10 総務

公有財産・行政財産・普通財産の管理

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(公有財産管理を取り巻く環境)

  • 自治体が公有財産・行政財産・普通財産の管理を行う意義は「持続可能な行政サービスの提供」と「将来世代への負担軽減」にあります。
  • 公有財産とは、地方公共団体が所有する全ての財産を指し、地方自治法に基づき、その利用目的によって「行政財産」と「普通財産」に大別されます。
    • 行政財産
      • 庁舎、学校、公園のように、行政が事務や事業を行うため、あるいは住民の共同利用のために直接供される財産です。その性質上、貸付や売却が原則として制限されており、公共サービスの提供という直接的な目的のために維持管理されます。(出典)いわき市「公有財産の概念」地方自治法第二百三十八条
    • 普通財産
      • 行政財産以外の全ての公有財産を指します。特定の行政目的に直接利用されず、売却や貸付などを通じて経済的価値を発揮させ、間接的に行政運営に貢献することが期待される財産です。未利用地や旧庁舎跡地などがこれにあたり、民間と同様の経済原則に基づいた柔軟な活用が可能です。(出典)川島町「財産管理活用ガイドライン」財務省「普通財産の概要」
  • 東京都特別区をはじめとする多くの自治体は今、深刻な「トリプルチャレンジ」に直面しています。第一に、少子高齢化に伴う社会保障費の増大と税収の伸び悩みによる「財政の制約」。第二に、高度経済成長期に集中整備された公共施設の老朽化が一斉に進行し、更新需要が爆発的に増大する「インフラの危機」。そして第三に、デジタル化の進展やライフスタイルの変化により、既存の施設では対応しきれない「住民ニーズの変容」です。この複合的な課題に対し、戦略的な公有財産管理は、もはや単なる財産管理業務ではなく、持続可能な自治体経営の根幹をなす最重要課題となっています。

意義

住民にとっての意義

安定した行政サービスの享受
  • 学校、図書館、防災施設といった行政財産が適切に維持管理されることで、住民は安定的かつ継続的に必要不可欠なサービスを受けることができます。
サービス品質の向上と安全性確保
  • 老朽化した施設を計画的に更新・改修することで、バリアフリー化や最新設備の導入などが進み、住民サービスの質が向上します。また、インフラの適切な維持管理は、崩落事故などを未然に防ぎ、住民の安全な生活を守ります。
生活環境の質の向上
  • 未利用地が公園やコミュニティスペースとして活用されることで、地域の魅力や利便性が高まり、住民のQOL(生活の質)向上に繋がります。

地域社会にとっての意義

地域経済の活性化
  • 活用されていない普通財産を民間に売却・貸付することで、新たな商業施設や住宅開発が促進され、雇用創出や地域経済の活性化に貢献します。
都市のスポンジ化防止と景観維持
新たなコミュニティ活動の創出
  • 公有地を地域団体やNPOに開放することで、新たなコミュニティ活動やイベントが生まれ、地域の連帯感や活力が醸成されます。

行政にとっての意義

財政の持続可能性確保
行政運営の効率化と最適化
  • 全庁的な視点で公有財産を管理することで、施設の重複や非効率な配置を見直し、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最も効果的な分野に再配分できます。
行政の信頼性向上
  • 公有財産の管理方針や活用状況を透明性高く公開し、住民や議会への説明責任を果たすことで、行政運営への信頼を高めることができます。

(参考)歴史・経過

明治時代
戦後〜高度経済成長期(1950年代〜1970年代)
  • 急激な人口増加と経済成長に対応するため、全国の自治体で学校、公営住宅、公民館、道路、上下水道といった公共施設・インフラが集中的に整備されました。現在、老朽化が課題となっている施設の多くがこの時期に建設されたものです。
バブル期〜崩壊後(1980年代〜1990年代)
  • 財政の拡大と、その後の急激な悪化を経験し、行政改革の必要性が叫ばれ始めました。資産の効率的な活用が議論されるようになりましたが、大規模な再編には至らないケースが多く見られました。
2000年代
  • 地方分権一括法の施行や三位一体の改革により、自治体の自己決定権が拡大する一方、財政的な自律が強く求められるようになりました。公共施設の運営に民間のノウハウを活用する「指定管理者制度」が導入(2003年)され、官民連携の動きが本格化しました。
2010年代〜現在
  • 2012年の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故を契機に、インフラ老朽化問題が社会的な最重要課題として認識されるようになりました。国は「インフラ長寿命化基本計画」を策定し、全ての地方公共団体に対して、保有する全施設を対象とした「公共施設等総合管理計画」の策定を要請。これにより、対症療法的な維持管理から、長期的な視点に立った予防保全、施設の統廃合・総量削減を含む戦略的マネジメントへと、公有財産管理のパラダイムが大きく転換しました。

公有財産管理に関する現状データ

公有財産の総量と構成
  • 地方公共団体が保有する固定資産は膨大な規模に上ります。総務省の「令和6年版 地方財政白書」によると、令和4年度末の地方公会計における固定資産(普通会計)の純計額は有形固定資産だけで約735.6兆円に達します。
  • 東京都特別区も例外ではなく、各区が膨大な資産を保有しています。例えば、港区は令和5年3月末時点で127施設、延床面積約76.8万㎡、文京区は令和6年1月時点で231施設、約45万㎡、台東区は令和5年4月時点で建物202施設、インフラ1,432施設を保有しています。(出典)港区「港区区有施設保全計画」文京区「文京区公共施設等総合管理計画」台東区「台東区公共施設等総合管理計画」 これらは区民の生活を支える重要な基盤であると同時に、維持管理に莫大なコストを要する経営資源です。
深刻化する施設の老朽化
将来の更新費用の推計
  • 施設の老朽化は、将来の莫大な財政負担に直結します。国の試算では、仮に予防保全型のメンテナンスに移行したとしても、今後30年間の維持管理・更新費は約190兆円に上るとされています。
  • 特別区レベルの試算も深刻な状況を示しています。台東区の試算では、建物とインフラを合わせた今後30年間の維持管理・更新費用の総額は約4,910億円、年平均で約164億円が必要とされています。これは現在の投資的経費の水準を大きく上回るものであり、計画的な対応がなければ財政運営が立ち行かなくなる可能性を示唆しています。
未利用・低利用普通財産の現状
  • 施設の老朽化という「負の資産」の問題と同時に、活用されていない「眠れる資産」の存在も大きな課題です。例えば、世田谷区では未利用地の面積が平成23年(2011年)の116.5haから令和3年(2021年)には129.2haへと増加しており、資産の有効活用が進んでいない実態がうかがえます。
  • 全国的に見ても、令和4年中に低未利用土地等の譲渡に係る確認書が交付された件数は4,842件あり、そのうち譲渡前の状態が「空き地」だったものが55%を占めています。これは、活用されずに放置されている土地が全国に数多く存在することを示しています。

課題

住民の課題

公共サービスの質の低下と安全性への懸念
  • 老朽化した施設は、雨漏り、設備の故障、バリアフリー未対応など、直接的に住民の利便性や安全性を損ないます。特に、日常的に利用する道路や橋梁などのインフラの老朽化は、重大な事故に繋がるリスクをはらんでいます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施設の機能不全やインフラの事故リスクが増大し、住民の生命と財産が危険に晒されます。
現代の住民ニーズと既存施設のミスマッチ
  • 少子高齢化、共働き世帯の増加、ライフスタイルの多様化により、住民が求めるサービスは大きく変化しています。しかし、高度成長期に建設された画一的・単一機能の施設(例:児童館、老人いこいの家)では、現代の複合的なニーズ(例:世代間交流、多文化共生、リモートワーク対応)に対応しきれていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 税金が利用率の低い施設の維持に費やされ、真に必要とされる新たなサービスへの投資が抑制されます。

地域社会の課題

未利用・低利用地の増加による地域活力の低下
  • 活用されていない公有地(普通財産)は、単に「もったいない」だけでなく、雑草の繁茂による景観の悪化、不法投棄の温床化など、防犯・防災上のリスクとなります。また、地域の新たな発展の機会を奪い、経済活動の停滞を招きます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域の魅力が失われ、人口流出や商業活動の衰退がさらに加速する「都市のスポンジ化」が進行します。

行政の課題

爆発的に増大する更新費用と財政の硬直化
  • 今後20〜30年で公共施設の更新需要がピークを迎えますが、その費用は現在の自治体の財政規模では到底賄いきれない水準に達することが予測されています。この問題への対応が遅れれば、財政は更新費用に追われるばかりで、新たな行政需要に応えるための政策投資が不可能になる「財政の硬直化」を招きます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の指針に基づき各自治体が策定した公共施設等総合管理計画では、多くの団体で将来の更新費用が現在の投資的経費を大幅に上回ることが示されています。例えば、台東区では今後30年間の建物・インフラの更新・管理費用が年平均約164億円に上ると試算されており、財政への大きな負担が予測されます。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 更新費用の捻出のために他の重要施策の予算が圧迫され、行政サービス全体の水準が低下します。
縦割り行政による非効率な財産管理
  • 施設ごとに所管部署が異なる「縦割り行政」は、全庁的な視点での情報共有や戦略的な資産活用を大きく阻害しています。各部署が自らの所管施設の維持のみを考え、施設間の機能重複や非効率な配置が温存されがちです。施設情報が一元管理されていないため、データに基づいた最適配置の検討も困難な状況です。
専門人材の不足とノウハウの欠如
  • PPP/PFI、不動産開発、デジタル技術(BIM/CIM)など、先進的なアセットマネジメントを推進するには高度な専門知識が不可欠ですが、多くの自治体でこうした専門知識を持つ職員が不足しています。特に、民間事業者と対等に交渉し、複雑な事業スキームを構築できる人材の確保・育成は急務です。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府のPPP/PFI推進アクションプランでは、地方公共団体におけるノウハウ不足が課題として認識されており、専門家派遣などの支援策が盛り込まれています。
      • 自治体DXの文脈でも、デジタル人材の不足は深刻な課題であり、総務省は人材確保・育成を重点項目としています。
        • (出典)(https://bizdev-career.jp/2024/07/08/local-government-dx/)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 民間活力の導入やDXによる効率化が進まず、旧態依然とした高コストな管理手法から脱却できません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:施策の実施から効果発現までの期間が短く、財政改善、住民サービス向上、地域活性化など、複数の課題解決に同時に貢献する施策を高く評価します。
  • 実現可能性:現在の法制度、財源、組織体制の観点から、現実的に導入・実行が可能な施策を優先します。
  • 費用対効果:投下する資源(予算、人員)に対して、ライフサイクルコストの削減など長期的な視点を含めて大きな効果が見込める施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性:特定の受益者に偏らず、広く住民に便益が及び、将来世代に過度な負担を残さない持続可能な施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:国の計画や白書、先進自治体の成功事例で効果が実証されているエビデンスに基づく施策を最優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 公有財産管理の課題は、施設の老朽化、財政問題、住民ニーズの変化が複雑に絡み合っています。これらに対応するため、「①計画の実行力強化」「②民間活力の最大化」「③管理基盤の革新」の3つの柱を統合的に推進する戦略が不可欠です。
  • 最優先で取り組むべきは「支援策①:公共施設等総合管理計画の高度化と実行」です。これは全ての取り組みの土台となる「羅針盤」であり、この計画の実効性を高めることが他の施策の効果を最大化します。ほぼ全ての自治体で計画は策定済みですが、その多くが「計画倒れ」に終わるリスクを抱えており、計画を具体的な行動に移すための仕組みづくりが急務です。
  • 次に、計画実行の強力なエンジンとなる「支援策②:PPP/PFI及び多様な官民連携手法の積極的導入」を推進します。これにより、行政単独では乗り越えがたい財源と専門ノウハウの不足という最大の障壁を突破します。
  • そして、これら2つの施策を恒久的に支える神経系として「支援策③:DXを活用した次世代型公有財産マネジメント基盤の構築」を整備します。データに基づかない計画は形骸化し、透明性のないプロジェクトに民間事業者は参入しづらいため、DX基盤の構築は持続可能な改革の必須条件です。

各支援策の詳細

支援策①:公共施設等総合管理計画の高度化と実行

目的
主な取組①:個別施設計画の策定とPDCAサイクルの徹底
  • 全ての施設を対象に、具体的な点検・診断、修繕・更新の時期と内容、概算費用を明記した「個別施設計画」を策定・公表します。
  • 計画の進捗状況を毎年度評価し、議会に報告するとともに、評価結果を次期計画や予算編成に確実に反映させるPDCAサイクルを制度化します。
主な取組②:予防保全型メンテナンスへの完全移行
  • 施設の不具合が発生してから対応する「事後保全」から、計画的な点検と早期の補修により施設の劣化を防ぎ、寿命を延ばす「予防保全」へ完全に移行します。
  • これにより、施設の長寿命化とライフサイクルコスト(LCC)の縮減を両立させ、将来の財政負担を大幅に軽減します。
主な取組③:施設の統廃合・複合化・多機能化の断行
主な取組④:未利用・低利用普通財産の戦略的活用・処分
  • 全庁的に未利用・低利用の普通財産をリストアップし、売却、貸付、暫定利用(地域イベント広場など)の方針を明確に定めた「公有財産活用方針」を策定・公表します。
  • 売却・貸付にあたっては、公募による一般競争入札を原則とし、価格の透明性と公平性を確保するため、不動産鑑定士等で構成される「財産価格審議会」の活用を徹底します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公共施設等に係るライフサイクルコスト(LCC)を今後30年間で20%削減
      • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期費用推計の定期的な見直しと実績比較
  • KSI(成功要因指標)
    • 個別施設計画策定率 100%
      • データ取得方法: 資産管理所管部署による策定状況の集計
    • 予防保全型管理への移行率(対象施設ベース) 90%以上
      • データ取得方法: 各施設管理部署の保全計画に基づく進捗管理
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 施設総延床面積の削減率 年率1%
      • データ取得方法: 固定資産台帳データの年次比較
    • 住民一人当たりの施設維持管理コストの抑制(対前年度比マイナス成長)
      • データ取得方法: 決算統計データと住民基本台帳人口から算出
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 統廃合・複合化を実施した施設数 年間5件以上
      • データ取得方法: 事業実績報告の集計
    • 売却・貸付による普通財産からの年間収益額 10億円以上
      • データ取得方法: 財政会計システムの歳入データ

支援策②:PPP/PFI及び多様な官民連携手法の積極的導入

目的
主な取組①:PPP/PFI導入優先的検討規程の策定と遵守
  • 一定規模以上の公共施設の整備・運営事業について、従来型の直営方式より先にPPP/PFI手法の導入を検討することを義務付ける「優先的検討規程」を策定し、その遵守を徹底します。
主な取組②:多様な官民連携手法の活用
  • 大規模事業向けのPFIだけでなく、事業特性に応じた多様な手法を柔軟に活用します。
    • コンセッション方式:空港、上下水道、アリーナなど利用料金収入が見込める事業で導入を検討します。
    • 指定管理者制度:公園、文化施設、スポーツ施設等の運営において、成果連動型のインセンティブ条項を設けるなど制度運用を高度化します。
    • Park-PFI:公園内に収益施設(カフェ、レストラン等)の設置を民間に委ね、その収益で公園全体の魅力向上と維持管理の充実を図ります。
    • 包括的民間委託:複数の施設の維持管理業務(清掃、警備、点検等)を一体的に民間に包括委託し、スケールメリットによるコスト削減と品質向上を実現します。
    • 客観的根拠:
主な取組③:サウンディング型市場調査の積極的実施
  • 事業の構想・計画の早い段階で、民間事業者との対話(サウンディング)を実施します。
  • これにより、事業の市場性、民間の参入意欲、革新的なアイデアなどを把握し、より実現可能性の高い事業スキームを構築します。
主な取組④:官民連携専門部署の設置と人材育成
  • 区役所内にPPP/PFIを専門に推進する部署を設置し、案件形成から事業者選定、モニタリングまでを一元的に支援します。
  • 内閣府や国土交通省が実施する研修への職員派遣や、外部専門家(アドバイザー)の積極的な登用により、専門人材を育成・確保します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 新規公共施設整備事業におけるPPP/PFI手法導入率 50%(事業費ベース)
      • データ取得方法: 事業計画及び予算データに基づく事業手法の分類・集計
  • KSI(成功要因指標)
    • サウンディング型市場調査の実施件数 年間10件以上
      • データ取得方法: PPP/PFI専門部署による実施実績の集計
    • PPP/PFI専門研修を受講した職員数 累計50人
      • データ取得方法: 人事課の研修受講履歴
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • PPP/PFI事業におけるVFM(Value for Money)達成率 10%以上
      • データ取得方法: 各事業のVFM算定結果の集計
    • 指定管理者制度導入施設における利用者満足度 85%以上
      • データ取得方法: 各施設で実施する利用者アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • PPP/PFI事業の新規契約件数 年間3件以上
      • データ取得方法: 契約締結実績の集計
    • 優先的検討規程の対象となった事業数 年間5件以上
      • データ取得方法: 規程に基づく検討プロセスの記録

支援策③:DXを活用した次世代型公有財産マネジメント基盤の構築

目的
  • 点在する公有財産情報をデジタル技術で一元的に「見える化」し、データに基づいた科学的な施設管理と戦略的な資産経営(アセットマネジメント)を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の「自治体DX推進計画」では、デジタル技術やデータを活用した業務効率化と住民サービスの向上が重点項目とされています。
        • (出典)(https://bizdev-career.jp/2024/07/08/local-government-dx/)、(https://www.ntm.co.jp/column/detail066)
主な取組①:公有財産統合データベースの構築
  • 固定資産台帳、施設台帳、財務会計システム、地図情報システム(GIS)などを連携させた統合データベースを構築します。
  • これにより、施設の位置、規模、築年数、維持管理コスト、利用状況、エネルギー消費量などの情報を一元的に把握・分析できる環境を整備し、EBPM(証拠に基づく政策立案)を推進します。
主な取組②:BIM/CIMの導入によるライフサイクル管理
  • 施設の設計・施工から維持管理、解体までのライフサイクル全体にわたり、3次元モデルに関連情報を統合するBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)を導入します。
  • これにより、維持管理計画の精度向上、修繕コストの正確な把握、効率的な施工管理が可能となり、ライフサイクルコストの最適化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 官庁営繕行政において、ストックの質を向上させるため、コンバージョンを含む大規模リニューアル手法の活用が課題とされており、BIM/CIMはその有効なツールとなります。
主な取組③:IoTセンサー等を活用したインフラ監視
  • 橋梁、トンネル、上下水道管路など、目視点検が困難なインフラにIoTセンサーやドローンを導入します。
  • 劣化状況や異常をリアルタイムで遠隔監視し、最適なタイミングでの修繕を可能にすることで、予防保全を高度化し、重大事故を未然に防ぎます。
主な取組④:オープンデータの推進と市民協働
  • 施設の基本情報や利用状況、空きスペース情報などをオープンデータとして公開します。
  • これにより、民間事業者による新たなサービス開発(例:施設予約アプリ)や、市民による地域の課題発見・解決(例:公園の遊具の不具合報告アプリ)を促進し、官民共創のまちづくりを進めます。
    • 客観的根拠:
      • 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、オープンデータの推進が重要な柱とされており、自治体DXにおいても地域社会のデジタル化と連携することが求められています。
        • (出典)(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20231114/pdf/shiryou1.pdf)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 施設維持管理業務における職員の作業時間 30%削減
      • データ取得方法: BPR(業務プロセス改革)前後での業務量調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 公有財産データのデジタル一元化率 100%
      • データ取得方法: 対象となる各種台帳・システムの連携状況確認
    • BIM/CIM導入率(新規大規模施設) 100%
      • データ取得方法: 公共工事の発注仕様における導入実績
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • データ分析に基づく施設再編・コスト削減提案件数 年間20件以上
      • データ取得方法: 資産管理所管部署からの起案件数
    • インフラの異常検知から対応までの平均時間 50%短縮
      • データ取得方法: 施設管理システムのログデータ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • IoTセンサー設置数(主要インフラ) 500箇所
      • データ取得方法: 設置台帳による管理
    • オープンデータとして公開された公有財産関連データセット数 100件
      • データ取得方法: 自治体オープンデータポータルの登録数

先進事例

東京都特別区の先進事例

豊島区「市街地再開発事業と連携した新庁舎整備」

  • 旧小学校跡地などを活用した市街地再開発事業に参画し、民間施設(オフィス、商業施設、マンション)との複合施設内に新庁舎を整備しました。旧庁舎跡地を定期借地権で貸し付けることで得た約191億円の収入を新庁舎整備費用に充当し、実質的な財政負担ゼロで庁舎の建て替えを実現しました。
  • 成功要因は、公有財産のポテンシャルを最大限に活用する「アセットマネジメント」の視点、民間事業者との巧みな連携、そして行政課題の解決(庁舎老朽化)とまちづくり(地域活性化)を同時に実現する戦略性が挙げられます。

渋谷区「Park-PFIによる宮下公園の再生」

港区「数値目標を掲げた戦略的ファシリティマネジメント」

  • 「港区公共施設マネジメント計画」において、将来(平成72年)の区有施設の保有量目標を「80万㎡」と具体的に設定し、総量抑制を明確に打ち出しました。また、施設の長寿命化目標を「原則80年以上」とし、予防保全型管理への転換を徹底しています。
  • 成功要因は、長期的な視点に立った明確な数値目標(KPI)を設定し、それに向かって全庁的な体制で取り組む戦略性です。これにより、場当たり的な対応ではなく、計画的・体系的な資産管理が可能となっています。

全国自治体の先進事例

大阪市「指定管理者制度を活用した大阪城公園の魅力向上」

  • 大阪城公園の管理運営に指定管理者制度を導入し、民間事業体(大阪城パークマネジメント共同事業体)が魅力向上事業を展開。公園内にレストランや物販店などの収益施設を整備し、その収益で公園の維持管理を行うことで、市の財政負担をゼロにするどころか、市に納付金を支払う「稼ぐ公園」へと転換させました。
  • 成功要因は、行政が「管理」から「経営」へと発想を転換し、民間の自由な発想と経営能力を最大限に引き出す事業スキームを構築した点です。成果指標(KPI)を細かく設定し、事業評価を厳格に行っている点も特徴です。

会津若松市「スマートシティと連携した公共サービス改革」

  • ICTをまちづくりの根幹に据え、「スマートシティ会津若松」を推進。市民の同意に基づくデータ連携基盤(オプトイン)を構築し、ヘルスケア、防災、交通、決済など多様な分野で官民が連携したサービスを提供しています。公共施設の管理においても、データに基づいた効率的な運営を目指しています。
  • 成功要因は、ICTというツール導入だけでなく、「市民中心」の理念を徹底し、産学官金労言が連携する強固な推進体制を構築した点です。これにより、持続可能で市民に便益が還元される仕組みが実現しています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区が直面する公有財産の管理という課題は、単なる施設の老朽化問題ではなく、人口減少・超高齢社会における持続可能な行政経営そのものの根幹を揺るがす喫緊の経営課題です。データは財政的・物理的な限界が目前に迫っていることを明確に示しており、この状況を打開するには、従来の維持管理という発想から脱却し、公有財産を「経営資源」として捉え、その価値を最大化する戦略的アセットマネジメントへの転換が不可欠です。「計画の実行力強化」「民間活力の最大化」「管理基盤の革新」という三位一体の改革を断行することで、財政負担の軽減と将来世代が必要とする質の高い住民サービスの提供を両立させることが可能となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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