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ICT活用による校務効率化

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(ICT活用による校務効率化を取り巻く環境)

  • 自治体がICT活用による校務効率化を行う意義は、「教員の業務負担を抜本的に軽減し、こどもと向き合う時間を創出することで教育の質を向上させること」と「持続可能で質の高い公教育システムを構築すること」にあります。
  • GIGAスクール構想により、全国の小中学校で児童生徒1人1台端末の配備が完了し、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)は新たな段階へと移行しました。しかし、その活用は授業における「学習系DX」に先行しており、教員の長時間労働の主因である出欠管理、成績処理、保護者対応といった「校務系DX」は著しく遅れています。
  • この「二層のDXの乖離」こそが、教員の疲弊を招き、教育の質の低下にも繋がりかねない喫緊の課題です。東京都特別区においては、この課題を解決し、教員が専門性を最大限に発揮できる環境を整備するため、ICTを活用した校務の抜本的な効率化が急務となっています。

意義

こどもにとっての意義

きめ細やかな指導の実現
教育の質の向上
迅速な支援体制の構築

保護者にとっての意義

連絡・手続きの利便性向上
迅速かつ確実な情報共有
学校との連携強化
  • こどもの学習状況や学校生活の様子に関する情報(学級通信など)がデジタルで手軽に受け取れるようになり、学校とのコミュニケーションが円滑化します。これにより、家庭と学校が一体となってこどもの成長を支える体制が強化されます。

学校・教師にとっての意義

長時間労働の是正
情報共有の円滑化とチーム力の向上
  • 教職員間でこどもの指導に関する情報や会議の議事録などをリアルタイムで共有できるため、一人の教員が課題を抱え込むことなく、学年や学校全体で組織的に対応する「チーム学校」の力が向上します。
場所を選ばない柔軟な働き方の実現
  • 校務支援システムがクラウド化されることで、職員室だけでなく、教室の空き時間や、自宅等でのテレワークでも安全に校務処理が可能になります。これにより、育児や介護と両立しやすいなど、働き方の選択肢が大きく広がります。

地域社会にとっての意義

連携強化によるこどもの安全確保
学校運営への協力促進

行政にとっての意義

教育施策のEBPM推進
  • 各学校の出欠状況、学力、体力、健康状態などのデータを(個人情報に配慮した上で)集約・分析することで、客観的根拠に基づいた効果的な教育政策の立案・評価・改善(EBPM)が可能になります。
災害・感染症への対応力強化
  • 校務支援システムがクラウド上に構築されることで、東日本大震災で課題となったような、学校サーバーの物理的な被災によるデータ損失のリスクを回避できます。災害時や感染症まん延時でも、避難所や自宅から児童生徒の安否確認や学習支援を継続できるレジリエンスの高い体制が構築されます。
持続可能な行財政運営

(参考)歴史・経過

2000年代
2010年代
2019年
2020年
2022年
2024年
2025年
  • 「教育データ利活用ロードマップ」の改訂版として「教育DXロードマップ」が公表されました。教職員の負担軽減を明確に打ち出し、「12のやめることリスト(デジタルに変えること)」を示すなど、校務DXを強力に推進する姿勢が示されています。

ICT活用による校務効率化に関する現状データ

教員の勤務実態

依然として深刻な長時間勤務
中学校で特に厳しい時間外勤務
  • 文部科学省が令和6年に公表した調査結果によると、令和5年度の1年間を通じて、時間外在校等時間が国の指針である「月45時間以下」であった教諭の割合は、小学校で75.3%であったのに対し、中学校では57.5%に留まっています。これは、中学校教員の約42%が恒常的に指針を超える時間外勤務を行っていることを示しており、特に中学校における負担の大きさが浮き彫りになっています。
東京都の状況と改善の兆し
見過ごせない「持ち帰り残業」の増加

ICT環境の整備状況

学習者用端末の整備は完了
統合型校務支援システムの導入率とクラウド化の遅れ
深刻な自治体間格差

教員のICTスキルと活用状況

自己評価としてのICT活用能力は向上
スキル習得のための「時間不足」が最大の壁
  • 端末の活用度を上げる上での課題として、「教員のICTスキル」が依然として最多(50%)ですが、そのスキルを習得する上での具体的な課題として、6割以上の教員が「スキルを習得するための時間確保が難しい」と回答しています。これは、多忙な業務に追われ、効率化のためのツールを学ぶ時間すらないという悪循環に陥っている実態を示しています。
校務における生成AI活用の黎明期

課題

こどもの課題

ICT活用格差による学びの機会不均等
  • 教員のICTスキルや学校の活用方針、さらには家庭の経済状況や保護者のデジタルリテラシーによって、こどもが日常的にICTに触れ、活用する機会に差が生じています。これにより、これからの社会で必須となる情報活用能力(情報を主体的に選択し、活用する力)の育成に格差が生まれる恐れがあります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 将来の進学や就職において必須となるデジタルスキルに格差が生じ、こどもの可能性が居住地域や家庭環境によって制限されてしまいます。
心身の健康への懸念
  • 1人1台端末の日常的な活用が進む一方で、その利用が長時間に及ぶことによる、視力低下や肩こり、睡眠不足といったこどもの心身の健康への影響が懸念されています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • こどもの健全な身体的成長が阻害され、長期的な健康問題や、それに伴う学習意欲の低下を招く恐れがあります。

保護者の課題

デジタルデバイドによる情報格差と孤立
  • 学校からの連絡手段がデジタルに移行する中で、ICT機器の操作に不慣れな保護者や、経済的な理由で安定したインターネット環境を持たない家庭が、重要な情報から取り残されてしまう「デジタルデバイド(情報格差)」が深刻な課題となっています。
個人情報・セキュリティへの不安

学校・教師の課題

校務DXの遅れによる業務負担の未解消
  • 授業でのICT活用(学習系DX)が進展する一方で、成績処理や保護者連絡といった校務(校務系DX)のデジタル化が著しく遅れており、教員の業務負担が期待通りに軽減されていません。これが「二層のDXの乖離」問題であり、教員の多忙化の根本原因となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教員のバーンアウト(燃え尽き症候群)や精神疾患による休職者が増加し、教職の魅力が低下することで、将来の担い手不足が一層深刻化します。
ICTスキルの格差と多忙による研修不足
  • 教員個々のICTスキルや活用意欲にばらつきがあり、学校内でも活用レベルが属人化してしまっています。さらに、日々の業務が多忙すぎるため、新たなツールや活用法を学ぶための研修時間を確保することが極めて困難な状況です。これが「人的ボトルネック」問題です。
    • 客観的根拠:
      • GIGAスクール構想後の調査で、教員がICTスキル習得における最大の課題として挙げたのは「スキルを習得するための時間確保が難しい」(6割超)でした。
      • (出典)(https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=614)
      • 教員のICT活用指導力に関する研修受講率が都道府県によって大きく異なることは、自治体による支援体制の格差が教員間のスキル格差に直結していることを示唆しています。
      • (出典)(https://reseed.resemom.jp/article/2024/09/02/9394.html)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 高価なICT機器やソフトウェアが一部の意欲的な教員しか使えない「宝の持ち腐れ」状態に陥り、学校全体の教育力向上が阻害されます。
セキュリティポリシーと利便性のトレードオフ
  • 個人情報保護を重視するあまり、過度に厳格なセキュリティポリシーが適用され、クラウドサービスの利用が制限されたり、ログイン手続きが煩雑になったりするなど、かえって教員の利便性が損なわれ、校務効率化の足かせとなっているケースが見られます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 「セキュリティ」を理由に校務のクラウド化やデジタル化が進まず、教員はいつまでも旧態依然とした非効率な業務から解放されません。

地域社会の課題

学校への過度な期待と役割の曖昧さ
  • 本来は家庭や地域社会が担うべき役割まで学校に求められる傾向が強まっており、教員の業務範囲が際限なく拡大しています。ICT化による保護者とのコミュニケーション円滑化は、一方で勤務時間外の対応要求など、新たな負担を生む可能性もはらんでいます。

行政の課題

自治体間のICT環境・支援体制の格差
  • 校務支援システムの導入状況やクラウド化の進捗、校内ネットワークの通信速度、ICT支援員の配置状況といった、校務DXの基盤となる環境が、特別区間や全国の自治体間で大きく異なっており、教育の機会均等を脅かす要因となっています。
標準化の遅れによるデータ利活用の停滞
  • 各自治体が導入している校務支援システムのデータ形式がばらばらであるため、自治体をまたぐ転校時の情報連携や、国が目指す全国的な教育データの分析・利活用が極めて困難な状況です。これが「データ・ポリシー実行ギャップ」問題です。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省は校務支援システムの標準化を強力に推進していますが、その標準仕様に準拠した次世代システムの導入率は全国で1割程度に留まっています。
      • (出典)(https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=671)
      • デジタル庁などが策定した「教育DXロードマップ」では、データ標準化をあらゆるデータ利活用の大前提として位置づけており、この遅れが国全体の教育DX推進の最大のボトルネックとなっています。
      • (出典)(https://edu.watch.impress.co.jp/docs/news/2022751.html)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 客観的根拠に基づく政策立案(EBPM)が推進できず、いつまでも勘と経験に頼った非効率な教育行政から脱却できません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 教員の日常的な業務負担の軽減に直結し、多くの学校・教員・こどもに短期間で効果が及ぶ施策を高く評価します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度や国の財政支援策、技術的成熟度を踏まえ、特別区が主体となって着実に実行可能な施策を優先します。
    • 費用対効果
      • 初期投資だけでなく、長期的な運用コストの削減や、教育の質の向上といった将来的な便益が大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定のモデル校だけでなく、全ての区立小中学校で恩恵を受けられ、将来にわたって安定的に運用可能な仕組みを高く評価します。
    • 客観的根拠の有無
      • 国の指針や白書、先進自治体の成功事例など、効果が客観的なエビデンスによって裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • ICTによる校務効率化は、「①基盤整備(インフラ)」「②業務改革(プロセス)」「③人材育成(ひと)」の3つの要素が相互に連携して初めて実現します。GIGAスクール構想で先行した学習者用端末の活用(学習系DX)に対し、校務系DXは大きく遅れており、この「二層のDXの乖離」を是正することが喫緊の課題です。
  • したがって、最優先で取り組むべきは、全ての効率化の土台となる**「支援策①:次世代型校務DX基盤の整備とセキュリティ強化」**です。安全で使いやすいクラウドベースの標準化されたシステムがなければ、データ利活用も業務改革も進みません。
  • 次に、整備した基盤を最大限に活用し、具体的な業務負担軽減に繋げる**「支援策②:データ利活用による校務プロセスの抜本的改革」**を強力に推進します。
  • そして、これらの技術的な改革を学校現場で確実に実行し、定着させるための**「支援策③:伴走型DX推進体制の構築とデジタルインクルージョン」**を並行して実施します。これら3つの支援策を一体的に進めることで、相乗効果を最大化し、持続可能な改革を実現します。

各支援策の詳細

支援策①:次世代型校務DX基盤の整備とセキュリティ強化

目的
  • 区内全ての小中学校に、国の標準仕様に準拠したクラウドベースの「統合型校務支援システム」を導入し、安全で効率的な校務遂行のデジタル基盤を確立します。
  • 「ゼロトラスト」の考え方に基づいた最新のセキュリティを構築することで、教員の利便性と情報資産の安全性を両立させ、場所を選ばずに働ける柔軟な環境を実現します。
主な取組①:統合型校務支援システムの共同調達・導入
主な取組②:ゼロトラスト・セキュリティへの移行
主な取組③:校内ネットワーク環境の増強と定期的アセスメント
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 時間外在校等時間が月45時間を超える教員の割合: 0%(3年以内)
      • データ取得方法: 勤怠管理システムによる客観的な在校等時間の全校・毎月の集計データ
  • KSI(成功要因指標)
    • 標準仕様準拠クラウド型統合型校務支援システムの全小中学校への導入完了率: 100%
      • データ取得方法: 教育委員会事務局による導入実績管理
    • 教員の校務におけるテレワーク実施率(月1回以上): 50%以上
      • データ取得方法: システムのアクセスログ分析及び教員への年1回のアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 教員の校務効率化に対する満足度(アンケートで「満足」「やや満足」と回答した割合): 80%以上
      • データ取得方法: 年1回の教職員意識調査
    • システム障害による業務影響時間: 前年度比50%削減
      • データ取得方法: システム運用事業者からの月次障害レポート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 統合型校務支援システムの共同調達契約の締結: 令和7年度中
      • データ取得方法: 教育委員会事務局の契約状況確認
    • 全小中学校のネットワークアセスメント実施率: 100%(令和7年度中に実施完了)
      • データ取得方法: 教育委員会事務局による委託業務の進捗管理

支援策②:データ利活用による校務プロセスの抜本的改革

目的
  • 整備した次世代型校務DX基盤を最大限に活用し、これまで紙、電話、手作業に依存していた校務プロセスを徹底的にデジタル化・自動化します。
  • 蓄積された校務データを(個人情報保護に最大限配慮した上で)可視化・分析し、教員がデータに基づいた指導や、こどもと向き合うといった本質的な業務に集中できる環境を創出します。
主な取組①:保護者連絡・アンケート・欠席連絡の完全デジタル化
  • 全ての小中学校に、保護者連絡用の専用アプリや校務支援システムの連携機能を導入します。これにより、保護者へのお便り配布、アンケートの実施・自動集計、スマートフォンからの欠席・遅刻連絡受付を完全にデジタル化します。
  • 従来、膨大な時間を要していたお便りの印刷、クラスごとの仕分け、配布、アンケート用紙の回収、手作業での集計といった一連のプロセスを撲滅し、教員の負担と紙・印刷コストを劇的に削減します。
    • 客観的根拠:
主な取組②:定期考査・小テストのデジタル採点システムの導入
  • 解答用紙をスキャナで読み取り、PC上で採点・集計を行うデジタル採点システムを、特に負担の大きい中学校を中心に全校導入を推進します。
  • 採点業務そのものの効率化に加え、教員ごとの採点基準のブレをなくし公平性を担保します。さらに、設問ごとの正答率や誤答傾向を瞬時に分析し、結果を指導改善や個別指導に繋げます。
    • 客観的根拠:
      • 熊本県の高校での実証実験では、デジタル採点システムの活用により、1回あたりのテストで平均74分の採点時間削減効果が報告されています。
      • (出典)(https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/214955.pdf)
      • 東京都教育委員会も「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」の一環として、都立高校で定期考査採点・分析システムの運用を進めています。
      • (出典)(https://reseed.resemom.jp/article/2023/02/17/5681.html)
主な取組③:校務データの可視化ダッシュボードの提供
  • 統合型校務支援システムに蓄積された出欠状況、成績の推移、保健室の来室記録、図書の貸出履歴といった多様なデータを、個人情報保護に最大限配慮した上で、教員が直感的に把握できるダッシュボード機能として提供します。
  • これにより、学級全体の傾向や個々のこどもの変化を早期に捉え、客観的なデータに基づいた指導計画の立案や、支援が必要なこどもへの迅速な対応を可能にします。
主な取組④:生成AIの校務活用ガイドライン策定と支援
  • 学校だよりの文章案作成、保護者アンケートの自由記述の要約、研究授業の指導案のたたき台作成など、校務における生成AIの安全かつ効果的な活用方法をまとめたガイドラインを教育委員会が策定・提供します。
  • 著作権や個人情報の取り扱いに関する注意点を周知徹底するとともに、具体的なプロンプト(指示文)の事例集などを提供し、教員が安心して生成AIを試せる環境を整えます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 教員が「こどもと向き合う時間」または「授業準備」に充てていると回答した時間の割合: 現状比20%増
      • データ取得方法: 教員を対象とした年1回の生活時間調査(タイムユース調査)の実施
  • KSI(成功要因指標)
    • 主要な校務プロセス(保護者連絡、出欠管理、成績処理)のデジタル化率: 100%
      • データ取得方法: 各学校の業務プロセスに関するアンケート調査及び校務支援システムの利用ログ分析
    • 校務データ可視化ダッシュボードの教員利用率(月1回以上アクティブ利用): 80%以上
      • データ取得方法: システムのアクセスログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 学校全体の紙の印刷枚数: 前年度比80%削減
      • データ取得方法: 各学校の複合機カウンター及びコピー用紙等消耗品の購入実績データ
    • 保護者からの欠席連絡における電話対応件数: 前年度比90%削減
      • データ取得方法: 各学校での電話対応件数の記録(校務支援システムでの記録を推奨)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • デジタル採点システム導入校の割合: 100%(中学校は2年以内、小学校は3年以内に達成)
      • データ取得方法: 教育委員会事務局による導入実績管理
    • 生成AI活用に関する研修の教員受講率: 90%以上
      • データ取得方法: 研修管理システムによる受講履歴データ

支援策③:伴走型DX推進体制の構築とデジタルインクルージョン

目的
  • ICTの専門知識を持つ支援人材を国の基準以上に手厚く配置し、教員が校務DXの推進過程で直面する技術的・運用的な課題について、気軽に相談し、即座に解決できる「伴走型」のサポート体制を構築します。
  • 教員、保護者、こども、全てのステークホルダーがデジタル化の恩恵から取り残されることがないよう、スキルアップ支援とデジタルデバイド対策を一体的に推進し、誰一人取り残さない校務DXを実現します。
    • 客観的根拠:
      • 教員のICTスキル習得における最大の課題が「時間不足」であることから、集合研修だけでなく、日々の業務の中でサポートを受けられる伴走型の支援体制が極めて有効です。
      • (出典)(https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=614)
      • 文部科学省は、ICT支援員の配置を「4校に1人」を基準として地方財政措置を講じており、その役割はGIGAスクール構想第2期においてますます重要視されています。
      • (出典)文部科学省「令和6年版 文部科学白書」2024年
主な取組①:ICT支援員の増員と役割の高度化
  • 国の基準である「4校に1人」を上回るICT支援員の配置(例:2校に1人)を目指し、特別区として独自の予算を確保します。
  • 従来のICT機器の操作方法やトラブル対応といった支援に加え、導入された統合型校務支援システムの効果的な活用法、データ分析の初歩的な手法、セキュリティに関する日常的な相談など、より校務DXに特化した高度な支援を提供できるよう、ICT支援員向けの専門研修を定期的に実施します。
主な取組②:文部科学省「学校DX戦略アドバイザー」の積極活用
  • 文部科学省が実施する「学校DX戦略アドバイザー」事業を積極的に活用し、校務DXの全体計画策定、セキュリティポリシーの具体的な見直し、人材育成計画の構築など、高度な専門性が求められる課題について、外部の有識者から客観的かつ専門的な助言を受けます 1
  • 複数の特別区で共通する課題(例:共同調達の仕様策定など)については、アドバイザーを共同で招聘するなど、効率的・効果的な活用を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省は、全国の自治体からのGIGAスクール構想に関する相談を受け付ける窓口として「学校DX戦略アドバイザー事務局」を設置しており、令和5年度には1302件、令和6年度は7月時点で1000件以上の問い合わせがあるなど、活用が進んでいます 6
      • (出典)(https://www.kknews.co.jp/post_ict/dxadvisor_kiko)
      • (出典)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_02715.html)
      • アドバイザーには、大学教授、元校長、民間企業の専門家など、学校インフラ、データ利活用、カリキュラム開発といった多様な専門家が160名以上登録されており、各自治体のニーズに応じた的確な支援が期待できます 6
      • (出典)(https://www.kknews.co.jp/post_ict/dxadvisor_kiko)
主な取組③:教員向けの実践的・階層別研修プログラムの提供
  • 全ての教員を対象とした、校務支援システムの基本操作や情報セキュリティに関する基礎的なリテラシー研修を必須で実施します。
  • それに加え、管理職(校長・副校長)向けには「データに基づく学校経営と業務改善」、情報主任向けには「セキュリティインシデント対応とネットワーク管理」、若手教員向けには「効率的な学級事務処理」など、職務や経験年数に応じた階層別の専門研修プログラムを体系的に提供します。
  • 多忙な教員が自身の都合に合わせて学べるよう、オンライン・オンデマンド形式の研修コンテンツを充実させ、マイクロラーニング(短時間学習)の手法も取り入れます。
    • 客観的根拠:
      • 教員のICT活用指導力や研修受講率には地域差があり、自治体が体系的な研修プログラムを提供することが、全体のレベルアップと格差是正に不可欠です 7
      • (出典)(https://reseed.resemom.jp/article/2024/09/02/9394.html)
      • 東京都渋谷区では、手厚い支援の結果、教員同士が活用法を教え合う文化が醸成されるまでに現場の活用レベルが向上しており、研修と日々の実践が好循環を生むことの重要性を示しています 8
      • (出典)デジタル・アーツ株式会社「渋谷区教育委員会様 導入事例」
主な取組④:保護者向けデジタル活用支援(デジタルインクルージョン)の実施
  • 学校や地域の公共施設(図書館、生涯学習センター等)を活用し、保護者を対象としたスマートフォン操作教室や、学校連絡アプリの具体的な使い方講座などを定期的に開催します。
  • デジタルデバイドを抱える家庭を社会的に孤立させないため、各学校に相談窓口を設置するとともに、教育委員会として多言語対応のヘルプデスクを設けるなど、重層的なサポート体制を構築します。電話や対面でのサポートも当面は継続し、誰もが必要な情報にアクセスできる環境を保障します 9
    • 客観的根拠:
      • 総務省の「デジタル活用支援推進事業」の成果報告では、支援を受けた高齢者の約62.3%がその後もデジタルサービスを継続的に利用するようになるなど、直接的な支援の有効性が確認されています。
      • (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業報告書」令和5年度(参考事例より引用)
      • 中央教育審議会の提言では、働き方改革の推進には保護者や地域住民の理解と協力が不可欠であるとされており、デジタル化への理解を促進する取組は行政の重要な責務です 11
      • (出典)文部科学省「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」2023年
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 教員のワーク・ライフ・バランス満足度(年1回の意識調査で「満足」「やや満足」と回答した割合): 80%以上
      • データ取得方法: 年1回の教職員意識調査 12
  • KSI(成功要因指標)
    • ICT支援員1人あたりの担当校数: 2校以下
      • データ取得方法: 教育委員会事務局による配置計画・実績管理
    • 教員のICT活用に関するストレス値の改善(健康リスク値の低下)
      • データ取得方法: 労働安全衛生法に基づく年1回のストレスチェック結果の分析 12
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 教員からICT支援員への相談件数(校務DX関連): 前年度比30%増(支援体制の認知・活用が進んでいる指標)
      • データ取得方法: ICT支援員の業務日報・報告システムのデータ集計
    • 保護者向けデジタル活用講座の年間延べ参加者数: 5,000人
      • データ取得方法: 各講座の参加者名簿に基づく集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ICT支援員の増員数(純増): 年間XX人(予算に応じて設定)
      • データ取得方法: 教育委員会事務局の人事・予算データ
    • 教員向け階層別研修の開設コース数および総受講時間: 年間20コース、延べ10,000時間
      • データ取得方法: 研修管理システムのデータ分析

先進事例

東京都特別区の先進事例

渋谷区「教育データ利活用による校務効率化と指導の高度化」

  • 渋谷区は、全国に先駆けて2017年から全区立小中学生に1人1台のLTE対応タブレット端末を整備し、現在は2代目端末を活用しています 8。その取組の中でも特に先進的なのが、教育データを可視化する「教育ダッシュボード」の構築・運用です 13
  • Microsoft Azureを基盤としたデータ利活用基盤を構築し、校務支援システムなどに蓄積された出欠、成績、生活アンケートの結果といった多様なデータを、Power BIを用いて可視化しています 13。これにより、教員は個々のこどもの状況を多角的かつ時系列で把握でき、支援が必要なこどもの早期発見や、データに基づいた客観的な指導に繋げています 15
  • また、校務における生成AIの活用も積極的に推進しており、実証研究では学校だよりの作成で約26分、指導案作成で約36分といった具体的な時間削減効果を報告するなど、業務効率化に直結する取組を進めています 13

板橋区「3つの重点施策に基づく体系的な働き方改革」

  • 板橋区は、令和4年度からの「働き方改革推進プラン2025」において、「意識改革」「業務改善」「人的体制整備」の3つを重点施策として掲げ、22の具体的な取組を体系的に進めています 17
  • 「月あたり時間外在校時間が45時間を超える教員の割合をゼロにする」という明確な数値目標を設定し、その達成のために、在校時間管理システムの再構築やデジタル化による校内事務の見直しといったICT活用策と、学校へ依頼する調査業務の精選や職員室レイアウトの改善といった非ICT分野の業務改善を両輪で進めている点が特徴です 17
  • 「持ち帰り業務ゼロに向けた意識改革」や「定時退勤日、最終退勤時間の設定」など、教員一人ひとりの意識や職場風土の改革にも踏み込んでおり、総合的なアプローチをとっています 17

東京都教育委員会「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」

  • 東京都教育委員会は、都全体の取組として、都立学校のデジタル化を強力に推進しています 21。このプロジェクトは単なるICT整備に留まらず、「学び方改革」「教え方改革」「働き方改革」の三位一体改革を掲げ、校務の効率化が教員の負担軽減に繋がり、その結果として創出された時間をこどもと向き合うために再投資することで、教育の質を向上させるという明確なビジョンを打ち出しています 23
  • 具体的な取組として、都立学校全校への高速大容量Wi-Fi環境の整備(アクセスポイント約18,000台)、統合型校務支援システムの導入、定期考査採点・分析システムの運用などを計画的に進めています 25
  • また、東京学校支援機構(TEPRO)による人材バンクや学校法律相談デスクといった多角的な支援事業と連携し、ハード・ソフト・人の三側面から学校現場を支える体制を構築しています 26
    • 成功要因
      • 都が一括して強力なリーダーシップを発揮し、区市町村単位では困難な大規模なインフラ投資を計画的に実施したこと 25
      • 「働き方改革」を、教員の意欲を引き出す「学び方・教え方改革」と不可分のものとして戦略的に位置づけたこと 23
      • 端末やネットワークの整備だけでなく、TEPROによる人的支援や専門的支援を組み合わせた総合的な支援パッケージを提供していること 26
    • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

戸田市(埼玉県)「ゼロトラスト・セキュリティによる端末1台化と働き方改革」

  • 埼玉県戸田市教育委員会は、多くの自治体で課題となっている「校務系端末」と「学習系端末」の2台持ち問題を、最新のセキュリティ技術である「ゼロトラスト」を導入することで解決しました 27
  • これにより、教員は1台の端末で、セキュアな校務処理と、インターネットを活用した授業準備や教材作成をシームレスに行えるようになりました 27。さらに、端末の持ち出しが安全に可能となったことで、学校外での研修やテレワークが容易になり、柔軟な働き方が実現しました 28
  • この取組の結果、教員の残業時間は明確に減少し、休日出勤もほぼなくなるなど、働き方改革に劇的な成果を上げており、全国のモデルケースとなっています 28

熊本県「ICT活用による業務時間削減効果の徹底的な可視化」

  • 熊本県教育委員会は、ICTの導入が教員の働き方改革にどれだけ貢献したかを、「削減された業務時間」という具体的な数値で徹底的に可視化し、全県で共有する取組を行っています 29
  • 全県の学校を対象とした調査に基づき、「保護者連絡のデジタル化で年間約14時間削減」「Webアンケート活用で年間3〜12時間削減」「職員会議のペーパーレス化で1回あたり30分削減」など、40以上の業務について具体的な削減時間を示した事例集を作成・公開しています 29
  • この取組は、ICT導入の費用対効果を客観的に示し、未導入の学校や教員への強力な動機づけとなっているだけでなく、データに基づいた政策推進(EBPM)の優れた実践例として高く評価できます。
    • 成功要因
      • 「何となく楽になった」という感覚的な評価に留めず、「どの業務が、どのツールで、何時間削減されたか」を定量的に分析・可視化する文化。
      • 個別の学校の成功事例ではなく、全県での調査に基づいた平均的なデータを示すことで、多くの学校にとって参考となる客観性・再現性の高い情報を提供していること。
      • 具体的な活用ツール(グループウェア、Webフォーム等)と削減効果をセットで提示し、他校が容易に模倣できる実践的な形式で情報提供していること 29
    • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

文部科学省
  • 「令和6年版 文部科学白書」令和6年度 30
  • 「令和5年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査」令和6年公表 31
  • 「令和4年度 教員勤務実態調査(速報値)」令和5年公表
  • 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月版)」令和7年3月 35
  • 「GIGAスクール構想の下での校務DXについて」令和5年3月 36
  • 「学校DX戦略アドバイザー事業」関連資料(令和5年度、令和6年度) 2
  • 「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」(中央教育審議会)令和5年8月 11
  • 「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」関連資料(令和5年度、令和6年度) 37
デジタル庁・総務省等
  • 総務省「令和6年版 情報通信白書」令和6年 38
  • デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省「教育DXロードマップ」令和7年6月 39
  • デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省「教育データ利活用ロードマップ」令和4年1月 41
東京都・特別区
  • 東京都教育委員会「学校における働き方改革推進プラン」関連資料 12
  • 東京都教育委員会「TOKYOスマート・スクール・プロジェクト」関連資料 21
  • 東京都「都内公立学校教員勤務実態調査」関連資料 44
  • 渋谷区教育委員会「渋谷区の教育 基本方針と重点目標の取組」関連資料 14
  • 板橋区教育委員会「板橋区立学校における教職員の働き方改革推進プラン2025」 17
  • 台東区教育委員会「台東区GIGAスクール構想第2期 学校情報機器整備に係る各種計画」 49
その他自治体・機関
  • 熊本県教育委員会「ICTを活用した働き方改革事例集」令和4年8月 29
  • 戸田市教育委員会「戸田市GIGAスクール構想」関連資料 27
  • MM総研「校務DXに向けたICT整備動向調査」「GIGAスクール構想、教員のICTスキル習得に関する調査」 54

まとめ

 GIGAスクール構想によって整備された1人1台端末は、こどもの学びを変革するだけでなく、教員の働き方を抜本的に改革する大きな可能性を秘めています。しかし、現状は授業での活用(学習系DX)に比べて、教員の多忙化の温床である校務の効率化(校務系DX)が著しく遅れているという深刻な課題に直面しています。この問題を解決するには、小手先の改善ではなく、クラウドと標準化を前提とした「次世代型校務DX基盤」の整備を最優先課題として位置づけ、その上でデータ利活用による業務プロセスの抜本的改革、そして改革を現場で支える伴走型の人的支援を三位一体で強力に推進することが不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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