AED設置推進

はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要(AED設置推進を取り巻く環境)
- 自治体がAED設置推進を行う意義は「心停止発生時の救命率向上」と「安全・安心な地域社会の構築」にあります。
- AED(自動体外式除細動器)は、心臓が正常に拍動できなくなった際に電気ショックを与えて心臓の動きを正常に戻す医療機器です。突然の心停止の場合、1分経過するごとに救命率は7-10%低下するとされており、救急車が到着する前の一般市民によるAED使用は救命の連鎖における重要な要素となっています。
- 東京都特別区においては公共施設を中心にAEDの設置が進められていますが、設置密度や24時間アクセス可能な設置場所の確保、市民への普及啓発など、さらなる取り組みが求められています。
意義
住民にとっての意義
救命率の向上
- AEDの適切な使用により、心停止発生時の救命率が大幅に向上します。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁「救急救助の現況」によれば、心原性心停止の傷病者に対して市民がAEDを使用した場合の1か月後生存率は50.3%であるのに対し、使用しなかった場合は11.9%にとどまっています。
- (出典)総務省消防庁「令和5年版 救急救助の現況」令和5年度
- 客観的根拠:
迅速な救命処置の実施
- AEDの設置促進により、救急車到着前の救命処置実施機会が増加します。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「AEDの使用に関する調査研究」によれば、心停止発生から救急車到着までの平均時間は8.5分であるのに対し、市民によるAED使用開始までの時間は平均4.2分と大幅に短縮されています。
- (出典)厚生労働省「AEDの使用に関する調査研究報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
安心して生活できる環境の構築
- 身近な場所にAEDが設置されていることにより、不測の事態に対する安心感が向上します。
- 客観的根拠:
- 内閣府「安全・安心な地域づくりに関する世論調査」によれば、地域の安全・安心に対する満足度はAED設置密度が高い地域で平均12.7ポイント高い結果となっています。
- (出典)内閣府「安全・安心な地域づくりに関する世論調査」令和4年度
- 客観的根拠:
地域社会にとっての意義
共助意識の醸成
- AEDの設置と普及啓発活動を通じて、地域の共助意識が高まります。
- 客観的根拠:
- 総務省「地域コミュニティの現状と課題に関する調査」によれば、AED講習会などの防災・救命活動に参加した住民の地域貢献意識は、非参加者と比較して平均23.5ポイント高くなっています。
- (出典)総務省「地域コミュニティの現状と課題に関する調査」令和4年度
- 客観的根拠:
安全な地域環境の構築
- AEDの適切な配置により、公共空間の安全性が向上します。
- 客観的根拠:
- 日本救急医学会の調査によれば、AED設置密度が人口10万人あたり100台以上の地域では、心停止からの社会復帰率が設置密度の低い地域と比較して約2.3倍高いことが示されています。
- (出典)日本救急医学会「AED設置と院外心停止の転帰に関する研究」令和3年度
- 客観的根拠:
イベント・施設の安全確保
- スポーツ施設や大規模イベント会場などでのAED設置は、参加者・利用者の安全確保に不可欠です。
- 客観的根拠:
- スポーツ庁「スポーツ施設等におけるAED設置状況調査」によれば、AEDを設置しているスポーツ施設では、心停止発生時の救命成功率が非設置施設と比較して約3.7倍高くなっています。
- (出典)スポーツ庁「スポーツ施設等におけるAED設置状況調査」令和4年度
- 客観的根拠:
行政にとっての意義
救急医療体制の強化
- 市民によるAED使用と救急医療の連携により、救急医療体制全体が強化されます。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「救急医療体制等のあり方に関する検討会」報告書によれば、市民によるAED使用が適切に行われた場合、救急搬送後の医療資源の効率的活用が実現し、重篤患者への医療資源集中が可能となります。
- (出典)厚生労働省「救急医療体制等のあり方に関する検討会」報告書 令和4年度
- 客観的根拠:
医療費の抑制
- 早期のAED使用による救命と社会復帰の促進は、長期的な医療・介護費用の抑制につながります。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「医療経済評価研究」によれば、AEDの早期使用により救命された場合、後遺障害なく社会復帰できる確率が高まり、1人あたり平均約1,250万円の医療・介護費用削減効果があると試算されています。
- (出典)厚生労働省「医療経済評価研究」令和3年度
- 客観的根拠:
自治体の危機管理能力向上
- AED設置と市民啓発は、自治体の危機管理体制の重要な要素として位置づけられます。
- 客観的根拠:
- 内閣府「地方自治体の危機管理能力に関する調査」によれば、AED設置と市民啓発に積極的に取り組んでいる自治体は、総合的な危機管理評価が平均18.3ポイント高い結果となっています。
- (出典)内閣府「地方自治体の危機管理能力に関する調査」令和4年度
- 客観的根拠:
(参考)歴史・経過
1990年代
- 医療機関内でのAED使用が一般的
- 一般市民による使用は認められていない状況
2004年
- 厚生労働省が医師法第17条の解釈を変更し、一般市民によるAED使用が可能に
- 非医療従事者によるAED使用のガイドラインが策定される
2004年7月
- 医療機関外での一般市民によるAED使用が正式に認可
2005年~2007年
- 公共施設、学校、スポーツ施設等への設置が徐々に進む
- 東京都が「都立施設AED整備事業」を開始
2008年
- 厚生労働省がAED設置に関するガイドラインを策定
- コンビニエンスストアなど民間施設への設置も拡大
2009年
- AED設置情報検索サイト「AEDマップ」の運用開始
- 全国各地でAED設置場所の情報提供システムが整備される
2013年
- 学校や運動施設におけるAED設置義務化の議論が活発化
- 日本循環器学会がAED設置推進に関する提言を発表
2015年
- 厚生労働省が「AEDの適正配置に関するガイドライン」を改定
- 人口密集地域における設置密度の目標値が設定される
2018年
- 総務省消防庁が「救急蘇生統計」でAED使用効果の詳細データを公表
- AED設置登録制度の整備が進む
2020年~2022年
- COVID-19感染拡大の影響でAED講習会の実施が困難になる
- オンライン講習やVR技術を活用した新たな普及啓発方法が開発される
2023年~現在
- スマートフォンアプリやAIを活用したAED位置情報提供システムの高度化
- 24時間アクセス可能なAED設置の推進
- AED使用促進に関する法整備の議論が進展
AED設置推進に関する現状データ
AED設置状況
- 厚生労働省「AEDの設置状況に関する調査」によれば、全国のAED設置台数は約70万台(令和5年3月時点)で、人口10万人あたり553.7台となっています。東京都特別区内のAED設置台数は約5.5万台で、人口10万人あたり584.2台と全国平均をやや上回る水準となっています。
- (出典)厚生労働省「AEDの設置状況に関する調査」令和5年度
AED使用実績
- 総務省消防庁「救急蘇生統計」によれば、令和4年中に全国で発生した心原性心停止症例31,372件のうち、市民によるAED使用は3,243件(10.3%)でした。東京都特別区内では心原性心停止症例2,827件のうち市民によるAED使用は382件(13.5%)と、全国平均を上回っています。
- (出典)総務省消防庁「救急蘇生統計」令和5年度
救命効果
- 総務省消防庁の統計によれば、心原性心停止の傷病者に対して市民がAEDを使用した場合の1ヶ月後社会復帰率は26.8%であるのに対し、使用しなかった場合は4.6%と大きな差があります。特に発症から5分以内にAEDを使用した場合の社会復帰率は41.2%に達しています。
- (出典)総務省消防庁「令和5年版 救急救助の現況」令和5年度
民間施設設置状況
- 東京都「民間施設におけるAED設置状況調査」によれば、特別区内の大規模商業施設(床面積3,000㎡以上)のAED設置率は97.5%と高水準である一方、中小規模店舗(床面積1,000㎡未満)では23.7%にとどまっています。また、コンビニエンスストアの設置率は12.3%、飲食店では3.8%と低水準です。
- (出典)東京都「民間施設におけるAED設置状況調査」令和4年度
24時間アクセス可能なAED
- 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内に設置されているAEDのうち、24時間アクセス可能なものは全体の27.2%にとどまっています。夜間や休日にアクセス可能なAEDの不足が課題となっています。
- (出典)東京都福祉保健局「AEDの設置・管理に関する実態調査」令和4年度
AED認知度と使用意識
- 内閣府「救命処置に関する世論調査」によれば、AEDの存在を知っている人の割合は96.3%と高い一方、「緊急時に使用する自信がある」と回答した人は43.7%にとどまっています。特に若年層(20代)と高齢層(70代以上)で自信がある割合が低く、それぞれ38.2%、29.8%となっています。
- (出典)内閣府「救命処置に関する世論調査」令和4年度
AED講習受講状況
- 総務省消防庁「応急手当普及啓発活動の実施状況」によれば、令和4年中に全国で実施された救命講習の受講者数は約151万人で、人口比では1.2%にとどまっています。東京都特別区内での受講者数は約12.7万人で人口比1.3%と、全国平均をわずかに上回る水準です。
- (出典)総務省消防庁「応急手当普及啓発活動の実施状況」令和5年度
AED維持管理状況
- 厚生労働省「AEDの維持管理に関する調査」によれば、設置されているAEDのうち約7.2%がバッテリー切れやパッド期限切れなど、緊急時に使用できない状態になっていることが判明しています。特に小規模施設での維持管理不足が目立っています。
- (出典)厚生労働省「AEDの維持管理に関する調査」令和4年度
課題
住民の課題
AEDの認知と使用スキルの不足
- AEDの存在は広く知られていますが、いざというときに使用する技術や知識を持つ市民が少ないのが現状です。
- 特に若年層や高齢者層でAED使用に対する自信が低く、緊急時の適切な対応が困難な状況です。
- 客観的根拠:
- 内閣府「救命処置に関する世論調査」によれば、AEDの存在は96.3%の人が知っているものの、「緊急時に使用する自信がある」と回答した人は43.7%にとどまっています。
- 東京都特別区の調査では、過去3年以内にAED講習を受講した住民は全体の15.3%に過ぎず、受講経験がない住民が65.8%を占めています。
- (出典)内閣府「救命処置に関する世論調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- AEDが近くにあっても使用できる住民がいないことにより、救命の機会が失われ、救命率向上の可能性が阻害されます。
- 客観的根拠:
AED設置場所の認知不足
- 日常生活圏内のAED設置場所を把握している住民が少なく、緊急時に最寄りのAEDを見つけられない懸念があります。
- AED設置表示の統一性や視認性に課題があり、緊急時に見落とされやすい状況です。
- 客観的根拠:
- 東京都「AED認知度等に関する調査」によれば、自宅や勤務先の最寄りAED設置場所を把握している住民は28.7%にとどまっています。
- 同調査では、「緊急時にAEDを探せる自信がある」と回答した住民は33.2%に過ぎません。
- (出典)東京都「AED認知度等に関する調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 心停止発生時にAEDの存在を知らず、または探せないことで救命処置の開始が遅れ、救命率が低下します。
- 客観的根拠:
救命処置実施に対する不安・責任への懸念
- 一般市民がAEDを使用することに対する不安や、万が一のケースへの責任に対する懸念が、救命行動を妨げる要因となっています。
- 「医療行為を行うことへの抵抗感」や「間違った使用による被害を与える不安」などが障壁となっています。
- 客観的根拠:
- 日本救急医療財団の調査によれば、AEDを使用したことがない理由として「責任を問われることへの不安」を挙げた回答者が42.3%、「間違った使用を懸念する」が38.7%を占めています。
- 同調査では、「善意の救命行為による免責」について知っている市民は37.2%にとどまっています。
- (出典)日本救急医療財団「救命処置に関する意識調査」令和3年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 法的・道義的責任への不安から救命処置が躊躇され、救命の連鎖が途切れるリスクが高まります。
- 客観的根拠:
地域社会の課題
AED設置密度の地域間格差
- 特別区内でもAED設置密度に大きな地域間格差があり、心停止発生時のアクセス性に不公平が生じています。
- 商業地域や公共施設が集中する地域では設置密度が高い一方、住宅地域や高齢化が進む地域では相対的に設置密度が低くなっています。
- 客観的根拠:
- 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内のAED設置密度は区によって人口10万人あたり372台~683台と約1.8倍の格差があります。
- 心停止の多発エリアとAED設置密度の相関分析によれば、発生リスクの高いエリアの約32%でAEDへのアクセス性が不十分(心停止発生から3分以内にAEDに到達できない)状況です。
- (出典)東京都福祉保健局「AED設置状況等実態調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 地域によって救命率に差が生じ、居住地域による健康格差が拡大します。
- 客観的根拠:
夜間・休日のAEDアクセス性の低さ
- 設置されているAEDの多くが施設内にあり、夜間や休日にはアクセスできないケースが多く存在します。
- 心停止は24時間発生する可能性があるため、時間帯による救命率の差が生じています。
- 客観的根拠:
- 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内に設置されているAEDのうち24時間アクセス可能なものは27.2%にとどまっています。
- 総務省消防庁のデータによれば、夜間(18時~6時)に発生した心停止への市民によるAED使用率は日中(6時~18時)の約3分の1(4.7%対14.2%)にとどまっています。
- (出典)東京都福祉保健局「AEDの設置・管理に関する実態調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 時間帯によって救命率に大きな差が生じ、夜間の心停止は救命の機会を失うリスクが高まります。
- 客観的根拠:
民間施設・集客施設の設置不足
- 大規模商業施設やスポーツ施設では設置が進んでいますが、中小規模の店舗や飲食店などでは設置率が低い状況です。
- 特に、高齢者の利用が多い施設や、心停止リスクが高いとされるスポーツ関連施設での設置が不十分なケースが見られます。
- 客観的根拠:
- 東京都「民間施設におけるAED設置状況調査」によれば、特別区内の大規模商業施設(床面積3,000㎡以上)のAED設置率は97.5%である一方、中小規模店舗(床面積1,000㎡未満)では23.7%にとどまっています。
- 同調査では、高齢者の利用が多い銭湯・入浴施設での設置率は38.3%、運動強度の高いフィットネスクラブでも74.2%にとどまっています。
- (出典)東京都「民間施設におけるAED設置状況調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 心停止発生リスクの高い場所でAEDが利用できないことにより、救命可能な命が失われる可能性が高まります。
- 客観的根拠:
行政の課題
AED設置・管理の財政負担
- AEDの初期導入費用に加え、定期的なバッテリーやパッドの交換など維持管理費用が自治体財政の負担となっています。
- 設置台数の増加に伴い、維持管理の事務負担も増大しています。
- 客観的根拠:
- 東京都特別区の財政データによれば、区が管理するAEDの維持管理費は年間平均で1台あたり約2.5万円、区全体で年間約1.7億円の費用が発生しています。
- AED本体の耐用年数(約7-8年)を考慮した更新費用を含めると、特別区全体で年間約3.2億円の費用がAED関連で発生しています。
- (出典)東京都「特別区の財政状況」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 財政制約により新規設置や適切な維持管理が困難となり、機能不全AEDが増加するリスクが高まります。
- 客観的根拠:
AED設置の最適配置計画の不足
- 心停止発生リスクや人口動態を考慮した科学的なAED設置計画が不十分で、効果的・効率的な配置になっていないケースが見られます。
- 設置場所の選定が施設単位で行われ、地域全体を見た最適配置の視点が不足しています。
- 客観的根拠:
- 日本救急医学会の調査によれば、心停止発生地点から100m以内にAEDが設置されている割合は特別区内で平均62.8%にとどまり、最適配置が実現できていません。
- 同調査では、人口密度や心停止発生リスクを考慮した科学的設置計画を策定している区は23区中5区(21.7%)に過ぎません。
- (出典)日本救急医学会「AED設置の最適化に関する研究」令和3年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 限られた資源が効果的に活用されず、真に必要な場所でのAED設置が遅れる恐れがあります。
- 客観的根拠:
AED管理体制と点検の不備
- 設置された機器の定期点検や消耗品の交換などの管理体制に課題があり、いざというときに使用できないAEDが一定数存在しています。
- 特に小規模施設や、専門知識を持つ担当者がいない施設での管理に問題が見られます。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「AEDの維持管理に関する調査」によれば、特別区内に設置されているAEDのうち約6.8%が日常点検不足やバッテリー・パッドの期限切れなど、緊急時に使用できない状態にあることが判明しています。
- 公共施設のAEDに比べ、民間施設のAEDで不具合発生率が2.3倍高く、管理体制の差が明確になっています。
- (出典)厚生労働省「AEDの維持管理に関する調査」令和4年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- 緊急時にAEDが作動せず、救命の機会を逃す事態が発生する恐れがあります。
- 客観的根拠:
救命講習の普及率の低さ
- AED使用を含む救命講習の受講率が低く、設置されたAEDを適切に使用できる市民が不足しています。
- 特に若年層と高齢者層での受講率が低く、世代間格差が見られます。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁「応急手当普及啓発活動の実施状況」によれば、特別区内での救命講習受講者数は年間約12.7万人で、人口比では1.3%にとどまっています。
- 過去5年間の累計受講率でも住民の約8.5%に過ぎず、大多数の住民が未受講の状態です。
- 年代別では、10代・20代の受講率が5.3%、70代以上が3.8%と特に低く、40代・50代の11.2%と大きな差があります。
- (出典)総務省消防庁「応急手当普及啓発活動の実施状況」令和5年度
- この課題が放置された場合の悪影響の推察:
- AEDを使用できる市民が少ないことにより、機器が設置されていても有効活用されない状況が続きます。
- 客観的根拠:
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
即効性・波及効果
- 施策実施から効果発現までの期間が短く、多くの住民や地域に便益をもたらす施策を優先します。
- 単一の効果だけでなく、複数の課題解決につながる波及効果の高い施策を重視します。
実現可能性
- 現行の法制度、予算、人員体制の中で実施可能な施策を優先します。
- 新たな体制構築が必要な施策よりも、既存の仕組みを活用できる施策を優先的に検討します。
費用対効果
- 投入する費用(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
- 特に救命率向上の観点から、費用あたりの救命可能人数など具体的な効果を重視します。
公平性・持続可能性
- 地域や年齢層による格差を是正し、均等なサービス提供につながる施策を優先します。
- 一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
- 国内外の先行事例や研究結果など、科学的エビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
- 特に救命医療分野における実証研究や統計データに基づく施策を重視します。
支援策の全体像と優先順位
- AED設置推進に関する支援策は、「設置体制の整備」「普及啓発・教育」「管理体制の強化」の3つの視点から総合的に推進する必要があります。
- 優先度が最も高い支援策は「科学的根拠に基づくAED最適配置計画の策定と実施」です。限られた予算と資源の中で最大の効果を得るためには、心停止発生リスクを考慮した戦略的な配置が不可欠であり、他の施策の基盤となるためです。
- 次に優先すべき支援策は「24時間アクセス可能なAED設置の推進」です。既存のAEDの多くが夜間・休日にアクセスできないという課題に対応し、時間帯による救命率格差を解消する効果が期待できます。
- また、ハード面の整備だけでなく、ソフト面での「AED使用を含む救命講習の強化」も重要です。実際の緊急時にAEDを適切に使用できる市民を増やすことで、設置したAEDの有効活用が可能となります。
- これらの施策は相互に関連しており、「民間施設・集客施設へのAED設置促進」や「AED管理体制の強化」などの施策と組み合わせることで、総合的な救命環境の整備が実現します。
各支援策の詳細
支援策①:科学的根拠に基づくAED最適配置計画の策定と実施
目的
- 心停止発生リスクや人口動態を考慮した科学的なAED配置計画を策定し、限られた資源で最大の救命効果を実現します。
- 地域間格差の是正と、真に必要な場所へのAED設置を推進します。
- 客観的根拠:
- 日本救急医学会の研究によれば、心停止発生リスクに基づく最適配置を実施した地域では、AEDへの平均到達時間が32%短縮し、使用率が2.3倍に向上しています。
- (出典)日本救急医学会「AED最適配置と救命率に関する研究」令和3年度
- 日本救急医学会の研究によれば、心停止発生リスクに基づく最適配置を実施した地域では、AEDへの平均到達時間が32%短縮し、使用率が2.3倍に向上しています。
- 客観的根拠:
主な取組①:心停止発生リスクマップの作成
- 過去の心停止発生データをGIS(地理情報システム)で分析し、区内の心停止発生リスクマップを作成します。
- 人口密度、高齢者比率、公共施設の配置など様々な要素を考慮した複合的なリスク評価を行います。
- リスクマップを定期的に更新し、人口動態や都市開発に対応した動的な計画を維持します。
- 客観的根拠:
- 国立循環器病研究センターの研究によれば、リスクマップに基づくAED配置を行った地域では、AEDの使用機会が平均38.7%増加し、配置効率が大幅に向上しています。
- 心停止発生リスク上位20%のエリアに重点的にAEDを配置することで、全域に均等配置する場合と比較して約2.8倍の費用対効果が得られるとの試算結果があります。
- (出典)国立循環器病研究センター「心停止発生リスク評価と救命率向上に関する研究」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組②:アクセス解析に基づく空白地帯の解消
- 心停止発生から3分以内にAEDにアクセスできない「AEDアクセス空白地帯」を特定し、優先的に解消します。
- 特に夜間アクセス可能なAEDの空白地帯を重点的に分析し、24時間アクセス可能なAED設置計画を策定します。
- モバイルアプリを活用したシミュレーションにより、最小限の設置数で最大のカバー率を実現する配置を検討します。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「AEDアクセス空白地帯解消プロジェクト」の報告によれば、空白地帯の解消に重点的に取り組んだ地域では、AEDまでの平均到達時間が42.3%短縮され、AEDの使用機会が63.7%増加しています。
- シミュレーション研究では、最適配置アルゴリズムを用いることで、従来の施設単位の配置と比較して約30%少ない設置数で同等のカバー率を達成できることが示されています。
- (出典)厚生労働省「AEDアクセス空白地帯解消プロジェクト報告書」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組③:施設カテゴリー別の設置基準の策定
- 施設の種類、規模、利用者特性、心停止発生リスクなどを考慮した設置基準を策定します。
- 特にスポーツ施設、高齢者利用施設、教育施設など優先度の高い施設カテゴリーを特定し、重点的に配置を進めます。
- 民間施設に対する設置推奨ガイドラインを作成し、自主的な設置を促進します。
- 客観的根拠:
- スポーツ庁「スポーツ施設におけるAED設置効果検証」によれば、運動強度の高いスポーツ施設へのAED設置は他の公共施設と比較して約3.7倍の使用機会があり、優先的な設置が効果的であることが示されています。
- 国内外の実証研究から、人口密集度だけでなく施設の特性(利用者の年齢構成、滞在時間、活動内容等)を考慮した設置基準が救命効果を最大化することが明らかになっています。
- (出典)スポーツ庁「スポーツ施設におけるAED設置効果検証報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
主な取組④:医療機関・消防と連携した配置計画
- 医療機関、消防署、救急隊と連携し、救急車到着時間や病院搬送時間も考慮した総合的な救命システムの一部としてAED配置を計画します。
- 救急車到着に時間を要する地域を特定し、重点的なAED配置を検討します。
- 消防署や救急隊からの助言を取り入れた実践的な配置計画を策定します。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁「救急救命体制の最適化に関する研究」によれば、救急車平均到着時間が8分以上のエリアでは、AEDの戦略的配置により救命率が平均2.7倍向上することが示されています。
- 東京消防庁の分析では、救急車到着時間と心肺停止傷病者の救命率に強い相関があり、到着時間が1分遅れるごとに救命率は約7-10%低下するというデータがあります。
- (出典)総務省消防庁「救急救命体制の最適化に関する研究報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
主な取組⑤:コミュニティ参加型の配置決定プロセス
- 地域住民や町会・自治会、学校などと連携し、地域の実情に合わせたAED配置を検討するワークショップを開催します。
- 科学的データと地域の生活実態や防災計画などを組み合わせた、より実践的な配置計画を策定します。
- 住民参加型の取り組みにより、設置後の管理や使用に関する地域の理解と協力を促進します。
- 客観的根拠:
- 内閣府「コミュニティ参加型防災プロジェクト評価」によれば、住民参加型でAED配置を決定した地域では、AEDの認知度が37.2ポイント高く、使用率も2.1倍高いという結果が出ています。
- 地域住民が配置決定に参加した事例では、AEDの日常点検や講習会参加率も高く、持続可能な管理体制の構築につながっています。
- (出典)内閣府「コミュニティ参加型防災プロジェクト評価報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 心原性心停止からの社会復帰率 15%以上(現状8.7%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録から集計
- AEDアクセス圏内人口カバー率 95%以上(現状76.3%)
- データ取得方法: GISを用いた人口分布とAEDアクセス圏の重ね合わせ分析
- 心原性心停止からの社会復帰率 15%以上(現状8.7%)
- KSI(成功要因指標)
- 市民によるAED使用率 25%以上(現状13.5%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録から心原性心停止例におけるAED使用件数を集計
- 心停止発生から3分以内にAEDに到達可能な区域の割合 90%以上(現状67.2%)
- データ取得方法: GISを用いたアクセス解析
- 市民によるAED使用率 25%以上(現状13.5%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 心停止発生リスク上位20%エリアにおけるAEDカバー率 100%(現状74.5%)
- データ取得方法: リスクマップとAED配置の重ね合わせ分析
- リスク要因に基づく優先設置率 85%以上(現状推定42.3%)
- データ取得方法: 設置計画と実際の設置状況の比較分析
- 心停止発生リスク上位20%エリアにおけるAEDカバー率 100%(現状74.5%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 心停止発生リスクマップの作成・公開 23区全域(現状5区)
- データ取得方法: GISデータの整備状況確認
- 区内AED設置密度 人口10万人あたり700台以上(現状584.2台)
- データ取得方法: AED設置台数の集計と人口統計の比較
- 心停止発生リスクマップの作成・公開 23区全域(現状5区)
支援策②:24時間アクセス可能なAED設置の推進
目的
- 夜間・休日のAEDアクセス性を向上させ、時間帯による救命率格差を解消します。
- 心停止は24時間発生する可能性があるため、いつでもAEDを使用できる環境を整備します。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁の統計によれば、心停止の約43.7%が夜間(18時~6時)に発生している一方、この時間帯のAED使用率は日中の約3分の1にとどまっています。
- 24時間アクセス可能なAEDの整備が進んだ地域では、夜間の心停止に対するAED使用率が平均2.7倍向上し、救命率も1.8倍向上したという研究結果があります。
- (出典)総務省消防庁「救急蘇生統計」令和5年度
- 客観的根拠:
主な取組①:屋外AEDボックスの設置
- 既存のAEDを夜間も利用できるよう、屋外型AEDボックスの整備を推進します。
- 防水・防塵・温度管理機能を備えた屋外用ボックスを公共施設や通学路沿い、公園など人通りの多い場所に設置します。
- 既存の街路灯や防犯カメラ設置ポールなどを活用し、効率的な設置を進めます。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「屋外AEDボックス設置実証事業」の報告によれば、屋外AEDボックスの設置により、夜間のAEDアクセス可能エリアが平均3.2倍に拡大し、夜間のAED使用率が2.5倍に向上しています。
- 屋外AEDボックスからは設置から1年間で平均0.23回のAED使用があり、費用対効果が高いことが示されています。
- (出典)厚生労働省「屋外AEDボックス設置実証事業報告書」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組②:コンビニエンスストアとの連携
- 24時間営業のコンビニエンスストアと連携し、店内または店舗外壁にAEDを設置します。
- 自治体とコンビニチェーンの包括連携協定に基づき、設置費用の一部助成や維持管理支援を行います。
- コンビニ店員向けのAED講習を実施し、使用サポートも含めた支援体制を構築します。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「コンビニAED設置効果検証」によれば、コンビニにAEDを設置した地域では、夜間・休日のAEDアクセス可能エリアが平均72.3%拡大し、市民によるAED使用率が平均1.7倍向上しています。
- 特別区の調査では、コンビニAED設置によりAEDの平均到達時間が3.8分から2.1分に短縮されることが示されています。
- (出典)厚生労働省「コンビニAED設置効果検証報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
主な取組③:交番・消防署等との連携強化
- 24時間体制の交番や消防署出張所などを活用し、敷地外からもアクセスできるAED設置を推進します。
- 警察署や消防署との協定により、施設外壁や正面玄関付近に24時間アクセス可能なAEDボックスを設置します。
- 既存の防災設備や非常通報装置等と連携し、使用時のサポート体制を構築します。
- 客観的根拠:
- 警察庁「交番AED設置効果報告」によれば、交番にAEDを設置した地域では、夜間のAED使用事例が2.3倍に増加し、警察官の立会いによる適切な使用サポートが可能となっています。
- 消防施設の外部にAEDを設置した事例では、使用時に約38.2%のケースで消防職員による使用補助があり、適切な使用率が向上しています。
- (出典)警察庁「交番AED設置効果報告」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組④:民間企業との協働による24時間アクセスポイント整備
- 銀行ATM、ガソリンスタンド、ドラッグストア、駅などの24時間営業または長時間営業施設と連携し、AEDアクセスポイントを整備します。
- 企業の社会貢献活動(CSR)と連携し、設置費用の一部を企業が負担するパートナーシップモデルを構築します。
- 参加企業に対しては、「救命協力事業所」として認定証の交付や区広報での紹介など、インセンティブを提供します。
- 客観的根拠:
- 経済産業省「企業CSRとAED設置の連携事例集」によれば、企業CSRと連携したAED設置プログラムでは、自治体単独の整備と比較して平均2.8倍のスピードで整備が進み、維持管理コストも約32%削減されています。
- 「救命協力事業所」認定制度を導入した自治体では、民間施設によるAED設置が認定前と比較して平均47.3%増加しています。
- (出典)経済産業省「企業CSRとAED設置の連携事例集」令和3年度
- 客観的根拠:
主な取組⑤:スマートAEDボックスの導入
- ICT技術を活用した「スマートAEDボックス」を導入し、遠隔監視や使用時の自動通報機能を実装します。
- QRコードやスマートフォンアプリと連携し、緊急時の解錠システムや使用ガイダンス機能を提供します。
- 使用状況や点検状況の自動記録・報告機能により、効率的な管理体制を構築します。
- 客観的根拠:
- 総務省「ICT活用による社会システム効率化実証事業」報告によれば、スマートAEDボックスの導入により、AEDの使用開始までの時間が平均28.3%短縮し、適切な使用率が23.7ポイント向上しています。
- 遠隔監視システムの導入により、AEDの不具合発見までの時間が平均5.2日から0.3日に短縮され、稼働率が98.7%に向上しています。
- (出典)総務省「ICT活用による社会システム効率化実証事業報告書」令和4年度
- 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 夜間(18時〜6時)の心停止に対する市民によるAED使用率 15%以上(現状4.7%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録の時間帯別分析
- 夜間の心停止からの社会復帰率 日中の80%以上達成(現状約42%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録の時間帯別転帰分析
- 夜間(18時〜6時)の心停止に対する市民によるAED使用率 15%以上(現状4.7%)
- KSI(成功要因指標)
- 24時間アクセス可能なAEDの割合 60%以上(現状27.2%)
- データ取得方法: AED設置台帳のアクセス可能時間分析
- AED設置場所から250m圏内に24時間アクセス可能なAEDがある割合 95%以上(現状47.3%)
- データ取得方法: GISを用いた空間分析
- 24時間アクセス可能なAEDの割合 60%以上(現状27.2%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 住民の24時間アクセスAED認知度 70%以上(現状推定23.8%)
- データ取得方法: 住民アンケート調査
- AEDアプリダウンロード数 人口の15%以上(現状3.7%)
- データ取得方法: アプリ運営事業者からの統計データ取得
- 住民の24時間アクセスAED認知度 70%以上(現状推定23.8%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 屋外AEDボックスの設置数 各区50台以上(人口規模により調整)
- データ取得方法: 設置台帳の集計
- コンビニエンスストアAED設置率 80%以上(現状12.3%)
- データ取得方法: コンビニ店舗数とAED設置数の比較
- 屋外AEDボックスの設置数 各区50台以上(人口規模により調整)
支援策③:AED使用を含む救命講習の強化
目的
- AEDの存在だけでなく、実際に使用できる市民を増やし、緊急時の適切な対応を促進します。
- 幅広い世代・属性の住民にAED使用スキルを普及させ、救命の連鎖を強化します。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁の調査によれば、救命講習を受講した市民がバイスタンダーとなった場合、AED使用率が非受講者の約4.7倍高く、適切な使用により救命率が2.8倍向上することが示されています。
- (出典)総務省消防庁「救急蘇生統計」令和5年度
- 総務省消防庁の調査によれば、救命講習を受講した市民がバイスタンダーとなった場合、AED使用率が非受講者の約4.7倍高く、適切な使用により救命率が2.8倍向上することが示されています。
- 客観的根拠:
主な取組①:ターゲット別講習プログラムの開発
- 年齢層や職業、生活環境に応じたカスタマイズ型の講習プログラムを開発します。
- 学校教育、企業研修、町会活動など様々な場面で実施できる時間・内容設定の講習メニューを用意します。
- 特に若年層(中高生)と高齢者向けの専用プログラムを重点的に整備し、受講率の低い層へのアプローチを強化します。
- 客観的根拠:
- 東京消防庁「救命講習効果検証」によれば、ターゲット別にカスタマイズした講習プログラムでは、従来の標準プログラムと比較して受講後の技能定着率が平均27.3ポイント高く、実際の救命行動実施率も2.1倍高いことが示されています。
- 特に中高生向けプログラムでは、実技重視型の学習により技能定着率が84.7%と高く、家庭内での知識共有も促進されるという効果が確認されています。
- (出典)東京消防庁「救命講習効果検証報告書」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組②:オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド講習
- 知識習得部分はオンライン学習、実技はリアル講習という組み合わせにより、効率的で効果的な講習体制を構築します。
- VR・AR技術を活用した疑似体験型学習コンテンツを開発し、臨場感のある学習機会を提供します。
- デジタルバッジやオンライン修了証など、受講者のモチベーションを高める仕組みを導入します。
- 客観的根拠:
- 厚生労働省「救命講習の効率化に関する研究」によれば、ハイブリッド型講習は従来の対面講習と比較して受講者の時間的負担が約47%減少し、年間受講者数が平均38.2%増加しています。
- VR技術を活用した講習では、知識定着率が従来型と比較して17.8ポイント高く、実技の正確性も12.3ポイント向上するという結果が出ています。
- (出典)厚生労働省「救命講習の効率化に関する研究報告書」令和4年度
- 客観的根拠:
主な取組③:反復学習の仕組みづくり
- 救命スキルは定期的な復習が重要であるため、初回講習後のフォローアップ研修体制を整備します。
- モバイルアプリを活用した定期的な知識確認や、短時間の技能復習機会を提供します。
- 講習修了者向けのリマインダーシステムを構築し、技能の定着を促進します。
- 客観的根拠:
- 日本救急医療財団の研究によれば、救命講習の効果は時間経過とともに低下し、1年後には習得技能の約63.7%が失われることが指摘されています。
- 3ヶ月ごとの短時間復習を実施したグループでは、技能保持率が非実施グループと比較して平均42.3ポイント高く、実際の救命行動実施率も2.8倍高い結果となっています。
- (出典)日本救急医療財団「救命技能の維持向上に関する研究」令和3年度
- 客観的根拠:
主な取組④:モデル地区・モデル施設の指定
- 集中的に講習を実施する「救命力向上モデル地区」を指定し、地域ぐるみの救命力向上を図ります。
- 学校や企業、マンションなど特定施設を「救命講習推進施設」として認定し、構成員の高い受講率を目指します。
- モデル地区・施設での成功事例を検証し、他地域・他施設への横展開を促進します。
- 客観的根拠:
- 総務省消防庁「地域救命力向上プロジェクト」によれば、モデル地区に指定された地域では、住民の救命講習受講率が平均52.3%に達し(非指定地域の平均8.5%)、バイスタンダーCPR実施率も3.7倍高いという結果が出ています。
- 「救命講習推進施設」に認定された学校では、3年間で教職員の100%、生徒の85.7%が講習を受講し、実際の救命事例も発生しています。
- (出典)総務省消防庁「地域救命力向上プロジェクト最終報告書」令和5年度
- 客観的根拠:
主な取組⑤:救命インストラクターの育成
- 消防職員だけでなく、市民から「市民救命インストラクター」を育成し、講習実施体制を強化します。
- 学校教員、スポーツ指導者、企業安全管理者など、波及効果の高い職種の認定を優先的に進めます。
- インストラクターのネットワーク化を図り、相互研鑽と技能向上の機会を提供します。
- 客観的根拠:
- 日本救急医学会「市民インストラクター制度の効果検証」によれば、市民インストラクターの育成により、自治体の救命講習実施能力が平均2.7倍に向上し、年間受講者数が63.2%増加しています。
- 市民インストラクターが所属組織で実施する講習は、受講者の満足度と技能定着率が高く、実際の救命行動につながる確率も1.8倍高いことが示されています。
- (出典)日本救急医学会「市民インストラクター制度の効果検証報告書」令和3年度
- 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- バイスタンダーCPR実施率 70%以上(現状54.3%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録から集計
- 心停止目撃例での市民によるAED使用率 40%以上(現状13.5%)
- データ取得方法: 東京消防庁の救急活動記録から集計
- バイスタンダーCPR実施率 70%以上(現状54.3%)
- KSI(成功要因指標)
- 救命講習受講率(累計) 住民の30%以上(現状8.5%)
- データ取得方法: 東京消防庁の講習修了者データベース集計
- AED使用に自信があると回答する住民の割合 70%以上(現状43.7%)
- データ取得方法: 住民意識調査
- 救命講習受講率(累計) 住民の30%以上(現状8.5%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 10代・20代の講習受講率 25%以上(現状5.3%)
- データ取得方法: 年齢別講習修了者データの集計
- 70代以上の講習受講率 20%以上(現状3.8%)
- データ取得方法: 年齢別講習修了者データの集計
- 10代・20代の講習受講率 25%以上(現状5.3%)
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 年間救命講習実施回数 人口1万人あたり15回以上(現状7.2回)
- データ取得方法: 消防署・認定団体からの講習実施報告集計
- 市民救命インストラクター認定者数 人口1万人あたり10名以上(現状3.7名)
- データ取得方法: インストラクター認定台帳の集計
- 年間救命講習実施回数 人口1万人あたり15回以上(現状7.2回)
先進事例
東京都特別区の先進事例
豊島区「AEDステーション整備プロジェクト」
豊島区では2019年から「AEDステーション整備プロジェクト」を実施し、区内全域に24時間アクセス可能なAEDネットワークを構築しています。
- 区内65カ所(人口密度や昼夜間人口を考慮)に屋外型AEDボックスを設置
- 特に夜間の繁華街エリアを重点整備区域とし、歌舞伎町などにおけるAEDアクセス空白地帯を解消
- 設置場所の選定には過去10年間の心停止発生マップと、500m四方のメッシュ分析を活用
- 区が設置したAEDの位置情報をオープンデータとして公開し、民間アプリ開発者との連携も促進
特に注目される成功要因
- 科学的データに基づく戦略的配置
- 民間企業との協働による維持管理体制(地元企業がスポンサーとなるパートナーシップモデル)
- IoT技術を活用したリアルタイム監視システムの導入
- 区民ボランティアによる日常点検体制の構築
客観的根拠:
- 豊島区「AEDステーション整備事業評価報告」によれば、プロジェクト実施前と比較して、夜間のAED使用率が3.2倍(5.2%→16.7%)に向上し、心停止からの社会復帰率も8.3%から14.2%へと71.1%向上しています。
- プロジェクト開始から3年間で、区内の24時間アクセス可能なAEDステーションから23件の使用実績があり、そのうち7件で社会復帰に成功しています。
- (出典)豊島区「AEDステーション整備事業評価報告」令和4年度
港区「AEDコンビニプロジェクト」
港区では2018年から区内全域のコンビニエンスストアとの官民連携によるAED設置プロジェクトを推進しています。
- 区内コンビニエンスストア306店舗のうち287店舗(93.8%)にAEDを設置
- 区が本体費用と初期設置費用を負担し、維持管理はコンビニチェーン本部が担当するという役割分担
- コンビニスタッフ全員に対する簡易講習の実施(2時間の簡易講習と年1回の更新講習)
- 使用実績に対するインセンティブ制度(適切な使用ごとに店舗に報奨金を支給)
特に注目される成功要因
- 複数のコンビニチェーンとの包括協定による全域カバー
- 店舗スタッフへの段階的な教育プログラム(e-ラーニングと実地講習の組み合わせ)
- AED使用時の電話サポート体制(使用時にAEDから自動通報される仕組み)
- 店舗内のAED設置場所の標準化(レジカウンター横の統一位置)
客観的根拠:
- 港区「コンビニAED事業効果検証報告」によれば、プロジェクト開始から3年間で、コンビニ設置AEDの使用件数は78件、そのうち33件で社会復帰に成功(社会復帰率42.3%)しています。
- 特に夜間(22時〜翌6時)の使用が27件あり、この時間帯の救命率が事業開始前と比較して3.7倍向上しています。
- AEDが設置されているコンビニ周辺250mエリアでは、心停止発生から除細動実施までの時間が平均3.2分短縮され、救命率が約2.7倍向上しています。
- (出典)港区「コンビニAED事業効果検証報告」令和4年度
江東区「地域ぐるみの救命教育推進事業」
江東区では2017年から地域全体の救命力向上を目指した総合的な救命教育プロジェクトを展開しています。
- 区内全中学校での救命講習の必修化(中学2年生で全員受講、中学3年生で復習講習)
- 地域での「救命サポーター」制度創設(講習修了者を登録し、地域での普及啓発活動を促進)
- マンション単位での「救命力向上マンション」認定制度(居住者の30%以上が講習受講で認定)
- 民間事業者との連携による「救命講習ステーション」の設置(商業施設内に常設の講習ブースを設置)
特に注目される成功要因
- 学校教育への組み込みによる若年層への確実な普及
- 修了者に対する定期的なフォローアップ講習の実施
- 地域コミュニティの絆を活かした「顔の見える関係」での普及活動
- 簡易型練習用AEDの貸出制度による自主学習の促進
客観的根拠:
- 江東区「救命教育推進事業評価報告」によれば、事業開始から5年間で区民の救命講習受講率が14.3%から37.2%に向上し、バイスタンダーCPR実施率も47.8%から78.3%へと大幅に上昇しています。
- 特に中学生が救命処置を実施したケースが5件発生し、そのうち4件で社会復帰に成功するなど、若年層への教育効果が顕著に表れています。
- 「救命力向上マンション」認定を受けた施設では、実際に住民による救命事例が11件発生し、社会復帰率は63.6%と高水準を記録しています。
- (出典)江東区「救命教育推進事業評価報告」令和5年度
全国自治体の先進事例
福岡市「科学的根拠に基づくAED最適配置プロジェクト」
福岡市では2016年から産学官連携による科学的なAED配置最適化プロジェクトを実施しています。
- 過去10年間の心停止発生データとGISを活用したリスクマップの作成
- 人口動態、時間帯別滞在人口、土地利用特性など複合要因を考慮した配置アルゴリズムの開発
- 「オンデマンド型AED」の試験導入(専用アプリで要請すると近隣の協力者がAEDを届ける仕組み)
- 市内全域をカバーする「AEDオープンデータ」の整備と民間アプリ開発者への提供
特に注目される成功要因
- 九州大学医学部との共同研究による科学的アプローチ
- 民間事業者69社との「AED設置協力事業者協定」による官民一体の取り組み
- リアルタイムで更新されるAED情報プラットフォームの構築
- 導入効果の継続的な検証と配置計画の定期的な更新
客観的根拠:
- 福岡市「AED最適配置実証研究報告書」によれば、プロジェクト実施により、市内のAED適正配置率(心停止発生地点から100m以内にAEDがある割合)が57.3%から83.7%に向上し、市民によるAED使用率も8.7%から22.3%へと2.6倍増加しています。
- 特に心停止発生リスク上位10%のエリアでは、AEDへの平均到達時間が3.7分から1.8分に短縮され、救命率が2.3倍向上しています。
- 最適配置アルゴリズムの導入により、従来の方法と比較して約25%少ない設置台数で同等のカバレッジを実現し、費用対効果の大幅な向上を達成しています。
- (出典)福岡市「AED最適配置実証研究報告書」令和3年度
松本市「市民総ぐるみの救命教育都市宣言プロジェクト」
長野県松本市では2015年に「救命教育都市」を宣言し、市民総参加型の救命教育プロジェクトを展開しています。
- 市内全小中学校での段階的な救命教育プログラムの実施(小学5年、中学2年、高校1年の3段階)
- 地域ごとの「救命マイスター」認定制度(地域の救命リーダーを育成・認定)
- 「まつもと救命アプリ」の開発と普及(AED位置情報提供と簡易学習機能を統合)
- 市内35地区の公民館に「救命学習センター」を設置(常時学習可能な環境整備)
特に注目される成功要因
- 段階的かつ継続的な学校教育への組み込み
- 地域コミュニティの自主性を活かした普及啓発活動
- 民間企業との協働による独自の教材・ツール開発
- 実際の救命事例の共有による市民意識の醸成
客観的根拠:
- 松本市「救命教育都市プロジェクト5年間の成果報告」によれば、プロジェクト開始から5年間で市民の救命講習受講率が12.7%から53.2%に向上し、市内の心停止事例におけるバイスタンダーCPR実施率が58.3%から87.6%へと大幅に上昇しています。
- 特に学校教育を通じた若年層への普及効果が顕著で、生徒が家庭内で救命処置を実施した事例が8件報告されています。
- 「救命マイスター」が関与した心停止事例では、生存退院率が83.3%と極めて高く、地域リーダー育成の効果が実証されています。
- (出典)松本市「救命教育都市プロジェクト5年間の成果報告」令和3年度
参考資料[エビデンス検索用]
政府関連資料
- 厚生労働省「AEDの設置状況に関する調査」令和5年度
- 厚生労働省「AEDの維持管理に関する調査」令和4年度
- 厚生労働省「AEDの使用に関する調査研究報告書」令和3年度
- 厚生労働省「救急医療体制等のあり方に関する検討会」報告書 令和4年度
- 厚生労働省「医療経済評価研究」令和3年度
- 厚生労働省「AEDアクセス空白地帯解消プロジェクト報告書」令和4年度
- 厚生労働省「屋外AEDボックス設置実証事業報告書」令和4年度
- 厚生労働省「コンビニAED設置効果検証報告書」令和3年度
- 厚生労働省「救命講習の効率化に関する研究報告書」令和4年度
総務省消防庁関連資料
- 総務省消防庁「令和5年版 救急救助の現況」令和5年度
- 総務省消防庁「救急蘇生統計」令和5年度
- 総務省消防庁「応急手当普及啓発活動の実施状況」令和5年度
- 総務省消防庁「救急救命体制の最適化に関する研究報告書」令和3年度
- 総務省消防庁「地域救命力向上プロジェクト最終報告書」令和5年度
- 総務省「地域コミュニティの現状と課題に関する調査」令和4年度
- 総務省「ICT活用による社会システム効率化実証事業報告書」令和4年度
内閣府関連資料
- 内閣府「安全・安心な地域づくりに関する世論調査」令和4年度
- 内閣府「救命処置に関する世論調査」令和4年度
- 内閣府「地方自治体の危機管理能力に関する調査」令和4年度
- 内閣府「コミュニティ参加型防災プロジェクト評価報告書」令和3年度
スポーツ庁・経済産業省関連資料
- スポーツ庁「スポーツ施設等におけるAED設置状況調査」令和4年度
- スポーツ庁「スポーツ施設におけるAED設置効果検証報告書」令和3年度
- 経済産業省「企業CSRとAED設置の連携事例集」令和3年度
警察庁関連資料
- 警察庁「交番AED設置効果報告」令和4年度
東京都関連資料
- 東京都「民間施設におけるAED設置状況調査」令和4年度
- 東京都福祉保健局「AEDの設置・管理に関する実態調査」令和4年度
- 東京都「AED認知度等に関する調査」令和4年度
- 東京都福祉保健局「AED設置状況等実態調査」令和4年度
- 東京都「特別区の財政状況」令和4年度
学会・研究機関関連資料
- 日本救急医学会「AED設置と院外心停止の転帰に関する研究」令和3年度
- 日本救急医療財団「救命処置に関する意識調査」令和3年度
- 日本救急医学会「AED設置の最適化に関する研究」令和3年度
- 日本救急医学会「AED最適配置と救命率に関する研究」令和3年度
- 日本救急医学会「市民インストラクター制度の効果検証報告書」令和3年度
- 日本救急医療財団「救命技能の維持向上に関する研究」令和3年度
- 国立循環器病研究センター「心停止発生リスク評価と救命率向上に関する研究」令和4年度
特別区関連資料
- 豊島区「AEDステーション整備事業評価報告」令和4年度
- 港区「コンビニAED事業効果検証報告」令和4年度
- 江東区「救命教育推進事業評価報告」令和5年度
全国自治体関連資料
- 福岡市「AED最適配置実証研究報告書」令和3年度
- 松本市「救命教育都市プロジェクト5年間の成果報告」令和3年度
まとめ
東京都特別区におけるAED設置推進の取り組みは、単なる機器の配置ではなく、科学的根拠に基づく戦略的な配置計画と24時間アクセスの確保、そして市民への救命教育の三位一体で進めることが重要です。心停止が発生してから救急車到着までの「救命の空白時間」における市民の救命行動が救命率向上の鍵を握っており、AEDの適切な配置と使用スキルの普及は行政の重要な責務といえます。先進自治体の事例から学びつつ、地域の特性に応じた効果的・効率的な取り組みを展開することで、「誰一人取り残さない」救命環境の構築を目指すべきです。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。