【人事課】副業・兼業承認 完全マニュアル

はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
副業・兼業承認業務の基本理解
本章では、副業・兼業承認業務がなぜ重要なのか、その社会的意義と歴史的背景を深く掘り下げます。この業務は、単なる事務手続きではなく、職員のキャリア形成、地域社会への貢献、そして組織全体の活性化に繋がる戦略的人事業務であることを理解することが第一歩です。現代の地方自治体における人事課の役割が、単なる「管理」から、職員のポテンシャルを最大限に引き出す「戦略的支援」へと変化していることを、この業務を通じて体感していただきます。
業務の意義と目的
副業・兼業の承認業務は、三つの大きな目的を持っています。これらを理解することで、日々の判断に深みと一貫性が生まれます。
- 職員の自律的キャリア形成支援: 職員が副業・兼業を通じて新たなスキルや多様な経験、幅広い人脈を得ることは、本業である公務への還元という形で組織に大きな利益をもたらします。例えば、NPO活動で培ったファシリテーション能力や、地域イベントの企画運営で得たプロジェクトマネジメント能力は、区の政策立案や住民協働事業において直接的に活かされるでしょう。この業務は、職員一人ひとりが自身のキャリアを主体的にデザインし、成長し続けることを組織として支援する、現代的な人材育成の根幹をなすものです。
- 地域課題解決への貢献: 特に、少子高齢化に伴う担い手不足は、多くの地域コミュニティが直面する深刻な課題です。公務員が持つ専門知識や行政実務の経験は、地域にとって非常に貴重な資源です。例えば、法律の知識を持つ職員がNPOの監事を務めたり、土木の専門職員が地域の防災活動にアドバイザーとして参加したりすることは、地域課題の解決に直接貢献します。これは、地方公務員法にうたわれる「全体の奉仕者」としての役割を、勤務時間外においても実践する新たな形であり、地域と行政の信頼関係を深める上でも極めて重要です。
- 多様な働き方の実現と人材確保: 民間企業では副業・兼業の解禁が急速に進んでおり、柔軟な働き方はもはや特別なものではなくなりました。公務員組織も、旧来の画一的な働き方を見直し、多様なキャリアパスを許容する姿勢を示すことが、優秀な人材を惹きつけ、定着させるための重要な戦略となります。特に若手職員にとって、副業・兼業の可否は、その組織の魅力度を測る一つの指標となっています。承認業務は、組織の柔軟性と先進性を内外に示すショーケースとしての役割も担っているのです。
制度の歴史的変遷と社会的背景
現在の副業・兼業に関する制度は、社会の変化とともに大きくその姿を変えてきました。その変遷を理解することは、制度の趣旨を正しく解釈し、未来の方向性を見据える上で不可欠です。
- 厳格な制限の時代から柔軟化へ: かつて地方公務員の副業は、地方公務員法が定める「職務専念の義務」や「信用失墜行為の禁止」といった原則に基づき、極めて厳格に制限されていました。公務員は「全体の奉仕者」として、その全ての時間を公務に捧げるべきであるという考え方が主流であり、私的な営利活動は原則として認められてきませんでした。この背景には、公務の公正性に対する疑念や、特定の企業との癒着を防ぐという強い意志がありました。
- 働き方改革と国の動向: この大きな流れを変える契機となったのが、2017年に政府が策定した「働き方改革実行計画」です。この計画で副業・兼業の推進が掲げられたことを受け、社会全体の雰囲気が大きく変わりました。特に、2019年に内閣人事局が国家公務員の兼業許可基準を明確化した通知を発出したことは、地方公務員の制度運用にも決定的な影響を与えました。これにより、それまで各自治体の裁量に委ねられ、不透明であった許可基準に、一定の客観的な目安が示されることになったのです。
- 「全面解禁」ではないことの重要性: ここで最も注意すべき点は、現在の動きは「無制限の自由化」や「全面解禁」では決してないということです。あくまで、任命権者の許可を前提とした「管理された中での柔軟化」です。したがって、人事課職員の役割は、単に申請を受け付けるだけでなく、公務員として守るべき一線を見極め、潜在的なリスクを管理するゲートキーパーとしての重要性を増しています。この制度の変遷は、人事課の役割が、過去の画一的な「禁止・管理」から、個々の事情に応じたリスクを判断し、職員の挑戦を後押しする「戦略的支援」へと質的に変化したことを示しています。この変化を的確に捉え、法的知識とコンサルティング能力を両立させることが、現代の人事担当者には求められています。
法的根拠と許可基準の詳解
本章では、承認業務の根幹をなす地方公務員法第38条を徹底的に分析し、許可・不許可を判断するための具体的な基準を体系的に学びます。法令の条文解釈から、実務で使える判断ポイントまでを網羅し、あらゆる申請に対して、法的根拠に基づいた一貫性のある判断ができる能力を養います。
根拠法令の全体像:地方公務員法を中心に
副業・兼業の承認業務は、地方公務員法第38条第1項の規定にその直接の根拠を置いています。この条文を正確に理解することが、全ての業務の出発点となります。
- 地方公務員法第38条の構造: この条文は、職員が任命権者の許可なく行ってはならない行為として、以下の三つを具体的に定めています。
- 営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ねること(役員兼業)
- 自ら営利を目的とする私企業を営むこと(自営)
- 報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事すること(報酬を得る兼業) 人事担当者は、申請された活動がこれら三つのいずれに該当するのかをまず特定する必要があります。
- 任命権者の許可という位置づけ: これらの行為は絶対的に禁止されているわけではなく、「任命権者の許可を受けなければ」行うことができないとされています。任命権者とは、通常、区長や教育長など、職員の任免権を持つ者を指します。この「許可」は、法律の要件を満たしているかを判断する行政処分であり、一定の裁量が認められています。しかし、その裁量は無制限ではなく、後述する三原則に照らして合理的な判断が求められます。
- 人事委員会規則の役割: 地方公務員法第38条第2項では、人事委員会が規則によって許可の基準を定めることができるとされています。この規則の目的は、区長部局や教育委員会など、区内の異なる任命権者の間で許可基準に著しい不均衡が生じないよう、調整を図ることにあります。したがって、人事委員会規則は、個々の具体的な案件の可否を直接定めるものではなく、一般的・抽象的な基準を示すものと理解することが重要です。
地方公務員法が定める三原則の解釈
任命権者が許可の可否を判断する際には、判例や行政実例上、以下の三つの原則を総合的に考慮しなければならないとされています。これらは、承認業務における最も重要な判断の拠り所です。
- ① 職務の能率の確保(職務専念義務との関係): これは、副業・兼業が原因で、本業である公務の遂行に支障が生じてはならないという原則です。具体的には、兼業による心身の疲労が蓄積し、勤務時間中の集中力や業務効率が低下するおそれがないかを審査します。この判断にあたっては、国家公務員の基準が重要な参考となります。国では、兼業時間数が「週8時間または1箇月30時間を超える場合」、あるいは「勤務日が割り振られた日において1日3時間を超える場合」は、原則として職務遂行に悪影響を与えると判断されます。この具体的な時間数は、客観的な判断基準として極めて有効です。
- ② 職務の公正の確保(信用失墜行為の禁止・中立性との関係): これは、職員の兼業によって、公務の公正性に対する住民の信頼が損なわれてはならないという原則です。特に重要なのが、職員の職務と兼業先との間に「特別な利害関係」がないかという点です。例えば、許認可権限を持つ部署の職員が、その許認可の対象となる企業で兼業することや、補助金の交付決定に関わる職員が、交付先の団体で報酬を得て活動することは、利益相反(Conflict of Interest)の典型例であり、原則として許可されません。
- ③ 職員の品位の保持: これは、兼業の内容が、公務員全体の信用や名誉を傷つけるものであってはならないという原則です。社会的に批判を浴びる可能性のある事業への関与や、公序良俗に反する活動はもちろんのこと、得られる報酬額が「社会通念上相当と認められる程度」を超えている場合も、この原則に抵触する可能性があります。過大な報酬は、特定の事業者との癒着を疑わせる一因となり得るためです。
具体的な許可基準モデルと判断のポイント
上記の三原則を実務に落とし込むためには、より具体的で明確な許可基準を組織として設定し、それを職員や住民に広く公表することが求められます。
- 許可基準の明確化と公表の重要性: かつては、許可基準が曖昧なまま運用されている自治体も少なくありませんでした。しかし、総務省は、職員の予測可能性を高め、恣意的な判断を排除する観点から、各自治体に対して詳細かつ具体的な許可基準を設定し、それを内外に公表することを強く推奨しています。明確な基準があって初めて、職員は安心して申請でき、人事担当者も公平な審査が可能となります。
- 活動類型別の判断ポイント: 先進自治体の事例を見ると、兼業の活動内容によって許可基準に濃淡をつけているケースがあります。例えば、「地域貢献型」の活動(地域のNPO活動やスポーツ指導など)については許可のハードルを低く設定し、一方で純粋な営利目的の「スキルアップ型」についてはより慎重に審査するといったアプローチです。活動の公益性の高さは、許可判断における重要な要素の一つです。
- 対象職員に関する要件: 一部の自治体では、許可の対象となる職員に一定の要件を課しています。例えば、奈良県生駒市では、在職年数や直近の人事評価の結果を許可要件に含めています。また、東京都狛江市のガイドラインでも、前年度の人事評価が標準以上であることが要件とされています。これは、まずは本業である公務をしっかりと遂行していることが、兼業を許可する上での大前提であるという考え方に基づくものであり、制度設計における一つの参考となります。
- 副業・兼業許可基準に関する比較表 人事担当者が日々の業務で一貫した判断を下すためには、国の基準や先進自治体の動向、そして自区の規則を横断的に理解しておくことが不可欠です。以下の表は、主要な判断項目について、それぞれの基準を比較しまとめたものです。この表を参照することで、自区の判断基準がどのような位置づけにあるのかを客観的に把握し、申請者への説明や内部での議論に活用することができます。
項目 | 国の基準 (National Guideline) | 神戸市の基準例 (Kobe City Example) | 生駒市の基準例 (Ikoma City Example) | 東京都・特別区の標準例 (Tokyo/Special Ward Standard Example) |
活動時間の上限 | 週8時間、月30時間、平日3時間以内 | 週8時間、月30時間、平日3時間以内 | 規定なし、ただし「職務遂行に支障がないこと」を個別判断 | 原則として国の基準に準拠 |
報酬額の目安 | 社会通念上相当な額 | 所得額年額20万円を基準とする例あり | 地域貢献活動として許容できる範囲 | 社会通念上相当な額 |
対象となる活動類型 | 非営利団体での活動等 | 公益性の高い地域貢献活動 | 公益性の高い地域貢献活動 | 地域貢献、自律的スキルアップに資する活動 |
申請対象職員の要件 | 特段の定めなし | 特段の定めなし | 人事評価B以上等 | 人事評価B以上等の要件を設ける例あり |
標準的な業務フローと実務上の留意点
本章では、申請書の受付から決裁、そして承認後の管理に至るまで、一連の業務フローをステップ・バイ・ステップで詳解します。各段階で人事担当者が確認すべきこと、注意すべき点を具体的に示し、ミスなく円滑な事務処理を実現するための実践的なノウハウを提供します。
申請から承認・不承認までのステップ詳解
副業・兼業の承認プロセスは、一般的に以下の流れで進められます。各ステップの役割を正確に理解し、手続きを滞りなく進めることが重要です。
- Step 1: 事前相談(推奨): 国家公務員の制度でも推奨されているように、職員が正式な申請を行う前に、人事課に相談する機会を設けることが極めて有効です。この段階で、予定している活動が明らかに許可基準に抵触するものでないか、どのような情報や書類を準備すべきかなどをアドバイスすることで、不備のある申請を未然に防ぎ、職員と人事課双方の負担を軽減できます。
- Step 2: 申請書の提出: 職員は、各区で定められた「営利企業等従事許可申請書」などの様式を用いて申請を行います。申請書には、氏名・所属といった基本情報に加え、兼業先の名称・所在地、活動の具体的な内容、従事する期間・時間・曜日、得られる報酬の見込み額などを詳細に記載することが求められます。申請は、原則として所属長を経由して人事課に提出されます。
- Step 3: 所属長の意見付与: 申請書を受理した所属長は、単に書類を中継するだけではありません。当該職員の日常の勤務状況、業務の繁閑、健康状態などを最もよく把握している立場から、「本業への支障が生じるおそれの有無」などについて具体的な意見を付記する重要な役割を担います。所属長の意見は、人事課が判断する上での貴重な参考情報となります。
- Step 4: 人事部門での審査: 所属長から進達された申請書に基づき、人事担当者が本格的な審査を行います。前章で詳解した法的根拠(地方公務員法第38条)および三原則(能率の確保、公正の確保、品位の保持)、そして各区で定められた具体的な許可基準に照らし合わせ、申請内容を多角的に検討します。
- Step 5: 決裁・通知: 人事部門での審査を経て、最終的に任命権者(または権限の委任を受けた者、例えば総務部長など)が決裁を行います。決裁結果は、「許可」「不許可」あるいは活動時間や内容に一定の制限を付した「条件付き許可」として、正式な通知書をもって職員本人に伝えられます。
申請内容の審査における重要チェック項目
人事担当者が審査を行う際には、以下の項目を特に注意深く確認する必要があります。
- 形式的要件の確認: 申請書の全ての項目が漏れなく記載されているか、押印はされているか、兼業先の活動内容がわかる資料(定款、規約、ウェブサイトの写しなど)が添付されているかなど、基本的な形式をまず確認します。
- 時間的整合性の確認: 申請されている兼業時間と、当該職員の過去の超過勤務時間の実績などを照らし合わせ、合計の労働時間が過大にならないかを確認します。特に、恒常的に長時間労働となっている職員からの申請については、心身の健康確保の観点から、より慎重な判断が求められます。これは、労働安全衛生法に基づく事業者の安全配慮義務の観点からも重要です。
- 利益相反の有無の確認: 最も重要かつ判断が難しいのが、利益相反の有無です。職員の現在の職務権限(許認可、契約、補助金、検査、指導など)と、兼業先の事業内容を詳細に突き合わせ、少しでも癒着や不公正を疑われる可能性がないかを徹底的に確認します。判断に迷う場合は、当該職員の所属部署やコンプライアンス担当部署にも意見を求めるなど、組織として慎重に検討する姿勢が不可欠です。
- 活動の具体性と継続性の確認: 「趣味」と「事業」の境界線を見極めることも重要です。例えば、フリマアプリで自身の不用品を数点売却する行為は、許可を要する兼業にはあたりません。しかし、安く仕入れた商品を利益を上乗せして継続的に販売する、いわゆる「せどり」行為は、営利目的の「自営」と見なされ、許可が必要となります。活動の頻度、目的、収益の規模などを総合的に勘案し、実態に即した判断が求められます。
承認後の管理と定期的な状況報告
許可を出したら終わり、ではありません。許可した内容が適切に遵守されているかを確認し、状況の変化に対応するための継続的な管理が必要です。
- 許可の有効期間: 一度出した許可が永続するわけではありません。多くの自治体では、許可に1年間などの有効期間を設け、期間満了時に更新手続きを求める運用をしています。これにより、状況の変化を定期的に把握する機会を確保できます。
- 定期的な実績報告: 許可を受けた職員に対し、年度末などの定められた時期に、活動実績(実際の活動内容、従事した時間、得られた報酬額など)を報告することを義務付けます。この報告書と当初の申請内容を照合することで、実態が申請から乖離していないか、本業への支障が生じていないかなどを確認します。
- 職務変更時の再確認: 職員が人事異動により部署や職務内容が変わった場合、許可の前提条件が変化する可能性があります。例えば、異動前の部署では問題なかった兼業先が、異動後の部署では利害関係者にあたる、というケースも起こり得ます。そのため、人事異動時には、兼業許可を受けている職員に対して、許可内容の再確認を促す仕組みを構築しておくことがリスク管理上、非常に重要です。
無許可兼業が発覚した場合の対応フロー
残念ながら、無許可で兼業を行ってしまう職員がいた場合、人事課は迅速かつ公正に対応する必要があります。
- 事実確認: まずは憶測で動かず、本人から直接、丁寧に事情を聴取します。いつから、どのような内容の活動を、どのくらいの頻度・時間で行い、どれくらいの報酬を得ていたのか、客観的な事実を正確に把握することが全ての出発点です。
- 服務規律違反としての検討: 無許可での兼業は、地方公務員法第38条に違反する行為であり、懲戒処分の対象となり得ます。事実関係に基づき、服務規律上の問題として整理します。
- 処分の判断: 処分の要否およびその軽重は、事案の悪質性や影響度を総合的に勘案して決定します。考慮すべき要素としては、①兼業の期間、②得た利益の額、③本業への具体的な支障の有無、④職務の公正性を害する度合い、⑤本人の反省の度合い、などが挙げられます。過去には、無許可で不動産経営を行い減給処分となった事例や、ゲーム実況動画で収益を得て懲戒処分となった事例もあります。これらの事例も参考にしつつ、個別の事案ごとに公平性を保った判断を下すことが求められます。
応用知識とケーススタディ
ここでは、これまでに学んだ基本原則や業務フローを踏まえ、実際の現場で判断に迷いやすい特殊なケースや、具体的な事例を取り上げます。ケーススタディを通じて、法的知識を実践的な判断力へと昇華させることを目指します。
特殊ケースへの対応(不動産投資、家業の承継など)
職員からの相談が多いものの、判断基準が複雑な典型的なケースについて、その考え方を整理します。
- 不動産・駐車場経営: 公務員の資産形成として関心の高い不動産投資ですが、これは「自営」に該当するか否かが最大のポイントです。人事院規則を参考に、多くの自治体では以下の基準を設けており、この範囲内であれば「資産運用」と見なされ、許可は不要とされるのが一般的です。
- 独立家屋: 5棟未満
- 集合住宅: 10室未満
- 駐車場: 10台未満
- 年間賃料収入: 500万円未満 しかし、これらの基準のいずれか一つでも超える場合は、事業的規模の経営、すなわち「自営」と見なされ、厳格な「自営兼業承認申請」が必要となります。その際には、通常の許可申請書に加え、不動産の登記事項証明書、賃貸借契約書の写し、管理委託契約書の写しなど、事業の実態を明らかにする詳細な資料の提出が求められます。特に、親からの相続によって意図せず基準を超えてしまったという相談も多いため、速やかに申請が必要であることを指導する必要があります。
- 株式・FX等の資産運用: 自己の資産を運用する目的で行う株式や投資信託、FXなどの取引は、地方公務員法第38条が規制する「事業」や「事務」には該当しないと解釈されており、原則として許可は不要です。ただし、注意すべき点が二つあります。一つは、勤務時間中に頻繁に取引を行うことは、職務専念義務違反に問われる可能性があること。もう一つは、職務上知り得た未公開情報(インサイダー情報)を利用して特定の株式を売買することは、金融商品取引法違反という重大な犯罪行為にあたるため、厳に慎まなければならないことです。
- NPO・有償ボランティア: 活動内容が非営利であっても、「報酬」を得る場合には、地方公務員法第38条の許可対象となります。ここでいう「報酬」とは、労務の対価として支払われるものを指し、活動に必要な交通費や資料代などの実費弁償は含まれない、というのが一般的な解釈です。NPO活動や地域のボランティア活動は、公益性が高く、地域貢献に資することから、許可されやすい傾向にあります。
- インターネット関連(YouTuber、アフィリエイト等): これらは現代特有の、判断が難しいグレーゾーンの活動です。当初は趣味として始めたブログや動画配信であっても、広告収入(アドセンス、アフィリエイト)や有料メンバーシップ等による収益が継続的に発生するようになると、それは営利目的の「事業」と見なされる可能性が非常に高くなります。過去には、消防士や自衛隊員がゲーム実況動画で広告収入を得ていたことが発覚し、懲戒処分となった事例もあります。収益化しているか否か、活動が継続的・組織的に行われているか否かが、趣味と事業を分ける重要な判断基準となります。
【ケーススタディ】許可されやすい事例の分析
- 事例1: 地域スポーツ少年団のコーチ(有償)
- 分析: これは許可されやすい典型例です。活動の目的が青少年の健全育成という高い公益性を持ち、地域貢献に直接的に資するものです。報酬も、指導にかかる時間や労力に見合った謝礼の範囲内であり、社会通念上相当と認められやすいでしょう。活動が週末や平日の夜間に限られていれば、本業への支障も少ないと判断できます。
- 事例2: 専門知識を活かした単発の講演・執筆
- 分析: 公務で培った専門知識や経験を社会に還元する行為であり、自己の能力向上にも繋がるため、積極的に認められるべき活動です。特に、依頼が一回限りの単発のものであれば、継続性がないことから許可が不要とされる場合もあります。ただし、同じ依頼主から定期的・継続的に執筆や講演を請け負うようになると、それは「事業」と見なされるため、許可申請が必要となります。
- 事例3: 親族が経営する小規模な商店の繁忙期手伝い
- 分析: 年末などの繁忙期に、無報酬または少額の謝礼で家業を手伝うといったケースは、社会通念上、家族間の相互扶助の範囲内と見なされやすく、問題となることは少ないでしょう。ただし、その職員が実質的な経営者として振る舞ったり、経理を全面的に担当したり、あるいは高額な役員報酬を得たりするようになると、話は別です。その場合は「役員兼業」や「自営」に該当する可能性があり、厳格な審査が必要となります。
【ケーススタディ】不承認となりうる事例の分析
- 事例1: 区の建設工事を請け負っている建設会社での設計アドバイザー業務
- 分析: これは不承認となる可能性が極めて高い、典型的な利益相反の事例です。区と当該建設会社との間には、工事請負契約という直接的かつ重大な利害関係が存在します。そのような会社で職員が報酬を得て業務に従事することは、入札の公正性や工事監督の中立性に深刻な疑念を抱かせ、区政への信頼を根底から揺るがしかねません。
- 事例2: 平日深夜(22時~翌2時)に及ぶコンビニエンスストアでのアルバイト
- 分析: 活動内容自体に問題はなくとも、「職務の能率の確保」という観点から不承認となる可能性が高い事例です。深夜に及ぶ労働は、睡眠不足や生活リズムの乱れを招き、翌日の公務に支障をきたす蓋然性が極めて高いと判断されます。職員の健康管理という観点からも、このような形態の兼業を許可することは困難です。
- 事例3: 職員の身分を明かした上で、特定の政治思想を広めるためのウェブサイトを運営し、広告収入を得る
- 分析: これは「職務の公正の確保」および「職員の品位の保持」の両面から、不承認となる可能性が極めて高い事例です。公務員には、政治的中立性が厳しく求められます。職員の身分を明かして特定の政治的主張を行うことは、その中立性を損ない、職全体の信用を失墜させる行為と見なされます。さらに、そこから収益を得ることは、営利活動と政治活動が結びつくことになり、より一層問題は深刻になります。
東京都・特別区の先進事例と動向
本章では、全国の先進自治体の取り組みから学び、東京都や我々特別区の制度を客観的に見つめ直します。他自治体との比較分析を通じて、自区の制度の強みや改善点を把握し、より良い制度運用を目指すためのヒントを探ります。
先進自治体(神戸市・生駒市等)の制度比較と示唆
全国には、副業・兼業制度を戦略的に活用し、地域活性化や人材育成に繋げている先進的な自治体が存在します。特に、兵庫県神戸市と奈良県生駒市は、その先駆けとして知られています。
- 神戸市「地域貢献応援制度」: 神戸市は、全国の政令指定都市に先駆けて2017年に本制度を導入しました。特筆すべきは、制度の名称を単なる「許可基準」ではなく、「地域貢献応援制度」とした点です。これは、市として職員が地域で活躍することを積極的に「応援」するという明確なメッセージを発信するものであり、制度に対する職員の心理的なハードルを下げ、ポジティブな活用を促す効果があります。活動内容を社会性・公益性の高い地域貢献活動に重点を置くことで、制度の目的を明確にしています。
- 生駒市「地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事制限の運用」: 神戸市とほぼ同時期に制度を導入した生駒市は、ユニークな制度設計で注目を集めています。当初は活動場所を「生駒市内」に限定するなど、職員の活動が直接的に自市の活性化に繋がることを重視していました。さらに、許可要件として直近の人事評価の結果(B評価以上など)を盛り込んでいる点が大きな特徴です。これは、まず本業でしっかりと成果を出している職員の、更なる挑戦を後押しするという思想の表れであり、制度の濫用を防ぎ、職員全体のモチベーション向上にも寄与する可能性があります。
- 示唆: これらの先進事例から得られる最大の示唆は、副業・兼業制度を、単なる服務規律上の「例外的な許可」と捉えるのではなく、地域課題の解決や職員の能力開発といった、より大きな行政目的を達成するための「戦略的な人事ツール」として位置づけている点です。この視点は、今後、特別区が人事戦略を立案する上でも大いに参考になるでしょう。職員の持つ潜在能力を、庁内だけでなく地域社会全体で活かすという発想の転換が求められています。
東京都及び特別区におけるガイドラインの比較分析
我々が所属する東京都および特別区においても、副業・兼業に関する規程が整備されています。その内容を正確に理解することが、日々の業務の基礎となります。
- 東京都の規程: 東京都では、「東京都職員の兼業等に関する事務取扱規程」が全庁的なルールとして定められています。この規程では、許可が必要な兼業の定義、申請手続き、不許可事由などが網羅的に規定されています。特徴的な点として、許可権者が職員の職層によって異なり、局長級は副知事、部長級は局長、それ以外の職員は所属長(権限委任)などと定められています。また、許可後も半期ごとに実績報告を義務付けるなど、厳格な管理体制が敷かれています。
- 各特別区の規程(例: 台東区、江東区、葛飾区、練馬区等): 特別区はそれぞれが独立した地方公共団体であるため、東京都の規程とは別に、独自の訓令や規程を定めています。これらの規程の基本的な骨格は、地方公務員法や国の三原則、そして東京都の規程に準拠している場合がほとんどです。しかし、申請書の様式、許可権者の範囲(例:部長級以上は区長、課長級以下は総務部長など)、実績報告の要否といった細部において、区ごとに運用が異なる場合があります。したがって、人事担当者は、他区の事例を参考にしつつも、まずは自区の規程を正確に読み込み、その趣旨を理解することが何よりも重要です。
広域連携や国との制度的整合性に関する考察
副業・兼業制度をより効果的に運用していくためには、区単独の視点だけでなく、より広い視野での連携や整合性を考えることも重要になります。
- 特別区人事委員会としての役割: 23区で許可基準や運用に大きな差が生じると、職員の不公平感に繋がる可能性があります。例えば、ある区では許可される活動が、隣の区では不許可となるような事態は望ましくありません。こうした状況を避けるため、特別区人事委員会が、許可基準に関する共通のガイドラインを示したり、判断に迷う事例についての情報交換の場を設けたりするなど、23区全体の調整役としての機能を果たすことが期待されます。
- 国の制度改正への追随: 働き方改革の流れは今後も続くと予想され、国において国家公務員の兼業制度がさらに緩和される可能性も十分に考えられます。その際には、東京都や特別区も、国の動向を注視し、いたずらに乖離が生じないよう、適切に自らの制度を見直していく必要があります。常に最新の情報を収集し、制度的な整合性を保つ努力が、人事部門には求められます。
業務改革・DXと生成AIの活用
旧来の紙ベースの事務から脱却し、テクノロジーを活用して承認業務をいかに効率化・高度化できるかを探ります。ここでは、単なる業務のスピードアップだけでなく、データの活用によって人事課の役割そのものを変革していく、未来の人事課の姿を構想します。
ICT活用による承認プロセスの効率化(電子申請、RPA)
日々の承認業務には、多くの定型的な作業が含まれています。これらをデジタル技術に置き換えることで、職員はより創造的で高度な判断を要する業務に集中できるようになります。
- 電子申請システムの導入: 現在の紙と押印を中心とした申請プロセスを、電子申請システムに移行することは、業務改革の第一歩です。職員が庁内のポータルサイトから直接申請情報を入力し、システム上で所属長の承認、人事課での審査、そして決裁までが完結するモデルを構築します。これにより、書類の物理的な移動にかかる時間がゼロになり、申請から承認までの期間を大幅に短縮できます。また、申請の進捗状況がシステム上で可視化されるため、職員からの問い合わせ対応も削減されます。ペーパーレス化によるコスト削減や環境負荷の低減も大きなメリットです。
- RPA(Robotic Process Automation)の活用: 電子化されたプロセスにRPAを組み合わせることで、さらなる効率化が可能です。RPAとは、これまで人間が行ってきたパソコン上の定型作業を自動化する技術です。例えば、以下のような作業をRPAに任せることができます。
- 申請書に入力された内容の形式チェック(必須項目の入力漏れなど)
- 申請された兼業時間と、人事給与システムに記録されている超過勤務時間データを自動で突合し、合計時間が基準を超えていないかのアラートを出す
- 過去の類似案件をデータベースから検索し、担当者に提示する これにより、担当者は単純な確認作業から解放され、利益相反の有無の精査といった、より高度な判断に注力することができます。
生成AIの具体的な活用シナリオ
近年急速に発展している生成AIは、承認業務の質を飛躍的に向上させるポテンシャルを秘めています。以下に、具体的な活用シナリオを挙げます。
- シナリオ1: 申請内容の一次レビューとリスク判定: 職員が申請内容をシステムに入力すると、生成AIが、過去の膨大な承認・不承認データ、関連法規、判例、各区の規程などを瞬時に学習・分析します。その上で、「利益相反の可能性:中(理由:申請者の所属と兼業先の事業内容に一部関連性が見られるため、詳細な確認が必要)」「勤務時間超過リスク:低」といった形で、リスクの一次評価と判断の根拠を担当者に提示します。これにより、担当者は論点を見落とすことなく、効率的に審査を進めることができます。
- シナリオ2: 職員向けFAQチャットボット: 「不動産収入が500万円を超えそうなのですが、どのような手続きが必要ですか?」「NPOで交通費だけもらう場合、許可は必要ですか?」といった、職員から頻繁に寄せられる質問に対して、24時間365日、AIチャットボットが規程に基づいて自動で回答します。これにより、人事課の問い合わせ対応業務が大幅に削減され、職員はいつでも気軽に疑問を解消できるようになります。
- シナリオ3: 承認・不承認理由のドラフト作成: 担当者が審査結果(承認・不承認)と判断の要点を入力すると、生成AIが、通知文書に記載する理由のドラフトを、法的根拠や過去の文例を踏まえて自動で作成します。担当者はその内容を確認・修正するだけで、質の高い通知文書を迅速に作成できるようになり、文書作成にかかる時間を大幅に削減できます。
- シナリオ4: 熟練担当者のナレッジ共有: 過去に発生した判断の難しい複雑な案件について、熟練担当者がどのような思考プロセスで結論に至ったのか、どのようなヒアリングを行ったのかといった「暗黙知」をデータとして蓄積し、生成AIに学習させます。これにより、担当者が交代しても組織としての判断基準がブレることなく、若手職員でもベテランの知見を参考にしながら判断できるようになり、組織全体のナレッジマネジメントと人材育成に貢献します。
民間活力の活用と官民連携の可能性
業務改革の視点は、庁内だけでなく庁外にも向けるべきです。民間企業が持つノウハウやプラットフォームを活用することで、新たな価値を創造できます。
- 副業マッチングプラットフォームとの連携: 近年、専門スキルを持つ人材と、人手を求める企業や団体を繋ぐ、副業マッチングプラットフォームが数多く登場しています。これらの民間プラットフォームと自治体が連携することで、地域貢献に繋がる副業案件(例:地域のNPO法人の経理支援、商店街のウェブサイト作成など)を、希望する職員に紹介するといった取り組みが考えられます。これにより、職員は安全かつ有意義な兼業の機会を得やすくなり、地域社会は公務員が持つ質の高いスキルを活用できるという、Win-Winの関係を構築できます。
これらのDXやAIの導入は、単に業務を効率化するだけにとどまりません。電子化された申請データは、組織にとって極めて貴重な「戦略的資産」となります。例えば、「どの部署の職員が、どのような種類の副業を希望しているのか」「不承認となるケースにはどのような傾向があるのか」といったデータを分析することで、職員のスキルセットやキャリア志向、あるいは特定の部署が抱える課題(業務負荷や満足度の低下など)を可視化することができます。この分析結果は、研修プログラムの改善、新たなキャリアパスの設計、あるいは職場環境の改善といった、より本質的な人事戦略の立案に繋がります。承認業務は、データを活用することで、単なる事務処理から、組織の健康状態を把握し、未来を予測するための重要なセンサーへと進化するのです。
承認業務の質を高める実践的スキル
本章では、日々の業務を改善し、より高いレベルの成果を出すための具体的な手法としてPDCAサイクルを取り上げます。優れた制度やシステムも、それを使いこなし、常に改善しようとする意識がなければ形骸化してしまいます。組織全体で、そして担当者一人ひとりが、どのように継続的な改善を実践できるかを具体的に学びます。
組織レベルでのPDCAサイクル実践法
人事課という組織全体で、承認業務の品質を継続的に向上させていくためのPDCAサイクルモデルです。
- Plan (計画): 年度の初めに、組織としての具体的な目標を設定します。目標は、漠然としたものではなく、測定可能な指標(KPI)を伴うものであることが重要です。
- 目標例:
- 申請受付から初回通知までの平均処理日数を、前年度比で10%短縮する。
- 職員の制度理解度向上のため、全所属を対象とした説明会を年2回実施する。
- 職員アンケートの結果に基づき、申請マニュアルおよびFAQを全面的に改訂する。
- 無許可兼業による懲戒処分件数をゼロにする。
- 目標例:
- Do (実行): 設定した計画に基づき、具体的なアクションを実行します。
- 実行例:
- 処理日数短縮のため、電子申請システムの一部門での試行導入を開始する。
- 説明会のコンテンツを作成し、各所属と日程調整を行い、実施する。
- マニュアル改訂のプロジェクトチームを立ち上げ、改訂作業に着手する。
- 実行例:
- Check (評価): 年度末などの定められた時期に、計画の達成度を客観的に評価します。
- 評価例:
- システムログから平均処理日数を算出し、目標を達成できたかを確認する。
- 説明会参加者へのアンケートを実施し、満足度や理解度を測定する。
- 改訂後のマニュアルの閲覧数や、関連する問い合わせ件数の増減を分析する。
- 懲戒処分件数の実績を確認する。
- 評価例:
- Act (改善): 評価結果を踏まえ、次年度に向けた改善策を立案し、次のPlanに繋げます。
- 改善例:
- 「試行導入した電子申請システムは効果があったため、次年度は全部署に本格導入する。」
- 「説明会アンケートで『ケーススタディが分かりやすかった』との声が多かったため、次年度は事例紹介の時間を増やす。」
- 「依然として特定の質問が多いため、FAQの該当箇所をさらに分かりやすく修正する。」
- 改善例:
個人レベルでのPDCAサイクル実践法
組織の改善は、担当者一人ひとりの成長なくしてはあり得ません。日々の業務を通じて自己のスキルアップを図るための、個人版PDCAサイクルモデルです。
- Plan (計画): 上司との面談などを通じて、自身の成長目標を設定します。
- 目標例:
- これまで経験のない、複雑な不動産投資案件の承認審査を、一人で完遂できるようになる。
- 自分が担当した案件の平均処理日数を、前期比で5%短縮する。
- 職員からの問い合わせに対し、規程のどの部分に基づく回答なのかを常に明確に説明できるようになる。
- 目標例:
- Do (実行): 目標達成のために、日々の業務の中で意識的に行動します。
- 実行例:
- 過去の不動産案件の決裁文書を読み込み、判断のポイントを自分なりに整理する。
- 判断に迷った際は、すぐに先輩や上司に質問し、その思考プロセスを学ぶ。
- 自分の事務処理フローを書き出し、どこに時間がかかっているか(ボトルネック)を特定し、改善を試みる。
- 実行例:
- Check (評価): 一定期間(例えば3ヶ月)ごとに、目標の達成度を自己評価します。
- 評価例:
- 不動産案件について、自信を持って上司に起案内容を説明できるようになったか。
- 処理日数の実績データを算出し、目標を達成できたかを確認する。
- 問い合わせ対応の際に、根拠条文をスムーズに引用できた場面を振り返る。
- 評価例:
- Act (改善): 自己評価の結果に基づき、次のステップを考えます。
- 改善例:
- 「不動産案件はマスターできたので、次は判断が難しいNPO関連の事例研究に取り組もう。」
- 「書類の確認作業にまだ時間がかかっている。チェックリストを作成して、効率化とミスの防止を図ろう。」
- 「より分かりやすい説明ができるよう、説明の仕方を工夫してみよう。」
- 改善例:
このように、組織と個人の両輪でPDCAサイクルを回し続けることが、承認業務の質を継続的に高め、職員や住民から信頼される人事部門を築くための鍵となります。
まとめ:未来の公務員像と人事課の役割
本研修マニュアルを通じて、副業・兼業承認業務の法的根拠から実践的なノウハウ、そして未来の展望までを網羅的に学んでいただきました。最後に、この業務が持つ本質的な意味と、これからの時代に人事課職員として果たすべき役割について、未来へのエールを込めて締めくくりたいと思います。
- 「閉じた組織」から「開かれた組織」へ: 副業・兼業制度の柔軟な運用は、公務員組織がこれまでの「閉じた組織」から、社会との多様な接点を持ち、外部の知見や活力を積極的に取り入れる「開かれた組織」へと変革していくための、象徴的な一歩です。職員が地域活動や民間企業での経験を通じて得た新たな視点やスキルは、行政サービスの質の向上や前例踏襲の打破に繋がり、組織全体に新風を吹き込む原動力となります。
- 信頼を基盤とした自律的な職員の育成: これからの時代に求められるのは、指示を待つだけでなく、自ら課題を発見し、学び、行動する「自律的な職員」です。副業・兼業は、職員が自身のキャリアを主体的に考える絶好の機会を提供します。人事課の役割は、厳格な管理によって職員を縛ることではなく、職員一人ひとりの良識とプロフェッショナリズムを信頼し、ルールの中で最大限の挑戦ができるよう後押しすることです。信頼を基盤とした関係性こそが、職員のエンゲージメントを高め、組織の活力を生み出します。
- 人事課職員へのエール: 皆さんが日々向き合っている副業・兼業の承認業務は、決して単調な事務作業ではありません。それは、一人の職員の新たな挑戦を支え、その成長を促し、ひいては地域社会を豊かにし、組織の未来を形作る、極めて創造的で誇り高い仕事です。一件一件の申請の向こう側には、職員それぞれの想いや人生の選択があります。
本研修で得た知識と視点を羅針盤として、自信と誇りを持って日々の業務に臨んでください。皆さんの的確な判断力、丁寧な説明、そして挑戦を後押しする温かいサポートが、職員一人ひとりの可能性を拓き、特別区という組織、そして私たちが奉仕する地域社会全体の未来を、より明るく照らす一助となることを心から信じています。