08 SDGs・環境

PCB(ポリ塩化ビフェニル)対策

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(自治体におけるPCB対策を取り巻く環境)

  • 自治体がPCB対策を行う意義は「住民の健康と生活環境の保護」と「将来世代への負の遺産の継承阻止」にあります。
  • ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、その高い毒性と環境残留性から、過去の産業活動が残した「負の遺産」とされています。人工的に作られた油状の物質で、かつては燃えにくく電気絶縁性に優れるといった特性から、変圧器(トランス)やコンデンサ、蛍光灯の安定器などに広く使用されていました。
  • しかし、1968年のカネミ油症事件を機にその深刻な有害性が社会問題となり、1972年以降、製造や新たな使用は禁止されました。PCBは脂肪に溶けやすく、一度体内に入ると排出されにくいため、発がん性や皮膚障害、内臓障害など長期にわたる健康被害を引き起こすリスクがあります。
  • こうした背景から、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が制定され、国を挙げて処理が進められてきました。高濃度PCB廃棄物の処理は終盤を迎えましたが、現在は令和9年(2027年)3月31日に迫る低濃度PCB廃棄物の処理期限が最大の課題となっています。
  • 特に、中小事業者や古いビルが密集する東京都特別区においては、未だ把握されていないPCB廃棄物が多数存在すると推定され、期限内の処理完遂に向けて、行政による強力かつきめ細やかな支援が不可欠な状況です。

意義

住民にとっての意義

健康被害の未然防止
  • PCBは脂肪組織に蓄積しやすく、発がん性に加え、皮膚症状、内臓障害、ホルモン異常など、多様な健康被害を引き起こすことが知られています。特に胎児や乳幼児への影響も懸念されています。
    • (出典)(https://www.oono-as.jp/articles/archives/41) 3
  • 行政がPCB廃棄物の適正処理を推進することは、老朽化した機器からの漏洩や火災時の飛散によるPCBへの曝露リスクを根本から断ち切り、住民の現在および将来にわたる健康を保護することに直結します。
安全な生活環境の確保
  • PCBは環境中で極めて分解されにくく、一度漏洩すると土壌や河川、地下水を長期間にわたり汚染します。汚染された環境は、生態系を通じて再び人の健康を脅かす可能性があります。
  • 特に、人口が密集し、建物の解体や再開発が頻繁に行われる特別区において、工事に伴うPCB汚染リスクを管理し、安全で安心な生活環境を維持することは極めて重要です。

地域社会にとっての意義

環境汚染リスクの低減と資産価値の維持
  • PCBの漏洩事故が発生した場合、周辺地域の土壌や地下水が汚染され、その浄化には莫大な費用と長い時間が必要となります。
  • 未処理のPCB廃棄物が存在する建物は、不動産取引において「隠れた瑕疵」と見なされ、売買が困難になるなど、地域全体の資産価値を損なう要因となり得ます。行政による適正処理の推進は、こうしたリスクを低減し、地域の持続的な発展と不動産価値の維持に貢献します。
企業のコンプライアンス遵守と円滑な事業活動の支援
  • PCB廃棄物の期限内処理は、PCB特措法で定められた事業者の法的義務です。しかし、特に中小企業にとっては、情報不足や高額な処理費用が大きな経営上の障壁となっています。
    • (出典)(https://www.env.go.jp/council/content/03recycle06/000296933.pdf) 5
  • 自治体が相談窓口の設置や補助金制度の周知・活用支援を行うことで、事業者のコンプライアンス違反(意図せざる違反を含む)を防ぎ、事業承継、設備更新、建物の解体・売却といった円滑な事業活動を後押しする効果があります。

行政にとっての意義

法的責務の履行と行政リスクの回避
  • PCB特措法は、国だけでなく地方公共団体にも、区域内におけるPCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進するための計画策定や必要な措置を講じる責務を課しています。
  • 処理の遅延や不適正処理(不法投棄など)を放置することは、行政の監督責任を問われるだけでなく、住民からの信頼を損なうリスクにつながります。
将来的な行政コストの削減
  • 処理期限を過ぎて不法投棄されたり、漏洩事故が発生したりした場合、原因者が不明または支払い能力がない際には、最終的に行政が代執行として高額な原状回復費用を負担せざるを得ない事態に陥る可能性があります。
  • 計画的な処理支援は、こうした将来の予期せぬ巨額な財政支出を未然に防ぐ、最も効果的なリスク管理であり、長期的な視点で見れば行政コストを大幅に削減することに繋がります。

(参考)歴史・経過

PCB対策に関する現状データ

全国のPCB廃棄物保管・処分状況の推移
  • 環境省が令和6年3月に公表した令和5年度末時点のデータによると、全国のPCB廃棄物の処理は着実に進展しています。
    • (出典)(https://www.env.go.jp/press/press_00006.html) 13
  • 高濃度PCB廃棄物については、JESCOの各事業エリアで計画的処理完了期限を順次迎え、処理が大きく進みました。例えば、令和3年3月末時点で、高濃度PCB廃棄物全体の処理進捗率は全国平均で約77%に達しています。
  • しかし、掘り起こし調査等によって、当初の処理見込み量を上回る安定器や汚染物等が新たに発見される傾向が続いており、特に安定器・汚染物等については当初見込みより8割程度も処理対象量が増加しています。これは、対策の最終段階における課題の根深さを示しています。
  • 最大の課題である低濃度PCB廃棄物については、令和9年3月末の処理期限が迫る中、その全体像の把握が依然として困難な状況です。令和元年時点の国の推計では、使用中および保管中の微量PCB汚染電気機器が、それぞれ約33万台ずつ、合計で約66万台存在するとされており、膨大な数の未処理機器が残存していることが示唆されています。
    • (出典)(https://www.env.go.jp/content/900518158.pdf) 8
東京都特別区におけるPCB廃棄物保管・処分状況
  • 東京都が令和5年3月に改定した「東京都PCB廃棄物処理計画」によると、都内、特に特別区における状況は、全国の傾向と同様の課題を抱えています。
  • 高濃度PCB廃棄物
    • 変圧器・コンデンサ類:JESCO東京事業所の計画的処理完了期限(令和5年3月末)を迎え、届出分の処理は概ね完了しました。しかし、期限後に建物の解体時などに発見される事例も散見され、予断を許さない状況です。
    • 安定器・汚染物等:JESCO北海道事業所での処理対象となり、計画的処理完了期限(令和6年3月末)を迎えましたが、都内には古いビルが膨大に存在するため、未把握の安定器の掘り起こしが依然として重要な課題です。
  • 低濃度PCB廃棄物
    • 都内には中小企業が密集するエリアや、再開発が進むエリアが多く、未把握の低濃度PCB廃棄物(特に昭和52年以前に建築された事業用ビルの照明用安定器や、古い工場の変圧器など)が多数存在すると強く推定されます。
      • (出典)(https://www.tokyokankyo.jp/wp-content/uploads/2021/05/pcbtyousa_tebiki.pdf) 14
    • 令和9年3月末の処理期限まで残り時間が少ない中、これらの網羅的な掘り起こしと処理の加速化が、特別区の行政にとって最大の責務となっています。
  • データで見る変化の示唆
    • 都内の高濃度PCB廃棄物の保管量は、国の強力な施策とJESCOによる集中的な処理体制により、計画期間内(例:平成28年度から令和4年度)で大幅に減少しました。これは、対象事業者が特定しやすく、処理ルートが明確であったためです。
    • 一方で、同期間に届出された低濃度PCB廃棄物のうち、特に安定器の保管個数は横ばい、もしくは微増傾向にあります。これは、掘り起こしによって新たに発見される量が、処理される量を上回っているか、ほぼ同等であることを示唆しており、処理が追いついていない実態を浮き彫りにしています。
    • このデータの推移は、PCB対策のフェーズが、国主導の「大規模・集中的な処理」から、自治体が主体となる「小規模・分散的な廃棄物の掘り起こしと処理促進」へと完全に移行したことを明確に示しています。今後の行政施策は、この「残された課題」にいかに効果的にアプローチするかが問われます。

課題

住民・事業者(保管者)の課題

処理費用の経済的負担
  • PCB廃棄物の処理には、分析、収集運搬、処分といった各段階で高額な費用が発生し、特に資金力に乏しい中小零細事業者や個人事業主、マンション管理組合にとって極めて大きな経済的負担となっています。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 費用負担を回避するための不法投棄や不適正処理が誘発され、深刻な環境汚染を引き起こします。
PCB含有機器の特定・判別の困難さ
  • 自社で所有・使用している古い電気機器にPCBが含有されているか否かを、専門知識を持たない事業者が自力で正確に判断することは極めて困難です。この「判別の壁」が、問題を先送りにする原因となっています。
  • 客観的根拠:
    • 特に昭和32年(1957年)から昭和47年(1972年)に製造された事業用建物の蛍光灯・水銀灯の安定器は、PCB含有の可能性が高いとされています。しかし、これらは天井裏や壁内の盤の中など、高所や閉鎖された場所に設置されていることが多く、銘板の確認作業自体が危険を伴い、困難です。
    • 変圧器やコンデンサの場合、機器の銘板情報だけではPCBの有無を確定できず、絶縁油を採取して専門機関で濃度分析を行う必要があります。しかし、その手続きの煩雑さや分析費用が、事業者にとって高いハードルとなります。
    • さらに、「PCB不使用」と表示されている機器でも、製造後のメンテナンス(油の補充や交換)の過程でPCB油が微量に混入した「意図せざる汚染」の可能性も否定できません。最終的な白黒の判断には、結局のところ専門家による分析が不可欠となります。
      • (出典)(https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/gomi/haishori/haisyutu/pcbhokansyorihouhou.html) 19
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • PCB含有の認識がないまま危険な機器が使用され続け、経年劣化による突然の漏洩リスクが増大します。
制度・認知度不足と手続きの複雑さ
  • PCB特措法が定める届出義務や処理期限、厳しい罰則、そしてそれを支援するための補助金制度など、関連する制度が多岐にわたり複雑です。この「制度の壁」が、事業者の行動を阻害しています。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 本来活用できるはずの支援制度が使われずに処理が停滞し、意図しない法令違反者が増加します。

地域社会の課題

未処理機器の漏洩・火災による環境汚染リスク
  • 処理されずに長期間使用・保管されているPCB含有機器は、いわば「時限爆弾」のような存在です。経年劣化により、機器本体の腐食やパッキンの破損が進み、ある日突然PCBが漏洩するリスクが年々高まっています。
  • 客観的根拠:
    • 実際に、JESCOの処理施設に搬入される前の保管段階で、コンデンサの缶底からPCBが漏洩するトラブルが報告されています。
    • PCB自体は難燃性ですが、電気機器の内部ショートなどによる火災が発生した場合、不完全燃焼によってPCBからさらに毒性の強いダイオキシン類が生成される危険性があります。
      • (出典)(https://www.oono-as.jp/articles/archives/41) 3
    • 一度環境中に放出されたPCBは、化学的に極めて安定しているため自然に分解されることはほとんどなく、土壌や地下水を長期間にわたって汚染し続けます。
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 漏洩や火災事故がひとたび発生すれば、周辺住民への健康被害、広範囲の環境汚染、風評被害など、計り知れない社会的影響が生じます。
不法投棄・不適正処理のリスク
  • 高額な処理費用や複雑な手続きを回避したいという動機から、PCB廃棄物が不法に投棄されたり、許可を持たない安価な業者に処理が委託されたりするリスクが常に存在します。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 正規の処理ルートから外れたPCB廃棄物が環境中に拡散し、汚染源の特定が極めて困難な複合汚染を引き起こします。
建物解体・改修時の潜在的リスク
  • 都市の更新が絶えず行われる特別区において、古い事業用ビルの解体や改修工事は、これまで見過ごされてきたPCB含有安定器等が発見される最大の機会であると同時に、汚染を拡散させかねない最大の潜在的リスク発生源でもあります。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 解体工事をきっかけとしたPCB汚染が多発し、再開発事業の著しい遅延や、想定外の巨額な浄化コストの発生を招きます。

行政(特別区)の課題

未把握事業者の「掘り起こし調査」の限界
  • アンケート調査票の郵送や、固定資産税情報・登記情報に基づくリストアップといった従来型の掘り起こし手法では、全てのPCB廃棄物を網羅的に把握することに限界が生じています。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 処理期限を過ぎてから未把握のPCB廃棄物が次々と発覚し、行政が対応不能な事態に陥ります。
中小零細事業者への指導・支援の難しさ
  • PCB対策の重要性を頭では理解していても、日々の経営に追われ、具体的な行動に移す余裕のない中小零細事業者に対し、実効性のある指導・支援を行うことは非常に困難です。
  • 客観的根拠:
    • 中小事業者の多くは、PCBに関する専門知識を持つ人材を雇用しておらず、経営者自らが情報を収集し、手続きを行う時間的余裕もありません。
    • 行政からの指導通知やパンフレットが届いても、内容を十分に理解できなかったり、「自分には関係ないだろう」と判断して対応を後回しにしてしまったりする傾向があります。
    • 画一的な補助金制度や相談窓口といった支援策だけでは、個々の事業者が抱える多様な事情(資金繰りの問題、設備の稼働を止められない、建物の権利関係が複雑など)に寄り添うことができず、実効性が上がりません。
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 行政の支援策が十分に活用されないまま処理が進まず、期限間際に相談が殺到して行政窓口や処理施設がパンク状態になります。
期限後(令和9年4月以降)に発見される廃棄物への対応
  • 低濃度PCB廃棄物の処理期限である令和9年3月末を過ぎてから発見された廃棄物について、法的な処理ルートが確保されるのか、罰則はどのように適用されるのかなど、具体的な対応方針が大きな行政課題となります。
  • 客観的根拠:
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 処理期限後に発見されたPCB廃棄物が行き場を失い、不法投棄されたり、「塩漬け」の状態で違法に保管され続けたりするリスクが激増します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの事業者への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制や仕組みを最大限活用できる施策は、新たな大規模な体制構築が必要な施策よりも優先度が高くなります。
    • 費用対効果
      • 投入する行政資源(予算・人員・時間等)に対して、得られる成果(処理促進件数、環境リスクの低減効果)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な行政コスト削減効果も考慮します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定の事業者や地域だけでなく、支援を必要とする幅広い層に便益が及ぶ施策を優先します。一過性の効果で終わらず、長期的・継続的に効果が持続する仕組みを高く評価します。
    • 客観的根拠の有無
      • 政府の調査報告書や他の自治体での先進事例など、効果を裏付けるエビデンスが存在する施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • PCB対策の最終局面を迎えるにあたり、支援策は「①掘り起こしの網羅性向上」「②中小事業者への伴走支援」「③期限遵守の徹底」の3つの柱で総合的に構成する必要があります。これらは個別に存在するのではなく、相互に補完し合う関係にあり、一体的に推進することが極めて重要です。
  • 最優先施策(Priority 1):支援策② 中小事業者向けワンストップ支援体制の強化
    • 処理が進まない最大のボトルネックは、中小事業者が直面する「費用・知識・手続き」という複合的な障壁です。この施策は、これらの障壁を一つの窓口で同時に打破することを目的としており、最も波及効果と費用対効果が高いと考えられます。また、施策①の掘り起こし調査で見つかった事業者を、確実に処理完了まで導くための不可欠な「受け皿」としても機能するため、最優先で取り組むべきです。
  • 優先施策(Priority 2):支援策① 掘り起こし調査の徹底と網羅的把握体制の構築
    • そもそも廃棄物の存在を把握できなければ、いかなる支援策も意味を成しません。特に、環境汚染リスクが最も高い「建物解体時」という機会を捉えた水際対策は、リスク管理の観点から必須です。施策②のワンストップ支援と連携させることで、発見から処理までの流れをシームレスにし、効果を最大化できます。
  • 標準施策(Priority 3):支援策③ 期限内処理の完遂に向けた普及啓発と指導の強化
    • 法的期限の遵守を社会全体で徹底させるための基本的な施策です。他の2つの施策を補完し、支援の手が届きにくい事業者や、意図的に処理を怠る事業者に対する最後の砦として機能します。

各支援策の詳細

支援策①:掘り起こし調査の徹底と網羅的把握体制の構築

目的
  • 従来型の郵送調査や窓口での待機型アプローチでは把握しきれなかった未届のPCB廃棄物を網羅的に発見し、行政の管理下に置くことを目的とします。特に、中小事業者が所有する古いビルや工場に隠れた安定器等の発見に注力します。
    • 客観的根拠:
      • 過去の調査で「保有なし」と回答した事業所や、自治体の調査が及んでいなかった場所からPCB廃棄物が発見される事例が後を絶たないことから、より積極的で網羅的な掘り起こし調査が必要不可欠です。
主な取組①:建物解体・改修時における確認連携の制度化
  • 建築指導部門と環境部門が緊密に連携し、一定規模以上(または昭和52年3月以前築)の建物の解体・改修に関する届出(建設リサイクル法に基づく届出等)の際に、PCB含有機器の有無に関する調査報告書の添付を義務付ける、あるいはチェックリストの提出を求める制度を条例等で構築します。
  • 地域の解体工事業協会等を通じて、工事着手前のPCB調査が建築物所有者の法的責務であることを徹底的に周知します。工事中に疑わしい機器を発見した場合は、作業を中断し、直ちに区の担当窓口へ連絡するよう指導する協力体制を築きます。
    • 客観的根拠:
      • 解体工事現場は、未把握のPCB廃棄物が発見される最後の機会であり、同時に汚染拡大の最大のリスクポイントです。建設業者からの問い合わせが発見の重要なきっかけとなっている事例が多数報告されており、この連携は極めて有効です。
主な取組②:不動産・解体・電気工事業界との連携強化
  • 地域の宅地建物取引業協会、解体工事業協会、電気工事業協同組合といった、建物のライフサイクルに深く関わる業界団体と「PCB廃棄物適正処理推進に関する連携協定」を締結します。
  • 協定に基づき、団体が主催する研修会等で区の職員が出前講座を行い、加盟企業に対し、PCB制度(調査義務、処理責任の所在、支援制度等)に関する最新情報を提供します。
  • 不動産売買時の重要事項説明、建物管理契約時、電気設備の定期点検時などに、専門家の視点からPCB含有の疑いがある機器の存在を所有者に注意喚起してもらう協力体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 北九州市では、PCB処理施設が立地する自治体として、様々な関係事業者との連携を密にし、処理を推進してきた実績があります。専門知識を持つ業界団体との連携は、行政だけでは目の届かない領域へのアプローチを可能にし、効果的な掘り起こしにつながります。
主な取組③:未回答・ハイリスク事業者への戦略的訪問調査
  • 過去の掘り起こし調査で未回答の事業者や、昭和52年以前に建築された事業用建物を所有している登記情報がありながらPCB廃棄物の保管届出がない事業者など、ハイリスクな対象をリストアップします。
  • このリストに基づき、PCBに関する専門知識を持つ職員または専門家を委託した調査員が戸別訪問を実施し、対面でのヒアリングと現地確認を行います。
  • 訪問時には、単に調査を行うだけでなく、PCBのリスクや法的義務を丁寧に説明するとともに、後述する「ワンストップ支援窓口」のパンフレットを渡し、その場で相談予約を受け付けるなど、具体的な行動に繋げます。
    • 客観的根拠:
      • 千葉県船橋市では、建物の登記情報等を活用した網羅的な掘り起こし調査を実施し、未回答事業者への訪問も行うことで成果を上げています。郵送や電話といった間接的なアプローチよりも、直接対話による働きかけの方が高い実効性が期待できます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 令和9年3月末時点での低濃度PCB廃棄物の処理完了率 98%以上
      • データ取得方法: PCB特措法に基づき区に提出される「ポリ塩化ビフェニル廃棄物等の保管及び処分状況等届出書」の集計データ
  • KSI(成功要因指標)
    • 掘り起こし調査等により新たに把握したPCB廃棄物保管事業場数(年間)
      • データ取得方法: 新規の届出書および訪問調査結果の集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 建物解体届出時におけるPCB調査報告・チェックリスト提出率 100%
      • データ取得方法: 建築指導部門と環境部門の受付記録の突合・照会
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 業界団体向け説明会の開催回数および延べ参加者数(年間)
      • データ取得方法: 事業実施記録(議事録、参加者名簿等)
    • ハイリスク事業者への訪問調査件数および面談実施率(年間)
      • データ取得方法: 委託事業者からの業務完了報告書および職員の活動記録

支援策②:中小事業者向けワンストップ支援体制の強化

目的
  • PCB処理を進める上で最大の障壁となっている中小事業者の「費用、知識、手続き」という3つの負担を、一つの窓口で一体的に軽減する「伴走型支援」を提供します。これにより、事業者が具体的な処理行動を起こすためのハードルを劇的に下げ、期限内処理を強力に促進することを目的とします。
主な取組①:国・都の補助金申請に関するワンストップ相談・申請支援
  • 区の環境担当課(または区の外郭団体等)に、PCB処理に関する専門相談員を配置した「PCB処理支援ワンストップ窓口」を設置します。
  • この窓口では、国の助成金(窓口:産業廃棄物処理事業振興財団)と都の助成金(窓口:東京都環境公社)の両制度を熟知した相談員が、事業者の状況(機器の種類、数量、企業の規模等)に応じて、最も有利な制度の選択や、両制度の併用に関する具体的なアドバイスを行います。
  • 申請に必要な書類(申請書、見積書、分析結果証明書等)の作成を具体的に支援し、事業者の事務負担を大幅に軽減します。必要に応じて、申請代行に近いレベルでのサポートを目指します。
    • 客観的根拠:
      • 国と都でそれぞれ助成制度が存在し、令和7年度からは国の制度が拡充され、都の制度もそれに応じて改定されるなど、連携が強化されています。しかし、制度が複数にまたがるため、事業者にとっては非常に分かりにくい。これを一つの窓口で整理し、最適な活用法を提示することが極めて重要です。
主な取組②:専門家(電気主任技術者等)による無料判別・撤去相談
  • 地域の電気工事業協同組合等と連携し、PCB含有の可能性がある機器の現地確認や簡易的な判別を行う専門家を、区の費用負担で無料派遣する制度を創設します。
  • 派遣された専門家は、安全な銘板確認の方法、感電リスクのない調査方法、分析のための絶縁油の安全な採取方法について具体的に助言します。また、機器の撤去工事に関する概算費用の情報提供や、信頼できる処理業者の紹介なども行います。
  • これにより、事業者が自ら危険な作業を行うことなく、PCB含有の有無を正確に把握し、処理に向けた具体的な計画を立てられるよう支援します。
    • 客観的根拠:
      • PCB含有機器の判別は専門知識を要し、特に稼働中の電気設備では感電等の人身事故リスクも伴うため、専門家の協力が不可欠です。無料派遣は、費用を懸念して調査を躊躇している事業者の背中を押す強力な一手となります。
主な取組③:補助金制度の「翻訳」広報と成功事例の横展開
  • 区報、ウェブサイト、SNS、商工会議所会報など、あらゆる媒体を活用し、複雑な国・都の補助金制度を「あなたの会社のこの機器なら、いつまでに、何をすれば、最大いくら補助されます」といった、事業者目線で分かりやすい言葉に「翻訳」して周知します。
  • 実際に区内のA社が補助金を活用して処理を完了したケースなどを、個人情報を保護した上で具体的に紹介(「費用XX万円のうちYY万円が補助され、実質負担はZZ万円でした」等)し、他の事業者が「うちもできるかもしれない」と感じられるような、具体的な成功事例を横展開します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都環境公社の助成金制度では、申請は処理前に必要であり、詳細な手引きが用意されています。しかし、多忙な中小事業者がこれを読み解くのは困難です。区は、この公式情報をより噛み砕いて事業者に届ける「翻訳者」「水先案内人」としての役割を担うべきです。
        • (出典)(https://www.tokyokankyo.jp/wp-content/uploads/2025/06/d8a73dd80ab37ad475a614c3d59f19c1.pdf) 18
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内中小事業者による低濃度PCB廃棄物処理件数の対前年度比 50%増
      • データ取得方法: 区への届出書およびワンストップ窓口での相談・処理完了実績の集計
  • KSI(成功要因指標)
    • 国・都の助成金制度の区内利用件数・利用金額
      • データ取得方法: 東京都環境公社、産業廃棄物処理事業振興財団からの定期的な情報提供(自治体としての情報共有を要請)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ワンストップ窓口の相談件数および相談後の処理着手率(相談から3ヶ月以内)
      • データ取得方法: 窓口での相談管理台帳と、その後の届出状況の追跡調査による効果測定
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 専門家派遣の実施件数(年間)
      • データ取得方法: 事業実施記録簿
    • 補助金制度に関する分かりやすい広報(事例紹介等)の実施回数(各種媒体ごと)
      • データ取得方法: 広報担当部署の実施記録

支援策③:期限内処理の完遂に向けた普及啓発と指導の強化

目的
  • 令和9年3月末の処理期限が、延長のない絶対的なものであることを全ての潜在的保管事業者に周知徹底し、意図的な処理の先延ばしを防ぎます。同時に、悪質なケースには法に基づく厳格な行政指導を行い、社会全体で期限内処理を完遂させる機運を醸成することを目的とします。
主な取組①:処理期限と罰則規定に関する集中的な広報キャンペーン
  • 処理期限の「カウントダウン」キャンペーンを、令和7年度から集中的に実施します。「PCB処理、期限まであとX日」といった具体的なメッセージを、区役所庁舎のデジタルサイネージ、区内を走るバスの車内広告、地域のケーブルテレビ、SNS広告等で繰り返し発信します。
  • 広報物では、ワンストップ窓口や補助金といった「アメ」の情報を前面に出しつつ、期限を超過した場合の罰則(PCB特措法および廃棄物処理法に基づく処分命令、罰金、懲役)という「ムチ」の情報も明確に記載し、処理しないことの法的・経営的リスクを強く訴えかけます。
    • 客観的根拠:
      • PCB特措法には、譲渡制限違反(3年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または併科)、届出義務違反(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)、処分命令違反など、非常に厳しい罰則が定められています。この法的リスクの周知は、行動をためらう事業者の背中を押す強いインセンティブとなり得ます。
主な取組②:悪質な未処理事業者に対する指導・命令の厳格な適用
  • 掘り起こし調査や市民からの通報によりPCB廃棄物の保管が判明したにもかかわらず、ワンストップ窓口からの再三の連絡に応じず、正当な理由なく処理に向けた行動を一切起こさない事業者に対し、廃棄物処理法およびPCB特措法に基づき、文書による指導・勧告を段階的に行います。
  • それでもなお改善が見られない悪質なケースについては、最終手段として、期限内の処理を法的に命じる「措置命令」や「改善命令」を発出することを躊躇しません。命令違反に対しては告発も視野に入れた厳格な対応をとります。
    • 客観的根拠:
      • PCB特措法は、都道府県知事(特別区の長も含む)に対し、不適正な処理や保管を行う事業者に対して、期限を定めて必要な措置を講ずるよう命じる権限を与えています。この権限の存在を明確にし、必要に応じて厳格に運用することが、法の遵守を社会全体で担保するために不可欠です。
主な取組③:期限後発見時の対応方針の事前周知と相談体制の構築
  • 国の動向を注視しつつ、「万が一、処理期限を過ぎてPCB廃棄物を発見した場合でも、所有者には法律に基づく報告義務と適正な保管・処理責任が存続すること」「悪意なく発見し、速やかに区へ報告・相談した場合には、罰則適用においてその経緯が十分に考慮される可能性があること」を行政としての公式見解として、ウェブサイト等で事前に周知します。
  • これにより、期限後に発見した事業者が、発覚を恐れて隠蔽や不法投棄に走るという最悪の事態を防ぎ、正直な申告を促すセーフティネットを構築します。期限後も相談窓口は継続し、発見者の支援を行います。
    • 客観的根拠:
      • 環境省の検討委員会でも、期限後の管理・処理体制のあり方が重要な論点として議論されています。自治体として、国の動向を待つだけでなく、現行法下での対応方針をあらかじめ明確に示し、事業者の不安を払拭し、不法行為を抑止することが、最終的な環境リスクの低減に繋がります。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 期限を超過して違法に保管される低濃度PCB廃棄物量 ゼロ(目標値)
      • データ取得方法: 令和9年4月1日以降の届出・発覚状況のモニタリング結果
  • KSI(成功要因指標)
    • PCB関連制度(処理期限、罰則)に関する区内事業者の認知度 95%以上
      • データ取得方法: 商工会議所等と連携した事業者向けアンケート調査(定期実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 指導・勧告を行った事業者における処理着手率 90%以上
      • データ取得方法: 指導対象事業者の届出状況に関する追跡調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 処理期限・罰則に関する広報キャンペーンの実施回数および推定リーチ数(年間)
      • データ取得方法: 広報担当部署の実施記録、広告代理店等の掲載レポート
    • 指導・勧告・命令の発出件数(年間)
      • データ取得方法: 行政処分記録の台帳管理

先進事例

東京都特別区の先進事例

大田区「PCB汚染土壌の浄化事業」

  • 2000年に区内で発見された高濃度PCB汚染土壌に対し、区が事業主体となり、国・都と連携して浄化事業を実施した国内初の画期的な事例です。
  • この事業では、加熱や加圧を行わず環境への影響が少ない「溶剤抽出法」という先進技術を採用し、人口密集地である市街地での土壌浄化を安全に実現しました。
  • 成功要因
    • 問題発覚後の迅速な対応と、国や東京都といった上位機関との円滑な連携体制の構築。
    • 環境負荷と周辺住民への影響を最小限に抑える先進技術を積極的に採用した決断力。
    • 前例のない課題に対し、自治体が自ら浄化事業の主体となるという強いリーダーシップと責任感。
  • 客観的根拠:

公益財団法人東京都環境公社「中小企業向け助成金制度の戦略的運用」

  • 東京都と長年にわたり連携し、中小事業者等が直面する経済的負担を直接的に軽減するため、微量PCB廃棄物の分析費用および処理費用の一部を助成する事業を継続的に実施しています。
  • 詳細な「手引き」の作成や、専門の相談電話窓口の設置により、複雑な制度を分かりやすく案内し、多くの事業者の処理を後押ししてきました。令和7年度からは国の新制度とも連携し、支援内容を改定・強化しています。
  • 成功要因
    • 中小事業者が抱える最大の課題である「費用」に直接アプローチする実効性の高い支援策。
    • 申請から実績報告までの手続きを様式や記入例と共に明確化し、利用者の利便性を最大限に確保している点。
    • 国の制度変更等に迅速に対応し、継続的に制度内容を改善していく柔軟な運用体制。
  • 客観的根拠:

江東区「JESCO東京事業所との連携と地域への透明性確保」

  • 区内にJESCO東京PCB廃棄物処理施設が立地していることから、施設の安全な操業と地域住民の安心・安全を確保するため、事業者であるJESCOや監督官庁である東京都と緊密に連携しています。
  • 施設の操業状況や、今後の施設の解体撤去計画といった地域住民の関心が高い情報について、区の審議会等の場を通じて積極的に情報を収集・公開し、地域への透明性を確保する役割を担っています。
  • 成功要因
    • 迷惑施設と見なされがちな処理施設の立地自治体として、逃げることなく課題に正面から向き合う責任ある姿勢。
    • 事業者(JESCO)、監督官庁(都)、地域住民という三者の間に立ち、円滑なコミュニケーションを促進する調整役としての機能。
    • 処理の完了後も続く「施設の解体撤去」という新たな課題に対し、早期から情報収集を行い、住民の不安解消に努める先見性。
  • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

北九州市「PCB処理先進地としての総合的な取組」

  • 全国に先駆けてJESCOの処理施設を受け入れ、約20年間にわたり、西日本一帯の高濃度PCB廃棄物の処理に貢献してきた、まさにPCB対策の先進地です。
  • 市独自の環境監視体制を構築して施設の安全性を厳しくチェックする一方、処理を委託する事業者から「PCB処理推進協力金」を募り、市の安全対策の財源に充てるなど、地域として主体的かつ多角的な関与を行ってきました。
  • 成功要因
    • 「負の遺産」の処理という国家的課題を自らの課題として引き受ける高い当事者意識と市民の理解。
    • 長期にわたる施設操業を通じて蓄積された、専門的なリスク管理のノウハウと行政職員の専門性。
    • 行政、事業者、住民間の信頼関係を構築するための、粘り強く継続的な対話と情報公開。
  • 客観的根拠:

船橋市「登記情報を活用した網羅的な掘り起こし調査」

  • PCB含有安定器の保有実態を網羅的に把握するため、昭和52年3月以前に建築された事業用建物を対象に、法務局が保有する建物の登記情報をもとに所有者を特定し、ダイレクトに調査票を送付する掘り起こし調査を実施しています。
  • 単に調査票を送付するだけでなく、未回答の事業者に対しては職員が訪問して協力を要請するなど、粘り強いアプローチで実態把握に努めています。
  • 成功要因
    • 公的データである登記情報を活用した、体系的で漏れの少ない調査対象者のリストアップ手法。
    • 郵送調査と訪問調査を組み合わせることで、調査の実効性を高める工夫。
    • 調査の過程で、感電リスクなど安全確保への配慮や専門家への相談を促すなど、丁寧な情報提供を行っている点。
  • 客観的根拠:
    • (出典)(https://www.city.funabashi.lg.jp/jigyou/haikibutsu/010/p048964.html) 29

参考資料[エビデンス検索用]

政府(省庁)関連資料
東京都・関連団体資料
自治体資料
その他

まとめ

 自治体におけるPCB対策は、高濃度PCB廃棄物の処理が最終段階に入り、現在は令和9年3月末に処理期限が迫る低濃度PCB廃棄物の処理完遂が最大の焦点となっています。特に、数多くの中小事業者が所有する未把握の安定器等の掘り起こしと、その高額な処理費用の負担軽減が、期限内処理を達成するための喫緊の課題です。東京都特別区においては、建物の解体・改修といった機会を確実に捉えた網羅的な掘り起こし調査の強化、国と都の助成制度の活用を軸としたワンストップでの伴走型支援、そして期限遵守に向けた指導と啓発を三位一体で強力に推進することが求められます。これらの対策は、住民の健康と安全な生活環境を守り、過去の負の遺産を次世代に決して引き継がないための、現代を生きる我々の世代に課せられた重要な責務です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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