【行政分野別レポート】政府:人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営(令和8年6月26日)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要
令和8年6月26日、財政制度等審議会(会長・十倉雅和)は、片山さつき財務大臣に対し、「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」と題する建議を取りまとめ、手交しました。建議とは、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会(財政制度分科会)が、今後の財政運営の基本的な考え方を政府に対して示す文書です。例年、春(6月頃)と秋〜冬(11〜12月頃、翌年度予算編成に向けたもの)の2回取りまとめられ、今回は「春の建議」に当たります。夏の各府省の概算要求や年末の政府予算案編成に向けて、財政当局側の基本的な立場・論点を最も早い段階で示す一次資料といえます。
同じく令和8年に公表された「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針2026)」が、高市内閣として「責任ある積極財政」を掲げ、投資枠の創設や成長投資への傾斜を打ち出した政府方針であるのに対し、本建議は、その「責任ある」の部分、すなわち財政規律・歳出改革・給付と負担の見直しを担う財政審の立場からの提言です。両者は補正予算依存からの脱却や社会保障改革、税源偏在是正といった点で方向性を共有する一方、投資枠や基金の扱いをめぐっては、建議が予見可能性・マイルストーン・財政規律との整合をより強く求めるなど、力点の違いも見られます。骨太の方針と本建議を併せて読むことで、令和9年度に向けた国の財政・制度の振れ幅を立体的に把握できます。
特別区にとって本建議が特に重い意味を持つのは、第一に、地方行財政の項で、東京都の財政力の突出と税源の偏在を具体的な数値とともに指摘し、「令和8年度与党税制改正大綱に沿って」偏在是正に取り組むべきとした点です。ここには、東京都が課税し都区財政調整制度の原資(調整税)の中核をなす特別区の土地に係る固定資産税に関する措置の検討や、法人事業税資本割の特別法人事業税化の検討が含まれ、特別区財政の根幹に直接関わります。第二に、社会保障分野で、国民健康保険の保険者・後期高齢者医療広域連合の構成団体・介護保険の保険者である特別区の実務に直結する給付と負担の見直し(高齢者医療の窓口3割負担化、介護2割負担の範囲拡大、国保保険料水準の完全統一、後期高齢者医療の都道府県化など)が、期限付きで多数並んだ点です。第三に、社会資本整備・行政効率化・広域化など、区の予算編成・組織運営の前提に関わる論点が示された点です。
(参考)財政制度等審議会の建議とは
財政制度等審議会は財務大臣の諮問機関であり、その財政制度分科会が、国の予算・決算・財政運営の基本的な在り方について審議し、その結論を「建議」として財務大臣に提出します。建議は法的拘束力を持つものではありませんが、財務省が概算要求基準(シーリング)や予算査定、税制改正要望に臨む際の理論的な支柱となり、年末の政府予算案・与党税制改正大綱に一定の影響を及ぼします。骨太の方針が「政府全体の方針」であるのに対し、建議は「財政当局の主張」であり、各省庁の要求や地方・関係団体の要望と緊張関係に立つ性格の文書である点を踏まえて読む必要があります。とりわけ本建議のように、特定の地方公共団体(東京都・特別区)の財政力や特定税目(固定資産税)に踏み込んだ記述は、今後の制度改正の「入口」となり得るため、当事者である特別区としては、その論拠と射程を正確に把握しておくことが重要です。
(参考)建議と特別区の予算編成サイクルとの関係
国の予算編成は、6月の骨太の方針・財政審建議、8月末の概算要求、12月の与党税制改正大綱・政府予算案閣議決定、翌年通常国会での審議というサイクルで進みます。特別区の令和9年度(2027年度)予算編成も、夏の予算見積から秋の査定、年明けの予算案確定へと本格化するため、6月の建議で示された財政当局の論点を夏の段階で把握しておくことは、区の新規事業の企画、国・都補助の見込み立て、財源スキームの検討、そして年末の税制改正・制度改正への要望活動において、先行的な優位性をもたらします。特に本建議は、①令和9年度税制改正で結論を得るとされる税源偏在是正、②令和9年度の診療報酬改定を伴わない年ながら期中改定・薬価改定が予定される医療、③令和9年度介護報酬改定・障害福祉サービス等報酬改定、④令和9年度国保運営方針の中間見直しなど、いずれも「令和9年度」を名指しした事項が集中しており、区の令和9年度予算・事業計画と時間軸が完全に重なります。
特別区職員が本建議を把握すべき理由
第一に、都区財政調整制度と特別区税の外部環境を規定する税財政の論点が、分析段階から「具体的な取組」段階へと進んだ点です。後述するとおり、建議は東京都の財源超過額・留保財源が令和7年度に3.7兆円へ拡大したことを挙げ、「令和8年度与党税制改正大綱に沿って」偏在性の小さい地方税体系の構築に取り組むべきとしています。固定資産税・法人事業税資本割に関する記述は、財政・企画部門が最優先で追うべき領域です。
第二に、社会保障の給付と負担の改革が、具体的な期限付きで並んだ点です。高齢者医療の窓口3割負担化、介護の2割負担の範囲拡大、国保の保険料水準完全統一、後期高齢者医療制度の都道府県化、保険者努力支援制度の見直し、生活保護受給者の国保・後期高齢者医療への加入検討など、国保・後期高齢者医療・介護保険の保険者(または広域連合構成員)である特別区の保険料設定・窓口実務・システム改修・住民説明に直接影響し得る検討項目が、2026年度中または令和9年度の結論として明記されています。
第三に、予算編成手法の転換(補正予算依存からの脱却、基金の抜本見直し、投資枠)が、国庫補助・交付金の流れとタイミングを変え得る点です。建議は投資枠や基金の活用に慎重な条件を付しており、国の財政支援の設計が変われば、区の予算計上・繰越・執行のリズムにも影響します。
第四に、行政の合理化・効率化、広域化、国・都道府県・市町村の役割分担の見直しといった、区の組織・体制の前提に関わる構造改革の論点が示された点です。介護保険事務の広域化・都道府県の財政運営主体化、後期高齢者医療の都道府県化など、区が担ってきた事務の帰属そのものに関わる検討が含まれます。
第五に、骨太の方針2026(積極財政)と本建議(財政規律)を突き合わせることで、令和9年度に向けた国の政策の「振れ幅」を把握できる点です。投資枠・基金・社会保障・税制のいずれについても、最終的な着地点は年末の予算編成・税制改正の過程で決まります。両文書の一致点と相違点を押さえておくことは、区の中期財政計画・基本計画の背景認識として価値があります。
建議の全体像
「責任ある積極財政」に対する財政規律側からの提言
本建議は、我が国経済がデフレ型経済から供給制約経済へ移行しつつあるとの認識に立ち、人材・資本と同様に財政資源も制約の下にあることを繰り返し強調します。その上で、金利上昇局面への移行、安全保障環境の変化による不確実性の高まりを踏まえ、「有事への対応余力を確保する観点から、平時から債務残高対GDP比を安定的に引き下げる」ことを財政運営の基軸に据えます。骨太の方針2026が投資と成長への積極的な資源投入を打ち出したのに対し、建議はそれを「後戻りさせることなく」進める条件として、歳出構造の平時化、財政規律との整合、給付と負担の見直しを求める、いわば「アクセルに対するブレーキとハンドル」の役割を担う文書です。
章立てと主要な論点
建議は3章構成です。第Ⅰ章「財政総論」は、供給制約経済への転換、投資と賃上げの好循環、人材希少社会における人材力の強化、安全保障環境の変化と不確実性、そして財政運営(財政の現状、財政資源の効率的配分、不確実性の時代の財政運営、財政運営目標の見直し)を論じます。第Ⅱ章「人口減少と不確実性の時代における総合的な国力の強化」は、社会保障を除く財政資源の効率的配分(社会資本整備・農業・地方財政・文化施設)、人材力・経済力の強化(高等教育・医療介護・成長戦略・中小企業)、防衛力の強化を扱います。第Ⅲ章「社会保障」は、総論(社会保障負担率の引下げ)、医療、介護、障害福祉について、給付と負担の見直しを具体的に提言しています。
本レポートでは、この3章の内容を特別区の実務に沿って行政分野別に再構成し、各分野の末尾に「特別区への示唆(区の対応論点)」を付します。財政運営・予算編成、地方行財政・税財政、社会資本整備・まちづくり・インフラ、農業、高等教育、医療、介護、障害福祉、経済・成長戦略・中小企業、防衛・総合的な国力の順に整理します。
財政運営・予算編成
財政運営目標の見直し:
PB中心から債務残高対GDP比中心へ
建議は、政府が財政運営の目標として債務残高対GDP比の安定的な低下を中核に位置づけ、プライマリーバランス(PB)については「債務残高対GDP比の低下に向けて確認する指標」として、その安定的低下の中で複数年で管理していく方針を、明確に支持・条件付けしています。名目成長率・物価・金利の上昇という財政環境の変化を踏まえ、債務残高対GDP比を中核目標として位置づけることは、「財政運営がこれまでのPB中心の管理という段階から新たな段階に移行することを意味する」と評価されています。
もっとも建議は、この転換を「単なる指標上の軸足の見直しにとどめることなく、その実効性を確保すること」を強く求めます。当面の債務残高対GDP比の低下傾向や、成長率が金利を上回るという楽観的な見方のみに依拠すれば、市場の信認を損ないかねないとし、令和7年度補正予算・令和8年度当初予算までの取組の進捗・成果を後戻りさせずに、債務残高対GDP比を安定的に引き下げる中で予算編成改革を進めるべきだとしています。また、PBを複数年度で管理する枠組みの下でも、金利上昇局面では利払費を含めた財政収支の動向にも目配りし、国債発行額などのフロー指標に基調変化や段差的変動を生じさせないよう求めています。
不確実性の時代の財政運営:
SDSAと独立的検証
建議は、成長率と金利の関係には大きな不確実性が伴い(昭和55年度からの約45年間で、実効金利が名目成長率を上回った期間の方が長い)、単一の経済前提に基づく見通しのみに依拠することには限界があると指摘します。その上で、中長期試算において堅実な経済前提を基本としつつ、確率的債務持続可能性分析(SDSA)の考え方を参考に、金利や政策効果の不確実性を確率分布として織り込んだ多面的な分析を行い、財政の持続可能性を検証すべきとしています。さらに、諸外国の独立財政機関を参考に、推計の客観性を担保する第三者的レビュー・独立的な検証機能の在り方を検討すべきとしています。
補正予算依存からの脱却と予算編成改革
建議(概要)は、補正予算依存から脱却する予算編成改革について、予算の予見可能性を高め国内投資の持続的拡大に資する観点、歳出構造の平時化の観点から、その実効性が具体的に確保されることを期待するとしています。同時に、危機管理投資・成長投資を含め多様な財政需要が同時に存在するため、全体として財政規律との整合性を確保する必要があると釘を刺しています。恒常的な施策は原則として当初予算で措置することを通じて予算の予見可能性を高めるべきという考え方は、後述する成長戦略・投資枠の項でも繰り返されます。
特別区への示唆(区の対応論点)
財政運営目標の転換そのものは国レベルの議論ですが、その帰結は国庫支出金・都支出金を通じて区の財政運営に波及します。第一に、補正予算依存からの脱却と恒常的施策の当初予算化が進めば、これまで国の補正予算を待って年度途中に計上・繰越してきた学校施設・防災・デジタル関連等の補助事業について、予算計上・繰越・執行のリズムが変わる可能性があります。区の予算編成・繰越制度の運用を点検し、当初予算化を前提としたスケジュール管理に切り替える準備が有効です。
第二に、建議は金利上昇を前提とした財政運営を強調しています。金利上昇は、区の地方債の発行条件(利率)や公債費負担に中期的に影響するため、区の中期財政計画における公債費・基金運用収入の前提を見直し、金利シナリオを複数用意しておくことが求められます。
第三に、建議が求める「財政規律との整合」は、国全体の歳出抑制圧力として、区が期待する国庫補助の単価・規模にも作用し得ます。骨太の方針2026の投資枠・積極財政と、本建議の財政規律との「綱引き」の帰結を、財政部門が年末まで注視し、国庫補助の見込みを保守的に置くシナリオも準備しておくことが、堅実な予算編成につながります。
地方行財政・税財政
特別区財政にとって、本建議で最も重い記述が置かれているのがこの分野です。財政審は、東京都の財政力の突出と地方税源の偏在を具体的な数値で示した上で、偏在是正への取組を「具体的な取組」段階へと押し上げています。
地方行財政の効率化
建議は、地方行政の現場でも人材不足が深刻であり、過去約30年間で生産年齢人口が約16%減少するのと同程度に地方公共団体の職員数も減少してきたこと、令和32年(2050年)には生産年齢人口が約25%減少する見込みであることを指摘します。人口減少で財政需要が減少するものがあることを踏まえても、従来と同じ方法では行政サービス水準の維持は困難であるとし、①地方公共団体の業務そのものの見直しを含めた徹底した行政の合理化・効率化、②既存の行政区域にとらわれない広域的な視点でのインフラマネジメント、③国・都道府県・市町村間の役割分担の検討を進めるべきとしています。行政のデジタル化を、個別システムの刷新にとどめず、行政運営コストを下げ政策実施能力を高める基盤整備として位置づけるべきとの意見も付されています。
地方財政の現状:
地方は黒字基調、基金は増加
建議は、フロー面では、リーマンショック・震災・コロナ対応で国から地方への手厚い財政移転が行われた結果、国のPBが赤字で推移する一方、地方は一貫して黒字基調で推移してきたと指摘します。ストック面でも、国の債務残高が累増する一方、地方の債務残高は近年減少傾向にあり、本年度末には平成10年度(1998年度)以来の低水準である166兆円となる見通しだとしています。さらに、地方の基金残高は増加傾向で、基準財政需要額との比率で5割超に達しており、財政調整基金・特定目的基金・減債基金のいずれも増加しているとします。これらは、国から見れば「地方には財政余力がある」という含意を持つ記述であり、地方財政計画の歳出水準や地方への財政移転を抑制する論拠として用いられ得る点に注意が必要です。
財政力格差・税源の偏在の是正
建議の核心は、地方公共団体間の財政力格差の拡大と税源の偏在です。地方税収は近年毎年度過去最高を更新し、とりわけ東京都で高い伸びが続いており、直近の令和8年度(2026年度)の税収増では地方法人二税による増収が最大だとします。人口1人当たり税収額の最大/最小比率(都道府県間)は、地方税全体で2.3倍、地方法人二税で5.8倍(特別法人事業譲与税を含めても3.3倍)、固定資産税でも2.3倍に達するとし、税源に偏在性が内在していることを強調します。
さらに建議は、不交付団体である東京都について、標準的な行政サービス以上の独自施策に使える財源(財源超過額+留保財源)が、財政力格差が縮小していた平成23年度(2011年度)の1.4兆円から、令和7年度(2025年度)には3.7兆円へ拡大し、これは基準財政需要額3.8兆円とほぼ同額であるため、「東京都の財源は標準的な行政サービスの概ね2倍の規模となっている」と指摘します。その上で、東京都が0〜2歳児の保育料無償化・水道基本料金の無償化などの独自施策を打ち出し、周辺自治体との行政サービス格差が拡大しているとし、埼玉県・千葉県・神奈川県による意見書(令和8年4月)も引用しています。
そして建議は、令和8年度与党税制改正大綱に、税源偏在を是正する追加的措置として、法人事業税資本割を特別法人事業税・譲与税の対象とするなどの措置の検討、および東京都が課税する特別区の土地に係る固定資産税に関する必要な措置の検討が盛り込まれていることを挙げ、「都市と地方の財政力を調整しつつ、地方公共団体間の相互の連携・連帯を図り」「地方税源の偏在是正に取り組むなど、都市と地方の支え合いの仕組みが必要である」と結論づけています。
特別区への示唆(区の対応論点)
この分野は、特別区財政の根幹に関わる最優先の監視事項です。とりわけ固定資産税は、東京都が特別区の区域で課税し、都区財政調整制度における調整税の中核をなす税目です。仮に「特別区の土地に係る固定資産税に関する必要な措置」が、所在地以外への配分(譲与税化等)を含む形で令和9年度以降の税制改正で具体化すれば、調整税収の減少を通じて都区財政調整交付金の原資が縮小する経路が生じ得ます。法人事業税資本割の特別法人事業税化も、都財政の悪化を通じて都区の財政環境全体に波及します。
財政・企画部門は、年末の与党税制改正大綱に向けた政府・与党の議論、特別区長会・東京都の要望活動の動向を最優先で追い、①措置が具体化した場合の影響額の試算、②区としての主張(固定資産税の応益性・物税としての性格、大都市特有の膨大な財政需要と行政コストの実態、都区財政調整の仕組みへの影響)を、数字で整理しておく必要があります。建議が「東京都は標準的行政サービスの2倍の財政余力」と評価する一方、特別区の側には、人口集中に伴う膨大な行政需要(保育・介護・生活保護・都市インフラ・防災)という反論材料があり、これを定量的に示せるかどうかが要望活動の説得力を左右します。
また、建議が「地方には財政余力がある(基金5割超・地方債務残高166兆円)」とする点は、一般財源総額や国庫補助の抑制論に接続し得ます。区としては、基金残高が特定目的(学校改築・公共施設更新・退職手当等)に紐づく計画的な積立てであり、自由に使える余力ではないことを、公共施設等総合管理計画や基金の設置目的とともに説明できるよう準備しておくことが有効です。
さらに、「国・都道府県・市町村間の役割分担の検討」「大都市地域における行政体制」の議論は、地方制度調査会での審議とも連動し、中長期的には都区制度・特別区制度に関わる論点へ発展する可能性を含みます。企画部門が、その経過を記録・分析しておく価値があります。
社会資本整備・まちづくり・インフラ
建議は、人口減少下でインフラ整備・維持管理の持続可能性を確保する観点から、社会インフラ全体を俯瞰・総合調整しつつ事業を精査すべきとし、3つの基本原則を示します。第一に「コンパクト・プラス・ネットワーク」の一層の推進(東京ですら令和12年〔2030年〕頃から人口減少に転じるとの予測を踏まえ、想定を下回る利用に終わる整備を避ける)、第二に既存ストックの最大限の活用(新設の前にまず既存ストックの活用・改修・新技術活用を検討)、第三に公費依存ではなく利用者負担・事業収益還元の視点(収益性の高いインフラは事業主体が資金調達し収益で回収)です。
コンパクト化・立地適正化計画の実効性向上
建議は、現行の立地適正化計画が、居住誘導区域等の設定基準が市町村ごとに異なり、土地利用規制と十分に連動していないため、コンパクト化を促進する機能を発揮できていないと指摘します。計画が単なる「線引き」に終わらないよう、①国が区域設定に関する客観的な指標を示し、②都道府県が関与する形で計画を見直し、③計画に基づく市町村の取組を評価して質の高いエリアに支援を重点化する仕組みを構築すべきとしています。
住宅支援:新築から中古・GX志向型へ
住宅ストック数は総世帯数を約16%上回っており(令和5年時点で約6,505万戸に対し約5,622万世帯)、今後空き家率の急激な上昇が見込まれるため、政策の重点を新築住宅の建設から中古住宅の活用へ移すべきとします。新築を補助する場合も、①脱炭素の観点から、既に普及が進んだZEH水準住宅への補助は段階的に廃止し、より環境性能の高いGX志向型住宅へ支援を重点化、②コンパクト化・子育て世帯の住環境確保の観点から、立地適正化計画の実効性を確保した上で子育て世帯を対象とした居住誘導区域等の支援に重点化すべきとしています。
インフラ老朽化対策:当初予算での安定財源確保
建議は、昭和39年(1964年)の東京オリンピック前後に整備された首都高速1号線など、高度経済成長期以降に集中整備したインフラの老朽化が一斉に進むことを指摘し、昨年1月の埼玉県八潮市の道路陥没事故を、経年劣化が公共空間の安全性に深刻な影響を及ぼした事例として挙げます。インフラ老朽化対策の強化に重点的・安定的に取り組むため、当初予算で見通しを持って着実に進められるよう安定財源の確保が求められるとしています(第1次国土強靱化実施中期計画における道路関連インフラ保全の必要国費は5年で3兆円程度と試算)。
公費依存からの脱却:
整備新幹線とB/C、建設業の人手不足
建議は、整備新幹線のような大型プロジェクトについて、個々の線区の収益性精査と、事業収益を貸付料に反映する仕組み(物価・需要実績の反映、接続利益・関連収入の反映、情報開示)を求めます。北海道新幹線については、トンネル工事の長期化等で事業費が最大1.2兆円程度増加し、機械的に反映すると事業全体のB/Cが当初1.1から0.6程度、残事業B/Cも0.9程度(国土交通省の再評価基準で基本的に中止すべき水準)となり得ると試算しています。また、建設業が他産業より厳しい人手不足に直面していることを踏まえ、実態に応じた価格転嫁・工期設定を進める一方、公共工事の過度な増大が民間工事や災害対応を圧迫する「クラウディングアウト」を招かないよう留意し、i-Construction 2.0による生産性向上(令和22年度までに令和5年度比1.5倍)を公共事業関係費の水準に織り込むべきとしています。
特別区への示唆(区の対応論点)
「コンパクト・プラス・ネットワーク」や立地適正化計画の実効性向上は、人口密度が高く都市機能が集積する特別区では、地方圏とは異なる文脈で受け止める必要があります。区としては、居住誘導そのものよりも、老朽インフラの更新・集約、公共施設の複合化・長寿命化、木密地域の防災まちづくりといった形で、建議の「既存ストックの最大限活用」「予防保全型への転換」の考え方を、公共施設等総合管理計画・個別施設計画の改定に接続することが実務的です。
住宅支援の重点シフト(新築ZEH補助の段階的廃止→GX志向型・子育て世帯への重点化、中古活用)は、区の住宅マスタープラン・居住支援施策の設計に影響します。区が独自に行う住宅取得支援・リフォーム助成・子育て世帯家賃補助等について、国の補助メニューの重点分野(GX・中古・子育て・居住誘導)との整合を点検し、国費を取り込みやすい制度設計に見直す余地があります。老朽マンション・空き家対策は特別区の住宅政策の中心課題であり、国の中古住宅活用重点化の流れと接続する価値があります。
インフラ老朽化対策の「当初予算・安定財源」への転換は、区にとっても追い風となり得ます。区有施設・道路・橋梁の維持管理計画を高度化し、予防保全型への転換を数値(更新需要の将来推計、事後保全との費用比較)で示せるよう整理しておくことが、国費・都費の確保と区の予算査定の双方で有効です。一方、建議が公共事業に厳しい費用対効果精査とクラウディングアウトへの留意を求めている点は、区が要望する連続立体交差・都市計画道路等の大型事業の採択環境にも作用し得るため、事業の必要性・便益を丁寧に立論しておく必要があります。
農業
建議は、農業従事者の急減が見込まれる中、労働生産性と土地生産性の双方を向上させて「稼げる農業」を創り出すこと、米の作付けの大規模化を一層進め、政府が掲げる2030年目標に向けて生産コストを着実に低減させることが重要としています。これは主として地方圏の農業政策に関わる論点であり、都市部の特別区との直接的な関わりは限定的です。
特別区への示唆(区の対応論点)
特別区の区域では農業のウエイトは小さいものの、生産緑地・都市農地の保全、農業体験・食育、地産地消といった都市農業施策を持つ区にとっては、国の農業政策の重点(大規模化・生産性向上)とは異なる「都市農地の多面的機能(防災空地・緑地・環境・コミュニティ)」の観点から、独自に施策を位置づける必要があります。国の農業予算の重点化が進むほど、都市農業向けの財源は相対的に細り得るため、都市農地保全は防災・みどり・都市計画の文脈で財源を確保する視点が現実的です。
高等教育
建議は、人口減少社会でも人材力・経済力を強化するには、大学の教育・研究の質の向上と大学全体の規模適正化が重要とし、質を評価する仕組みの構築(絶対的な教育の質、学生への付加価値、地域・社会で求められる人材育成の3観点で評価し私学助成にメリハリ)と併せて進めるべきとしています。18歳人口は、ピークの平成元年(1989年)の198万人から、この35年間で109万人へと約89万人減少した一方、大学数は逆に300校以上増えて813校となり、学生10万人当たりの高等教育機関数は主要国で最多水準にあると指摘します。既に私立大学の半数以上が定員割れで、質に疑念のある大学も見られるとし、18歳人口が急減する令和22年(2040年)までに、大学数と学部定員を18歳人口の減少に対応する規模に適正化するとした場合、少なくとも学部定員は18万人程度、学校数は250校から400校程度の縮減が必要と推計しています。その上で、経営体力がある段階で大学に撤退等を促す仕組みづくりと、将来人材不足が予測される分野・経済成長に資する分野(理工系等)への重点的な支援を求めています。
特別区への示唆(区の対応論点)
高等教育(大学)は特別区の所管ではないため、直接の予算・事務への影響は限定的です。ただし、大学の規模適正化・撤退促進は、区内に立地する大学・学部の再編を通じて、若年人口・昼間人口・地域経済(学生向け商業・住宅需要)や、区と大学との連携事業(公開講座、まちづくり、産学連携、インターン受入れ)に中長期的な影響を及ぼし得ます。大学が集積する区では、区内大学の動向を地域振興・都市計画の観点から把握しておくことが有益です。また、理工系・成長分野への重点化やAX時代の人材育成という方向性は、区の生涯学習・リスキリング支援・若者政策の設計にも参照可能な視点を提供します。
経済・成長戦略・賃上げ・中小企業
建議は、成長戦略を「個別分野の施策の積上げ」にとどめず、人材配分の最適化と付加価値創出力の向上を軸に、投資・分配・人材政策を一体的に構築すべきという基本哲学を示します。特に、賃上げを「成長の結果」ではなく「需要を喚起し投資を誘発する前提条件」と位置づけ、賃金を資源配分のシグナルとして機能させることを重視している点が特徴です。
企業の分配構造と「新たな投資枠」
建議は、企業収益・内部留保が積み上がる一方で賃金上昇や国内投資に十分結びついてこなかったこと、株主還元が増加する一方で労働分配率が低迷していることを問題視し、分配構造の是正を求めます。政府が策定する成長戦略(17の戦略分野における危機管理投資・成長投資、62項目の主要製品・技術の戦略的選定)と、通常歳出とは別に創設が予定される「新たな投資枠」については、既往の枠組み(GX経済移行債による10年間の先行投資支援、AI・半導体産業基盤強化フレームによる7年間の公的支援)を参考にしつつ、次の条件を求めています。すなわち、①投資に見合うリターン・民間投資の誘発を厳しく検討し、投資・生産性・賃金の連動を通じて付加価値創出力を高める事業に、対象を総花的にせず戦略的に絞り込むこと、②恒常的な施策は原則として当初予算で措置し予算の予見可能性を高めること、③金融支援を含む多様な政策手段を用意しつつ、効果検証に応じた見直し・支援継続の要否を判断できるよう適切なマイルストーンを設けること、④基金を活用する場合も定期的な成果評価の仕組みを設けること、です。基金の活用については、国会による監視・検証が及びにくくなるため抑制すべきとの意見も付されています。
中小企業分野:
小規模分散構造からの転換
建議は、従業者数の約7割が中小企業に集中する構造が維持されたまま、賃金・付加価値額に占める中小企業のシェアは低下していると指摘し、人材が希少になる中で「人材の適正な配置・活用」の観点に立った中小企業政策が必要とします。労働生産性の低い企業に労働資源が集中してきたことが、生産性の高い企業の付加価値創出を阻害している可能性を挙げ、規模拡大や企業間の連携・再編を促し、過度な小規模分散構造からの転換を図るべきとしています。中堅企業や売上高100億円を目指す中小企業の成長支援について、現行の大規模補助金中心の手法には、規模拡大が要件化されずインセンティブが弱い、賃上げ要件の達成判定が最長6年後で即効性に乏しい、自力投資可能な企業への収益支援になりかねない等の課題があると指摘し、「渡し切り」の補助金に依存せず、出資・融資・メザニンファイナンス・保証などの金融支援を活用し、成長段階に合わせた適切な支援とすべきとしています。
特別区への示唆(区の対応論点)
成長戦略・投資枠は国レベルの産業政策ですが、その設計思想は区の産業振興・中小企業支援施策にも波及します。第一に、建議が「渡し切りの補助金依存からの脱却」「金融支援の活用」「マイルストーン管理」「成果検証」を強く求めていることは、国だけでなく地方の補助金行政にも及ぶ潮流と捉えるべきです。区の中小企業向け補助金・助成金についても、要件(賃上げ・規模拡大・生産性向上)とのひも付け、効果検証、金融機関・地域経済団体との連携といった観点で、制度の再点検が令和9年度の論点となり得ます。
第二に、区の産業振興施策は、区内事業者の大宗を占める小規模事業者の実態(価格転嫁の困難、人手不足、経営人材・DX人材の不足)に立脚しており、建議の「小規模分散構造からの転換」という国の方向性とは、必ずしも一致しません。区としては、規模拡大一辺倒ではなく、価格転嫁・取引適正化の支援、経営人材・デジタル人材のマッチング、事業承継支援といった、区内事業者の実情に即した施策を、国の成長戦略の財源(省力化投資支援等)を取り込みつつ設計する視点が重要です。
第三に、賃上げを「前提条件」とする建議の考え方は、区自身が発注者・使用者として果たすべき役割にも接続します。会計年度任用職員の報酬、指定管理料・委託料・工事費の積算における労務費・物価の反映は、区内の賃上げ原資の確保という産業政策の側面を持ちます。契約・人事・産業振興・財政の各部門が共通認識を持ち、人件費・物件費の上昇を織り込んだ複数年の財政見通しを更新しておくことが求められます。
防衛・総合的な国力
建議は、防衛力だけでなく情報力・技術力等を含めた総合的な国力の強化と、平時における経済・金融・財政基盤の体質強化に取り組む必要があるとします。今後の防衛力整備は、減少が見込まれる自衛官現員数を前提とした運用可能性を踏まえるべきとし、防衛調達・産業について、①供給制約の解消を踏まえた政策対応、②民生品の大胆な活用や自衛隊の独自仕様の徹底的な見直し、③事業再編を通じた生産性向上など防衛産業基盤の強化を担保した形での国の関与拡大を求めています。
特別区への示唆(区の対応論点)
防衛は国の専管事項であり、特別区の予算・事務への直接の関わりはありません。ただし、防衛費の増額は国全体の歳出構造に占めるウエイトを高め、社会保障・地方財政を含む他分野への財源配分に間接的な制約として作用し得ます。建議全体を貫く「財政資源は制約の下にある」という認識の背景として、防衛・安全保障に伴う将来の財政需要拡大への備え(有事対応余力の確保)があることを理解しておくと、社会保障改革や税源偏在是正といった特別区に直結する論点が、なぜこれほど強い調子で提言されているのか、その文脈を正確に読み取ることができます。
社会保障(総論):
現役世代の保険料負担軽減と社会保障負担率の引下げ
社会保障は、建議の第Ⅲ章として最も詳細に論じられる分野であり、特別区が国民健康保険の保険者・後期高齢者医療広域連合の構成団体・介護保険の保険者・障害福祉サービスの実施主体として直接関わるため、実務上の重要度が最も高い領域です。
建議は、社会保険料の負担増が過去30年間の家計可処分所得を圧迫してきた大きな要因であり、その多くが高齢者向け給付に充てられ現役世代の可処分所得の増加がほぼ相殺されてきたと分析します。一方、近年は賃上げの進展により国民所得の伸びが社会保障負担の伸びを上回り、社会保障負担率(国民所得に対する社会保険料負担の割合)が横ばい〜微減に転じており(昭和45年度の5.4%から令和6年度に18.5%まで上昇した後、令和7年度17.8%〔実績見込み〕、令和8年度17.6%〔見通し〕)、この前向きな変化を一過性で終わらせず定着させるべきとします。「令和8年度予算編成の基本方針」の「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」との方針を実現するため、具体的な数値目標と年限を明確に掲げ、社会保障改革の具体的な改革項目について工程表を改めて作成すべきとしています。大臣合意では、令和9年度(2027年度)の社会保障負担率を令和7年度と比較して上昇しないよう取り組むこととされています。
特別区への示唆(区の対応論点)
「現役世代の保険料負担の軽減」「社会保障負担率の引下げ」という国の基本方針は、以下の医療・介護の個別改革として具体化され、そのほとんどが国保・後期高齢者医療・介護保険の保険者である特別区の保険料設定・窓口実務・システム改修・住民説明に波及します。総論として区が押さえるべきは、これらの改革が「現役世代の負担軽減のために高齢者・利用者の負担を見直す」という一貫した論理で貫かれており、住民(とりわけ高齢者)への影響と問い合わせ・窓口対応の増加が見込まれる点です。国保・高齢者医療・介護の各部門が、年末の予算編成・制度改正の動きを継続的に追い、システム改修・周知のリードタイムを確保しておく必要があります。
医療
建議は、医療政策を「質(Quality)・アクセス(Access)・コスト(Cost)」のトリレンマとして捉え、これまで寛大なアクセスと質に重点を置いてきた日本の医療が、高齢化・人口減少・高度化の中で「アクセスとコストのバランス調整」を迫られているとします。「大きなリスクは共助中心、小さなリスクは自助中心」の視点を踏まえた保険給付範囲の見直しと、保険給付の効率的な提供に取り組むべきという枠組みを示します。
高齢者医療の患者負担:
原則3割負担化
建議の医療分野で最も踏み込んだ提言が、高齢者の患者自己負担の見直しです。現在、高齢者の患者自己負担は1割または2割が9割超を占めており、負担割合が負担能力の差を超えて年齢によって異なる現状を「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という構造の象徴と評します。その上で、年齢による不公平を是正し現役世代の保険料負担を軽減するため、70歳以上の患者自己負担割合を、可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべきであり、その道筋を明確に示すべきとしています。「『強い経済』を実現する総合経済対策」(令和7年11月21日閣議決定)で「令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実施する」とされたことを踏まえ、原則3割負担化の実現に向けた工程表を作成すべきとし、70歳から74歳については一律に高齢者扱いすべきでないとして原則3割負担化と外来特例の廃止を、75歳以上については経過措置を設ける場合も現行の線引きをゼロベースで見直すことを求めています。あわせて、3割負担の対象者が増えることでかえって現役世代の負担が増えないよう、安定財源を確保し現役世代の保険料負担が確実に軽減される制度設計とすべきとしています。
特定疾病制度・窓口業務費用の保険給付外化
昭和59年(1984年)導入の「特定疾病」制度(人工透析患者等の自己負担上限を低額に抑える制度。透析患者は導入時約6万人から現在約34万人へ増加)について、高額薬剤の登場でがん等の他の慢性疾患でも医療費が高額化する中、他疾患患者との公平性の観点から見直しの必要性を含め検討すべきとしています。また、医療機関の窓口業務のコストについて、令和8年度診療報酬改定でオンライン診療のシステム利用料が保険給付外として明確化されたことを発展させ、通常の診療の際の窓口業務コストも保険給付外サービスとして請求できるようにすることを検討すべきとしています。
効率的な医療提供体制と報酬体系:
包括払いへの転換
建議は、諸外国と比べ総病床数が多く平均在院日数が長い日本の医療提供体制について、地域医療構想の実効性を高めて病床数を適正化し入院機能を高度医療に重点化するとともに、10万施設を超えて増加を続ける小規模分散の診療所や、6割以上増加した薬局の集約化・大規模化を進めるべきとします。その手段として、地域医療連携推進法人(令和8年1月時点で58法人にとどまる)の活用や、薬局への参入規制・密集性に着目した規制の検討を挙げます。報酬体系については、「量の競争」を誘発しやすい出来高払い中心の構造から、アウトカム評価を中心に据えた包括払いへの転換を進め、できるだけ少ない人員で医療を提供することを適切に評価する体系とすべきとしています。あわせて、電子カルテ(令和12年末までに普及率約100%が法定)等の医療DXについて、システム導入支援から、現場でDX・AIが実際に効果を生んでいる医療機関を重点的に支える財政支援・報酬へと発想を転換すべきとします。医療法人の経営情報の「見える化」(MCDBの精緻化、職種別給与・人数の報告義務化)や、令和9年度薬価改定の完全実施も求めています。
保険者機能・国民皆保険の見直し
建議は、保険者が分立していることに起因する非効率・不公平を解消し、働き方に中立で包摂性の高い国民皆保険を追求すべきとし、特別区の実務に直結する複数の見直しを提言しています。
- マルチワーカーへの被用者保険適用:
複数事業所で勤務する短時間労働者について、労働時間を通算して被用者保険の適用を判断すべきとし、マイナ保険証の活用など保険者間連携で早急に解消すべきとしています。 - 生活保護受給者の国保・後期高齢者医療への加入:
医療保険(地域保険)への加入が認められないのは生活保護受給者のみである現状を見直し、国が応分の財政責任を果たすことを前提に、被保護者の国保・後期高齢者医療への加入について具体的な検討を進めるべきとしています。これにより、生活保護ケースワーカーと連携した医療扶助費の適正化(頻回受診・長期入院・重複多剤服薬への対応)が期待されるとします。 - 被扶養者制度の見直し:
核家族化・共働き世帯の増加を背景に、公的年金の第3号被保険者制度のみならず、医療保険の「被扶養者」の在り方についても見直しを検討すべきとしています。 - 国民健康保険の保険料水準統一の加速化:
平成30年度に都道府県単位化された国保について、現在の目標(令和12年度までの納付金ベース統一、令和18年度までの完全統一)に対し、完全統一達成済みは大阪府・奈良県の2府県、目標年度を定める道県も19にとどまる状況を挙げ、令和9年度の国保運営方針の中間見直しに当たり、全ての都道府県で完全統一の目標年度を設定し、国が示す統一目標年度を前倒すべきとしています。 - 保険者努力支援制度の見直し:
保険料軽減効果等のエビデンス検証が不十分なまま国の支援が継続しているとし、公費への依存がかえって保険者機能の発揮を妨げている懸念から、廃止を含めた検討を行うべきとしています。 - 特定健診・特定保健指導への支援の見直し:
コストを上回る医療費削減につながっているとの実証的エビデンスが明らかでないとし、多額の公費投入を続けることの是非や優先順位を厳しく検証すべきとしています。 - 高額医療費負担金の見直し:
保険料水準が統一されれば市町村ごとの医療費変動は都道府県内でシェアされるとして、国保の高額医療費負担金は廃止を含めた抜本見直しを、後期高齢者医療でも対象基準(令和8年度に80万→85万円へ引上げ)の着実な引上げを求めています。
後期高齢者医療制度の見直し:
都道府県化と保険料負担
建議は、後期高齢者医療制度について、広域連合が運営主体であり地域医療構想・医療費適正化計画を策定する都道府県と主体が切り離されていること、広域連合の職員の大宗が市区町村からの派遣で、トップは圏内首長が形式的に兼務している構造を問題視し、国保と同様に都道府県を財政運営の主体とすることで保険者機能が最大限発揮されるようにすべきとしています。あわせて、後期高齢者本人の保険料負担について、金融所得の勘案を含めた応能負担の徹底と、現役世代の支援金とのバランスの不断の見直しを求めています。
特別区への示唆(区の対応論点)
医療分野は、国保の保険者・後期高齢者医療広域連合の構成団体である特別区にとって、住民影響が最も大きい領域です。
第一に、高齢者医療の窓口3割負担化・外来特例廃止は、高齢者人口を多く抱える特別区で、窓口・電話での問い合わせ増加、住民説明、システム改修が広範に発生する論点です。「令和8年度中に制度設計」「原則3割負担化の工程表作成」とされている以上、国保・高齢者医療部門は、年末の制度設計の具体化を継続的に追い、周知広報・システム改修のリードタイムを見込んでおく必要があります。
第二に、国保の保険料水準完全統一の前倒しは、東京都の国保運営方針・標準保険料率と、各区の保険料(率・賦課方式・法定外繰入・独自軽減)の関係を大きく変え得ます。都内では区市町村ごとに保険料水準や一般会計繰入の状況が異なり、完全統一が前倒しされれば、区独自の保険料抑制・軽減の余地が縮小し、被保険者の負担変動(増減)と、それに伴う住民説明の負担が生じます。国保部門は、都の国保運営方針中間見直しの議論に区として関与し、統一の時間軸と区の激変緩和措置の設計を早期に検討する必要があります。あわせて、保険者努力支援制度の廃止・特定健診への支援見直しは、区の国保財政の歳入と保健事業の財源に影響するため、影響額を把握しておくべきです。
第三に、後期高齢者医療の都道府県化は、特別区が構成団体である東京都後期高齢者医療広域連合の在り方そのものに関わる、極めて重い論点です。仮に財政運営主体が都に移行すれば、区が担ってきた保険料徴収・窓口・広域連合への職員派遣といった事務の帰属と、区の関与の度合いが変わります。制度改正には時間を要するものの、企画・国保高齢者医療部門が、広域連合・都・特別区長会の議論の経過を注視しておく必要があります。
第四に、生活保護受給者の国保・後期高齢者医療への加入が具体化すれば、生活保護世帯の多い特別区では、医療扶助と医療保険の切替え事務、ケースワーカーと国保部門の連携、システム対応など、福祉部門と国保部門にまたがる実務の再設計が必要になります。国の財政責任の担保(医療扶助費の国庫負担の扱い)とあわせて、影響を早期に見極めておくことが有効です。
介護
建議は、介護保険制度が創設から四半世紀で介護費用が約4倍・保険料が約2倍に増加し、令和22年(2040年)に向けて85歳以上人口が増加する一方で支え手(40歳以上)が減少するため、制度の持続可能性が危ぶまれているとします。令和9年度(2027年度)介護報酬改定に当たり、「高齢化・人口減少下での負担の公平化」と「給付の効率化・適正化」を実施すべきとしています。
負担の公平化:
2割負担の範囲拡大ほか
- 利用者負担の2割負担の範囲拡大:
介護保険の利用者約545万人のうち2割負担は24万人(4.3%)・3割負担は21万人(3.9%)にとどまる現状を踏まえ、負担能力に応じて2割負担の対象者を拡大すべきとします。社会保障審議会介護保険部会で検討されてきた2案(年収基準引下げと配慮措置〔当分の間、負担増を最大月0.7万円に抑制〕、または預貯金一定額以下は申請により1割に戻す案)について、大臣合意で「令和9年度の前までに結論を得る」とされたことに基づき、早急に結論を得て実施すべきとしています。目安とされた年金収入230〜260万円層は現役時代の給与収入730〜870万円(大企業の課長〜部長級)に相当し、相応の金融資産を持つことが多く一定の負担能力があるとします。 - ケアマネジメントの利用者負担:
これまで利用者負担が求められてこなかったケアマネジメントについて、まず登録制の対象となる住宅型有料老人ホームの入居者に係る新たな相談支援類型で、令和10年度(2028年度)から確実に利用者負担を導入すべきとし、あわせて自立・要介護度改善へのインセンティブを付けるアウトカム評価の導入を検討すべきとしています。 - 補足給付・多床室の室料負担の見直し:
介護施設入居の低所得者の食費・居住費を軽減する補足給付は、在宅利用者が全額自己負担していることとの公平性を欠くとして引き続き見直すべきとし、介護老人保健施設・介護医療院の多床室のうち令和6年度改定で室料負担導入が見送られた類型についても、基本サービス費等から室料相当額を除外すべきとしています。
担い手の確保・給付の効率化・適正化
- 生産性向上と処遇改善:
令和9年度介護報酬改定で賃金・物価動向に的確に対応する必要があるとしつつ、介護報酬による賃上げのみならず、介護テクノロジーの導入や経営の協働化・大規模化(ケアプランデータ連携システム、社会福祉連携推進法人)による生産性向上を通じて、職員1人が対応する利用者を増やし収益増を賃上げと投資につなげる好循環を求めます。介護サービスの利益率が他産業と比べ高水準(サービス類型ごとに差が大きく、訪問介護12.4%等)であることを踏まえ、サービス類型・提供実態に応じた報酬の適正化を求めています。 - 住宅型有料老人ホームの介護報酬適正化:
併設事業所が1か所で集中的にサービス提供でき労働投入時間が少ないにもかかわらず、同一建物減算の減算率が限定的で収支差率が高い傾向にあることを踏まえ、令和9年度改定で適正化すべきとしています。 - 介護保険事務の広域化・都道府県の役割強化:
小規模市町村での要介護認定審査会委員の確保困難・専門人材不足等の課題を挙げ、介護保険事務の広域化や、都道府県による伴走支援、さらには都道府県が介護保険の財政運営の責任主体となることについても検討すべきとしています。 - 軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行:
要支援者に続き、軽度者(要介護1・2)に対する訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的に、地域の実情に合わせた多様な主体による効率的なサービス提供を可能にすべきとしています(当審議会が平成27年度建議以来提言し続けている事項)。 - インセンティブ交付金の見直し・保険外サービスの活用:
保険者機能強化推進交付金等のインセンティブ交付金が、多くの自治体で第1号保険料の削減に充てられ介護予防への循環が生まれていないとして、成果指向型配分枠への重点化を求めます。また、介護保険外サービスの活用について、地方公共団体ごとにルール解釈が異なる「ローカルルール」の実態を把握した上で、柔軟な運用を認めるべきとしています。
特別区への示唆(区の対応論点)
介護保険の保険者である特別区にとって、令和9年度介護報酬改定と制度改正は、第9期(令和6〜8年度)から第10期(令和9〜11年度)介護保険事業計画への移行時期と重なる、実務の山場です。
第一に、2割負担の範囲拡大は「令和9年度の前までに結論」とされており、第10期計画期間の負担構造・給付費見込み、そして被保険者への影響に直結します。介護保険部門は、次期計画策定作業と並行して国の結論を注視し、対象拡大の規模に応じた給付費・保険料への影響試算と住民説明の準備を進める必要があります。ケアマネジメントの利用者負担(住宅型有料は令和10年度から)・補足給付・多床室室料の見直しも、利用者負担の増加と窓口対応に関わる論点です。
第二に、軽度者(要介護1・2)の生活援助等の地域支援事業への移行が具体化すれば、区は総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の担い手・単価・サービス設計を大幅に拡充する必要が生じます。要支援者の総合事業移行時の経験を踏まえ、多様な主体(NPO・住民互助・民間)の確保と、専門的サービスを要する重度者への給付重点化の両立を、早期に検討しておくことが有効です。
第三に、介護保険事務の広域化・都道府県の財政運営主体化の検討は、後期高齢者医療の都道府県化と同様、区が担う介護保険事務の帰属に関わる中長期の論点です。特別区は比較的規模が大きく小規模市町村とは事情が異なりますが、要介護認定・給付適正化・事業者指導の効率化という論点は共通するため、23区間の連携や都との役割分担の観点から動向を把握しておく価値があります。
第四に、生産性向上・処遇改善・報酬適正化は、物件費・賃借料・人件費の高い区内介護事業者の経営環境に直結します。区の事業者支援策(家賃補助・人材確保支援・生産性向上支援)と国の報酬・補助の役割分担を再整理し、介護保険外サービスのローカルルールについても、区の運用が過度に制約的でないか点検しておくことが求められます。
障害福祉
建議は、障害福祉サービスが、事業所数(特に営利法人)の増加に応じて総費用額が増加しやすい構造にある中、支援の質の低下が懸念されるとし、令和6年度改定の検証を踏まえ、令和9年度(2027年度)障害福祉サービス等報酬改定やその後の制度改正に向けて、サービスの質を確保しつつ総費用の伸びを抑制する取組が急務としています。障害者虐待件数が10年間で約4.1倍(グループホームでは約9倍で全体の約3割)に増加する一方、都道府県等による事業所への運営指導の実施率が16.3%と低水準(指針の3年に1度に未達)である点を問題視します。
- グループホームに係る指定基準の在り方:
介護保険の認知症グループホームでは各職務に要件が定められているのに対し、障害福祉のグループホームは管理者に資格要件がなく、サービス管理責任者にも常勤要件がないなど指定基準が緩やかであるとし、管理者・法人代表者の資格要件、従事者の研修受講義務、サービス管理責任者の最低勤務時間を、令和9年度改定で指定基準として定めるべきとしています。 - 総量規制の在り方:
地方公共団体が障害福祉計画で定めるサービス量の見込みについて、指定基準の見直しや総量規制の強化を求める地方公共団体の意見が多いことを踏まえ、具体的な議論を速やかに開始すべきとしています。あわせて、障害者就労支援の在り方の見直し、不正請求・不適切な新規参入勧誘への対応にも取り組むべきとしています。
特別区への示唆(区の対応論点)
障害福祉サービスの支給決定を行い、事業所の指定・指導に関わる特別区にとって、この分野の見直しは実務に直結します。第一に、グループホームの指定基準厳格化・総量規制は、区が抱える「事業所数の急増と質のばらつき」という課題認識と方向性が一致する部分が大きく、区の指定・指導事務の権限強化につながり得ます。区の障害福祉計画(次期計画)におけるサービス量の見込みと供給調整の考え方を、国の制度改正の方向と整合させて検討する契機となります。
第二に、総費用の伸びの抑制(報酬適正化)は、区の障害福祉費(給付費)の将来推計に影響します。事業所数の増加が続く区では、給付費の伸びと国庫負担・都費・区費の負担割合を見極めつつ、令和6年度改定の検証結果と令和9年度改定の方向を、財政部門と障害福祉部門が共同で追う必要があります。
第三に、虐待防止・運営指導の強化は、区(および都)の指導監査体制の拡充を求める論点です。運営指導の実施率の低さが全国的な課題として指摘された以上、区の指導監査に係る人員・専門性の確保が、令和9年度の体制要求の根拠となり得ます。
骨太方針2026・従来の建議との関係と、特別区にとっての重点事項の総括
骨太の方針2026(積極財政)との一致点・相違点
同じ令和8年に公表された骨太の方針2026が「責任ある積極財政」を掲げ、投資枠の創設・成長投資への傾斜・PB黒字化目標から債務残高対GDP比中心への転換を打ち出したのに対し、本建議は、その財政規律側の裏づけを与える文書です。両者の関係を整理すると、特別区にとって次のように読めます。
一致点として、①財政運営目標を債務残高対GDP比の安定的低下へ移行する点、②補正予算依存からの脱却・恒常的施策の当初予算化、③社会保障の給付と負担の改革(現役世代の保険料負担軽減、高齢者医療の窓口負担・介護2割負担の見直し)、④税源偏在是正を「令和8年度与党税制改正大綱に沿って」進める点が、骨太と建議で方向性を共有しています。特別区に不利に働き得る税源偏在是正と、住民影響の大きい社会保障改革は、政府方針(骨太)と財政当局の提言(建議)の双方が同じ方向を向いており、令和9年度税制改正・予算編成過程で実際に動く蓋然性が高い領域と捉えるべきです。
**相違点(力点の違い)**として、骨太が投資枠・積極財政のアクセルを踏むのに対し、建議は投資枠・基金に予見可能性・マイルストーン・成果検証・財政規律との整合という条件を厳しく付し、「渡し切りの補助金依存からの脱却」「基金の抑制」を求めています。したがって、国庫補助・交付金の実際の出方は、骨太(拡大方向)と建議(規律方向)の綱引きの結果として決まります。区としては、投資枠関連の交付金・基金を過度に当てにせず、保守的な財源シナリオも併せて準備しておくのが堅実です。
従来の建議・審議会横断の論点との関係
本建議には、当審議会が繰り返し提言してきた事項(軽度者の生活援助等の地域支援事業への移行は平成27年度建議以来、大学の規模適正化は前年12月建議以来)や、全世代型社会保障構築の改革工程(高齢者医療の窓口負担、生活保護受給者の医療保険加入)と連続する論点が多く含まれます。これらは一度の建議で実現しなかったものが再提起されている性格を持ち、特別区としては「いつか具体化し得る継続的な検討事項」として、単年度の対応にとどまらず中期的にフォローしておくべき論点群です。
特別区にとっての重点事項(優先度順の整理)
特別区の各所管課にとっての実務的な優先順位を整理すると、次のとおりです。
- 財政・企画部門:
税源偏在是正(特別区の土地に係る固定資産税、法人事業税資本割の特別法人事業税化)の令和9年度以降の税制改正に向けた議論を最優先で追い、都区財政調整の原資への影響額の試算と、区としての主張(応益性、大都市需要の実態)を整理すること。あわせて「地方には財政余力がある」論への反論材料(基金の目的別内訳、公共施設更新需要)を準備すること。 - 国保・高齢者医療部門:
高齢者医療の窓口3割負担化(令和8年度中に制度設計)、国保保険料水準の完全統一の前倒し(令和9年度国保運営方針中間見直し)、後期高齢者医療の都道府県化、保険者努力支援制度の見直しを注視し、システム改修・住民説明のリードタイムを確保すること。 - 介護保険部門:
2割負担の範囲拡大(令和9年度の前までに結論)、軽度者の地域支援事業への移行、令和9年度介護報酬改定を、第10期介護保険事業計画策定と並行して追うこと。 - 障害福祉部門:
グループホーム指定基準の厳格化・総量規制・報酬適正化を、次期障害福祉計画と指導監査体制の観点から準備すること。 - 福祉(生活保護)部門:
生活保護受給者の国保・後期高齢者医療への加入検討を、国保部門と連携して注視すること。 - まちづくり・施設・契約部門:
インフラ老朽化対策の当初予算・安定財源化、公共施設マネジメントの高度化、賃上げ・物価を反映した委託料・工事費の積算を、令和9年度予算に反映すること。
まとめ
財政制度等審議会「人口減少と不確実性の時代における国力の強化と財政運営」(令和8年6月26日建議)は、供給制約経済・金利上昇・安全保障環境の変化を背景に、「財政資源も制約の下にある」との認識に立ち、債務残高対GDP比の安定的低下を基軸としつつ、歳出の効率化と給付・負担の見直しを求める、財政規律側からの包括的な提言です。骨太の方針2026の「責任ある積極財政」に対する「責任」側の裏づけとして読むことで、令和9年度に向けた国の政策の振れ幅を立体的に把握できます。
特別区にとって、本建議の含意は分野によって性格が大きく異なります。税源偏在是正(固定資産税・法人事業税資本割)は、都区財政調整の原資に関わり得る防御的に注視すべき論点であり、社会保障(高齢者医療の窓口負担、国保保険料統一、後期高齢者医療の都道府県化、介護2割負担・軽度者移行、障害福祉の基準厳格化)は、保険者・実施主体としての区の実務と住民影響に直結する準備を要する論点です。他方、インフラ老朽化対策の安定財源化や賃上げ・物価の予算反映は、区にとって追い風として活用し得る論点でもあります。
もっとも、本建議はあくまで財政審の「提言」であり、法的拘束力を持つものではありません。記載された改革の多くは【調整中】の性質を持ち、その実現の程度・時期は、年末の予算編成、与党税制改正大綱、法改正、令和9年度の各種報酬改定の過程で決まります。したがって、要求や方針が直ちに制度化・予算化されるわけではないという前提のもと、夏の予算見積段階から国の動きを先取りし、①区に不利な論点(税源偏在是正)への反論・要望材料の整理、②住民影響の大きい論点(社会保障)への準備・周知リードタイムの確保、③追い風となる論点(インフラ・単価改定)の要求根拠への活用、という三方向で複数の対応シナリオを用意しておくことが、令和9年度の政策立案における特別区の優位性につながります。国が予算の作り方と社会保障・地方税財政の在り方を同時に見直そうとしている年だからこそ、骨太の方針と併せて本建議を正確に読み解くことの価値は、例年以上に大きいといえます。




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