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ICT導入・介護ロボット活用等による効率化・負担軽減支援

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

はじめに

概要(介護分野のICT・ロボット活用を取り巻く環境)

  • 自治体がICT導入・介護ロボット活用等による効率化・負担軽減支援を行う意義は「質の高い介護サービスの持続可能性の確保」と「介護従事者が働きがいを持てる魅力的な職場環境の構築」にあります。
  • 日本は、生産年齢人口の急減と高齢者人口の急増が同時に進行する、世界でも類を見ない人口構造の転換期に直面しています。特に、東京都特別区においては、高齢者人口の絶対数が極めて大きく、介護需要の増大は喫緊の課題です。
  • 内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によれば、日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は令和6年10月1日時点で29.3%に達し、過去最高を更新しました。さらに、令和52(2070)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になると推計されており、介護サービスの需要は増大し続ける一方、担い手となる生産年齢人口は減少の一途を辿ります。
  • このような状況下で、ICTや介護ロボット等のテクノロジーは、単なる業務効率化のツールにとどまらず、介護という社会基盤そのものを維持し、発展させるための不可欠な要素となっています。

意義

要介護者・家族にとっての意義

安全性の向上と尊厳の維持
  • 見守りセンサー等の活用により、夜間の訪室回数を減らしつつ、利用者の睡眠の質を妨げることなく、転倒・転落等の事故を未然に防ぎ、早期発見を可能にします。これにより、利用者はより安全な環境で安心して生活できます。
  • コミュニケーションロボットやオンラインツールは、社会的孤立に陥りがちな高齢者の孤独感を和らげ、家族や社会とのつながりを維持する手段となります。
自立支援の促進とQOLの向上
  • 歩行支援ロボットやリハビリテーション用機器は、利用者の残存能力を最大限に引き出し、自立した生活を長く続けることを可能にします。
  • テクノロジーの活用は、利用者が「管理される」対象ではなく、主体的に自身の生活に関わることを促し、生活の質(QOL)の向上に直接的に寄与します。

介護従事者・事業者にとっての意義

身体的・精神的負担の軽減
  • 移乗支援ロボット(パワーアシストスーツ等)は、介護業務で最も負担の大きい移乗介助時の腰への負担を大幅に軽減し、腰痛による離職を防ぎます。
  • 介護記録ソフトやスマートフォンアプリの活用は、手書きによる記録や申し送りの手間を削減し、事務作業にかかる時間を短縮します。これにより、時間外労働の削減にも繋がります。
    • 客観的根拠:
      • ある介護施設では、ICT導入により計画的な会議以外の残業時間が激減したとの報告があります。
      • (出典)(https://www.izumo-kaigo.jp/voice/interview/294) 11
  • これらの負担軽減は、職員の心身の健康を守り、働きやすい職場環境を実現します。
専門性の発揮と職業的魅力の向上
  • テクノロジーが定型的・身体的業務を代替することで、介護従事者は、利用者とのコミュニケーションや個別ケアの計画、精神的なサポートといった、人でなければできない専門性の高い業務に集中できます。
  • これにより、介護の仕事は単なる「身体労働」から、利用者のQOL向上に貢献する「専門職」へとその価値が高まり、若者や多様な人材にとって魅力的な職業となります。これは、人材確保が困難な現代において極めて重要な意義を持ちます。

地域社会・行政にとっての意義

介護サービスの持続可能性確保
  • 生産性向上は、限られた人材で増大する介護需要に対応するための唯一の解です。テクノロジー活用による効率化は、地域全体の介護提供体制を維持し、将来にわたって安定したサービス供給を可能にします。
  • 介護従事者の離職率低下と定着促進は、地域における介護人材の確保に直結し、介護崩壊のリスクを低減させます。
地域包括ケアシステムの深化
  • ICTを活用した情報連携基盤は、医療機関、介護事業所、薬局、自治体など、多職種・多機関のスムーズな連携を促進し、切れ目のないケアを提供する地域包括ケアシステムの核となります。
  • 効果的なテクノロジー導入支援は、単なる個別事業所への補助ではなく、地域全体の介護サービスという社会インフラを強靭化する、未来への戦略的投資と位置づけることができます。

(参考)歴史・経過

2010年代前半:開発支援の時代
2010年代後半:導入促進の時代
2020年代:活用・定着支援の時代
  • 令和3(2021)年度~: 補助金によって機器は導入されるものの、現場で十分に活用されず「置物化」するケースが問題視されるようになりました。この「導入と活用のギャップ」を埋めるため、政策は新たな段階に入ります。
  • **科学的介護情報システム「LIFE」**の本格運用が開始され、データに基づいたケア(科学的介護)の実践が介護報酬上で評価されるようになりました。ICTの活用は、単なる効率化だけでなく、ケアの質向上に不可欠な要素として明確に位置づけられました。
  • 補助金制度においても、単に機器を導入するだけでなく、業務プロセスの見直し(BPR)や職員研修、導入効果の報告などを要件とする動きが強まりました。これは、政策の焦点が「導入」から「活用と生産性向上」へと、より本質的な課題認識へ深化していることを示しています。

介護分野のICT・ロボット活用に関する現状データ

高齢化と介護需要の動向

加速する高齢化と後期高齢者の急増
  • 全国の動向: 令和6(2024)年、日本の65歳以上人口は3,624万人(高齢化率29.3%)となり、中でも75歳以上人口が2,078万人と、65~74歳人口(1,547万人)を大きく上回っています。高齢者の中でも、より介護ニーズの高い後期高齢者の割合が増加していることがわかります。
  • 東京都の動向: 東京都の高齢化率は全国平均より低いものの、高齢者人口の絶対数が膨大であり、特に団塊の世代が75歳以上となる令和7(2025)年に向けて後期高齢者人口が爆発的に増加すると予測されています。一人暮らし高齢者世帯の増加も著しく、令和2(2020)年には80万人を超えると見込まれており、地域でのサポート体制の強化が急務です。
増え続ける要介護(要支援)認定者

介護人材の需給動向

深刻な人材不足と高い有効求人倍率
離職理由から見える職場の課題

ICT機器の導入状況

進む「導入」と、追いつかない「活用」
  • 介護現場へのICT導入は着実に進んでいます。厚生労働省の調査によれば、調査対象事業所のうち67.5%が何らかの介護ソフトを導入しており、パソコン等を情報共有に活用している事業所も52.8%に上ります。
  • しかし、「導入」と「活用」の間には大きなギャップが存在します。令和6(2024)年に実施された調査では、デジタル化やICT導入が進んでいると回答した施設で働く職員の約6割が「かえって業務負担が増えた」と回答しています。
    • 客観的根拠:
      • 業務負担が増えた理由として「記録すべき帳票や報告書の項目や情報量が増加した」「今まで不必要だった業務が増加した」がそれぞれ42.2%で最多となっています。
      • (出典)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000139613.html) 31
  • これは、既存のアナログな業務フローを見直さないまま、新たなデジタルツールを上乗せしている「二重業務」が発生していることを強く示唆しています。
東京都における活用率の実態
  • 東京都高齢者福祉施設協議会の調査では、都内の特別養護老人ホームにおける「介護記録ソフト」の導入率は92.5%と非常に高い一方、日常的に活用されている割合は90.5%です。しかし、他のツールではギャップが顕著になります。
  • このデータは、機器を導入するだけでは不十分であり、業務プロセスへの組み込みと職員の習熟が伴わなければ、テクノロジーが有効に機能しないという「実行の壁(Implementation Gap)」の存在を明確に示しています。

介護ロボットの導入状況

低い普及率と分野による大きな偏り
東京都における「導入」と「活用」の乖離
  • 東京都の調査でも同様の傾向が見られます。見守り支援機器の中でも「バイタル測定タイプ」の活用率は36.0%と比較的高く、導入した施設での活用率も90.4%に達します。
  • しかし、身体的負担の軽減効果が高いとされる**「移乗支援機器(装着型)」**は、導入率が16.9%あるにもかかわらず、**日常的な活用率はわずか4.2%**です。さらに深刻なのは、**導入した施設内での活用率が25.0%**しかない点です。これは、導入された装着型ロボット4台のうち3台が現場で使われず、「置物化」していることを意味します。
  • このデータは、受動的で業務フローへの影響が少ない機器(見守りセンサー)は比較的活用されやすいのに対し、能動的で職員のスキルや業務手順の変更を大きく伴う機器(移乗ロボット)ほど、**「技術と現場のミスマッチ」**が生じやすく、活用へのハードルが格段に高いことを示しています。

課題

介護現場(要介護者・従事者)の課題

デジタルリテラシーの不足と研修負担
  • 介護現場では、特に高齢の職員を中心にICT機器の操作に不慣れな層が多く存在します。新しいシステムの導入が、かえって心理的なストレスや業務への不安を引き起こす一因となっています。
  • 多忙な人員体制の中で、十分な研修時間を確保することは困難です。その結果、一部の職員しか使いこなせず、職員間のスキル格差が新たなコミュニケーションの壁や不公平感を生んでいます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 職員間のスキル格差が新たなストレス源となり、チームワークを阻害し、離職につながります。
プライバシーへの懸念と同意形成の困難さ
  • 特にカメラ機能を備えた見守り機器は、利用者の安全確保に大きな効果が期待される一方で、「常時監視されている」という心理的抵抗感を利用者やその家族に与える可能性があります。
  • プライバシー権に関わるため、導入には利用者本人および家族からの丁寧な説明と明確な同意形成が不可欠です。しかし、認知症の進行度合いによっては本人の意思確認が難しく、同意取得のプロセスそのものが事業者の大きな負担となっています。

介護事業者(経営)の課題

高額な導入・維持コストと費用対効果の不透明性
  • 介護ロボットやICTシステムは、初期導入費用が高額であることに加え、保守費用やクラウドサービスの利用料など、継続的なランニングコストが発生します。
  • 特に中小規模の事業者にとって、この投資負担は経営を圧迫する大きなリスクです。また、導入によってどれだけの業務削減やコスト削減に繋がるのか、費用対効果(ROI)が不明確なため、経営判断に踏み切れないケースが多く見られます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 資金力のある大規模法人と中小規模事業所との間で「テクノロジー格差」が拡大し、サービスの質の格差につながります。
導入プロセスのノウハウ不足と業務改革の壁
  • テクノロジー導入の成否は、機器の性能以上に、導入プロセスにかかっています。しかし、多くの事業者では、課題の洗い出し、適切な機器選定、導入後の業務フローの再設計(BPR)、効果測定といった一連のプロジェクトマネジメントのノウハウが不足しています。
  • 経営層によるトップダウンで導入が決まり、現場の意見が反映されないまま進められた結果、現場の業務実態に合わない機器が導入され、活用されずに「置物化」する失敗事例が後を絶ちません。これが「導入したが、かえって負担が増えた」という事態の根本原因です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 高価な機器が「置物」と化し、投資が無駄になるだけでなく、現場の士気低下と経営への不信感を招きます。

行政の課題

補助金制度の限界(「導入支援」から「活用支援」への転換の遅れ)
  • 従来の行政支援は、機器の購入費用を補助する「導入支援」が中心でした。しかし、課題の核心が「活用の壁」にある以上、このアプローチには限界があります。
  • 業務改善コンサルティング、導入後の職員研修、効果測定といった、活用・定着に不可欠な「ソフト面の経費」に対する支援が不十分であり、事業者が最も必要としている支援と行政の提供する支援内容に乖離が生じています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 補助金が効果的に使われず税金の無駄遣いとなり、政策目標である生産性向上が達成されません。
分野横断的な支援体制の不足
  • 介護現場のテクノロジー導入は、福祉分野だけの問題ではなく、IT、労務管理、経営改善など、複数の専門領域にまたがる複合的な課題です。
  • しかし、行政の支援体制は、依然として福祉担当部署が単独で担うケースが多く、IT部門や産業振興部門との連携が不足しています。これにより、事業者が必要とする包括的・専門的なアドバイスを提供できていないのが現状です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 事業者が複数の窓口を「たらい回し」にされ、包括的な支援を受けられず、導入を断念する一因となります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題(例:業務負担軽減、サービスの質向上、人材定着)に横断的に良い影響を及ぼす施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手できる施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、新たな大規模な体制構築が必要な施策よりも優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投入する行政コスト(予算・人員等)に対して、得られる成果(生産性向上、離職率低下による採用コスト削減等)が大きい施策を優先します。短期的な支出だけでなく、中長期的な財政負担の軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の事業者だけでなく、区内の多様な介護事業所(特に中小規模事業所)が活用でき、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。一時的な効果で終わらず、持続的な改善サイクルを生み出す仕組みを高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 政府の調査報告書や先進自治体の実証結果など、効果がエビデンスによって裏付けられている施策を優先します。先行事例があり、効果測定が可能な施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの分析から、介護現場におけるテクノロジー活用の最大の障壁は、機器や資金の不足ではなく、「導入・活用ノウハウの不足」と「業務改革を伴わない形骸化した導入」であることが明らかになりました。したがって、行政支援の最優先課題は、この「実行の壁(Implementation Gap)」を乗り越えるための能力を事業者が身につけられるよう支援することです。
  • この考え方に基づき、以下の3つの支援策を、優先度の高い順に提案します。これらは個別の施策ではなく、相互に連携・補完し合うことで最大の効果を発揮するパッケージとして構想されています。
    • 優先度【高】:支援策① 伴走型支援体制の構築
      • 最も緊急性が高く、波及効果が大きい施策です。「導入の失敗」という根本原因に直接アプローチし、投資対効果を高めるため、最優先で取り組むべきです。
    • 優先度【中】:支援策② デジタル人材育成と組織文化変革の促進
      • 伴走型支援の効果を最大化し、持続的な改善サイクルを組織内部に根付かせるための中長期的な基盤となる施策です。
    • 優先度【低】:支援策③ データ利活用とプライバシー保護の両立支援基盤の整備
      • テクノロジー活用が高度化する将来を見据え、安全・安心なデータ利活用環境を整備する施策です。他の施策が円滑に進むための土台となります。

各支援策の詳細

支援策①:導入から定着までを支える伴走型支援体制の構築

目的
  • 行政支援のあり方を、従来の「機器購入費の補助(モノ支援)」から、課題分析・機器選定・導入プロセス・効果測定までを一貫して支援する「課題解決支援(コト支援)」へと転換します。
  • これにより、テクノロジーが確実に現場に定着し、業務負担の軽減とサービスの質の向上という具体的な成果を生み出すことを目指します。
主な取組①:介護DXコンサルタント派遣事業の創設
  • 介護事業所が、ICTや介護ロボットの導入に際して、外部の専門家(ITコンサルタント、業務改善コンサルタント、中小企業診断士、社会保険労務士等)を活用する際の費用を補助します。
  • 支援内容:
    • 導入前: 業務内容の可視化と課題分析、課題解決に最適な機器・システムの選定支援、導入計画策定支援
    • 導入時: 業務フローの再設計(BPR)支援、職員向け研修の企画・実施支援
    • 導入後: 活用状況のモニタリングと改善提案、導入効果の測定・評価支援
  • 客観的根拠:
    • 介護施設に勤務する職員の70.5%が、適切なデジタル化を進めるためには「外部からの支援やコンサルティングが必要」と考えており、専門的支援に対する現場のニーズは非常に高いです。
    • (出典)(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000139613.html) 31
主な取組②:「お試し導入」支援制度の導入
  • 高額な機器の導入失敗リスクを低減するため、事業所が本格導入前に一定期間、機器を試用できる「お試し導入(トライアル)」にかかるレンタル費用等を補助します。
  • 補助の条件として、導入前後の業務時間や職員の負担感に関する簡単な効果測定と報告を義務付け、データに基づいた導入判断を促します。
  • 区がレンタル事業者と包括的な契約を結び、事業所が利用しやすい仕組みを構築することも検討します。
  • 客観的根拠:
主な取組③:補助金制度の再設計とソフト経費への拡充
  • 既存の機器導入補助金制度を見直し、コンサルティング費用、導入後の研修費用、クラウドサービスの年間利用料といった「ソフト経身」も補助対象として明確に位置づけます。
  • 補助金の申請要件に「業務改善計画」の提出を盛り込み、単なる機器購入計画ではなく、導入によって「何を」「どのように」改善するのかを明確にさせます。
  • 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • 区内介護事業所の労働生産性(職員一人当たりの付加価値額)を5年で15%向上させる。
    • データ取得方法: 介護事業経営実態調査(厚生労働省)の数値を基にした区独自の推計、またはモデル事業所における定点調査。
  • KSI(成功要因指標):
    • 本支援策を利用した事業所における、導入1年後のICT/ロボット活用定着率80%以上を達成する。
    • データ取得方法: 補助金交付後のアンケート調査及びヒアリング調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • 支援を受けた事業所における、導入前と比較した職員の平均残業時間20%削減。
    • 支援を受けた事業所における、導入後1年間の離職率が区内平均より10%以上低い水準を達成。
    • データ取得方法: 各事業所の勤怠データ(匿名化)、雇用保険被保険者資格喪失届のデータ分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • 介護DXコンサルタント派遣事業の年間利用事業所数:50事業所。
    • 「お試し導入」支援制度の年間利用件数:100件。
    • データ取得方法: 区の事業実績報告。

支援策②:デジタル人材育成と組織文化変革の促進

目的
  • テクノロジーを「使いこなせる人材」と、変化を前向きに受け入れる「組織文化」を醸成することで、行政の支援がなくとも自律的にDXを推進できる事業所を増やし、地域全体の介護DXレベルを底上げします。
主な取組①:介護職員向け段階的デジタルスキル研修の実施
  • 職員のITスキルレベルに応じて選択できる、体系的な研修プログラムを開発し、受講費用を助成します。
    • レベル1(基礎編): PC・タブレットの基本操作、タイピング、情報セキュリティの基礎知識など、デジタルツールに不慣れな職員向け。
    • レベル2(実践編): 介護記録ソフト、インカム、見守りセンサーなど、特定の機器・システムの活用方法に関する実践的研修。
    • レベル3(リーダー編): 現場のICT活用を主導する「DX推進リーダー」を育成。業務改善手法、データ分析の初歩、職員への指導方法などを学ぶ。
  • 客観的根拠:
主な取組②:管理者向けチェンジマネジメント研修の実施
  • 介護事業所の施設長や経営層を対象に、テクノロジー導入を成功に導くためのマネジメント手法に関する研修を実施し、受講費用を助成します。
  • 研修内容:DXの目的設定、現場の巻き込み方、反対意見への対処法、導入後のPDCAサイクルの回し方、成功事例に学ぶ組織変革のポイントなど。
  • 客観的根拠:
主な取組③:優良事例の共有とネットワーキングの場の提供
  • 区内のICT・ロボット活用優良事例を表彰し、その取り組み内容をウェブサイトや広報誌で広く共有します。
  • 優良事業所の管理者やDX推進リーダーが登壇する事例報告会や、事業者間の情報交換会を定期的に開催し、成功のノウハウが地域全体に広がる「横展開」の仕組みを構築します。
  • 客観的根拠:
    • 多くの事業者が、他施設の成功事例を参考にしたいと考えています。身近な成功事例は、導入を躊躇している事業者の背中を押す最も効果的な材料となります。
    • (出典)(https://caretree.jp/archives/18463) 46
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • 区内介護職員の現在の仕事に対する満足度(「満足」「やや満足」の割合)を5年で20%向上させる。
    • データ取得方法: 介護労働実態調査(介護労働安定センター)の区内事業所データ分析、または区独自の職員意識調査。
  • KSI(成功要因指標):
    • 区内の介護事業所(職員20名以上)に「DX推進リーダー(レベル3研修修了者)」が1名以上配置されている割合70%を達成する。
    • データ取得方法: 研修修了者データと事業所情報の紐付け。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • 研修受講後の職員のICT活用に対する自己効力感スコア(アンケート調査)が受講前より平均25%向上。
    • データ取得方法: 研修前後のアンケート調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • 各レベルの研修の年間受講者数(目標値:基礎編500人、実践編200人、リーダー編50人)。
    • 事例報告会・情報交換会の年間開催回数:4回。
    • データ取得方法: 区の事業実績報告。

支援策③:データ利活用とプライバシー保護の両立支援基盤の整備

目的
  • 事業者が安心してデータ活用(特に見守り機器やLIFE)に取り組めるよう、プライバシー保護に関する具体的な指針とツールを提供し、法的・倫理的リスクを低減します。
  • これにより、利用者の信頼を得ながら、データに基づいた科学的介護の実践を区内全体で推進するための土台を整備します。
主な取組①:プライバシー保護ガイドラインと標準同意書式の策定・提供
主な取組②:情報セキュリティ対策支援
  • ICT化に伴う個人情報漏洩のリスクに対応するため、情報セキュリティの専門家による相談窓口を設置、または専門家派遣費用を補助します。
  • IPA(情報処理推進機構)が実施する「SECURITY ACTION」自己宣言の取得を支援し、補助金の申請要件と連動させることで、区内事業所全体のセキュリティレベルの向上を図ります。
  • 客観的根拠:
主な取組③:区内介護データ連携基盤(セキュア・プラットフォーム)の検討
  • 中長期的視点に立ち、国の「LIFE」との連携を前提とした、区内事業所間でのデータ連携・活用を促進するための共通プラットフォームの構築可能性について調査・検討を開始します。
  • プラットフォームの機能として、匿名化されたデータを活用した事業所間のケア指標のベンチマーキングや、地域特有の介護課題の分析などを想定します。
  • 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • データ(LIFE等)を活用した科学的介護を実践している区内事業所の割合を5年で80%以上にする。
    • データ取得方法: 科学的介護推進体制加算の算定事業所率の推移を追跡。
  • KSI(成功要因指標):
    • 区が策定したプライバシー保護ガイドラインを導入・運用している事業所の割合90%を達成する。
    • データ取得方法: 補助金申請時の確認及びアンケート調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • 見守り機器のプライバシーに関する、利用者・家族からの区への相談・苦情件数を3年で50%削減。
    • データ取得方法: 区の相談窓口における相談・苦情記録の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • プライバシー保護ガイドラインに関する説明会の年間開催回数:4回。
    • 標準同意書式の年間ダウンロード数:1,000件。
    • データ取得方法: 区の事業実績報告及びウェブサイトのアクセスログ分析。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区(社会福祉法人友愛十字会 砧ホーム)「現場主導の介護ロボット活用による業務改善と定着支援」

  • 同施設は、国の補助金や東京都、世田谷区の補助金を積極的に活用し、見守り支援機器、移乗支援機器、ICT機器などを多数導入しています。成功の鍵は、単なる機器導入に留まらず、それを活用した業務プロセスの変革を現場主導で行った点にあります。
  • 見守り支援機器(眠りSCAN)の活用:
    • 利用者の睡眠・覚醒状態をリアルタイムで把握し、従来の一律の時間で行う巡回や起床介助を廃止。利用者の睡眠サイクルに合わせた個別ケアを実現し、睡眠の質の向上と職員の夜間業務負担軽減を両立しました。これは、テクノロジーをきっかけにケアの思想そのものを変革した好事例です。
  • 移乗支援機器(マッスルスーツ)の活用:
    • 「強要ではなく、使いたくなった時にいつでも使える環境」を整備。職員が身体的負担を感じた際に自発的に使用できる文化を醸成したことで、機器が「置物化」することなく定着し、腰痛予防に貢献しています。
  • 成功要因: 経営層の明確な方針のもと、現場職員が主体的に課題解決の手段として機器を選定・活用し、業務改善を進めたこと。トップダウンとボトムアップが効果的に融合しています。

大田区(社会福祉法人善光会)「介護DXのトップランナーとしてのシステム開発と人材育成」

  • 同法人は、介護業界のDXを牽引する存在として知られ、既製品の導入に留まらず、自ら研究部門(サンタフェ総合研究所)を設立し、介護記録アプリや情報共有プラットフォームの開発まで行っています。
  • 情報共有の効率化(LINE WORKSの活用):
    • 高価な専用システムだけでなく、ビジネスチャットツール「LINE WORKS」をインカム代わりに活用。職員がスマートフォンで常時接続し、ハンズフリーで情報共有できる環境を構築しました。これにより、介助の手を止めることなく、迅速かつ正確な情報伝達が可能となり、ケアの質向上と業務効率化を実現しています。
  • 人材育成(スマート介護士):
    • テクノロジーを使いこなし、介護の質と生産性を向上させる人材を「スマート介護士」と定義し、独自の資格制度と育成プログラムを展開。テクノロジー活用を属人的なスキルに留めず、組織全体の能力として標準化・向上させる仕組みを構築しています。
  • 成功要因: 「業界の行く末を担う先導者になる」という明確なビジョンを掲げる経営層の強いリーダーシップと、テクノロジーと人材育成への戦略的投資。

新宿区「IoT技術を活用した高齢者見守り体制の構築」

  • 新宿区は、行政が主体となり、IoT技術を活用して地域高齢者の見守り体制を強化しています。
  • 生活リズムセンサーの導入:
    • 一人暮らし高齢者等の住居のドアに開閉センサーを設置。一定時間、ドアの開閉が感知されない場合に異常と判断し、自動で警備会社に通報。警備員が安否確認に駆けつける仕組みを構築しています。
  • ICTを活用した安否確認:
    • 従来の緊急通報システムに加え、このIoTセンサーによる「プッシュ型」の見守りを組み合わせることで、よりきめ細かく、プライバシーに配慮した形での安全確保を目指しています。
  • 成功要因: 自治体が主体となり、民間企業(警備会社)と連携して、地域のセーフティネットとしてテクノロジーを社会実装した点。個々の事業所の取り組みだけでなく、地域全体の課題解決に行政がテクノロジーを活用した好事例です。

全国自治体の先進事例

北九州市「『北九州モデル』による包括的な導入・開発・人材育成支援」

  • 政令指定都市で最も高齢化が進む北九州市は、全国に先駆けて介護現場の生産性向上に総合的に取り組んでおり、その支援体制は全国の自治体のモデルとなっています。
  • 包括的な支援体制:
    • 導入支援: 専門の相談窓口「介護ロボット等導入支援・普及促進センター」を設置し、専門家が各施設の課題に応じた機器選定や導入計画策定を支援。
    • 人材育成: 職員のレベルに応じた「介護ロボットマスター育成研修」(入門編・実践編・管理編)を実施し、体系的な人材育成を行う。
    • 開発支援: 「介護ロボット等普及開発ネットワーク」を設立し、介護現場のニーズを開発メーカーに繋げ、製品開発・改良を促進。
    • ノウハウの標準化: 実証事業の成果を**「北九州モデル導入・実践ガイドライン」**としてまとめ、市内の全施設に配布。成功のノウハウを標準化し、横展開を図っています。
  • 成功要因: 「導入」「人材育成」「開発」「標準化」という4つの要素を、行政がハブとなって有機的に連携させ、エコシステムを構築した点。本報告書で提案する支援策の多くを具現化した先進モデルです。

社会福祉法人フラワー園(青森県)「地方・中小規模施設におけるICT導入と業務改革」

  • テクノロジー導入の成功は、都市部の大規模法人に限りません。青森県の社会福祉法人フラワー園は、地方の中小規模施設におけるICT導入の好事例です。
  • 課題と導入プロセス:
    • 職員の年齢層が20代~60代と幅広く、PC操作に不慣れな職員も多い中、導入前に丁寧なアンケートを実施して不安要素を把握。「手書きの方が早い」という抵抗感に対し、導入目的(業務負担軽減とケアの質の向上)を粘り強く説明し、操作研修を重ねました。
  • 導入効果:
    • 介護記録アプリの導入により、記録業務や申し送り時間が大幅に短縮され、残業時間が激減。職員からは「記録の負担が減り、やって良かった」との声が上がり、離職者の減少にも繋がりました。
  • 成功要因: 導入前の丁寧な課題把握と、全職員を対象とした合意形成プロセスの重視。トップダウンではなく、現場の不安に寄り添いながら、組織全体で変革に取り組んだことが成功に繋がりました。これは、本報告書の支援策②「人材育成と組織文化変革」の重要性を示す事例です。

参考資料[エビデンス検索用]

政府(省庁)関連資料

まとめ

 超高齢社会の進展と生産年齢人口の減少という構造的課題に直面する中、介護現場のICT・ロボット活用は、サービスの質と持続可能性を左右する最重要政策課題です。しかし、その成否は技術の性能ではなく、導入プロセスと活用ノウハウに懸かっています。本報告書で提案する、単なる機器購入補助から脱却し、コンサルティングや人材育成を含む「伴走型支援」へと行政の役割を転換することが、真の生産性向上と魅力ある介護現場の実現に不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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