14 子育て・こども

産後うつ予防・早期発見、専門機関との連携

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(産後うつを取り巻く環境)

意義

こどもにとっての意義

健全な愛着形成と発達の促進
  • 母親の精神的安定は、子どもとの情緒的な絆、すなわち健全な愛着形成(アタッチメント)の基盤となります。
  • 産後うつへの早期の支援介入により、母親が育児に前向きに関われるようになることで、子どもの情緒的・認知的・身体的な発達が促進されます。
  • 母親が産後うつ状態にあると、子どもが泣き続けたり、寝つきが悪くなったりするなどの行動上の問題を示すことがあると指摘されており、親のメンタルヘルスは子の発達環境に直結します。
    • (出典)(https://www.bangkokhospital.com/ja/bangkok/content/understanding-postpartum-depression) 5
  • 産後うつへの対応は、ネグレクト(育児放棄)や心理的虐待といったマルトリートメントのリスクを直接的に低減させます。
  • 東京都の調査では、妊産婦の自殺の背景に精神疾患があり、それが子どもへの愛情障害や児童虐待につながる可能性が指摘されています。

保護者にとっての意義

母親の心身の健康回復と自己肯定感の向上
  • 適切なケアとサポートにより、母親は産後の心身の不調から早期に回復し、「母親失格だ」といった自己否定感から脱却して、育児への自信と自己肯定感を取り戻すことができます。
  • 産後ケア事業の利用者アンケートでは、育児への不安が軽減したとの回答が約6割に上り、助産師等からの専門的指導が心身の回復に繋がっていることが示されています。
父親の育児参加促進と「父親の産後うつ」予防

地域社会にとっての意義

社会的孤立の防止と地域コミュニティの強化
  • 産後ケア事業やピアサポートなどの支援は、核家族化が進む現代において、孤立しがちな産後家庭と地域社会とをつなぐ重要な接点となります。
  • 母親同士が交流し、悩みを共有できる場を提供することで、新たなコミュニティが形成され、互助の精神が育まれるなど、地域全体の子育て力が向上します。
将来的な社会保障コストの削減
  • 産後うつの重症化や、それに伴う児童虐待、子どもの発達上の問題などを未然に防ぐことは、長期的に見て、医療費や福祉関連の給付といった社会保障コストの削減に繋がります。
  • 予防的介入は、将来の社会負担を軽減する費用対効果の高い投資と言えます。

行政にとっての意義

「こどもまんなか社会」の実現に向けた具体的施策
児童虐待防止対策の強化

(参考)歴史・経過

産後うつに関する現状データ

産後うつの有病率
産後うつハイリスク者の割合の推移
東京都における妊産婦の自殺
産後ケア事業の実施状況

課題

こどもの課題

親の精神的不調がもたらす発達への負の影響
  • 母親が産後うつ状態にあると、子どもへの応答的な関わり(例えば、あやしたり、話しかけたりすること)が減少し、子どもの言語能力や社会性の発達に遅れが生じるリスクが高まります。
  • また、母親の精神的な不安定さは、乳児の情動の不安定さ(泣き続ける、寝つきが悪いなど)と関連することが指摘されており、愛着形成の重要な時期に負の影響を及ぼす可能性があります。
    • 客観的根拠:
      • 産後うつ病の母親を持つ乳児は、泣き続けたり、寝つきが悪かったり、注意散漫を示したりすることがあると報告されています。
        • (出典)(https://www.bangkokhospital.com/ja/bangkok/content/understanding-postpartum-depression) 5
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 子どもの健全な心身の発達が阻害され、将来的には学齢期の学習困難や対人関係の問題につながる可能性があります。

保護者の課題

支援を求めにくい母親の心理的障壁(スティグマ)
  • 「良い母親でなければならない」「育児の辛さを口にするべきではない」という社会的なプレッシャーや、精神的な不調を相談することへのためらい(スティグマ)から、多くの母親が一人で悩みを抱え込み、支援を求めることに大きな困難を感じています。
  • 育児がうまくいかないことを自分の責任と感じ、「母親失格だ」という強い自己否定感や無力感に苛まれることも少なくありません。
見過ごされがちな父親のメンタルヘルス問題
  • 産前産後の支援は依然として母親中心となりがちで、パートナーである父親の精神的な不調は見過ごされやすい状況にあります。
  • 慣れない育児や生活環境の激変、妻の不調への対応、仕事との両立など、父親も大きなストレスに晒されますが、その悩みを吐露する場は限られています。
  • 父親がメンタル不調に陥ると、母親へのサポートが困難になるばかりか、夫婦関係の悪化を招き、家庭全体の危機が深刻化します。

地域社会の課題

核家族化による伝統的サポート機能の脆弱化

行政の課題

スクリーニング後のフォローアップ体制の不備
  • 産婦健診等でEPDSによるスクリーニングは普及しつつありますが、そこでハイリスクと判定された保護者を、確実に支援につなげる仕組みが十分に機能していません。
  • スクリーニングでリスクを把握しても、その後のフォローアップや専門機関への連携がなされなければ、最も支援を必要とする人々を取りこぼすことになります。
産後ケア事業の提供体制の地域間格差と人材不足
  • 産後ケア事業は全国展開を目指しているものの、サービスの提供体制は自治体によって大きな差があります。特に、事業の担い手となる助産師等の専門職の人材不足が深刻なボトルネックとなっています。
  • 委託先の医療機関や助産所が地域に偏在しているため、住民が住む地域によってはサービスを利用したくてもできない「アクセスの格差」が生じています。
関係機関間の連携不足と情報共有の壁
  • 産科医療機関、精神科、地域の保健センター(こども家庭センター)、子育て支援拠点、民間NPOなど、産後うつ支援に関わる機関は多岐にわたりますが、これらの機関間の連携が有機的に機能しておらず、縦割り行政の弊害が見られます。
  • 個人情報保護の重要性は認識しつつも、それが過度に壁となり、支援に必要な情報が機関間で共有されない「サイロ化」が起きています。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、産後うつの予防・早期発見だけでなく、児童虐待防止や地域コミュニティの活性化など、複数の課題解決に横断的に好影響を与える施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組み(例:産婦健診、こんにちは赤ちゃん事業)を活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投じるコスト(予算・人員)に対し、産後うつの重症化予防による医療費の抑制や、将来的な児童福祉関連コストの削減など、長期的・社会的な便益が大きい施策を重視します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の地域や所得層だけでなく、全ての親子が必要な支援を受けられる普遍的な(ユニバーサルな)仕組みであり、かつ一過性の事業でなく、制度として継続可能な施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 政府の調査報告や先進自治体の事例、学術研究等で効果が示されている、エビデンスに基づいた施策を最優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 産後うつ対策は、個別の施策を点在させるのではなく、「①早期発見の徹底」→「②支援のユニバーサル化」→「③包括的サポート」という3つの層が切れ目なく連動するシステムとして構築する必要があります。
  • したがって、優先順位は以下の通りとします。
  • 最優先(High Priority):支援策① 切れ目のないスクリーニングと早期介入体制の強化
    • これは、全ての支援の入り口を確実にするための「基盤整備」であり、他の施策の効果を最大化するための大前提です。ハイリスク者を確実に見つけ出し、支援のレールに乗せる仕組みがなければ、どれだけ良質なサービスを用意しても届きません。即効性が高く、行政の責務として最優先で取り組むべきです。
  • 次優先(Medium Priority):支援策② 産後ケア事業のユニバーサル化と質の向上
    • 早期発見された親子が実際に利用できる「受け皿」を確保し、支援の公平性と実効性を担保する施策です。支援策①と並行して強力に推進する必要があります。特に提供体制の拡充は、実現可能性の観点から中期的な視点も必要となります。
  • 中長期(Long-term Priority):支援策③ 多機関連携による包括的サポートネットワークの構築
    • これは、支援策①と②を土台として、特に複雑で困難な課題を抱える家庭に対して、より専門的かつ継続的な支援を提供する「セーフティネットの完成」を目指すものです。情報共有プラットフォームの構築など、システム開発に時間を要する部分もありますが、持続可能な支援体制の核となる重要な施策です。

各支援策の詳細

支援策①:切れ目のないスクリーニングと早期介入体制の強化

目的
主な取組①:産婦健診におけるEPDSスクリーニングの徹底と情報連携の仕組み化
主な取組②:「父親版EPDS」の導入と相談機会の創出
主な取組③:ハイリスク者へのアウトリーチ型・伴走型支援の標準化
  • EPDS9点以上、または産婦健診や新生児訪問等で支援が必要と判断された家庭(特定妊婦等)には、保健師等が原則として情報受領後5営業日以内に電話連絡し、状況を聴取します。
  • 電話で繋がらない、または必要性が高いと判断した場合は、速やかに訪問面談を行うアウトリーチ支援を標準プロセスとして確立します。
  • 初回接触時に支援プランを協働で作成し、産後ケア事業の利用勧奨や専門機関への同行支援など、利用者が実際にサービスにつながるまで伴走型のサポートを提供します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特別区における周産期関連の自殺者数 ゼロ
      • データ取得方法: 警察庁自殺統計、東京都監察医務院データ、人口動態統計
    • 産後うつが主たる要因と特定された児童虐待による死亡事例 ゼロ
      • データ取得方法: 児童相談所・区の要保護児童対策地域協議会の統計データ
  • KSI(成功要因指標)
    • EPDSハイリスク者のうち、初回接触から1か月以内に産後ケア事業または専門相談等の具体的な支援につながった割合 90%以上
      • データ取得方法: 各こども家庭センターのケース記録と産後ケア事業利用記録、相談記録等のマッチング分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 産婦健診におけるEPDS実施率 100%
      • データ取得方法: 委託医療機関からの事業実施報告書の集計
    • 産婦健診後のハイリスク者に関する医療機関からの情報提供率(同意取得ベース) 95%以上
      • データ取得方法: 健診受診者数とこども家庭センターへの報告件数の照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ハイリスク者への初回接触(電話・訪問)までの平均日数 5営業日以内
      • データ取得方法: こども家庭センターの活動記録システム(CRM)のデータ分析
    • 父親向けメンタルヘルス啓発リーフレットの配布数(両親学級・出生届時等) 対象者数の90%以上
      • データ取得方法: 事業実施部署からの配布実績報告

支援策②:産後ケア事業のユニバーサル化と質の向上

目的
  • 所得や家庭環境、子どもの状況(多胎児、きょうだい児の有無等)に関わらず、支援を必要とする全ての親子が、心身の休息と育児スキルの習得、心理的サポートを受けられる質の高い産後ケアサービスを利用できる体制を整備します。
主な取組①:産後ケア施設の拡充と多様な担い手の確保
  • 既存の病院・助産所に加え、地域の空き家や商業施設内の空きスペース等を活用したサテライト型のデイケア施設を増設します。
  • 施設の改修費や開設準備経費を補助する国の「次世代育成支援対策施設整備交付金」等を積極的に活用し、民間事業者の参入を促進します。
  • 地域の助産師会や訪問看護ステーション、ベビーシッター事業者等との連携を強化し、訪問型ケアの担い手を育成・確保します。
主な取組②:メンタルヘルスケア機能の標準装備化
  • 全ての産後ケア事業(宿泊・デイ・訪問)において、助産師等の専門職による傾聴をベースとしたメンタルヘルスアセスメントと心理的サポートを標準ケアに含めます。
  • 地域の臨床心理士会や公認心理師協会と連携し、産後ケア施設への専門職の巡回相談や、利用者向けのオンラインカウンセリングを定期的に実施する体制を構築します。世田谷区の産後ケアセンターでは、公認心理師によるカウンセリングが提供され、好評を得ています。
主な取組③:多胎児・きょうだい児等への対応力強化
  • 多胎児家庭向けに、利用日数や回数の上限を一般家庭の1.5倍~2倍程度に緩和し、利用料の追加減免措置を講じます。
  • 産後ケア施設に、きょうだい児を安全に預かるための保育スタッフを配置、または近隣の一時預かりサービスと連携し、母親が自身のケアに集中できる環境を整備します。
  • 医療的ケア児に対応できる看護師等を配置した専門性の高い産後ケア拠点を、特別区で共同設置することも視野に入れます。
主な取組④:ピアサポート活動との有機的連携
  • 産後ケア事業のプログラム(特にデイケア型)に、研修を受けた子育て経験者(ピアサポーター)によるお茶会や座談会を定期的に組み込みます。
  • 利用者が同じような悩みを持つ仲間と出会い、共感し合える場を設けることで、孤立感の解消とエンパワーメントを促進します。
  • 地域のピアサポート団体に活動場所として施設を無償提供するなど、連携を強化します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 産後ケア事業の利用者満足度(「大変満足」「満足」の合計) 95%以上
      • データ取得方法: 事業利用者へのウェブアンケート調査(退所時・利用後1か月)
  • KSI(成功要因指標)
    • 産後ケア事業の利用率(年間出生数に対する利用実人員の割合) 目標30%(現状の全国平均18.6%から向上)
      • データ取得方法: 住民基本台帳の出生数と事業利用実績データの照合
    • 希望者が予約を試みてから1か月以内に利用開始できる割合 95%以上
      • データ取得方法: 利用申請システムにおける申請日から利用開始日までの待機日数の記録分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 産後ケア利用後のEPDSスコアの平均改善点数 3点以上の低下
      • データ取得方法: 利用前後のEPDSスコアの定点比較分析(希望者のみ)
    • 利用者の育児不安軽減度(「とても軽減した」「軽減した」と回答した割合) 90%以上
      • データ取得方法: 利用者アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 産後ケア事業の提供体制(宿泊・デイ・訪問の総定員数または総提供時間数) 前年度比20%増
      • データ取得方法: 各事業者からの事業計画・実績報告の集計
    • メンタルヘルス専門職(臨床心理士等)が関与したケースの割合 全利用者の30%以上
      • データ取得方法: 事業実施報告における専門職の関与記録

支援策③:多機関連携による包括的サポートネットワークの構築

目的
  • 産科医療機関、精神科医療機関、こども家庭センター、子育て支援団体等が、それぞれの専門性を活かしつつ、情報を円滑に共有し、役割分担を行うネットワークを構築します。これにより、ハイリスク家庭に対して切れ目なく、多角的で専門的な支援を届けます。
主な取組①:情報共有プラットフォームの整備と活用
  • 本人の同意を前提として、関係機関が要支援者の情報(基本情報、アセスメント結果、支援記録、ケアプラン等)を安全かつリアルタイムで共有できる、セキュアな情報通信技術(ICT)を活用したプラットフォームを、特別区共同で整備・導入します。
  • これにより、「誰が、いつ、どのような支援を行ったか」を関係者全員が把握でき、支援の重複や漏れを防ぎます。
  • 港区の「みなと母子(親子)手帳アプリ」のように、利用者自身が記録を管理し、行政と情報を共有できる双方向のツール導入も検討します。
主な取組②:「こども家庭センター」を核としたケースマネジメントの徹底
  • 各区に設置されている「こども家庭センター」を、産後うつ支援の司令塔(ハブ)として明確に位置づけ、母子保健部門と児童福祉部門が一体となったケースマネジメントを徹底します。
  • 保健師、助産師、社会福祉士、心理職等からなる多職種チームによる定例のケース会議(週1回程度)を義務付け、支援困難ケースに対する支援方針の共有と具体的な役割分担を明確化します。江戸川区の多職種連携事例などが参考になります。
主な取組③:精神科医療へのスムーズな連携体制の構築
  • 地域の精神科・心療内科の医療機関や医師会と「周産期メンタルヘルス連携協定」を締結します。
  • 協定に基づき、こども家庭センターや産後ケア事業者からの紹介患者を優先的に受け入れる「連携枠」を設けるなど、産後うつが疑われるケースを迅速に専門医療につなげるための具体的な紹介ルート(クリニカルパス)を確立します。
  • 精神科受診に抵抗がある保護者のために、保健センターや産後ケア施設での「精神科医による出張相談」や、オンライン診療の活用を促進します。
主な取組④:関係機関職員への多職種合同研修の実施
  • 産科医療、精神科医療、行政(保健・福祉)、民間支援団体など、異なる分野の専門職が一堂に会する合同研修会を、区または複数の区が共同で定期的に(年2回以上)開催します。
  • 研修では、産後うつに関する最新知識の共有、各機関の役割と利用可能な社会資源の相互理解、具体的な事例検討(ケーススタディ)を行い、顔の見える関係づくりを進め、現場レベルでのスムーズな連携を促進します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 支援からの途中脱落率(ハイリスク認定後、理由なくフォローアップが途絶えるケースの割合) 5%未満
      • データ取得方法: こども家庭センターのケースマネジメント記録の縦断的追跡調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 多職種ケース会議における平均参加機関数 5機関以上
      • データ取得方法: ケース会議の議事録・開催記録の分析
    • 情報共有プラットフォームのアクティブ利用率(月1回以上ログインする職員の割合) 関係職員の80%以上
      • データ取得方法: システムのログデータ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ハイリスク者を行政が把握してから精神科医療の初診につながるまでの平均日数 14日以内
      • データ取得方法: ケース記録における情報受領日と医療機関受診日の突合分析
    • 関係機関職員を対象とした連携満足度(「連携がスムーズになった」と回答した割合) 80%以上
      • データ取得方法: 関係機関職員への年1回の匿名アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 情報共有プラットフォームへの支援記録入力率(ケース会議で協議された事例対象) 95%以上
      • データ取得方法: システム監査による定期チェック
    • 多職種合同研修の年間開催回数および延べ参加者数 各区年4回以上、延べ200人以上
      • データ取得方法: 研修事業の実施報告書

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「世田谷版ネウボラによる切れ目ない支援体制」

  • 世田谷区は、妊娠届出時の全数面接「ゆりかご・せたがや面接」を支援の入り口とし、区内5か所の「子ども家庭支援センター」がフィンランドの「ネウボラ」をモデルとした拠点として機能し、妊娠期から就学前まで一貫した相談支援を提供しています。
  • 特に、全国に先駆けて2008年から区立の「産後ケアセンター」を設置・運営している点は特筆に値します。宿泊型・デイケア型サービスを提供し、助産師による専門的なケアに加え、公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング(週2回)や、上のきょうだい児と一緒に利用できる部屋を用意するなど、利用者の多様なニーズにきめ細かく対応しています。
  • 成功要因: ①妊娠期の全数面接により、支援が必要な家庭を早期から把握し、関係性を構築している点。②区立施設として安定的に運営し、民間施設に比べて低廉な利用料を実現している点。③身近な地域拠点(ネウボラ)と中核専門機関(産後ケアセンター)の役割分担と連携体制が確立されている点です。

港区「『みなと母子(親子)手帳アプリ』によるDX推進」

  • 港区は、子育てに関するあらゆる情報を集約したスマートフォンアプリ「みなと母子(親子)手帳アプリ」を導入し、デジタル技術を活用した支援を強力に推進しています。
  • このアプリでは、複雑な予防接種のスケジュールをAIが自動で作成・管理する機能、乳幼児健診や両親学級、保育コンシェルジュ相談などを24時間オンラインで予約できる機能、母子健康手帳の記録をデジタルで保存できる機能などがワンストップで提供されています。
  • 成功要因: ①利用者の利便性を徹底的に追求し、複数の手続きや情報収集を一つのアプリで完結できる設計。②子育て開始直後の0歳児の保護者の登録率が85.7%に達するという高い普及率を達成したこと。③デジタル化によって住民サービスの質を向上させると同時に、行政側の電話対応業務の削減といった業務効率化を両立させている点です。

江戸川区「多様な主体との連携による訪問型ケアの展開」

  • 江戸川区は、行政直営の支援だけでなく、地域の助産師会や民間事業者(株式会社パソナライフケア等)への委託を積極的に進め、利用者の自宅に直接支援を届ける訪問型(アウトリーチ型)の産後ケアサービスを拡充しています。
  • また、精神疾患を持つ母親など、より専門的なケアが必要なハイリスクケースに対応するため、医療保険が適用される訪問看護ステーションとも連携し、重層的な支援体制を構築しています。
  • 成功要因: ①行政、地域の専門家集団、民間企業という多様な主体の強みや専門性を活かした官民連携モデルを構築している点。②施設への来所が困難な家庭や、支援につながりにくい層に対しても、訪問という形で積極的にアプローチ(アウトリーチ)している点です。

全国自治体の先進事例

埼玉県和光市「『わこう版ネウボラ』による住民参加型の支援」

  • 和光市は、全国に先駆けてフィンランドの「ネウボラ」を参考に、市役所内に専門部署「ネウボラ課」を設置し、市内5か所の子育て世代包括支援センターを拠点として、妊娠期から切れ目のない支援を提供しています。
  • 特徴的なのは、行政サービスだけでなく、「わこう産前・産後ケアセンター」(運営:わこう助産院)という民間施設と緊密に連携し、ショートステイ(宿泊)、デイケア、訪問ケアなど、利用者のニーズに応じた多様なサービスを展開している点です。
  • 成功要因: ①行政(ネウボラ課)が司令塔となり、民間施設と一体的に事業を推進する強力な官民協働体制。②身近な地域に相談拠点を複数配置し、住民が気軽にアクセスできる環境を整備している点。③専門職によるプロフェッショナルなケアと、母親同士の交流の場(デイケア等)を両立させ、ピアサポートの機能も重視している点です。

こども家庭庁事例集より「養父母への産後ケア事業適用事例」

  • ある市では、長年の不妊治療を経て特別養子縁組で親となった養父母に対し、本来は制度の対象外であった産後ケア事業を、支援の必要性が高いと判断し、柔軟に適用することを決定しました。
  • 育児経験が全くなく不安を抱える養父母に対し、助産院での宿泊型ケア(2泊3日)を提供。沐浴や授乳といった具体的な育児技術の指導に加え、突然親になったことによる地域との関わりへの不安など、心理的なサポートも包括的に実施しました。
  • 成功要因: ①制度の条文に固執せず、支援の必要性に基づいて柔軟な運用判断を行ったこと。②単なる技術指導ではなく、親子の愛着形成や心理的安定といった包括的なケアを提供したこと。③ケア終了後も市の保健師や訪問支援に確実につなぎ、継続的なフォローアップ体制を構築した点です。
    • 客観的根拠:
      • この事例は、産後ケアが実親だけでなく、養子縁組家庭など、多様な背景を持つ全ての新しい親子にとって重要であり、行政が柔軟に対応する必要があることを示す好事例です。

参考資料[エビデンス検索用]

こども家庭庁・厚生労働省関連資料
  • こども家庭庁「こども未来戦略」令和5年
  • こども家庭庁「産後ケア事業の実施状況について」令和6年
  • こども家庭庁「産後ケア事業 事例集」令和5年
  • こども家庭庁「成育医療等協議会(第10回)資料」令和6年
  • 厚生労働省「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針」令和3年
  • 厚生労働省「妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル(改訂版)」令和3年
  • 厚生労働省「健やか親子21(第2次)最終評価報告書」平成27年
  • 厚生労働省科学研究費補助金研究「日本人女性における周産期うつ病の有病率に関するシステマティックレビューとメタアナリシス」
総務省関連資料
  • 総務省行政評価局「子育て支援に関する行政評価・監視-産前・産後の支援を中心として- 結果報告書」令和4年
東京都・特別区関連資料
  • 東京都医師会「多施設で行った 令和4年度妊産婦メンタルヘルスに関するアンケート調査」令和5年
  • 東京都福祉保健局「新宿区子ども・子育て支援事業計画」
  • 世田谷区「世田谷区立産後ケアセンター」ウェブサイト
  • 港区「みなと母子(親子)手帳アプリ」ウェブサイト
  • 江戸川区「産後ケア(宿泊型)事業」ウェブサイト

まとめ

 東京都特別区における産後うつ予防・早期発見と専門機関との連携は、母子の健康と安全を守る上で極めて重要な政策課題です。産後うつスクリーニング体制の強化、専門機関との連携システム構築、包括的産後ケア体制の整備という3つの支援策を統合的に推進することで、産後うつの発症率削減と早期回復支援を実現できます。特にデジタル技術の活用により効率性とアクセシビリティを向上させ、全ての母親が必要な支援を受けられる体制の構築が求められます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました