」として位置づけ直しています。
予算編成の在り方も抜本的に見直されます。令和9年度(2027年度)を「責任ある積極財政元年」と位置づけ、シーリング(要求上限)を設けない『「強く豊かな日本」投資枠』の創設、補正予算依存からの脱却(補正は真に緊要性の高い施策に限定し、恒常的な施策は当初予算で措置)、「予算措置は原則3年以内」とする基金ルールの不適用を含む抜本見直しが打ち出されました。政策面では、17の戦略分野・62の主要な製品・技術等への「危機管理投資・成長投資」を核とする「日本成長戦略」、地方創生2.0を発展させた「地域未来戦略」、AI活用を前提とする社会への転換(AX)が三本柱的に配置されています。
特別区にとって特に重要なのは、第一に、社会保障分野で「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」との方針が明記され、高齢者の医療費窓口負担の見直し(原案では調整中の【P】扱い)や介護保険2割負担の判断基準見直しなど、給付と負担の改革が令和9年度予算編成過程・2026年度中の結論として並んだ点、第二に、地方行財政の項で「令和8年度与党税制改正大綱に沿って、偏在性の小さい地方税体系の構築に向けた具体的な取組を講ずる」と記載され、特別区の固定資産税・法人住民税に関わる税源偏在是正の議論が骨太の方針レベルで追認された点、第三に、防災庁の設置(地方機関の防災局を含む)、副首都整備、外国人政策の総合的対応策の推進など、区の実務に直結する新規事項が多数盛り込まれた点です。骨太の方針は夏の概算要求から年末の政府予算案・税制改正大綱へと続く国の予算編成サイクルの起点であり、特別区の令和9年度予算編成と並行して国の制度・財源の方向性を規定するものとして、把握が不可欠です。
(参考)骨太の方針とは
経済財政運営と改革の基本方針(通称:骨太の方針)とは、政権の経済財政政策の基本方向と翌年度予算編成の方針を示す文書であり、経済財政諮問会議での審議を経て例年6月頃に閣議決定されます。各府省の概算要求(例年8月末)はこの方針に沿って行われ、年末の予算編成・与党税制改正大綱へとつながるため、翌年度の国の政策・財源の骨格を最も早い段階で示す一次資料といえます。今回公表されたのは閣議決定前の「原案」であり、一部に【P】(ペンディング、調整中)の表記が残る点に留意が必要です。特に外交・安全保障の一部、税制改革の具体的方向、高齢者医療の窓口負担見直しなどが調整中とされており、閣議決定版で表現が変わる可能性があります。
(参考)骨太の方針2026と特別区の予算編成サイクルとの関係
国の予算編成は、6月の骨太の方針、8月末の概算要求、12月の与党税制改正大綱・政府予算案閣議決定、翌年通常国会での審議というサイクルで進みます。特別区の令和9年度予算編成も夏の予算見積から秋の査定、年明けの予算案確定へと本格化するため、骨太の方針で示された国の制度・財源の方向性を夏の段階で把握しておくことは、区の新規事業の企画、国・都補助の見込み立て、財源スキームの検討において先行的な優位性をもたらします。とりわけ今回は予算編成手法そのものの変更(投資枠の創設、補正依存からの脱却)が予告されており、国庫補助事業の計上時期や交付金の出方が従来と変わる可能性がある点で、例年以上に注視が必要です。
特別区職員が骨太の方針2026原案を把握すべき理由
第一に、都区財政調整制度と特別区税の外部環境を規定する税財政の論点が含まれている点です。後述するとおり、偏在性の小さい地方税体系の構築が「令和8年度与党税制改正大綱に沿って具体的な取組を講ずる」段階に進んだと読める記述となっており、令和9年度税制改正で結論を得るとされる法人事業税資本割の特別法人事業税化や特別区の固定資産税に関する措置の検討と直結します。財政・企画部門が最優先で追うべき領域です。
第二に、社会保障の給付と負担の改革が具体的な期限付きで並んだ点です。高齢者の窓口負担、介護保険の利用者負担、OTC類似薬の保険給付範囲、医療・介護保険における金融所得の扱いなど、国保・後期高齢者医療・介護保険の保険者(または広域連合構成員)である特別区の保険料設定・窓口実務・住民説明に直接影響し得る検討項目が、2026年度中または令和9年度予算編成過程での結論として明記されています。
第三に、予算編成手法の転換が国庫補助・交付金の流れを変え得る点です。補正予算依存からの脱却が明記されたことで、これまで補正予算で措置されてきた学校施設整備、防災・減災、デジタル関連などの国庫補助が当初予算化される場合、区の予算計上・繰越・執行のリズムにも影響します。基金ルールの見直しは、国の基金を通じた自治体向け支援の期間設計を変える可能性があります。
第四に、防災庁設置、副首都整備、外国人政策、こども自殺対策など、区の組織・実務に直結する新規事項が多い点です。特に防災庁の地方機関(防災局)設置や、こども自殺対策における「地方公共団体に対して抜本的な支援体制の強化を要請」との記述は、区の体制整備に直接の含意を持ちます。
第五に、骨太方針2025との差分を読むことで、政権交代に伴う政策の力点の移動を把握できる点です。地方創生2.0から地域未来戦略へ、PB黒字化目標から債務残高対GDP比中心の管理へ、一律抑制型シーリングから投資枠へという転換は、国と地方の財政関係の前提を中期的に変えるものであり、区の中期財政計画・基本計画改定の背景認識として押さえておく価値があります。
骨太の方針2026原案の全体像
「責任ある積極財政」という基本思想の転換
原案の第1章は、潜在成長率の低迷を「未来への投資不足」に求め、主要先進国で官民連携の大規模・長期の産業政策が潮流となっていることを「経済財政運営の在り方そのもののコペルニクス的転回」と表現した上で、「責任ある積極財政」の考え方の下、政府が一歩前に出て戦略分野への投資を進めるとしています。リスクを最小化する「危機管理投資」と先端技術を花開かせる「成長投資」という二つの投資概念が全編を貫き、財政単年度主義の弊害是正、予算の作り方の根本的な見直しが宣言されています。骨太方針2025が「賃上げこそが成長戦略の要」を掲げ、経済あっての財政の考え方の下でPB黒字化目標を維持していたのと比べると、成長投資への傾斜と財政規律の指標変更が明確な転換点です。
骨太の方針2026原案の章立てと主要な政策パッケージ
構成は、第1章がマクロ経済運営の基本的考え方、第2章が日本の成長力強化と安全・安心の確保(強い経済、強い外交・安全保障、国民の安全・安心)、第3章が責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」(財政運営、全世代型社会保障、少子化・教育・社会資本・地方行財政)、第4章が当面の経済財政運営と令和9年度予算編成に向けた考え方です。個別施策は「日本成長戦略」「地域未来戦略」「規制改革実施計画」等の政策パッケージに委ね、骨太は方向性と重点化の考え方を示す建付けとされています。17の戦略分野にはAI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、防衛産業、造船、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靱化、コンテンツなどが含まれ、62の主要な製品・技術等について官民投資ロードマップが整備されます。2040年度までの累計で370兆円を超える官民投資が想定され、成長戦略の効果が十分に発現した場合には2040年度にGDP1,100兆円に迫るとの試算が引用されています。
骨太の方針2026の数値目標(債務残高対GDP比・PB)と財政運営の新たな枠組み
財政運営の目標は、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的低下を中核に位置づけ、PBは「債務残高対GDP比の低下に向けて確認する指標」として複数年で管理し、単年度の黒字化時期を機械的に追わないとされました。骨太方針2025が「2025年度から2026年度を通じて、可能な限り早期の国・地方を合わせたPB黒字化を目指す」としていたのと比べ、目標の位置づけが根本的に変わっています。経済目標としては、2%の物価安定目標の下、できるだけ早期に実質1%超・名目3%超の経済成長の定着を掲げています。賃上げでは、2029年度までに実質賃金年1%程度の上昇をノルムとして定着させる方針を骨太方針2025から継承しつつ、最低賃金の全国平均1,500円については「遅くとも2030年代前半できる限り早期に」達成すると、到達時期の表現が具体化されました。
骨太の方針2026による財政運営・予算編成の転換
『「強く豊かな日本」投資枠』の創設
令和9年度予算編成の最大の制度変更が、通常歳出とは別に創設される『「強く豊かな日本」投資枠』です。国内民間設備投資や潜在成長率を大きく引き上げる効果の高い措置を対象とし、複数年度の計画に基づくものを基本として、要求上限(シーリング)を設けず事項要求も含めて必要な額を要求できる仕組みとされます。経済安全保障上特に重要な分野などについては、複数年度で財源を確保した上で、償還財源の裏付けのある「つなぎ国債」の発行により特別会計で別枠管理するとされています。
補正予算依存からの脱却と基金ルールの抜本見直し
従来の大規模経済対策に基づく補正予算依存の財政運営から脱却し、補正予算は真に緊要性の高い施策に限定、恒常的な施策は当初予算で措置する方針が明記されました。補正予算と当初予算の区分の考え方は2026年内に改定される予算編成の基本方針に反映されます。基金については、「予算措置は原則3年以内」とする現行ルールの不適用を含め、令和9年度予算編成に向けて基金ルールの抜本的な見直しを具体化するとされ、一律・機械的な期間設定にとらわれない予算措置を可能とする方向です。あわせて、概算要求では一律抑制型を見直し、人件費・庁費・補助費・委託費それぞれに物価・賃金上昇を反映した適切な単価改定を行うこと、公定価格や各種基準額・閾値の点検・見直しを進めることが示されています。
特別区への示唆(財政運営・予算編成)
予算編成手法の転換は、国庫支出金・都支出金を通じて区の財政運営に波及します。まず、恒常的施策の当初予算化が実現すれば、これまで国の補正予算を待って年度途中に計上・繰越してきた学校施設、防災、デジタル関連等の補助事業の予算計上リズムが変わる可能性があり、区の予算編成・繰越制度の運用を点検しておく価値があります。次に、投資枠やつなぎ国債による複数年度の大型投資支援は、自治体向けにも複数年の交付金・基金として設計される可能性があり、区の実施計画・公共施設整備計画との整合を取りやすくなる反面、国の重点分野(AI・半導体、GX、国土強靱化等)と区の需要が一致しない領域では相対的に財源が細るリスクもあります。さらに、概算要求段階からの単価改定(物価・賃金反映)は、国の補助単価・委託単価の改善につながり得るため、区が慢性的な超過負担を抱える補助事業について、単価の実態と国基準の乖離を数字で整理しておくことが、令和9年度の要望活動の材料になります。
子育て・こども政策
こども未来戦略の継続と公定価格・両立支援の拡充
少子化対策とこども・若者・子育て支援は「こども未来戦略」等に基づき一体的・総合的に推進するとされ、保育士・幼稚園教諭等の処遇改善に加え、「地域区分を含む公定価格の見直し」が明記されました。幼児教育・保育に係る要領等の共通化、こども政策DXも進められます。仕事と家庭の両立支援では、質の高いベビーシッター・家事支援サービスの利用促進、企業等の活力も活かした放課後の居場所や病児保育の充実、子育て世帯向けの住宅供給の促進が並び、「こどもとともに成長する企業構想」の推進が新たに掲げられました。骨太方針2025で明記されていたこども誰でも通園制度の全国展開や子ども・子育て支援金制度の導入準備は、こども未来戦略の枠内で継続する前提と読めます。
こどもの自殺対策とネット環境・性暴力対策の強化
今回の原案で目を引くのが、「こどもの命と安全を守り抜くため、地方公共団体に対して抜本的な支援体制の強化を要請するなど、こどもの自殺対策のギアを一段上げる」との記述です。あわせて、こどもを性暴力から守る措置(日本版DBS関連)の着実な実施、G7の合意等も踏まえた青少年インターネット環境整備法改正案の次期通常国会への提出等を目指すことが明記されました。若者政策では、大規模調査を踏まえた基本設計、地域での包括的なモデル事業の創設が新規に掲げられ、国と地方の連携では「財政力の低い地方公共団体への支援を強化する」との記述が加わっています。
特別区への示唆(子育て・こども政策)
こども自殺対策について国が地方公共団体へ「抜本的な支援体制の強化を要請」する方針は、教育委員会・子ども家庭部門・保健部門にまたがる区の体制点検を促すものです。SC・SSWの配置状況、校内外の居場所、医療・福祉との連携経路を棚卸しし、国の支援メニュー具体化を待たずに現状の隙間を把握しておくことが、令和9年度の体制要求の根拠になります。公定価格の地域区分見直しは、人件費・賃借料が高い特別区の保育所・認定こども園の経営環境に直結するプラス要因となり得る一方、区の保育行政費の国基準への連動も変わるため、財政部門と子育て部門が共同で影響試算を行う価値があります。日本版DBSの施行準備は、区立学校・保育所・児童館等の設置者としての事務負担が令和9年度に本格化する見込みであり、人事・法務を含む横断的な準備体制の確認が引き続き必要です。
教育政策
AI活用を前提とした学びと高等教育の構造改革
教育分野では、児童生徒の発達段階に応じたAI活用の指導を後押しするため、学校向けAI指針を速やかに改定するとされ、GIGAスクール構想の推進と安全かつ主体的なAI活用の環境整備・実証研究が掲げられました。高等教育では、2030年までを第1期として大学等の機能強化と規模適正化を総合的に推進し、「18歳中心主義からの脱却」、成長分野への学部再編、人文社会系のダウンサイジングと理数分野併修による質の向上、大学の経営体力ある段階での撤退といった、骨太方針2025にはなかった踏み込んだ構造改革の表現が並んでいます。高校教育改革については、高等学校教育改革促進基金による支援のほか、「安定財源を確保した上で、交付金等の新たな財政支援の仕組みの構築」が明記されました。
教師の処遇改善・定数改善と学校環境整備
教師については、2029年度までの時間外在校等時間の月30時間程度への縮減目標、教職調整額の2030年度までの10%への引上げが骨太方針2025から継承され、「定数改善計画を着実に推進する」との表現になりました(2025年版では2026年通常国会への義務標準法改正案提出と中学校35人学級実現に向けた定数改善が明記されており、法改正を経た実施段階に入った位置づけと考えられます)。学校の教育環境向上と老朽化対策を地方公共団体等が一体的・計画的に進められるよう着実に支援するとの記述、物価上昇下においても修学支援新制度・授業料後払い制度を着実に実施するとの記述も盛り込まれています。科学技術分野では、令和8年3月に閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画の下、国立大学法人運営費交付金や科研費の「大幅な拡充」、科研費の全面基金化が掲げられました。
特別区への示唆(教育政策)
区立小中学校を所管する特別区にとって、学校向けAI指針の改定は、区教委のICT活用方針・生成AIガイドラインの改定時期を規定します。指針改定を待って区の対応を検討するのではなく、既に生じている教員・児童生徒のAI利用実態を把握し、改定後速やかに区の方針へ落とし込める準備が有効です。中学校35人学級を含む定数改善の着実な推進は、教室数の確保・改修需要として区の学校施設計画に跳ね返るため、児童生徒数推計と教室転用可能性の精査を令和9年度予算に織り込む必要があります。学校老朽化対策への「一体的・計画的」支援の明記は、区の学校施設長寿命化計画の改定・前倒しの追い風となる可能性があり、環境整備(空調・トイレ・断熱)とあわせた要求根拠として活用できます。
社会保障(医療・介護・年金)政策
現役世代の保険料率引下げ方針と給付・負担改革の工程
社会保障分野の最大の変化は、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」との方針が繰り返し明記され、マクロ的な社会保障負担率の目標について検討を進めた上で、社会保障改革について「2026年度中に改革の具体化と工程の明確化を図り、順次実施する」とされた点です。脚注では、2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組むことも示されています。給付と負担の見直しでは、高齢者の受診行動や所得状況等を踏まえた医療保険の窓口負担の見直しについて令和9年度予算編成過程で結論を得るとの記述が【P】(調整中)として置かれ、介護保険の2割負担の判断基準の見直しは2026年度中に結論、医療・介護保険における金融所得・資産の扱い、OTC類似薬の保険給付見直しの施行と2027年度以降の対象範囲拡大の検討も明記されました。
診療報酬・介護報酬の物価対応と提供体制改革
医療・介護等の公定価格については、経営情報の見える化を進めた上で物価と賃金の変動に適切に対応するとされ、経済・物価動向が2026年度診療報酬改定時の見通しから大きく変動し医療機関等の経営に支障が生じた場合には、「令和9年度予算編成過程で診療報酬上の加減算を含む更なる必要な調整を行う」との、改定を待たない期中調整の仕組みが明記されました。次期介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定(令和9年度改定)では、物価の変動への対応とともに「他職種と遜色のない処遇改善の実現」を図るとされています。提供体制では、2040年に向けた病床数の適正化、2027年度以降の新たな地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化、総合的な医師偏在対策、2028年度以降の医学部定員の削減が掲げられました。「攻めの予防医療」の推進、いわゆる国民皆歯科健診の具体化、医療情報化推進方針の策定と電子カルテ・電子処方箋の普及も新たな力点です。
特別区への示唆(社会保障政策)
国民健康保険の保険者であり後期高齢者医療広域連合の構成団体でもある特別区にとって、高齢者の窓口負担見直しと金融所得の保険料への反映は、住民への影響が大きく問い合わせ・窓口対応の増加が見込まれる論点です。令和9年度予算編成過程での結論とされている以上、年末の予算編成・制度改正の動きを国保・高齢者医療部門が継続的に追い、システム改修・周知の準備リードタイムを見込んでおく必要があります。介護保険では、2割負担の判断基準見直しの2026年度中の結論が、令和9年度からの第9期途中または第10期介護保険事業計画期間の負担構造に影響し得るため、次期計画策定作業と並行した情報収集が求められます。次期介護報酬改定における物価対応と処遇改善は、物件費・賃借料の高い区内事業者の経営環境に直結するプラス材料であり、区の事業者支援策(家賃補助・人材確保支援等)との役割分担を再整理する契機となります。診療報酬の期中調整の仕組みは、区立病院・公社病院や地域医療機関の経営見通しに関わるため、保健医療部門が動向を把握しておく価値があります。
共生社会(外国人)政策
総合的対応策に基づく秩序ある共生の制度化
外国人政策は、骨太方針2025の「外国人との秩序ある共生社会の実現」から一段と具体化され、令和8年1月23日決定の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」に基づき、一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に毅然と対応し、国民の不安や不公平感への対処を進めるとの記述になりました。在留許可手数料の見直しやJESTA(電子渡航認証制度、2028年度中導入)の手数料収入を財源として出入国在留管理庁の体制を抜本強化すること、「不法滞在者ゼロプラン」の強力な推進が明記されています。共生の側では、日本語及び我が国の制度・ルール等の教育の強化、「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の創設、プレスクール等の全国展開が新規に掲げられ、外国人の受入れの基本的な在り方について有識者会議の議論を経て2026年度中に基本方針を取りまとめるとされました。また、外国人の土地取得等のルールの骨格を2026年夏に取りまとめ、重要土地等調査法の執行体制強化、地下水の適正な保全・利用の仕組みや土地の取得・利用に関する情報把握・監督の制度整備も明記されています。
特別区への示唆(外国人政策)
外国人住民が増加を続ける特別区にとって、日本語・生活学習プログラム(仮称)やプレスクールの全国展開は、区が担ってきた日本語教育・就学前支援に国の制度と財源が乗る可能性を意味し、既存の区事業(日本語教室、多文化共生施策、教育委員会の日本語指導)との接続設計が令和9年度の企画論点となります。他方、出入国在留管理の厳格化や不法滞在者対策の強化は、窓口での在留資格確認、国保・住基の適正化事務、税・保険料の収納対策と関わるため、国の運用変更が区の窓口実務に及ぼす影響を注視する必要があります。2026年度中に取りまとめられる受入れの基本方針と2026年夏の土地取得ルールの骨格は、いずれも区の計画・実務の前提を更新し得るものであり、企画・地域振興・税務・教育の各部門が横断的にフォローすべき事項です。
デジタル(AX・DX)政策
「AIを前提」とした社会への転換と推進体制の再編
デジタル分野は、骨太方針2025のDX推進からAX(AIトランスフォーメーション)へと看板が進化しました。「信頼できるAI」で社会全体を駆動するAXに国を挙げて取り組むとし、デジタル行財政改革会議を改組して人工知能戦略本部・規制改革推進会議等と一丸となり、AIの開発・利活用に係る法制度やガイドラインの能動的・抜本的な見直しを行うとされています。改定される人工知能基本計画を踏まえ、開かれたAI主権の確立、AI・データ基盤の整備が掲げられ、フィジカルAI(特にAIロボット)が17の戦略分野の筆頭級の製品・技術に位置づけられました。自動運転社会の早期実現に向けた環境整備、データ利活用の環境整備も継続します。
自治体AX/DXと標準化・セキュリティ
地方行財政の項では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等に沿って、自治体AX/DX、地方公共団体のサイバーセキュリティ強化、標準準拠システムへの移行・運用最適化を進めるとされました。骨太方針2025の「標準準拠システム移行に向けた取組とともに、移行後のシステム運用経費に係る総合的な対策」との記述から、移行と運用最適化を並記する段階に進んでいます。
特別区への示唆(デジタル・AX/DX政策)
標準準拠システムへの移行が続く特別区の情報システム部門にとって、「運用最適化」への力点移動は、移行後のランニングコスト(ガバメントクラウド利用料等)の抑制策と国の財政措置の行方が令和9年度以降の主戦場になることを示唆します。移行経費・運用経費の実績と見込みを区として整理し、超過負担の実態を数字で示せるようにしておくことが、都・国への要望と区の予算査定の双方で有効です。自治体AXについては、国のAI基盤・共同利用の枠組みが具体化する前に、区の生成AI利用の実績・ユースケース・リスク管理ルールを蓄積しておくことで、国の基盤が提供された際の乗り換え・併用の判断を主体的に行えます。サイバーセキュリティ強化は、標準化・クラウド化後の責任分界の再整理とセットで、情報政策部門が令和9年度の体制・予算に反映すべき論点です。
地域経済・産業・賃上げ政策
地方創生2.0から「地域未来戦略」へ
地域政策は、骨太方針2025の「地方創生2.0(令和の日本列島改造)」から、「地域未来戦略」へと枠組みが再編されました。47都道府県のどこに住んでいても安全に生活でき、医療・福祉・教育・雇用が確保される社会を目指すとし、都道府県を超えた地域ブロック単位の「戦略産業クラスター計画」への大胆な投資支援とインフラ整備、地域発のアイデアに基づく「地域産業クラスター計画」「地場産業成長プラン」を支える「地域未来交付金」の拡充が掲げられています。各地域の投資の進捗を把握・公表する「国内投資マップ」の定期改定、地域の中堅・中核企業へのAI導入(地域AX)も新規の枠組みです。
賃上げ・最低賃金と官公需の価格転嫁
賃上げでは、2029年度までに実質賃金年1%程度の上昇をノルムとして定着させる方針を継承しつつ、最低賃金は「遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成」と時期の表現が具体化されました。官公需については、「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」により、2027年度末までに実勢価格を踏まえた予定価格の作成、低入札価格調査制度又は最低制限価格制度の導入・適用等を100%実施するとの数値目標が明記されています。中堅・中小企業支援では『労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略』に基づく支援、省力化投資促進プランの充実・拡充が掲げられました。
特別区への示唆(地域経済・賃上げ・官公需)
官公需の価格転嫁100%実施目標は、発注者としての特別区に直接の行動を求めるものです。区の契約部門は、予定価格への実勢価格・労務費の反映状況、低入札価格調査制度・最低制限価格制度の適用範囲を点検し、2027年度末の目標年次から逆算した運用改善を令和9年度に計画化する必要があります。これは区内事業者の賃上げ原資確保という産業政策でもあり、契約・産業振興・財政の三部門が共通認識を持つべき論点です。最低賃金の継続的な引上げは、区の会計年度任用職員の報酬水準、指定管理料・委託料の積算に波及するため、人件費上昇を織り込んだ複数年の財政見通しの更新が求められます。地域未来交付金の拡充は、特別区が対象となる範囲・メニューが具体化した段階で、区の産業振興・スタートアップ支援施策との接続を検討する価値があります。
まちづくり・住まい・インフラ政策
インフラマネジメントと都市政策
持続可能で活力ある国土の形成として、二地域居住も活用した地域生活圏と新たな広域圏の形成、「令和の都市(まち)リノベーション」による稼ぐ力と防災力の強化、コンパクト・プラス・ネットワークの深化が掲げられました。インフラは予防保全型への転換と見える化、老朽化対策とまちづくりの連携、優先度を踏まえた集約・再編が明記され、建築・都市のDXやジオAIの活用が新たに加わっています。防災等に資する空き家対策と所有者不明土地等対策の一体的推進、住宅ストック価値の最大化、マンションの管理適正化・再生円滑化(骨太方針2025から継続)も引き続き位置づけられています。公共事業評価については、費用便益比等に過度に依拠せず、国家戦略・防災減災・国土強靱化・地域の命と暮らしを守る基盤機能等を踏まえた総合評価へ見直すとともに、近年の金利状況等を踏まえ社会的割引率を見直すとの、事業採択の考え方に関わる新規の記述が置かれました。
特別区への示唆(まちづくり・インフラ政策)
公共事業評価の見直し(費用便益比への過度な依拠の是正、社会的割引率の見直し)は、国直轄・補助事業の採択範囲を広げる方向に働く可能性があり、区部の連続立体交差、無電柱化、都市計画道路、治水など、B/Cで足踏みしてきた事業の位置づけが変わり得ます。関係区のまちづくり・土木部門は、都と連携して要望中の事業の評価上の課題を再点検する価値があります。老朽マンション・空き家対策は特別区の住宅政策の中心課題であり、国の管理適正化・再生円滑化の制度拡充と区のマンション施策(管理計画認定、実態調査、支援メニュー)の接続を、住宅マスタープラン改定の中で具体化することが引き続き求められます。インフラの予防保全転換は、区有施設・道路・橋梁の維持管理計画の高度化と国費確保の両面で、令和9年度の公共施設マネジメントの論点です。
防災・国土強靱化・副首都政策
防災庁の設置と令和の国土強靱化対策
防災分野では、防災庁を設置し、徹底的な事前防災の推進と発災時から復旧・復興まで一貫した政府全体の司令塔機能を強化すること、あわせて設置する「地方機関の防災局」により地域の防災力向上を支援することが明記されました。骨太方針2025が「2026年度中に設置する」としていた防災庁が、設置を前提とした運用段階の記述に進んでいます。「令和の国土強靱化対策」として、第1次国土強靱化実施中期計画(令和7年6月閣議決定)と国土強靱化年次計画2026に基づく施策を推進し、避難生活環境の抜本的改善、被災者支援体制の強化、緊急参集職員の処遇改善を含む防災人材の確保・育成、船舶活用医療、災害廃棄物処理体制の充実が並びます。千島海溝・日本海溝・首都直下・南海トラフ地震対策、富士山噴火等の火山災害対策も継続して明記されています。なお、脚注では、ガソリンのいわゆる暫定税率廃止の財源確保について令和9年度税制改正において結論を得るとされていることが、道路関連インフラ保全の重要性とあわせて言及されています。
副首都等の整備(新規)
今回新規に置かれたのが「副首都等の整備」の項です。国家社会機能の継続性の確保及び多極分散型経済圏を形成する観点から、法案の成立を前提に、首都中枢機能代替地域及び副首都の整備のための取組を進め、副首都を活用した先進的な規制改革の実装を進めるとされました。あわせて、首都直下地震等の大規模災害時に政府が意思決定機能を維持するため、政府の代替拠点及び首都中枢における防災性能の強化を、官民連携・規制緩和により民間資金を最大限活用して進めるとの記述も置かれています。
特別区への示唆(防災・国土強靱化・副首都)
防災庁と地方機関(防災局)の設置は、国・都・区の防災上の役割分担と情報連絡系統を再編する可能性があり、区の地域防災計画の次期修正において、国の新体制との接続(プッシュ型支援、被災者支援、広域避難)を反映する必要が生じます。避難生活環境の抜本的改善への国費措置は、区の避難所のトイレ・空調・パーティション・簡易ベッド等の備蓄・整備の要求根拠として活用でき、令和9年度予算での計画的な更新に接続できます。副首都構想と首都中枢機能の代替・強化の議論は、首都機能が立地する特別区にとって、都市計画・業務継続計画(BCP)・帰宅困難者対策の前提に関わる中長期の論点であり、企画・防災部門が制度設計の行方を注視すべき事項です。ガソリン暫定税率廃止の財源議論は、道路財源・地方譲与税を通じて区の歳入にも波及し得るため、令和9年度税制改正の議論を財政部門がフォローする必要があります。
まちの安全・安心政策
犯罪対策・消費者保護・生活環境リスク
治安分野では、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の撲滅に向けた「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」の推進、ストーカー対策、不正薬物・金密輸対策、防犯カメラの増設に向けた働き掛けの強化が並びます。マネロン対策等の観点から、法人の実質的支配者情報の登録等の立法化を早急に進めるとの記述も新たに置かれました。消費者行政では、悪質商法対策、デジタル取引の拡大等の社会変化に合わせた対応、地方消費者行政の継続的強化、食品ロス削減・消費者教育が掲げられています。生活環境では、次なる感染症危機への万全の対応に加え、クマ被害、外来生物、花粉症、熱中症、PFAS、土壌汚染への対応が明記されました。
特別区への示唆(まちの安全・安心政策)
特殊詐欺・トクリュウ対策は、高齢者人口の多い特別区での被害防止啓発、防犯カメラ設置補助、自動通話録音機貸与等の区施策と直結しており、国の総合対策の強化を踏まえた区の防犯事業の点検・拡充が令和9年度の論点となります。消費生活センターを運営する区にとって、地方消費者行政への継続的強化の明記は、相談員の人材確保・処遇改善と相談体制のデジタル対応の要求根拠になります。熱中症・PFAS等の生活環境リスクは、保健所設置区として住民への情報提供・検査対応の実務に関わるため、国の科学的知見の整理と支援策の具体化を保健衛生部門がフォローすべき事項です。
構造改革(地方行財政・税財政)
税源偏在是正:「令和8年度与党税制改正大綱に沿って具体的な取組を講ずる」
特別区の財政にとって最も重い記述が、持続可能な地方行財政基盤の強化の項に置かれています。「都市・地方の財政力格差及び行政サービスの地域間格差が拡大する中、令和8年度与党税制改正大綱に沿って、偏在性の小さい地方税体系の構築に向けた具体的な取組を講ずる」との一文です。骨太方針2025が「拡大しつつある地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む」と分析段階の表現だったのに対し、今回は与党税制改正大綱を引いて「具体的な取組を講ずる」段階に進んでいます。令和8年度与党税制改正大綱(令和7年12月)には、法人事業税資本割を特別法人事業税・譲与税の対象とすること等を検討し令和9年度税制改正で結論を得ること、特別区の固定資産税にも必要な措置を検討し令和9年度以降の税制改正で結論を得ることが明記されたとされており、骨太の方針がこの方向を政府方針として追認した形と読めます。
地方一般財源の確保と大都市の行政体制の検討
地方の一般財源総額については、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額について、2026年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保し、国の予算編成の転換を踏まえつつ経済・物価動向等を的確に反映するとされました。また、地方制度調査会の調査審議を踏まえ、「国・都道府県・市町村の役割分担の新たな考え方、大都市地域における行政体制等について検討する」との記述が置かれ、広域リージョン連携の強化、地方からの提案を踏まえた行政サービスの生産性向上改革も掲げられています。
特別区への示唆(地方行財政・税源偏在是正)
税源偏在是正の「具体的な取組」への移行は、特別区財政の根幹に関わる最優先の監視事項です。固定資産税は都が徴収し都区財政調整交付金の原資(調整税)の中核をなす税目であり、仮に所在地以外への配分を含む措置が令和9年度税制改正で具体化すれば、調整税収の減少を通じて特別区財政調整交付金の原資が縮小する経路が生じ得ます。法人事業税資本割の特別法人事業税化も、都財政の悪化を通じて都区の財政環境全体に波及します。財政・企画部門は、年末の与党税制改正大綱に向けた政府・与党の議論、特別区長会・都の要望活動の動向を最優先で追い、影響額の試算と区としての主張(応益性の原則、大都市需要の実態)を整理しておく必要があります。あわせて、地方制度調査会での「大都市地域における行政体制等」の検討は、都区制度・特別区制度に関わる議論へ発展する可能性を含むため、中長期の制度論として企画部門が経過を記録・分析しておく価値があります。一般財源総額の実質同水準確保は交付団体を念頭に置いた記述であり、不交付団体である特別区(都区合算規定の下では別の構造)にとっては、地方財政計画の歳出水準よりも、調整税・特別区税の税制改正動向の方が実質的な影響要因である点も、庁内説明では正確に区別することが重要です。
骨太方針2025からの新規・拡充事項の総括
最後に、骨太方針2025(令和7年6月13日閣議決定)と比較した骨太方針2026原案の主な新規・拡充事項を分野別に総括します。財政運営では、PB黒字化目標から債務残高対GDP比の安定的低下を中核とする目標への変更、中長期経済財政計画(2027〜2040年度)の策定、『「強く豊かな日本」投資枠』の創設、補正予算依存からの脱却、基金ルール(原則3年以内)の不適用を含む抜本見直しが、いずれも新規の枠組みです。成長戦略では、17の戦略分野・62の主要製品技術・官民投資ロードマップ・2040年度までの累計370兆円超の官民投資想定、フィジカルAIを軸とするAXの全産業展開が新規であり、地域政策では地方創生2.0から地域未来戦略(戦略産業クラスター計画・地域未来交付金の拡充・国内投資マップ)への再編が行われました。
社会保障では、現役世代の保険料率の上昇を止め引き下げる方針と社会保障負担率目標の検討、2026年度中の改革具体化・工程明確化、高齢者の窓口負担見直しの令和9年度予算編成過程での結論(原案では調整中)、介護2割負担判断基準の2026年度中の結論、診療報酬の期中調整の仕組みが、期限を伴う新規・拡充事項です。教育では、学校向けAI指針の速やかな改定、高等教育の機能強化と規模適正化(18歳中心主義からの脱却、人社系ダウンサイジング)、高校教育改革への交付金等の新たな財政支援、運営費交付金・科研費の大幅拡充と科研費全面基金化が新しい表現です。外国人政策では、総合的対応策(令和8年1月)に基づく不法滞在者ゼロプランの推進、日本語・生活学習プログラム(仮称)の創設、受入れ基本方針の2026年度中の取りまとめ、土地取得ルールの骨格の2026年夏の取りまとめが新規です。防災・国土では、防災庁の設置(地方機関の防災局を含む)の運用段階への移行、令和の国土強靱化対策、副首都等の整備、公共事業評価の総合評価への見直しと社会的割引率の見直しが挙げられます。そして地方行財政では、偏在性の小さい地方税体系の構築が「令和8年度与党税制改正大綱に沿って具体的な取組を講ずる」段階へ進み、地方制度調査会を踏まえた大都市地域における行政体制等の検討が明記されたことが、特別区にとって最大の変化です。
まとめ:骨太の方針2026原案の要点と特別区の対応
経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)は、高市内閣の下で経済財政運営の基本思想を「責任ある積極財政」へと転換し、財政運営目標・予算編成手法・成長戦略の枠組みを一体で刷新する内容となっています。危機管理投資・成長投資への傾斜、投資枠の創設、補正依存からの脱却は、国の予算の作り方そのものを変えるものであり、国庫補助・交付金を通じて特別区の予算編成のリズムと財源環境にも波及していくと考えられます。原案には【P】(調整中)の箇所が残っており、閣議決定版および年末の予算編成・与党税制改正大綱で表現・内容が変わる可能性がある点には留意が必要です。閣議決定版が公表された際は、内閣府「経済財政運営と改革の基本方針」のページで原文を確認できます。
特別区の各所管課にとっての実務的な優先順位を整理すると、財政・企画部門は税源偏在是正(特別区の固定資産税・法人事業税資本割)の令和9年度税制改正に向けた議論を最優先で追うこと、国保・介護・高齢者医療部門は給付と負担の改革の期限付き検討項目(窓口負担・2割負担・金融所得)の結論を注視すること、契約部門は官公需の価格転嫁100%実施目標への対応を計画化すること、防災部門は防災庁の体制と避難生活環境改善の国費措置を地域防災計画・備蓄計画に接続すること、教育・子育て部門はAI指針改定・定数改善・公定価格見直し・こども自殺対策の体制強化要請への対応を準備すること、情報政策部門は標準準拠システムの運用最適化とAXの動向を予算に反映することが挙げられます。要求や方針が直ちに制度化・予算化されるわけではなく、実現の程度は年末の予算編成・税制改正の過程で決まるという前提のもと、夏の予算見積段階から国の動きを先取りして区の対応シナリオを複数用意しておくことが、令和9年度の政策立案における優位性につながります。国が予算の作り方を変えようとしている年だからこそ、骨太の方針を正確に読み解くことの価値は例年以上に大きいといえます。
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。




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