17 健康・保健

スポーツを通じた健康増進プログラム

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(スポーツを通じた健康増進を取り巻く環境)

  • 自治体がスポーツを通じた健康増進プログラムを推進する意義は「超高齢社会における健康寿命の延伸と社会保障費の持続可能性確保」と「地域コミュニティの活性化と住民のウェルビーイング向上」にあります。
  • 日本、特に東京都特別区は、世界でも類を見ないスピードで進行する超高齢社会と、それに伴う医療・介護費の増大という構造的な課題に直面しています。このような状況下で、スポーツは単なる余暇活動や競技に留まらず、住民の健康を維持・増進し、将来の社会保障負担を軽減するための極めて有効な「社会的処方箋」としての役割を担っています。
  • 国が策定した「第3期スポーツ基本計画」においても、スポーツを通じた健康増進は重点的な政策目標として掲げられており、全ての国民がスポーツに親しむことで、活力ある社会と絆の強い社会を目指す方向性が示されています。本記事では、この国家的な方針を踏まえ、東京都特別区が直面する現状と課題をデータに基づき分析し、効果的な行政支援策を提案します。

意義

住民にとっての意義

身体的・精神的健康の向上
  • 定期的なスポーツ活動は、生活習慣病(高血圧、糖尿病など)の予防・改善、筋力や心肺機能の維持・向上に直接的に寄与します。
  • また、ストレス解消やメンタルヘルスの改善にも大きな効果があり、心身ともに豊かな生活の基盤を築きます。
    • 客観的根拠:
      • スポーツ庁の資料では、スポーツ量を増やすことで、がんの発症リスクや死亡リスクが低下することが示されています。
        • (出典)東京都生活文化スポーツ局「(https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/policyinformation/health_promotion/tokyo_style/)」 2
      • 運動・スポーツを行うことで得られる効果として、「ストレス解消(メンタルヘルスの改善)」、「自己免疫力の向上」、「生活習慣病の予防・改善」などが挙げられています。
健康寿命の延伸
  • 平均寿命と健康寿命の差、すなわち「不健康な期間」を短縮することは、個人のQOL(生活の質)を大きく左右します。
  • スポーツを通じて身体機能を維持することは、自立した生活を送れる期間を延ばし、生涯にわたるウェルビーイングの向上につながります。

地域社会にとっての意義

コミュニティの活性化と社会的孤立の防止
  • スポーツクラブやイベントへの参加は、世代や背景の異なる人々が出会い、交流する貴重な機会を提供します。
  • これは地域内の社会的ネットワークを強化し、都市部で問題となりがちな社会的孤立の防止に繋がります。
    • 客観的根拠:
      • 「第3期スポーツ基本計画」では、「『あつまり』、スポーツを『ともに』行い、『つながり』を感じる」ことが新たな視点として掲げられており、スポーツによるコミュニティ形成の重要性が強調されています。
インクルーシブな社会の実現
  • 障害の有無や年齢、性別、国籍に関わらず、誰もが参加できるパラスポーツやユニバーサルスポーツの推進は、多様性を尊重し、互いを理解し合う共生社会の実現に不可欠です。
    • 客観的根拠:
      • 国の計画では、スポーツを通じて誰もが価値を享受できる環境を構築し、「スポーツを軸とした共生社会を実現する」ことが目標とされています。
      • 東京都も「スポーツを通じた共生社会の実現」を政策目標の一つに掲げています。

行政にとっての意義

医療費・介護給付費の抑制
  • 住民の健康増進は、中長期的に見て最も効果的な財政健全化策の一つです。
  • 生活習慣病の予防やフレイル(虚弱)の進行抑制により、国民健康保険や介護保険の給付費を抑制し、持続可能な社会保障制度の構築に貢献します。
都市の魅力と活力の向上
  • 住民が健康で生き生きと暮らすまちは、活気に満ち、魅力的な都市として評価されます。
  • これは、企業の誘致や定住人口の確保にも繋がり、地域経済の活性化に寄与します。

(参考)歴史・経過

  • 1874年(明治7年)
  • 1945年(昭和20年)
    • 第二次世界大戦後、GHQの指導のもとで民主的なスポーツが奨励される一方、武道は一時的に制限されました。
  • 1961年(昭和36年)
    • 「スポーツ振興法」が制定され、戦後日本のスポーツ振興施策の法的基盤が確立されました。
  • 2011年(平成23年)
    • 「スポーツ振興法」を50年ぶりに全面改正し、「スポーツ基本法」が施行されました。「スポーツは権利」という理念を掲げ、健康増進や共生社会の実現など、スポーツの多面的な価値が明記されました。
  • 2015年(平成27年)
  • 2022年(令和4年)
    • 「第3期スポーツ基本計画」が策定されました。東京2020大会のレガシー発展を掲げ、「つくる/はぐくむ」「あつまり、ともに」「誰もがアクセス」という3つの新たな視点のもと、スポーツを通じた健康増進が重要政策として改めて位置づけられました。
  • 2025年(令和7年)
    • 新たな「東京都スポーツ推進総合計画」が開始されます。「誰もがスポーツを楽しむ東京を実現し、一人ひとりのウェルビーイングを高め、社会を変革する」ことを基本理念としています。

スポーツを通じた健康増進に関する現状データ

健康寿命と平均寿命のギャップ
  • 全国: 令和4年時点の健康寿命は、男性が72.57年、女性が75.45年で、近年はほぼ横ばいで推移しています。平均寿命(令和5年:男性81.09歳、女性87.14歳)との差、すなわち日常生活に制限のある期間は、男性で約8.5年、女性で約11.7年存在します。この「不健康な期間」の短縮が国家的な課題です。
  • 東京都: 令和2年の平均寿命は男性81.77年、女性87.86年と全国トップクラスですが、令和4年の健康寿命は男性72.23歳(全国29位)、女性75.41歳(全国27位)と、平均寿命の高さに比べて順位が低い状況です。これは、都民が長い期間、健康上の問題を抱えながら生活している可能性を示唆しており、スポーツによる健康増進の必要性が特に高いことを物語っています。
スポーツ実施率の現状と推移
  • 全国: 令和6年度調査における成人の週1回以上のスポーツ実施率は52.5%で、第3期スポーツ基本計画の目標値である70%には依然として大きな隔たりがあります。性別では男性が55.6%、女性が49.6%と女性の方が低く、年代別では20代から50代の働く世代で低い傾向が続いています。
  • 東京都: 週1回以上のスポーツ実施率は56.6%と全国で最も高い水準にあります。しかし、これはスポーツへの関心が高い層が積極的に活動している一方で、後述する施設不足などの物理的障壁が存在することを示唆する「東京パラドックス」とも言える状況です。都の調査でも、特定の層(20~30代女性など)の実施率が低いという課題は共通しています。
国民医療費と生活習慣病
  • 全体: 日本の国民医療費は増加の一途をたどっており、令和5年度には約48.6兆円に達する見込みです。これは国家予算の大きな割合を占め、財政を圧迫する主要因となっています。
  • 内訳: 医療費のうち、高血圧性疾患や糖尿病などの生活習慣病に関連する費用が約3割を占めています。また、死亡者数では約6割が生活習慣病を原因としています。スポーツによる一次予防(病気になる前の予防)が、医療費抑制に極めて大きなインパクトを持つことがデータから明らかです。
スポーツ施設の状況
  • 施設数: 東京都特別区の人口10万人当たりの公共スポーツ施設数は7.2施設と、全国平均(27.8施設)の約4分の1という極めて低い水準です。特に体育館数は人口比で全国最低レベルであり、物理的な活動場所の不足が深刻です。
  • 施設へのアクセス: この施設の絶対的不足は、都民が「スポーツをしたい」と思っても、気軽に利用できる場所がないという根本的な障壁を生み出しています。特に、高額な民間ジムに通うことが難しい層にとっては、スポーツ参加への大きな妨げとなっています。
  • 学校施設の活用: 学校体育施設の地域開放率は78.3%(令和4年度)と、5年前(72.1%)から向上していますが、施設の予約手続きの煩雑さや利用時間の制約など、さらなる活用に向けた課題が残されています。

課題

住民の課題

働く世代・女性における「時間の壁」と「機会の壁」
  • スポーツを実施しない最大の理由として、特に働く世代や子育て世代において「仕事や家事、育児で時間がない」(45.8%)が圧倒的に多く挙げられています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 将来の社会保障制度を支える現役世代の健康状態が悪化し、労働生産性の低下と将来の医療費の爆発的な増加を招きます。
運動への「心理的バリア」
  • 「運動が苦手・嫌い」(21.7%)や「人前で運動することへの抵抗感」といった心理的な障壁も根強く存在します。これらは、特に学生時代の体育の授業でのネガティブな経験が原因となっているケースが少なくありません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 運動を「一部の得意な人がやるもの」と捉える層が固定化され、健康意識や行動における社会的な分断と格差が拡大します。
高齢者・情報弱者における「デジタルデバイド」
  • 健康増進を目的としたスマートフォンアプリやオンラインプログラムが普及する一方で、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者や、情報へのアクセスが困難な層が、これらの新しいサービスから取り残されるリスクが高まっています。
    • 客観的根拠:
      • 「令和6年版厚生労働白書」では、こころの健康を支える上で「人とのつながり」の重要性が強調されていますが、デジタル化の進展が逆に新たな孤立を生み出す可能性も指摘されています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 最も健康支援を必要とする層に効果的な介入策が届かず、施策全体の費用対効果が低下するとともに、健康格差がさらに深刻化します。

地域社会の課題

インクルーシブなプログラムの不足
  • 障害の有無、年齢、性別、国籍などに関わらず、誰もが安心して参加できるプログラムや環境整備は依然として不十分です。特に障害者のスポーツ実施率は、健常者と比較して低い水準に留まっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 「共生社会の実現」が理念に留まり、特定の社会的属性を持つ人々がスポーツを通じた健康増進や社会参加の機会から恒常的に排除され続けます。
地域スポーツを支える担い手の不足と高齢化
  • 地域のスポーツ活動は、スポーツ推進委員や地域のボランティア指導者によって支えられていますが、多くの地域で担い手の不足と高齢化が深刻な問題となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域に根差したスポーツクラブやイベントが維持できなくなり、住民が最も身近な場所でスポーツに親しむ機会そのものが失われていきます。

行政の課題

スポーツ施設の絶対的不足と老朽化
  • 東京都特別区は、人口密度が高い一方で、住民が利用できる公共スポーツ施設の数が全国的に見て極めて少ない状況にあります。さらに、既存施設の多くは建設から数十年が経過し、老朽化対策が喫緊の課題となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民のスポーツ実施意欲が高まっても、それを受け入れる物理的な「皿」がないため、健康増進施策が効果を発揮できず、行政への不満が増大します。
縦割り行政による連携不足
  • スポーツを通じた健康増進は、スポーツ所管部局だけの課題ではありません。健康福祉、都市整備、教育、産業振興といった複数の部局が連携して初めて効果的な施策が展開できますが、従来の縦割り組織の壁がそれを阻んでいます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施策が各部局で断片的に実施され、相乗効果が生まれず、予算や人材といった行政資源の非効率な配分が続くことになります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果: 施策の実施から効果発現までの期間が短く、健康増進だけでなく、コミュニティ活性化や地域経済など、複数の課題解決に横断的に貢献する施策を高く評価します。
    • 実現可能性: 現行の法制度や予算、人員体制の範囲内で、比較的速やかに着手・実行が可能な施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は優先度が高くなります。
    • 費用対効果: 投じる予算や人員といったコストに対し、住民の行動変容や将来の医療費抑制効果といったリターンが大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性: 特定の地域や年齢層だけでなく、より幅広い住民層に便益が及び、一過性で終わらずに長期的に継続できる仕組みを持つ施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無: 他の自治体での成功事例や、国の調査研究によって有効性が示されているエビデンスに基づいた施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 課題分析の結果、特別区における最大の障壁は、働く世代を中心とした「時間不足」と、都市部特有の「場所不足」であることが明らかになりました。したがって、これらの根本的な制約を乗り越えるための施策が最優先となります。
  • これを踏まえ、支援策を「①参加のハードルを下げる」「②機会と場所を創出する」「③持続可能な仕組みを構築する」という3つの戦略的アプローチで体系化します。
  • 最も優先度が高いのは、デジタル技術と既存の都市空間を最大限に活用し、「時間」と「場所」の制約を同時に克服する支援策①:『いつでも、どこでも』スポーツ・ウェルネス推進事業です。
  • 次に、共生社会の実現という大きな理念を具現化し、活動の担い手を確保することで持続可能性を高める支援策②:インクルーシブ・コミュニティ・スポーツの基盤強化を位置づけます。
  • そして、これらの施策の効果を最大化し、行政全体として取り組むための支援策③:部局横断型『健康まちづくり』推進体制の構築を、全ての施策の土台として推進します。

各支援策の詳細

支援策①:『いつでも、どこでも』スポーツ・ウェルネス推進事業

目的
  • デジタル技術と身近な都市空間を最大限に活用することで、特にスポーツ実施率が低い働く世代や女性が、日常生活の「すきま時間」に、特別な準備なく運動・スポーツに取り組める環境を整備します。これにより、運動の習慣化を促し、健康への第一歩を後押しします。
    • 客観的根拠:
      • 勤務先で運動・スポーツに関する取組がなされている従業員の週1回以上のスポーツ実施率は70.1%に達し、取組がない場合(46.3%)を23.8ポイントも上回ります。このデータは、日常生活の動線上に運動機会を組み込むことの絶大な効果を示しています。
主な取組①:健康ポイントアプリの全区展開と機能拡充
  • 日々のウォーキング歩数、体重・食事記録、健(検)診受診、区が主催する健康イベントへの参加など、健康によい行動に対してポイントが付与されるスマートフォンアプリを、全特別区で導入、または既存アプリとの連携を強化します。
  • 貯まったポイントは、区内商店街で使えるデジタル商品券や、公共スポーツ施設の利用割引券など、地域経済の活性化にも資するインセンティブと交換できる仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 品川区の「しながわ健康ポイント」や板橋区の「いたばし健康ポイント」では、アプリの導入により住民の健康意識向上や行動変容が確認されています。特に、インセンティブの提供は、行動経済学の「ナッジ」理論に基づき、楽しみながら健康づくりを続ける強い動機付けとなります。
      • 葛飾区の事例では、同様の事業参加者の平均歩数が3ヶ月で約1,500歩増加したというデータもあります。
主な取組②:公園・オープンスペースの「フィットネス拠点化」
  • 区民が日常的に利用する公園や広場に、懸垂バー、腹筋ベンチ、ぶら下がり器といった、多様な世代が使える簡易な健康遊具を計画的に設置します。
  • 各遊具にはQRコードを掲示し、スマートフォンをかざすだけで、正しい使い方や応用トレーニングを紹介する動画を視聴できる仕組みを導入します。これにより、運動初心者でも安全かつ効果的にトレーニングができます。
    • 客観的根拠…
      • 世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場のような大規模施設だけでなく、より身近な公園や地域体育館を低料金で利用しやすくすることが、住民の継続的な運動機会の確保に繋がります。
主な取組③:企業連携による「オフィス・ウェルネス」の推進
  • スポーツ庁が推進する「スポーツエールカンパニー」認定制度の区内企業への周知を徹底し、認定取得を目指す企業に対して、申請支援やコンサルティングを行います。
  • 企業のニーズに応じて、昼休みや始業前の短時間で実施できるストレッチやヨガのインストラクター派遣、階段の利用を促すデザインシールの提供、部署対抗のウォーキングイベントの企画運営などを支援します。
    • 客観的根拠:
      • 勤務先での運動・スポーツの取組は、従業員の実施率向上だけでなく、充実感や幸福感といったWell-beingにも好影響を与えることが調査で明らかになっています。
      • 千代田区に本社を置く企業では、インストラクターによる職場体操やフィットネスルームの設置、ウォーキングイベントの開催など、多様な取組が実践されています。
主な取組④:オンライン・フィットネスコンテンツの提供
  • 区の公式ウェブサイトやYouTubeチャンネル、SNS等を活用し、自宅やオフィスで気軽にできる5分から10分程度のショート・エクササイズ動画を継続的に配信します。
  • 「高齢者向け転倒予防体操」「子育て世代向け親子ビクス」「デスクワーカー向け肩こり解消ストレッチ」など、ターゲット層の課題に合わせた専門的なコンテンツを提供し、利用者の満足度と継続意欲を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 時間や場所を選ばないオンラインコンテンツは、特に「時間がない」ことをスポーツ実施の障壁とする子育て世代や多忙なビジネスパーソンにとって、参加のハードルを大きく下げる有効な手段です。
        • (出典)経済産業省「(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/pdf/002_05_00.pdf)」令和2年 3
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区民の週1回以上スポーツ実施率: 70%(5年後目標)
      • データ取得方法: スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の都道府県別データ、または区が実施する住民健康意識調査(年1回)
  • KSI(成功要因指標)
    • 20代~50代の週1回以上スポーツ実施率: 65%(5年後目標)
      • データ取得方法: 同上
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 健康ポイントアプリの区民登録率(20歳以上): 40%
      • データ取得方法: アプリケーション管理システムのバックエンドデータより抽出
    • 区内企業の「スポーツエールカンパニー」認定数: 5年間で3倍増
      • データ取得方法: スポーツ庁公表データと区の支援実績リストの照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 健康遊具を設置した区立公園の割合: 全区立公園の50%
      • データ取得方法: 公園管理所管部局が管理する設置台帳
    • 配信したオンライン・フィットネス動画の累計本数: 250本(5年間)
      • データ取得方法: 事業所管課による配信実績のカウント

支援策②:インクルーシブ・コミュニティ・スポーツの基盤強化

目的
  • 障害の有無、年齢、性別、国籍、経済状況等に関わらず、全ての住民がスポーツに参加し、その価値を享受できる環境を整備します。同時に、地域のスポーツ活動を支える多様な担い手を育成・確保し、持続可能な地域スポーツのエコシステムを構築することを目指します。
    • 客観的根拠:
      • 「第3期スポーツ基本計画」および新たな「東京都スポーツ推進総合計画」は、共に「共生社会の実現」と「多様な主体との連携」を重要な柱として掲げており、本支援策はこれらの上位計画を具現化するものです。
主な取組①:「パラスポーツ」体験機会の抜本的拡充
  • 地域の祭りやイベント会場、商業施設などで、子どもから高齢者まで誰もが楽しめるボッチャ、車いすバスケットボール、ブラインドサッカーなどのパラスポーツ体験会を定期的に開催します。
  • 区内の全ての小中学校の体育の授業や総合的な学習の時間において、パラアスリートを講師として招聘する「出前パラスポ体験授業」を、希望する全校で実施できる体制を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 江戸川区では、「出前パラスポ体験」を年間44回実施し、延べ3,222人が参加するなど、積極的な普及活動がパラスポーツへの理解促進と参加意欲の向上に大きな成果を上げています。体験を通じて、障害への偏見をなくし、共生社会の意識を育むことができます。
        • (出典)スポーツ庁「(https://www.mext.go.jp/sports/content/20240328-kensport01-000035009_1_1.pdf)」令和5年 41
主な取組②:学校体育施設の開放徹底と利用円滑化
  • 区立小中学校の体育館、武道場、校庭について、学校教育に支障のない範囲で、平日夜間および土日祝日の地域開放を原則とします。
  • 施設の予約から鍵の受け渡し、利用料の支払いまでをオンラインで完結できるスマートロック付き予約システムを導入し、地域団体や住民個人の利用手続きを大幅に簡素化します。
    • 客観的根拠:
      • 特別区の学校体育施設開放率は78.3%ですが、さらなる向上の余地があります。物理的なスポーツ施設が絶対的に不足している特別区において、既存の公共ストックである学校施設を最大限に有効活用することは、最も現実的かつ費用対効果の高い解決策です。
主な取組③:地域スポーツ指導者・ボランティアの育成とマッチング
  • 高齢者向けのフレイル予防運動、障害児向けの運動遊び、外国人住民向けの多言語対応スポーツ教室など、多様化する地域のニーズに応えられる専門知識を持ったスポーツ指導者の養成講座を、地域の大学や専門学校と連携して開講します。
  • 指導者や運営ボランティアを求める地域スポーツクラブと、自身のスキルや経験を地域で活かしたい個人とを繋ぐ、オンライン・マッチングプラットフォームを構築・運営します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 障害者の週1回以上スポーツ実施率: 40%(5年後目標)
      • データ取得方法: スポーツ庁「障害者スポーツの実施状況等に関する調査」(定期調査)
  • KSI(成功要因指標)
    • 住民のパラスポーツ体験率(過去1年以内): 15%(現状約7.1%)
      • データ取得方法: 区が実施する住民意識調査(年1回)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 学校体育施設の地域団体・個人による年間利用時間数: 年率5%増
      • データ取得方法: オンライン施設予約システムの利用ログデータ分析
    • オンライン・マッチングプラットフォームを通じた指導者・ボランティアの年間成立件数: 100件
      • データ取得方法: プラットフォーム管理システムのデータ集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • パラスポーツ体験会の年間開催回数: 各区平均で年間20回以上
      • データ取得方法: 事業所管課による開催実績の集計
    • スポーツ指導者養成講座の年間修了者数: 50人
      • データ取得方法: 講座の受講者名簿および修了認定記録

支援策③:部局横断型「健康まちづくり」推進体制の構築

目的
  • スポーツ・健康施策を、健康福祉、保健医療、都市整備、教育、産業振興といった関連部局の施策と有機的に連携させ、一体的に推進するための全部局横断的な推進体制を構築します。これにより、個別の施策では達成困難な、政策全体の相乗効果を最大化します。
主な取組①:副区長をトップとする「健康まちづくり推進本部」の設置
  • 副区長を本部長とし、関係部局の部長級・課長級職員で構成される「健康まちづくり推進本部」を設置します。
  • 本部では、スポーツを通じた健康増進に関する区の総合計画の策定、各部局の関連事業の進捗管理と連携調整、関連予算の重点的・横断的な配分などを協議・決定し、トップダウンで施策を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 複雑化・複合化する行政課題に対し、従来の縦割り組織では効果的な対応が困難です。「第3期スポーツ基本計画」においても、関係省庁の連携による施策推進の重要性が強調されており、これを基礎自治体レベルで実践するものです。
主な取組②:医療・介護・保健指導との連携強化による「スポーツ処方」の導入
  • 地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護事業者協議会等と連携協定を締結します。
  • 特定健診の結果、生活習慣の改善が必要と判断された方や、要介護認定を受ける前のフレイル(虚弱)状態にある高齢者に対し、かかりつけ医やケアマネジャーが、本人の状態や興味に合わせた地域のスポーツプログラムを「処方箋」のように紹介する仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 医療・介護の専門職からの推奨は、運動習慣のない人がスポーツを始める強力な動機付けとなります。国の計画でも、医療・介護の場からスポーツの場へとシームレスに誘導する仕組みの構築が目標として掲げられています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区民一人当たりの生活習慣病関連医療費(国保): 5年間で5%削減
      • データ取得方法: 国民健康保険のレセプトデータ(医療費通知情報)の経年分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 特定健診受診率および特定保健指導実施率: それぞれ国の目標値を達成
      • データ取得方法: 国民健康保険組合および後期高齢者医療広域連合が公表する事業報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 医療機関・介護事業所等からの紹介によるスポーツプログラムへの年間参加者数: 500人
      • データ取得方法: スポーツプログラム参加申込時のアンケート調査(紹介元の記録)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「健康まちづくり推進本部」の開催回数: 年4回(四半期ごと)
      • データ取得方法: 会議の議事録作成・保管による実績管理
    • 連携協定を締結した医療機関数・介護施設等の累計数: 50施設
      • データ取得方法: 事業所管課が管理する協定書台帳

先進事例

東京都特別区の先進事例

品川区「しながわ健康ポイント事業」

  • スマートフォンアプリを活用し、日々の歩数計測や体重記録、健(検)診の受診、区が指定する健康イベントへの参加といった健康活動に対してポイントを付与する事業です。貯まったポイントは、区内共通商品券などが当たる抽選への応募に使用できます。
  • 成功要因は、健康づくりに「楽しさ」と「お得感」というゲーミフィケーションの要素を取り入れた点にあります。また、区内6カ所のドコモショップでアプリの登録や利用方法のサポートデスクを設けるなど、高齢者をはじめとするデジタル機器に不慣れな層への配慮を徹底し、デジタルデバイドの解消にも努めている点が評価されます。

世田谷区「公園の多様な活用によるフィットネス機会の創出」

  • 約2,000平方メートルの広大なトレーニングフロアを持つ駒沢オリンピック公園総合運動場のような大規模施設に加え、東急大井町線「尾山台駅」から徒歩5分に位置する尾山台地域体育館のように、1回120円という破格の料金で利用できる身近な施設を整備しています。
  • 成功要因は、施設の「量」で劣る都市部の弱点を、「質」と「アクセシビリティ」で補っている点です。トップアスリートも利用する高機能な施設から、仕事帰りに気軽に立ち寄れる安価な施設まで、住民が自身のライフスタイルや目的に応じて多様な選択肢を持てる環境を整備することで、運動の裾野を広げています。
    • 客観的根拠:
      • 駒沢公園では健康体操やヨガ、ピラティスなど多彩なプログラムを提供し、尾山台地域体育館では低料金で日常的な利用を促進するなど、利用者の多様なニーズに対応しています。

江戸川区「区を挙げたパラスポーツの推進」

  • 2016年に都内区市町村で初めてパラスポーツ専担の係を設置し、一貫した普及振興策を展開しています。毎年11月を「パラスポーツ推進月間」と定め、体験会や大会を集中的に開催するほか、区内小中学校への「出前パラスポ体験」や、知的障害・発達障害のある幼児を対象としたスポーツクラブなど、ターゲットを明確にしたきめ細やかな事業を実施しています。
  • 成功要因は、首長の強いリーダーシップのもと、専門部署を設置し、トップダウンで施策を強力に推進している点です。学校、地域コミュニティ、福祉施設、アスリートなど、多様な主体を巻き込んだ多角的なアプローチにより、パラスポーツを「特別なもの」から「誰もが楽しめる身近なもの」へと変えることに成功しています。
    • 客観的根拠:
      • 「出前パラスポ体験」は令和4年度に44回開催され、延べ3,222人が参加。教員を対象とした「えどリンピック ボッチャ交流大会」には37校から245名が参加するなど、高い参加実績がその成果を物語っています。
        • (出典)スポーツ庁「(https://www.mext.go.jp/sports/content/20240328-kensport01-000035009_1_1.pdf)」令和5年 41

全国自治体の先進事例

新潟県内各市「多様な主体との連携によるスポーツまちづくり」

  • 新潟県内では、行政主導だけでなく、地域の多様なプレイヤーが連携したユニークな取組が展開されています。例えば、村上市ではNPO法人と民間企業が連携し、高齢者の買い物支援と運動啓発を組み合わせた「健康ショッピング」を実施。三条市では「カヌーのまち」を掲げて全国大会を誘致し、柏崎市では地域のクラブチームが小学生向けの水球教室を開催しています。
  • 成功要因は、スポーツを核としながら、健康、福祉、教育、地域経済活性化といった複数の地域課題を同時に解決しようとする「統合的アプローチ」にあります。行政、NPO、民間企業、スポーツ団体がそれぞれの強みを持ち寄り、協働することで、行政単独では実現できない新たな価値を創出しています。
    • 客観的根拠:
      • 各地域が持つスポーツ資源(プロチーム、自然環境など)を最大限に活用し、地域プライドの醸成にも繋げています。

つくば市「産官学連携によるウェルネス都市の創生」

  • 筑波大学を中心に、アシックス、大和ハウス工業、三井不動産といった大手企業を含む14の企業・団体が参画する「スポーツ・ウエルネス都市創生コンソーシアム」を設立。筑波大学が持つ最先端の研究知見と、企業が持つ事業化のノウハウ、行政が持つ公共性を融合させ、エビデンスに基づく「健幸まちづくり」を推進しています。
  • 成功要因は、科学的根拠(エビデンス)を政策立案と事業開発の中心に据えた、強力な産官学連携体制の構築です。「健康ビッグデータ戦略」「DXによる介護予防戦略」など、各主体が明確な役割を担い、共同で大学院を運営して専門人材の育成も行うなど、持続可能なエコシステムを形成しています。
    • 客観的根拠:
      • アカデミア(大学)、インダストリー(企業)、ガバメント(行政)が三位一体となり、科学的根拠に基づいた質の高いプログラム開発と社会実装を両輪で進めている点が、他の自治体にはない強みです。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区におけるスポーツを通じた健康増進は、単なる余暇活動の推奨ではなく、超高齢社会の進展と社会保障費の増大という構造的課題に対する戦略的な投資です。現状、スポーツ実施率は全国平均を上回るものの、働く世代の参加率低迷や施設の絶対的不足といった深刻な課題も抱えています。デジタル技術と既存の都市空間を最大限活用する「いつでも、どこでも」アプローチ、誰もが参加できるインクルーシブな環境整備、そして部局横断での推進体制構築は、これらの課題を克服し、全ての区民が心身ともに健康で豊かな生活を送るための鍵となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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