07 自治体経営

PPP/PFI等の民間活力導入の検討

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(インフラ整備と民間活力を取り巻く環境)

意義

住民にとっての意義

質の高い公共サービスの享受
利用料金の抑制と安定化
迅速なインフラ整備
  • 民間の資金や効率的な事業手法を活用することで、行政の単年度ごとの予算制約に大きく左右されることなく、地域にとって必要なインフラをより迅速に整備・更新することが可能になります。これにより、老朽化施設の危険性を早期に解消し、住民が待ち望むサービスをタイムリーに提供できます。

地域社会にとっての意義

新たな事業機会の創出と地域経済の活性化
地域の魅力向上と賑わいの創出

行政にとっての意義

財政負担の平準化と軽減
行政事務の効率化・省力化
適切な官民のリスク分担
  • 事業の実施に伴い発生しうる様々なリスク(例:建設工事の遅延、需要の変動、インフレによるコスト増、災害による損害など)を、事前に官民で協議し、最も適切に管理できる主体が分担する契約を結びます。これにより、予期せぬ事態が発生した際の行政の追加的な財政負担を抑制し、事業全体の安定性を高めることができます。

(参考)歴史・経過

1980年代~1990年代前半
  • 英国のサッチャー政権下で、厳しい財政状況を背景に公共サービスの効率化を目指すNPM(New Public Management)の流れの中でPFIが考案され、1992年に制度として本格導入されました。日本では、中曽根内閣時代に「民活(民間活力活用)」政策が推進されましたが、主に第三セクター方式が用いられ、後のバブル経済崩壊と共に多くの事業が経営破綻し、官民のリスク分担のあり方などに課題を残しました。
1999年
2000年代
2011年~2013年
  • 東日本大震災からの復興やインフラ老朽化対策の加速化が求められる中、2011年にPFI法が改正され、利用料金を徴収する公共施設等において、施設の所有権を公共に残したまま運営権を民間に売却する「公共施設等運営権制度(コンセッション方式)」が導入されました。さらに2013年には、政府としてPPP/PFIを強力に推進するため、具体的な数値目標を掲げた「PPP/PFI推進アクションプラン」が初めて策定されました。
2010年代後半~現在

インフラ整備におけるPPP/PFIに関する現状データ

全国のPFI事業件数・事業規模の推移

事業件数の着実な増加
事業規模の拡大

地方公共団体における導入状況の推移

市区町村が導入を牽引
  • 地方公共団体が実施主体となるPFI事業は、平成24年度末の346件から令和4年度末には848件へと、この10年間で約2.5倍に急増しました。事業を実施する団体の数も189団体から399団体へと倍増しており、PPP/PFIが特別な手法ではなく、標準的な選択肢の一つとして認識されつつあることを示しています。
  • 近年、新たに実施方針が公表されるPFI事業の半数以上は市区町村によるものであり、PPP/PFI活用の主役が、制度導入初期の国から地方、とりわけ住民に身近な基礎自治体である市区町村へと明確に移行しています。
自治体規模による導入格差
  • PFIの導入は、自治体の規模によって大きな差が見られます。人口20万人以上の市区町村では、平成25年から令和2年の7年間で実施件数が66件から138件へと倍増するなど、導入が積極的に進んでいます。
  • 一方で、人口20万人未満の市町村に目を向けると、令和2年3月末時点で約9割の団体がPFI事業の実施実績がなく、専門人材の不足やノウハウの欠如といった課題から、導入に踏み切れていない実態が浮き彫りになっています。導入の裾野をいかに広げていくかが、今後の大きな課題です。

東京都特別区の財政状況とインフラ老朽化

堅調だが構造的課題を抱える財政
深刻化するインフラ老朽化と人材不足

事業分野別の導入動向(上下水道、教育文化施設等)

多様な分野への広がり
  • PFI事業は、制度導入当初に多かった庁舎や公営住宅といった「まちづくり」関連分野に加え、近年は「教育と文化」分野での活用が件数の増加を力強く牽引しています。学校施設や給食センター、体育館、文化施設、公園など、住民生活に密着した施設で民間のノウハウを活用する事例が増加しています。
ウォーターPPPの推進

課題

住民の課題

サービス水準の低下・格差の懸念
  • PPP/PFI事業は、民間事業者の効率的な運営に期待する一方で、利益追求が優先されるあまり、採算の取れない部門のサービスが縮小されたり、過度なコスト削減によって公共サービスの品質が低下したりするリスクを内包しています。特に、事業者の経営が破綻した場合には、代替事業者がすぐに見つからず、サービスの提供自体が不安定になる深刻な事態も懸念されます。
利用料金への影響と受益者負担の公平性
  • 空港や上下水道、ホールなどで導入されるコンセッション事業のように、利用料金を事業者の収入とする方式では、事業者が収益を最大化するために、住民の利益に反するような不適切な料金設定を行う可能性があります。また、料金改定のプロセスが契約当事者である官民の間で決められ、住民にとって不透明になることも懸念されます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民の費用負担が不適切に増加し、経済的な理由でサービスを利用できない層が生まれ、不平等が生じます。

地域社会の課題

地域経済への貢献と地元企業の参画機会
  • 大規模なPFI事業では、豊富な実績や高い技術力、そして強固な財務基盤を持つ大手企業(ゼネコン等)が代表企業となるコンソーシアムが受注するケースが多く、地元の建設業者や維持管理業者が事業に参画する機会が限られてしまうという課題があります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 公共投資が地域に十分に還流せず、地域経済の活性化というPPP/PFIが持つ重要な目的の一つが達成されません。
事業失敗時の地域への影響
  • PFI事業は10年、20年といった長期にわたる契約が一般的であるため、その期間中に民間事業者の経営が破綻したり、行政との間で深刻な対立が生じて契約が解除されたりした場合、地域社会に与える影響は計り知れません。代替となる事業者を短期間で確保することは極めて困難であり、公共サービスの提供が長期間停止するリスクがあります。
    • 客観的根拠:
      • 高知市の清掃工場PFI事業では、事業開始後に市長が交代し、新市長が前市政時代の契約内容を問題視したことから事業者との契約見直し協議が行われましたが、これが不調に終わり、最終的に契約解除に至りました。このような事例は、事業の停滞が地域に大きな影響を与えることを示しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 生活に必須のインフラ機能が長期間停止し、地域住民の日常生活や経済活動に深刻な打撃を与えます。

行政の課題

専門人材の不足とノウハウの欠如
  • PPP/PFI事業を適切に推進するには、法務(複雑な契約書の作成・解釈)、財務(事業採算性の評価、リスク分析)、そして各事業分野の技術といった高度で複合的な専門知識が不可欠です。しかし、多くの自治体ではこれらの知見を併せ持つ職員が決定的に不足しており、結果として事業計画の策定から事業者選定、契約後のモニタリングに至るまで、全ての段階で外部のコンサルタントに大きく依存せざるを得ない状況にあります。
適切なリスク分担と契約管理の困難性
  • 官と民のどちらがどのリスクを負うかを明確にする「適切なリスク分担」は、PFI事業の成否を分ける最も重要な要素の一つです。しかし、数十年という長期にわたる事業期間中のあらゆる不確実性(自然災害、法改正、急激な経済変動など)を事前にすべて想定し、それを抜け漏れなく契約書に落とし込むことは極めて困難な作業です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 契約書におけるリスク分担の曖昧さが将来の紛争の火種となり、事業の遅延や訴訟、予期せぬ追加的な財政負担を招きます。
事業形成・事業者選定プロセスの長期化・複雑化
  • PPP/PFIは、導入可能性調査、実施方針の策定・公表、要求水準書の作成、事業者選定(公募・審査)、契約交渉といった、従来型の公共事業にはない数多くの手続きを要します。そのため、事業を計画してから実際にサービスが開始されるまでに非常に長い期間がかかる傾向があります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 必要なインフラ整備が遅れることによる機会損失や、煩雑な手続きに伴う行政コストの増大に繋がり、PPP/PFIの導入に対する行政内部の意欲そのものが削がれてしまいます。
長期契約におけるモニタリング体制の構築
  • 10年、20年、時には30年にもわたる長期契約が一般的なPFI事業では、契約締結時に約束されたサービス水準が、事業期間を通じて適切に維持されているかを継続的に監視・評価(モニタリング)する体制が不可欠です。しかし、何を、どのように、どの程度の頻度で確認すればよいのかというモニタリングのノウハウや、それを実行するための専門人材が自治体側に不足しているのが実情です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 民間事業者によるサービスの質が徐々に低下しても行政がそれを是正できず、契約が形骸化してしまい、結果的に質の低いサービスに対して対価を支払い続けることになります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果が発現するまでの期間が比較的短く、単一の事業だけでなく、区が実施する複数のPPP/PFI事業の質の向上や、他の課題解決にも横断的に好影響を及ぼす施策を高く評価します。
実現可能性
  • 大規模な法改正や新たな条例制定を必要とせず、現在の法制度、予算、人員体制の範囲内で比較的着手しやすく、実行可能性が高い施策を優先します。
費用対効果
  • 投入する行政コスト(予算、人員、時間等)に対して、得られる効果(将来的な財政負担の軽減、住民サービスの向上、行政事務の効率化等)が大きいと見込まれる施策を優先します。
公平性・持続可能性
  • 特定の事業分野や一部の部署だけでなく、区が実施する多くのPPP/PFI事業に普遍的に適用でき、一度構築すれば長期的に効果が持続するような基盤的な施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 国のガイドラインや手引きで推奨されている、あるいは他の先進自治体での成功事例によってその効果が実証されているなど、客観的なエビデンスに基づく施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 特別区におけるPPP/PFIの導入を成功に導くためには、散発的な取り組みではなく、体系的かつ戦略的な支援策が必要です。ここで提案する施策は、「基盤整備」「プロセス改革」「市場形成」という3つの階層で構成されています。
  • 最も優先度が高いのは、全ての取り組みの土台となる**「支援策①:PPP/PFI推進体制の強化と人材育成」**です。これは、行政内部の「実行能力(キャパシティ)」そのものを構築するものであり、この基盤がなければ他の施策は効果を発揮しません。行政の専門性欠如という根本課題に直接対応するため、最優先で着手すべきです。
  • 次に優先すべきは、構築された専門チームが効率的に業務を遂行するための**「支援策②:案件形成・導入プロセスの円滑化支援」**です。これは、事業化までのワークフローを標準化・効率化する「道具と地図」を整備するものであり、事業の長期化・複雑化という課題に対応します。
  • そして最後に、整備された体制とプロセスを用いて、健全で競争的な市場を育てる**「支援策③:地域企業との連携強化と官民対話の促進」**に取り組みます。これは、質の高い提案という「燃料」を市場から調達するための施策であり、1者応募問題や地域経済への貢献といった課題に対応します。
  • この「基盤→プロセス→市場」という段階的なアプローチにより、着実にPPP/PFIを推進する能力を組織内に定着させ、持続可能な官民連携を実現します。

各支援策の詳細

支援策①:PPP/PFI推進体制の強化と人材育成(優先度:高)

目的
  • 区役所内にPPP/PFIに関する専門知識とノウハウを集約し、全庁的な事業推進の司令塔となる機能を構築することで、安定的かつ高度な事業マネジメントを可能にすることを目的とします。
  • 職員の専門性を体系的に高めることで、外部コンサルタントへの過度な依存から脱却し、行政が主体性を持って民間事業者と対等なパートナーシップを築き、事業を管理できる体制を確立します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省が作成した手引きでは、官民連携事業を円滑に進めるためには、企画・財政関連部署が主導する形で、事業所管部署や技術、法務等の専門部署が参加する全庁横断的な検討体制(プロジェクトチーム)を構築することが肝要であるとされています。
      • 先進自治体の事例を見ると、専門部署の設置や、民間企業出身の外部専門人材(CIO補佐官、CDOなど)を登用することが、事業推進を効果的に加速させる要因となっています。
主な取組①:全庁横断的な「官民連携推進室(仮称)」の設置
  • 企画部門や財政部門の中に、各部局から技術、法律、財務等の専門知識や経験を持つ職員を集めた、恒久的な専門部署を設置します。
  • この部署が、全庁のPPP/PFI案件に関する相談窓口、最新情報の収集と共有、過去案件から得られたノウハウの蓄積・横展開、庁内向けガイドラインの策定・改訂などを一元的に担うことで、組織としての知見を着実に高めます。
主な取組②:外部専門人材(任期付職員等)の積極的登用
  • 金融機関、コンサルティングファーム、建設会社、法律事務所などでPPP/PFI事業の具体的な実務経験を持つ人材を、任期付職員や専門アドバイザーとして積極的に採用します。
  • 民間での実務経験を活かし、事業計画の妥当性評価、リスクの洗い出しと適切な分担案の作成、民間事業者との契約交渉といった専門性の高い局面において、行政職員を実践的に支援し、OJTを通じてノウハウを移転します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省は、PPP/PFIの案件形成に苦慮する地方公共団体に対し、専門家を派遣して事業化を具体的に支援する「ハンズオン支援」を実施しており、外部専門家の活用が事業化の推進に有効であることを示唆しています。
主な取組③:体系的な職員研修プログラムの構築
  • 新規採用職員、若手・中堅職員、管理職といった職員の階層や役割に応じて、PPP/PFIに関する研修プログラム(基礎知識、関連法制度、財務分析入門、リスク管理、先進事例研究など)を体系的に企画し、継続的に実施します。
  • 庁内での成功事例や課題を共有する勉強会の開催や、先進的な取り組みを行う他の自治体・民間事業者への職員派遣研修なども組み合わせ、実践的で生きた知識の習得を促進します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 全PFI事業におけるVFM(Value for Money)の平均達成率:10%以上
      • データ取得方法: 各PFI事業の事業選定時および事業期間終了後の事後評価において算定されるVFM値を、官民連携推進室が集計・分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 庁内PPP/PFI専門人材の育成数:官民連携推進室に専門職として5名以上配置、かつ主要な事業担当部に1名以上のキーパーソンを育成
      • データ取得方法: 人事部門が管理する職員の研修受講履歴、取得資格、実務経験等に基づき「PPP/PFIスキルマップ」を作成し、定期的に更新・評価する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • PPP/PFI関連業務における外部コンサルタントへの委託費用の削減率:3年間で20%削減
      • データ取得方法: 財政部門が管理する予算・決算データの中から、PPP/PFI関連の外部委託契約実績を抽出し、その推移を分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 職員向けPPP/PFI研修の年間実施回数および延べ参加者数:年4回以上、延べ100人以上
      • データ取得方法: 研修担当部署が管理する研修の実施記録および参加者名簿から集計する。

支援策②:案件形成・導入プロセスの円滑化支援(優先度:中)

目的
  • PPP/PFIの導入を検討する初期段階から、事業者を選定し契約を締結するまでの一連のプロセスを標準化・効率化することで、各事業担当部署の事務負担を軽減し、事業化までの期間を短縮することを目的とします。
  • 担当者の経験や勘に頼るのではなく、客観的な基準に基づいた事業手法の選択を徹底することで、PPP/PFIの導入そのものが目的化することを防ぎ、真に住民にとって最適となる公共サービスの提供方法を決定できるよう支援します。
    • 客観的根拠:
      • 政府は「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針」を策定し、地方公共団体に対して、一定規模以上の公共施設整備等事業については、従来型の直営方式等に先立ってPPP/PFI手法の導入可能性を検討するルール(優先的検討規程)を設けることを推奨しています。
主な取組①:「PPP/PFI手法導入優先的検討規程」の策定と運用
  • 「総事業費10億円以上」や「単年度の維持管理・運営費が1億円以上」といった客観的な基準を設け、これに該当する公共施設の整備・運営事業については、必ずPPP/PFI手法(PFI、DBO、指定管理者制度等)の導入可能性を検討するプロセスを、庁内の正式な規程として制度化します。
  • 検討の手順や評価項目を定型化(フォーマット化)することで、担当部署の負担を軽減するとともに、検討の質を一定水準以上に担保します。
主な取組②:サウンディング型市場調査の積極的活用と手引きの整備
  • 事業の構想や計画を固める前の早い段階で、民間事業者との直接対話(サウンディング)を積極的に実施します。これにより、事業に対する民間の関心度、事業の実現可能性、採算性、そして行政だけでは思いつかないような革新的なアイデアなどを早期に把握します。
  • サウンディングの標準的な手順や、民間事業者へ提示すべき情報、対話における留意点などを分かりやすくまとめた庁内向けの手引きを作成・配布し、各事業担当部署が円滑に対話を実施できるよう支援します。
主な取組③:民間提案制度の窓口一本化とインセンティブ付与
  • 民間事業者から寄せられるPPP/PFIに関する様々な提案を、官民連携推進室が一元的に受け付ける「ワンストップ窓口」を設置し、事業者が気軽に、かつ安心して提案できる環境を整備します。
  • PFI法第6条に基づく正式な提案だけでなく、より初期段階のアイデアレベルの提案も歓迎する姿勢を明確にします。また、事業化に繋がる優れた提案を行った事業者に対しては、後の事業者選定プロセスにおいて技術評価点で加点するなどのインセンティブを付与することを検討し、質の高い提案を積極的に誘導します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 案件形成の開始から事業者決定までの平均所要期間:従来比で20%短縮
      • データ取得方法: 各PPP/PFI事業のプロセス(導入可能性調査開始、実施方針公表、公募開始、事業者決定等)ごとのマイルストーン日程を官民連携推進室が記録・集計し、平均所要期間を分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 優先的検討規程の対象事業における検討実施率:100%
      • データ取得方法: 官民連携推進室が、規程の対象となる事業リストと、各事業所管部署から提出される検討結果報告書を照合し、実施率を管理する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サウンディング型市場調査を経て事業化に至った案件の割合:サウンディング実施案件のうち30%
      • データ取得方法: 官民連携推進室が、過去に実施した全てのサウンディング案件リストを基に、その後の事業化の進捗状況を追跡調査し、事業化率を算出する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • サウンディング型市場調査の年間実施件数:年間5件以上
      • データ取得方法: 官民連携推進室が、全庁の実施件数を集計・管理する。

支援策③:地域企業との連携強化と官民対話の促進(優先度:中)

目的
  • PPP/PFI事業への地元企業の参画を積極的に促進し、公共投資が地域経済の活性化に確実に繋がる仕組みを構築することを目的とします。
  • 多様な事業者が参入しやすい環境を整えることで、事業者選定における競争性を高め、より質の高い、コスト効率に優れた提案を引き出すことを目指します。
主な取組①:「地域プラットフォーム」の設立・運営支援
  • 区内に拠点を置く商工会議所、金融機関(信用金庫等)、建設業協会、大学、NPOなどと行政が連携し、PPP/PFIに関する情報交換、最新事例の勉強会、そして具体的な案件形成に向けた官民対話を行うための「(区名)PPP/PFI地域プラットフォーム」を設立します。
  • 区は、このプラットフォームの事務局機能を担い、定期的な会合の開催を主導するほか、国の専門家派遣制度の活用を調整するなど、その活動を積極的に支援します。
    • 客観的根拠:
      • 国が設けている「PPP/PFI地域プラットフォーム協定制度」を活用することで、プラットフォームの活動に対して国からの情報提供や専門家派遣といった支援を受けることが可能です。これにより、地域企業のPPP/PFIに対する理解度やノウハウの向上、官民の顔の見えるネットワーク構築が期待できます。
主な取組②:地域企業が参加しやすい公募条件の設定
  • 事業の規模や特性に応じて、公募の際に、地域に本社または主要な事業所を置く企業が代表企業または構成員として参加することを応募の条件としたり、評価項目において加点したりする方策を検討・導入します。
  • 大規模な施設整備事業を複数の工区に分割して発注したり、施設の維持管理業務や運営業務を切り出して別途発注したりするなど、地域の中小企業でも参入しやすいような事業設計を工夫します。
主な取組③:モニタリングへの住民・地域団体の参画
  • PFI事業が開始された後のモニタリング(運営状況の監視)プロセスにおいて、行政と事業者だけで行うのではなく、施設の利用者代表や地域の自治会・町内会、関連分野の専門家などから成る第三者委員会を設置し、運営状況を多角的に評価・監視する仕組みを導入します。
  • 第三者委員会の評価結果や議事録をウェブサイト等で公表し、事業運営の透明性を確保するとともに、住民や利用者からの意見・要望をサービスの改善に的確に反映させるチャネルを構築します。
    • 客観的根拠:
      • PFI事業の失敗事例を分析した研究では、行政によるモニタリングが十分に機能していなかったことが失敗の要因として指摘されており、多様な主体による複眼的な監視体制を構築することが、リスクの早期発見と回避に有効です。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • PPP/PFI事業における地域企業の受注額割合:総事業費(契約額ベース)の30%以上
      • データ取得方法: 事業者から提出されるコンソーシアムの構成員内訳および主要な再委託先リストに基づき、地域企業の受注額を官民連携推進室が集計・分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 事業者公募における平均応募者数:平均3者以上
      • データ取得方法: 各事業の公募結果(応募者数、応募者名)を官民連携推進室が記録・集計する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 地域プラットフォームでの対話を通じて形成・提案された事業案件数:年間2件以上
      • データ取得方法: プラットフォーム事務局が、会合での議論や提案内容を記録し、事業化に繋がった案件を追跡・集計する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域プラットフォームの年間開催回数および延べ参加団体数:年4回以上、常時20団体以上が参加
      • データ取得方法: プラットフォーム事務局が、各会合の開催記録および参加者名簿から集計する。

先進事例

東京都特別区の先進事例

大田区「羽田空港跡地第1ゾーンにおけるPark-PFI活用事業」

  • 大田区は、羽田空港跡地という広大な都有地において、公園部分の整備をDBO(設計・建設・運営)方式で行い、同時に公園内の賑わい施設(商業施設等)の整備・運営にPark-PFI(公募設置管理制度)を併用するという、極めて先進的で複合的な手法を採用しています。
  • この公民連携により、行政の財政負担を大幅に抑制しつつ、民間事業者の持つ開発・運営ノウハウを最大限に活用して、日本の空の玄関口にふさわしい、新たな賑わいと交流の拠点となる魅力的な大規模公園を創出することを目指しています。
  • 成功要因: このような複雑な事業を成功させるため、PPP/PFI分野で豊富な実績を持つ専門コンサルタントをアドバイザーとして起用し、事業スキームを緻密に設計したことが挙げられます。また、Park-PFI制度を活用して民間事業者が設置する収益施設からの収益の一部を公園の整備費に充当する仕組みを構築し、事業の採算性と公園全体の魅力向上を両立させた点が特筆されます。

世田谷区「官民連携提案窓口『せたがやCo-Lab』による多様な連携」

  • 世田谷区は、民間企業等からの多種多様な公民連携の提案を受け付けるための統一窓口として「せたがやCo-Lab(コラボ)」を設置し、常時提案を受け付ける体制を構築しています。
  • 提案の類型は、民間が自由に発案する「民間提案型」と、区が抱える行政課題を提示して解決策を募集する「テーマ設定型」に分類されています。採択された提案は、協定に基づき最長5年間の事業として実施が可能であり、これにより、子育て支援、健康増進、環境問題など、様々な分野で行政課題の解決に向けたユニークな公民連携が生まれています。
  • 成功要因: 提案の入口を一つに絞ることで民間事業者の利便性を高め、「対話による価値の創造」を基本方針として明確に掲げた点にあります。さらに、手続きのプロセスや評価の考え方をまとめた「世田谷区官民連携指針」を策定・公開し、手続きの透明性と公平性を確保したことで、民間事業者が安心して革新的な提案を行える環境を整備したことが大きな成功要因です。

品川区「PFI推進機構との連携協定による事業促進」

  • 品川区は、PFI法に基づき設立された官民ファンドである株式会社PFI推進機構と「PPP/PFIの推進に向けた連携に関する協定書」を締結しました。
  • この協定に基づき、区は、公共施設の再編や公有地の活用といったPPP/PFI事業の検討・運用、案件形成の初期段階で行う導入可能性調査、さらには民間事業者へのサウンディング調査などにおいて、機構が持つ金融・財務、法務等の高度な専門知識や、全国の事業事例に関する豊富なネットワークの支援を受けることが可能になりました。
  • 成功要因: 多くの自治体が抱える「PPP/PFIに関する専門ノウハウの不足」という共通課題に対し、自前主義に固執せず、国の政策に基づいて設立された国内随一の専門機関と直接連携するという、的確かつ効果的な解決策を選択した点にあります。これにより、案件形成の初期段階から事業の質を高め、将来的な失敗リスクを低減し、事業の成功確率を大きく向上させています。

全国自治体の先進事例

新潟県三条市「包括的民間委託によるインフラ維持管理」

  • 人口減少とそれに伴う市職員(特に技術職)の減少により、増え続けるインフラの維持管理業務への対応が困難になっていた三条市は、市道や橋梁などの点検・補修業務を、個別の業務ごとに発注するのではなく、特定のエリアごとに「包括的」にまとめて地元の民間事業者へ長期間委託する手法を導入しました。
  • この取り組みにより、市は限られた人員で効率的に行政コストを管理しつつ、市民生活に必要なインフラの安全性を維持・向上させることに成功しました。また、地元の中小建設業者にとっては、安定的かつ長期的な受注が確保されることで経営基盤が強化され、将来にわたって地域のインフラ維持を担う人材の育成にも貢献しています。
  • 成功要因: 個別の業務ごとではなく、エリア単位で「包括的」に長期間委託した点です。これにより、受注した民間事業者は、短期的な視点での作業ではなく、長期的な視点に立って最も効率的・効果的な維持管理計画を自ら立案・実行することが可能となり、民間の創意工夫を最大限に発揮しやすくなりました。

静岡県浜松市「上下水道事業におけるコンセッション方式の導入」

  • 浜松市は、全国の自治体に先駆けて、下水道事業(西遠処理区)にコンセッション方式を導入し、その後、上水道・工業用水道事業にも同方式を拡大適用しました。これは国内初の上下一体でのコンセッション事業です。
  • 施設の所有権は市が保持したまま、20年間の運営権を民間事業者に設定。選定された民間事業者は、施設の運営・維持管理から改築までを一貫して担い、ICTやAIなどの最新技術を積極的に導入することで、運営の抜本的な効率化と、事業期間全体で約337億円ものコスト削減を実現する計画です。
  • 成功要因: 官民の役割とリスクの分担を契約で明確にした上で、長期契約と性能発注(仕様を細かく定めず、達成すべき性能水準を示す方式)により、民間事業者の持つ最先端の技術力や経営ノウハウ、創意工夫を最大限に引き出す事業構造を構築したことです。また、上水道と下水道を一体的に捉える「ウォーターPPP」として事業規模を拡大させ、有力な民間事業者の参入意欲を高めた点も重要な成功要因です。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区におけるインフラ整備は、施設の大量老朽化と、それを支える財政・人的資源の構造的な制約という二重の課題に直面しており、PPP/PFI等の民間活力の導入は、もはや特別な選択肢ではなく、検討すべき標準的な手法となりつつあります。成功の鍵は、単に事業を民間に委ねてコストを削減することにあるのではなく、行政が「事業の目利き」としての能力を高め、長期的な視点から主導権を持って官民の対等なパートナーシップを管理・運営していくことにあります。そのためには、専門部署の設置や人材育成といった「推進体制の強化」を最優先の基盤として構築し、その上で案件形成プロセスの円滑化、そして地域企業を積極的に巻き込んだ官民対話の促進を戦略的に進めることが不可欠です。これらの取り組みを通じて、財政負担の軽減と質の高い住民サービスの提供を両立させ、将来世代にわたって持続可能な都市経営を実現することが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました