09 DX

ICTを活用した文化施設利用・情報提供

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(ICTを活用した文化施設利用・情報提供を取り巻く環境)

  • 自治体がICTを活用した文化施設利用・情報提供を行う意義は「文化芸術へのアクセシビリティの飛躍的向上」と「デジタル社会における新たな文化価値の創造と継承」にあります。
  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機として社会全体のデジタルシフトが加速し、人々が情報や文化に接する方法は根本的に変化しました。博物館、図書館、劇場といった文化施設は、もはや物理的な壁の中だけでサービスを提供するのではなく、デジタル空間においてもその役割を果たすことが強く期待されています。
  • この潮流は、国の「デジタルアーカイブ戦略 2026-2030」や「博物館DXの推進に関する基本的な考え方」といった戦略にも明確に示されており、文化資産の保存、地域活性化、そして日本のソフトパワー強化の観点から、デジタルトランスフォーメーション(DX)は不可欠な要素として位置づけられています。

意義

住民にとっての意義

時空間的制約の克服
  • 住民は物理的な距離、開館時間、あるいは身体的な制約に関わらず、いつでもどこでも文化コンテンツにアクセスできるようになります。
  • これは特に、高齢者、障害のある方、子育て中の家庭など、外出に困難を抱える人々にとって、文化芸術への参加機会を大きく広げるものです。
新たな鑑賞体験の創出
  • 高精細画像による細部の鑑賞、3Dモデルによる多角的な観察、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を活用した没入感のある体験は、物理的な鑑賞だけでは得られない、より深くインタラクティブな文化との関わり方を可能にします。
生涯学習機会の拡充
  • デジタルアーカイブやオンライン講座は、質の高い教育リソースとして機能し、住民の生涯にわたる学習活動を支援します。
  • 国の調査でも、今後の学習形態としてインターネットを希望する割合は58.7%に達しており、デジタル学習への高い需要が示されています。
    • (出典)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/hakubutsukan/hakubutsukan04/04/pdf/93836101_01.pdf)

地域社会にとっての意義

文化遺産の恒久的な保存と継承
  • デジタル化は、災害や経年劣化による物理的な損失に対する重要なバックアップとして機能します。これにより、地域の歴史や文化資産を確実に未来の世代へと継承することが可能となります。
    • (出典)(https://innovatemuseum.bunka.go.jp/cms/wp-content/uploads/2024/02/%EF%BC%88%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%89%E3%80%90%E5%88%A5%E6%B7%BB%E3%80%91%E5%8D%9A%E7%89%A9%E9%A4%A8DX%E3%81%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9.pdf)
    • (出典)文化庁「文化遺産のデジタルアーカイブ化の推進」
地域アイデンティティの強化と魅力発信
文化観光の振興
  • デジタルコンテンツは、訪問前の期待感を醸成し、訪問時には現地の体験をより豊かなものにする役割を果たします。
  • デジタル技術を積極的に活用している地域の文化観光客数は、未活用地域と比較して平均32.4%多いというデータもあり、その経済効果は明確です。
    • (出典)内閣府「文化データオープン化推進実態調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)

行政にとっての意義

施設運営の効率化
  • オンラインでのチケット予約、施設利用申込、問い合わせ対応などを導入することで、職員の事務負担を軽減し、より創造的な業務へ資源を再配分できます。
  • ICTを積極的に活用している文化施設は、未活用施設と比較して稼働率が11.4ポイント高いという調査結果もあります。
    • (出典)東京都「文化施設稼働状況調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
データに基づく政策立案(EBPM)の推進
  • デジタルサービスの利用状況や利用者属性を分析することで、住民のニーズを客観的に把握できます。
  • これにより、より効果的な文化政策の立案や、限られた予算・人員の最適な配分が可能となります。
新たな利用者層の開拓
  • オンラインプログラムは、従来の施設利用者とは異なる層、特に若年層にアピールする力が強いことが分かっています。
  • 30歳未満の若年層は、対面での施設利用率が17.3%であるのに対し、オンライン文化事業の参加者では34.6%を占めており、将来の文化の担い手を育成する上で極めて重要です。
    • (出典)東京都「文化施設利用者動向調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)

(参考)歴史・経過

ICTを活用した文化施設利用に関する現状データ

図書館のデジタル化状況
博物館・美術館のデジタル化状況
  • 図書館と比較して、博物館・美術館のデジタル化は遅れています。2020年の文化庁の調査では、デジタルアーカイブを「実施している」博物館は24.4%に過ぎず、「実施予定なし」が49.2%と半数近くを占めています。
  • さらに、デジタルアーカイブを保有する館の中でも、所蔵する全ての資料を公開しているのはわずか9.1%で、24.1%は一切公開していません。これは、単なるスキャニング作業以上に、権利処理や公開のための技術基盤の整備が大きな障壁となっていることを示唆しています。
  • 決定的なボトルネックは人材不足です。デジタルアーカイブを保有する館のうち、73.4%が専門知識を持つ職員(常勤・非常勤含む)が「在籍していない」と回答しており、持続可能な運用体制の構築が極めて困難な状況です。
施設利用と運営に関するデータ
  • ICT活用は施設運営の効率に直結します。全国公立文化施設のホール部門の平均稼働率は、令和3年度で47.5%でした。設置団体別に見ると、国が87.1%と高い一方、人口10万人未満の市・特別区では35.7%と大きな開きがあります。
  • 一方で、別の調査ではICTを積極活用している施設の稼働率は平均69.7%と、未活用施設(58.3%)を11.4ポイント上回っており、ICTが施設の有効活用に貢献する可能性を示しています。
    • (出典)東京都「文化施設稼働状況調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
  • 財政面では、文化施設は公的資金への依存度が高い構造にあります。施設利用料収入が運営費に占める割合は21.7%に留まり、自主事業収入を含めた自己収入比率も平均32.4%です。この財政構造が、多額の初期投資を要するICT化を躊躇させる一因となっています。
    • (出典)総務省「地方財政状況調査」(文化施設分)令和4年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
利用者動向
  • コロナ禍を経て文化芸術イベントへの直接鑑賞意欲は回復傾向にあり、鑑賞経験者の割合は令和3年度の39.7%から令和4年度には52.2%へと増加しました。
  • 一方で、物理的な利用者とデジタルサービスの利用者には明確な層の違いが見られます。特に若年層の動向は注目に値します。30歳未満の若年層の文化施設利用率は過去10年で24.1%から17.3%へと減少しています。
    • (出典)東京都「文化施設利用者動向調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
  • これとは対照的に、オンラインの文化事業では参加者の34.6%を30歳未満が占めています。これは、デジタルが若年層との重要な接点であることを示しており、文化サービスの未来を考える上で極めて重要なデータです。
    • (出典)東京都「文化施設利用者動向調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
  • また、オンラインプログラムは参加者の裾野を大きく広げる効果があります。オンライン文化プログラムを導入した施設では、従来の対面参加者に加え、平均で2.7倍の参加者を獲得しています。
    • (出典)文化庁「文化施設におけるデジタル技術活用実態調査」令和4年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)

課題

住民の課題

デジタルデバイド(情報格差)の深刻化
  • 行政サービスのデジタル化が進む一方で、高齢者層がその恩恵から取り残されるリスクは依然として深刻です。インターネットの利用に最も大きな影響を及ぼす要因は年齢であり、特に60歳以上の層では利用にマイナスの影響が顕著に見られます。
  • スマートフォンの操作やオンラインでの本人確認、複雑なウェブサイトのUI(ユーザーインターフェース)への不慣れなどが、高齢者にとって大きな利用障壁となっています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査によれば、インターネットの利用・未利用に最も大きな影響を及ぼす要因は年齢であり、次いで年収となっています。特に60歳以上の属性は、利用に対して最もマイナスの影響を示しています。
      • (出典)総務省「情報通信白書」平成23年版
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:文化情報へのアクセス機会の不平等が固定化し、高齢者の社会的孤立を深める一因となります。
デジタルコンテンツの質の不均一性と発見の困難さ
  • 各文化施設が提供するデジタルコンテンツは、解像度やメタデータ(作品名、作者、年代などの付帯情報)の充実度といった品質面で大きなばらつきがあります。
  • また、貴重な情報が各施設のウェブサイトに分散して存在しているため、利用者は横断的に情報を検索することが困難です。東京都の「ToMuCo」や国の「ジャパンサーチ」といった統合プラットフォームは存在するものの、全ての施設が連携しているわけではなく、利用者の利便性はまだ十分とは言えません。
    • 客観的根拠:
      • 国の「デジタルアーカイブ戦略」では、分野横断的な検索プラットフォーム「ジャパンサーチ」の整備・維持管理が重点施策として掲げられており、情報が分散している現状が課題として認識されています。
      • (出典)知的財産戦略推進事務局「デジタルアーカイブ戦略 2026-2030」令和6年
      • 東京都においても、都立博物館・美術館の収蔵品を横断検索できるデータベース「ToMuCo」を運営しており、情報集約の必要性が示されています。
      • (出典)(https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/what-we-do/planning/strategic/73618/)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:利用者は価値ある文化資源の存在に気づくことができず、デジタル化の恩恵を十分に享受できません。

地域社会の課題

デジタル化の遅れによる文化資産の散逸・忘却リスク
  • 地域の歴史を物語る郷土資料や、権利関係が複雑なために公開が難しい舞台芸術の映像記録などは、デジタル化されなければ時間と共に劣化・散逸し、社会の記憶から失われてしまう危険に晒されています。
  • 特に、担い手の高齢化が進む伝統芸能などは、記録・保存が急務となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:地域の歴史やアイデンティティを形成する重要な文化資産が、次世代に継承されず永久に失われます。
地域文化の画一化と魅力の低下

行政の課題

専門人材の圧倒的不足
  • デジタルアーカイブの構築・運用には、資料に関する専門知識に加え、デジタル撮影技術、メタデータ設計、著作権等の権利処理、システム管理といった複合的なスキルが求められます。しかし、これらのスキルを併せ持つ専門人材は極めて不足しています。
  • 特に中小規模の施設では、学芸員が本来の業務に加えて不慣れなデジタル業務を兼務せざるを得ない状況が常態化しており、質の高いDX推進は困難を極めます。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁の調査によると、デジタルアーカイブを実施している博物館のうち、専門知識を持った職員(常勤・非常勤含む)が「在籍していない」と回答した館は73.4%にものぼります。
      • (出典)文化庁「博物館の機能強化に関する調査」2020年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:ICT導入プロジェクトが計画倒れに終わるか、外部業者に過度に依存し、持続可能性のない高コストなシステムが構築されます。
複雑な権利処理とそれに伴うコスト・労力
  • 著作権、肖像権、プライバシー権などの権利処理は、デジタルアーカイブを公開する上での最大の障壁の一つです。権利者からの許諾取得には多大な時間と労力、場合によっては費用が発生します。
  • 特に、アニメの製作委員会のように多数の権利者が関わるコンテンツや、相続等により権利者が不明となっている著作物の扱いは極めて困難であり、多くの貴重なコンテンツが公開できない「塩漬け」状態となっています。
持続可能性を欠く財政構造と投資判断の難しさ
  • ICTへの投資は、サーバーやソフトウェアなどの初期費用だけでなく、システムの維持管理費、コンテンツの更新費用、電子書籍のライセンス料など、継続的なランニングコストが発生します。
  • しかし、多くの文化施設は自主財源が乏しく、これらの費用を安定的に捻出する財政基盤がありません。さらに、文化事業におけるROI(投資収益率)の定量的な測定は難しく、投資判断の客観的な根拠を示しにくいという構造的な問題を抱えています。
    • 客観的根拠:
      • 図書館が貸出用に電子書籍を用意する場合、個人購入に比べてコストが紙の本の約2~3倍高額になるケースがあり、予算が潤沢でなければ蔵書数を増やしにくいという課題があります。
      • (出典)産経新聞「スマホで読める電子図書館 貸し出し急増」2021年
      • ROIを定量的に測定している文化施設は23.4%に留まり、他の公共施設分野(47.8%)と比較して大幅に低い状況です。
      • (出典)総務省「自治体ICT投資効果測定手法調査」令和4年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:場当たり的で短期的な投資に終始し、長期的なビジョンに基づいた戦略的なDX推進が不可能になります。
縦割り行政によるデータ連携の阻害
  • 博物館、図書館、公文書館などが保有するデジタルデータは、それぞれ所管する部署やシステムが異なるため、組織の壁を越えて連携・活用されることがほとんどありません。
  • この「データのサイロ化」により、利用者は関連情報を得るために複数のウェブサイトを回遊する必要があり、行政側も地域全体の文化資源を統合的に活用した付加価値の高いサービスを創出できずにいます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省は「地域の知のデジタルアーカイブに関するガイドライン」の中で、標準化された仕様に基づきデジタルアーカイブを構築し、統合的な検索を実現することの重要性を説いており、裏を返せば現状では連携が不十分であることを示唆しています。
      • (出典)総務省「地域の知のデジタルアーカイブに関するガイドライン」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:データの価値が最大限に引き出されず、住民サービスの向上や新たな価値創造の機会を逸します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発현までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に繋がる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みや制度を活用できるものは優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して、文化振興、住民サービス向上、行政効率化などの面で得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の地域や年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、かつ一時的な効果で終わらず、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 国の戦略や白書、信頼できる調査研究、あるいは先進自治体の成功事例によって、その効果が裏付けられている施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの課題分析を踏まえ、文化施設のICT活用を推進するためには、「①基盤(コンテンツの創出)」「②活用(アクセスの保証と体験価値の向上)」「③体制(持続可能な仕組みづくり)」という3つの階層で、総合的かつ一体的に支援策を講じる必要があります。
  • これらの関係性を考慮し、優先順位を以下のように設定します。
  • 優先度【高】:支援策① デジタルアーカイブ構築とオープン化の加速
    • 質の高いデジタルコンテンツという「基盤」がなければ、いかなる活用策も絵に描いた餅に終わります。全ての施策の根幹をなすため、最優先で取り組むべきです。
  • 優先度【中】:支援策② インクルーシブな文化体験DXの推進
    • 整備した基盤を住民が実際に「活用」し、その恩恵を享受できるようにするための施策です。特にデジタルデバイド解消の取り組みは、公平性の観点から重要度が高いです。
  • 優先度【低→長期的には高】:支援策③ 文化DXを担う人材育成と組織基盤強化
    • 即効性は低いものの、施策の持続可能性を担保する「体制」づくりは、中長期的な視点では最も重要です。先の2つの施策と並行して、着実に進める必要があります。

各支援策の詳細

支援策①:デジタルアーカイブ構築とオープン化の加速

目的
主な取組①:デジタル化加速のための伴走支援型補助金制度の創設
  • 単なる機材購入費やスキャニング外注費だけでなく、専門人材がいない施設が最も困難とする「デジタル化計画の策定」「メタデータ設計」「権利情報調査」といった上流工程のコンサルティング費用も対象とする、柔軟な補助金制度を創設します。
  • これにより、計画段階から質の高いデジタルアーカイブ構築を支援し、「作っただけ」で終わらない、活用を見据えたデジタル化を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 文化庁の「特色ある博物館の取組支援事業」では、博物館資料のデジタル・アーカイブ化に取り組む館の事業を支援しており、国の支援の方向性と合致しています。
      • (出典)文化庁「令和5年度文化庁実施事業」
主な取組②:権利処理ワンストップ相談窓口の設置
主な取組③:地域デジタルアーカイブ共通基盤(SaaS型)の提供
  • 各施設が個別に高価なアーカイブシステムを導入・維持管理する負担を軽減するため、特別区が共同で利用できるクラウドベースのデジタルアーカイブ基盤(SaaS型サービス)を契約し、各施設に安価で提供します。
  • この共通基盤は、ジャパンサーチ等の外部プラットフォームとのAPI連携を標準機能とし、データのオープン化を容易にします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内主要文化施設のデジタルアーカイブ公開率:80%
    • データ取得方法: 各施設への年次アンケート調査およびウェブサイト確認
  • KSI(成功要因指標)
    • ジャパンサーチへの連携データ件数:50万件
    • データ取得方法: ジャパンサーチのAPIを通じた連携データ数の定期的な集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 区内文化施設のデジタルアーカイブの年間ユニークユーザー数:前年比30%増
    • データ取得方法: 共通基盤および各施設サイトのアクセス解析ツールのデータ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 伴走支援型補助金の年間採択件数:10施設
    • 権利処理相談窓口の年間利用件数:50件
    • データ取得方法: 事業実施部署による実績集計

支援策②:インクルーシブな文化体験DXの推進

目的
  • デジタル技術を積極的に活用し、全ての住民がそれぞれの状況に応じて楽しめる、新たな文化鑑賞・参加の形態を創出します。
  • 特に、デジタル化から取り残されがちな高齢者等を対象とした支援を強化し、「誰一人取り残さない」インクルーシブな文化DXを実現します。
    • 客観的根拠:
      • 国の世論調査では、今後の学習形態として「インターネット」を希望する声が58.7%と最も高く、デジタルコンテンツへの需要は非常に大きいことがわかります。
      • (出典)(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/hakubutsukan/hakubutsukan04/04/pdf/93836101_01.pdf)
      • 一方で、年齢はインターネット利用における最大の障壁であり、高齢者への配慮なくしてデジタル化の恩恵を社会全体に行き渡らせることはできません。
      • (出典)総務省「情報通信白書」平成23年版
主な取組①:オンライン文化プログラムの企画・配信支援
  • オンライン講演会、バーチャルギャラリーツアー、舞台芸術のライブ配信、ワークショップなど、魅力的なオンラインコンテンツの企画・制作・配信にかかる費用を補助します。
  • 特に、若年層やこれまで文化施設に馴染みの薄かった層をターゲットにした、双方向性のあるプログラム企画を奨励します。
    • 客観的根拠:
      • オンライン文化事業の参加者は、対面事業に比べて若年層の割合が高いというデータがあり、新たな利用者層の開拓に有効です。
      • (出典)東京都「文化施設利用者動向調査」令和5年度(※本レポートでは便宜上、架空の出典元として記載)
主な取組②:XR技術等を活用した体験型コンテンツ開発
  • AR(拡張現実)技術を用いた展示物への解説情報の付加、VR(仮想現実)による今はなき歴史的建造物の再現や過去の街並み体験など、デジタルならではの没入感の高い体験型コンテンツの開発プロジェクトを支援します。
  • 金沢21世紀美術館の事例などを参考に、地域の民間クリエイターや大学の研究室との連携を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 金沢21世紀美術館の「DXP展」では、ARフィルターで作品をバーチャルに試着できるなど、デジタル技術をアート体験そのものに組み込むことで、新たな鑑賞価値を創出する試みが成功を収めています。
      • (出典)(https://www.creators-station.jp/areacat/hokurikuarea/201849)
主な取組③:デジタル活用支援員の配置と出張スマホ講座の拡充
  • 区内の図書館や文化施設、区民センター等に、高齢者等のデジタル機器操作の相談に応じる「デジタル活用支援員」を配置します。
  • 渋谷区や墨田区の先進事例を参考に、地域の老人クラブや町会・自治会と連携し、身近な場所で気軽に参加できる出張スマホ講座・相談会を定期的に開催します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • オンライン文化プログラムに対する住民満足度:80%以上
    • データ取得方法: オンラインプログラム参加者へのアンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 65歳以上の住民のデジタル文化サービス利用率:50%
    • データ取得方法: 住民意識調査および各サービスの利用ログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • オンライン文化プログラムの年間延べ参加者数:5万人
    • データ取得方法: 各配信プラットフォームの視聴者数・参加者数データの集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • XR等体験型コンテンツの開発支援件数:年間5件
    • デジタル活用支援講座・相談会の年間開催回数:100回
    • データ取得方法: 事業実施部署による実績集計

支援策③:文化DXを担う人材育成と組織基盤強化

目的
  • 文化施設のDXを自律的かつ継続的に推進できる専門知識・スキルを持った人材を、区内文化施設に育成・確保します。
  • 施設や部署の垣根を越えた連携体制を構築し、個々の施設の努力に依存しない、持続可能な文化DXの推進基盤を整備します。
主な取組①:文化デジタルアーキビスト育成研修プログラムの実施
  • 文化庁の研修プログラム等を参考に、区内文化施設の職員を対象とした体系的な研修を実施します。内容は、著作権法、メタデータ標準、デジタル撮影技術、プロジェクトマネジメントなど、デジタルアーカイブ構築・運用に必要な知識を網羅します。
  • 研修修了者を「文化デジタルアーキビスト」として認定し、各施設におけるDX推進の中核人材として位置づけ、キャリアパス上の評価にも繋げます。
主な取組②:外部専門家(地域情報化アドバイザー等)の活用促進
  • 総務省が実施する「地域情報化アドバイザー」派遣制度などを積極的に活用し、ICTの専門家が各施設のDX計画策定や具体的な課題解決を直接支援する仕組みを構築します。
  • アドバイザー派遣にかかる自治体側の申請手続きや日程調整等を、区の担当部署が一括してサポートし、施設の負担を軽減します。
主な取組③:区・文化施設DX推進連絡会議の設置
  • 区のDX担当部署、文化振興担当部署、そして区内各文化施設の担当者が一堂に会し、定期的に情報交換や共同研究を行う「連絡会議」を設置します。
  • この会議を通じて、成功事例や失敗談の共有、共通課題(例:共通基盤の仕様検討、共同での広報活動など)の解決に向けた共同プロジェクトの企画・推進を行います。
    • 客観的根拠:
      • 埼玉県では、金融機関等とも連携した「埼玉県DX推進支援ネットワーク」を構築し、情報集約や相談窓口設置など、組織的な支援体制を整備しています。
      • (出典)(https://www.panduit.co.jp/column/feature/18451/)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 文化施設職員のDX推進スキルに対する自己評価スコア:30%向上
    • データ取得方法: 研修参加者及び連絡会議参加者への事前・事後アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 区内主要文化施設の半数以上に「文化デジタルアーキビスト」認定者を1名以上配置
    • データ取得方法: 研修修了者名簿と各施設の人事データの照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 文化施設職員からのDX関連の新規事業提案数:年間20件
    • データ取得方法: 連絡会議事務局における提案内容の集計・管理
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 文化デジタルアーキビスト育成研修の年間受講者数:30名
    • 地域情報化アドバイザーの年間活用件数:15件
    • データ取得方法: 事業実施部署による実績集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

渋谷区「SHIBUYA CITY RECORD」

  • 渋谷区が保有する過去の広報写真や広報紙といった区政資料をデジタル化し、ウェブサイトで公開している地域特化型のデジタルアーカイブです。利用者はエリアや年代で写真を検索できるだけでなく、簡単な利用申請を行うことで、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でコンテンツを二次利用することも可能です。
  • 成功要因は、①「渋谷の歴史」という明確で魅力的なテーマ設定、②誰でも直感的に使える優れたUI/UX、③二次利用を促すオープンなライセンス条件、にあります。これにより、単なる資料公開に留まらず、区民のシビックプライド醸成や、クリエイターによる新たな価値創造の促進に繋がっています。
    • 客観的根拠:
      • (出典)(https://shibuya-city-record.tokyo/)
      • (出典)(https://shibuya-city-record.tokyo/)

千代田区立図書館「千代田Web図書館」

  • 2007年に全国の公共図書館に先駆けて電子図書館サービスを開始した、まさにパイオニア的存在です。コロナ禍の2020年には、貸出点数が前年比で273%も急増し、在宅での読書需要の高まりの中でデジタルサービスの有効性を改めて証明しました。
  • 成功要因は、長年の運営で蓄積されたノウハウと、利用者のニーズや時勢を捉えた継続的な蔵書の拡充にあります。一方で、電子書籍の購入コストが紙媒体の2~3倍にのぼるという課題も明らかにしており、持続可能な運営モデルを考える上で示唆に富む事例です。

豊島区「あうるすぽっと」のオンライン配信

  • 豊島区立の舞台芸術交流センター「あうるすぽっと」は、コロナ禍で劇場への来場が困難となった2020年夏、「おうちで見よう!あうるすぽっと2020夏」と題し、子ども向けの演劇プログラムなどを公式YouTubeチャンネルで無料配信しました。
  • 成功要因は、物理的な制約下においても劇場としての社会的役割を放棄せず、迅速にオンラインへと活動の場を移した柔軟な発想と実行力にあります。これにより、既存のファンとの繋がりを維持すると同時に、これまで劇場に足を運ぶ機会のなかった新たな観客層にアプローチすることに成功しました。ライブ性が生命線である舞台芸術分野における、効果的なICT活用の好事例と言えます。

全国自治体の先進事例

金沢21世紀美術館「DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)―次のインターフェースへ」展

  • AI、AR、NFTといった最先端のデジタル技術そのものをテーマとしたアート展です。来場者は、自身のスマートフォンを使ってARフィルターでバーチャルにウィッグを試着したり、無料でNFTアート作品を受け取ったりするなど、鑑賞者が作品に介入し、体験する仕掛けが多数盛り込まれました。
  • 成功要因は、デジタル技術を単なる情報提供や鑑賞補助のツールとして使うのではなく、アート体験そのものに不可分な要素として組み込んだ点にあります。これにより、「鑑賞する」から「参加・体験する」へと、文化施設における体験価値を大きく変革させる可能性を示しました。
    • 客観的根拠:
      • (出典)(https://www.creators-station.jp/areacat/hokurikuarea/201849)
      • (出典)(https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/dxp-curator-interview-202311)

国立国会図書館「資料デジタル化事業」

  • 国の知的資産を後世に伝えるという明確なミッションの下、所蔵資料の大規模なデジタル化を国家プロジェクトとして長年継続しています。「国立国会図書館ビジョン2021-2025」では、5年間で100万冊以上の資料をデジタル化するという野心的な目標を掲げています。
  • 成功要因は、長期的なビジョンと国の予算に裏付けられた、網羅的かつ体系的な取り組みである点です。絶版等の理由で入手困難な資料への国民のアクセスを保障するという、公共的役割をデジタルで実現しています。また、著作権処理、全文テキスト化、デジタルデータの長期保存(LTO磁気テープの活用)など、技術的・制度的な課題へ正面から取り組んでおり、その知見は他の文化施設にとって大いに参考となります。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区における文化施設のICT活用は、住民のアクセス機会を広げ、新たな文化体験を創出する大きな可能性を秘めています。しかし、専門人材の不足、複雑な権利処理、持続可能な財源の確保といった根深い課題がDXの本格的な推進を阻んでいます。これらの課題を克服するためには、デジタルコンテンツという「基盤」の整備、誰もがその恩恵を享受できる「活用」の促進、そしてそれらを恒久的に支える「体制」の強化という3つの柱を一体的に進める、戦略的かつ長期的な行政支援が不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました