【2025年12月17日】行政関連ニュースと政策立案のヒント
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
社会経済状況
東京都、物価高対策で「東京アプリ」活用し1.1万円分ポイント付与へ(補正予算案発表)
概要
東京都は2025年12月17日、物価高騰対策などを柱とする総額1,082億円の一般会計補正予算案を発表しました。その中核事業として、都の公式アプリ「東京アプリ」にマイナンバーカードを連携して登録した15歳以上の都民全員に対し、1万1,000円相当のポイントを付与する「生活応援事業」を実施します。ポイントは民間のQRコード決済やショッピングポイント等に交換可能です。当初計画の7,000ポイントから4,000ポイントが上乗せされ、事業規模は約450億円増額されました。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
長引く物価高騰、特にエネルギー価格や食料品価格の上昇が都民生活を圧迫している現状に対し、即効性のある経済支援を行う必要があります。従来の現金給付や振込方式では、申請から給付までに数ヶ月のタイムラグが生じ、かつ莫大な事務コスト(郵送費、振込手数料、人件費)がかかっていました。デジタルプラットフォームを活用することで、これらの配送・事務コストを劇的に圧縮し、かつ迅速に支援を届けることが可能になります。また、行政DXの遅れが指摘される中、都民のデジタルID(マイナンバーカード)と行政プラットフォーム(東京アプリ)の紐づけを一気に加速させるための強力なインセンティブとして機能させる狙いもあります。
具体的なアクション
- 補正予算の議会可決後、12月中旬から下旬にかけて実施される「最終検証(テスト運用)」の結果を踏まえ、速やかに本番稼働できる体制を整備する必要があります。
- 区としては、都のポイント付与開始に合わせ、区民からの問い合わせ(マイナンバーカードの読み取り方法、アプリのインストール方法など)が殺到することを想定し、デジタル支援窓口の人員増強や、高齢者向けスマホ教室の臨時開催を計画します。
- 都のポイントが利用できる区内店舗の周知や、商店街での利用促進キャンペーンを企画し、地域内での消費循環を最大化させる準備を行います。
行政側の意図
短期的には都民の家計負担軽減ですが、中長期的な戦略意図は「行政サービスのデジタル化基盤の確立」にあります。1,000万人規模のユーザーが「東京アプリ」を利用し、公的個人認証済みのIDを持つことになれば、災害時の安否確認、プッシュ型の行政情報配信、各種申請のオンライン化などが飛躍的に進めやすくなります。現金をばら撒くのではなく、デジタルインフラへの投資という意味合いを強く持たせた政策であり、将来的な行政コスト削減への布石と言えます。
期待される効果
家計支援による生活不安の緩和と、個人消費の下支え効果が期待されます。特に、ポイントの交換先を決済事業者に限定することで、貯蓄に回ることなく確実に消費に回る仕組みとなっています。また、行政DXの観点からは、マイナンバーカードの健康保険証利用登録などに続く、カード活用の具体的メリットを提示することで、普及率と利活用率の双方が向上します。
課題・次のステップ
最大の課題は「デジタルデバイド(情報格差)」への対応です。スマートフォンを持たない高齢者や、操作に不慣れな層が支援から取り残されないよう、代替措置や手厚いサポート体制が不可欠です。また、アクセス集中によるシステムダウンのリスク管理も重要です。次のステップとしては、このプラットフォームを活用し、子育て給付金や防災備蓄品の配布など、他の行政サービスもアプリ経由に統合していくことが考えられます。
特別区への示唆
東京都が強力なプラットフォームを構築・普及させることは、各区にとっても大きなチャンスです。独自にアプリを開発・維持するには多額のコストがかかりますが、都のアプリに各区のミニアプリやサービスを連携させることで、低コストで高機能なデジタルサービスを提供できる可能性があります。区の政策企画部門は、都のデジタルサービス局と連携し、API連携の可能性や、区民向け情報の配信枠の確保について協議を開始すべきです。また、生活保護受給者などスマホ保有率が低い層への対応について、都の施策の隙間を埋める区独自の支援策(端末貸与や代理申請サポート)を検討する必要があります。
他区での横展開・応用
港区の「MINATOシティーハーフマラソン」や渋谷区の「ハチペイ」、世田谷区の「せたがやPay」など、独自ポイントや地域通貨を持つ区は、都のポイントとの交換連携や、キャンペーンの時期を合わせた相乗効果を狙うべきです。例えば、「都のポイントを区の地域通貨に交換した場合は10%上乗せ」といった施策を行えば、都の財源を呼び水にして、区内商店街への還流を強力に促すことができます。
2025年11月の訪日外客数、351万人で同月過去最高を更新
概要
日本政府観光局(JNTO)は2025年12月17日、2025年11月の訪日外客数(推計値)を発表しました。総数は351万8,000人となり、前年同月比で10.4%増加し、11月として過去最高を記録しました。1月から11月までの累計は3,900万人を超え、年間での過去最高も更新しています。紅葉シーズンによる欧米豪・中東からの需要増が寄与し、特に米国、カナダ、メキシコ、欧州主要国など19市場で同月の過去最高を記録しました。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
インバウンド需要は地域経済の活性化、雇用の創出、外貨獲得に不可欠なエンジンとなっています。しかし、急速な回復と拡大は、特定の観光地への集中(オーバーツーリズム)を招き、交通混雑やゴミ問題、騒音など、住民生活への負の影響(観光公害)も顕在化させています。行政には、観光による経済的恩恵を最大化しつつ、住民の生活環境を守るための調整機能と、人流の分散化を促す戦略的な誘導策が求められています。
具体的なアクション
- 観光客の動態データを分析し、混雑している主要スポット(浅草、渋谷、新宿等)から、近隣の魅力的な商店街や文化施設へ誘導する「回遊ルート」を造成します。
- 具体的には、デジタルサイネージやSNSでの多言語発信を行い、「知られざる東京」の体験価値を提案します。
- また、ゴミのポイ捨て防止やマナー啓発のための「観光大使(ピクトグラムや多言語対応スタッフ)」を主要駅周辺に配置します。
行政側の意図
「数」の追求から「質」の向上への転換を図ります。単に来訪者数を増やすのではなく、滞在時間を延ばし、消費単価を高め、かつ地域住民と共生できる「持続可能な観光地域づくり」を目指しています。欧米豪などの富裕層旅行者は、混雑を嫌い、本物の文化体験を求める傾向があるため、分散化施策は彼らの満足度向上にも直結します。
期待される効果
観光消費の区内全域への波及、主要駅・観光スポットの混雑緩和、地域住民の観光への理解促進(シビックプライドの醸成)です。また、夜間観光(ナイトタイムエコノミー)のコンテンツ拡充により、宿泊需要を喚起し、日帰り客中心の構造からの脱却が期待できます。
課題・次のステップ
観光ガイドや宿泊業における人手不足が深刻化しており、受け入れ体制の整備が急務です。また、円安による割安感だけでなく、高付加価値なサービスに見合った価格設定(二重価格の検討含む)への転換が必要です。次のステップとしては、MICE(国際会議・展示会)の誘致強化によるビジネス客の取り込みや、長期滞在型観光(ワーケーション)の推進が挙げられます。
特別区への示唆
特別区は、世界中から注目される観光地であると同時に、多くの人々が暮らす生活の場でもあります。区の観光政策課は、商店街振興組合や町会と連携し、「観光客を歓迎するエリア」と「静謐な住環境を守るエリア」のゾーニングを意識したまちづくりを進めるべきです。また、公衆トイレの洋式化・多機能化や、フリーWi-Fiの整備状況を再点検し、観光客のストレスを低減する基礎インフラの質を高めることが重要です。
他区での横展開・応用
墨田区や台東区では、伝統工芸の工房見学や体験プログラムを観光コンテンツ化し、成功を収めています。これを参考に、例えば大田区の町工場見学、豊島区のマンガ・アニメ聖地巡礼、江東区の水辺アクティビティなど、各区の「地場産業」や「文化資産」を体験型観光商品として磨き上げ、近隣区と連携した広域観光ルート(例:城東エリアのアート・工芸巡り)を開発することで、滞在時間を延ばす取組が有効です。
自治体経営
世田谷区議会第4回定例会、学校給食費会計条例の廃止などを可決
概要
世田谷区議会令和7年第4回定例会において、重要な条例案が可決されました。主なものとして、「世田谷区学校給食費会計条例を廃止する条例」が可決されました。これは、給食費の完全無償化や公会計化の進展に伴い、従来の特別会計による管理から一般会計等への移行、あるいは管理手法の抜本的見直しを行うための措置と考えられます。また、職員の給与に関する条例の一部改正、教育長および教育委員の人事案への同意、令和7年度補正予算案も成立しました。一方で、議員に対する懲罰動議については「懲罰を科さない」との決定がなされました。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
学校給食費の無償化は、子育て世帯の経済的負担軽減策として急速に普及していますが、その財源管理や会計処理は自治体ごとに異なり、事務負担の増大が課題となっていました。条例を廃止し、より柔軟かつ効率的な会計処理(一般会計での一括管理など)に移行することで、行政運営の効率化と透明性の確保を図る狙いがあります。また、人事案件の適切な処理や補正予算の成立は、年度末に向けた円滑な区政運営に不可欠です。
具体的なアクション
- 条例廃止に伴う新会計システムの稼働テスト、学校現場(校長、栄養士、事務職員)への事務変更点の説明会実施、保護者に対する「給食費無償化の継続」と「手続きの変更」に関する周知徹底を行います。
- 特に、給食費徴収がなくなることによる学校側の事務負担軽減効果を測定し、教員の働き方改革につなげる視点が重要です。
行政側の意図
「こどもまんなか社会」の実現に向け、給食費無償化を恒久的な制度として定着させるための法的・財務的基盤を整えることです。また、特別会計の整理合理化は、行財政改革の一環としても位置づけられます。
期待される効果
学校現場における徴収・督促業務の完全撤廃による教職員の負担軽減、会計事務の効率化、および保護者負担の恒久的なゼロ化による少子化対策への寄与です。
課題・次のステップ
無償化の財源(年間数十億円規模)を将来にわたりどう確保するかが最大の経営課題です。ふるさと納税による減収が続く中、国への財政措置要望(学校給食法の改正など)を特別区長会を通じて強化する必要があります。また、食材費高騰時においても給食の質(栄養価、食材の産地等)を維持するための「物価スライド制」のような予算措置ルールの検討も必要です。
特別区への示唆
給食費無償化は23区の多くの自治体で実施されていますが、その根拠条例や会計手法は区によりまちまちです。世田谷区のような大規模自治体が会計条例の廃止に踏み切ったことは、他区にとっても事務適正化のモデルケースとなります。各区の管理部・教育委員会は、自区の条例や規則が現状の無償化運用と整合しているか、無駄な事務プロセスが残っていないかを再点検すべきです。
他区での横展開・応用
給食費だけでなく、教材費、修学旅行費、卒業アルバム代などの「学校徴収金」全体についても、公費負担の範囲拡大や公会計化(区が一括徴収・支払)を検討する動きにつながります。足立区や品川区などが進める学校事務のセンター化と合わせて、区長会レベルで「義務教育の完全無償化」に向けた標準モデルを策定する議論を主導することが望まれます。
特別区職員採用情報の更新とオンライン説明会動画の公開(令和8年度向け)
概要
特別区人事委員会は2025年12月17日、各区・組合の採用情報ページを一斉に更新し、令和8年度(2026年度)採用試験に向けた最新情報の提供を開始しました。また、オンライン説明会動画を公開し、Ⅰ類採用試験の変更点や、品川区などの各区個別の魅力紹介、転職希望者向けの情報を発信しています。採用競争が激化する中、年内から情報発信を強化し、早期の母集団形成を図る動きです。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
民間企業の初任給引き上げや採用活動の早期化により、公務員試験の志願者数は減少傾向にあります。特に技術職や専門職、デジタル人材の確保は危機的な状況です。従来の「待っていれば受験者が来る」という姿勢を改め、民間並みの積極的な広報と動機づけを行わなければ、質の高い人材を確保できず、将来的な行政サービスの維持が困難になるためです。
具体的なアクション
- 公開された動画を各区の公式SNS(X, Instagram, YouTube)で拡散し、大学のキャリアセンターや転職サイトへの露出を増やします。
- 動画コンテンツでは、単なる制度説明だけでなく、「若手職員の一日」や「プロジェクトX的な業務裏話」など、仕事のやりがいや職場の雰囲気が伝わる情緒的な訴求を強化します。
行政側の意図
「堅い、古い、前例踏襲」という役所のネガティブなイメージを払拭し、「DX、まちづくり、子育て支援など、社会課題解決の最前線で働ける魅力的なフィールド」として特別区をリブランディングすることです。また、動画活用により、遠隔地の学生や多忙な社会人にもアプローチし、受験者層の多様化を図る意図もあります。
期待される効果
早期の認知獲得による母集団の拡大、仕事内容の具体的理解による採用後のミスマッチ防止(早期離職の抑制)、およびデジタルリテラシーの高い層への訴求です。
課題・次のステップ
動画を視聴した層を実際のエントリー(受験申し込み)にどうつなげるか、コンバージョン率の向上が課題です。視聴者限定の座談会や、OBOG訪問のオンライン受付など、双方向のコミュニケーション施策が必要です。また、氷河期世代や民間経験者など、新卒以外の採用枠についても、ターゲット別の広報戦略を練る必要があります。
特別区への示唆
人事委員会による共通広報は重要ですが、最終的に受験者は「どの区で働きたいか」を選びます。各区の人事課は、特別区共通の動画に頼るだけでなく、自区独自の「求める人物像(パーパス)」や「独自の研修制度・キャリアパス」を動画やnote等で具体的に発信すべきです。特に、若手職員が自らの言葉で語るコンテンツは共感を得やすいため、庁内プロジェクトとして若手職員による広報チームを立ち上げることを推奨します。
他区での横展開・応用
品川区の説明会動画は先進的な事例ですが、他区でも庁内の広報広聴課が保有するスタジオや機材を活用すれば、低コストで高頻度な動画発信が可能です。また、隣接区(例:板橋区と練馬区)で合同の「若手職員トークセッション」を開催し、区ごとのカラーの違いをあえて見せることで、受験者の関心を惹きつける手法も有効です。
環境政策
JFEスチール、風力発電用厚鋼板の性能評価完了(脱炭素資材の供給体制確立)
概要
経済産業省およびJFEスチールは、同社が開発した風力発電支持構造物向けの最大板厚130mmの厚鋼板について、経済産業省による性能評価を完了したと発表しました。従来、国内での使用が制限されていた100mmを超える厚さの鋼材が、公的な安全評価を得たことで、大型の洋上風力発電設備の基礎構造物(モノパイル等)への使用が可能となります。これは、政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)および再エネ主力電源化に向けた重要な技術的進展です。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
2050年カーボンニュートラル実現のためには、再生可能エネルギーの導入拡大が必須であり、特に日本近海でのポテンシャルが高い「洋上風力発電」は切り札とされています。しかし、海外製の風車や部材に依存するとコスト高や供給不安のリスクがあるため、国内サプライチェーンの構築と、それを支える規制の合理化(技術基準の適合性評価)を国が主導する必要があります。
具体的なアクション
- 臨海部を持つ自治体においては、この規制緩和を受けて、洋上風力発電関連の産業集積や、部品組立・メンテナンス拠点の誘致に向けた港湾計画の見直しを行います。
- また、公共工事においても、脱炭素に貢献する新技術や新工法の採用を促す「環境配慮型入札(グリーン調達)」の基準を見直します。
行政側の意図
民間企業の技術開発を許認可権限を持つ国が迅速に評価・承認することで、投資予見性を高め、国内の再エネ産業競争力を強化することです。
期待される効果
洋上風力発電施設の建設コスト削減、工期の短縮、国内鉄鋼業および造船・建設業への経済波及効果、そして日本のエネルギー自給率の向上です。
課題・次のステップ
実際にこれらの巨大な鋼材を加工・運搬・施工できるインフラ(重量物岸壁、SEP船等)の整備や、専門技術者の育成が急務です。
特別区への示唆
洋上風力発電の適地は地方の海域が中心ですが、特別区の臨海部(江東区、大田区、品川区)には、関連企業の拠点や物流機能が集積しています。東京都港湾局と連携し、東京港を「再エネ産業の物流ハブ・メンテナンス拠点」として機能強化する検討を進めるべきです。また、JFEスチールのような区内・都内企業が開発した脱炭素技術を、区の環境学習や産業展示会で積極的に紹介し、地域産業のPRにつなげる視点も重要です。
他区での横展開・応用
内陸部の区においても、こうした高強度・高耐久な鋼材は、橋梁の架け替えや防災施設の強靭化に応用できる可能性があります。都市インフラの長寿命化計画において、新素材の採用によるライフサイクルコスト(LCC)縮減とCO2削減を両立させる検討を行うべきです。
環境省、林野火災予防のための新たな取組を開始
概要
総務省消防庁、林野庁、気象庁は2025年12月17日、記録的な少雨や乾燥時において、林野火災予防のための新たな注意喚起の取組を開始すると発表しました。これは、岩手県大船渡市で発生した大規模林野火災などを教訓としたもので、気象庁の乾燥データをトリガーとして、消防庁や林野庁が自治体を通じて住民や林業関係者に早期の警戒を呼びかける仕組みです。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
気候変動の影響により、従来考えられなかった時期や地域での「極端な乾燥」が発生し、火災リスクが高まっています。一度林野火災が発生すると、消防力が分散され、都市部への延焼や煙害など広範な被害をもたらすため、発生そのものを防ぐ「予防行政」の高度化が不可欠です。
具体的なアクション
- 気象庁からの「記録的な少雨に関する情報」や乾燥注意報を受信した際、自動的に区の防災行政無線、防災アプリ、公式LINE、登録メールで「火気使用の厳重注意・禁止」を配信するフローを策定します。
- また、公園緑地課と連携し、大規模公園や河川敷のバーベキュー場における利用制限の基準を見直します。
行政側の意図
縦割り行政の弊害を排し、気象データ(予兆)と消防防災行動(対策)をダイレクトに結びつけることで、タイムラグのない危機管理体制を構築することです。
期待される効果
焚き火やタバコの不始末による火災発生件数の減少、早期覚知による焼失面積の最小化、住民の防火意識の向上です。
課題・次のステップ
注意喚起だけでなく、実際に違反者(禁止時の焚き火等)が出ないよう、ドローンや消防団によるパトロールを強化する実動体制の確保が課題です。
特別区への示唆
「林野火災は地方の話」ではありません。世田谷区(等々力渓谷等)、練馬区(石神井公園等)、江戸川区(河川敷)など、豊かな緑地を持つ特別区においても、枯草火災のリスクは常にあります。特に冬場の乾燥期は、河川敷の枯草が延焼媒体となりやすいため、この国の新通知を活用し、区民に対してより強いトーンで防火を呼びかける根拠とすべきです。
他区での横展開・応用
荒川区や足立区など河川敷でのレジャーが盛んな区では、乾燥注意報発令時に河川敷のスピーカーから自動で警告音声を流すシステムや、消防団と連携した「土手焼き(野焼き)」の監視強化など、地域特性に合わせた運用が考えられます。
DX政策
デジタル認証アプリ活用による「属性別モバイルチケット」の開発
概要
デジタル庁が提供する「デジタル認証アプリ」と連携し、乗換案内アプリ「ジョルダン」上で、利用者の属性(居住地、年齢、障害の有無など)に応じた券種を自動で購入・表示できるモバイルチケット機能が開発されました。マイナンバーカードを用いた公的個人認証(JPKI)により、対面での証明書提示なしに「区民限定割引」や「学割」「シニア割」などのチケットをスマホ上で即時発行・利用可能にするものです。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
公共施設の利用料やコミュニティバスの運賃において、住民サービスの公平性を保ちつつ(住民割引)、観光客からは適正な対価を得る(定価または観光価格)ためには、窓口での厳格な本人確認が必要ですが、これには多大な人件費と時間がかかります。デジタル認証を活用することで、この確認コストをゼロにし、スムーズな二重価格制や住民優待を実現するためです。
具体的なアクション
- 区営のスポーツセンター、美術館、博物館、動物園、コミュニティバス等の利用料徴収システムにおいて、デジタル認証対応のチケット導入を検討します。
- まずは、利用頻度の高い施設での実証実験を行い、区民の利用しやすさと窓口業務の削減効果を検証します。
行政側の意図
デジタル庁としては、マイナンバーカードの機能を民間サービスに開放し、国民が「カードを持っていて良かった」と実感できるユースケースを増やすことです。自治体としては、受益者負担の適正化と窓口DXを同時に達成する狙いがあります。
期待される効果
住民は証明書を持ち歩くことなく割引を受けられ利便性が向上します。行政は受付スタッフの省人化やキャッシュレス化が進みます。また、正確な属性データ(年代、居住地等)に基づく利用分析が可能となり、施策のPDCA精度が向上します。
課題・次のステップ
高齢者などスマホ操作が苦手な層への対応(紙の証明書との併用)や、導入コスト(システム改修費)の負担、個人情報連携に対する心理的抵抗感の払拭が課題です。
特別区への示唆
特別区のスポーツ施設や文化施設は、相互利用協定がある場合を除き、区民と区外在住者で料金が異なるケースが多いです。この仕組みを導入すれば、「在勤・在学者」の判定も含めて自動化できる可能性があります。特に、指定管理者制度を導入している施設において、次期公募の仕様書に「デジタル認証による住民割引システムの導入」を盛り込むことで、民間活力を利用したDX推進が可能です。
他区での横展開・応用
渋谷区や港区のような観光客が多い区での導入はもちろん、練馬区や板橋区など住宅都市型の区でも、区民プールの夏期混雑緩和(区民優先枠のデジタル発券)などに活用できます。また、23区全体でシステムを共通化できれば、「A区民がB区の施設を使う際は相互割引」といった複雑な連携もデジタル上で瞬時に判定可能になります。
SCSK、建設・設備工事業界向けDXプラットフォーム「BuildIn」の実証実験開始
概要
SCSK株式会社は、建設・設備工事業界向けに、資機材の納期調整業務を一元管理するプラットフォーム「BuildIn(ビルドイン)」の実証実験を2025年12月17日より開始しました。電話やFAX、属人的なExcel管理に依存していた納期調整をクラウド上で共有・可視化することで、業務効率化と工期遅延の防止を図るものです。建設業界の「2024年問題(残業規制)」以降の人手不足に対応するDX施策として注目されます。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
公共工事の発注者である自治体にとっても、受注者(建設業者)の業務効率化は、入札不調の回避や適正な工期での完工に直結する重要事項です。業界全体の生産性向上を支援し、公共インフラの維持管理体制を持続可能なものにする必要があります。
具体的なアクション
- 公共工事の入札要件や総合評価方式において、こうした「建設DXツール(受発注管理、施工管理アプリ等)」の活用を加点対象とする、あるいは工事書類の提出をデジタルデータのみで完結させる「情報共有システム(ASP)」の利用を原則化します。
行政側の意図
建設業界の長時間労働是正と担い手確保を、発注者としての立場から側面支援することです。また、工事進捗の透明化により、監督職員の業務負担も軽減できます。
期待される効果
工期の遵守、品質の確保、建設業者の経営安定化、および将来的な公共工事の担い手不足リスクの緩和です。
課題・次のステップ
中小・零細建設業者へのDXツール導入費用の補助や、発注者(区職員)側のデジタルリテラシー向上が必要です。
特別区への示唆
特別区発注の工事は、大規模なものから小規模な修繕まで多岐にわたります。特に小規模工事を担う地場の中小工務店に対し、こうしたプラットフォームの導入を促すためのセミナー開催や、導入補助金の創設を産業振興課と営繕課が連携して検討すべきです。
他区での横展開・応用
公共施設マネジメント(FM)の観点から、新築工事だけでなく、保全・修繕業務におけるDX化(BIM/CIMデータの活用など)についても、先進区(港区や中央区など)の事例を参考に、各区で導入ロードマップを策定する時期に来ています。
総務管理
ブロードバンドユニバーサルサービス料の徴収開始(2026年から)
概要
NTTドコモなど通信各社は、2026年1月より「ブロードバンドユニバーサルサービス制度」に基づく料金徴収を開始すると発表しました。これは、不採算地域(離島・山間部等)における光ファイバ等のブロードバンド基盤を維持するための交付金制度で、電話のユニバーサルサービス料と同様に、通信利用者全体で1回線あたり月額数円程度を負担するものです。2025年改正電気通信事業法に基づく措置です。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
インターネットはもはや水道や電気と同じ「生活インフラ」であり、居住地に関わらず誰もが高速通信を利用できる環境(デジタル田園都市国家構想の基盤)を維持することは、国民の生存権と等しい重みを持つためです。
具体的なアクション
- 庁内ネットワーク、公用スマートフォン、タブレット、防災無線、IoTセンサー(水位計、見守りタグ等)など、区が契約している全通信回線の数を洗い出し、2026年度予算に新たなランニングコスト増分(数円×回線数×12ヶ月)を確実に計上するよう、各課へ通知します。
行政側の意図
人口減少により市場原理だけでは維持できないインフラコストを、社会全体で薄く広く分担する「支え合い」の仕組みを制度化し、地方のデジタル化と活性化を担保することです。
期待される効果
地方におけるテレワーク、遠隔医療、遠隔教育の基盤が維持され、東京一極集中の是正や地方創生に寄与します。
課題・次のステップ
負担額は少額ですが、区民からの問い合わせ(「なぜ料金が上がるのか」)に対して、制度趣旨を明確に説明できる準備が必要です。
特別区への示唆
特別区自体は不採算地域ではありませんが、区行政は「大口の通信利用者」です。GIGAスクール構想で配備した数万台のタブレット端末や、増加する見守りカメラの回線など、チリも積もれば山となります。この機会に、休眠回線の棚卸しや解約、より安価な法人プランへの見直しを一斉に行い、通信費全体の最適化を図る「通信コスト削減プロジェクト」を立ち上げる良い契機です。
他区での横展開・応用
各区の契約担当課長会などで、通信キャリアとの包括契約によるコスト削減事例を共有し、23区スケールメリットを活かした価格交渉力の強化につなげることも考えられます。
防災政策
都内住宅火災死者が過去10年で最多、電気ストーブ等に注意
概要
東京消防庁の発表によると、2025年の都内住宅火災による死者数が12月15日時点で72人に達し、過去10年で最多となりました(2019年の71人を上回る)。特にこれから迎える12月から3月の冬期にかけては、電気ストーブ等が原因の火災が増加する傾向にあります。消防庁は、寝具の近くでストーブを使わないことや、初期消火の重要性を訴え、住宅用消火器の設置を強く呼びかけています。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
住宅火災の死者は高齢者が大半を占めており、高齢化の進展が死者増の背景にあります。認知機能や身体機能が低下した高齢者を火災から守るには、ハード(消防隊の到着短縮)には限界があり、ソフト(住宅防火対策、見守り)の強化が急務だからです。
具体的なアクション
- 民生委員、訪問介護員、地域包括支援センター職員と連携し、高齢者宅を訪問する際に「暖房器具の配置チェック」を行うリストを配布します。
- 危険な状況(布団のすぐ横に電気ストーブがある等)があれば、その場で改善を促すか、消防署へつなぐ体制を作ります。
- また、感震ブレーカーや住宅用火災警報器の設置助成制度の利用勧奨を強化します。
行政側の意図
火災発生件数そのものを減らすとともに、発災しても「死なない環境」を作ることです。電気ストーブは「火が見えない」ため油断しやすく、衣服への着火(着衣着火)リスクも高いため、特化した注意喚起が必要です。
期待される効果
住宅火災死者数の低減、地域防災力の向上、高齢者の安否確認体制の強化です。
課題・次のステップ
設置助成を行っても「申請手続きが面倒」で利用されないケースが多いため、申請レス(プッシュ型)での現物給付や、取付代行サービスの導入が次のステップです。
特別区への示唆
木造住宅密集地域(木密地域)を抱える区(品川、目黒、大田、中野、杉並、豊島、北、荒川、板橋、足立、葛飾、江戸川など)では、一軒の火災が地域全体を焼き尽くす大火につながるリスクがあります。年末年始の特別警戒期間に合わせ、区広報、防災無線、SNS、町会回覧板を総動員して、「電気ストーブ火災」に特化した具体的な注意喚起を集中的に行うべきです。「火の用心」という抽象的な言葉ではなく、「寝る前はプラグを抜く」「燃えやすいものを1m離す」といった具体的行動指針を示すことが重要です。
他区での横展開・応用
荒川区や墨田区などの防災先進事例を参考に、感震ブレーカーの設置率向上に向けた全戸配布や、町会単位でのスタンドパイプ訓練とセットで防火指導を行うなどの応用が考えられます。また、AIを活用した火災予兆検知システムの導入検討も将来的には視野に入ります。
生活安全政策
東京都カスタマーハラスメント防止条例への民間対応(事例)
概要
2025年4月の「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」施行を前に、民間事業者が対策を強化しています。NOA styleパートナーズは12月17日、条例の定義や禁止行為を反映したマニュアルの全面改定、通話録音・監視カメラによる記録体制の整備、従業員のメンタルサポート制度の導入を発表しました。東京都の条例が、企業の現場対応を変える強力なドライバーとなっている事例です。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
行政窓口は、許認可や税務、福祉など、住民の権利義務に直結する業務が多く、感情的な対立が生じやすい現場です。職員が疲弊し離職することは、行政サービスの質的低下や停滞を招くため、組織として職員を守る安全配慮義務があります。また、条例を制定した東京都(および特別区)が率先して模範的な対応を示す必要があります。
具体的なアクション
- 各区においても、都の条例及びガイドラインに準拠した「カスハラ対応マニュアル」を年度内に策定・改定します。
- 具体的には、窓口への録音機・ウェアラブルカメラの導入、名札のフルネーム表記から「氏のみ」または「ビジネスネーム」への変更、警察OB等の専門相談員の配置、そして「過剰な要求には組織としてNOと言う」方針の明文化です。
行政側の意図
「お客様は神様」という日本独自の過剰なサービス意識を是正し、サービス提供者と受給者が対等な関係で、互いに尊重し合う社会規範を醸成することです。
期待される効果
職員の心理的負担の軽減、休職・離職率の低下、悪質なクレーマーへの対応時間削減による業務効率化、および健全な住民との信頼関係構築です。
課題・次のステップ
「正当な苦情(行政の不手際への指摘)」と「ハラスメント」の線引きを誤ると、住民の声を封殺することになりかねません。職員への研修を徹底し、冷静な判断力を養うとともに、判断に迷った場合の相談体制(ホットライン)を整備することが重要です。
特別区への示唆
民間企業の迅速な対応は、行政にとってもベンチマークとなります。特に「対応レベルの段階化(初期対応~警察連携)」や「メンタルサポートの制度化」は、即座に取り入れるべき要素です。区の総務課・人事課は、職員組合とも協議し、実効性のある防御策を講じるべきです。
他区での横展開・応用
港区や千代田区など、既に先進的な対応指針を策定している区の事例を参考にしつつ、23区共通のデザインで「カスハラ防止啓発ポスター」を作成し、全庁舎の窓口に掲示することで、来庁者に対して「暴力や暴言は許されない」という統一メッセージを発信することが効果的です。
教育政策
文部科学省への「ネット出席制度」の運用改善要望
概要
不登校児童生徒が自宅でICT教材等を用いて学習した場合に、学校長の判断で指導要録上の「出席」扱いとする国の制度(ネット出席制度)について、現場での認知不足や運用基準のバラつきが課題となっています。これを受け、民間事業者と専門家が文部科学省に対し、実態調査の実施や、学校現場へのガイドライン周知徹底、保護者への情報提供の義務化などを求める要望書を提出しました。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
不登校児童生徒数は過去最多を更新し続けており、学校復帰のみをゴールとする従来の支援では対応しきれません。「学びの保障」の観点から、フリースクールや自宅学習など、多様な学習の場を公的に認め、子どもの自己肯定感を育む責任が教育委員会にあるためです。
具体的なアクション
- 教育委員会内に検討チームを設置し、ICT学習による出席認定の区独自のガイドライン(認定要件、学習履歴の確認方法、学校との連携フロー)を策定します。
- これを全小中学校長に通知するとともに、区のWebサイトや広報で保護者向けに「学校に行けなくても、家で頑張れば出席になる」仕組みを分かりやすくアナウンスします。
行政側の意図
制度はあるものの「前例がない」「手間がかかる」として及び腰な学校現場の背中を押し、判断基準を明確化することで、学校間の対応格差(担任ガチャ、校長ガチャ)を解消することです。
期待される効果
不登校児童の学習意欲の維持・向上、進路選択(内申点確保)における不利益の解消、保護者の孤立感・不安感の軽減です。
課題・次のステップ
オンライン学習だけで完結させず、月1回の対面面談(オンライン含む)や、適応指導教室との併用など、社会性涵養のための支援をどう組み合わせるかが課題です。
特別区への示唆
特別区はGIGAスクール構想により1人1台端末が整備されており、ネット出席を実施するハードルは低いです。しかし、運用の温度差は激しいのが現状です。区教委がリーダーシップを取り、「ネット出席認定は例外的な措置ではなく、当たり前の選択肢の一つ」という方針を打ち出すだけで、多くの親子が救われます。
他区での横展開・応用
世田谷区や渋谷区など先進的な不登校支援を行っている区の認定事例や様式を参考に、23区全体で認定プロセスの標準化を図ることが望まれます。また、民間EdTech企業と協定を結び、質の高い学習コンテンツを安価または無償で提供する公民連携モデルも検討に値します。
福祉政策
厚生労働省、介護サービス継続支援と賃上げ補助の詳細通知
概要
厚生労働省は2025年12月17日、補正予算に基づく「医療・介護等支援パッケージ」の詳細運用通知を発出しました。主な柱は、(1)介護職員等への賃上げ支援(月額1万円相当等)、(2)物価高騰・災害対策としての設備整備(エアコン、備蓄品、送迎車の燃料費等)に対する補助金です。訪問介護や通所介護などサービス種別ごとに補助上限額が設定され、事業者の申請に基づき自治体経由で支給されます。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
介護業界は全産業平均と比較して賃金が低く、他産業への人材流出が止まりません。また、物価高騰が経営を直撃し、倒産件数も過去最多水準です。地域の介護基盤(インフラ)が崩壊すれば、家族介護離職の増加など社会全体に深刻な影響が出るため、公費による緊急的な下支えが必要です。
具体的なアクション
- 区内の全介護事業所に対し、補助金の情報を迅速かつ確実に届けます。メール、FAX、事業者向けポータルサイトに加え、ケアマネジャー連絡会などを通じて周知を徹底します。
- また、申請手続きを簡素化(オンライン申請、実績報告の簡略化)し、事務負担を理由に申請をあきらめる事業所が出ないよう配慮します。
行政側の意図
賃上げと同時に、ICT機器や介護ロボットの導入(生産性向上)を要件とすることで、少ない人員でも質の高いケアが提供できる「持続可能な介護現場」への構造転換を促す狙いがあります。
期待される効果
介護職員のモチベーション向上と定着、事業所の経営安定化、利用者へのサービス提供継続です。また、防災備蓄等の整備により、災害時の事業継続計画(BCP)の実効性が高まります。
課題・次のステップ
今回の賃上げ支援は一時的な補助金であり、恒久的な報酬改定までの「つなぎ」です。補助終了後の反動減を防ぐため、次期制度改正への注視が必要です。
特別区への示唆
特別区は地価や物価が高く、地方と同じ報酬単価や補助額では経営が成り立ちにくい構造があります。区独自の「介護職員処遇改善加算」や「家賃補助」「居住支援(社宅借り上げ補助)」などを、今回に国の補助に上乗せして実施することを検討すべきです。特に、ヘルパー不足が深刻な訪問介護事業所への重点支援は、在宅介護を推進する上で最優先課題です。
他区での横展開・応用
練馬区や世田谷区など、区内に多数の事業所を抱える区では、申請事務の処理が膨大になります。RPA(業務自動化ツール)の活用や、近隣区との事務共同化など、行政側の事務効率化も同時に進める必要があります。
地域振興政策
東京都と愛知県の相互PR事業(観光・産業連携)
概要
東京都と愛知県は、相互の広報媒体やイベントを活用して、それぞれの観光資源や産業振興策をPRする連携事業を実施しています。現在、都営地下鉄の駅構内ポスターや車内ビジョンで、愛知県の観光予約サイト「旅ろっ!愛知」や、次世代産業展示会「AXIA EXPO 2026」の広告を展開中です。逆に愛知県内でも東京都のPRが行われます。大都市圏同士がリソースを交換し合う、効率的な広報モデルです。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
地方自治体の広報予算は限られており、主要都市の交通広告などに単独で出稿するには多額の費用がかかります。自治体同士が保有する媒体(庁舎、Webサイト、広報紙、サイネージ)を「バーター(交換)」で提供し合うことで、予算をかけずに広域的なプロモーションが可能になるためです。
具体的なアクション
- 区が友好都市・姉妹都市提携を結んでいる自治体と、観光シーズンの相互PR協定を結びます。
- 例えば、区役所ロビーや区民センターで特産品フェアを開催し、相手方の自治体庁舎では区の観光ポスターを掲示してもらいます。
行政側の意図
単なる観光PRにとどまらず、産業連携(スタートアップ交流など)や、災害時の相互応援協定の実効性を高めるための、平時からの関係強化(顔の見える関係づくり)という側面もあります。
期待される効果
新たな観光客層の開拓、地域経済の活性化、区民への多様な余暇情報の提供、および自治体間のネットワーク強化です。
課題・次のステップ
効果測定が難しいため、QRコードを用いたアクセス解析や、クーポン利用実績などでPR効果を可視化し、事業を継続・改善していく仕組みが必要です。
特別区への示唆
各区には多くの地方都市とのつながりがあります(例:港区と全国の自治体連携、杉並区と南相馬市など)。お祭り等のイベント時だけでなく、日常的にデジタルサイネージの枠を交換し合うなど、DXを活用した低コスト・高頻度な連携へシフトすべきです。
他区での横展開・応用
豊島区(池袋)や台東区(上野)など、地方への玄関口となるターミナルを持つ区は、その立地ポテンシャルを活かし、地方自治体の「東京アンテナショップ」や「サテライトオフィス」の誘致を強化することで、区の魅力向上と賃料収入等の確保につなげることができます。
文化政策
国際交流基金、パリ日本文化会館「高畑勲展」を会期延長
概要
パリ日本文化会館(フランス)で開催中の展覧会「高畑勲展—日本のアニメーションのパイオニア」が、開幕6週間で約2万人が来場するなど予想を上回る反響を呼び、会期を2026年2月7日まで延長することになりました。高畑勲監督の演出術やリアリズムへのこだわりが、フランスの芸術愛好家や若年層から高く評価されています。日本のアニメーションが「サブカルチャー」から「ハイアート(芸術)」として欧州で認められつつある証左です。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
アニメ、マンガ、ゲームなどのコンテンツ産業は、日本の数少ない成長産業であり、最強のソフトパワーです。海外での評価を逆輸入する形で、作品の舞台や制作スタジオがある地域のブランド力を高め、インバウンド誘致やクリエイティブ産業の集積を図る「文化産業政策」が有効だからです。
具体的なアクション
- 区ゆかりのアニメ作品(舞台地、制作会社、原作者居住地)を再調査し、聖地巡礼マップの作成や、区立美術館での原画展開催を企画します。
- また、海外の姉妹都市がある場合は、日本のアニメ文化を紹介するイベントを現地で開催し、文化交流のフックにします。
行政側の意図
コンテンツを観光資源として消費するだけでなく、クリエイターが住みやすく、創作活動しやすい環境(アトリエ支援、家賃補助、発表の場)を整えることで、区を「文化創造都市」として位置づけることです。
期待される効果
欧米豪などからの「コンテンツツーリズム」客の増加、区民のシビックプライド醸成、クリエイティブ企業の区内立地促進です。
課題・次のステップ
著作権処理の複雑さやロイヤリティ料の発生がハードルとなります。制作会社や出版社との包括的な連携協定を結び、スムーズな権利処理ができる関係性を築くことが重要です。
特別区への示唆
練馬区(日本アニメ発祥の地、スタジオ多数)、豊島区(トキワ荘、アニメイト)、杉並区(アニメ制作会社集積数No.1)などは、既にアニメを政策に取り入れていますが、単発のイベントに終わらせず、パリの事例のように「美術館での本格的な展示」としてアカデミックに発信することで、客層を広げることができます。
他区での横展開・応用
墨田区の「すみだ北斎美術館」は、浮世絵という江戸のポップカルチャーを芸術として世界に発信しています。現代のアニメも同様に、「100年後の古典」としてアーカイブし、展示する視点を持つことで、他区との差別化が図れます。
まちづくり、インフラ整備政策
東京スカイツリー、ライティング機器の全面リニューアル
概要
東京スカイツリーは開業以来初めて、ライティング機器を全面リニューアルしました。これにより、より繊細で色彩豊かな演出が可能となり、クリスマスシーズンに合わせた特別ライティングや、周辺施設でのプロジェクションマッピングと連動した光の演出を展開しています。都市の夜間景観(ナイトスケープ)の魅力向上による集客強化を図っています。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
夜間の景観照明(ライトアップ)は、都市の魅力を高め、夜間の外出や滞在(ナイトタイムエコノミー)を促進する効果的なツールです。また、明るい街並みは防犯効果も高く、安全・安心なまちづくりにも寄与します。
具体的なアクション
- 区が管理する橋梁、モニュメント、歴史的建造物、公園などのライトアップ設備を点検し、老朽化した水銀灯などを省エネ性能の高いフルカラーLEDに更新する計画を立てます。
- 季節やイベントに合わせたカラー演出を行うことで、地域の話題作りを行います。
行政側の意図
昼間の観光だけでなく、夜も楽しめる街として滞在時間を延ばし、飲食や宿泊への経済波及効果を狙うことです。
期待される効果
地域イメージの向上(映えるスポット化)、夜間人流の創出、商店街の夜間営業支援、防犯性の向上です。
課題・次のステップ
「光害(ひかりがい)」への配慮が必要です。近隣住宅への光漏れを防ぐ配光制御や、点灯時間の適切な管理、さらには渡り鳥や昆虫などの生態系への影響も考慮した照明計画が求められます。
特別区への示唆
隅田川や荒川、神田川など水辺を持つ区(台東、墨田、江東、中央、新宿など)は、橋梁のライトアップと合わせて、水辺の遊歩道(テラス)の照明整備を進めるべきです。また、足立区の「光の祭典」のように、冬場のイルミネーションを区のメインイベントとして定着させ、区外からの集客装置として活用する戦略も有効です。
他区での横展開・応用
商店街の街路灯をLED化する際に、単なる白色灯ではなく、イベント時に色を変えられるスマート街路灯を導入する助成を行うことで、商店街自身の演出力を高める支援が考えられます。
その他
JCOMと足立区、チャリティーイベント「サンタウォーク」で連携
概要
JCOM株式会社は足立区と連携し、チャリティーイベント「あだちサンタウォーク」を開催しました。参加者がサンタクロースの衣装を着てウォーキングを行い、その参加費の一部が、支援が必要な子どもたちへのクリスマスプレゼント代として寄付される仕組みです。地域企業のCSR(企業の社会的責任)活動と、行政の「子どもの貧困対策」という政策課題がマッチした好事例です。
政策立案への示唆
この取組を行政が行う理由
子どもの貧困や社会的孤立といった複雑な課題に対し、行政の予算や人材だけで対応するのは困難です。民間企業の資金、企画力、発信力、そしてボランティアの熱意を巻き込む「官民連携(PPP)」により、支援の輪を広げ、持続可能な地域福祉モデルを構築するためです。
具体的なアクション
- 区内の企業に対し、「SDGs」や「地域貢献」をテーマとした連携事業の提案を広く募集します。
- 特に、単なる寄付ではなく、社員や区民が参加して楽しめるイベント形式(ファンラン、ウォーク、清掃活動等)を企画し、その収益を子ども食堂や学習支援事業に充てるスキームを提案します。
行政側の意図
企業にとっては「地域社会への貢献によるイメージ向上」、行政にとっては「財源と担い手の確保」、参加者にとっては「楽しみながら社会貢献」という「三方よし」の関係を作ることです。
期待される効果
福祉施策への民間資金の流入、区民の社会貢献意識の醸成、地域コミュニティの活性化、企業の地域への愛着(エンゲージメント)向上です。
課題・次のステップ
特定企業との連携における公平性の担保や、寄付金の透明な使途報告(トレーサビリティ)が重要です。「あのイベントのお金が、具体的にどう子どもたちの役に立ったか」を後日しっかりとフィードバックすることで、継続的な支援につなげます。
特別区への示唆
足立区は「シティプロモーション」と「貧困対策」を巧みに組み合わせています。他区においても、区民まつりやスポーツ大会にチャリティー要素(募金箱設置、チャリティーグッズ販売)を組み込むことはすぐに可能です。また、区内に本社を置く大企業だけでなく、地域密着型の中小企業や商店街とも連携し、地域全体で子どもを支える機運を醸成すべきです。
他区での横展開・応用
包括連携協定を結んでいる企業と、協定が形骸化しないよう、年に一度は必ず具体的な協働プロジェクト(防災訓練、清掃、イベント等)を実施するルールを設けるなど、協定の実効性を高める運用見直しが推奨されます。
