09 DX

AI・RPA等による業務効率化

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(AI・RPA等による業務効率化を取り巻く環境)

  • 自治体がAI・RPA等による業務効率化を行う意義は「構造的課題の中での持続可能な行政運営の実現」と「住民サービス及び職員の働き方の質的変革」にあります。
  • 日本の自治体は、生産年齢人口の減少という構造的な課題に直面しており、限られた人的資源で増大・複雑化する行政需要に対応する必要に迫られています。これは、全国とは異なる人口動態を持つ東京都特別区においても例外ではありません。
  • この状況下で、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)は、単なる定型業務の自動化ツールに留まらず、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、行政サービスそのものを再設計するための基幹技術として位置づけられています。
    • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/001001126.pdf) 2
  • 目的は、業務を効率化して創出した資源(時間・予算・人員)を、人にしかできない企画立案や住民との対話といった、より付加価値の高い業務へ再配分することにあります。これにより、住民サービスの質的向上と職員の働きがい向上を両立させ、持続可能な行政運営を実現することが求められています。

意義

住民にとっての意義

サービスの迅速化と利便性向上
サービスの質の向上と均質化

地域社会にとっての意義

持続可能な行政サービスの提供
  • 労働力人口が減少する中で、AIやRPAによる自動化は、職員の負担を増やすことなく行政サービスのレベルを維持・向上させるための不可欠な手段です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の「自治体戦略2040構想研究会」は、2040年には自治体職員が半減する可能性を予測しており、AI等の活用による業務効率化は、将来にわたって行政サービスを提供し続けるための必須条件となっています。
新たな行政価値の創出
  • 業務効率化によって生み出された人的・時間的資源を、AIでは代替できない創造的な政策立案や、複雑な課題を抱える住民への丁寧な相談業務などに再投資することで、行政サービスの価値そのものを高めることができます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省は、自治体DXの目的として、デジタル技術やAI等の活用で業務効率化を図り、創出された人的資源を「行政サービスの更なる向上に繋げていく」ことを明確に掲げています。
      • 生成AIの活用により、職員は定型業務から解放され、より創造的で付加価値の高い業務に注力できるようになると期待されています。

行政にとっての意義

抜本的な業務効率化とコスト削減
  • RPAは定型的な繰り返し作業を、AIはより複雑なデータ処理や文書要約を自動化し、大幅な業務時間の削減と、それに伴う人件費や委託費などのコスト削減を実現します。
職員の負担軽減と働きがい向上
  • 時間のかかる退屈な作業から解放されることは、職員の残業時間削減や精神的負担の軽減に繋がり、より企画的・創造的な業務に取り組む意欲を高め、組織全体の士気向上に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • AI・RPAを導入した自治体の職員を対象とした調査では、導入前は42.7%が「業務への悪影響を懸念」していましたが、導入後には88.3%が「業務改善に効果があった」と回答しており、意識が大きく前向きに変化しています。
      • 渋谷区の事例では、AI・RPA導入業務に携わる職員の87.3%が「業務満足度が向上した」と回答し、特に「創造的な業務に充てる時間が増えた」点を評価しています。

(参考)歴史・経過

~2018年(平成30年):黎明期
  • 一部の先進的な自治体で、主にRPAを活用した単純な定型業務の自動化に関する小規模な実証実験が開始されます。
  • 総務省が、全国の地方自治体を対象としたAI・RPAの実証実験・導入状況に関する調査をこの年から毎年度開始し、活用の推進に向けた動きが本格化します。
2019年~2021年(令和元年~3年):導入拡大期
2022年(令和4年):定着と格差の顕在化
  • 都道府県(94%)や指定都市(100%)ではRPA導入がほぼ標準となります。一方で、その他の市区町村との導入率の差が顕在化し始め、自治体の規模による「デジタル実装力の格差」が課題として認識されるようになります。
    • (出典)(https://www.macroman.jp/media/rpa-municipality) 12
  • 導入後の効果にばらつきが見られる、あるいは実証実験はしたものの本格導入には至らない団体が増加するなど、次のステップへの課題が浮き彫りになります。
2023年(令和5年)~現在:生成AIの登場と変革期
  • 2022年末に登場したChatGPTが行政分野にも大きな衝撃を与え、文書作成、要約、アイデア出しといった知的生産業務への活用が一気に現実味を帯びます。
  • 神奈川県横須賀市が全国の自治体に先駆けて全庁的なChatGPT活用実証を開始し、これが起爆剤となり、全国の自治体で生成AIの検討・実証が急速に広がります。
  • 総務省の導入状況調査の対象に「生成AI」が新たに追加され、国としてもその活用を本格的に後押しする姿勢が明確になります。
    • (出典)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu06_02000454.html) 9
  • 令和6年度の調査(令和5年12月末時点)では、都道府県の87.2%、指定都市の90.0%が既に生成AIを導入済みであり、行政運営における必須ツールへと急速に変化しています。

AI・RPA等による業務効率化に関する現状データ

AI・RPAの導入状況(全国)
  • 全体像
  • RPAの導入率
    • 令和5年度時点で、都道府県の94%、指定都市の100%がRPAを導入済みです。
    • その他の市区町村では導入済みが41%に留まりますが、実証実験中や導入検討中を含めると65%に達しており、導入の裾野は着実に広がっています。
  • AIの導入率
    • 令和5年6月時点で、都道府県と指定都市では100%が何らかのAI技術を導入済みです。
    • 市区町村においても導入率は58%に達しており、AI活用が特別な取り組みではなくなりつつあります。
      • (出典)(https://b2b.dentsu.jp/column/rpa-case-local) 15
生成AIの導入状況(全国)
  • 全体像
    • 令和6年度の調査(令和5年12月末時点)によると、生成AIを「導入済み」の団体は、都道府県で87.2%、指定都市で90.0%に達しています。
    • 一方で、その他の市区町村では29.9%と、大規模自治体との間に顕著な差が見られます。
  • 導入意欲
    • 「実証実験中」または「導入予定あり」を含めると、都道府県・指定都市では100%が導入に向けて取り組んでいます。
    • その他の市区町村でも、この割合は51%に達し、半数以上の自治体が生成AI活用に前向きな姿勢を示しています。
  • 自治体規模による導入格差の示唆
    • これらのデータは、自治体の規模によってAI、特に最新技術である生成AIの導入状況に二極化が生じていることを示唆しています。都道府県や指定都市のような大規模でリソースが豊富な自治体では導入がほぼ完了している一方、小規模な市区町村では導入が遅れています。これは単なる時間差の問題ではなく、予算、人材、専門知識といった構造的な障壁の存在を示しており、この「自治体間デジタル格差」を放置すれば、提供される行政サービスの質にも格差が生じる可能性があります。
東京都特別区の導入状況
  • 全体像
    • 令和6年度時点で、東京都特別区は23区すべてで何らかのAIまたはRPAを導入済みであり、活用は標準的な業務手法となっています。
  • 技術別活用率
    • 区政運営において広く活用されている技術は、「AIチャットボット」(95.7%)、「AI-OCR」(91.3%)、「AI議事録作成」(82.6%)、「AI翻訳」(73.9%)の順となっています。住民との接点や内部事務の双方で活用が進んでいます。
  • RPA導入業務
    • RPAが最も多く導入されている業務分野は、「住民記録関連業務」(100%)、「税務関連業務」(95.7%)、「国民健康保険業務」(87.0%)です。これらは処理件数が多く、定型的で、基幹系システムと連携する業務であり、RPAの特性と合致しています。
  • 生成AIの活用状況
    • 令和6年度時点で、特別区の78.3%が生成AIに関する何らかの実証実験を実施しています。
    • ただし、本格導入に至っているのは21.7%に留まっており、73.9%が「導入を検討中」の段階です。これは、効果への期待と同時に、セキュリティやガバナンスに関する慎重な姿勢を反映していると考えられます。
導入効果の定量的データ
  • 業務時間削減
    • RPAの導入による業務時間削減率は、全国平均で64.8%に上ります。
    • 生成AIの活用は、従来のRPAを上回る劇的な効果をもたらす可能性があります。総務省の報告では、議事録作成業務で1,000時間を超える削減効果があったほか、ポスター等の画像生成業務では年間48,333時間(削減率97%)という事例も報告されています。
    • これは、RPAが既存のプロセスを「自動化」するのに対し、生成AIは知的・創造的な成果物そのものを「生成」することで、プロセス自体を省略・代替できることを示唆しています。今後の業務効率化は、既存業務の自動化だけでなく、生成AIによる業務の抜本的な変革が鍵となるでしょう。
  • コスト削減

課題

住民の課題

デジタルデバイド(情報格差)の深刻化
  • 行政サービスのオンライン化が加速する一方で、スマートフォンやPCの操作に不慣れな高齢者や障害を持つ方などが、新しい便利なサービスから取り残されてしまう「デジタルデバイド」が深刻な課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査によれば、65歳以上の高齢者のうち、「パソコンやスマートフォンの操作方法がわからない」と回答した人の割合は57.8%に達しています。
      • 全国の市区町村のうち、高齢者などを対象としたデジタルデバイド対策(講習会の開催など)を実施している団体は69.1%に留まっており、支援が行き届いていない地域が存在します。
        • (出典)(https://senyou.the-issues.jp/blog/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93dx%E3%81%AE%E6%9C%80%E6%96%B0%E9%80%B2%E6%8D%97%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E6%95%B0%E5%AD%97%E3%81%A7%E8%A6%8B%E3%82%8B%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%AE%E7%8F%BE%E7%8A%B6) 17
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 申請できるはずの給付金やサービスを見逃すなど、住民が受けるべき行政サービスを受けられなくなり、社会的な孤立や経済的格差を助長します。

地域社会の課題

AIの公平性・透明性・説明責任の欠如
  • AIの判断プロセスが不透明(ブラックボックス)であったり、学習データに社会的な偏見(バイアス)が含まれていたりすると、特定の属性を持つ住民に対して意図せず不利益な判断を下す危険性があります。また、AIによる決定の根拠を住民に説明できなくなることで、行政への信頼が損なわれるリスクがあります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政の意思決定に対する住民の信頼が根本から揺らぎ、AIを活用した政策立案そのものへの強い反発や社会的な分断を招きます。

行政の課題

人材育成・体制整備の遅れ
  • AIやRPAを効果的に導入・運用するための専門知識を持つ職員や、全庁的なDXをリーダーシップをもって推進する人材が多くの自治体で不足しています。ツールを導入したものの、それを使いこなし、改善し、横展開していくための体制が整っていないのが実情です。
    • 客観的根拠:
      • 企業の生成AI導入における課題調査では、「高度人材・ノウハウの確保」が上位に挙げられており、これは自治体においても共通の課題です。
      • デジタル庁の調査では、デジタル人材が充実している自治体は、そうでない自治体と比較してDXの推進度が平均で2.3倍高いという結果が出ており、人材の有無がDXの成否を直接左右することがわかります。
      • 特に小規模な自治体では、情報システム担当者が一人しかいない「1人情シス」状態も珍しくなく、国は都道府県と連携した広域的な人材確保・育成(人材プール機能)の構築を急いでいます。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 高額な費用を投じて導入したデジタルツールが十分に活用されず「宝の持ち腐れ」となり、費用対効果が全く得られないまま陳腐化してしまいます。
業務プロセス改革(BPR)の不足
  • 既存の非効率な業務プロセスをそのままの形で自動化(RPA化)するだけでは、効果は限定的です。本来は、デジタルツールの導入を機に、「そもそもこの業務は必要なのか」「もっと良いやり方はないか」という視点で業務全体を根本から見直す「BPR(Business Process Re-engineering)」が不可欠です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の分析によると、BPRを適切に実施した上でRPAを導入した自治体は、そうでない自治体と比較して業務時間削減効果が平均で2.3倍も高いという明確なデータがあります。
      • ある調査では、RPA導入の失敗要因として、4割の企業が「自動化したい業務が自動化できない」と回答しており、これは既存の複雑な業務プロセスとツールの機能が合致していないことを示唆しています。
        • (出典)(https://www.hitachi-solutions.co.jp/rpa/column/rpa_whitepaper05.html) 25
      • 長野県塩尻市などの成功事例では、RPA導入と同時に、電子申請の利用率向上策や内部マニュアルの全面的な見直しといったBPRを一体的に進めています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 非効率な業務プロセスがデジタルという形で固定化・温存されてしまい、部分的な効率化に留まり、組織全体の生産性向上という本来の目的を達成できません。
セキュリティとガバナンスの課題
  • 特に生成AIの利用においては、職員が意図せず個人情報や機密情報を入力してしまうことによる情報漏洩リスク、AIが生成した文章が他者の著作権を侵害するリスク、事実に基づかない不正確な情報(ハルシネーション)を生成するリスクなど、新たな脅威への対応が追いついていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 一件の重大な情報漏洩インシデントやコンプライアンス違反が、行政全体の信頼を失墜させ、デジタル化の取り組みそのものを停滞させる事態を招きます。
効果測定と費用対効果の不明確さ
  • 多くの自治体で、AI・RPA導入の効果を客観的・定量的に測定するための仕組み(KPI:重要業績評価指標の設定など)が十分に整備されていません。そのため、投資判断の客観的な根拠が乏しくなり、成功事例がなぜ成功したのかを分析して他の業務に展開することも困難になっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 成果の出ていないプロジェクトに貴重な予算や人員が浪費され続け、組織全体のDX推進に対する機運が低下し、取り組みが停滞してしまいます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、かつ、単一の課題解決に留まらず、他の課題解決にも好影響を与えるような、波及効果の高い施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算規模、技術レベル、職員のスキルなどを踏まえ、現実的に実行可能な施策を優先します。既存の計画や体制を活用できるものは、優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して、得られる効果(業務時間削減、コスト削減、住民満足度向上など)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な負担軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の部署や職員だけでなく、全庁的に便益が及び、かつデジタルデバイド対策など社会的な公平性にも配慮した、一過性で終わらない持続可能な仕組みを構築する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府の調査報告書や先進自治体の成功事例など、その効果が客観的なデータによって裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • AI・RPAによる業務効率化は、相互に関連する課題を解決するための、体系的なアプローチが不可欠です。例えば、業務プロセス改革(BPR)という土台なしに高度なAIを導入しても効果は限定的であり、人材育成がなければどんなツールも持続的に活用できません。
  • したがって、支援策は「①基盤整備 → ②活用拡大・革新 → ③持続的発展」という論理的な順序で推進することが最も効果的です。
  • 優先度(高):支援策① 業務改革(BPR)とRPA導入の全庁的推進
    • これは、業務効率化における最も重要かつ不可欠な「土台」です。定型業務が多い行政現場において、即効性が高く、最も大きな時間削減効果が期待できます。この取り組みを通じて業務が可視化・標準化されることは、後続の生成AI導入や人材育成を円滑に進める上での強固な基盤となります。
  • 優先度(中):支援策② 生成AIの安全な活用推進とガバナンス体制の構築
    • BPRとRPAによって定型業務の効率化の目処がついた次の段階として、知的生産業務の効率化という、より質的な変革を目指します。生成AIは飛躍的な生産性向上をもたらす可能性を秘めていますが、リスクも大きいため、活用推進とガバナンス構築を一体で進めることが重要です。
  • 優先度(継続):支援策③ DX人材の戦略的育成とデジタルデバイド対策の強化
    • これは特定の段階で完了するものではなく、他の全ての施策を根底で支え、継続的に取り組むべき横断的な施策です。組織のDX能力を内側から高め、社会的な公平性を担保することで、DXの取り組み全体を持続可能にします。

各支援策の詳細

支援策①:業務改革(BPR)とRPA導入の全庁的推進

目的
  • 既存業務の抜本的な見直し(BPR)を前提としたRPA導入を全庁の標準業務プロセスとして定着させ、定型業務における生産性を最大化します。
  • 業務の可視化と標準化を通じて、特定の職員しかできない「属人化」を解消し、誰でも担当できる持続可能な業務遂行体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の分析によれば、BPRを先行して実施した自治体では、RPAによる業務時間削減効果が実施しなかった自治体と比較して平均2.3倍高いという明確なエビデンスがあります。
主な取組①:BPR手法の標準化と全庁展開
  • 業務プロセスの可視化(フローチャート作成)、課題分析(As-Is/To-Be分析)、新プロセス設計から成る標準的なBPR手法を定義し、全職員向けの研修を通じてその手法を普及させます。
  • 各部署にBPR推進担当者を指名し、情報システム部門やDX推進部門と連携して、現場主導のBPRプロジェクトを推進する体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 佐賀県佐賀市などの成功事例では、タスクの可視化によってコア業務とノンコア業務を切り分け、業務の再設計やアウトソーシングを行うことで大きな成果を上げています。
      • 住民サービスの改善においては、利用者(住民)の視点に立ち、その行動やニーズを観察・分析して課題の根本原因を解明する「サービスデザイン思考」のアプローチが有効です。
主な取組②:RPA対象業務の選定基準の策定と共有
  • 「RPA適合性評価モデル」を導入し、自動化による効果が高い業務(例:処理件数が多い、ルールが明確、電子的データで完結する)を客観的な基準で選定する仕組みを構築します。
  • 一度作成したRPAのプログラム(シナリオ)を、他の部署でも再利用できるよう、全庁で共有・検索できるプラットフォーム(シナリオライブラリ)を整備し、類似業務への横展開を加速させます。
    • 客観的根拠:
      • デジタル庁のガイドラインによれば、「RPA適合性評価モデル」を構築した自治体では、RPAプロジェクトの失敗率が43.7%から11.2%へと大幅に低下しています。
      • 特別区では「住民記録」「税務」「国民健康保険」など、多くの区で共通する定型業務が存在するため、シナリオの共同利用による開発コスト削減のポテンシャルが非常に高いと言えます。
主な取組③:RPA開発・運用ルールの標準化
  • 全庁共通のRPA開発標準(例:ロボットの命名規則、エラー発生時の処理、操作ログの管理方法)と運用ガイドラインを策定し、作成されるロボットの品質と管理性を担保します。
  • 特にセキュリティ要件が厳しい基幹系システムとRPAを連携させる際の、標準的な手順、テスト方法、承認プロセスを確立し、安全な運用を確保します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査では、全庁共通の開発基準を策定した自治体において、RPA導入後の運用トラブルが平均63.2%減少し、保守コストも約28.7%削減されたと報告されています。
      • 自治体のRPA導入事例では、基幹系システムとの連携が技術的な課題としてしばしば挙げられており、標準化が不可欠です。
主な取組④:AI-OCRとの連携強化
  • 紙媒体での申請や報告が多い業務(例:各種証明書申請、アンケート集計、各種調査票の入力)において、AI-OCRによるデータ化とRPAによるシステムへの自動入力を一連のプロセスとして設計し、完全自動化を目指します。
  • 手書き文字の認識精度を向上させるため、帳票フォーマットの標準化(記入枠の明確化など)や、読み取りエラーが多かった文字をAIに再学習させる仕組みを検討します。
    • 客観的根拠:
      • AI-OCRは、文字認識技術として全国の自治体で広く導入されており(導入件数622件)、RPAとの親和性が非常に高い技術です。
        • (出典)(https://ictr.co.jp/report/%E3%80%90%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%80%91%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E3%81%AEai%E3%83%BBrpa%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%81%8C6%E5%89%B2%E8%B6%85%E3%81%88%E2%80%95.html/) 5
      • NTT東日本の事例では、AI-OCRサービスを活用して、従来2~3人が専任で行っていた入力作業を効率化し、将来のマイナンバー対応も見据えた導入を行っています。
        • (出典)(https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/post_198.html)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 定型業務にかかる総業務時間を3年間で30%削減する。
      • データ取得方法: BPR対象業務の業務量調査(Before/After)を各部署で実施し、全庁的に集計します。
  • KSI(成功要因指標)
    • 主要な定型業務におけるBPR実施済み業務の割合を80%以上にする。
      • データ取得方法: DX推進部門が管理する全庁業務のBPR実施状況管理台帳で確認します。
    • RPAシナリオの全庁共有件数を年間100件以上にする。
      • データ取得方法: シナリオ共有プラットフォームの登録件数を集計します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • RPAを導入した業務の平均時間削減率を70%以上とする(現状平均64.8%)。
      • データ取得方法: 各RPAプロジェクトの効果測定報告書から算出します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • BPR研修の全職員受講率を90%以上とする。
      • データ取得方法: 研修管理システムの受講履歴データで確認します。
    • 新規にRPA化した業務数を年間50業務以上とする。
      • データ取得方法: DX推進部門によるRPA導入実績の集計データで確認します。

支援策②:生成AIの安全な活用推進とガバナンス体制の構築

目的
  • 文書作成、要約、翻訳、アイデア創出といった、これまで自動化が困難だった非定型・創造的な業務において生成AIを活用し、業務の質とスピードを飛躍的に向上させます。
  • 情報漏洩、著作権侵害、誤情報生成といった生成AI特有のリスクを管理するための明確なガバナンス体制を構築し、職員が安心して技術の恩恵を享受できる環境を整備します。
主な取組①:全庁的な生成AI活用ガイドラインの策定と徹底
  • 政府ガイドラインを参考に、「個人情報・機密情報の入力は厳禁」「生成された情報は必ず事実確認(ファクトチェック)を行う」「著作権等の第三者の権利を侵害しないよう注意する」といった、具体的で実践的なルールを盛り込んだガイドラインを策定します。
  • 全職員を対象としたガイドライン研修の受講を必須とし、内容の理解度を確認するテストを実施するなど、ルールが形骸化しないための仕組みを導入します。
主な取組②:セキュアな生成AI利用環境の整備
  • 入力した情報が外部のAIモデルの学習に利用されることのない、セキュリティが確保されたAPI連携や、LGWAN(総合行政ネットワーク)内で利用できる行政専用の生成AIサービス等の導入を検討します。
  • 業務内容のリスクレベルに応じて利用できるツールや情報の範囲を定義し、厳格なアクセス制御を徹底します。
主な取組③:プロンプトエンジニアリング研修の実施
主な取組④:パイロット導入と効果検証
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員一人当たりの創造的業務(企画立案、データ分析、政策研究等)に充てる時間を年間で10%増加させる。
      • データ取得方法: 職員の業務内容に関するアンケート調査(タイムスタディ)を定期的に実施します。
  • KSI(成功要因指標)
    • 生成AIの業務利用率(月1回以上利用する職員の割合)を80%以上にする。
      • データ取得方法: 利用ログの分析および職員アンケート調査で確認します。
    • 生成AI活用ガイドラインの全職員認知度を100%にする。
      • データ取得方法: 必須研修の受講完了率で測定します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 文書作成や要約にかかる時間を平均で50%削減する。
      • データ取得方法: 対象業務を選定し、作業時間を導入前後で比較測定します。
    • 生成AI活用による業務効率向上に関する職員満足度を90%以上とする。
      • データ取得方法: 職員満足度調査を定期的に実施します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • プロンプトエンジニアリング研修の受講者数を全職員の50%以上とする。
      • データ取得方法: 研修管理システムの受講履歴データで確認します。
    • 庁内プロンプト共有ライブラリの登録件数を年間200件以上とする。
      • データ取得方法: 共有ライブラリシステムの登録件数を集計します。

支援策③:DX人材の戦略的育成とデジタルデバイド対策の強化

目的
  • 全職員のデジタルリテラシーの底上げと、DXを専門的に牽引するリーダー人材の育成・確保を両輪で進め、外部の専門家に依存しない、持続可能なDX推進体制を組織内部に構築します。
  • 「誰一人取り残さない」デジタル社会の実現に向け、高齢者や障害を持つ方などを対象としたデジタルデバイド対策を計画的に強化し、行政サービスの公平性を確保します。
主な取組①:階層別デジタル人材育成プログラムの策定
  • 「全職員向け:情報セキュリティとAIの基礎知識」「各部署のDX推進担当者向け:BPR手法と業務改善の実践」「情報システム部門の専門職員向け:クラウド技術やデータ分析の高度スキル」など、職員の役割や階層に応じた体系的な研修プログラムを策定し、継続的に実施します。
主な取組②:外部専門人材(CIO補佐官等)の積極登用と連携
  • 民間企業等から、情報システム、データサイエンス、サイバーセキュリティなどの分野で高度な専門性を持つ人材を、CIO補佐官やDXアドバイザーとして非常勤等で任用し、最新の知見や技術を組織に取り入れます。
  • 総務省の「地域活性化起業人」制度などを活用し、都道府県と連携して、複数の市町村を支援できるデジタル人材を確保・共有する「人材プール」の仕組みを構築・活用します。
主な取組③:デジタル活用支援員の配置と出張相談会の拡充
主な取組④:アクセシビリティを確保したサービス設計
  • 行政手続きのオンライン化を進める際には、高齢者や障害を持つ方なども含め、誰もが利用しやすいようにウェブアクセシビリティの日本産業規格(JIS X 8341-3)を遵守した設計を徹底します。
  • オンラインでの手続きが困難な方のために、従来通りの電話、窓口、郵送といった複数の申請チャネルを維持し、住民が自分に合った方法を選択できる「オムニチャネル」の考え方を基本とします。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の「人間中心のAI社会原則」では、AIの活用において、多様な人々を包摂し、いわゆる「情報弱者」を生じさせないことが基本理念として掲げられています。
      • 国が推進する「書かないワンストップ窓口」などのフロントヤード改革においても、オンラインだけでなく多様なチャネルを提供し、住民との接点を最適化することが重要とされています。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/001001126.pdf)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 高齢者(65歳以上)の行政手続きオンライン利用率を3年間で50%に向上させる(現状27.5%程度)。
      • データ取得方法: 電子申請システムの利用者年代別ログ分析および、住民意識調査で確認します。
  • KSI(成功要因指標)
    • DX推進リーダーを全課に1名以上配置する。
      • データ取得方法: 人事課が管理する職員配置データで確認します。
    • デジタル活用支援拠点を各区に20カ所以上設置する。
      • データ取得方法: DX推進部門による拠点設置状況の調査で確認します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民のデジタルデバイドに関する不安度が20%以下になる。
      • データ取得方法: 住民意識調査を定期的に実施し、関連する設問の回答から算出します。
    • 職員のDXに関する自己効力感(自信)スコアを25%向上させる。
      • データ取得方法: 職員意識調査を定期的に実施し、関連する設問の回答から算出します。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • デジタル活用支援員の年間相談対応件数を5,000件以上とする。
      • データ取得方法: 各相談受付窓口での実績を集計します。
    • 階層別デジタル人材育成研修の年間総受講者数を500人以上とする。
      • データ取得方法: 研修管理システムの受講履歴データで確認します。

先進事例

東京都特別区の先進事例

渋谷区「EBPM推進と教育DX」

  • 渋谷区は、校務DXにおいて全国トップレベルの評価を受けており、特に教員向けの安全な生成AIシステムを独自に構築し、校務に係る文書作成や教材づくりに活用しています。これにより、教員の業務負担を軽減し、子どもと向き合う時間を確保することで、教育の質の向上を目指しています。
  • また、AIを活用してSNS上の多様な意見を収集・分析する「ブロードリスニング」のトライアルを実施するなど、データに基づいた政策立案(EBPM)を先進的に進めています。
  • 特に注目される成功要因は、首長の強いリーダーシップのもと、データ利活用基盤を早期に整備したこと、そして技術導入と並行して職員のスキルアップ支援を徹底している点です。
    • 客観的根拠:
      • 渋谷区は文部科学省の「校務DXチェックリスト」において、全国平均を大きく上回る高い水準(655.5点)と評価されています。
        • (出典)(https://files.city.shibuya.tokyo.jp/assets/12995aba8b194961be709ba879857f70/aa127800a5cf4ffabefaf9e6b1d34f38/kyoikuict2.pdf)
      • AIシステム「広聴AI」を活用し、区民の多様な声を政策へ反映させることを目的とした「ブロードリスニング」のトライアルを令和7年7月に実施しました。

千代田区「包括的DX戦略と生成AIガイドライン」

  • 千代田区は、生成AIの活用を積極的に推進する一方で、そのリスクを管理するため、具体的な活用シーンや禁止事項、職員が遵守すべきルールを定めた「生成AI活用ガイドライン」をいち早く策定・公開しました。
  • 住民サービス向上にも注力しており、オンラインでの申請・予約・決済・相談などを集約した「ちよだデジタル窓口」を構築し、子育て関連の約40手続きからオンライン化を開始しています。
  • 特に注目される成功要因は、リスク管理と活用推進を両輪で進めるバランス感覚、各職場から選任された「DXサポーターズ」を核として職員を巻き込む推進体制、そして住民にとっての使いやすさを追求したサービス設計です。

港区「官民連携による住民サービス創出」

  • 港区は「港区DX推進計画」の中でAIやRPAの活用を明確に施策として位置づけ、計画的な業務効率化を進めています。
  • 特筆すべきは、区内に多くのIT事業者が立地する地域特性を活かし、官民が協働してLINEと生成AIチャットボットを活用した高度な子育て支援サービスを構築するなど、民間の優れた技術やノウハウを積極的に取り入れている点です。
  • 特に注目される成功要因は、地域の強みを活かした官民連携モデルの構築、具体的な数値目標を伴う計画的な推進体制、そして一つの分野に留まらない横断的な取り組みです。

全国自治体の先進事例

横須賀市「ChatGPT導入の先駆的実証」

  • 神奈川県横須賀市は、全国の自治体に先駆けて、全庁的なChatGPTの活用実証を開始しました。約1ヶ月間の実証実験では、職員の約半数が実際に利用し、そのうち8割以上が「仕事の効率が上がる」と回答するなど、高い効果と職員からのポジティブな反応を得ました。
  • 特に注目される成功要因は、首長のリーダーシップによる迅速な意思決定、失敗を恐れずに新しい技術に挑戦する組織風土、そして実証結果やノウハウを包み隠さず積極的に情報公開し、全国の自治体のDX推進に貢献した点です。

浜松市「データ駆動型スマートシティとMaaS」

  • 静岡県浜松市は、AI活用型のオンデマンドバスや、公共交通機関のデジタルチケットなどをスマートフォンアプリで統合的に提供する「浜松版MaaS(Mobility as a Service)」を推進しています。
  • これにより、交通が不便な地域の解消や、市民の公共交通利用促進に繋がっており、定額乗り放題サービスの利用者は大幅に増加し、利用者の公共交通利用頻度や満足度も向上しています。
  • 特に注目される成功要因は、官民がデータを連携させるための基盤を構築したこと、住民参加型のワークショップ(リビングラボ)を通じて市民のニーズを的確に捉えたサービスを共創したこと、そして具体的なKPI(月間アプリ利用者数など)を設定し、効果測定を継続的に行っている点です。
    • 客観的根拠:
      • 定額乗り放題サービスの利用者は、令和6年度の81名(2か月)から令和7年度には800名(4か月)へと大幅に増加しました。また、サービス利用後の公共交通利用頻度も59%から80%に向上しています。

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
内閣府関連資料
デジタル庁関連資料
東京都・特別区関連資料
その他

まとめ

 東京都特別区におけるAI・RPAの活用は、単なる業務効率化の手段に留まらず、持続可能な行政運営と住民サービスの質的変革を実現するための不可欠な戦略です。成功の鍵は、BPRを土台とした着実なRPA導入、リスク管理と両立させた生成AIの活用、そしてそれらを支える人材育成とデジタルデバイド対策にあります。本報告書で示したデータと支援策が、各区の特性に応じた具体的で効果的な政策立案に繋がり、より質の高い行政サービスの実現に貢献することを期待します。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました