2025.09.27 05 特別区(23区) 【2025年9月29日】行政関連ニュースと政策立案のヒント masashi0025 目次 社会経済状況【東京商工会議所】都内中小企業の景況感、3期ぶりにプラス圏内に改善。ただし先行きには慎重な見方【厚生労働省】「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査」結果を公表【国土交通省】貸切バスの運賃・料金引き上げを公示自治体経営【国土交通省】PPP/PFI推進に向けた実務者向けセミナーの開催【ジェトロ】欧州最大のディープテック支援機関EICと連携し、日本企業の課題解決を支援環境政策【東京都】気候変動対策フォーラム「TIME TO ACT Forum 2025」の開催【環境省】グリーンファイナンスセミナーの開催【杉並区】グリーンインフラの推進に向けて園児たちがお米作り【江戸川区】区独自の令和6年度航空機騒音測定結果を公表DX政策【目黒区】「統合型GIS構築・保守業務委託」の事業者を公募型プロポーザル方式により募集【東京メトロ】AI画像解析によるレールの腐食検知システムを稼働開始【株式会社大和総研】デジタル証明書サービス「TrustX」の提供開始【JTP株式会社】AI駆動開発ソリューション「daimon」の提供開始総務管理【消費者庁】消費者安全法に基づく事故情報データバンクへの新規登録防災政策【大田区】株式会社ハミングバードと「災害時における無人航空機による情報収集等に関する協定」を締結【国土交通省】北海道(釧路)で千島海溝地震を想定した大規模津波防災総合訓練を実施【世田谷区】マンション防災共助促進事業の二次募集を実施生活安全政策【杉並区】マンションでモバイルバッテリーから出火する火災が発生【新宿区】新宿駅東南口高架下喫煙所の管理運営事業者を募集子育て、子ども政策【目黒区】菅刈地域における新たな子どもの居場所づくりを開始福祉政策【厚生労働省】「令和6年度使用者による障害者虐待の状況等」結果を公表【江戸川区】「就労選択支援事業」を10月から開始健康、保健政策【新宿区】令和7年度の新型コロナウイルスワクチン接種事業を発表【中央区】「ちゅうおうヘルス&ウォーク」でポイント2倍キャンペーンを実施地域振興政策【中野区・杉並区・豊島区】「アニメ・マンガフェス2025」を連携開催【板橋区】鉄道4社局と共催で「『板橋』を巡るスタンプラリー」を開催【江戸川区】TGC協力のもと「INTERNATIONAL SDGs FES」を開催まちづくり、インフラ整備政策【東京都】新宿駅西口、9月27日から交通動線を大幅変更社会経済状況 【東京商工会議所】都内中小企業の景況感、3期ぶりにプラス圏内に改善。ただし先行きには慎重な見方 概要 出典 東京商工会議所 ニュース概要 東京商工会議所が9月26日に発表した「東商けいきょう調査」(2025年7~9月期)によると、都内中小企業の業況DIは前期比2.4ポイント改善のプラス0.6となり、3期ぶりにプラス圏に浮上しました。コスト高は続くものの、貿易摩擦への懸念が和らいだことが背景にあります。1 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 自治体にとって地域経済の根幹をなす中小企業の景況感は、税収や雇用情勢に直結する最重要指標です。定点観測を通じて経済の実態を正確に把握し、効果的な経済政策や経営支援策を立案するための基礎情報として活用します。 具体的なアクション 東京商工会議所が、東京23区内の中小企業を対象に四半期ごとに景況感を調査し、業況DI(「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた指数)などの指標を算出・公表しています。 行政側の意図 景況感の変動要因を分析することで、中小企業が直面する課題を具体的に特定する意図があります。今回の調査では「コスト高」という継続的な課題と、「相互関税への不透明感の緩和」という一時的な好材料が明確に区別されています。1 期待される効果 調査結果を政策に反映させることで、的を射た中小企業支援が可能になります。また、調査結果の公表自体が、企業経営者にとっては自社の立ち位置を確認し、将来の経営判断を行う上での参考情報となります。 課題・次のステップ 来期(10~12月期)の見通しDIはマイナス0.3と悪化を見込んでおり、個人消費の停滞や最低賃金引上げへの対応が課題です。今後はこれらの課題に焦点を当てた支援策の検討が急務となります。1 特別区への示唆 景況感改善の背景がマクロな貿易環境である一方、先行き懸念は最低賃金引上げなどミクロな経営課題に起因する点に注目すべきです。区の政策は、後者のような地域事業者が日々直面する具体的な課題の解決に資するものである必要があります。 他区での横展開・応用 本調査で「正社員の退職防止のための『防衛的賃上げ』が6割以上」という実態が明らかになりました。1 これは、賃上げが必ずしも企業の成長実感からではなく、人材流出への危機感から行われていることを示唆します。各区は、この「守りの賃上げ」が企業の体力を過度に消耗させないよう、生産性向上支援とセットで人材定着支援策を講じることが重要です。例えば、IT導入補助金と働きがい向上コンサルティングを組み合わせた支援などが考えられます。 【厚生労働省】「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査」結果を公表 概要 出典 厚生労働省 ニュース概要 厚生労働省は、正社員以外の労働者の割合や就業理由、待遇などの実態を把握するため実施した「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果を公表しました。調査は事業所と個人の双方を対象としています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 多様化する働き方の実態を全国規模で把握し、労働政策や社会保障制度の設計に必要な基礎データを得るためです。特に非正規雇用の動向は、経済格差や貧困問題、社会保険の適用拡大といった重要課題に直結します。 具体的なアクション 全国の事業所と労働者を対象に、雇用形態、労働時間、賃金、就業理由などについて大規模なアンケート調査を実施し、結果を集計・公表しました。 行政側の意図 政策立案の根拠となる客観的なデータを確保する意図があります。労働者が非正規雇用を自発的に選んでいるのか、不本意ながら選択しているのかといった意識面を把握することで、より実態に即した支援策を検討します。 期待される効果 調査結果に基づき、非正規労働者の待遇改善やキャリアアップ支援、セーフティネットの強化といった具体的な政策が推進されることが期待されます。 課題・次のステップ 公表されたデータを分析し、地域や業種ごとの特性を明らかにすることです。また、ギグワーカーなど新たな就業形態の動向を継続的に追跡する調査手法の確立も課題となります。 特別区への示唆 各区は、この全国調査の結果をベンチマークとして、区内の労働市場の特性を分析すべきです。例えば、区内の非正規雇用の割合や理由が全国平均とどう違うかを把握することで、独自の雇用支援策や生活相談体制を構築できます。 他区での横展開・応用 この全国調査のフレームワークを参考に、複数の区が連携して「特別区版・就業形態実態調査」を実施することが考えられます。これにより、より地域の実情に即した詳細なデータを取得し、区ごとの産業構造の違いを反映した共同の雇用促進プログラムや、広域的な人材マッチング事業を展開できます。 【国土交通省】貸切バスの運賃・料金引き上げを公示 概要 出典 国土交通省 ニュース概要 国土交通省は、貸切バス運転者の不足に対応するため、賃金水準の引き上げ原資を確保することを目的として、新たな運賃・料金を公示しました。関東地方では大型バスの1時間あたりの運賃が7,190円に改定されます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 公共交通の重要な一翼を担う貸切バス事業の持続可能性を確保するためです。運転者不足は安全運行に直結する深刻な問題であり、公的に運賃下限を定めることで、賃上げの原資を確保させ、人材流出を防ぎます。 具体的なアクション 貸切バスの運賃・料金の基準額を定めた公示を改正し、各地方運輸局管内での新たな運賃額(上限・下限)を示しました。事業者はこれに基づき、運賃変更の届出を行う必要があります。 行政側の意図 運賃引き上げという直接的な介入を通じて、業界全体の賃金水準を底上げする狙いです。これにより、全産業平均との賃金格差を是正し、若年層や転職者にとって魅力ある職場環境を創出することを目指しています。 期待される効果 運転者の待遇改善が進み、人材確保・定着が促進されること。また、事業者の経営基盤が安定し、安全への投資が維持されることが期待されます。 課題・次のステップ 運賃改定が確実に運転者の賃金上昇に繋がっているかを継続的に監視することです。また、利用者への負担増に対する理解促進や、需要喚起策との両立も課題となります。 特別区への示唆 区が主催するイベントや高齢者・児童の施設外活動などで貸切バスを利用する際の予算に直接影響します。今後の契約において、新料金体系を前提とした予算編成と、事業者選定時の価格交渉が必要になります。 他区での横展開・応用 この運賃改定は、区が直接雇用するバス運転手(コミュニティバス等)や、委託する清掃・給食などの他業種の労働者の賃金水準を見直すきっかけとなり得ます。民間セクターの賃金が政策的に引き上げられる中、公契約における労働者の待遇も連動して改善する必要がないか、全庁的に点検することが応用展開として考えられます。 自治体経営 【国土交通省】PPP/PFI推進に向けた実務者向けセミナーの開催 概要 出典 国土交通省 ニュース概要 国土交通省は9月26日、公共施設等の整備・運営に民間活力を導入するPPP/PFI手法の推進を目的とした実務者向けセミナーの参加者募集を開始しました。セミナーでは、官民双方の視点から具体的な実例を解説します。2 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 厳しい財政状況の中で質の高い公共サービスを維持・向上させるため、民間の資金やノウハウを活用するPPP/PFIは有効な手段です。国が主導して自治体職員の実務能力向上を図り、全国的な活用を促進します。 具体的なアクション 国が主催者となり、PPP/PFIの先進事例や契約実務、リスク管理など、自治体職員が直面する具体的な課題に焦点を当てたセミナーを開催し、知見の共有と人材育成の機会を提供します。 行政側の意図 PPP/PFIの導入を「総論賛成」で終わらせず、実際のプロジェクト組成に繋げる「各論」の実行力を高める意図があります。「実務者向け」と銘打つことで、概念の普及段階から、具体的な案件形成を支援する段階へ政策を深化させる狙いです。 期待される効果 自治体職員の専門知識やノウハウが向上し、より効果的で住民メリットの大きいPPP/PFI事業の組成が期待されます。また、官民双方のリスク分担が適切に行われ、長期的に安定した事業運営が可能になります。 課題・次のステップ セミナーで得た知識を、各自治体が抱える個別の課題(例:老朽化した区民施設の更新)にどう応用していくかが課題です。次のステップとして、自治体ごとの具体的な案件形成を支援する、より踏み込んだコンサルティング機能が求められます。 特別区への示唆 国が「実務」に焦点を当て始めたことは、PPP/PFIが標準的な行政手法の一つとして定着しつつあることを示しています。各区は、庁内にPPP/PFI案件を適切に評価・管理できる専門人材を育成・確保することが、将来の自治体経営における競争力に直結します。 他区での横展開・応用 本セミナーのような国の研修機会を積極的に活用することはもちろん、特別区間でPPP/PFIに関する勉強会や情報交換会を自主的に開催することも有効です。特に、事業類型(例:公園、図書館、学校給食センター)ごとに担当者が集まり、仕様書作成のポイントや事業者選定の失敗談などを共有することで、集合知を形成し、各区の担当者が単独で抱えがちな課題を効率的に解決できます。 【ジェトロ】欧州最大のディープテック支援機関EICと連携し、日本企業の課題解決を支援 概要 出典 経済産業省(日本貿易振興機構(ジェトロ)) ニュース概要 ジェトロは欧州イノベーションカウンシル(EIC)と連携し、日本企業が提示する課題に対し、EICが支援する欧州のスタートアップ26社が解決策を提案するイベントを開催します。日EU間のビジネスアライアンス形成を促進します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国の機関がハブとなり、国内企業と海外の最先端技術を持つスタートアップとのマッチングを促進するためです。これにより、国内の産業競争力を強化し、オープンイノベーションを加速させることが国の経済政策として重要です。 具体的なアクション ジェトロが国際協業連携プラットフォーム「J-Bridge」を基盤に、EICと連携体制を整備。日本企業が課題を提示し、選定された欧州スタートアップが解決策を提案するピッチイベントと個別面談会を企画・実施します。 行政側の意図 日本企業が単独ではアクセスしにくい欧州の質の高いスタートアップ群への橋渡し役を担う意図があります。公的機関が連携することで、信頼性を担保し、国境を越えた技術協力のハードルを下げます。 期待される効果 日本企業が自社の課題解決に繋がる革新的な技術やソリューションを発見し、具体的な協業や技術導入に繋がることが期待されます。 課題・次のステップ イベント後の具体的な協業成約率を高めるためのフォローアップ支援が重要です。また、大企業だけでなく、中堅・中小企業も参加しやすいようなプログラム設計が次のステップとして求められます。 特別区への示唆 区内企業のグローバル展開や技術革新を支援する上で、このような国のプラットフォームの存在を周知し、活用を促すことが重要です。区の産業振興担当部署が、ジェトロの事業説明会を区内で開催するなどの連携が考えられます。 他区での横展開・応用 この「公的機関が海外の技術と国内企業を繋ぐ」というモデルは、区レベルでも応用可能です。例えば、特定の産業(製造業、ITなど)が集積する区が、海外の特定都市(姉妹都市など)と連携し、「〇〇区-△△市 テクノロジーマッチングデー」のような小規模イベントをオンラインで開催することが考えられます。 環境政策 【東京都】気候変動対策フォーラム「TIME TO ACT Forum 2025」の開催 概要 出典 東京都 ニュース概要 東京都は9月26日、気候危機行動ムーブメント「TIME TO ACT」の一環として、国際フォーラム「TIME TO ACT Forum 2025」を10月7日に開催すると発表しました。「都市から世界へ」をテーマに、緩和と適応の両面から議論を深めます。3 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 気候変動という地球規模の課題に対し、世界の人口や経済活動が集中する「都市」が果たすべき役割は極めて大きいです。都がリーダーシップを発揮し、国内外の都市間連携を強化することで、対策を加速させる目的があります。 具体的なアクション 東京都が主催となり、国内外の都市の代表者や専門家を招聘した国際フォーラムを開催します。専用ウェブサイトでライブ配信も行い、都の先進的な取組や議論の成果を広く国内外に発信します。4 行政側の意図 国レベルの交渉だけでなく、都市が直接連携する「都市外交」を通じて、実効性のある気候変動対策をリードしていくという都の強い意志を示す意図があります。これにより、環境先進都市としての東京のブランドイメージを向上させます。 期待される効果 世界の先進都市との知見共有が進み、都や区の気候変動対策がより洗練されることが期待されます。また、都のリーダーシップが国内外で評価されることで、環境分野における国際的なプレゼンスが向上します。 課題・次のステップ フォーラムでの議論を一過性のものに終わらせず、具体的な共同プロジェクトや政策連携に繋げていくことが課題です。参加都市との継続的な対話の枠組みを構築し、成果をフォローアップしていく必要があります。 特別区への示唆 都が推進する「都市外交」において、特別区が実施する先進的な環境政策は、東京の取組を具体的に示す重要な「実績」となります。各区は、自区の環境プロジェクトを「世界に向けたショーケース」となり得るという視点で磨き上げ、都と連携して発信していくことが重要です。 他区での横展開・応用 ある区の成功事例(例:フードドライブと連携した食品ロス削減事業)を、都が主催するこのような国際的な場で発表し、他の特別区や海外都市に共有する機会を設けることが考えられます。これにより、一つの区の取組が「東京モデル」として発信され、他の区にとっては先進事例を学ぶ機会となり、都全体としての政策レベルの向上に繋がります。 【環境省】グリーンファイナンスセミナーの開催 概要 出典 環境省 ニュース概要 環境省は9月26日、脱炭素化など環境分野への民間資金導入を促す「グリーンファイナンス」の普及を目的としたオンラインセミナーを10月27日に開催すると発表しました。自治体や企業担当者を対象としています。5 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 脱炭素社会の実現には巨額の投資が必要であり、公的資金だけでは限界があります。グリーンボンド(環境債)やサステナビリティ・リンク・ローンといった民間資金を環境分野に呼び込む市場メカニズムを構築・活性化させるため、国が主導して関係者の理解を深めます。 具体的なアクション 環境省が主催し、金融機関や事業会社、地方自治体を対象に、グリーンファイナンスの具体的な手法や活用事例、留意点などを解説するセミナーをオンラインで実施します。今回は特にサステナビリティ・リンク・ローンに焦点を当てます。5 行政側の意図 環境対策を従来の「コスト」「規制」という文脈から、「投資機会」「新たな成長分野」へと転換させる意図があります。金融の論理を環境政策に組み込むことで、これまでとは異なる規模とスピードで民間資金を動員し、環境と経済の好循環を創出することを目指します。 期待される効果 自治体や企業がグリーンファイナンスを活用して資金調達を行う事例が増加し、環境関連プロジェクトが大規模化・多様化することが期待されます。これにより、日本の脱炭素化が加速します。 課題・次のステップ 知識の習得だけでなく、実際に自治体がグリーンボンドを発行したり、域内企業がサステナビリティ・リンク・ローンを活用したりするための、具体的な組成支援やコンサルティング機能の強化が次のステップとして求められます。 特別区への示唆 環境政策担当部署に、金融に関する専門知識が求められる時代になったことを示唆しています。大規模な環境インフラ整備(例:次世代型清掃工場、地域冷暖房システム)などを検討する際、従来の予算要求だけでなく、民間資金を呼び込むための事業スキームを立案できる能力が不可欠になります。 他区での横展開・応用 一つの区が単独でグリーンボンドを発行するには規模や事務負担の面でハードルが高い場合、複数の特別区が連携して共同で発行する「共同発行グリーンボンド」が考えられます。これにより、発行規模を確保して投資家への魅力を高めるとともに、発行にかかる事務コストを分担できます。調達した資金は、各区の緑化事業や省エネ改修事業などに配分します。 【杉並区】グリーンインフラの推進に向けて園児たちがお米作り 概要 出典 杉並区 ニュース概要 杉並区は9月24日、グリーンインフラ推進の一環として、区立保育園の園児たちが園内に作られた田んぼで米作りを行っていると発表しました。この取組は、雨水流出抑制策と食育を兼ねており、専門家や地域団体と連携して進められています。6 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 田んぼが持つ貯水・保水機能を活用し、大雨時の河川への雨水流出を抑制する「グリーンインフラ」の考え方を、区民に分かりやすく伝え、普及させるためです。同時に、子どもたちに食の大切さを教える食育の機会とします。6 具体的なアクション 区立保育園の敷地内に田んぼを造成し、園児が田植えから稲刈りまでを体験します。このプロジェクトは、大学の専門家や地域の市民団体(「善福寺川を里川にカエル会」)の協力を得て実施されています。6 行政側の意図 「治水対策」という専門的で硬いテーマを、「園児のお米作り」という親しみやすい活動に結びつけることで、住民の理解と共感を広げる意図があります。また、行政、専門家、地域団体、住民(園児・保護者)が連携する協働のモデルケースを示す狙いもあります。 期待される効果 園児や保護者を通じて、グリーンインフラの重要性が地域に浸透します。また、子どもたちが自然や食への関心を深め、地域への愛着を育む効果も期待されます。 課題・次のステップ このような先進的な取組を他の保育園や学校、公園などにも広げていくことが次のステップです。そのためには、協力してくれる地域団体や専門家とのマッチングを区が支援する仕組み作りが課題となります。 特別区への示唆 一つの事業で「防災・減災」「環境共生」「教育」「地域コミュニティ活性化」といった複数の政策目的を同時に達成できる、費用対効果の高い優れた事例です。ハード整備だけでなく、住民参加型のソフト事業を組み合わせる重要性を示しています。 他区での横展開・応用 この「保育園・学校×グリーンインフラ」のモデルは多様な応用が可能です。例えば、校庭の一部を雨水を貯留・浸透させる「雨庭(あめにわ)」に改修するプロジェクトを、理科の授業と連携して児童・生徒がデザインから植栽まで関わる形で実施できます。また、地域の企業から協賛を募り、CSR活動の一環として資材提供や技術協力を得るといった官民連携の形も考えられます。 【江戸川区】区独自の令和6年度航空機騒音測定結果を公表 概要 出典 江戸川区 ニュース概要 江戸川区は、羽田空港の新飛行経路運用に伴う航空機騒音の実態を把握するため、区独自に設置した測定局の令和6年度の測定結果を公表しました。区は結果に基づき、国に対して騒音軽減を強く申し入れています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国の事業によって生じる地域住民の生活環境への影響を、基礎自治体として客観的に把握し、住民の代弁者として国に改善を求めるためです。住民の安全・安心な生活を守るという自治体の基本的な責務に基づいています。 具体的なアクション 区内に常設の騒音測定局を設置し、継続的にデータを収集・分析。その結果を区のウェブサイトで公表し、透明性を確保するとともに、国土交通省への申し入れの根拠資料として活用しています。 行政側の意図 住民の体感的な不安や不満を「騒音レベル」という客観的なデータに変換することで、国との交渉力を高める意図があります。科学的根拠に基づくことで、単なる陳情ではなく、具体的な対策を求める建設的な議論を可能にします。 期待される効果 区の申し入れにより、国が飛行高度の引き上げや低騒音機材の優先的な割り当てなど、具体的な騒音軽減策を検討・実施することが期待されます。 課題・次のステップ 騒音測定を継続し、国が対策を講じた場合の効果を検証することです。また、騒音だけでなく、落下物リスクなど、航空機運行に関する多面的な影響についても監視を続ける必要があります。 特別区への示唆 国や都の大規模事業が区民生活に影響を与える場合、行政は受け身ではなく、主体的に影響を調査・測定し、データに基づいて交渉する姿勢が重要です。これは航空機騒音に限らず、大規模な建設工事や道路計画などにも当てはまります。 他区での横展開・応用 この「ローカルな影響のデータ化による上位機関への政策提言」という手法は、様々な分野で応用可能です。例えば、特定の幹線道路周辺の交通量や大気汚染を区が独自に測定し、都に対して交通規制や環境対策を求めたり、大規模再開発に伴う風害をシミュレーションし、事業者に設計変更を求めたりするなどの活用が考えられます。 DX政策 【目黒区】「統合型GIS構築・保守業務委託」の事業者を公募型プロポーザル方式により募集 概要 出典 目黒区 ニュース概要 目黒区は9月26日、庁内各部署が保有する地理情報を統合的に管理・活用するための「統合型GIS(地理情報システム)」の構築・保守業務を委託する事業者を、公募型プロポーザル方式で募集することを発表しました。7 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 行政が保有する多様なデータ(例:福祉、都市計画、防災、税務)を地図上で統合・可視化することで、データに基づいた客観的で精度の高い政策立案(EBPM)を実現するためです。また、庁内での情報共有を円滑にし、業務の効率化を図ります。 具体的なアクション 専門的な技術力を持つ民間事業者を選定するため、価格だけでなく企画・技術提案の内容を総合的に評価するプロポーザル方式で公募を実施します。これにより、区のニーズに最も合致したシステムを導入します。 行政側の意図 これまで各部署が個別に管理していた地図情報を全庁で共有・活用できる基盤(プラットフォーム)を整備する意図があります。これにより、部署横断的なデータ分析を可能にし、行政サービスの最適化や新たな課題の発見を目指します。 期待される効果 例えば、高齢者人口分布と公園・避難所の配置を重ね合わせることで福祉・防災施策の弱点を分析したり、固定資産税情報と空き家情報を地図上で連携させたりするなど、より高度で複合的な行政課題への対応が可能になります。 課題・次のステップ システムを構築するだけでなく、全職員がそれを使いこなせるようにするための研修や、各部署が持つデータの標準化・品質管理が課題となります。システム導入後の「活用」フェーズを見据えた計画的な人材育成が次のステップです。 特別区への示唆 統合型GISは、現代の自治体経営における「神経系」とも言える重要なインフラです。この整備は単なるITシステムの更新ではなく、区政のデジタルツイン(現実空間を仮想空間に再現する技術)化に向けた foundational な投資であり、データ駆動型行政への移行を目指す全ての区にとって不可欠な取組です。 他区での横展開・応用 目黒区の提案要求仕様書(RFP)は、他区が同様のシステムを導入する際の優れた参考資料となります。また、複数の区が連携してGISの基本機能部分を共同で調達・開発し、各区固有の機能は個別に追加開発する「共同調達モデル」も考えられます。これにより、開発・保守コストを削減しつつ、特別区間でのデータ連携の将来的な可能性も拓きます。 【東京メトロ】AI画像解析によるレールの腐食検知システムを稼働開始 概要 出典 (参考)東京地下鉄株式会社 ニュース概要 東京メトロは、営業列車に搭載したカメラで撮影したレール画像をAIが解析し、腐食を自動検知するシステムを開発し、千代田線で稼働を開始しました。メンテナンスの効率化と最適化を目指す取り組みです。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 公共交通の安全性を確保しつつ、維持管理業務を効率化するためです。従来の人力による目視点検では限界があった広範囲の設備状態を、AI技術で常時監視し、劣化の兆候を早期に発見します。 具体的なアクション 鉄道事業者(東京メトロ)が、IT企業(NEC)と共同で、AI画像解析技術を活用したレール腐食検知システムを開発。営業列車にモニタリング装置を搭載し、日常的にデータを収集・解析する仕組みを構築しました。 行政側の意図 熟練技術者の経験や勘に頼っていた点検業務を、データに基づく客観的な状態基準保全(CBM)へと転換させる意図があります。これにより、点検の精度を平準化し、将来の労働力不足にも備えます。 期待される効果 レール腐食の早期発見による事故の未然防止や、補修計画の最適化によるコスト削減が期待されます。また、点検作業員の負担軽減にも繋がります。 課題・次のステップ 実証路線での効果を検証し、全路線への展開を進めることです。また、腐食以外のレールの異常(摩耗、傷など)を検知できるよう、AIの学習モデルをさらに高度化させることが課題となります。 特別区への示唆 区が管理する道路、橋梁、下水道管などのインフラ点検にもAI画像解析技術は応用可能です。ドローンや点検車両で撮影した画像をAIで解析し、ひび割れや損傷を自動検出する仕組みを導入することで、点検業務の大幅な効率化が図れます。 他区での横展開・応用 複数の区が共同で「インフラ点検AIプラットフォーム」を導入・運用することが考えられます。各区が撮影した道路や公園遊具などの画像を共通のプラットフォームで解析することで、AIの学習データを大量に確保でき、検出精度が向上します。また、システム導入コストも分担でき、効率的です。 【株式会社大和総研】デジタル証明書サービス「TrustX」の提供開始 概要 出典 (参考)株式会社大和総研 ニュース概要 大和総研は、就職・転職時の経歴詐称や証明書偽造を防ぐため、卒業証明書などを改ざん困難なデジタル形式で発行・管理するサービス「TrustX」の提供を開始しました。採用業務の厳格化と効率化を支援します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 (民間事業者の取り組みですが)社会的な課題である経歴詐称や証明書偽造を、最新のデジタル技術で解決するものです。これにより、採用や資格確認における「信頼性」を担保する新たな社会インフラの構築を目指しています。 具体的なアクション ブロックチェーン技術などを活用し、証明書の発行者(大学等)、保有者(個人)、提出先(企業等)の三者間で、安全かつ確実に証明書の真偽を検証できるプラットフォームを開発・提供します。 行政側の意図 信頼性の高いデジタル証明書の普及を通じて、採用活動の透明性を高め、公正な社会の実現に貢献する意図があります。また、紙ベースの証明書発行・確認業務の非効率性を解消し、社会全体のDXを推進します。 期待される効果 企業にとっては採用時のリスクが低減し、確認業務が効率化されます。個人にとっては、自身の経歴やスキルを安全かつ容易に証明できるようになります。 課題・次のステップ サービスの普及には、多くの大学や資格発行団体、企業がこのプラットフォームに参加することが不可欠です。参加機関を増やすための働きかけや、異なるシステム間の相互運用性の確保が課題となります。 特別区への示唆 区の職員採用や、各種許認可、補助金申請など、資格や経歴の証明が必要な行政手続きに応用できる可能性があります。申請者がデジタル証明書を提出することで、区の確認業務の負担軽減と迅速化が期待できます。 他区での横展開・応用 この「信頼のデジタル化」という考え方は、様々な行政サービスに応用できます。例えば、保育士や介護士などの資格証明、ボランティア活動実績の証明、区の主催講座の修了証明などをデジタル化し、信頼性のある形で管理・活用する仕組みを構築することで、人材育成や地域活動の活性化に繋げられます。 【JTP株式会社】AI駆動開発ソリューション「daimon」の提供開始 概要 出典 (参考)JTP株式会社 ニュース概要 JTP株式会社は、アプリケーション開発の各工程でAIを活用し、生産性向上と価値創出を実現する「AI駆動開発ソリューション “daimon”」の提供を開始しました。企業のシステム内製化を支援します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 (民間事業者の取り組みですが)企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるものです。AIを単なる「利用するツール」としてだけでなく、「開発を支援するパートナー」として活用する新たな手法を提案しています。 具体的なアクション AIによるコード生成・最適化、レガシーシステムの解析・移行支援、開発チーム全体のAI活用スキル向上支援など、プロダクト開発から組織改革までを包括的にサポートするサービスメニューを提供します。 行政側の意図 ソフトウェア開発のスピードと品質を飛躍的に向上させ、企業が市場の変化に迅速に対応できる体制づくりを支援する意図があります。特に、専門人材の不足に悩む企業の内製化能力を高めることを目指しています。 期待される効果 開発期間の短縮とコスト削減、そして属人化していたシステムの解消が期待されます。これにより、企業はより創造的な業務にリソースを集中できるようになります。 課題・次のステップ AIが生成したコードの品質担保や、セキュリティ上のリスク管理が課題となります。また、AIを使いこなすためのエンジニアのスキルアップや、組織文化の変革も必要です。 特別区への示唆 自治体の情報システム部門においても、このようなAI駆動開発は大きな変革をもたらす可能性があります。外部委託に依存するのではなく、内製化能力を高めることで、区民ニーズに即したサービスを迅速に開発・改善できるようになります。 他区での横展開・応用 複数の区の情報システム部門が連携し、AI駆動開発ツールの共同導入や、活用ノウハウを共有する研究会を設立することが考えられます。これにより、各区が単独で取り組むよりも効率的に技術習得を進め、特別区全体のDX推進力を底上げすることができます。 総務管理 【消費者庁】消費者安全法に基づく事故情報データバンクへの新規登録 概要 出典 消費者庁 ニュース概要 消費者庁は、消費者安全法に基づき通知された、介護サービス中の転落事故や電動アシスト自転車用バッテリーの発煙事故などの情報を、事故情報データバンクに登録したことを公表しました。情報は公開され、注意喚起に活用されます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 全国の消費者事故情報を一元的に集約・公開することで、同種の事故の再発を防止し、国民の生命・身体の安全を守るためです。事故の傾向を分析し、製品リコールや制度改善などの政策判断に繋げます。 具体的なアクション 全国の地方自治体や関係機関から報告された消費者事故の情報を、消費者庁が運営する「事故情報データバンク」に登録し、ウェブサイト上で誰でも検索・閲覧できるように公開しています。 行政側の意図 事故情報を広く社会で共有することで、消費者自身の注意を促すとともに、事業者に対して製品の安全性向上を自主的に促す狙いです。また、行政機関が迅速に危険情報を察知する体制を構築します。 期待される効果 消費者が製品やサービスを選択する際の参考情報となり、危険を回避する行動に繋がります。また、事業者が自社製品の欠陥を早期に認識し、改善措置を講じることが期待されます。 課題・次のステップ 収集される情報の網羅性と迅速性をさらに高めることです。また、膨大なデータの中から重大な事故の予兆を早期に発見するための、AIなどを活用した分析手法の高度化も課題です。 特別区への示唆 区の消費生活センターは、区民からの相談で得た事故情報を積極的に国に報告する役割を担っています。また、データバンクに登録された情報を活用し、区民に対してタイムリーな注意喚起や啓発活動を行うことが重要です。 他区での横展開・応用 各区の消費生活センターが連携し、データバンクの情報を基に、特別区内で共通して見られる事故の傾向を分析できます。例えば、「高齢者の家庭内事故」「若者のオンライン契約トラブル」など特定のテーマで共同の啓発キャンペーンを実施することで、より効果的な注意喚起が可能になります。 防災政策 【大田区】株式会社ハミングバードと「災害時における無人航空機による情報収集等に関する協定」を締結 概要 出典 大田区 ニュース概要 大田区は9月24日、災害発生時にドローン(無人航空機)を活用して迅速な情報収集を行うため、専門事業者である株式会社ハミングバードと協定を締結しました。倒壊危険家屋の判別や道路状況の把握などに活用します。8 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 大規模災害の発生直後、広範囲にわたる被災状況を迅速かつ安全に把握することは、人命救助や避難路確保の初動対応において極めて重要です。行政職員が立ち入れない危険な場所でも、ドローンを使えば空から情報を収集できます。 具体的なアクション 災害発生に備え、平時からドローン運用の専門技術を持つ民間事業者と協定を締結します。これにより、発災時には区の要請に基づき、事業者が速やかにドローンを派遣・運用し、撮影した映像等の情報を提供する体制を構築します。 行政側の意図 自治体が単独で高度な専門機材を保有・維持し、専門人材を育成するには限界があります。そこで、民間の専門技術を災害対応力に組み込むため、事前に協力体制を制度化しておく意図があります。これにより、有事の際に即応できる実効性を確保します。 期待される効果 発災直後の72時間(人命救助のタイムリミット)における情報収集能力が飛躍的に向上します。これにより、救助活動の優先順位付けや、緊急車両の通行ルート確保、避難所の開設判断などが、より迅速かつ的確に行えるようになります。 課題・次のステップ 協定の実効性を高めるため、定期的な合同訓練の実施が不可欠です。また、ドローンで収集した大量の映像データをリアルタイムで区の災害対策本部に伝送し、迅速に分析・共有するための通信・情報処理体制の整備が次の課題となります。 特別区への示唆 これは、行政が全ての機能を自前で抱える「自前主義」から脱却し、民間の専門能力を積極的に活用して行政課題を解決する「官民連携」の先進事例です。災害対応だけでなく、インフラ点検や環境調査など、様々な分野で応用可能な考え方です。 他区での横展開・応用 この「専門技術を持つ民間事業者との事前協定」という枠組みは、他の分野でも広く応用できます。例えば、①大規模停電に備えた非常用電源事業者との協定、②避難所での通信環境確保のための通信事業者との協定、③帰宅困難者支援のためのバス・タクシー事業者との協定、④被災ペット支援のための動物病院やペットホテルとの協定などが考えられます。各区が自区の弱点を分析し、それを補う民間の専門能力を平時からリストアップしておくことが重要です。 【国土交通省】北海道(釧路)で千島海溝地震を想定した大規模津波防災総合訓練を実施 概要 出典 国土交通省 ニュース概要 国土交通省は9月26日、千島海溝沿いの巨大地震を想定した大規模な津波防災総合訓練を11月2日に北海道釧路市で実施すると発表しました。約100機関が参加し、陸海空にわたる実動訓練を行います。2 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 広域かつ甚大な被害が想定される巨大災害への対応は、一自治体や一機関では不可能です。国、自治体、自衛隊、警察、消防、民間事業者など多数の主体が連携して活動する能力を向上させるため、実践的な総合訓練を実施します。 具体的なアクション 国が主導し、具体的な被害想定に基づき、関係機関がそれぞれの役割に応じた実動訓練を行います。訓練を通じて、機関間の情報伝達、指揮命令系統、連携手順などを検証し、課題を洗い出します。 行政側の意図 個別の防災計画の有効性を検証するだけでなく、計画と計画の「つなぎ目」が円滑に機能するかを確認する意図があります。災害時には、組織間の連携不全が致命的な結果を招くことがあるため、そのリスクを平時の訓練で洗い出し、改善を図ります。 期待される効果 参加機関の連携能力が向上し、実際の災害発生時により迅速で効果的な対応が可能になります。また、訓練の公開を通じて、住民の防災意識を高める効果も期待されます。 課題・次のステップ 訓練で明らかになった課題(例:通信手段の輻輳、指揮系統の混乱)を分析し、各機関の防災計画やマニュアルに具体的に反映させることが重要です。訓練を「やりっぱなし」にせず、PDCAサイクルを回していくことが求められます。 特別区への示唆 首都直下地震を想定する特別区にとって、この訓練は極めて重要な示唆を与えます。特に、区境を越えた広域避難や、帰宅困難者対策、緊急物資輸送など、単一の区では完結しない課題への対応には、都や隣接区、民間インフラ事業者との緊密な連携が不可欠であり、その実効性を高めるための合同訓練の重要性を示しています。 他区での横展開・応用 この多機関合同訓練のモデルを、特別区の地域特性に合わせて応用できます。例えば、荒川や隅田川沿いの区々が連携し、広域水害を想定した合同訓練を実施することが考えられます。訓練シナリオには、堤防決壊時の住民避難や、水上ボートによる救助活動、孤立地域へのドローンによる物資輸送などを盛り込み、実践的な連携手順を確認します。 【世田谷区】マンション防災共助促進事業の二次募集を実施 概要 出典 世田谷区 ニュース概要 世田谷区は、マンション居住者の防災意識向上と「共助」を促すため、防災備品を無償で配布する「マンション防災共助促進事業」の二次募集を開始しました。在宅避難の推進を目的としています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 大規模災害時、行政による「公助」には限界があるため、地域住民同士の助け合いである「共助」の体制づくりを支援するためです。特に、都市部の集合住宅ではコミュニティが希薄になりがちなため、行政がきっかけを提供します。 具体的なアクション 区内のマンション管理組合などからの申請に基づき、ポータブル蓄電池や簡易トイレなど、在宅避難や共助活動に役立つ防災備品(上限30万円相当)を無償で配布します。好評につき、二次募集を実施しています。 行政側の意図 防災備品という具体的なインセンティブを提供することで、マンション内で防災について話し合う機会を創出し、管理組合を中心とした自主的な防災活動を活性化させる狙いがあります。モノの支援をきっかけに、ヒトの繋がりと意識の向上を促します。 期待される効果 各マンションでの防災力が高まり、災害時における在宅避難生活の質が向上します。また、住民間の協力体制が構築され、安否確認や要配慮者支援などの共助活動が円滑に行われることが期待されます。 課題・次のステップ 備品を配布するだけでなく、それらを活用した防災訓練の実施を支援することです。また、事業の効果を測定し、どのような備品や支援が共助の促進に最も効果的であったかを分析し、今後の事業に活かす必要があります。 特別区への示唆 マンションが多数を占める特別区において、この取り組みは非常に有効なモデルケースです。防災計画において、避難所運営だけでなく、在宅避難者の支援と、その中核となるマンション単位での「共助」の育成を重要な柱として位置づけるべきです。 他区での横展開・応用 この「インセンティブ提供によるコミュニティ活動の活性化」という手法は、防災以外の分野にも応用可能です。例えば、防犯カメラの設置費用を補助して地域の防犯活動を促したり、集会所の改修費用を支援して高齢者のサロン活動を活性化させたりするなど、様々な地域課題の解決に応用できます。 生活安全政策 【杉並区】マンションでモバイルバッテリーから出火する火災が発生 概要 出典 (参考)フジニュースネットワーク ニュース概要 25日未明、杉並区のマンションで、スマートフォンを充電中だったモバイルバッテリーから出火する火災が発生しました。この火事で住民6人が煙を吸うなどして病院に搬送されました。製品の劣化や不良が原因の可能性があります。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 日常生活に普及している製品に起因する火災のリスクについて、住民に正しい知識を提供し、火災の未然防止を図ることは、区民の生命と財産を守る行政の重要な責務です。特に新たな技術製品のリスクは周知が必要です。 具体的なアクション (今後の推奨アクション)区の広報紙やウェブサイト、SNS、防災訓練などの機会を活用し、モバイルバッテリーの安全な使用方法(膨張・発熱等の異常時の使用中止、リコール対象製品の確認、就寝中の充電の危険性等)について注意喚起を行います。 行政側の意図 住民一人ひとりの防火意識を高め、製品の誤った使用や危険な状態での使用による火災を減らす狙いです。火災は発生後の対応コストが非常に高いため、予防に重点を置くことが合理的です。 期待される効果 住民がモバイルバッテリーの危険性を認識し、安全な使用を心がけることで、同種の火災の発生が抑制されることが期待されます。 課題・次のステップ 高齢者などデジタル情報にアクセスしにくい層にも情報が届くよう、町会・自治会や地域包括支援センターと連携した啓発活動が必要です。また、不要になったモバイルバッテリーの安全な廃棄方法の周知徹底も課題です。 特別区への示唆 このような身近な製品による火災事例は、区民にとって関心が高く、具体的な行動変容に繋がりやすいテーマです。各区は、消防署と連携し、管内で発生した火災の原因や特徴を分析し、地域の実情に合わせた効果的な防火・防災啓発を行うべきです。 他区での横展開・応用 モバイルバッテリーに限らず、リチウムイオン電池を使用する製品(コードレス掃除機、電動アシスト自転車等)全般の火災リスクについて、共通の啓発資材(リーフレット、動画等)を特別区で共同作成・活用することが効率的です。ごみの分別収集時における発火リスクと正しい廃棄方法の周知も、全区共通の重要課題です。 【新宿区】新宿駅東南口高架下喫煙所の管理運営事業者を募集 概要 出典 新宿区 ニュース概要 新宿区は、受動喫煙防止と分煙推進のために設置している新宿駅東南口高架下喫煙所について、令和8年4月からの管理運営事業者を企画コンペティション方式で募集します。清掃や設備維持管理などが主な業務です。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 路上喫煙による受動喫煙やポイ捨てを防止し、喫煙者と非喫煙者が共存できる快適なまちづくりを進めるためです。喫煙者の喫煙場所を確保する一方で、その場所が適切に管理され、周辺環境を損なわないようにする責務があります。 具体的なアクション 区が設置した公共の喫煙所について、清掃、設備の維持管理、巡回などを包括的に行う事業者を公募。価格だけでなく、公共貢献などの企画提案内容を評価するコンペティション方式で選定します。 行政側の意図 専門的なノウハウを持つ民間事業者に管理運営を委託することで、効率的かつ質の高い施設管理を実現する狙いです。また、「喫煙所周辺に特化した公共貢献」を要件に加えることで、事業者の創意工夫を引き出し、地域価値の向上に繋げます。 期待される効果 喫煙所が常に清潔で安全な状態に保たれることで、利用者・非利用者双方の満足度が向上します。また、路上喫煙の減少や、地域の美化促進が期待されます。 課題・次のステップ 選定された事業者の業務履行状況を定期的に評価・監督する仕組みを構築することです。また、喫煙所の利用実態や周辺の路上喫煙の状況を継続的に調査し、必要に応じて喫煙所の配置や規模を見直すことが求められます。 特別区への示唆 多くの特別区で路上喫煙禁止条例が施行される中、喫煙所の設置と適切な管理は共通の課題です。本事例のように、管理運営に民間の活力を導入し、公共貢献を求める手法は、他の区でも参考になるでしょう。 他区での横展開・応用 喫煙所に限らず、公園のトイレや自転車駐車場など、区が管理する小規模な公共施設の管理運営にこのモデルを応用できます。単なる清掃・管理委託ではなく、利用者の満足度向上や地域貢献に繋がる企画提案を求めることで、行政サービスの質を高めることが可能です。 子育て、子ども政策 【目黒区】菅刈地域における新たな子どもの居場所づくりを開始 概要 出典 目黒区 ニュース概要 目黒区は、菅刈地域において、子どもたちが安心して過ごせる新たな居場所づくりに着手しました。地域住民や子どもたちの意見を聞きながら、基本方針を策定していく計画です。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 子どもたちの健やかな育ちを地域社会全体で支える環境を整備するためです。家庭や学校以外の「第三の居場所」を提供することで、子どもたちの孤立を防ぎ、多様な交流や体験の機会を創出します。 具体的なアクション 地域の関係者や専門家で構成される「居場所づくり会議」を設置し、議論を開始。今後は、実際に利用する子どもたちからの意見聴取(ワークショップなど)を行い、それらを踏まえて基本方針を策定します。 行政側の意図 行政が一方的に施設を作るのではなく、地域住民や子どもたち自身が主体的に関わる「協働」のプロセスを重視する意図があります。これにより、利用者のニーズに真に応え、地域に愛される持続可能な居場所づくりを目指します。 期待される効果 子どもたちが放課後や休日に安心して過ごせる場所が確保されます。また、多世代交流や地域活動への参加を通じて、子どもたちの社会性や自己肯定感が育まれることが期待されます。 課題・次のステップ 基本方針策定後、具体的な運営主体(NPO、地域団体など)の選定や、安定的な運営資金の確保、安全管理体制の構築が課題となります。また、継続的に子どもたちのニーズの変化を把握し、活動内容を更新していく仕組みも必要です。 特別区への示唆 全ての特別区において、子どもの居場所づくりは重要な政策課題です。本事例のように、計画の初期段階から地域住民、特に子どもたちの声を反映させるプロセスは、事業の成功に不可欠な要素として参考にすべきです。 他区での横展開・応用 この「利用者参加型の施設づくり」という手法は、子どもの居場所に限りません。高齢者向けのデイサービス施設や、障害者の活動拠点、地域のコミュニティスペースなどを整備する際にも応用可能です。計画段階でワークショップなどを開催し、当事者の意見を丁寧に吸い上げることで、本当に必要とされる施設やサービスを実現できます。 福祉政策 【厚生労働省】「令和6年度使用者による障害者虐待の状況等」結果を公表 概要 出典 厚生労働省 ニュース概要 厚生労働省が公表した調査結果によると、令和6年度に確認された使用者による障害者虐待の件数は減少したものの、虐待の種別では賃金の不払いなどの「経済的虐待」が85.0%と大半を占める状況が続いています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 障害者虐待防止法に基づき、職場における障害者への虐待の実態を把握し、防止策を講じるためです。特に、使用者という優位な立場からの虐待は潜在化しやすく、行政が積極的に実態を調査し、監督・指導する責務があります。 具体的なアクション 全国の都道府県労働局などが受け付けた通報・届出を集計し、虐待の件数、種別、障害種別、事業所の業種などを分析し、結果を公表。虐待が認められた事業所には労働基準関係法令などに基づき指導を行っています。 行政側の意図 調査結果を公表することで、社会全体で障害者虐待の問題への関心を高め、使用者に対して法令遵守と虐待防止の意識を徹底させる狙いです。また、虐待の早期発見に繋がる通報・相談を促す意図もあります。 期待される効果 虐待を受けている障害者の早期発見と救済に繋がります。また、事業主が自社の雇用管理体制を見直すきっかけとなり、職場環境の改善が期待されます。 課題・次のステップ 最も多い経済的虐待への対策強化が急務です。最低賃金法などの周知徹底を図るとともに、障害者本人が自身の権利を理解し、相談しやすくなるような支援体制(分かりやすいリーフレットの作成、相談窓口の周知等)の構築が必要です。 特別区への示唆 区の障害者福祉担当部署や労働相談窓口は、この調査結果を重く受け止め、区内事業所への啓発活動を強化すべきです。特に、福祉施設だけでなく、一般企業で働く障害者へのアウトリーチ(訪問支援)や、相談体制の強化が求められます。 他区での横展開・応用 障害者虐待に限らず、外国人労働者や技能実習生など、職場で弱い立場に置かれやすい人々への権利侵害についても、区が主体的に実態調査や相談会を実施することが考えられます。複数の区が連携し、特定の業種(例:介護、建設)を対象とした合同の労働相談キャンペーンなどを実施することも有効です。 【江戸川区】「就労選択支援事業」を10月から開始 概要 出典 江戸川区 ニュース概要 江戸川区は、障害のある方が自分の能力や適性に合った働き方を選択できるよう支援する国の新事業「就労選択支援事業」を10月から開始します。就労アセスメントを通じて、本人の希望に基づいた就労を支援します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 障害のある方の就労を、単に「雇用されること」から「能力や特性を活かして活躍すること」へと質的に転換するためです。ミスマッチによる早期離職を防ぎ、持続可能な就労を実現することが目的です。 具体的なアクション 就労を希望する障害者に対し、原則1か月の支援期間中に、事業所での軽作業や面談などを通じて就労能力や適性を評価(就労アセスメント)します。評価結果は多機関連携会議で共有し、本人に進路決定の参考にしてもらいます。 行政側の意図 これまで画一的になりがちだった就労支援を、個々の障害特性や希望に寄り添ったオーダーメイド型へと進化させる狙いです。科学的なアセスメント手法を取り入れることで、支援の客観性と納得感を高めます。 期待される効果 本人が自身の強みや適性を客観的に理解し、自信を持って就職活動に臨めるようになります。また、企業側も本人の特性を理解した上で雇用するため、職場定着率の向上が期待されます。 課題・次のステップ 事業開始当初は高校生が主な対象ですが、今後は社会人も含めた幅広い層が利用できるよう、対象を拡大していくことが必要です。また、アセスメントを行う支援員の専門性向上が事業の質の鍵となります。 特別区への示唆 この国の新事業は、全ての特別区で実施されるべき重要な取り組みです。各区は、地域の就労移行支援事業所などと連携し、質の高いアセスメントを提供できる体制を早期に構築する必要があります。 他区での横展開・応用 この「アセスメントに基づく個別最適化支援」という考え方は、障害者就労に限りません。ひきこもり状態にある若者の社会参加支援や、生活困窮者の自立支援プログラムなどにも応用可能です。対象者の特性や課題を丁寧に評価し、一人ひとりに合った支援計画を策定することで、支援の効果を最大化できます。 健康、保健政策 【新宿区】令和7年度の新型コロナウイルスワクチン接種事業を発表 概要 出典 新宿区 ニュース概要 新宿区は、令和7年度の新型コロナウイルスワクチン接種事業を10月1日から実施します。季節性インフルエンザと同様に、65歳以上の高齢者等を対象とした定期接種(原則有料)として位置づけられます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高い高齢者等を守るため、予防接種法に基づく定期接種として、安定的な接種機会を提供するためです。パンデミック期の特例臨時接種から、平時の公衆衛生プログラムへと移行します。 具体的なアクション 対象者(65歳以上等)に予診票を送付し、区内の指定医療機関での個別接種を実施。自己負担額は原則2,500円(75歳以上や生活保護受給者等は無料)とし、集団接種は行いません。 行政側の意図 これまでの大規模な集団接種体制から、地域の医療機関を中心とした持続可能な接種体制へと円滑に移行させる意図があります。区民には、コロナワクチンが特別なものではなく、季節性インフルエンザと同様の日常的な予防策の一つであることを周知します。 期待される効果 高齢者等における新型コロナウイルス感染症の重症化や死亡を予防する効果が期待されます。また、地域の医療提供体制への負荷を軽減することにも繋がります。 課題・次のステップ 無料接種から有料接種への変更や、対象者が限定されることについて、区民への丁寧な情報提供と周知徹底が不可欠です。「ワクチン疲れ」や自己負担の発生による接種率の低下も懸念され、接種勧奨の方法が課題となります。 特別区への示唆 全ての特別区が同様の課題に直面します。制度変更の趣旨や、対象者、費用、接種方法について、分かりやすい広報(区報、ウェブサイト、ポスター等)を展開することが極めて重要です。特に、対象から外れた若年層への説明も必要です。 他区での横展開・応用 この「緊急対応から平時体制への移行」というプロセス管理は、他の行政分野でも参考になります。例えば、大規模災害後の復興支援事業を、徐々に通常の福祉サービスやまちづくり事業に統合していく際など、制度変更の周知方法や、新たな受益者負担の考え方、持続可能な事業体制の構築プロセスは応用可能です。 【中央区】「ちゅうおうヘルス&ウォーク」でポイント2倍キャンペーンを実施 概要 出典 中央区 ニュース概要 中央区は、区民の健康づくりを促進するため、健康アプリ「ちゅうおうヘルス&ウォーク」のポイント2倍キャンペーンを10月1日から実施します。貯めたポイントは区内共通買物・食事券と交換できます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 区民が楽しみながら主体的に健康づくりに取り組む「きっかけ」を提供するためです。運動や食生活の改善といった日々の行動変容を促し、生活習慣病の予防と健康寿命の延伸を目指します。 具体的なアクション スマートフォンアプリを活用し、歩数や食事記録などの健康活動に応じてポイントを付与。期間限定でポイント付与率を2倍にし、インセンティブを高めるキャンペーンを展開します。景品は地域経済の活性化にも繋がる区内共通商品券とします。 行政側の意図 「健康」という個人の問題と、「地域経済の活性化」という社会的な課題を、アプリとポイント制度で結びつける狙いです。区民の健康増進活動が、巡り巡って地域のお店を潤すという「良い循環」を生み出すことを意図しています。 期待される効果 アプリ利用者の増加と、ウォーキングなどの健康活動の実践者が増えることが期待されます。また、区内商店街での消費が喚起され、地域経済の活性化にも貢献します。 課題・次のステップ スマートフォンの操作に不慣れな高齢者など、デジタルデバイドへの配慮が必要です。アプリを使わない層向けの健康づくりプログラム(体操教室など)との連携や、スマホ教室の開催などが次のステップとして考えられます。 特別区への示唆 「ゲーミフィケーション(ゲームの要素活用)」と「地域経済との連携」を組み合わせたこの手法は、現代的な健康増進政策の優れたモデルです。多くの区で導入されている健康アプリの活性化策として、非常に参考になります。 他区での横展開・応用 この「行動変容促進×地域経済連携」のスキームは、様々な政策分野で応用可能です。例えば、「エコ活動ポイントアプリ」を導入し、ごみの減量やリサイクル活動に応じてポイントを付与、景品を区内の環境配慮型商品やリサイクルショップで使える商品券にする、といった展開が考えられます。 地域振興政策 【中野区・杉並区・豊島区】「アニメ・マンガフェス2025」を連携開催 概要 出典 中野区 ニュース概要 アニメ・マンガ関連の産業・文化が集積する中野・杉並・豊島の3区が東京商工会議所と連携し、「アニメ・マンガフェス2025」を開催します。各区の特色を活かしたイベントで、地域の魅力を発信します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 各区が持つ共通の文化資源「アニメ・マンガ」を核に、広域で連携することで、単独では生み出せない大きな魅力と発信力を持った地域ブランドを構築するためです。これにより、観光振興と産業振興を一体的に推進します。 具体的なアクション 3区と商工会議所で実行委員会を組織。各区で会場を設け、キャラクターショーやクリエイターのトークイベント、制作体験ワークショップなど、それぞれの地域特性を活かした多様なプログラムを同時期に開催します。 行政側の意図 「点」として存在する各区の魅力を連携によって「面」として捉え直し、「アニメ・マンガの聖地エリア」としての地域全体のブランドイメージを国内外に確立する狙いです。自治体の境界を越えた回遊性を生み出し、経済効果の最大化を図ります。 期待される効果 イベントへの集客増加はもちろん、国内外からの観光客が3区を周遊し、長期滞在することによる地域経済への波及効果が期待されます。また、クリエイターや関連企業の集積地としての魅力も高まります。 課題・次のステップ 3区間の回遊を促すための共通チケットやスタンプラリー、交通機関との連携企画など、広域連携のメリットを活かした施策をさらに充実させることが課題です。イベントの一過性で終わらせない持続的な情報発信も重要です。 特別区への示唆 複数の区にまたがる共通の地域資源(例:商店街、河川、歴史街道など)を活かした広域連携は、地域振興の有効な手法です。個別の区でイベントを行うよりも、連携することでより大きなスケールメリットと相乗効果が期待できます。 他区での横展開・応用 この「共通資源による広域連携」モデルは、他の地域資源でも展開可能です。例えば、ものづくり企業が集積する複数の区が連携して「ファクトリーツーリズムウィーク」を開催したり、旧街道沿いの区が連携して「歴史まち歩きキャンペーン」を実施したりするなど、地域のアイデンティティに合わせて多様な応用が考えられます。 【板橋区】鉄道4社局と共催で「『板橋』を巡るスタンプラリー」を開催 概要 出典 板橋区 ニュース概要 板橋区は、区内および箱根にある「板橋」の名が付く駅などを巡るスタンプラリーを、JR東日本など鉄道4社局と共催で10月1日から開催します。参加者は手作りスタンプを集め、鉄道グッズなどの景品がもらえます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 公共交通機関の利用を促進しつつ、区内の様々な地域に足を運んでもらうことで、地域の魅力を発見してもらい、にぎわいを創出するためです。鉄道会社との連携により、広範囲からの集客を図ります。 具体的なアクション 区と鉄道4社局が協力し、共通のテーマ(「板橋」という駅名)でスタンプラリーを企画。各駅や区の施設にスタンプを設置し、達成度に応じた景品を用意することで、参加者の周遊意欲を高めます。 行政側の意図 鉄道会社という強力な広報力とネットワークを持つ民間事業者と連携することで、区単独ではアプローチできない層にもイベントを告知し、広域からの参加者を呼び込む狙いです。官民連携による効果的な地域プロモーションを目指します。 期待される効果 参加者が楽しみながら区内を周遊し、これまで知らなかったお店や公園などを訪れることで、地域の魅力再発見に繋がります。また、鉄道利用者の増加や、周遊先での消費による地域経済の活性化が期待されます。 課題・次のステップ スタンプ設置場所だけでなく、その周辺の商店街や観光スポットへの誘導策を強化することです。スタンプラリー台紙にクーポンを付けるなど、周遊と消費をより強く結びつける工夫が求められます。 特別区への示唆 鉄道網が発達している特別区において、鉄道会社との連携は地域振興の王道とも言える手法です。駅を基点としたまち歩きイベントは、住民の地域愛着の醸成と、来街者の誘致の両方に効果的です。 他区での横展開・応用 鉄道だけでなく、バス会社と連携した「バス路線沿線ぶらり旅スタンプラリー」や、複数の区をまたがるコミュニティバスの路線を活用した「広域連携スタンプラリー」なども考えられます。テーマも駅名に限らず、「桜の名所」「商店街グルメ」など、地域の魅力に合わせて多様な設定が可能です。 【江戸川区】TGC協力のもと「INTERNATIONAL SDGs FES」を開催 概要 出典 江戸川区 ニュース概要 江戸川区は、SDGsを楽しみながら学び・体験できるイベント「INTERNATIONAL SDGs FES」を、東京ガールズコレクション(TGC)の企画・制作協力のもと、10月25日に葛西臨海公園で開催します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 SDGsという普遍的だが難解に感じられがちなテーマを、若者をはじめとする幅広い世代に「自分ごと」として捉えてもらうためです。行政主導の堅い啓発ではなく、民間と連携した魅力的なイベントを通じて、楽しみながら理解と行動を促します。 具体的なアクション 絶大な集客力と発信力を持つTGCと連携し、ファッションショーやアーティストライブといったエンターテインメント性の高いステージと、区が定めた「SDGsえどがわ10の行動」を体験できるブースを組み合わせた大規模フェスティバルを開催します。 行政側の意図 行政のメッセージを、TGCという若者文化の強力なプラットフォームに乗せて発信する狙いです。これにより、従来の行政広報では届かなかった層にアプローチし、SDGsへの関心を喚起し、具体的な行動へと繋げることを意図しています。 期待される効果 多くの来場者が楽しみながらSDGsについて学び、日常生活での実践のきっかけを得ることが期待されます。また、イベントの様子がメディアやSNSで拡散されることで、江戸川区の先進的なイメージ向上にも繋がります。 課題・次のステップ イベント参加者の意識や行動が、イベント後も持続するように働きかけることが重要です。アプリやSNSを活用した継続的な情報発信や、区内の学校や企業と連携したフォローアッププログラムの実施などが考えられます。 特別区への示唆 この事例は、行政課題の解決に、全く異なる分野の民間パートナーの力を活用する「異分野連携」の成功例です。各区は、自らが抱える政策課題(健康、防災、多文化共生など)について、若者に影響力のある文化・スポーツ・エンタメ分野との連携の可能性を検討すべきです。 他区での横展開・応用 例えば、スポーツ振興が課題の区であれば、人気のプロスポーツチームやeスポーツイベントと連携して「健康・スポーツフェス」を開催したり、多文化共生がテーマであれば、国際的な音楽フェスティバルと連携して「ワールドフード&ミュージックフェス」を開催するなど、各区の重点課題と親和性の高い民間パートナーを見つけることで、多様な応用が可能です。 まちづくり、インフラ整備政策 【東京都】新宿駅西口、9月27日から交通動線を大幅変更 概要 出典 東京都 ニュース概要 新宿駅西口再整備の一環として、9月27日から駅前広場の交通動線が大幅に変更されます。車両の南北方向の通り抜けが不可となる一方、新宿駅から西新宿方面へ直進できる新たな歩行者動線が確保されます。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 世界一の乗降客数を誇る新宿駅を、自動車中心から「人中心の都市空間」へと転換するためです。歩行者の安全性と快適性を向上させ、駅周辺の回遊性を高めることで、都市の魅力を向上させる目的があります。 具体的なアクション 新宿グランドターミナル構想の第一歩として、駅前広場の車路を一部閉鎖し、車両動線を変更。これにより生まれた空間を活用して、これまで分断されていた駅と西新宿地区を繋ぐ、安全で快適な歩行者デッキを整備します。 行政側の意図 長年、自動車交通が優先されてきた駅前広場の空間構成を抜本的に見直すという、強い意志の表明です。空間を自動車から歩行者へと再配分することで、にぎわいや交流が生まれる滞留空間を創出し、駅の価値を「通過点」から「目的地」へと変えることを意図しています。 期待される効果 歩行者が安全かつスムーズに東西を移動できるようになり、利便性が大幅に向上します。将来的には、広場に憩いの空間が生まれることで、駅周辺の魅力と国際競争力が高まることが期待されます。 課題・次のステップ 車両動線の変更に伴う周辺道路の交通渋滞を緩和するための対策が不可欠です。う回路の案内強化や、交通量データの分析に基づく信号機の調整などが求められます。また、工事期間中の歩行者の安全確保も重要です。 特別区への示唆 この新宿駅の取り組みは、今後の東京の駅前広場づくりのモデルケースとなります。各区は、区内の主要駅前について、「車中心から人中心へ」という視点で見直し、歩行者空間の拡大やバリアフリー化、にぎわい創出の可能性を再検討すべき時期に来ています。 他区での横展開・応用 全ての駅前で新宿のような大規模な再編は困難ですが、「人中心」の思想は様々な規模で応用可能です。例えば、駅前のバス・タクシー乗り場の配置を見直して歩行者通路を拡幅したり、時間帯によって車両通行を制限する「トランジットモール」を導入したりするなど、既存の空間を工夫して歩行者のための時間を増やす取り組みが考えられます。 #05 特別区(23区)#91 取組#92 行政ニュース#99 その他 ABOUT ME 行政情報ポータルあらゆる行政情報を分野別に構造化行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。