04 東京都

【東京都】新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針等を改定:アフォーダブル住宅の誘導

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

エグゼクティブサマリー

 東京都は令和8年(2026年)6月30日、「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」と、これに連なる各制度の運用基準・許可要綱など合わせて8つの基準類を改定したことを公表しました。施行は令和8年7月1日です。今回の改定は、民間開発を都市政策の目的に沿ってより効果的に誘導するための見直しであり、柱は二つに整理できます。一つは「都市開発に合わせたアフォーダブル住宅の誘導」、もう一つは「既存ストックを活用した地域の個性を生かしたまちづくりの推進」です。

 都市開発諸制度とは、公開空地の確保といった公共的な貢献を行う良好な建築計画に対し、容積率などの形態規制を緩和する仕組みで、再開発等促進区を定める地区計画、高度利用地区、特定街区、総合設計の4制度を指します。今回の見直しの中核は、この容積率の割増しというインセンティブを、子育て世帯などに向けた手頃な家賃の住宅供給へと結び付けた点にあります。具体的には、これまで政策的に誘導してきた「質の高い住宅」という枠組みを「誘導すべき多様な住宅」と名称を改め、その一類型としてアフォーダブル住宅を新たに位置付けました。

 アフォーダブル住宅は、入居対象を子育て世帯や地域に貢献する人々とし、家賃を市場家賃の8割以下かつ地域や入居対象者に応じた水準とすることを条件に、開発事業者が入居対象と家賃設定を提案して区市町と協議する仕組みです。評価の対象は全ての適用型に及び、開発区域の内外いずれの供給も対象とされます。ただし総合設計については開発区域内のみが対象です。もう一つの柱である既存ストックの活用では、重要文化財などの歴史的建造物に加えて、地域のアイコンとなる近現代建造物等の個性ある地域資源についても、保存、復元、活用の取組を評価対象に広げました。

 この取組は、住宅価格と家賃の高騰、子育て世代の都外への流出、空き家の増加という複合的な課題を背景に持ち、都が掲げる「2050東京戦略」のうち子育てに関する戦略02と、まちづくり・住まいに関する戦略17を推進する施策の一つに位置付けられています。特別区にとっては、入居対象や家賃水準の協議主体であり、地域資源をまちづくり計画へ位置付ける主体でもあるため、制度の実効性を左右する当事者となります。以下では、本施策の意義、歴史的経過、現状を示すデータ、そして政策立案上の示唆を、特別区の視点を重ねながら掘り下げていきます。

意義

容積率という非財政的手段を住宅政策へ転用する点

 今回の改定の最大の意義は、容積率の緩和という都市計画上のインセンティブを、住宅の価格帯という政策目標に直接結び付けた点にあると考えられます。容積率の割増しは、行政が直接の財政支出を伴わずに民間の事業意欲を引き出せる誘導手段です。床面積を上乗せできることが事業者の収益機会となり、その見返りとして公共的な貢献を求めるという交換の構図が、都市開発諸制度の根幹を成してきました。これまで公共的な貢献として求められてきたのは、公開空地や緑化、環境性能の向上、子育て支援施設の整備などでした。今回はそこに、市場より低廉な家賃の住宅という、住宅の価格帯そのものを誘導目標として加えた点に新しさがあります。

公営住宅とも家賃補助とも異なる第三の道

 住宅困窮への対応として行政が伝統的に用いてきた手段は、公営住宅という現物供給と、家賃補助という金銭給付の二つに大別できます。前者は主に低所得層を対象とし、ストックの建設と維持に多額の費用と時間を要します。後者は財政からの継続的な支出を前提とし、対象を広げるほど負担が膨らみます。これに対し、容積率緩和を通じて民間にアフォーダブル住宅を供給させる手法は、直接の建設費や家賃補助を伴わずに供給を引き出す可能性を持ちます。都営住宅が低所得層を対象とするのに対し、今回のアフォーダブル住宅は対象を低所得に限らず、広く子育て世帯などに向けている点も特徴です。公的支援の収入基準をわずかに超え、しかし民間賃貸では負担が重いという、いわゆる中間層の「狭間」に対応しうる枠組みであると考えられます。

既存ストックの活用と地域の個性の継承

 もう一つの柱である既存ストックの活用は、量の確保から質と個性の継承へと都市づくりの重心を移す意味を持ちます。重要文化財などの歴史的建造物に限らず、地域のアイコンとなる近現代建造物等を保存、復元、活用する取組を評価対象としたことで、スクラップ・アンド・ビルドを前提としない都市更新の選択肢が広がりました。エリア内の別建物や中小ビルのリノベーション、空き家の再生といった手法が、容積率緩和の文脈に位置付けられたことの含意は小さくありません。住宅供給と地域資源の継承を、同じ制度の枠組みの中で両立させようとする設計思想がうかがえます。

歴史・経過

都市開発諸制度の成り立ち

 都市開発諸制度を構成する4制度は、それぞれ異なる時期に、異なる目的のもとで生まれてきました。特定街区は古くから運用され、霞が関ビルが先駆けの一つとして知られています。高度利用地区は市街地再開発事業と結び付いた制度として、江戸川橋地区が初期の事例とされています。総合設計は敷地内に公開空地を確保することで容積率などの緩和を受ける制度で、日野大久保団地が早い時期の事例とされています。再開発等促進区を定める地区計画は、工場や鉄道操車場の跡地など、まとまった規模の低・未利用地の土地利用転換を図る手法として昭和63年に創設された制度を源流とし、平成15年に現在の名称へ統合されました。

活用方針による横断的な運用への移行

 これらの制度は当初それぞれ別個の考え方で運用されており、制度間の不均衡が課題として意識されるようになっていました。こうした経緯を経て、東京都は平成15年6月に「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」を策定し、4制度を束ねて戦略的に運用する枠組みを整えました。以後、活用方針は時々の政策課題に応じて改定を重ねてきました。環境負荷の低減やカーボンマイナス、緑化の誘導、質の高い住宅整備、子育て支援施設の確保などが、その時々の誘導テーマとして織り込まれてきたと整理できます。直近では令和6年や令和7年3月の改定で、緑のさらなる充実や脱炭素化、質の高い居住の誘導などが図られてきました。

アフォーダブル住宅政策の流れの中での位置付け

 今回の改定は、都のアフォーダブル住宅政策という、より大きな流れの中に置いて理解する必要があります。都は令和4年3月に策定した住宅マスタープランで子育てに適した民間住宅の供給促進を掲げ、令和7年1月に公表した少子化対策の枠組みの中で、子育て世帯などが手頃な価格で住めるアフォーダブル住宅の供給を推進する方針を示しました。供給の具体的な手段としては、都が出資して民間資金と合わせるファンドを通じた供給、東京都住宅供給公社と連携した既存公社住宅の活用、空き家活用や都有地活用など、複数のルートが用意されています。報じられている内容によれば、官民連携のファンドでは都が100億円規模の出資を行い、令和7年11月には運営事業者の候補が選定され、令和8年度以降に供給を開始する方針とされています。公社住宅の活用では、子育て世帯に適した既存住戸を市場価格より2割程度低い家賃で、年間200戸ずつ計1,200戸供給する方針が示されているとされます。今回の都市開発諸制度の改定は、これら複数のルートのうち「都市開発と合わせた誘導」を制度として具体化したものと位置付けられます。

現状データ

住宅価格と家賃の上昇傾向

 今回の施策の背景には、東京、とりわけ特別区における住宅費の上昇があります。市場の調査データによれば、東京23区の新築分譲マンションの平均価格は近年高止まりが続いており、2024年度上半期には平均で1億1,051万円となり、前年同期比で4.5%上昇し、2年連続で1億円を超えたと報じられています。新築戸建てについても、23区の小規模戸建ての平均的な希望売り出し価格が2025年初頭に過去最高水準を更新したとされ、5年前のおよそ5,530万円から約44%上昇したとする市場データもあります。賃貸でも、ファミリー向け物件の平均家賃が月25万円前後となり、5年前のおよそ19万円から約3割上昇したとする調査が見られます。単身者向けの上昇が相対的に緩やかであるのに対し、ファミリー向けの上昇が突出している点が特徴とされています。なお、これらの価格・家賃は民間の市場調査に基づく相場であり、国の統計調査とは調査手法や対象が異なるため、数値を単純に並べて比較することは適切でない点には留意が必要です。

公的統計が示す地価と人口移動

 公的統計の側でも、住宅取得環境の変化が確認できます。国土交通省の公示地価では、2025年に住宅地が4年連続で上昇し、上昇率はバブル崩壊後で最大級となったとされています。人口移動の面では、住宅費の負担を背景に、子育て世代が都外へ転出する動きが指摘されてきました。内閣府の分析などによれば、2022年には東京都内に居住する25歳から44歳の層のうち、おおむね1.5万人規模が神奈川・埼玉・千葉の3県へ流出したとされ、特別区では0歳から14歳の年少者や30代から40代前半の世帯で転出傾向が見られる時期がありました。住宅費を抑えるために都外へ転居する子育て世帯の動きが、都の出生数の減少という課題とも関係している可能性が指摘されています。

増加する空き家という既存ストック

 既存ストックの活用という観点では、空き家の動向が重要な現状データとなります。国の住宅・土地統計調査によれば、東京都の空き家数は2018年のおよそ81万戸、空き家率10.6%から、2023年にはおよそ90万戸、空き家率10.9%へと増加し、いずれも過去最多の水準となりました。特別区に限ってみると、空き家数は64万6,800戸、空き家率は10.9%で、2018年の10.4%から上昇し、データのある期間で最多とされています。このうち、長期不在や取壊し予定などの管理不全につながりやすい「その他空き家」は、都全体でおよそ18万戸から21万戸へ増加しました。東京都の空き家の特徴として、賃貸用が全体のおよそ7割を占める点が指摘されており、賃貸用空き家の増加が空き家数増加の主因とされています。区別では、空き家数で世田谷区がおよそ5.9万戸、大田区がおよそ4.9万戸、足立区がおよそ4.4万戸と上位にあり、空き家率では豊島区が13.9%、港区が13.7%、荒川区が12.9%と高い水準にあるとされています。住宅が不足しているという感覚と、ストックとしての空き家が増え続けているという事実が併存している点が、東京の住宅市場を読み解く上での鍵になると考えられます。

政策立案の示唆

この取組を行政が行う理由

市場のひずみと供給構造の問題

 価格と家賃が上昇する一方で空き家が増えるという一見矛盾した状況は、需要と供給のミスマッチが背景にあると考えられます。

用地取得難と建築費高騰による供給制約

 特別区では用地取得が難しく、建築費や労務費も高い水準にあるため、供給される住宅が高価格帯に偏りやすい構造があります。子育て世帯が必要とする広さや間取りのファミリー向け賃貸は、もともと単身者向けに比べて供給が限られており、需要に対して不足しやすいことが家賃上昇を増幅させている可能性があります。市場に任せておくだけでは、子育て世帯が手の届く価格帯の住宅が十分に供給されにくいという、市場のひずみへの対応が求められていると整理できます。

公的支援の狭間にある中間層

 公営住宅は収入基準が低く設定されており、それをわずかに超える中間層は支援の対象から外れます。しかし民間賃貸では負担が重く、適切な広さや環境の住まいを確保しにくいという状況が生じています。この「狭間」に置かれた子育て世帯への対応が、行政が新たな枠組みに踏み出す動機の一つになっていると考えられます。

財政負担を抑えつつ供給を引き出す必要性

 直接の住宅建設や家賃補助は、いずれも継続的かつ多額の財政負担を伴います。容積率の緩和を通じて民間に供給を促す手法は、行政の直接支出を抑えながら供給を引き出せる可能性があるため、財政の持続可能性という観点からも合理性があると考えられます。少子化や人口流出への対応を、財政規律と両立させようとする発想がうかがえます。

行政側の意図

インセンティブの交換構造の再設計

 今回の改定は、容積率の割増しと、市場家賃の8割以下という低廉な住宅供給とを交換する構造を新たに設けたものと読み解けます。

「質の高い住宅」から「誘導すべき多様な住宅」へ

 従来の「質の高い住宅」という枠組みを「誘導すべき多様な住宅」へと改称し、その一類型にアフォーダブル住宅を加えたことは、住宅の質だけでなく価格帯の多様性をも政策目標に格上げしたことを意味すると考えられます。サービス付き高齢者向け住宅やこどもすくすく住宅、長期優良住宅などと並んで、手頃な家賃の住宅が明示的に位置付けられた点に、住まいの選択肢を幅広く確保しようとする意図が表れています。

開発区域外への供給手段の拡張

 評価の対象を開発区域の内外に広げ、エリア内の別建物への供給や中小ビルのリノベーション、新規建設といった手法を視野に入れたことは、供給手段を一棟の開発に閉じず、地域全体で組み立てる発想への転換と捉えられます。開発による容積の余地を、必ずしも同じ敷地内に限定せず、近接するストックの活用へと振り向けられるようにした点に、柔軟性を高めようとする意図が読み取れます。

地域の実情を反映する協議型の設計

 入居対象や家賃設定を開発事業者が提案し、区市町と協議して定める仕組みとしたことは、地域ごとの住宅事情や政策方針を反映できるようにする意図によるものと考えられます。地域資源の評価にあたって、都市計画のマスタープランや区市町が策定するまちづくり計画における位置付けを前提としたことも、地域の主体性を制度に組み込む狙いがあると見られます。

期待される効果

子育て世帯の都内居住と少子化対策への寄与

 手頃な家賃の住宅が都内で供給されることで、子育て世帯が住宅費を理由に都外へ転居せずに済む可能性が高まると考えられます。職住近接が確保されれば、共働き世帯の就業継続や通勤負担の軽減にもつながり得ます。住まいの不安を和らげることが、結婚や出産をためらう要因の一つを取り除き、少子化対策に資する可能性も指摘できます。ただし、これらの効果は供給される住宅の規模や立地に大きく左右されるため、現時点で確実な効果として断定することはできません。

既存ストックの活用と地域の魅力向上

 空き家や中古住宅、中小ビルといった既存ストックの活用が進めば、増加する空き家への対応とアフォーダブル住宅の供給を同時に進められる可能性があります。新築や建て替えに比べて費用を抑えられる場合があり、その分を家賃水準の抑制に振り向けられる余地も考えられます。近現代建造物等の地域資源を保存・活用する取組が評価されることで、画一的でない街並みの形成や、にぎわいの創出にもつながり得ます。

財政負担を抑えた供給の可能性

 民間の資金とノウハウを活用する枠組みであるため、行政の直接的な財政負担を抑えながら供給を進められる可能性があります。容積率緩和という非財政的な手段を軸とすることで、限られた財源の中でも住宅政策の選択肢を広げられると考えられます。

課題・次のステップ

事業者の採算性と民間協力の不確実性

 市場家賃の8割以下という家賃設定は、事業者にとって収益を圧迫する要因となり得ます。容積率の割増しによる床面積の増加がもたらす利益が、低廉な家賃による減収を上回らなければ、事業者の参画意欲は高まりにくいと考えられます。アフォーダブル住宅の供給を担う他のルートでも、一般的な不動産投資に比べて利回りが低く、民間の協力を十分に得られるかが不透明であるとの指摘があります。インセンティブの水準が市場の実態に見合っているかを継続的に検証する必要があります。

家賃水準と供給規模の妥当性

 市場家賃の8割という基準は、その前提となる市場家賃の算定根拠が適切でなければ、実質的な低廉さを欠くおそれがあります。家賃設定の根拠を運営主体が明確に示す仕組みの運用が、制度の信頼性を左右すると考えられます。また、この枠組みによってどの程度の戸数が供給されるかは現時点で見通しにくく、需要に対して量が十分かどうかは今後の運用を通じて明らかになっていく課題です。

運用体制と計画の整備

 入居対象や家賃設定を事業者と協議し、地域資源の位置付けを判断する役割は、区市町に相応の体制と専門性を求めます。近現代建造物等の地域資源を評価対象とするには、マスタープランやまちづくり計画にあらかじめその位置付けが明確にされていることが前提となるため、計画の整備が追いついていない地域では運用が進みにくい可能性があります。効果を検証するモニタリングの仕組みや、状況に応じて基準を柔軟に見直す枠組みの整備も、次のステップとして重要になると考えられます。

特別区への示唆

制度の運用主体としての役割の自覚

 今回の改定は、特別区を単なる受け手ではなく、制度の実効性を左右する運用主体として位置付けています。入居対象や家賃水準を開発事業者と協議する役割、そして地域資源をまちづくり計画に位置付ける役割は、いずれも区の判断が制度の運用を方向付ける場面です。協議に臨むための考え方の整理や、開発事業者との対話力の確保が、実務上の鍵になると考えられます。

計画体系への位置付けと政策の整合

 地域のアイコンとなる近現代建造物等を評価対象とするには、都市計画マスタープランや区のまちづくり計画における明確な位置付けが前提となります。区として残し、活かしたい地域資源を計画の中にあらかじめ書き込んでおくことが、制度を活用するための準備として求められます。あわせて、区の住宅施策や子育て政策、空き家対策との整合を図ることで、都市開発諸制度を区の政策目標の実現手段として一体的に運用できる可能性があります。

区ごとの実情に応じた戦略の必要性

 空き家数や子育て世帯の動向は区によって差が大きく、世田谷区や大田区、足立区のように空き家数が多い区と、豊島区や港区のように空き家率が高い区とでは、活用の戦略が異なり得ます。開発圧力が強い都心の区と、ストックの再生が課題となる区とでは、開発区域外への供給という選択肢の意味合いも変わってきます。区の人口構成や住宅市場の特性を踏まえ、どの手法を重点的に活用するかを見極める必要があると考えられます。

エリアマネジメントと近隣区との関係

 開発区域外での供給が評価対象となったことで、中小ビルのリノベーションや空き家の活用を、区が進めるエリアマネジメントや空き家対策と連携させる余地が生まれます。区有地や区有施設の活用と組み合わせる発想も検討に値します。一方で、アフォーダブル住宅の供給をめぐっては、近隣区との間で子育て世帯の確保を競う関係と、広域的な住まいの選択肢を共に充実させる連携の関係が併存し得る点にも留意が必要です。

まとめ

 今回の都市開発諸制度活用方針等の改定は、容積率の緩和という都市計画の手段を、住宅の価格帯と既存ストックの活用という新たな政策目標へと束ね直した点に、その本質があると考えられます。住宅価格と家賃が上昇を続け、子育て世代が住宅費を理由に都外へ流出し、その一方で空き家が増え続けるという、東京特有の複合的な課題に対し、行政の直接的な財政負担を抑えながら民間の供給を誘導しようとする発想が、この施策の根底に流れています。公営住宅という現物供給とも、家賃補助という金銭給付とも異なる第三の道を、容積率というインセンティブを通じて切り開こうとする試みであると整理できます。

 もっとも、この枠組みが期待される効果を生むかどうかは、制度設計の精緻さと、運用を担う区市町の実務能力に大きく左右されます。市場家賃の8割以下という家賃水準が事業者の採算と両立するか、供給される戸数が需要に見合うか、家賃の算定根拠が妥当か、といった論点はいずれも、今後の運用を通じて検証されていくべき課題です。効果を断定するにはなお時期尚早であり、供給の実績を丁寧に追い、必要に応じて基準を見直していく姿勢が求められると考えられます。

 特別区にとって重要なのは、この制度を都から与えられた枠組みとして受け止めるのではなく、入居対象や家賃の協議、地域資源の計画への位置付けといった運用の場面で主体的に関与する余地が大きいという点です。区ごとに異なる住宅市場や空き家の状況、子育て世帯の動向を踏まえ、計画体系の整備と協議体制の充実を進めることが、制度を区の政策目標の実現に結び付ける条件になると考えられます。令和8年7月1日の施行を起点として、容積率という都市づくりの古くからの手段が、子育て世帯の住まいの確保と地域の個性の継承という現代的な課題にどこまで応えうるのか、その運用の積み重ねが問われていくことになります。


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