03 国

自民・維新連立で日本は、そして自治体はどう変わるのか?

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

概要

 本稿は、日本の政治情勢における極めて重大な、しかし架空の転換点を分析するものです。すなわち、高市早苗新総裁の誕生後、長年の連立パートナーであった公明党が離脱し、自由民主党(自民党)が新たに日本維新の会(維新)と連立政権を樹立するというシナリオです。この政権の枠組みの変化は、単なるパートナーの交代に留まらず、日本の政策決定の根幹を揺るがす地殻変動と言えます。安定と漸進主義を特徴とした自公連立から、急進的な改革を志向する自民・維新連立への移行は、国の進むべき方向性、そして基礎自治体の行政運営に計り知れない影響を及ぼす可能性があります。

 この新しい連立政権が直面する最大のパラドックスは、その構造にあります。一方で、憲法改正や行政改革といった核心的な政策において、自民党の保守派と維新は極めて高いイデオロギー的親和性を持ち、これまで公明党が「ブレーキ」として機能してきた領域で政策が加速する可能性を秘めています。しかしその一方で、この連立は深刻な数的脆弱性を抱えています。令和7年10月8日時点の衆議院の議席数に基づくと、自民党の196議席と維新の35議席を合わせても合計は231議席となり、単独過半数に必要な233議席に届きません。

 この「過半数割れ」という現実は、新政権の性格を決定づける最も重要な要素となります。いかに野心的な改革案を掲げようとも、法案一つ、予算一つを成立させるために、常に他の野党との交渉と妥協を強いられることになるからです。このイデオロギー的な結束力と、議会運営上の不安定さという二つの側面が、今後の日本の政治、そして我々基礎自治体の政策立案環境を、極めて複雑で予測困難なものにしていくことは間違いありません。本稿では、この構造的変化がもたらす具体的な政策の変容と、それが自治体行政に与える影響を多角的に分析します。

第1部 各党のプロファイル:連立を構成する3党の徹底比較

 今回の政権枠組みの変動を深く理解するためには、まず、この変動の主役である自由民主党、公明党、そして日本維新の会の三党が、それぞれどのような歴史を持ち、いかなる理念と政策を掲げ、どのような支持基盤に支えられているのかを正確に把握することが不可欠です。ここでは、各党の基本的なプロファイルを客観的に整理し、比較検討します。

自由民主党:日本の政治を規定する巨大与党

成り立ちと歴史的経過

 自由民主党は、1955年に自由党と日本民主党という二つの保守政党が合同する「保守合同」によって誕生しました。これにより、野党第一党の日本社会党と対峙する、いわゆる「五五年体制」が確立され、戦後日本の政治の基本的な枠組みが形成されました。戦後の荒廃からの復興期を経て、池田勇人内閣の「所得倍増計画」や佐藤栄作内閣の「沖縄返還」に象徴される高度経済成長期を通じて、日本を世界有数の経済大国へと導く中心的な役割を果たしました。その長い歴史の中で、自民党は単一の思想を持つ政党ではなく、多様な意見を持つ「派閥」の連合体として機能してきました。この内部の多様性が、時代の変化に応じて柔軟に政策やリーダーシップを転換させ、長期にわたる政権担当を可能にしてきた要因の一つです。

基本政策と理念

 自民党の基本理念は、個人の自由と人格の尊厳を重んじる議会制民主主義の確立、日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策、そして経済成長を最優先課題とする点にあります。その政策は特定の社会階層に限定されず、幅広い国民の支持を得ることを目指す「包括政党(キャッチオール・パーティ)」としての性格が強いのが特徴です。政策決定においては、内閣が法案を国会に提出する前に、党内でコンセンサスを形成する「事前審査制」という慣行が長年用いられてきました。これは、党内の一体性を確保し、安定した政権運営を行うための重要なメカニズムでした。今回の公明党から維新へのパートナー交代は、単なる連立相手の変更ではなく、自民党内部の権力バランスが、安定と協調を重視する穏健派から、より国家主義的で財政規律を重んじる保守派へと大きく傾いたことを示唆しています。

議員数

 衆議院において196議席を保有しています(令和7年10月8日時点)。

公明党:連立を離脱した「平和と福祉」の党

成り立ちと支持母体

 公明党は、1964年に宗教団体である創価学会を支持母体として結党されました。その前身は1961年結成の公明政治連盟です。この強固で組織化された支持基盤が、公明党の政治力の源泉であり、国政選挙や地方選挙において、常に安定した票数を確保する原動力となってきました。当初は都市部の低所得者層などを中心に支持を広げましたが、1970年には「政教分離」を明確にし、幅広い国民政党としての道を歩み始めました。

連立政権における役割

 1999年から約25年間にわたり自民党と連立政権を組み、日本の政治に安定をもたらす重要な役割を担ってきました。特に、安全保障政策や憲法改正論議においては、自民党の保守的な政策志向に対して「ブレーキ役」を果たしてきたと評価されています。その政策の主眼は常に「生活者」に置かれており、児童手当の創設・拡充、幼児教育・保育の無償化、飲食料品への軽減税率の導入など、国民の日常生活に密着した政策の実現に大きな実績を残してきました。公明党の連立離脱は、こうした福祉重視の政策が後退する可能性を示唆するだけでなく、自民党の選挙戦略にも深刻な影響を与えます。接戦となる小選挙区において、自民党候補の当落を左右してきたのは、公明党・創価学会の組織票であり、この協力関係の喪失は、今後の国政選挙における自民党の議席獲得能力を根本から揺るがす可能性があります。

議員数

 衆議院において27議席を保有しています(令和7年10月8日時点)。

日本維新の会:改革を掲げる第三極

成り立ちと歴史的経過

 日本維新の会の源流は、橋下徹氏らが率いた地域政党「大阪維新の会」にあります。その結党の原動力は、東京の中央官庁が権限と財源を独占する「中央集権体制」への強い反発でした。大阪府と大阪市の二重行政を解消し、広域行政を効率化する「大阪都構想」を掲げ、地方から国のかたちを変えることを目指しました。2012年に国政に進出して以降、他の第三極政党との合流や分裂を繰り返しながらも、一貫して既成政党とは一線を画す改革政党としての立場を貫いてきました。

基本政策と理念

 維新の理念を最も象徴する言葉が「身を切る改革」です。これは、増税に頼る前に、まず政治家や公務員が自らの定数や報酬を削減し、徹底した行政改革によって財源を生み出し、それを住民サービスに還元するという思想です。具体的には、議員定数・報酬の3割カット、大胆な規制緩和による経済成長、小さな政府の実現、そして憲法改正による統治機構改革などを政策の柱としています。しかし、維新が自民党と連立を組むことは、その存在意義そのものを問う大きな賭けとなります。維新の支持は、自民党を中心とする既存の政治システムへの不満を吸収することで拡大してきました。その批判の対象であった自民党と手を組むことは、自らを「反エスタブリッシュメント」と位置づけてきた党のアイデンティティを曖昧にし、改革を期待した支持者の離反を招くリスクをはらんでいます。このため、維新は連立政権内で目に見える改革の成果を出すことに、極めて強いプレッシャーを感じ続けることになるでしょう。

議員数

 衆議院において35議席を保有しています(令和7年10月8日時点)。

主要政策スタンスの比較

 以下に、これら三党の主要な政策分野におけるスタンスを整理し、その違いを明確にします。この比較から、連立パートナーが公明党から維新に代わることが、いかに大きな政策転換を意味するかが浮き彫りになります。

自由民主党 (LDP)
  • 憲法9条: 改正に前向きであり、自衛隊の存在を明記することを目指しています。
  • 経済・財政: 経済成長を最優先し、状況に応じた機動的な財政出動を是としています。
  • 行政改革: デジタル化の推進など、段階的な改革を進める立場です。
  • 社会保障: 制度の持続可能性を重視し、給付と負担のバランスを見直す改革を志向しています。
  • 地方分権: 地方創生を掲げ、各地域の活性化を支援する政策を推進しています。
公明党 (Komeito)
  • 憲法9条: 平和主義の理念を堅持し、現行9条の維持を基本としています。
  • 経済・財政: 生活者の負担軽減を重視し、子育て支援や社会福祉の拡充など、的を絞った給付策を優先します。
  • 行政改革: 「政治とカネ」の問題に厳しく、政治の透明性向上や腐敗防止を強く求めています。
  • 社会保障: 特に子育て世帯や介護が必要な人々への給付拡充に重点を置いています。
  • 地方分権: 国と地方の協調を基本としつつ、地方の自主性を尊重する立場です。
日本維新の会 (Ishin)
  • 憲法9条: 改正に積極的で、自衛隊の明記や役割の明確化を主張しています。
  • 経済・財政: 「小さな政府」を目指し、消費税や法人税の減税、徹底した規制緩和による民間活力の最大化を訴えています。
  • 行政改革: 「身を切る改革」を断行し、議員定数や公務員人件費の大幅な削減を最優先課題としています。
  • 社会保障: 現行制度の抜本的な再構築を掲げ、将来的にはベーシックインカムの導入も視野に入れています。
  • 地方分権: 中央集権体制を打破し、道州制を導入することで、国から地方への大幅な権限移譲を目指しています。

第2部 連立パートナーの転換:何が「変化」するのか?

 連立の枠組みが自公から自民・維新へと移行することで、日本の政策はいくつかの重要な分野で根本的な転換点を迎えることになります。ここでは、特に「経済・財政」「行政改革」「安全保障・憲法改正」という三つの領域に焦点を当て、具体的に何がどのように変化するのかを詳細に分析します。

経済・財政政策:「小さな政府」への転換

 自公連立政権における経済政策は、自民党の成長志向と公明党の分配・福祉重視の思想が融合した、いわばハイブリッド型でした。しかし、パートナーが維新に代わることで、そのバランスは大きく「小さな政府」と市場原理を重視する方向へと傾きます。

公明党の的を絞った福祉から、維新の広範な改革へ

 公明党は、連立政権内において、常に社会的弱者や中間層の生活を守る視点から政策を提言してきました。子育て支援の拡充、介護サービスの充実、そして生活必需品に対する消費税の軽減税率導入などは、その代表例です。これらの政策は、特定の層の負担を直接的に軽減することを目的とした「的を絞った再分配」政策と言えます。

 一方、維新が掲げる経済政策は、より構造的かつ広範な改革を志向します。消費税や法人税の減税によって経済全体のパイを大きくし、大胆な規制緩和によって企業の投資意欲を刺激することを目指します。社会保障に関しても、現行制度の微修正ではなく、給付付き税額控除やベーシックインカムといった、より市場原理に近い形での制度再構築を掲げています。

新自由主義的改革への傾斜

 この政策転換は、連立政権内の力学が、社会民主主義的な発想から新自由主義的な発想へと大きくシフトすることを意味します。自民党自身も両方の要素を内包していますが、維新との連立は、政府の経済政策を、社会的なセーフティネットの維持よりも、財政規律の確保と市場競争の促進を優先する方向へと強く牽引することになるでしょう。

 これは、基礎自治体の職員にとって、国の政策プライオリティが大きく変化するシグナルです。公明党が強く推進してきた地域向けの社会福祉プログラムや子育て支援策への国の補助が削減され、その代わりに国レベルでの減税や規制緩和が優先される可能性があります。その結果、地方自治体は、より少ない財源で、より多くの役割を担うことを求められるようになるかもしれません。

行政改革:「身を切る改革」の全国展開

 自民・維新連立がもたらす最も劇的な変化は、行政改革の分野で起こる可能性があります。維新がその党是として掲げ、大阪で実践してきた「身を切る改革」が、国政の場で本格的に展開されることになるからです。

国家の設計図としての「大阪モデル」

 「身を切る改革」は単なるスローガンではなく、大阪府・市において具体的な数値的成果を伴って実行されてきた、急進的な行財政改革の手法です。その実績は、今後の国政改革を占う上で極めて重要な意味を持ちます。

  • 財政再建: 大阪市は、平成17年度に5兆5,022億円あった市債残高を、令和3年度には3兆871億円まで、実に2兆4,151億円も削減しました。
  • 人件費削減: 平成17年度から令和3年度にかけて、県費負担教職員の影響を除いた市職員数を約22,000人(約46%)削減しました。
  • 外郭団体の整理: 市職員の天下りの温床とされてきた外郭団体を、平成17年度の144団体から令和3年度には13団体へと、約90%削減しました。
  • 民営化の推進: 地下鉄事業の民営化など、公営事業の経営形態の見直しを強力に推進しました。
地方自治体への直接的な影響

 これらの大阪での実績は、自民・維新連立政権が国レベルでどのような改革を目指すかを具体的に示しています。中央省庁の再編や特殊法人の統廃合はもちろんのこと、地方自治体に対しても同様の改革を強く求めてくることが予想されます。

 特別区の職員の皆様にとって、これは抽象的な政策論争ではなく、自らの組織構造、予算、人員、そして公共サービスのあり方そのものに対する直接的な挑戦となります。大阪のデータが示すのは、サービス提供の質よりも、コスト削減と効率化を至上命題とする行政運営モデルです。これまで当たり前とされてきた公共サービスの範囲や水準が、ゼロベースで見直される時代が到来する可能性があります。

安全保障と憲法改正:タカ派路線への加速

 連立パートナーの交代は、日本の安全保障政策と憲法に関する議論の方向性を決定的に変える可能性があります。これまで自公連立の中で慎重論の重しとなってきた公明党が去り、改憲に積極的な維新が加わることで、議論は「ブレーキ」から「アクセル」へと踏みかえられることになるでしょう。

「加憲」から「改正」へ

 公明党は、憲法改正に対して「加憲」という独自の立場を取ってきました。これは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の三原則と、戦争放棄を定めた第9条は堅持しつつ、時代の変化に対応するために環境権やプライバシー権といった新しい権利を「加える」べきだという考え方です。特に、自衛隊の海外での活動拡大などにつながる9条の改正には、一貫して慎重な姿勢を保ち、連立内での歯止め役を果たしてきました。

 これに対し、自民党と維新は、憲法改正、特に9条の改正に極めて積極的です。自民党の改正草案では、9条に「国防軍」を保持することを明記し、内閣総理大臣を最高指揮官と位置づけています。さらに、大規模災害や有事の際に内閣が法律と同等の効力を持つ政令を制定できる「緊急事態条項」の創設も掲げています。

 維新もまた、9条に自衛隊の存在を明記し、その活動範囲を明確化することや、緊急事態条項の導入、さらには憲法違反の法律を審査する「憲法裁判所」の設置などを主張しており、自民党の保守派と軌を一にしています。

戦後日本の大きな転換点

 自民・維新連立の誕生は、戦後日本において最も強力で、イデオロギー的に結束した改憲勢力が誕生することを意味します。公明党という「拒否権」を持つプレイヤーがいなくなることで、9条改正や緊急事態条項の導入に向けた具体的な政治プロセスが一気に加速する可能性があります。これは、日本の安全保障のあり方や、国家と個人の関係性を根本から変えうる、歴史的な転換点となるでしょう。特に、緊急事態条項は、危機対応を名目に、通常の民主的プロセスを迂回して、中央政府が地方自治体や個人の権利に強力に介入する権限を認めるものであり、公務員としてその内容と影響を注視する必要があります。

第3部 変わらないもの、そして新たな課題

 連立パートナーが交代することで多くの政策が変化する一方で、政権の基本的な性格や、新たに生じる構造的な課題も存在します。ここでは、政策の継続性と、新政権が抱える本質的な不安定性について考察します。

変わらない政策の基軸

保守的な統治と経済成長の優先

 政権の基本的な方向性は、引き続き保守的なものとなります。日米同盟を外交の基軸とし、自由で開かれたインド太平洋の実現を目指すという外交・安全保障の基本方針は揺るぎません。また、経済政策においても、その手法は福祉重視から市場重視へと変わるものの、経済成長を国家の最優先課題と位置づける点では、自民党と維新の間に大きな隔たりはありません。企業活動を活性化させ、国全体の富を増やすことが、最終的に国民生活を豊かにするという成長志向の哲学は、新政権においても維持されるでしょう。

新たな課題:政権運営の不安定化

 新政権が直面する最大の課題は、その野心的な改革アジェンダとは裏腹に、極めて脆弱な議会基盤の上に成り立っているという現実です。

過半数割れの現実

 前述の通り、自民・維新両党の衆議院議席を合わせても231議席であり、単独過半数の233議席には2議席足りません。これは、連立与党が単独ではいかなる法案も、そして国家の根幹である予算案すらも可決できないことを意味します。すべての議案の採決において、他の野党の協力が不可欠となるのです。

 この状況は、野党、特に24議席を持つ国民民主党のような中道政党に、極めて大きな影響力を与えることになります。彼らは、法案への賛成と引き換えに、自党の政策を連立政権の政策に盛り込むよう要求する「キングメーカー」としての役割を担うことができます。これにより、政権運営は常に綱渡りの状態となり、政策の一貫性や予見可能性が著しく低下するリスクがあります。

改革のジレンマ

 この構造的な不安定性は、自民・維新連立を深刻なジレンマに陥れます。一つは、他の野党の協力を得られずに重要法案を成立させることができず、公約した改革を実行できない「何も決められない政権」となる可能性です。これは、両党の支持者を失望させ、政権基盤をさらに弱体化させるでしょう。もう一つは、法案成立のために野党に大幅な譲歩を重ね、自らが掲げた改革の理念を骨抜きにしてしまう可能性です。特に、改革の純粋性を重んじる維新の支持者にとって、このような妥協は裏切りと映りかねません。

 この不安定な議会運営は、長期的な計画に基づいて政策を立案・実行する必要がある基礎自治体にとって、大きなリスク要因となります。国の交付金や補助金を前提とした事業計画が、国会の政局次第で承認されたり、覆されたりするような状況が常態化すれば、安定的で継続的な行政サービスの提供は極めて困難になります。

第4部 基礎自治体(特別区)への影響

 自民・維新連立政権の誕生は、国全体の政策転換を通じて、基礎自治体、とりわけ東京都特別区の行政運営に直接的かつ多岐にわたる影響を及ぼします。ここでは、特に重要と考えられる三つの分野について、その具体的な影響を考察します。

地方分権と道州制の議論の本格化

 維新の党是の一つは、現在の都道府県を廃止・再編し、より広域的な行政体である「道州」を設置する「道州制」の導入です。これは、外交・安全保障など国が担うべき役割と、住民に身近なサービスを提供する基礎自治体の役割を明確に分離し、その中間にある広域行政を効率化しようという構想です。自民・維新連立政権が誕生すれば、この道州制の導入が、国の統治機構改革の最重要課題として本格的に議論される可能性があります。

 この議論は、東京都と23の特別区からなる現在の行政システム、すなわち「都区制度」のあり方を根本から問い直すことにつながります。新たな道州と基礎自治体である特別区との間で、権限や財源をどのように配分するのか。現在の都が担っている広域的な事務(例えば、上下水道や消防など)を道州が引き継ぐのか。これらの議論は、特別区の自治の範囲や財政基盤に直接的な影響を及ぼす、極めて重要なテーマとなるでしょう。

公共サービスの民営化・規制緩和の波

 維新が大阪で実践してきた行政改革のもう一つの柱は、公共サービスの担い手として民間活力を積極的に導入することです。公営地下鉄の民営化や、ごみ処理事業、市営住宅管理への民間活力導入などがその例です。この「民間でできることは民間に」という思想は、自民・維新連立政権下で全国的な政策トレンドとなる可能性があります。

 これにより、特別区が現在提供している様々な公共サービスに対しても、民営化や市場化テストを求める圧力が強まることが予想されます。対象となり得るのは、区営バスのような交通事業、保育所や学童クラブといった子育て支援サービス、図書館やスポーツ施設といった文化・社会教育施設など、多岐にわたります。民間活力の導入は、コスト削減やサービス向上の機会をもたらす可能性がある一方で、採算の取れない地域でのサービス低下、低所得者層の利用機会の制限、そして行政としての公共性・公平性の担保といった、新たな課題を生み出すリスクも伴います。

財政への影響:交付金削減と自立の圧力

 維新が志向する「小さな政府」と、国レベルでの財政規律の重視は、地方財政の根幹をなす地方交付税交付金や国庫支出金の削減につながる可能性があります。特に、「身を切る改革」の論理に基づけば、国が財政難にある中で、地方への財政移転を聖域とすることは考えにくいでしょう。

 その結果、特別区は、これまで以上に自らの財源を確保し、歳出を抑制する「自立」への圧力を受けることになります。これは、特別区自身が、望むと望まざるとにかかわらず、独自の「身を切る改革」を断行せざるを得ない状況に追い込まれる可能性を示唆しています。

 これら三つの影響を総合すると、自民・維新連立政権下の基礎自治体は、より自律的な経営を求められる一方で、国からは市場原理に基づいた特定のガバナンスモデル(大阪モデル)の導入を強く促されるという、新しい時代に直面することになります。国と地方の安定的で予測可能な関係が終わりを告げ、自治体は自らの存在意義と役割を、より戦略的に問い直すことを迫られるでしょう。

まとめ

 自民党と日本維新の会による新たな連立政権の樹立は、安定と漸進主義を特徴とした自公連立時代からの決別であり、急進的な保守改革路線への大きな賭けと言えます。この政権は、憲法改正や行政改革といった核心的課題において高いイデオロギー的親和性を持つ一方で、衆議院で過半数を確保できていないという構造的な脆弱性を抱えています。この「理念の強さ」と「基盤の弱さ」のアンバランスが、今後の政権運営を規定する最大の要因となるでしょう。

 この新しい政治環境は、基礎自治体である特別区の職員にとって、これまでにない挑戦と不確実性をもたらします。短期的には、国の補正予算や交付金の動向を注視し、物価高に苦しむ住民や事業者への支援を機動的に行う必要があります。同時に、中長期的には、道州制の導入や公共サービスの民営化といった、国が進めるであろう構造改革の大きな波に備えなければなりません。

 何よりも重要なのは、国の財政・金融政策がはらむマクロ経済のリスクが、いつ我々の足元である区の財政や住民生活に波及してもおかしくないという緊張感を持ち続けることです。予測不可能な時代において、自治体には、国の政策動向を冷静に分析し、変化に柔軟に対応する「両利きの行政運営」が求められます。そして、その上で、将来世代に過度な負担を先送りしないための、慎重かつ計画的な財政運営と、地域の実情に根差した自治を守り抜くという強い意志の重要性を、改めて強調したいと思います。

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